【解決手段】血清アルブミンについての結合特異性を伴う新たなアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質設計リピートタンパク質であって、特定のアミノ酸配列の一部が別のアミノ酸に交換されているリピートタンパク質。該リピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、該アンキリンリピートドメインは、特定の配列から選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、該アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している、結合タンパク質
少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質であって、ここで、該アンキリンリピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、該アンキリンリピートドメインは、配列番号49、50、51、及び52ならびに配列番号49、50、51、及び52における9つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されている配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するアンキリンリピートモジュールを含む結合タンパク質。
少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質であって、ここで、該リピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、該アンキリンリピートドメインは、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、該アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している結合タンパク質。
アンキリンリピートドメインが、配列番号32のアンキリンリピートドメインと比較して、哺乳動物において少なくとも5倍高い血漿中終末相半減期を有する、請求項1又は2の結合タンパク質。
生物活性化合物をさらに含む請求項1又は2の結合タンパク質であって、ここで、該結合タンパク質が、未修飾の生物活性化合物での血漿中終末相半減期と比較して、哺乳動物において少なくとも2倍高い血漿中終末相半減期を有し、ここで、より高い終末相半減期が、アンキリンリピートドメインにより、該結合タンパク質に与えられる結合タンパク質。
アンキリンリピートドメインが、哺乳動物の血清アルブミンへの結合について、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択されるアンキリンリピートドメインと競合する、請求項1又は2記載の結合タンパク質。
アンキリンリピートドメインが、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択され、ここで、該アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している、請求項1又は2記載の結合タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】SECによる、選択されたDARPinの安定性解析。xSAについての特異性を伴うDARPinのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実行の溶出プロファイルであって、PBS中の30mg/ml(〜2mM)での40℃で28日間にわたるインキュベーション前(
図1a)、後(
図1b)、又は、−80℃で1ヶ月間にわたる保存後(
図1c)、Superdex 200カラム5/150を用いて(
図1a又は
図1b)又はSuperdex 20010/300GL(
図1c)を用いて解析した。全てのサンプルを、実施例1に記載する通りに発現及び精製した。SEC解析のために、サンプルを濃度500μMに希釈した。分子量スタンダード、アプロチニン(AP)6.5kDa、炭酸脱水酵素(CA)29kDa、及びコンアルブミン(CO)75kDaを矢印で示している。xSA、哺乳動物の血清アルブミン、A、280nmでの吸光度;t、分での保持時間;DARPin#19(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号19);DARPin#20(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号20);DARPin#21(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号21);DARPin#22(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号22);DARPin#27(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号27);DARPin#28(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号28);DARPin#29(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号29);DARPin#30(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号30);DARPin#43(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号43);DARPin#44(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号44);DARPin#45(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号45);DARPin#46(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号46);DARPin#47(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号47);DARPin#48(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号48)。
【
図1b】SECによる、選択されたDARPinの安定性解析。xSAについての特異性を伴うDARPinのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実行の溶出プロファイルであって、PBS中の30mg/ml(〜2mM)での40℃で28日間にわたるインキュベーション前(
図1a)、後(
図1b)、又は、−80℃で1ヶ月間にわたる保存後(
図1c)、Superdex 200カラム5/150を用いて(
図1a又は
図1b)又はSuperdex 20010/300GL(
図1c)を用いて解析した。全てのサンプルを、実施例1に記載する通りに発現及び精製した。SEC解析のために、サンプルを濃度500μMに希釈した。分子量スタンダード、アプロチニン(AP)6.5kDa、炭酸脱水酵素(CA)29kDa、及びコンアルブミン(CO)75kDaを矢印で示している。xSA、哺乳動物の血清アルブミン、A、280nmでの吸光度;t、分での保持時間;DARPin#19(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号19);DARPin#20(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号20);DARPin#21(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号21);DARPin#22(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号22);DARPin#27(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号27);DARPin#28(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号28);DARPin#29(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号29);DARPin#30(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号30);DARPin#43(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号43);DARPin#44(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号44);DARPin#45(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号45);DARPin#46(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号46);DARPin#47(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号47);DARPin#48(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号48)。
【
図1c】SECによる、選択されたDARPinの安定性解析。xSAについての特異性を伴うDARPinのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)実行の溶出プロファイルであって、PBS中の30mg/ml(〜2mM)での40℃で28日間にわたるインキュベーション前(
図1a)、後(
図1b)、又は、−80℃で1ヶ月間にわたる保存後(
図1c)、Superdex 200カラム5/150を用いて(
図1a又は
図1b)又はSuperdex 20010/300GL(
