【解決手段】車両接続コネクタ11は、車両に搭載された故障診断コネクタに接続される。機器接続コネクタ12〜19は、外部機器に接続される。処理部31は、機器接続コネクタ12〜19を介して外部機器からリクエストを受信し、車両接続コネクタ11を介して車両に対してリクエストを送信し、車両接続コネクタ11を介して車両から車両情報を受信し、機器接続コネクタ12〜19を介して外部機器に対して車両情報を送信する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記外部機器には、様々な機能を有するものがあり、機能の異なる複数の外部機器を一台の車両に接続したいという要望がある。しかし、一台の車両には、通常、前記故障診断コネクタが一つしか設けられていない。そこで、例えば、前記故障診断コネクタに接続される車両接続コネクタと、外部機器に接続される複数の機器接続コネクタとを備え、前記車両接続コネクタと前記複数の機器接続コネクタとが物理的に結線された分岐コネクタを使って、前記故障診断コネクタを複数に分岐させることが考えられる。
しかし、実験により、このような分岐コネクタは、正常に機能しない場合があることが判明した。
その原因について考察するに、ECU側は、前記故障診断コネクタに複数の機器が接続されることを想定していない。同様に、外部機器側も、前記故障診断コネクタに直接接続されることを想定しているため、他の外部機器が接続されることを想定していない。このため、例えば、複数の外部機器が同時にリクエストを送出すると、衝突が発生し、ECUがリクエストを正常に受信できない。また、1つの外部機器と前記ECUとが通信中に、他の外部機器がリクエストを送信すると、通常の通信プロトコルでは想定されていない通信が通信シーケンスに割り込むことになるので、通信エラーとなり、リクエストが正常に処理されない場合がある。更に、前記外部機器が前記故障診断コネクタから供給される電力によって動作する場合、複数の外部機器を接続すると電源容量を超過する場合がある。
本発明は、一台の車両に複数の外部機器を接続し、前記故障診断コネクタに前記外部機器が直接接続された場合と同様に、前記外部機器を正常に機能させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る分岐コネクタは、車両に搭載された故障診断コネクタに接続される車両接続コネクタと、外部機器に接続される複数の機器接続コネクタと、前記機器接続コネクタを介して前記外部機器からリクエストを受信し、前記車両接続コネクタを介して前記車両に対してリクエストを送信し、前記車両接続コネクタを介して前記車両から車両情報を受信し、前記機器接続コネクタを介して前記外部機器に対して車両情報を送信する処理部とを備える。
前記処理部は、第一の機器接続コネクタに接続された第一の外部機器から受信したリクエストで要求された車両情報を要求する第一のリクエストを前記車両に対して送信したのち、第二の機器接続コネクタに接続された第二の外部機器から第二のリクエストを受信した場合、前記第一のリクエストに対する応答を前記車両から受信したのち、前記第二のリクエストで要求された車両情報を要求するリクエストを前記車両に対して送信することが好ましい。
前記処理部は、第一の機器接続コネクタに接続された第一の外部機器から受信したリクエストで要求された車両情報を要求する第一のリクエストを前記車両に対して送信したのち、前記第一のリクエストに対する応答を前記車両から受信する前に、第二の機器接続コネクタに接続された第二の外部機器から第二のリクエストを受信した場合、前記第二の外部機器に対して保留応答を送信することが好ましい。
前記分岐コネクタは、前記処理部が前記車両から受信した前記車両情報を記憶する記憶部を備え、前記処理部は、前記外部機器から受信したリクエストで要求された車両情報を前記記憶部が記憶している場合、前記車両情報を要求するリクエストを前記車両に対して送信することなく、前記記憶部が記憶している車両情報を前記外部機器に対して送信することが好ましい。
前記処理部は、前記外部機器から受信したリクエストで要求された車両情報を前記記憶部が記憶している場合、前記車両から前記車両情報を受信してからの経過時間に基づいて前記車両情報が新しいか否かを判定し、前記車両情報が新しいと判定した場合のみ、前記車両情報を要求するリクエストを前記車両に対して送信することなく、前記記憶部が記憶している車両情報を前記外部機器に対して送信することが好ましい。
