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特開2017-47704クロスメンバ用補強部材およびクロスメンバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-47704(P2017-47704A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】クロスメンバ用補強部材およびクロスメンバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170217BHJP
【FI】
   B62D25/20 G
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-170204(P2015-170204)
(22)【出願日】2015年8月31日
(11)【特許番号】特許第5896439号(P5896439)
(45)【特許公報発行日】2016年3月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社CPM(サイト上は旧名称である有限会社 中央製作所名義)が、ウェブサイトで公開されている株式会社CPMのブログにて、篠原誠が発明したクロスメンバ用補強部材について6月3日より複数回に亘って公開した。また、篠原誠が、ウェブサイトで公開されている自身のフェイスブックにて、自らが発明したクロスメンバ用補強部材について6月2日より複数回に亘って公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】513194241
【氏名又は名称】株式会社CPM
(74)【代理人】
【識別番号】100154335
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀彦
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB14
3D203CA04
3D203CA08
3D203CB09
3D203CB22
3D203CB33
3D203DA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】好みに応じて走行時の乗り心地を調整できるクロスメンバ用補強部材を提供する。
【解決手段】クロスメンバ20は、車体10の下部の前後方向中央部において、車幅方向中央のフレーム11に、消音器12およびこれより伸びる排気管13と接触しないように、フレーム11の車幅方向両端部に形成された一対のフランジ16a,16b間に排気管13を跨いで固定される。このクロスメンバ20は、車体10への取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなす貫通孔23a,23bおよび24a,24bが形成されることにより、その間に相対的に幅が狭くなった領域を有する。クロスメンバ用補強部材30は、クロスメンバ20の幅が狭くなった当該領域に取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定されるクロスメンバであり、
車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められ、かつ
前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有するものの補強部材であって、
前記クロスメンバの相対的に幅が狭くなった前記領域に取り付けられることを特徴とするクロスメンバ用補強部材。
【請求項2】
交差状の対称形をなし、形状および幅が前記貫通孔の間の相対的に幅が狭くなった前記領域に合わせて形成される請求項1に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項3】
前記クロスメンバは、二対以上の前記貫通孔が形成される請求項1または2に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項4】
前記クロスメンバの前記貫通孔は、真円形以外の対称形をなす請求項1から3のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項5】
前記クロスメンバの前記貫通孔は二対形成され、いずれも三角形状または台形状であって、前記クロスメンバの平面視で左右または上下方向の中心軸を挟んで対向し、かつ三角形状の前記貫通孔は頂点の一つが、台形状の前記貫通孔は短辺が、それぞれ前記クロスメンバの中心側に位置する請求項4に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項6】
前記クロスメンバはアルミニウム材からなる請求項1から5のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項7】
車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定され、
車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められるクロスメンバであって、
