【実施例】
【0041】
実施例1:細胞形質移入および遺伝子サイレンシング
材料および方法
オリゴヌクレオチド合成およびminivectorの調製
GFPサイレンシングのため、合成siRNAを対になった対照のsiRNAと共に購入した(Ambion、カリフォルニア州フォスターシティーからのカタログ番号AM4626)。ALK遺伝子のためのsiRNAは、報告された配列
11に従ってAmbio
nにより以下の配列を有するように合成された:センス:(SEQ ID NO:1)
【0042】
【化1】
【0043】
および(SEQ ID NO:2)アンチセンス:
【0044】
【化2】
【0045】
。shRNAを発現するMinivectorを生成するために用いられた親プラスミドは、以下のように生成された。KasIおよびHindIII制限部位(restriction sited)をpMC339−BbvCI(Fogg et al. 2006)の中に組み込んだ。そのKasIおよびHindIII部位の間にpSUPER−CCR5shRNA−3(参考文献)からのH1プロモーターおよびshRNA発現配列を含有するKasI/HindIII断片を挿入することにより、H1プロモーターをそのpMCベクターの中にサブクローニングした。続いてBglII部位をそのshRNA発現配列の前に組み込んでpMV−CCR5shRNA3−BglIIを生成した。これは、そのBglIIおよびHindIII部位の間に挿入することによりshRNA発現配列を容易に交換することを可能にする(
図1)。
【0046】
【化3】
【0047】
12のセンス配列を有するGFP shRNAおよび
【0048】
【化4】
【0049】
のセンス配列を有するALK shRNA(Ito M, Zhao N, Zeng Z, Chang CC, Zu Y. Cancer Gene Ther 2010; 17: 633-644.)をコードするDNA挿入断片を、それぞれ2つのオリゴヌクレオチドとして合成し、アニーリングさせてスープレックス(suplexes)を形成し、改変されたpMVベクター(ector)の中に、BglIIおよびBamHI部位の間に、H1プロモーターの制御下にサブクローニングした(
図1)。結果として得られたプラスミドを、pMV−H1−GFPshRNAおよびpMV−H1−ALKshRNAと名付けた。Minivector DNAの親プラスミドを大腸菌株LZ54(Zechiedrich et al. (1997), Genes Dev. 11, 2580-2592)の中に形質転換し、ラージ
スケールでのλ−インテグラーゼ(Int)に仲介される(mediated)を、以前に記述されたように
13、以下の少しの修正を加えて実施した。純粋な、スーパーコイル状の、単量体のMinivector DNAを、多数回のゲルSephacryl S−500濾過(GE Healthcare Life Sciences,ニュージャージー州ピスカタウェイ)により単離した。スーパーコイル状の単量体の形のminivectorのみを、遺伝子サイレンシングの研究のために用いた。プラスミドの名前の前の“p”の慣習に従って、我々はminivector DNAを“mv”を付けて名付け、minivectorを生成するために用いられる親プラスミドを“pMV”と名付ける。
【0050】
生体内安定性アッセイ
生成されたGFP shRNAをコードするminivector(1μg)ならびに等質量(equimass amounts)の親プラスミドpMV−H1−GFPshRNAおよび合成GFP siRNAを、100μlの100%ヒト血清(Atlanta Biological Inc. ジョージア州ローレンスビル)中で37℃で保温した。様々な時点において、残留するDNAベクターまたはsiRNA製品をフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、クロロホルムで抽出し、95%エタノール中で沈殿させた。次いで残留するRNAまたはDNA製品を、それぞれ10%ポリアクリルアミドおよび1.5%アガロースゲル、それに続く臭化エチジウム染色で調べた。DNAまたはsiRNA製品のバンドを、TotalLabソフトウェア(FotoDyne Inc.,ウィスコンシン州ハートランド)を用いて定量化し、Kaleidagraph(Synergy Software,ペンシルバニア州レディング)を用いてプロットした。
【0051】
細胞形質移入および遺伝子サイレンシング
GFP遺伝子のサイレンシングのためのレポーター系として、接着293FT細胞(形質転換したヒト胎児腎臓細胞株、Invitrogen)および形質移入しにくいJurkat細胞(ヒトリンパ腫/白血病細胞株)に由来する安定してGFPを発現する細胞を確立した。そのGFPを発現する細胞に、Lipofectamineの方法論を用いて、製造業者(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)の説明書に従ってDNAベクターまたはsiRNAを形質移入した。結果としてもたらされた細胞のGFPの発現のサイレンシングを、3日目にフローサイトメトリーを用いて定量化し、FlowJoソフトウェア(BD Biosciences,カリフォルニア州サンノゼ)を用いてデータを分析した。細胞のGFPの平均蛍光強度の変化を、未処理の細胞を対照として用いて算出した(%)。
【0052】