前記処理部は、前記機器接続コネクタに接続された外部機器が故障診断機であるか否かを判定し、前記外部機器が故障診断機であると判定した場合、他の機器接続コネクタに接続した外部機器を無効化することが好ましい。
前記複数の機器接続コネクタのうちのいずれか一つは、故障診断機用コネクタであり、前記処理部は、前記故障診断機用コネクタに接続された外部機器が故障診断機であると判定することが好ましい。
前記分岐コネクタは、前記車両接続コネクタを介して前記車両から電力の供給を受け、供給された電力を前記機器接続コネクタに接続された外部機器及び前記処理部に供給する電源部を備え、前記電源部は、前記外部機器及び前記処理部に供給する電力の合計が所定の上限値を超えた場合に、前記外部機器のうち少なくともいずれかに対する電力供給を停止することが好ましい。
本発明に係る車両情報取得装置は、車両に搭載された故障診断コネクタに接続される車両接続コネクタと、外部機器に接続される機器接続コネクタと、車両情報を処理する車両情報処理部と、前記機器接続コネクタに接続された前記外部機器及び前記車両情報処理部からリクエストを受信し、前記車両接続コネクタを介して前記車両に対してリクエストを送信し、前記車両接続コネクタを介して前記車両から車両情報を受信し、前記機器接続コネクタに接続された前記外部機器及び前記車両情報処理部に対して車両情報を送信する処理部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る分岐コネクタによれば、処理部が外部機器からのリクエストを受信し、外部機器に代わって車両にリクエストを送信して車両から車両情報を受信し、外部機器に対して車両情報を送信するので、リクエストの衝突や通信エラーの発生を防ぎ、外部機器を正常に機能させることができる。
先のリクエストに対する車両からの応答を受信してから、後のリクエストを送信すれば、通信プロトコル違反によるエラーの発生を防ぐことができる。
先のリクエストに対する応答を待っている間に、後のリクエストを送信した外部機器に対して保留応答を送信すれば、タイムアウトによる外部機器の誤動作を防ぐことができる。
車両にリクエストを送信することなく、記憶部が記憶した車両情報を外部機器に送信すれば、車両の処理能力を超える大量のリクエストが車両に送信されるのを防ぐことができる。
記憶部が記憶した車両情報が新しい場合のみ、車両にリクエストを送信することなく、記憶部が記憶した車両情報を外部機器に送信すれば、鮮度の落ちた車両情報を外部機器が取得するのを防ぐことができる。
故障診断機が接続された場合に他の外部機器を無効化すれば、外部機器により故障診断機が悪影響を受けるのを防ぐことができる。
故障診断機用コネクタに接続された外部機器を故障診断機であると判定すれば、外部機器が故障診断機であるか否かを容易に判定することができる。
外部機器に供給する電力の合計が所定の上限値を超えた場合に、いずれかの外部機器に対する電力供給を停止すれば、残りの外部機器を正常に機能させることができる。
本発明に係る車両情報取得装置によれば、車両情報取得装置を故障診断コネクタに接続した状態で、他の外部機器を接続することができ、更に、車両情報取得装置や外部機器を正常に機能させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1:分岐コネクタ10>
まず、
図1を参照して、分岐コネクタ10の構成の一例を説明する。
前記分岐コネクタ10は、自動車などの車両に搭載されたOBDIIコネクタなどの故障診断コネクタに接続され、前記故障診断コネクタに直接接続されるべく設計された外部機器を接続できるコネクタを増設するものである。前記分岐コネクタ10は、例えば、以下の構成要素を備える。
【0009】
(1)車両接続コネクタ11:前記故障診断コネクタに嵌合して係止されるコネクタである。前記故障診断コネクタに接続されたとき、前記故障診断コネクタ内に設けられた複数のコンタクトとそれぞれ接触して電気接続される複数のコンタクトを備える。
(2)機器接続コネクタ12〜19:前記故障診断コネクタと同じ形状のコネクタである。前記外部機器に備えられた前記故障診断コネクタに接続するためのコネクタと嵌合して係止される。前記外部機器の前記コネクタに接続されたとき、前記外部機器の前記コネクタ内に設けられた複数のコンタクトとそれぞれ接触して電気接続される複数のコンタクトを備える。なお、機器接続コネクタの数は、二個以上であれば、いくつでもよい。