図1c)を用いて解析した。全てのサンプルを、実施例1に記載する通りに発現及び精製した。SEC解析のために、サンプルを濃度500μMに希釈した。分子量スタンダード、アプロチニン(AP)6.5kDa、炭酸脱水酵素(CA)29kDa、及びコンアルブミン(CO)75kDaを矢印で示している。xSA、哺乳動物の血清アルブミン、A、280nmでの吸光度;t、分での保持時間;DARPin#19(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号19);DARPin#20(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号20);DARPin#21(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号21);DARPin#22(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号22);DARPin#27(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号27);DARPin#28(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号28);DARPin#29(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号29);DARPin#30(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号30);DARPin#43(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号43);DARPin#44(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号44);DARPin#45(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号45);DARPin#46(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号46);DARPin#47(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号47);DARPin#48(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号48)。
【
図2a】選択されたDARPinの熱的安定性。pH7.4のPBS中(
図2a)及びpH5.8のMES緩衝液中(
図2b)(250mM(2−N−モルホリノ)エタンスルホン酸pH5.5)、150mM NaCl、PBS(pH7.4)を用いて1から4(v/v)に混合し、pHを5.8に調整)でのxSAについての特異性(それに続く、緩衝液中に存在する色素SYPROオレンジの蛍光強度の増加)を伴うDARPinの熱変性からのトレース。F、相対蛍光単位(RFU)、515〜535nmでの励起、560〜580nmでの検出;T、℃での温度;DARPinの定義、上を参照のこと。
【
図2b】選択されたDARPinの熱的安定性。pH7.4のPBS中(
図2a)及びpH5.8のMES緩衝液中(
図2b)(250mM(2−N−モルホリノ)エタンスルホン酸pH5.5)、150mM NaCl、PBS(pH7.4)を用いて1から4(v/v)に混合し、pHを5.8に調整)でのxSAについての特異性(それに続く、緩衝液中に存在する色素SYPROオレンジの蛍光強度の増加)を伴うDARPinの熱変性からのトレース。F、相対蛍光単位(RFU)、515〜535nmでの励起、560〜580nmでの検出;T、℃での温度;DARPinの定義、上を参照のこと。
【
図3a】マウスにおける、選択されたDARPinの血漿クリアランス。MSA(マウス血清アルブミン)についての特異性を伴うDARPin及びコントロールDARPinの血漿からのクリアランスを、マウスにおいて評価した。(
図3a)MSAについての結合特異性を有していないDARPin#32(下を参照のこと)と比較した、MSAについての結合特異性を伴うちょうど1つのリピートドメインを含むDARPin。(
図3b)MSAについての結合特異性を有していないDARPin#32と比較した、2つのタンパク質ドメイン(その1つが、MSAについての結合特異性を伴うリピートドメインである)を含むDARPin。DARPinを、Hisタグを介して、
99mTc−カルボニル化合物を用いて標識し、マウスにおいて静脈内注射した。注射されたマウスの血液での放射活性を、注射後の異なる時間点で測定し、
99mTc(%ID)の放射性崩壊について補正された注射用量の比率として示した。近似曲線は、異なる時間点で測定された放射活性の非線形回帰の結果を示す−二相崩壊(Graphpad Prism)。各々のデータポイントは、1群当たり2匹のマウスでの平均を示す。%ID、
99mTcの放射性崩壊について補正された注射用量のパーセント;t、時間での時間;DARPin#18(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号18);DARPin#23(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号23);DARPin#25(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号25);DARPin#32(xSAへの結合特異性を伴わないネガティブコントロールDARPin、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号32);DARPin#33(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号33);DARPin#35(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号35);DARPin#36(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号36)。
【
図3b】マウスにおける、選択されたDARPinの血漿クリアランス。MSA(マウス血清アルブミン)についての特異性を伴うDARPin及びコントロールDARPinの血漿からのクリアランスを、マウスにおいて評価した。(
図3a)MSAについての結合特異性を有していないDARPin#32(下を参照のこと)と比較した、MSAについての結合特異性を伴うちょうど1つのリピートドメインを含むDARPin。(
図3b)MSAについての結合特異性を有していないDARPin#32と比較した、2つのタンパク質ドメイン(その1つが、MSAについての結合特異性を伴うリピートドメインである)を含むDARPin。DARPinを、Hisタグを介して、
99mTc−カルボニル化合物を用いて標識し、マウスにおいて静脈内注射した。注射されたマウスの血液での放射活性を、注射後の異なる時間点で測定し、
99mTc(%ID)の放射性崩壊について補正された注射用量の比率として示した。近似曲線は、異なる時間点で測定された放射活性の非線形回帰の結果を示す−二相崩壊(Graphpad Prism)。各々のデータポイントは、1群当たり2匹のマウスでの平均を示す。%ID、
99mTcの放射性崩壊について補正された注射用量のパーセント;t、時間での時間;DARPin#18(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号18);DARPin#23(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号23);DARPin#25(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号25);DARPin#32(xSAへの結合特異性を伴わないネガティブコントロールDARPin、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号32);DARPin#33(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号33);DARPin#35(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号35);DARPin#36(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号36)。
【
図4a】カニクイザルにおける選択されたDARPinの血漿クリアランス。CSA(カニクイザル血清アルブミン)についての特異性を伴うDARPin及びコントロールDARPinの血漿からのクリアランスを、カニクイザルにおいて評価した。(
図4a)DARPin#26を、CSAへの結合特異性を有していないDARPin#32と比較した。(
図4b)DARPin#24、34、及び17を、CSAへの結合特異性を有していないDARPin#32と比較した。以下のDARPinを、カニクイザルにおいて、t=0時間で、濃度0.5mg/ml(DARPin #26、DARPin#24、DARPin#17、及びDARPin#32)又は1mg/ml(DARPin#34)で静脈内注射した。サルの血漿中でのDARPinの濃度を、ELISAにより、注射後の異なる時間点で測定した。曲線は、異なる時間点で測定された濃度の非線形回帰の結果を示す−二相崩壊(Graphpad Prism)。第二相から、DARPinの血漿中終末相半減期を決定することができる。各々の単一のデータポイントは、同じ血清サンプルの2つの非依存的なELISA測定値の平均を示す。C、nMでのDARPin濃度;t、時間での時間;DARPin#17(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号17);DARPin#24(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号24);DARPin#26(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号26);DARPin#32(xSAへの結合特異性を伴わないネガティブコントロールDARPin、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号32);DARPin#34(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号34)。
【
図4b】カニクイザルにおける選択されたDARPinの血漿クリアランス。CSA(カニクイザル血清アルブミン)についての特異性を伴うDARPin及びコントロールDARPinの血漿からのクリアランスを、カニクイザルにおいて評価した。(