加えて、培養したKarpas299細胞(ヒトALCL細胞株)に、合成ALK siRNAおよび対照siRNA、pMV−H1ベクター、pMV−H1−ALKshRNA、またはALK minivector(mv−H1−ALKshRNA)を上記のように形質移入した。細胞を3日目に集め、BD Biosciencesからの細胞調製キットを用いて製造業者の説明書に従って固定し、透過処理した。細胞のALK融合タンパク質をFITC−コンジュゲート抗−ALK抗体(1:20希釈、BD Biosciences)により染色し、フローサイトメトリーにより定量化した。
【0053】
MTT細胞増殖アッセイ
細胞のSLK遺伝子のサイレンシングの際の細胞成長/増殖における変化を同時に調べた。形質移入したKarpas299細胞の分割量(Aliquots)(100μl/試料)を96ウェルプレートに移し、Chemicon International(カリフォルニア州テメキュラ)からのMTTアッセイキットのアッセイ緩衝液10μlと混合し、37℃で4時間保温し、次いで製造業者の説明書に従って溶解させた。MTT細胞増殖アッセイを、BioRadマイクロプレートリーダーを用いて、それぞれの標本において検出されたOD
540の吸光度により分析した。相対的な細胞増殖(%)を、未処理の細胞をバックグラウンド対照として用いることにより算出した。全ての実験を少なくとも3回行い、その結果を平均±標準偏差で表した。
【0054】
結果
そのminivectorはヒト血清中で安定であった
minivectorを生成するため、GFP遺伝子またはALK遺伝子に特異的なshRNAをコードする合成オリゴDNAを、改変されたpMV−H1親プラスミドの中に
サブクローニングした(
図1)
13。インビボでのインテグラーゼに仲介される組み換えを経ることにより、わずかにH1プロモーター、shRNAに関する配列のみを含有し、ほとんど完全に細菌の配列を欠いている約385bpの環状minivectorが得られた。遺伝子サイレンシングの研究のため、そのminivectorの単量体およびスーパーコイル状の形態を分画し、精製した。
【0055】
生体内安定性の研究のため、精製したGFPminivectorを100%ヒト血清中で37℃において3日間保温した。対照グループにおいて、親のpMV−GFPshRNAベクターおよび合成GFP siRNAを同じ条件で試験した。様々な時点で、残留したDNAベクターおよび合成siRNAを抽出し、電気泳動により分析した。そのminivectorはヒト血清中で少なくとも48時間安定であったが、一方で親のベクターのプラスミドDNAは約4時間後に50%より多く分解していた。それに対し、合成siRNAは30分未満で消化された。
【0056】
形質移入しにくいリンパ腫細胞におけるminivectorの高い遺伝子サイレンシング効率
遺伝子サイレンシングに関する細胞形質移入の可能性を評価するため、2タイプの安定してGFPを発現する細胞は、接着293FT細胞(形質転換されたヒト腎臓線維芽細胞細胞株)に、および懸濁Karpas299細胞(ヒトALCL細胞株)に由来していた。“材料および方法”において記述したように、そのGFPを発現する細胞にGFPminivectorをLipofectamineの方法論を用いて形質移入し、3日間の形質移入の後、結果として生じた細胞のGFP発現の変化をフローサイトメトリーにより定量化した。接着293FT細胞では、そのminivectorの形質移入は有意なGFP遺伝子のサイレンシングを誘導し(49%)、それはpMV−H1−GFPshRNAプラスミドベクター(30%)および合成GFP siRNA(68%)により誘導されるサイレンシングに匹敵していた(
図2の上段)。興味深いことに、形質移入しにくいJurkat細胞では、minivectorの形質移入は結果としてGFP遺伝子の有意なサイレンシング(細胞のeGFP発現の46%低減)をもたらし、それはpMV−H1−GFPshRNAプラスミドベクターにより誘導されるサイレンシング(4.5%)より10倍高く、合成GFP siRNAによるサイレンシング(61%)よりほんのわずかに低かった(
図2の下段)。
【0057】
minivectorによるALK遺伝子のサイレンシングは、Karpas299リンパ腫細胞の増殖停止を誘導した。
ALK融合タンパク質の異常発現はALK陽性ALCLの発現に関する重要な病原因子であり、siRNAに誘導されるALK遺伝子のサイレンシングは結果としてALCL細胞の増殖阻害をもたらしたことが示されている。ALCLに関する療法的役割の可能性を検証するため、ALK shRNAをコードするminivectorを、形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞の中に形質移入した。3日間の形質移入の後、結果として生じたALK遺伝子のサイレンシングを、細胞のALK融合タンパク質の発現を上記のようにFITCコンジュゲート抗ALK抗体を用いたフローサイトメトリーにより定量化することにより評価した。minivectorの形質移入は結果として培養されたKarpas299細胞におけるALK遺伝子の有意なサイレンシングをもたらし、細胞のALK融合タンパク質の発現が25%低減しており、それは合成ALK siRNAの形質移入により誘導されるサイレンシング(27%)と同じくらい効率的であった(
図3A)。それに対し、従来のプラスミドベクターであるpMV−H1−ALKshRNAは形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞においてほとんど遺伝子サイレンシング作用を示さず、無視できる程度の細胞のALK融合タンパク質の発現の減少(0.8%)をもたらした。発見は、そのminivectorが形質移入しにくいKarpas299リンパ腫細胞において従来のプラスミドベクターよりも30倍効率的にALK遺伝子