(3)通信部21:前記車両接続コネクタ11を介して前記車両の前記ECUなどと通信する。例えば、車両情報を要求するリクエストを前記ECUに対して送信し、送信した前記リクエストに対する応答として前記ECUから車両情報を受信する。
(4)通信部22〜29:前記機器接続コネクタ12〜19と一対一に対応し、前記機器接続コネクタ12〜19を介して前記外部機器と通信する。例えば、車両情報を要求するリクエストを前記外部機器から受信し、受信した前記リクエストに対する応答として前記外部機器に対して車両情報を送信する。
(5)処理部31:例えばマイクロコンピュータである。前記通信部22〜29が受信したリクエストに基づいて、前記車両に問い合わせるべき車両情報を判定し、判定した車両情報を要求するリクエストを前記通信部21に通知(送信)する。また、前記通信部21が受信した車両情報に基づいて、前記外部機器から前記通信部22〜29が受信したリクエストに対する応答を生成し、生成した応答を前記通信部22〜29に通知(送信)する。
(6)記憶部32:例えばマイクロコンピュータに内蔵されたランダムアクセスメモリ(RAM)である。前記通信部21が受信した車両情報などを記憶する。
【0010】
(7)電源部33:前記車両接続コネクタ11を介して前記車両から供給される電力を、前記機器接続コネクタ12〜19に接続された前記外部機器や前記処理部31などに供給する。なお、前記電源部33は、前記通信部21〜29や前記記憶部32などにも電力を供給する構成であってもよい。
例えば、前記電源部33は、前記車両接続コネクタ11の16番ピンに接続された配線と、4番ピン又は5番ピンに接続された配線とに接続されている。前記故障診断コネクタの16番ピン、4番ピン、及び5番ピンは、それぞれ、前記車両に搭載されたバッテリーの陽極、信号用グランド、及び車体グランドに接続されている。これにより、前記電源部33は、前記バッテリーから直接(すなわち、イグニッションキーを介さずに)電力の供給を受けることができる。したがって、前記イグニッションキーがオフの場合であっても、前記処理部31や前記外部機器を作動させることができる。なお、前記信号用グランドに流せる電流は、通常、上限値(例えば1.5A(アンペア))が定められているのに対し、前記車体グランドに流せる電流は、そのような上限値が存在しないか、又は存在しても前記信号用グランドに流せる電流の上限値よりは遥かに大きい値である。したがって、前記車両からできるだけ大きな電力の供給を受けるためには、前記電源部33が、前記4番ピンではなく前記5番ピンに、又は前記4番ピン及び前記5番ピンの両方に接続されていることが好ましい。
また、前記電源部33は、例えば、前記機器接続コネクタ12〜19の16番ピンに接続された配線と、4番ピン又は5番ピンに接続された配線とに接続されている。なお、前記外部機器は、16番ピンと4番ピンとから電力の供給を受ける構成となっている場合が多い。このため、前記電源部33は、前記5番ピンではなく前記4番ピンに、又は前記4番ピン及び前記5番ピンの両方に接続されていることが好ましい。
【0011】
前記外部機器は、入力最大電流が所定の上限値(例えば1.5A)以内になるよう設計されている。したがって、前記機器接続コネクタ12〜19に接続される外部機器が一つだけの場合、処理部31での消費電力と合わせても、前記車両から供給される電力で十分に賄うことができる。しかし、前記機器接続コネクタ12〜19に二つ以上の外部機器が接続されている場合、前記車両から供給される電力だけでは賄い切れない可能性がある。
このため、電源部33は、リミッターを備え、外部機器(及び処理部31)で消費する電力の合計が所定の上限値を超えた場合に、前記外部機器のいずれかに対する電力供給を停止することが好ましい。これにより、それ以外の外部機器を正常に機能させることができる。
例えば、前記機器接続コネクタ12〜19に優先順位を設け、優先順位の低い機器接続コネクタに接続された外部機器には電力を供給しない。そうすれば、電力不足の場合に動作しない外部機器を利用者が選択することができる。
あるいは、前記機器接続コネクタ12〜19に外部機器が接続されたことを検出する検出部を設けて、前記機器接続コネクタ12〜19に外部機器が接続された順番を検知し、あとから接続された外部機器には電力を供給しない構成であってもよい。そうすれば、それまで正常に機能していた外部機器を継続して正常に機能させることができる。