図4a)DARPin#26を、CSAへの結合特異性を有していないDARPin#32と比較した。(
図4b)DARPin#24、34、及び17を、CSAへの結合特異性を有していないDARPin#32と比較した。以下のDARPinを、カニクイザルにおいて、t=0時間で、濃度0.5mg/ml(DARPin #26、DARPin#24、DARPin#17、及びDARPin#32)又は1mg/ml(DARPin#34)で静脈内注射した。サルの血漿中でのDARPinの濃度を、ELISAにより、注射後の異なる時間点で測定した。曲線は、異なる時間点で測定された濃度の非線形回帰の結果を示す−二相崩壊(Graphpad Prism)。第二相から、DARPinの血漿中終末相半減期を決定することができる。各々の単一のデータポイントは、同じ血清サンプルの2つの非依存的なELISA測定値の平均を示す。C、nMでのDARPin濃度;t、時間での時間;DARPin#17(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号17);DARPin#24(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号24);DARPin#26(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号26);DARPin#32(xSAへの結合特異性を伴わないネガティブコントロールDARPin、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号32);DARPin#34(2つのリピートドメインを含むDARPin、xSAについての結合特異性を伴う1つ、そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号34)。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明に従った結合ドメインは、哺乳動物の血清アルブミン(xSA)について特異的である。好ましくは、本発明に従った結合ドメインは、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、サル、又はヒト由来の血清アルブミンについて特異的である。より好ましくは、本発明に従った結合ドメインは、ヒト由来の血清アルブミン(HSA)について特異的である。
【0017】
用語「タンパク質」はポリペプチドを指し、ここで、ポリペプチドの少なくとも部分は、そのポリペプチド鎖内及び/又は間の二次、三次、又は四次構造を形成することにより、定義された三次元配置を有する、又は、得ることができる。タンパク質が2つ又はそれ以上のポリペプチドを含む場合、個々のポリペプチド鎖は非共有結合的又は共有結合的に、例えば、2つのポリペプチドの間のジスルフィド結合により連結されうる。タンパク質の部分は、二次又は三次構造を形成することにより定義された三次元配置を個々に有する、又は、得ることができ、「タンパク質ドメイン」と呼ばれる。そのようなタンパク質ドメインは、当業者に周知である。
【0018】
用語「組換え」は、組換えタンパク質、組換えタンパク質ドメイン、組換え結合タンパク質などで使用される通り、前記ポリペプチドが、当業者により周知である組換えDNA技術の使用により産生されることを意味する。例えば、ポリペプチドをコードする組換えDNA分子(例、遺伝子合成により産生される)を、細菌発現プラスミド(例、pQE30、Qiagen)、酵母発現プラスミド、又は哺乳動物発現プラスミド中にクローン化することができる。例えば、そのような構築された組換え細菌発現プラスミドは、適切な細菌(例、大腸菌)中に挿入される場合、この細菌は、この組換えDNAによりコードされるポリペプチドを産生することができる。対応して産生されたポリペプチドは、組換えポリペプチドと呼ばれる。
【0019】
本発明に関連して、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して連結された複数、即ち、2つ又はそれ以上のアミノ酸の1つ又は複数の鎖からなる分子に関する。好ましくは、ポリペプチドは、ペプチド結合を介して連結された8を上回るアミノ酸からなる。
【0020】
用語「ポリペプチドタグ」は、ポリペプチド/タンパク質に付着したアミノ酸配列を指し、ここで、前記アミノ酸配列は、前記ポリペプチド/タンパク質の精製、検出、又は標的化のために有用であり、あるいは、ここで、前記アミノ酸配列は、ポリペプチド/タンパク質の物理化学的挙動を改善し、あるいは、ここで、前記アミノ酸配列はエフェクター機能を持つ。結合タンパク質の個々のポリペプチドタグ、成分、及び/又はドメインを、互いに直接的に又はポリペプチドリンカーを介して接続してもよい。これらのポリペプチドタグは、全て、当技術分野において周知であり、当業者に完全に利用可能である。ポリペプチドタグの例は、小さなポリペプチド配列、例えば、His(例、配列番号15のHisタグ)、myc、FLAG、もしくはStrepタグ又は部分、例えば酵素など(例えば、アルカリフォスファターゼなどの酵素)、それらは前記ポリペプチド/タンパク質の検出を許し、又は標的化のため(例えば免疫グロブリン又はそのフラグメントなど)及び/又はエフェクター分子として使用することができる部分である。
【0021】
用語「ポリペプチドリンカー」はアミノ酸配列を指し、それらは、例えば、2つのタンパク質ドメイン、ポリペプチドタグとタンパク質ドメイン、タンパク質ドメインと非ポリペプチド部分(例えばポリエチレングルコールなど)、又は2つの配列タグを連結することができる。そのような追加ドメイン、タグ、非ポリペプチド部分、及びリンカーは、当業者に公知である。例のリストは、特許出願WO 2002/020565の明細書に提供されている。そのようなリンカーの特定の例は、可変長のグリシン−セリンリンカー及びプロリン−スレオニンリンカーである;好ましくは、前記リンカーは2〜24個の間のアミノ酸の長さを有する;より好ましくは、前記リンカーは、2〜16個の間のアミノ酸の長さを有する。グリシン−セリンリンカーの例を、配列番号16に提供する。
【0022】
用語「ポリマー部分」は、タンパク質性ポリマー部分又は非タンパク質性ポリマー部分のいずれかを指す。「タンパク質性ポリマー部分」は、好ましくは、安定な三次構造を形成しないものの、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の濃度約0.1mMで室温(RT)で1ヶ月間にわたり保存した場合、10%以下、好ましくは、5%以下;また、好ましくは、2%以下;さらにより好ましくは、1%以下;及び、最も好ましくは、検出不能量のオリゴマー又は凝集物を形成するポリペプチドである(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定される)。そのようなタンパク質性ポリマー部分は、SEC用の分子量スタンダードとして球状タンパク質を使用した場合、SECにおいてそれらの有効分子量よりも高い見掛かけの分子量で流れる。好ましくは、SECにより決定される前記タンパク質性ポリマー部分の見掛けの分子量は、それらのアミノ酸配列から算出されたそれらの有効分子量よりも1.5×、2×、又は2.5×高い。また、好ましくは、SECにより決定される前記非タンパク質性ポリマー部分の見掛けの分子量は、それらの分子組成から算出された、それらの有効分子量よりも2×、4×、又は8×高い。好ましくは、前記タンパク質性ポリマー部分のアミノ酸の50%、70%、又はさらに90%超は、円偏光二色性(CD)測定により決定される通り、PBS中での濃度約0.1mMで、室温で安定な二次構造を形成しない。最も好ましくは、前記タンパク質性ポリマーは、ランダムコイル立体構造の典型的な近紫外CDスペクトルを示す。そのようなCD解析は、当業者に周知である。また、好ましいのは、50を上回る、好ましくは100、200、300、400、500、600、700を上回る、又は最も好ましくは800を上回るアミノ酸からなるタンパク質性ポリマー部分である。タンパク質性ポリマー部分の例は、XTEN(登録商標)(Amunixの登録商標;WO 2007/103515)ポリペプチド、又はプロリン残基、アラニン残基、及びセリン残基を含むポリペプチド(WO 2008/155134に記載されている通り)である。そのようなタンパク質性ポリマー部分を、例えば、標準的なDNAクローニング技術、それに続く、それらの標準的な発現及び精製を使用した遺伝子融合ポリペプチドの生成により、本発明の結合ドメインに共有結合的に付着させることができる。
【0023】
本発明のポリマー部分は、分子量において広く変動しうる(即ち、約1kDa〜約150kDaまで)。好ましくは、ポリマー部分は、少なくとも2、より好ましくは少なくとも5、10、20、30、50、70、又は最も好ましくは少なくとも100kDaの分子量を有する。好ましくは、前記ポリマー部分は、ポリペプチドリンカーにより結合ドメインに接続される。
【0024】
非タンパク質ポリマー部分の例は、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンである。用語「PEG化された」は、PEG部分が、例えば、本発明のポリペプチドに共有結合的に付着されていることを意味する。
【0025】
特定の実施態様において、PEG部分又は任意の他の非タンパク質性ポリマーを、例えば、マレイミドリンカーを介して、システインチオールに結合することができ、システインは、本明細書に記載する通り、ペプチドリンカーを介して、結合ドメインのN又はC末端に結合されている。
【0026】
用語「結合タンパク質」は、下でさらに説明する通り、1つ又は複数の結合ドメイン、1つ又は複数の生物活性化合物、及び1つ又は複数のポリマー部分を含むタンパク質を指す。好ましくは、前記の結合タンパク質は、4つまでの結合ドメインを含む。より好ましくは、前記の結合タンパク質は、2つまでの結合ドメインを含む。最も好ましくは、前記の結合タンパク質は、1つだけの結合ドメインを含む。さらに、任意のそのような結合タンパク質は、結合ドメイン、多量体化部分、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー、及び/又は単一のCys残基ではない追加のタンパク質ドメインを含みうる。多量体化部分の例は、ペアになり、機能的な免疫グロブリンFcドメインを提供する免疫グロブリン重鎖定常領域、及びロイシンジッパー又は遊離チオールを含むポリペプチド(2つのそのようなポリペプチド間に分子間ジスルフィド結合を形成する)である。単一のCys残基は、例えば、当業者に周知のマレイミド化学を使用することにより、他の部分をポリペプチドに共役するために使用してもよい。好ましくは、前記結合タンパク質は、組換え結合タンパク質である。また、好ましくは、結合タンパク質の結合ドメインは、異なる標的特異性を持つ。