のサイレンシングを誘導したことを示した。
【0058】
加えて、誘導されたALK遺伝子のサイレンシングの結果もたらされる細胞への作用を確かめるため、それぞれの3日間の処置の後、対応する細胞増殖を同時に調べた。相対的細胞増殖速度(%)は、“材料および方法”の下で記述したように、MTT細胞増殖アッセイにより検出された。Karpas299リンパ腫細胞の、ALK/shRNAをコードするminivectorおよび合成ALK siRNAによる形質移入は、結果として有意な細胞増殖の阻害(40%近くの減少およびP<.01)をもたらした。それに対し、pMV−H1−ALK/shRNAのプラスミドベクターは、ビヒクルのみ、pMC−H1、または対照のsiRNAを形質移入した対照の細胞と比較して、細胞増殖への検出される作用を有しなかった(
図3B)。まとめると、これらの発見は、そのminivectorが特に形質移入しにくい細胞における細胞の遺伝子のサイレンシングのための強力な手段であることを示している。
【0059】
この研究では、遺伝子ターゲッティング療法に関するminivectorの生体内安定性および使用の可能性を形質移入しにくいリンパ腫細胞において検証した。その発見は、そのminivectorが合成siRNAおよび従来のプラスミドDNAベクターの両方を超える利点:(従来のプラスミドベクターと比較して)高い細胞形質移入/遺伝子サイレンシング率およびヒト血清中での高い生体内安定性を有していることを示している。加えて、そのminivector系を用いることは、従来のプラスミドベクターのバックボーンの細菌の配列からの細胞毒性の可能性も排除する。その結果は、そのminivector系がインビボでの遺伝子ターゲッティング療法のための有望な送達ベクターであることを示唆している。
【0060】
本明細書で記述したような環状minivectorは、わずかに転写プロモーター(H1)、ターゲッティング遺伝子のための療法的shRNAをコードする設計された配列、およびインテグラーゼに仲介されるインビボ組み換え部位のみからなる(
図1)。その小さい大きさ(例えばこの実施例ではMinivectorは約385bpである)により、そのminivectorは、所与の体積/質量に対してより多い数の分子、および従来のDNAプラスミドベクターの細胞形質移入効率よりも高い細胞形質移入効率を有することができる。加えて、形質移入された細胞内でのH1プロモーターからの繰り返される遺伝子の転写により、shRNAのコピー数が著しく増幅されることが可能である。それに対し、形質移入された合成siRNAは細胞中でコピー数を増大させることはできない。また、合成siRNAはRNA干渉に仲介される遺伝子サイレンシングの間に完全に破壊され、従って絶えず補充する必要がある。遺伝子サイレンシングに関するminivectorの単量体の形態に加えて、minivectorの多量体の形態もインビボでの組み換えの間に形成される可能性があり、それは類似の技法を用いて精製することができる。そのようなminivectorの二量体/多量体の形態は、それらの遺伝子サイレンシングの可能性に関して、本明細書で記述した技法を用いて試験することができる。さらに、多数の療法的shRNAをコードする配列を挿入し、形質移入された細胞において同時に多数の遺伝子を標的とする可能性を有するminivectorを生成し、結果として非常に高感度かつ特異的な遺伝子療法をもたらすことが可能である。
【0061】
実施例2:shRNAをコードするMINIVECTORはヒト線維芽細胞においてGFPの発現を妨害する
GFPに対して標的化されたshRNAをコードするミニサークル(ミニサークルshRNA−GFP)の形質移入効率を、安定してGFPを発現するヒト胎児由来腎臓細胞(293FT/GFP)においてアッセイした。293FT細胞では見られないCCR5に対するshRNAをコードするMinivectorが陰性対照としての役目を果たした。lipofectamineを用いた形質移入の後、GFPの発現を蛍光活性化細胞選
別法を用いて定量化した。GFPに仲介される蛍光への作用を有しなかった対照のminivectorを形質移入した細胞と比較して、minivectorを与えられた細胞は用量および時間依存方式での蛍光の減少を示し、蛍光が44%まで減少した(
図4)。従って、GFP遺伝子に対するshRNAをコードするminivectorは、
図5において図式化されているようにDicer経路を通って処理されてGFP発現をサイレンシングするようである。
【0062】
shRNAをコードするMinivectorは、Jurkatリンパ腫細胞においてGFPの発現を従来のshRNAプラスミドベクターよりも効果的にサイレンシングする。GFPを安定して発現するヒトkarpas299細胞を生成した。この細胞株を用いてminivectorと従来のプラスミドの形質移入およびサイレンシング効率を比較した。Minivector mv−H1−GFPshRNA(
図6D)を、同じGFPに対するshRNAをコードする従来のプラスミドベクターであるpMV−H1−GFPshRNA(
図6C)と比較した。加えて、DNAベクター中で用いられた配列と同じ配列を有する合成siRNAを試験した(
図6E)。
【0063】
図6A〜Bにおいて示されているように、対照のpMV−H1ベクターおよび対照のshRNAを発現するMinivectorは細胞のGFPの発現への作用を有しなかった。従来のプラスミドベクターpMV−H1−GFPshRNAを用いた細胞の形質移入は、処理された細胞のGFP遺伝子の発現を4.5%サイレンシングした(
図6C)。しかし、minivector処理は処理された細胞のGFPを46%サイレンシングし(