前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有し、この領域に請求項1から6のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材が取り付けられたことを特徴とするクロスメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部の前後方向中央部に設けられるクロスメンバに対する補強部材およびこの補強部材が取り付けられたクロスメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車では、車体の安定性を向上させるために、中央部に、既存品と交換して、あるいは新たにクロスメンバを取り付けることがある。
【0003】
本発明者は、そのようなクロスメンバとして、全体形状を含めて左右対称をなすように締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成され、これにより車体前後での一体感を保ちつつ乗り心地の向上を図るとともに、多様な車種で適用可能なものを考案している(特許文献1参照)。
【0004】
この考案においては、たとえば当該文献の図2(b)に示すように、締結部材の挿入孔とは別に、真円形でない形状で二対以上の貫通孔が形成された形態がある。この形態によれば、広い空間面積の貫通孔が多数形成されることにより、クロスメンバの意匠性の向上や軽量化を図れるのみならず、走行状態に応じた柔軟な揺れを発生させ、より快適な乗り心地を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3191588号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、空間面積を広くした上述のクロスメンバにおいては、好みに応じて、上述したような高い柔軟性と、揺れが少なくハンドリングや高速走行時の安定感が増すような高い安定性とで、走行時の乗り心地を調整できると、より使用者の便宜に資することとなる。
【0007】
そのような調整が可能なクロスメンバ用の部材は、まだ知られておらず開発が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、好みに応じて走行時の乗り心地を調整できるクロスメンバ用補強部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。つまり、左右対称をなすように形成された締結部材の挿入を意図しない貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有するクロスメンバの幅が狭くなった当該領域にクロスメンバ用補強部材を取り付けることで、好みに応じて走行時の乗り心地を調整できるという知見である。
【0010】
本発明は、この本発明者の知見に基づき、上述の課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0011】
<1> 車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定されるクロスメンバであり、車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められ、かつ
前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有するものの補強部材であって、前記クロスメンバの相対的に幅が狭くなった前記領域に取り付けられることを特徴とするクロスメンバ用補強部材である。
【0012】
<2> 交差状の対称形をなし、形状および幅が前記貫通孔の間の相対的に幅が狭くなった前記領域に合わせて形成される<1>に記載のクロスメンバ用補強部材である。
【0013】
<3> 前記クロスメンバは、二対以上の前記貫通孔が形成される<1>または<2>に記載のクロスメンバ用補強部材である。
【0014】
<4> 前記クロスメンバの前記貫通孔は、真円形以外の対称形をなす<1>から<3>のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材である。
【0015】
<5> 前記クロスメンバの前記貫通孔は二対形成され、いずれも三角形状または台形状であって、前記クロスメンバの平面視で左右または上下方向の中心軸を挟んで対向し、かつ三角形状の前記貫通孔は頂点の一つが、台形状の前記貫通孔は短辺が、それぞれ前記クロスメンバの中心側に位置する<4>に記載のクロスメンバ用補強部材である。
【0016】
<6> 前記クロスメンバはアルミニウム材からなる<1>から<5>のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材である。
【0017】
<7> 車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定され、車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められるクロスメンバであって、前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有し、この領域に<1>から<6>のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材が取り付けられたことを特徴とするクロスメンバである。
【0018】
なお、本発明において「消音器」は、原則として、車体後方に備えられたメインマフラーとしての消音器でなく、車体下部略中央に備えられたサブマフラーとしての消音器を指すこととする。