【0027】
用語「結合ドメイン」は、タンパク質スキャフォールドと同じ「フォールディング」(三次元配置)を示し、所定の特性を有するタンパク質ドメインを意味する(下に定義する通り)。そのような結合ドメインは、合理的な、又は最も一般的な、当技術分野において公知のコンビナトリアルタンパク質操作技術により得てもよい(Binz et al., 2005、前掲文献)。例えば、所定の特性を有する結合ドメインは、以下の工程を含む方法により得ることができる:(a)タンパク質スキャフォールド(下にさらに定義する)と同じフォールディングを示すタンパク質ドメインの多様なコレクションを提供すること;及び(b)前記の多様なコレクションをスクリーニングこと及び/又は前記の所定の特性を有する少なくとも1つのタンパク質ドメインを得るために前記の多様なコレクション選択すること。タンパク質ドメインの多様なコレクションは、使用中のスクリーニング及び/又は選択システムに従ったいくつかの方法により提供され、当業者に周知の方法(例えばファージディスプレイ又はリボソームディスプレイなど)の使用を含みうる。好ましくは、前記の結合ドメインは、組換え結合ドメインである。
【0028】
用語「タンパク質スキャフォールド」は、アミノ酸挿入、置換、又は欠失が高度に耐容できる露出表面積を伴うタンパク質を意味する。本発明の結合ドメインを生成するために使用することができるタンパク質スキャフォールドの例は、抗体又はそのフラグメント、例えば単鎖Fv又はFabフラグメント、黄色ブドウ球菌からのプロテインA、モンシロチョウ(Pieris brassicae)からのビリン結合タンパク質又は他のリポカリン、アンキリンリピートタンパク質又は他のリピートタンパク質、及びヒトフィブロネクチンなどである。タンパク質スキャフォールドは、当業者に公知である(Binz et al., 2005、前掲文献;Binz et al., 2004、前掲文献)。
【0029】
用語「所定の特性」は、特性(例えば標的への結合、標的の遮断、標的媒介反応の活性化、酵素活性、及び関連するさらなる特性など)を指す。所望の特性の型に依存して、当業者は、所望の特性を伴う結合ドメインのスクリーニング及び/又は選択を実施するためのフォーマット及び必要な工程を同定することができる。好ましくは、前記の所定の特性は、標的への結合である。
【0030】
リピートタンパク質についての以下の定義は、特許出願WO 02/20565中のものに基づく。特許出願WO 2002/020565は、さらに、リピートタンパク質の特性、技術、及び適用の一般的な記載を含む。
【0031】
用語「リピートタンパク質」は、1つ又は複数のリピートドメインを含むタンパク質を指す。好ましくは、前記リピートタンパク質の各々は、4つまでのリピートドメインを含む。さらに好ましくは、前記リピートタンパク質の各々は、2つまでのリピートドメインを含む。最も好ましくは、リピートタンパク質の各々は、1つだけのリピートドメインを含む。さらに、前記リピートタンパク質は、追加の非リピートタンパク質ドメイン、ポリペプチドタグ、及び/又はポリペプチドリンカーを含みうる。
【0032】
用語「リピートドメイン」は、構造単位として2つ又はそれ以上の連続リピート単位(モジュール)を含むタンパク質ドメインを指し、ここで、前記構造単位は同じフォールディングを有し、そして堅固に積み重なり、例えば、結合疎水性コアを有する超らせん構造を作製する。好ましくは、リピートドメインは、さらに、N末端及び/又はC末端キャッピング単位(又はモジュール)を含む。さらにより好ましくは、前記N末端及び/又はC末端キャッピング単位(又はモジュール)は、キャッピングリピートである。
【0033】
用語「設計リピートタンパク質」及び「設計リピートドメイン」は、特許出願WO 2002/020565に説明する、本発明の手順の結果として得られる、リピートタンパク質又はリピートドメインをそれぞれ指す。設計リピートタンパク質及び設計リピートドメインは、合成であり、天然からではない。それらは、それぞれ、対応して設計された核酸の発現により得られる、人工タンパク質又はドメインである。好ましくは、発現は、真核細胞もしくは原核細胞(例えば細菌細胞など)中で、又は、無細胞インビトロ発現系を使用することにより行われる。したがって、設計アンキリンリピートタンパク質(即ち、DARPin)は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む、本発明の結合タンパク質に対応する。
【0034】
用語「構造単位」は、ポリペプチドの局所的に順序付けられた部分を指し、ポリペプチド鎖に沿って互いに近い二次構造の2つ又はそれ以上のセグメントの間の三次元相互作用により形成される。そのような構造単位は、構造モチーフを示す。用語「構造モチーフ」は、少なくとも1つの構造単位中に存在する二次構造エレメントの三次元配置を指す。構造モチーフは、当業者に周知である。構造単位単独では定義された三次元配置を得ることはできない;しかし、例えば、リピートドメイン中でのリピートモジュールとしてのそれらの連続配置は、隣接単位の相互安定化に導き、超らせん構造をもたらす。
【0035】
用語「リピート単位」は、1つ又は複数の天然リピートタンパク質のリピート配列モチーフを含むアミノ酸配列を指し、ここで、前記「リピート単位」は複数のコピーにおいて見出され、タンパク質のフォールディングを決定する全ての前記モチーフに共通する定義されたフォールディングトポロジーを示す。そのようなリピート単位は、リピートタンパク質の「リピート構造単位(リピート)」(Forrer et al., 2003、前掲文献により記載される)又はリピートタンパク質の「連続相同構造単位(リピート)」(Binz et al, 2004、前掲文献により記載される)に対応する。そのようなリピート単位は、フレームワーク残基及び相互作用残基を含む。そのようなリピート単位の例は、アルマジロリピート単位、ロイシンリッチリピート単位、アンキリンリピート単位、テトラトリコペプチドリピート単位、HEATリピート単位、及びロイシンリッチ変異体リピート単位である。2つ又はそれ以上のそのようなリピート単位を含む天然タンパク質は、「天然リピートタンパク質」として言及される。リピートタンパク質の個々のリピート単位のアミノ酸配列は、互いに比較された場合、有意な数の変異、置換、付加、及び/又は欠失を有しうるが、リピート単位の一般的なパターン、又はモチーフを依然として実質的に保持する。
【0036】
用語「アンキリンリピート単位」は、アンキリンリピート(例えば、Forrer et al., 2003、前掲文献により記載される)であるリピート単位を意味するものとする。アンキリンリピートは、当業者に周知である。
【0037】
用語「フレームワーク残基」は、リピート単位のアミノ酸残基、又はリピートモジュールの対応するアミノ酸残基に関し、それは、フォールディングトポロジーに寄与し、即ち、それは、前記リピート単位(又はモジュール)のフォールディングに寄与する、又は、隣接単位(又はモジュール)との相互作用に寄与する。そのような寄与は、リピート単位(又はモジュール)における他の残基との相互作用、あるいはαヘリックスもしくはβシート中に見出されるポリペプチド骨格の立体構造、又は直線状ポリペプチドもしくはループを形成するアミノ酸ストレッチに対する影響でありうる。
【0038】
用語「標的相互作用残基」は、リピート単位のアミノ酸残基、又はリピートモジュールの対応するアミノ酸残基を指し、それは、標的物質との相互作用に寄与する。そのような寄与は、標的物質との直接的な相互作用、又は他の直接的に相互作用する残基に対する影響(例、リピート単位(又はモジュール)のポリペプチドの立体構造を安定化し、前記標的と直接的に相互作用する残基の相互作用を許す又は増強することによる)でありうる。そのようなフレームワーク残基及び標的相互作用残基は、物理化学的方法(例えばX線結晶解析、NMR、及び/又はCD分光法など)により得られる構造データの分析により、あるいは、構造生物学及び/又は生物情報学における当業者に周知である公知の及び関連する構造情報との比較により同定してよい。
【0039】
好ましくは、リピート配列モチーフの推定のために使用されるリピート単位は、相同なリピート単位であり、ここで、リピート単位は同じ構造モチーフを含み、ここで、前記リピート単位のフレームワーク残基の70%超が互いに相同である。好ましくは、前記リピート単位のフレームワーク残基の80%超が相同である。より好ましくは、前記リピート単位のフレームワーク残基の90%超が相同である。ポリペプチドの間の相同性のパーセントを決定するためのコンピュータプログラム(例えばFasta、Blast、又はGapなど)は、当業者に公知である。さらに好ましくは、リピート配列モチーフの推定のために使用されるリピート単位は、標的上で選択されたリピートドメインから得られ(例えば、実施例1に記載される通り)、同じ標的特異性を有する、相同なリピート単位である。
【0040】
用語「リピート配列モチーフ」は、アミノ酸配列を指し、それは1つ又は複数のリピート単位又はリピートモジュールから推定される。好ましくは、前記のリピート単位又はリピートモジュールは、同じ標的についての結合特異性を有するリピートドメインからである。そのようなリピート配列モチーフは、フレームワーク残基位置及び標的相互作用残基位置を含む。前記フレームワーク残基位置は、リピート単位(又はモジュール)のフレームワーク残基の位置に対応する。同様に、前記の標的相互作用残基位置は、リピート単位(又はモジュール)の標的相互作用残基の位置に対応する。リピート配列モチーフは、固定化された位置及び無作為化された位置を含む。用語「固定化された位置」は、リピート配列モチーフ中のアミノ酸位置を指し、ここで、前記位置は特定のアミノ酸に設定される。ほとんどの場合、そのような固定化された位置は、フレームワーク残基の位置及び/又は特定の標的について特異的である標的相互作用残基の位置に対応する。用語「無作為化された位置」は、リピート配列モチーフ中のアミノ酸位置を指し、ここで、2つ又はそれ以上のアミノ酸がアミノ酸位置で許され、例えば、ここで、通常の20の天然アミノ酸のいずれかが許され、又は、ここで、20の天然アミノ酸の大半が許され、例えばシステイン以外のアミノ酸、又はグリシン、システイン、及びプロリン以外のアミノ酸などである。ほとんどの場合、そのような無作為化された位置は、標的相互作用残基の位置に対応する。しかし、フレームワーク残基の一部の位置も無作為化してもよい。
【0041】