図6D)、それはオリゴマー性shRNAにより誘導されるサイレンシング(61%)(
図6E)に匹敵する。
【0064】
実施例3:ヒト樹状細胞およびT細胞の形質移入
GaussiaルシフェラーゼをコードするMinivectorはヒト樹状細胞および活性化されたT細胞に高い効率で形質移入された。活性化されたT細胞が腫瘍と戦う能力を測定するための系が確立された(Ahmed et al. 2007, J Immunother. 30(1):96-107)
。短いルシフェラーゼ遺伝子であるGaussiaルシフェラーゼを、mvGLucを作るためにminivectorの中にクローニングした。利用可能である最も小さい容易に追跡可能な遺伝子の1つであるにも関わらず、そのルシフェラーゼ遺伝子は結果として比較的大きいminivector(約1.2kb)をもたらし、それは上記のGFP発現の制御を示した実験において用いられた約385bpのミニサークルよりもはるかに大きい。しかし、そのGLucをコードするミニサークルは典型的なDNAプラスミドベクターよりもまだ小さく、そして重要なことだが、選択または複製のためのあらゆる細菌の配列を欠いている。示したように、ヒト樹状細胞(DC)(
図7A)およびT細胞(
図7B)中へのGLucの送達は結果として通常のプラスミドと比較してより高い遺伝子発現をもたらした。これらの結果は2つの重要なことを示している。第1に、minivectorは、転写され、機能するタンパク質へと翻訳されることができる小さい遺伝子を送達するために用いることができる。第2に、そしてこれらのベクターの大きな有望さを示すものであるが、そのminivectorは非ウイルス性の形質移入が以前にほとんど〜全く成功していなかったDCおよびT細胞株に形質移入することができる。
【0065】
実施例4:マウスの肺におけるGAUSSIAルシフェラーゼの活性
CMVプロモーターの制御または様々な制御下のGaussiaルシフェラーゼの非分泌型をコードする1,613bpのMinivectorを、非近交系メスNIH Swissマウスに鼻腔内投与した(5μg)。そのマウスの半分は水中のMinivector(mcGLuc+H
2O)を与えられ、その他の半分はPEI中のMinivector(mcGLuc+PEI)を与えられた。対照のマウスはDNAを全く与えられなかった。Minivectorの投与の72時間後に、マウスを屠殺し、それらの肺を集め
た。肺全体をビーズおよび溶解緩衝液を用いてホモジナイズし、次いでELISAを用いてルシフェラーゼ活性に関してアッセイした。Minivectorは両方ともたとえPEIの非存在下であってもマウスの肺に形質移入され、Gaussiaルシフェラーゼを発現した。これらの結果は、それは処置の間に通常毒性のある形質移入ビヒクルが必要とされない可能性があることを示しているため、重要である。追加の実験には、肺細胞内で異なるタンパク質または特定の遺伝子をサイレンシングするためのshRNAを発現する他のminivectorを用いること、およびAerotechII噴霧器を用いるエアロゾル化によりそのminivectorを投与することが含まれる。
【0066】
実施例5 MINIVECTORへの剪断力の評価
材料および方法
化学物質、試薬および装置
アクリルアミド(EMD Chemicals,Merck KGaA,ダルムシュタット、ドイツ)、アガロース(ISC BioExpress,ユタ州ケイズビル)、およびSYBR(登録商標)Gold(Invitrogen,カリフォルニア州ハーキュリーズ)を除く全ての化学物質はFisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)を通して購入した。全ての制限酵素はNew England Biolabs(マサチューセッツ州イプスウィッチ)から購入した。Plasmid MaxiキットはQiagen(カリフォルニア州バレンシア)からのものであり、Amicon Ultra遠心フィルターはMillipore(マサチューセッツ州ビレリカ)からのものであった。Aerotech IIジェット噴霧器はPharmalucence(マサチューセッツ州ベッドフォード)から購入し、Aridyne 2000圧縮機はAllied Healthcare Products(ミズーリ州セントルイス)から購入した。1/8”プローブ超音波処理器(モデル60ソニックディスメンブレーター(Sonic Dismembrator))はFisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)からのものであった。PC ImageおよびTotal LabのソフトウェアプログラムはそれぞれFotodyne(ウィスコンシン州ハートランド)およびTotalLab(ノースカロライナ州ダーラム)から購入した。
【0067】
DNAの生成および取り扱い