【0019】
また、本発明において「相対的に幅が狭くなった」とは、たとえばクロスメンバの短手方向の長さに対して半分以下、ないしは1/3以下程度と言ったように、目視により感覚的に狭いと判断される距離であればよく、具体的な距離を言及する意図ではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明のクロスメンバ用補強部材は、左右対称をなすように形成された締結部材の挿入を意図しない貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有するクロスメンバの幅が狭くなった当該領域に取り付けられるので、幅が狭くなった領域の剛性を補強してクロスメンバの安定性の向上を図ることができる。
【0021】
これにより、クロスメンバ用補強部材を取り付けた際には揺れが少なく高い安定性が、取り外した際にはクロスメンバの貫通孔に基づく高い柔軟性が、それぞれ得られるように、走行時の乗り心地を調整することが可能となる。
【0022】
また、本発明のクロスメンバは、締結部材の挿入を意図しない貫通孔の間の相対的に幅が狭くなった領域に、本発明のクロスメンバ用補強部材が取り付けられるので、クロスメンバ用補強部材の取付けにより、幅が狭くなった領域の剛性を補強して安定性の向上を図ることができる。
【0023】
これにより、クロスメンバ用補強部材を取り付けた際には揺れが少なく高い安定性が、取り外した際には貫通孔に基づく高い柔軟性が、それぞれ得られるように、走行時の乗り心地を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一形態のクロスメンバの車体下部への取付状態を示す図である。
図2図2は、本発明のクロスメンバ用補強部材の取付対象となるクロスメンバの一形態を平面から見た図である。
図3図3は、本発明のクロスメンバ用補強部材の図2のクロスメンバへの取付状態を平面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全図において同一機能を有するものは原則として同一の名称ないし符号を付すようにし、その繰り返しの説明は可能な限り省略するようにしている。図1は本発明の一形態のクロスメンバの車体下部への取付状態を示す図、図2は本発明のクロスメンバ用補強部材の取付対象となるクロスメンバの一形態を平面から見た図、図3はそのクロスメンバ用補強部材の図2のクロスメンバへの取付状態を平面から見た図である。
【0026】
図1に示すように、車体10の下部には、車幅方向中央に車体10の前後方向に沿ってフレーム11が嵌め込むようにして取り付けられている。さらに、このフレーム11の車幅方向中央部には、図示の例では2本の消音器(サブマフラー)12と、それぞれ車体後方に伸びる排気管13が、フレーム11に囲まれて配置されている。消音器12および排気管13の上方には、これらの収容部14がフレーム11と一体的に形成されており、ここに消音器12および排気管13が収容されて衝撃から保護されつつ、これらの部材より生じ得る振動が車体10に伝わりにくいようになっている。なお、図1においては、上方が車体10のフロント側、下方がリヤ側となっている。
【0027】
フレーム11の車幅方向両端部には、一対のフランジ16a,16bが形成されており、このフランジ16a,16b間にクロスメンバ20が、消音器12および排気管13と接触しないように、これらを跨いで、締結部材としてのボルト17により取り付けられている。フランジ16a,16bは、図示の例では、フレーム11の両端からの所定域に形成されているが、車種によっては、正確にフレームの両端から形成されない場合もあるので、相対的にフレームの両端部であればよい。
【0028】
また、図1に示した車種は、本発明のクロスメンバを取り付ける場合、既設品を取り外して交換するタイプであり、フレーム11に沿ってクロスメンバ20の取付位置まで伸びる一対の補助取付部材(ブレース)18を備えている。クロスメンバ20は、この補助取付部材18から挿入されるボルト19により、補助取付部材18とフランジ16a,16bとに挟まれて堅く取り付けられている。
【0029】
図2に特に示すように、クロスメンバ20は、平面視、つまり車体取付時の前後方向を軸とした場合の左右および上下(前後)の双方に、対称の横長の矩形状をなす部材であり、四隅の角部が取扱いの便宜や意匠効果を高める目的等のために円弧状に切り欠かれている。なお、車体の既設要素との位置関係によっては、左右のみ対称の形状であってもよい。
【0030】
このクロスメンバ20は、上述したように、既設のクロスメンバと交換して使用されるタイプであり、それを取り付けるためにフランジ16a,16bに形成されたボルトを挿入する孔の位置(図では見えなくなっている)に合わせて2箇所にボルト挿通孔21a,21bが形成されている。同様に、補助取付部材18から挿入されるボルト19を挿通する4箇所のボルト挿通孔22a〜22dが、補助取付部材18の孔の位置に合わせて形成されている。つまり、クロスメンバ20の前後方向長さLは、少なくとも補助取付部材18の同じ側における孔の位置間よりは長く形成される。なお、図示の例では、ボルト挿通孔21a,21bには、座グリ加工がなされている。
【0031】