用語「フォールディングトポロジー」は、前記のリピート単位又はリピートモジュールの三次構造を指す。フォールディングトポロジーは、αヘリックス又はβシートの少なくとも部分を形成するアミノ酸のストレッチ、又は直線状ポリペプチド又はループを形成するアミノ酸ストレッチ、又はαヘリックス、βシート、及び/又は直線状ポリペプチド/ループの任意の組み合わせにより決定される。
【0042】
用語「連続」は配置を指し、ここで、リピート単位又はリピートモジュールがタンデムに配置される。設計リピートタンパク質中に、少なくとも2つ、通常は約2〜6、特に少なくとも約6、高頻度には20又はそれ以上のリピート単位(又はモジュール)がある。大半の場合において、リピートドメインのリピート単位(又はモジュール)は、高度の配列同一性(対応する位置での同じアミノ酸残基)又は配列類似性(アミノ酸残基は異なるが、しかし、類似の物理化学的特性を有する)を示し、アミノ酸残基の一部は、強く保存されている重要残基でありうる。しかし、リピートドメインの異なるリピート単位(又はモジュール)の間でのアミノ酸の挿入及び/又は欠失、及び/又は置換による高度な配列変動性は、リピート単位(又はモジュール)の共通のフォールディングトポロジーが維持される限り可能でありうる。
【0043】
物理化学的手段(X線結晶学、NMR、又はCD分光法など)によりリピートタンパク質のフォールディングトポロジーを直接的に決定するための方法が、当業者に周知である。リピート単位又はリピート配列モチーフを同定及び決定するため、又は、そのようなリピート単位又はモチーフを含む関連タンパク質のファミリーを同定するための方法、例えば、ホモロジー検索(BLASTなど)は、生物情報学の分野において十分に確立されており、当業者に周知である。初期リピート配列モチーフを改良する工程は、反復プロセスを含みうる。
【0044】
用語「リピートモジュール」は、設計リピートドメインの繰り返しアミノ酸配列を指し、それらは、本来、天然のリピートタンパク質のリピート単位に由来する。リピートドメイン中に含まれる各々のリピートモジュールは、天然のリピートタンパク質のファミリー又はサブファミリー(例、アルマジロリピートタンパク質又はアンキリンリピートタンパク質のファミリー)の1つ又は複数のリピート単位に由来する。
【0045】
「リピートモジュール」は、対応するリピートモジュールの全てのコピー中に存在するアミノ酸残基を伴う位置(「固定化された位置」)及び異なる又は「無作為化された」アミノ酸残基を伴う位置(「無作為化された位置」)を含みうる。
【0046】
本発明に従った結合タンパク質は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含み、ここで、前記リピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミン(xSA)についての結合特異性を有する。
【0047】
用語「標的についての結合特異性を有する」、「標的に特異的に結合する」、又は「標的特異性」などは、結合タンパク質又は結合ドメインが、PBS中で、無関係のタンパク質(例えば大腸菌マルトース結合タンパク質(MBP)など)よりも低い解離定数を用いて、標的に結合することを意味する。好ましくは、標的についてのPBS中での解離定数は、MBPについての対応する解離定数よりも、少なくとも10、より好ましくは10
2、さらにより好ましくは10
3、又は最も好ましくは10
4倍低い。
【0048】
本発明の結合タンパク質は、抗体又はそのフラグメント(例えばFabフラグメント又はscFvフラグメントなど)ではない。抗体及びそれらのフラグメントは、当業者に周知である。
【0049】
また、本発明の結合ドメインは、抗体中に存在する免疫グロブリンフォールド及び/又はフィブロネクチンIII型ドメインを含まない。免疫グロブリンフォールドは、2つのβシート中に配置された約7つの逆平行βストランドの2層のサンドイッチからなる、共通の全βタンパク質フォールドである。免疫グロブリンフォールドは、当業者に周知である。例えば、免疫グロブリンフォールドを含むそのような結合ドメインは、WO 2007/080392又はWO 2008/097497に記載されている。
【0050】
特に、本発明は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、配列番号49、50、51、及び52、ならびに、配列番号49、50、51、及び52における9つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されている配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するアンキリンリピートモジュールを含む。
【0051】
好ましくは、配列番号49、50、51、及び52における8つまでのアミノ酸が、他のアミノ酸により交換され、配列番号49、50、51、及び52における、より好ましくは7つまでのアミノ酸、より好ましくは6つまでのアミノ酸、より好ましくは5つまでのアミノ酸、さらにより好ましくは4つまでのアミノ酸、より好ましくは3つまでのアミノ酸、より好ましくは2つまでのアミノ酸、より好ましくは1つまでのアミノ酸、及び最も好ましくは無アミノ酸が交換される。
【0052】
好ましくは、アミノ酸が配列番号49、50、51、及び52において交換される場合、これらのアミノ酸は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、及びYからなる群より;より好ましくは、A、D、E、H、I、K、L、Q、R、S、T、V、及びYからなる群より選択される。また、好ましくは、アミノ酸の置換は、相同アミノ酸による;即ち、アミノ酸は、類似の生物物理学的特性を伴う側鎖を有するアミノ酸により交換される。例えば、負荷電アミノ酸Dは、負荷電アミノ酸Eにより置換されうる。又は、疎水性アミノ酸(例えばLなど)は、A、I、又はVにより置換されうる。相同アミノ酸によるアミノ酸の置換は、当業者に周知である。
【0053】
好ましい結合タンパク質は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含み、ここで、前記リピートドメインは、PBS中で10
−4M未満の解離定数(Kd)を用いてxSAに結合する。好ましくは、前記リピートドメインは、PBS中で10
−4M未満、より好ましくは10
−5M、10
−6M、10
−7M、又は最も好ましくは10
−8M未満のKdを用いてxSAに結合する。
【0054】
タンパク質−タンパク質相互作用の解離定数を決定するための方法、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)ベースの技術(例、SPR平衡解析)又は等温滴定熱量計(ITC)などが、当業者に周知である。特定のタンパク質−タンパク質相互作用の測定Kd値は、異なる条件(例、塩濃度、pH)下で測定した場合、変動しうる。このように、Kd値の測定は、好ましくは、タンパク質の標準化溶液及び標準化緩衝液(例えばPBSなど)を用いて行われる。
【0055】
PBS中で10
−4M未満のKdを用いてxSAに結合するアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質を、実施例に示す。
【0056】
本発明の結合タンパク質のアンキリンリピートドメインは、xSAに結合する。好ましいのは、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合するアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質である。
【0057】
さらに好ましいのは、70〜300の間のアミノ酸、特に100〜200の間のアミノ酸を含む結合ドメインである。
【0058】
さらに好ましいのは、遊離Cys残基を欠く結合タンパク質又は結合ドメインである。「遊離Cys残基」は、ジスルフィド結合の形成に含まれない。さらにより好ましいのは、任意のCys残基のない結合タンパク質又は結合ドメインである。
【0059】
本発明の結合ドメインは、アンキリンリピートドメイン又は設計アンキリンリピートドメインであり(Binz et al., 2004、前掲文献)、好ましくは、WO 2002/020565に記載されている通りである。設計アンキリンリピートドメインの例を、実施例に示す。
【0060】
さらなる実施態様において、本発明は、少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質に関し、ここで、前記リピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、前記アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している。
【0061】
好ましくは、本発明の結合タンパク質中のそのようなアンキリンリピートドメインは、配列番号21、27、及び46;好ましくは、27及び46からなる群より選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。上に定義した通り、前記アンキリンリピートドメインは、PBS中で10
−4M未満の解離定数(Kd)を用いてxSAに結合する。好ましくは、前記リピートドメインは、PBS中で10
−4M未満、より好ましくは10
−5M、10
−6M、10
−7M、又は最も好ましくは10
−8M未満のKdを用いてxSAに結合する。
【0062】
好ましくは、本発明の結合タンパク質中のそのようなアンキリンリピートドメインは、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択されるアンキリンリピートドメイン中の「無作為化されたリピート単位」又は「無作為化された位置」と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む。
【0063】
好ましくは、70%のアミノ酸配列同一性の代わりに、本発明の結合タンパク質中のそのようなアンキリンリピートドメインは、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む。
【0064】