281bpから5,302bpまでに及ぶ広い範囲の大きさを含むいくつかのプラスミドおよびMinivectorに、Aerotech II噴霧器を通したエアロゾル化により生じる剪断力を、または超音波処理により生じる剪断力をかけた。文全体を通して、これらのベクターはそれらの長さのみにより参照され、これはそれが評価される主な変数であるためである。プラスミドの名前の前に“p”を用いる慣習に従って、Minivector(商標)DNAを“mv”を付けて名付ける。Minivector(商標)DNAを生成するために用いられる親プラスミドを“pMV”と名付ける。親プラスミドであるpMV−KB4TAL−GLucKDELおよびpMV−CMV−GLucKDELはDr.David Spencer(ベイラー医科大学)から頂いたものであり、pMV−KB4TAL−mCherryおよびpMV−CMV−mCherryはDr.Martin MatzukおよびDr.Zhifeng Yu(ベイラー医科大学)から頂いたものである。pQR499はDr.John Ward(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン、英国)から頂いたものである。pDJC1はpQR499をTfiIおよびAflIIIで消化することにより構築された。消化されたpQR499の陥凹末端をT4 DNAポリメラーゼにより埋め、続いてT4 DNAリガーゼによりライゲーションした。大腸菌DH5α細胞中でプラスミドを生成し、Plasmid Maxi Kitを製造業者の説明書通りに用いて単離し、続いてAmicon Ultra遠心フィルターを用いて脱塩および濃縮した。MinivectorのDNAを以下のように得た。Minivectorの親プラスミドを大腸菌株LZ54(Zechiedrich et al. 1997)
中に形質転換し、大規模λ Int仲介組み換えおよびMinivector(商標)D
NA単離を、記述された(Fogg et al. 2006; Zhao et al. 2010)通りに行った。ニックの入ったDNAベクターを生成するため、ニッキングエンドヌクレアーゼNt.BbvCIを製造業者のプロトコルに従って用いた。線状化は、PvuI、BspHI、またはSeaIを製造業者のプロトコル通りに用いて行った。
【0068】
DNAの剪断
噴霧のため、10mLのTE(10mM トリス−HCl、1mM EDTA、pH8)中1ngμL
−1のDNAをAerotech IIジェット噴霧器に添加した。Aridyne 2000圧縮機により10L/分の速度および50p.s.i.のゲージ圧で空気を噴霧器に送達した。噴霧の間、全ガラス製インピンジャー(AGI)を用いて0.5〜3.5分、7〜10分、20〜23分、および25〜28分の時点で3分間エアロゾルを捕捉し、ここでAGIのリザーバーは20mLのTEを保持していた。エアロゾルの排出量はおおよそ0.3mL分
−1であった。同時に、15μLの試料を噴霧器のリザーバーから取り出した。
【0069】
DNAの長さの噴霧における生存への作用の残りの研究のため、15μLの分割量を、噴霧の前およびDNA溶液が使い果たされた時点である30分までの噴霧の間を通した合間に噴霧器のリザーバーから取り出した。早期に起きた劇的な変化のため、分割量は最初1または2分間隔で取り出された。
【0070】
超音波処理のため、エッペンドルフチューブ中の1mLのTE中1ngμL
−1のDNAを超音波処理の間氷上で保温し、1/8”プローブ超音波処理器を7ワット(2乗平均の平方根)の電力出力に相当する“5”に設定した。15μLの分割量を、超音波処理の前および超音波処理の間のデータに示した時点において取り出した。全てのDNA剪断実験は最低でも3回別々に行った。DNAを、1,000bpを超える長さに関して1%アガロースゲル、または1,000bp未満のDNAに関して5%アクリルアミド(29:1アクリルアミド:ビス−アクリルアミド)ゲル上で、40mMトリス−アセテートおよび2mM EDTA中でゲル電気泳動により分析した。全てのゲルに125ボルトを2時間かけ、SYBR(登録商標)Gold(Invitrogen,カリフォルニア州ハーキュリーズ)で20分間染色し、PC Imageを用いて可視化した。Total Labを利用して残存するDNAを定量化した。
【0071】
結果
DNAの長さの剪断に対する耐性への作用
細いゲージの針を通る通過、HPLCポンプを通る循環、噴霧、および超音波処理を含む、流体力学的剪断を生じる多数のプロセスが存在し;これらの方法は配列決定のため、またはショットガンクローニング(Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2006)のためのDNA断片を生成するために日常的に用いられている。噴霧は、その再現性および臨床的適切さのため、最初に選択される。DNAベクターが噴霧からの剪断力に耐えた場合、超音波処理が用いられ、これはそれが噴霧器よりもはるかに高い剪断力をより長い時間の間生じさせることができる一方で再現性を維持しているためである。異なるDNAの間の比較を容易にするためにSurvival
50という用語が用いられ、これはそのDNAの半分を分解するのに必要な時間を示す。カッコ中の用語(Neb)および(Son)は、それぞれ噴霧および超音波処理を指す。下記で記述するように得られたそれぞれのDNAに関するSurvival
50の値も表1に列挙する。
【0072】
DNA試料にCollison様ジェット噴霧器(May K.R. (1973) Collison噴霧器。
説明、性能および適用 J. of Aerosol Science, Vol. 4, #3, p. 235)において噴霧を施
した。その噴霧器は以下のように作動する:高圧の空気がノズル中の小さな開口部を通してポンプで押し出される。ノズルおよびリザーバーの間の圧力の差が療法溶液をリザーバ