あるいは、前記機器接続コネクタ12〜19に接続された外部機器の消費電力を測定する電力測定部を設け、消費電力の大きな外部機器に電力を供給しない構成であってもよい。そうすれば、なるべく多くの外部機器を正常に機能させることができる。
【0012】
次に、
図2を参照して、前記分岐コネクタ10の動作の一例を説明する。
前記分岐コネクタ10は、前記車両の前記故障診断コネクタに接続されると、前記電源部33に対して前記車両の前記バッテリーから電力が供給され、前記処理部31が動作を開始し、以下の順序で処理を実行する。
【0013】
(1)診断機接続判定41:まず、前記処理部31は、前記機器接続コネクタ12〜19に接続されている外部機器が故障診断機であるか否かを判定する。
例えば、前記機器接続コネクタ12〜19のうちの一つを故障診断機接続専用とあらかじめ定めておく。故障診断機用コネクタに外部機器が接続された場合、その外部機器が故障診断機であると判定する。他の機器接続コネクタに外部機器が接続された場合は、その外部機器が故障診断機ではないと判定する。
あるいは、前記機器接続コネクタ12〜19のうちの一つに切替スイッチを設けてもよい。前記切替スイッチがオンのとき、その機器接続コネクタは、故障診断機用コネクタとなり、そこに接続された外部機器は故障診断機であると判定する。前記切替スイッチがオフのときは、他の機器接続コネクタと同様、そこに接続された外部機器は故障診断機ではないと判定する。
なお、外部機器が故障診断機であるか否かを判定する方式は、上述した方式に限らず、他の方式であってもよい。例えば、外部機器から受信したリクエストのパターンを解析して、故障診断機であるか否かを判定してもよい。
いずれかの外部機器が故障診断機であると判定した場合、外部機器無効化61へ処理を進める。
【0014】
(2)外部機器有効化42:前記診断機接続判定41で、前記機器接続コネクタ12〜19に接続されている外部機器がいずれも故障診断機ではないと判定した場合、前記処理部31は、前記機器接続コネクタ12〜19に接続されているすべての外部機器を有効化する。なお、電力容量オーバーにより電力を供給しないこととした外部機器が存在する場合は、それ以外の外部機器のみを有効化してもよい。その後、要求受信判定45へ処理を進める。
【0015】
(3)要求受信判定45:前記処理部31は、前記通信部22〜29が外部機器からのリクエストを受信したか否かを判定する。
リクエストを受信していない場合は、応答待ち判定51に処理を進める。
【0016】
(4)代理応答可否判定46:前記要求受信判定45で、リクエストを受信したと判定した場合、前記処理部31は、受信したリクエストが要求している車両情報が、車両に問い合わせることなく応答可能なものであるか否かを判定する。例えば、車両から受信した車両情報を前記記憶部32が記憶する車両情報テーブルに、要求された車両情報が記憶されている場合に、前記処理部31は、応答可能であると判定する。これにより、複数の外部機器が同じ車両情報を要求した場合などにおいて、車両に対する問合せ回数を削減することができる。
応答可能である場合は、応答送信48へ処理を進める。
【0017】
なお、前記車両情報テーブルにその車両情報を車両から受信した時刻を記憶しておき、受信時刻からの経過時間が所定の閾値以内である場合のみ、応答可能であると判定する構成であってもよい。そうすれば、リアルタイムで変化する車両情報について、常に鮮度の高い車両情報を外部機器に提供することができる。あるいは、受信時刻からの経過時間が所定の閾値を超えた場合は、前記車両情報テーブルから前記車両情報を削除する構成であってもよい。
前記経過時間の閾値は、車両情報の種類によって異なる構成であってもよい。例えば、エンジン回転数など短期間に大きく変化する車両情報の場合は、前記閾値を小さく設定する。燃料残量など比較的ゆっくり変化する車両情報の場合は、前記経過時間の閾値を大きく設定する。そうすれば、鮮度が重要な車両情報の鮮度を保ちつつ、車両に対する問合せ回数を効果的に削減することができる。
また、外部機器に応じて、前記経過時間の閾値を変動させる構成であってもよい。例えば、一つの外部機器が同じ車両情報を要求するリクエストを送信する時間間隔を測定し、前記時間間隔が大きければ大きいほど、前記経過時間の閾値を大きくする。そうすれば、前記外部機器が前記車両情報の鮮度を重視していない場合に、車両に対する問合せ回数を効果的に削減することができる。