特定の実施態様において、配列番号49、50、51、及び52のアンキリンリピートモジュール中の9つまでのアミノ酸の置換により定義される、又は、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも70%のアミノ酸同一性により定義される、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を伴う結合タンパク質は、哺乳動物の血清アルブミンに結合しない対応する結合タンパク質、例えば、配列番号32のアンキリンリピートドメインと比較して、哺乳動物において少なくとも5倍高い血漿中終末相半減期を有する。そのような好ましい結合タンパク質において、ヒトにおける最小限の血漿中終末相半減期は、少なくとも1日、より好ましくは少なくとも3日、さらにより好ましくは少なくとも5日である。
【0065】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化1】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、X
1、X
2、X
3、X
4、X
5、X
6、X
7、X
8、及びX
9は、互いに独立して、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、及びYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
好ましくは、ここで、
X
1は、A、D、M、F、S、I、T、N、Y、及びK;より好ましくは、K及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、E、K、D、F、M、N、I、及びY;より好ましくは、I、E、及びYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、W、R、N、T、H、K、A、及びF;より好ましくは、W、R、及びFからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、G及びSからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、N、T、及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
6は、N、V、及びRからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
7は、E、Y、N、D、H、S、A、Q、T、及びG;より好ましくは、E、Y、及びNからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
8は、E及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
9は、S、A、Y、H、及びN;より好ましくは、Y及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号53においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0066】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化2】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、A、D、M、F、S、I、T、N、Y、及びK;好ましくは、K及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、E、K、D、F、M、N、I、及びY;好ましくは、I、E及びYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、W、R、N、T、H、K、A、及びF;好ましくは、W、R、及びFからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、N、T、及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、N、V、及びRからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
6は、E、Y、N、D、H、S、A、Q、T、及びG;好ましくは、E、Y、及びNからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
7は、S、A、Y、H、及びN;好ましくは、Y及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号10においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0067】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化3】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、D、K、及びA;好ましくは、K及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、D、G、及びS;好ましくは、G及びSからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、E、N、D、H、S、A、Q、T、及びG;好ましくは、Q、D、及びN;より好ましくは、Q及びNからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、G及びDからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、E、K、及びG;好ましくは、E及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
6は、H、Y、A、及びN;好ましくは、H、A、及びY;より好ましくは、A及びYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号11においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0068】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化4】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、F、S、L、及びK;好ましくは、S及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、V及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、R及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、S及びNからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、N、D、Q、S、A、T、及びE;好ましくは、D及びQからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
6は、A、H、Y、S、及びN;好ましくは、A及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号54においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0069】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化5】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、F、S、L、及びK;好ましくは、S及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、V及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、R及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、S及びNからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、A、H、Y、S、及びN;好ましくは、A及びHからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号12においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0070】
好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、配列番号12のアンキリンリピート配列モチーフを伴うリピートモジュールを含み、配列番号11のアンキリンリピート配列モチーフを伴うリピートモジュールにより先行される。
【0071】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化6】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、K、A、D、M、F、S、I、T、N、及びY;好ましくは、K及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、E、K、D、F、M、N、及びY;好ましくは、E、D、及びYからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、R、N、T、H、K、A、及びF;好ましくは、R及びFからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、I及びMからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、H、Y、K、A、及びN;好ましくは、K及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号13においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0072】
さらなる実施態様において、本発明は結合タンパク質に関し、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、アンキリンリピート配列モチーフ
【化7】
を伴うリピートモジュールを含み、
ここで、
X
1は、Q及びKからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
2は、L及びPからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
3は、H、N、Y、及びA;好ましくは、H及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