ーから吸い出して高速のジェット噴流にし、そうして15〜500μmの大きさの一次液滴を生成する(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。この一次液滴形成の間には最小限のDNAの分解しか起こらない(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990);しかし、その液滴は大きすぎて肺の中に深く浸透することができない(Eberl et al. 2001, Eur J Nucl Med. 2001 Sep;28(9): 1365-72)。阻流板(baffle)内のプラスチックの錐体がその一次液滴を壊して肺の中に深く浸透することができるより小さな(1〜10μm)液滴にする(Bennet et al. 2002, Journal of Aerosol Medicine, 15, 179-188)。DNAの剪断は、ほぼ排他的にその阻流板内のプラスチックの錐体との衝突の間に起こる(Lentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。そのより小さな液滴は阻流板領域を逃れてエアロゾルの形で噴霧器を出る。取り外し可能な蓋がリザーバーからの試料採取を可能にする。
【0073】
その小さい液滴のごく小さな割合が気流により吸い口から運び出され;その液滴の大部分は凝縮されてリザーバー中に戻され、そこでそれらはノズルを通って再循環する。結果として、リザーバー中のDNAは時間が経つにつれてますます剪断された状態になる。
【0074】
その凝縮およびエアロゾル化が急速であるため、リザーバー中のDNAの状態はエアロゾル中のDNAの状態と同じである(Knight et al, 1988, J of Infect Diseases, 158(2):443-8)。試料をリザーバーから集めることはエアロゾルを捕捉することよりも容易であり、面倒でなく、そのためエアロゾルからの試料とリザーバーからの試料を比較した(データは示していない)。実際、両方の部位からのDNAの分解は、この研究において試験された長さのスペクトルの両方の末端に相当するDNAである3,869bpのプラスミドまたは385bpのminivectorに関して同じであった。従って、残りの噴霧実験において、試料をリザーバーから吸い出した。
【0075】
281から5,302bpまでに及ぶスーパーコイル状DNAに噴霧を施し、それらの生存をゲル電気泳動により定量化した。DNAの剪断の程度を、時間の経過に伴う完全長の(無傷の)DNAベクターの消失から決定した。その結果は高度に再現性があり、DNAの濃度と無関係であった。1,873bpのDNAに関して、1μg/mlから10μg/mlまでの範囲のDNA濃度は同じ結果を与えた(データは示していない)。DNAの長さと剪断の間の関係は、強く比例していた。加えて、DNAの分解は長さに依存して異なっていた(
図8A〜B)。2,600bpを超えるスーパーコイル状DNAは急速に断片化し、擬似指数的分解を示した。1,580〜2,232bpのスーパーコイル状DNAベクターは、
図8A〜BにおけるS字の形状の曲線により理解できるように最初は剪断に抵抗を示し、次いで分解した。1,243bp以下のスーパーコイル状Minivector DNAは測定可能な程度に分解せず、水性溶媒の蒸発のため、時間と共にわずかな濃縮作用を示した。
【0076】
比較的大きいMinivector(商標)DNAであるpMV−CMV−Luc2(2,679bp)は、噴霧器において類似の大きさのプラスミドと比較可能な比較的短い生存時間を有しており、これはプラスミドとMinivector(商標)DNAの間の剪断生存時間の差は配列の違い(例えばプラスミド上の複製起点、抗生物質耐性をコードする遺伝子)のためではないことを示している。
【0077】
噴霧の間の濃縮作用は、以前に剪断に耐性である小さい薬物について観察されている。この濃縮作用は、噴霧の終わりごろにそのリザーバーの体積が小さい時により顕著になる。3,000bpを超えるDNAは噴霧の初期の間に完全に剪断される。従って、その濃縮作用はこれらの大きいDNAベクターの剪断の定量化に関しては無視することができたが、その濃縮作用は1,243bp以下のDNAに関するデータ定量に問題を引き起こした。
【0078】
1,243〜1,714bpのスーパーコイル状Minivector DNAは噴霧の後に大部分が無傷であったが、剪断された断片がそのスーパーコイル状のバンドの前を泳動するより短いDNA断片のスメアとして見ることができた(データは示していない)。プラスミドおよびこれらのより大きいminivectorからのこれらの断片の典型的な分解産物の長さは、200〜1,000bpであった。
【0079】
噴霧器において385bpのMinivectorの検出可能な剪断は無かったため、超音波処理により生じる剪断力に対するこれらのMinivectorの耐性を試験した;次いで1,243bp未満のDNAベクターに関するSurvival50(Son)を測定した。385bpのベクターのSurvival
50(Son)は28分であった。比較すると、同じ条件下での超音波処理の間の3,869bpのプラスミドのSurvival
50(Son)はわずか0.37分であり、これは従来のプラスミドベクターと比較してはるかに高いMinivectorの剪断耐性を示している。
【0080】
DNAのトポロジーの剪断力に対する耐性への作用
線状の、ニックの入った、および弛緩した形状の1,873bpのpQR499プラスミドおよび385bpのmv−H1−CCR5shRNA Minivector(商標)DNAを生成し、DNAのトポロジーの剪断力に対する耐性への作用を調べた。これらのトポロジー的形状のDNAに、(1,873bpに関して)噴霧または(385bpに関して)超音波処理を施し、それらの生存を時間に関して定量化した(
図9)。予想されたように、DNAのスーパーコイル形成は剪断力生存への強い保護作用を有していた。その線状の形状の1,873bpのDNAに関するSurvival