更に、未処理のリクエストの数に応じて、前記経過時間の閾値を変動させる構成であってもよい。例えば、未処理のリクエストの数が多ければ多いほど、前記経過時間の閾値を大きくする。そうすれば、未処理のリクエストが溜まってきたときは、車両に対する問合せ回数を更に削減することにより、処理の停滞を解消することができる。
【0018】
(5)要求受付47:前記代理応答可否判定46で、代理応答ができないと判定した場合、前記処理部31は、受信したリクエストの受付処理をする。例えば、前記リクエストで要求された車両情報、前記リクエストを受信した通信部22〜29の識別子、前記リクエストを前記通信部22〜29が受信した時刻などの情報を、前記記憶部32が前記リクエストを記憶する先入れ先出し(FIFO)方式のリクエストバッファの末尾に追加する。その後、応答待ち判定51へ処理を進める。
なお、例えば、リクエストバッファに未処理のリクエストが既に存在している場合など、受け付けたリクエストをすぐに処理できない場合には、リクエストを受け付けたがすぐには応答できないことを表す保留応答(ペンディング)を、前記通信部22〜29が、前記リクエストを送信した外部機器に対して送信する構成であってもよい。そうすれば、リクエストが受け付けられなかったと外部機器が判断してリクエストを再送信し、あるいは外部機器が誤動作するのを防ぐことができる。
【0019】
(6)応答送信48:前記処理部31は、受信したリクエストに対する応答を生成し、前記リクエストを受信した通信部22〜29に通知する。例えば、前記記憶部32が前記車両情報テーブルに記憶した車両情報に基づいて、前記リクエストで要求された車両情報を含む応答を生成する。通知先の通信部22〜29は、例えば、前記リクエストバッファに記憶した通信部22〜29の識別子に基づいて判断する。前記通信部22〜29は、通知された応答を外部機器に対して送信する。その後、応答待ち判定51へ処理を進める。
【0020】
(7)応答待ち判定51:前記処理部31は、後述する要求送信53で前記車両に対して送信したリクエストに対する応答を待っている状態か否かを判定する。前記要求送信53で送信したリクエストに対する応答をまだ受信していない場合は、応答待ちであると判定し、応答受信判定55へ処理を進める。また、まだ前記車両に対するリクエストの送信をしていない場合や、送信したリクエストに対する応答をすべて受信済である場合は、応答待ちでないと判定し、要求有無判定52へ処理を進める。
【0021】
(8)要求有無判定52:前記処理部31は、有効な外部機器のいずれかから受信し、まだ処理していないリクエストが存在するか否かを判定する。例えば、前記リクエストバッファに未処理のリクエストが残っているか否かを判定する。
未処理のリクエストが存在しない場合は、リクエスト受信を待つため、前記診断機接続判定41に処理を戻す。
【0022】
(9)要求送信53:前記要求有無判定52で、未処理のリクエストが存在すると判定した場合、前記処理部31は、未処理のリクエストのなかから一番先に受信したリクエストを一つ取得する。例えば、前記リクエストバッファから先頭のリクエストを取得する。これにより、前記リクエストを受信時刻順に処理することができる。
前記処理部31は、取得したリクエストを通信部21に通知する。通信部21は、通知されたリクエストを前記車両に対して送信する。なお、前記処理部31は、取得したリクエストをそのまま通信部21に通知するのではなく、必要な車両情報だけを要求するリクエストを新たに生成して、通信部21に通知する構成であってもよい。例えば、前記リクエストが複数の車両情報を要求するものであり、そのなかに、車両に問い合わせることなく応答可能な車両情報と、応答可能でない車両情報とが混在している場合、前記処理部31は、応答可能でない車両情報だけを要求するリクエストを生成してもよい。
その後、前記診断機接続判定41に処理を戻す。
【0023】
(10)応答受信判定55:前記応答待ち判定51で、応答待ちであると判定した場合、前記処理部31は、前記要求送信53で送信したリクエストに対する応答を通信部21が受信したか否かを判定する。まだ応答を受信していないと判定した場合、前記診断機接続判定41に処理を戻す。