4は、G及びSからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
5は、A、V、T、及びS;好ましくは、S及びAからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;
X
6は、V及びFからなる群より選択されるアミノ酸残基を表し;そして、
ここで、場合により、配列番号14においてXを用いて表示される位置以外における5までのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換される。
【0073】
好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、配列番号14のアンキリンリピート配列モチーフを伴うリピートモジュールを含み、配列番号13のアンキリンリピート配列モチーフを伴うリピートモジュールにより先行される。
【0074】
用語「キャッピングモジュール」は、リピートドメインのN又はC末端リピートモジュールに融合されたポリペプチドを指し、ここで、前記キャッピングモジュールは、前記リピートモジュールと強固な三次相互作用(即ち、三次元構造相互作用)を形成し、それにより、連続リピートモジュールと接触しない側で、溶媒から前記リピートモジュールの疎水性コアを遮蔽するキャップを提供する。前記N及び/又はC末端キャッピングモジュールは、キャッピング単位又はリピート単位に隣接する天然リピートタンパク質中で見出される他の構造単位でありうる、又は、それに由来しうる。用語「キャッピング単位」は、天然の折り畳まれたポリペプチドを指し、ここで、前記ポリペプチドは、リピート単位のN又はC末端に融合された特定の構造単位を定義し、ここで、前記ポリペプチドは、前記リピート単位と強固な三次相互作用を形成し、それにより、一方の側の前記リピート単位の疎水性コアを、溶媒から遮蔽するキャップを提供する。好ましくは、キャッピングモジュール又はキャッピング単位は、キャッピングリピートである。用語「キャッピングリピート」は、前記の隣接リピート単位(又はモジュール)と類似の又は同じフォールディング及び/又は前記の隣接リピート単位(又はモジュール)との配列類似性を有するキャッピングモジュール又はキャッピング単位を指す。キャッピングモジュール及びキャッピングリピートは、WO 2002/020565において、及び、Interlandi et al., 2008(前掲文献)により記載される。例えば、WO 2002/020565には、アミノ酸配列
【化8】
を有するN末端キャッピングモジュール(即ち、キャッピングリピート)及びアミノ酸配列
【化9】
を有するC末端キャッピングモジュール(即ち、キャッピングリピート)が記載される。Interlandi et al., 2008(前掲文献)には、アミノ酸配列
【化10】
及び
【化11】
を有するC末端キャッピングモジュールが記載される。
【0075】
例えば、配列番号17のN末端キャッピングモジュールは、位置1〜32のアミノ酸によりコードされ、配列番号17のC末端キャッピングモジュールは、位置99〜126のアミノ酸によりコードされる。
【0076】
好ましいN末端キャッピングモジュールは、配列モチーフ
【化12】
を含み、
ここで、X
1はアミノ酸残基G、A、又はDを表し;
ここで、X
2はアミノ酸残基G又はDを表し;
ここで、X
3はアミノ酸残基L、V、I、A、又はM;好ましくは、L又はMを表し;そして、
ここで、X
4はアミノ酸残基A、H、Y、K、R、又はN;好ましくは、A又はNを表す。
【0077】
さらに好ましいのは、N末端キャッピングリピートを含む任意そのようなN末端キャッピングモジュールであって、ここで、前記キャッピングリピート中のアミノ酸残基の1つ又は複数が、対応するキャッピング単位又はリピート単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸残基により置換される。
【0078】
好ましいC末端キャッピングモジュールは、配列モチーフ
【化13】
を含み、
ここで、X
1はアミノ酸残基Q又はKを表し;
ここで、X
2はアミノ酸残基A、S、又はF;好ましくは、S又はFを表し;
ここで、X
3はアミノ酸残基A又はPを表し;
ここで、X
4はアミノ酸残基A又はFを表し;
ここで、X
5はアミノ酸残基I又はLを表し;
ここで、X
6はアミノ酸残基S又はAを表し;
ここで、X
7はアミノ酸残基I又はAを表し;
ここで、X
8はアミノ酸残基A、E、又はN;好ましくは、A又はNを表し;
ここで、X
9はアミノ酸残基N又はHを表し;
ここで、X
10はアミノ酸残基L又はIを表し;
ここで、X
11はアミノ酸残基I又はVを表し;そして、
ここで、X
4がFを表し、X
7がIを表し、X
8がN又はEが表す場合、X
2はFを表さない。
【0079】
さらなる好ましいC末端キャッピングモジュールは、配列モチーフ
【化14】
を含み、
ここで、X
1はアミノ酸残基Q又はKを表し;
ここで、X
2はアミノ酸残基A、S、又はF;好ましくは、S又はFを表し;
ここで、X
3はアミノ酸残基A又はPを表し;
ここで、X
4はアミノ酸残基I又はLを表し;
ここで、X
5はアミノ酸残基S又はAを表し;
ここで、X
6はアミノ酸残基I又はAを表し;
ここで、X
7はアミノ酸残基A、E、又はN;好ましくは、A又はNを表し;
ここで、X
8はアミノ酸残基N又はHを表し;
ここで、X
9はアミノ酸残基L又はIを表し;そして、
ここで、X
10はアミノ酸残基I又はVを表す。
【0080】
さらなる好ましいC末端キャッピングモジュールは、配列モチーフ
【化15】
を含み、
ここで、X
1はアミノ酸残基Q又はKを表し;
ここで、X
2はアミノ酸残基A、S、又はF;好ましくは、S又はFを表し;
ここで、X
3はアミノ酸残基A又はPを表し;
ここで、X
4はアミノ酸残基I又はLを表し;
ここで、X
5はアミノ酸残基S又はAを表し;
ここで、X
6はアミノ酸残基A、E、又はN;好ましくは、A又はNを表し;
ここで、X
7はアミノ酸残基N又はHを表し;
ここで、X
8はアミノ酸残基L又はI;そして、
ここで、X
9はアミノ酸残基I又はVを表す。
【0081】
好ましくは、配列番号6、7、又は8の配列モチーフを含む、そのようなC末端キャッピングモジュールは、アミノ酸残基A、I、又はK;好ましくは、I又はKを;前記配列モチーフの位置3に対応する位置に有する。
【0082】
また、好ましくは、配列番号6、7、又は8の配列モチーフを含む、そのようなC末端キャッピングモジュールは、アミノ酸残基R又はDを、前記配列モチーフの位置14に対応する位置に有する。
【0083】
好ましいC末端キャッピングモジュールは、アミノ酸配列
【化16】
を有するC末端キャッピングモジュールである。
【0084】
さらに好ましいのは、配列番号9のアミノ酸配列を有するC末端キャッピングモジュールであって、
ここで、
位置1のアミノ酸残基は、Q又はKであり;
位置4のアミノ酸残基は、S又はFであり;
位置9のアミノ酸残基は、A又はFであり;
位置13のアミノ酸残基は、A又はIであり;
位置15のアミノ酸残基は、A、E、又はNであり;そして、
ここで、前記C末端キャッピングモジュールは、配列番号2、3、又は4のアミノ酸配列を有さない。
【0085】
さらに好ましいのは、アラインメント上で、配列番号9又は2と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、又は最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を含むアミノ酸配列を有するC末端キャッピングモジュールである。好ましくは、アラインメント上の配列番号9の位置4に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基は、Sであり、アラインメント上の配列番号9の位置9に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基は、Aであり、アラインメント上の配列番号9の位置13に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基は、Aであり、アラインメント上の配列番号9の位置15に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基は、Aである。さらに好ましくは、アラインメント上の配列番号9の位置9に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基及び/又はアラインメント上の配列番号9の位置13に対応する位置での前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基は、Aである。また、好ましくは、前記C末端キャッピングモジュールは、28のアミノ酸を含む。
【0086】
さらに好ましいのは、配列番号2又は9のアミノ酸配列を有するC末端キャッピングモジュールであって、ここで、前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基の1つ又は複数が、対応するC末端キャッピングリピート又はキャッピング単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸により交換され、ここで、
位置4のアミノ酸残基はSであり;
位置9のアミノ酸残基はAであり;
位置13のアミノ酸残基はAであり;及び/又は、
位置15のアミノ酸残基はAである。
【0087】
好ましくは、前記C末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基の30%までを交換し、より好ましくは、アミノ酸残基の20%まで、さらにより好ましくは、10%までを交換する。また、好ましくは、そのようなC末端キャッピングモジュールは、天然のC末端キャッピングリピートである。
【0088】
また、好ましいのは、配列番号9に基づく上記C末端キャッピングモジュールのいずれかの位置1〜25まで又は位置1〜26までのアミノ酸を含むC末端キャッピングモジュールである。
【0089】
さらに好ましいのは、アミノ酸Gの前にNを含まないアミノ酸配列を有する、そのようなC末端キャッピングモジュールである。
【0090】
また、好ましいのは、配列番号9に基づく上記C末端キャッピングモジュールのいずれかと又は配列番号9自体と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、又は最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するC末端キャッピングモジュールである。