クロスメンバ20の幅Wは、最も強度が高くなるように、該当する車種において取付可能な範囲で最も広く形成されている。なお、フランジ16a,16bの外方端と一致するように形成可能な車種の場合には、そのように形成することが好ましい。
【0032】
また、図1の例では、クロスメンバ20は、前後方向長さLが前述の2つのボルト挿通孔21a,21bの位置間の長さを若干超える程度であれば、前後方向両端から車幅方向に直線状に伸ばしても、車体10に既設されている他要素と接触するおそれがないので、切り欠くことなく矩形状に形成されている。つまり、クロスメンバ20は、既設要素の機能を阻害することなく、最も高い剛性を得られるように形成されている。
【0033】
クロスメンバ20の面には、少なくともボルト挿通孔21a,21bや22a〜22dに比して顕著に大きな空間面積の4つの貫通孔23a,23bおよび24a,24bが、左右または前後で対称形となるように形成されている。
【0034】
これらのうち、貫通孔23a,23bは左右対称の台形状(等脚台形)、貫通孔24a,24bは前後対称の三角形状であって、貫通孔23a,23bはクロスメンバ20の左右方向の中心軸LR、貫通孔24a,24bは同上下方向の中心軸UDを挟んで、それぞれ対向するように形成されている。
【0035】
また、貫通孔23a,23bは、その短辺が、貫通孔24a,24bは、三つの頂点のうちの一つが、それぞれ中心側に位置するようになっている。
【0036】
台形状の貫通孔23a,23bは、車体の幅が広く、それに合わせてクロスメンバの幅を拡げる必要があるときは、たとえば三角形状等に適宜形状を変更してもよい。なお、貫通孔23a,23bおよび24a,24bは、クロスメンバ20の全体形状と同様に、角部が円弧状に形成されている。
【0037】
これらの貫通孔23a,23bおよび24a,24bを形成しても車体10への取付時に部材が弛まないようにするには、ある程度の厚さを有する必要があり、既設品の倍程度、数値としては車種にもよるが6mm以上とすることが好ましい。つまり、貫通孔23a,23bおよび24a,24bを形成することで部材を必然的に既設品よりも厚く形成することとなり、結果として部材の強度を高くして車体の安定性を向上させることができる。
【0038】
このように、真円形でない形状で一対のみならず二対以上の貫通孔を形成することにより、クロスメンバの意匠性の向上や軽量化が図れるのみならず、真円形に形成した場合よりも広い空間面積の貫通孔とすることができる。これを二対以上の多数形成することで、不規則な揺れを走行時に発生させることができ、その際の柔軟性が向上し、より快適な乗り心地を提供可能となる効果がある。
【0039】
なお、クロスメンバ20の材料としては、ある程度の強度がある金属であれば特に制限はないが、通常はアルミニウムかステンレス鋼を主成分とし、アルミニウムが特に好ましい。
【0040】
ここで、クロスメンバ20は、貫通孔23a,23bおよび24a,24bの形成により、貫通孔23a,23bと貫通孔24aまたは24bの間や貫通孔23a,23bの間といった、中心部に位置する貫通孔間の肉厚部分が、相対的に幅が狭くなった領域25となる。この領域25は、自動車の走行時に、クロスメンバ20において剛性(一般にねじり剛性)が弱まる領域となる。クロスメンバ20自体は高強度で安定性が高いものであるため、この領域25においても既設品よりは剛性が強く、性能上問題ないのみならず、走行時に高い柔軟性のある乗り心地とするには、むしろ好適である。しかしながら、好みや、たとえば業務や競技等の目的に応じて、安定性の高い乗り心地が望まれる場合がある。
【0041】
そこで、この領域25を補強し、安定性の向上を図れるようにすべく、相対的に幅が狭くなった領域25に、図3に特に示すように、本発明のクロスメンバ用補強部材(以下、単に「補強部材」という。)30が取り付けられる。
【0042】
補強部材30は、交差状の形状であって、平面視で左右および前後方向に対称形をなしている。クロスメンバ20の相対的に幅が狭くなった領域25の形状および幅に合わさるように、取付時に貫通孔23a,23bと貫通孔24aまたは24bの間、つまり形が異なる貫通孔間の領域は傾斜状に、貫通孔23a,23b間は水平状に形成されている。
【0043】
補強部材30の傾斜状部分の端部となる4か所と、水平状の部分の両端との計6か所には、クロスメンバ20への取付けのためのボルト挿通孔31a〜31fが形成されている。一方、図2に示すように、クロスメンバ20にも、ボルト挿通孔31a〜31fに対応するように、ボルト挿通孔26a〜26fが形成されており、補強部材30のボルト挿通孔31a〜31fより、クロスメンバ20のボルト挿通孔26a〜26fへボルト32を挿入して、補強部材30がクロスメンバ20に取り付けられる。
【0044】
補強部材30は、意匠性を高めるために、図示のようにクロスメンバ20と異なる色を付すことが好ましい。
【0045】
補強部材30の厚さは、特に制限はないが、これ自体の厚さによりクロスメンバ20に負荷をかけないようにするためには、通常クロスメンバ20より薄いことが好ましく、安定性の向上効果を考慮すると、クロスメンバ20の厚さに対してたとえば3/4程度であることが特に好ましい。
【0046】
補強部材30の材料としては、クロスメンバ20の剛性の補強機能を十分に発揮でき、かつ軽量なものであれば特に制限はないが、コストを考慮すると、クロスメンバ20と同じものが好ましい。また、チタンや炭素繊維を主材料とすることも好ましい。
【0047】