なお、リクエストを送信してから所定時間が経過しても応答を受信しない場合、前記通信部21は、前記リクエストを再送信する構成であってもよい。
また、応答が複数フレームにわたる場合、前記処理部31は、すべてのフレームの受信が終わるまでは、応答を受信したと判定しない構成であってもよい。
【0024】
(11)記憶更新56:前記応答受信判定55で、応答を受信したと判定した場合、前記処理部31は、前記通信部21が受信した応答に含まれる車両情報を前記記憶部32に記憶する。例えば、前記車両情報、前記車両情報を前記通信部21が受信した時刻などを、前記記憶部32が前記車両情報テーブルに記憶する。なお、前記車両情報テーブルに前記車両情報が既に記憶されている場合、前記記憶部32は、古い車両情報を上書きして書き換える。
【0025】
(12)応答送信57:前記処理部31は、前記記憶更新56で前記記憶部32が前記車両情報を記憶したことにより応答可能となったリクエストに対する応答を生成し、前記リクエストを受信した通信部22〜29に通知する。
例えば、前記リクエストバッファから一つずつ順にリクエストを取得し、取得したリクエストで要求された車両情報が、更新された前記車両情報テーブルに記憶されている場合に、応答可能になったと判定する。これにより、前記リクエストバッファの先頭にあるリクエストだけでなく、他にも応答可能になったリクエストが存在する場合に、応答可能になったすべてのリクエストに対して応答をすることができる。
前記処理部31は、応答可能になったと判定した各リクエストに対し、前記記憶部32が前記車両情報テーブルに記憶した車両情報に基づいて、前記リクエストで要求された車両情報を含む応答を生成する。通知先の通信部22〜29は、例えば、前記リクエストバッファに記憶した通信部22〜29の識別子に基づいて判断する。前記通信部22〜29は、通知された応答を外部機器に対して送信する。
前記処理部31は、応答を送信したリクエストを、処理済とし、前記リクエストバッファから削除する。
その後、前記診断機接続判定41に処理を戻し、以上の処理を繰り返す。
【0026】
(13)外部機器無効化61:前記診断機接続判定41で、前記機器接続コネクタ12〜19に接続されている外部機器のいずれかが故障診断機であると判定した場合、前記処理部31は、故障診断機であると判定した外部機器だけを有効化し、他の外部機器を無効化する。その後、前記診断機接続判定41に処理を戻し、以上の処理を繰り返す。
【0027】
無効化の方式としては、例えば、次のようなものがある。
(ア)車両と故障診断機とを直結する。例えば、車両接続コネクタ11と、機器接続コネクタ12〜19とをスイッチを介して電気的に接続する配線を設け、故障診断機が接続された機器接続コネクタに介在させたスイッチをオンにすることにより、車両と故障診断機とを直結する。これにより、車両と故障診断機とが直接通信することができる。通信部21〜29は、車両と故障診断機との通信を邪魔しないよう、外部機器の無効化が解除されるまでの間、送受信をしない。
(イ)電源を遮断する。例えば、無効化した外部機器に対して、電源部33が電力を供給しない。これにより、無駄な電力消費を抑えることができる。
(ウ)リクエストを無視する。例えば、無効化した外部機器に対応する前記通信部22〜29の動作を停止するなどして、前記外部機器から送信されるリクエストを前記通信部22〜29が受信しない。あるいは、前記通信部22〜29が受信したリクエストを前記処理部31が処理しない。例えば、後述する要求受信判定45及び51において、前記処理部31は、無効化した外部機器からリクエストを受信しても、リクエストを受信していないものとして扱う。これにより、外部機器が内蔵電池などを電源として動作している場合であっても、外部機器を無効化することができる。あるいは、後述する要求有無判定52において、前記処理部31は、未処理のリクエストのなかに無効化した外部機器からのリクエストが存在する場合、そのリクエストをスキップする。これにより、外部機器からのリクエストが未処理のまま残っている状態で、あとから故障診断機を接続した場合でも、故障診断機以外の外部機器からのリクエストが処理されるのを防ぐことができる。
【0028】
なお、車両と故障診断機とを物理的に接続するのではなく、処理部31が、車両と故障診断機との間の通信を解釈することなくそのまま中継するリピーターとしての機能を果たすことにより、車両と故障診断機とが通信できるようにする構成であってもよい。