50(Neb)は、その負にスーパーコイル形成した形状における約22分と比較して、約4分であった。従って、スーパーコイル形成に仲介されるコンパクト化の利益がないため、線状DNAはおそらくはるかに大きな流体力学的径を有し;線状になった1,873bpのDNAははるかに大きな(3,000bpを超える)スーパーコイル状DNAプラスミドの剪断と同様に剪断された。ニックの入った(開環状)DNAは線状よりも約4倍長く持ちこたえ、これは環状であることがいかに流体力学的径を低減させるかを反映している。予め存在しているニックはDNAベクターの生存を低減させるであろうと予想するかもしれない。弛緩した(両方の鎖が共有結合により閉じている)1,873bpのプラスミドは、ニックの入った1,873bpのプラスミドと同じだけ生存した。従って、ニックはそれ以上DNAを剪断力に晒さない。ニックの入った、弛緩した、またはスーパーコイル状のDNAが噴霧により剪断された際、我々は完全長の線状の形状に対応する分解産物を全く観察しなかった。これは線状のDNAの短い寿命の結果である可能性が最も高く、完全長の線状の形状になるとすぐにそれは急速に剪断され、従って蓄積しないと考えられる。負のスーパーコイル形成は、剪断生存において、ニックの入った、および弛緩した1,873bpのDNAを超える(約1.3倍)再現性のある向上をもたらした。
【0081】
385bpのminivectorに関して、DNAトポロジーへの類似の依存が観察された。線状の385bpのDNAは超音波処理の間に急速に分解した。ニックの入った385bpのDNAは、線状よりも約7倍長く生存した。スーパーコイル状の385bpのMinivector(商標)DNAはニックの入った385bpのDNAよりも約4倍長く生存し、それはスーパーコイル状の1,873bpのDNAに関して観察された向上よりも劇的な向上であった。
【0082】
論考
2,000bp未満のMinivector(商標)DNAは、噴霧器において有意に分解しない。Minivector(商標)DNAの剪断力への耐性は、主にその小さい大きさに起因するようである。噴霧器における生存時間は、そのプラスミドの大きさが3
,000bpより下まで下がると急激に増大する(
図9)。
【0083】
DNAを剪断力から保護するための努力
もろい伝統的なプラスミドDNAベクターまたはsiRNAを送達の間保護するためのビヒクル系の組成の向上において、多くの努力がなされて来ており、なされ続けている。陽イオン性薬剤、例えばポリエチレンイミン(PEI)はDNAを凝縮させ、流体力学的径を低減させ、それによりDNAを剪断から保護するのを助ける(Belur et al. 2007, Nat Protoc 2: 146-52、およびLentz et al. 2005, Aerosol Science 36, 973-990)。残念
なことに、これらのビヒクルのほとんどは細胞毒性であり、(Brunot et al. 2007. Biomaterials 28:632-40; Moghimi et al. 2005, Molecular therapy 11 : 990-5)、それがそ
れらの有用性を制限している。PEIは血液に送達された場合細胞毒性であるが、エアロゾルにより送達された場合、全身投与と比較して毒性が低い(Di Giola and Conese, 2009, Drug Des Devel Ther. 2009 Feb 6;2: 163-88)。Minivector(商標)DNAの送達に伴う剪断力に耐える能力は、凝縮剤の非存在下においてさえも、毒性のビヒクルの必要性を低減するはずである。DNAが肺において細胞の中に入ることを可能にするために、おそらくいくらかのビヒクルがなお必要であると考えられるが、これは従来のプラスミドDNAベクターに関して必要とされるであろうよりも少ないはずである。
【0084】
DNAの剪断の遺伝子療法への療法的結果
DNAの剪断の明らかな損失は、療法のために残存している無傷の生物学的に活性なベクターの量の低減である。スーパーコイル状ベクターの喪失を埋め合わせるために、送達されるDNAの用量を単純に増大させることができるであろうと主張することが可能であろう。これを行うことは2つの好ましくない結果をもたらすであろう。第1に、ベクターの量を増大させることは細胞毒性の送達ビヒクルの量の同等の増大を必要とする。第2に、大きなプラスミドDNAは壊れてより小さな線状のDNA断片になる。その短い線状のDNA断片の送達の結果、ベクターに関係する毒性がもたらされる可能性がある。剪断されたDNAの送達のさらなる結果には、DNAの分解、ならびにDNA修復および組み替え経路の誘導が含まれ、それは結果としてゲノムの不安定性をもたらす可能性がある。遊離のDNA末端は細胞中で迅速に処理される。極端な例として、DNAの末端は、特に大量に送達された場合、アポトーシスの引き金を引く可能性がある。別の極端な例として、細胞はそのDNAを修復し、ランダムな方式でライゲーションして大きなエピソーム性コンカテマーを形成する可能性がある。これはマウスの肝臓に送達された線状DNAに関して報告されており、その事例では結果として数週間持続する安定な長期導入遺伝子発現がもたらされた(Chen et al, 2001, Molecular Therapy, 3, 403-410)。DNAの剪断の結
果もたらされるランダムなDNA断片が一緒につながり、新しい毒性の遺伝子産物に関する潜在性を有する新しい配列を生成する可能性がある。
【0085】
従って、Minivector(商標)DNAが噴霧の間伝統的なプラスミドベクターよりも長い間噴霧および超音波処理を生存しただけではなく、無傷で、たとえあったとしても非常に少ないDNAの分解で生存したのは重要である。従って、短い線状のDNA断片を送達する危険性は、より小さい、スーパーコイル状DNAベクターを用いることによりかなり低減される。