なお、本発明に関するクロスメンバは、上述のクロスメンバ20に限らず、貫通孔を含めて左右対称をなす基本形状は保ちつつ、車種の構造に応じて様々な形状に変更して適用可能なものである(特許文献1参照)。したがって、本発明の補強部材も、上述の形態に限らず、補強部材を取り付けるクロスメンバの形状に応じて適宜変更してよいことは言うまでもない。
【0048】
たとえば、クロスメンバの貫通孔の形状は、上述のように、台形状や三角形状でなくても、楕円形等、形成される空間面積を広くとることができ、相対的に幅の狭い領域を有するものであれば、その領域において広く本発明の補強部材を適用可能である。
【0049】
また、クロスメンバに形成された貫通孔は一対のみであっても、取り付ける車体の既設要素との接触を避けるために、貫通孔の間に相対的に幅の狭い領域を有するものや、貫通孔の形状が真円形であっても二対以上形成される等により同様な領域を有するものであれば、本発明の補強部材を適用可能である。
【0050】
このように、本発明の補強部材は、柔軟な乗り心地を得るために、対称形をなす空間面積が広い貫通孔が形成され、中心部に位置する貫通孔の間に幅が狭くなった領域を有するクロスメンバにおいて、当該領域に取り付けられるので、この領域の剛性を補強し、クロスメンバが取り付けられる車体において、安定性を向上させることができる。つまり、ハンドリングや高速走行の際の安定性を高めるためには本発明の補強部材を取り付ける一方、走行時の柔軟性を高めるためには当該補強部材を外すことで、乗り心地を調整可能となる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明のクロスメンバおよび補強部材は、上記実施の形態に限定されず、その範囲内で想定されるあらゆる技術的思想を含んでもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 車体
11 フレーム
12 消音器(サブマフラー)
13 排気管
14 収容部
16a,16b フランジ
17,19,32 ボルト
18 補助取付部材(ブレース)
20 クロスメンバ
21a,21b,22a〜22d,26a〜26f,31a〜31f ボルト挿通孔
23a,23b,24a,24b 貫通孔
25 幅が狭くなった領域
30 クロスメンバ用補強部材
L クロスメンバの前後方向長さ
W クロスメンバの幅
LR クロスメンバの左右方向の中心軸
YD クロスメンバの上下方向の中心軸
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2015年12月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定され、
車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように、走行時の前記車体の乗り心地の向上を目的とした前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められ、かつ
前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有するクロスメンバに用いられる補強部材であって、
前記クロスメンバの相対的に幅が狭くなった前記領域に取り付けられることを特徴とするクロスメンバ用補強部材。
【請求項2】
交差状の対称形をなし、形状および幅が前記貫通孔の間の相対的に幅が狭くなった前記領域に合わせて形成される請求項1に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項3】
前記クロスメンバは、二対以上の前記貫通孔が形成される請求項1または2に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項4】
前記クロスメンバの前記貫通孔は、真円形以外の対称形をなす請求項1から3のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項5】
前記クロスメンバの前記貫通孔は二対形成され、いずれも三角形状または台形状であって、前記クロスメンバの平面視で左右または上下方向の中心軸を挟んで対向し、かつ三角形状の前記貫通孔は頂点の一つが、台形状の前記貫通孔は短辺が、それぞれ前記クロスメンバの中心側に位置する請求項4に記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項6】
前記クロスメンバはアルミニウム材からなる請求項1から5のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材。
【請求項7】
車体下部の前後方向中央部において、消音器およびこれより前後方向のいずれかに伸びる排気管と接触しないように該排気管を跨いで、前記消音器および前記排気管を囲うフレームの車幅方向両端部に形成された一対のフランジに締結部材により固定され、
車体取付時の前後方向を軸とした場合に全体形状を含めて左右対称をなすように、走行時の前記車体の乗り心地の向上を目的とした前記締結部材の挿入を意図しない貫通孔が形成されるとともに、前記フランジに予め形成された前記締結部材を挿入できる孔の位置に基づいて形状が定められるクロスメンバであって、
前記貫通孔の間に相対的に幅が狭くなった領域を有し、この領域に請求項1から6のいずれかに記載のクロスメンバ用補強部材が取り付けられたことを特徴とするクロスメンバ。