【0029】
故障診断機が接続された場合に、他の外部機器を無効化するのは、以下の理由による。
(ア)車両の故障診断コネクタは、本来、故障診断機を接続するためのものである。
(イ)他の外部機器が、故障診断機の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
後述するように、複数の外部機器からリクエストが送信された場合、分岐コネクタ10は、先に送信されたリクエストの処理が終わってから、次のリクエストの処理をする。すなわち、外部機器からのリクエストの処理中に他の外部機器がリクエストを送信した場合、前のリクエストの処理が終わるのを待つので、応答が遅れることになる。通常の外部機器は、応答が多少遅れても動作すると考えられる。しかし、故障診断機は、応答時間を評価の対象に含む可能性がある。その場合、応答の遅れを故障と判断する可能性がある。
そこで、故障診断機が接続された場合は、他の外部機器を無効化する。これにより、故障診断機の動作が悪影響を受けるのを防ぎ、正確な故障診断をすることができる。特に、車両と故障診断機とを直結する構成とすれば、分岐コネクタ10が介在することによる影響を排除することができる。
【0030】
以上のように、前記分岐コネクタ10は、外部機器からのリクエストを調停(ディスパッチ)し、車両に対して一つずつ送信する。これにより、リクエストの衝突やプロトコル違反の発生を防止し、外部機器を正常に機能させることができる。
前記分岐コネクタ10は、複数の外部機器が同じ車両情報を要求した場合、車両に問い合わせることなく、代理応答する。これにより、車両の処理能力を超える大量のリクエストが前記車両に送信されるのを防止することができる。
前記分岐コネクタ10は、故障診断機が接続された場合、他の外部機器を無効化する。これにより、故障診断機を優先的に正しく機能させることができる。
前記分岐コネクタ10は、複数の外部機器の合計消費電力が上限値を超えた場合、一部の外部機器に対する電力供給を停止する。これにより、残りの外部機器を正常に機能させることができる。
【0031】
<実施形態2:車両情報取得装置10A>
次に、
図3を参照して、車両情報取得装置10Aの構成の一例を説明する。
前記車両情報取得装置10Aは、車両の故障診断コネクタに接続され、前記故障診断コネクタを介して車両から車両情報を取得して、取得した車両情報を記録し、表示し、又は送信する装置である。このような機能に加えて、前記車両情報取得装置10Aは、更に、他の外部機器を接続する機能を有する。前記車両情報取得装置10Aは、例えば、以下の構成要素を備える。なお、前記分岐コネクタ10と同様の要素については、同一の符号を付し、説明を省略する。
(1)車両接続コネクタ11
(2)機器接続コネクタ12:機器接続コネクタの数は、一個でもよいし、二個以上でもよい。
(3)通信部21及び22
(4)処理部31、記憶部32、及び電源部33
(5)車両情報処理部34:前記車両から車両情報を取得し、取得した車両情報を処理する。例えば、前記車両情報を表示部に表示する。あるいは、前記車両情報を記録部に記録する。あるいは、前記車両情報をスマートフォンなどの通信機器に送信する。
【0032】
前記車両情報処理部34は、前記処理部31に直結されているが、位置付けとしては、前記機器接続コネクタ12を介して前記車両情報取得装置10Aに接続される外部機器と同等である。例えば、前記車両情報処理部34は、前記処理部31に対してリクエストを送信する。前記処理部31は、前記車両情報処理部34から受信したリクエストと、前記機器接続コネクタ12に接続された外部機器から受信したリクエストとを調停して、前記車両に対して一つずつ送信する。すなわち、前記車両情報取得装置10Aは、車両情報取得装置としての機能に加えて、前記分岐コネクタ10と同等の機能を有する。これにより、車両の故障診断コネクタに車両情報取得装置10Aを接続した状態で、他の外部機器を接続することができ、前記車両情報取得装置10A及び外部機器を共に正常に機能させることができる。
なお、前記車両情報処理部34は、前記処理部31に直接接続されるのではなく、例えば、無線通信装置やその他の通信装置などを介して、前記処理部31と通信する構成であってもよい。
【0033】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。