【0086】
DNAの剪断に関するモデル
DNAのスーパーコイル形成は、剪断生存への相反する作用を有する可能性がある。スーパーコイル状DNAにおける捻れ歪みはその分子をより剪断を受けやすくする可能性がある一方で、コンパクト化は剪断耐性を増大させる(Lengsfeld and Anchordoquy, 2002, Journal of Pharmaceutical Sciences, 91, 1581-1589)。本明細書中のデータは、コンパクト化の有益な作用が優勢な作用であることを示している。スーパーコイル形成により提供される利点は、DNAがより大きくなるにつれて減少する。
【0087】
肺へのDNAベクターの送達
剪断力を生き延びるDNAベクターの長さを同定することは、どの送達経路であろうとも、遺伝子療法送達に関する重要な関わり合いを有する;しかし、Collison様ジェット噴霧器の使用は、我々のデータを特に肺への療法的送達に密接に関連するものにする。肺は静脈内、気管内、鼻腔内およびエアロゾル送達法により容易にアクセス可能であり、これらの経路のいずれもDNAベクター送達を適用しやすい。しかし、エアロゾルによる核酸の送達は非侵襲的であり、冒された組織に直接送達し、そして非標的器官における合併症を防ぐのを助ける可能性がある。加えて、エアロゾル送達はDNAが肺に全身投与により得ることのできる量よりもはるかに高い量で送達されることを可能にする(Bennet et al. 2002, Journal of Aerosol Medicine, 15, 179-188)。肺疾患の処置に関して、いくつかの有望な遺伝子療法標的が同定されてきた。嚢胞性線維症の処置を目標とする幾ダースもの遺伝子療法臨床試験が進行中である;しかし、残念ながらその療法は今のところ成功していない(O'Sullivan and Freedman, 2009, Lancet, 373, 1891-1904)。喘息も
RNA干渉(Duncan et al, 2008, Molecular Pharmaceutics, 5, 559-566)、shRNA(Kozma et al, 2006, J. Immunol 176: 819-26)またはマイクロRNA(miRNA)に関する疾患標的としての高い可能性を有する。
【0088】
実施例6 スーパーコイル状MINIVECTORへの化学的部分の結合
一本鎖環状DNAの鋳型を、まずニッキングエンドヌクレアーゼNt.BbvCIを用いてスーパーコイル状Minivector DNAにニックを入れることにより生成した。次いでT7エキソヌクレアーゼがそのニックにおいてニックの入った鎖が完全に消化されるまでヌクレオチドの除去を開始することができた。無傷の鎖はそのエキソヌクレアーゼが作用するための5’末端を欠いており、従って消化されないまま残った。次いで、内部に標識された、5’リン酸化されたオリゴヌクレオチドプライマーをその環状ssDNA鋳型にアニーリングさせた。続いてT4 DNAポリメラーゼを用いて2番目の鎖を再合成し、それはプライマーの位置で開始および終了し、結果としてニックの入った環状の標識されたDNAが得られた。スーパーコイルを復元するため、部分的にDNAらせんを解くインターカレーターである臭化エチジウム(EtBr)を添加した。T4 DNAリガーゼによるニックの密閉がその解けた状態を留めた(trapped)。それに続くブタノール抽出によるEtBrの除去は、負にスーパーコイル形成された標識されたMinivector DNAを生成した。そのプロセスの流れ図を
図10に示す。
【0089】
その手順の様々な段階における生成物を、5%ポリアクリルアミドゲル上でのポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。DNAをSYBR Goldで染色することにより可視化し、またはTyphoon Imager(GE Life Sciences)を用いて532nmのレーザーで励起し、蛍光Cy3標識の存在に関して検出することにより可視化した。Cy3の蛍光は、その手順の後の段階において、その標識されたプライマーのアニーリングおよび第2の鎖の再合成の後にのみ検出される。
【0090】
Cy3標識された339bpのMinivector NDAを、完成したMinivectorと無関係な標識プライマーを除去するため、50K MWカットオフ排除フィルターカラムを通して精製した後、リポソーム性形質移入試薬である“Lipofectamine 2000”によりHeLa細胞の中に形質移入した。蛍光標識を欠く同じ339bpのMinivectorを、並行する実験において陰性対照としてHeLaの中に形質移入した。形質移入の3時間後の画像は、457nmにおける青色発光チャンネルにより同定されたDAPIで染色された核を示した。Cy3標識されたDNAは、617nmにおける近赤色発光チャンネルにより同定された。画像は、Cy3標識されたDNAの存在および蛍光画像化法によりMinivector DNAを可視化する能力を確証した(データは示していない)。
【0091】
参考文献
【0092】
【化5】
【0093】
【化6】
【0094】
本明細書で引用された全ての特許、公開された出願および参考文献の教示を、そのまま援用する。
この発明は特にその実施態様に関連して示され、記述されたが、それにおいて添付された特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく形式および詳細における様々な変更がなされてよいことは当業者には理解されるであろう。