【0091】
さらに好ましいのは、配列番号2又は9と、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、又は最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するC末端キャッピングモジュールであって、ここで、前記C末端キャッピングモジュールは、位置9にアミノ酸Aを有し;好ましくは、前記C末端キャッピングモジュールは、位置9及び13にアミノ酸Aを有し;より好ましくは、前記C末端キャッピングモジュールは、位置9、13、及び15にアミノ酸Aを有し;最も好ましくは、前記C末端キャッピングモジュールは、位置9、13、及び15にアミノ酸Aならびに位置4にSを有する。
【0092】
さらに好ましいのは、位置14にアミノ酸Rを有さない及び/又は位置15にアミノ酸Eを有さない、そのようなC末端キャッピングモジュールである。
【0093】
また、好ましいのは、配列番号2、3、又は4と同一であるアミノ酸配列を有さない、そのようなC末端キャッピングモジュールである。
【0094】
さらに好ましいのは、配列番号9に基づくアミノ酸配列を有する、そのようなC末端キャッピングモジュールであって、ここで、前記C末端キャッピングモジュールは、位置26、27、及び28にA、L、R、M、K、及びN;より好ましくは、A、L、R、及びK;及び、最も好ましくは、K、A、及びLからなる群より選択されるアミノ酸を有する。
【0095】
リピートドメインのキャッピングモジュールを、本発明のキャッピングモジュールにより、当業者に公知の技術(例えばアミノ酸配列のアラインメント、変異誘発、及び遺伝子合成など)を組み合わせることにより交換することができる。例えば、配列番号17のC末端キャッピングリピートを、配列番号9のC末端キャッピングリピートにより、(i)配列番号9を伴う配列アラインメントによる、配列番号17(即ち、配列位置99〜126)のC末端キャッピングリピートの決定、(ii)配列番号17の決定されたC末端キャッピングリピートの配列を、配列番号9の配列を用いて交換すること、(iii)交換されたC末端キャッピングモジュールをコードするリピートドメインをコードする遺伝子の生成、(iv)大腸菌の細胞質中での改変リピートドメインの発現、及び(v)標準的な手段による改変リピートドメインの精製により交換することができる。
【0096】
さらに、本発明のリピートドメインは、N末端キャッピングモジュール(即ち、配列番号1のN末端キャッピングリピート)、それに続く、1つ又は複数のリピートモジュール(即ち、配列番号17の位置33〜98までのアミノ酸残基を含むリピートモジュール)、及びC末端キャッピングモジュール(即ち、配列番号9のC末端キャッピングリピート)を、遺伝子合成の手段により組み立てることにより遺伝的に構築することができる。遺伝的に組み立てられたリピートドメイン遺伝子を、次に、上に記載する通りに、大腸菌において発現させることができる。
【0097】
また、好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、アンキリンリピートドメイン又は設計アンキリンリピートドメインは、配列番号6、7、又は8の配列モチーフを伴うC末端キャッピングモジュールを含み、ここで、前記キャッピングモジュールは、位置3にアミノ酸Iを有し、ここで、前記リピートモジュールは、配列番号12のアンキリンリピート配列モチーフを伴うリピートモジュールにより先行される。
【0098】
さらに好ましいのは、結合タンパク質、リピートドメイン、アミノ酸C、M、又はNを欠くアミノ酸配列を有するN末端キャッピングモジュール又はC末端キャッピングモジュールである。
【0099】
さらに好ましいのは、結合タンパク質、リピートドメイン、アミノ酸Gの前にNを欠くアミノ酸配列を有するN末端キャッピングモジュール又はC末端キャッピングモジュールである。
【0100】
さらに好ましいのは、C末端キャッピングリピートを含む、任意のそのようなC末端キャッピングモジュールであって、ここで、前記キャッピングリピート中のアミノ酸残基の1つ又は複数が、対応するキャッピング単位又はリピート単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸残基により置換される。
【0101】
さらに好ましいのは、任意のそのようなN末端又はC末端キャッピングモジュールを含む結合タンパク質である。
【0102】
そのようなC末端キャッピングモジュールのアミノ酸配列の例は、配列番号19、21、27、28、38、40、及び42中の位置99〜126までのアミノ酸配列である。実施例6は、リピートドメインの熱的安定性が、それらのC末端キャッピングモジュールを、本発明のキャッピングモジュールにより交換することにより増加させることができることを実証する。
【0103】
用語「標的」は、個々の分子、例えば核酸分子、ポリペプチドもしくはタンパク質、炭水化物、又は任意の他の天然分子(そのような個々の分子の任意の部分、あるいは、そのような分子の2つ又はそれ以上の複合体を含む)などを指す。標的は、全細胞もしくは組織サンプルでよく、又は、それは任意の非天然分子もしくは部分でよい。好ましくは、標的は、天然もしくは非天然ポリペプチド又は化学的修飾(例えば、天然もしくは非天然のリン酸化、アセチル化、又はメチル化により修飾される)を含むポリペプチドである。本発明の特定の適用において、標的はxSAである。
【0104】
用語「xSA」は、哺乳動物の血清アルブミン(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、サル、又はヒトからの血清アルブミンなど)を指す。用語「MSA」は、マウス血清アルブミン(UniProtKB/Swiss−Prot一次受入番号P07724)を指す。用語「CSA」は、カニクイザル(即ち、macaca fascicularis)血清アルブミン(UniProtKB/Swiss−Prot一次受入番号A2V9Z4)を指す。用語「HSA」は、ヒト血清アルブミン(UniProtKB/Swiss−Prot一次受入番号P02768)を指す。
【0105】
用語「コンセンサス配列」は、アミノ酸配列を指し、ここで、前記コンセンサス配列は、複数のリピート単位の構造的及び/又は配列整列化により得られる。2つ又はそれ以上の構造的及び/又は配列整列化リピート単位を使用し、そしてアラインメント中でのギャップを許すことで、各々の位置での最も高頻度なアミノ酸残基を決定することが可能である。コンセンサス配列は、各々の位置で最も高頻度に表わされるアミノ酸を含むその配列である。2つ又はそれ以上のアミノ酸が、平均を上回り単一の位置で表わされる事象において、コンセンサス配列は、それらのアミノ酸のサブセットを含みうる。2つ又はそれ以上のリピート単位は、単一のリピートタンパク質中に含まれるリピート単位から、あるいは、2つ又はそれ以上の異なるリピートタンパク質から取ってもよい。
【0106】
コンセンサス配列及びそれらを決定するための方法は、当業者に周知である。
【0107】
「コンセンサスアミノ酸残基」は、コンセンサス配列中の特定の位置で見出されるアミノ酸である。2つ又はそれ以上、例、3、4、又は5つのアミノ酸残基が、前記の2つ又はそれ以上のリピート単位において類似の確率で見出される場合、コンセンサスアミノ酸は、最も高頻度で見出されるアミノ酸の1つ、あるいは、前記の2つ又はそれ以上のアミノ酸残基の組み合わせでありうる。
【0108】
さらに好ましいのは、非天然キャッピングモジュール、リピートモジュール、結合タンパク質、又は結合ドメインである。
【0109】
用語「非天然」は、合成又は天然からではないことを意味し、より具体的には、この用語はヒトの手で作られたことを意味する。用語「非天然結合タンパク質」又は「非天然結合ドメイン」は、前記結合タンパク質又は前記結合ドメインが、合成(即ち、アミノ酸からの化学的合成により産生される)又は組換えであり、天然からではないことを意味する。「非天然結合タンパク質」又は「非天然結合ドメイン」は、それぞれヒトが作ったタンパク質又はドメインであり、対応する設計核酸の発現により得られる。好ましくは、発現は、真核細胞もしくは細菌細胞中で、又は、無細胞インビトロ発現系を使用することにより行われる。さらに、この用語は、前記結合タンパク質又は前記結合ドメインの配列が、配列データベース中、例えば、GenBank、EMBL−Bank、又はSwiss−Prot中の非人工配列エントリーとして存在しないことを意味する。これらのデータベース及び他の類似の配列データベースは、当業者に周知である。
【0110】
本発明は、結合ドメインを含む結合タンパク質であって、ここで、前記結合ドメインはアンキリンリピートドメインであり、xSAに特異的に結合し、ここで、前記結合タンパク質及び/又は結合ドメインは、PBS中での熱的アンフォールディング時に40℃を上回る中点変性温度(Tm)を有し、PBS中で、37℃で1時間にわたりインキュベートされた場合、濃度10g/Lまでで5%(w/w)未満の不溶性凝集物を形成する。
【0111】
用語「PBS」は、137mM NaCl、10mMリン酸、及び2.7mM KClを含み、pH7.4を有するリン酸緩衝水溶液を意味する。
【0112】
好ましくは、結合タンパク質及び/又は結合ドメインは、pH7.4のPBS中又はpH5.8のMES緩衝液中での熱的アンフォールディング時に、45℃を上回る、より好ましくは50℃を上回る、より好ましくは55℃を上回る、最も好ましくは60℃を上回る中点変性温度(Tm)を有する。本発明の結合タンパク質又は結合ドメインは、生理学的条件下で、定義された二次及び三次構造を持つ。そのようなポリペプチドの熱的アンフォールディングは、その三次及び二次構造の喪失をもたらし、それは、例えば、円偏光二色性(CD)測定により追跡することができる。熱的アンフォールディング時での結合タンパク質又は結合ドメインの中点変性温度は、温度を約10℃から約100℃までゆっくりと増加させることによる、前記のタンパク質又はドメインの熱変性時での生理学的緩衝液における協同転移の中点の温度に対応する。熱的アンフォールディング時での中点変性温度の決定は、当業者に周知である。熱的アンフォールディング時での結合タンパク質又は結合ドメインのこの中点変性温度は、前記ポリペプチドの熱的安定性を示している。
【0113】
また、好ましいのは、5日間にわたり、好ましくは10日間にわたり、より好ましくは20日間にわたり、より好ましくは40日間にわたり、最も好ましくは100日間にわたり、37℃で、PBS中でインキュベートした場合、濃度20g/Lまで、好ましくは40g/Lまで、より好ましくは60g/Lまで、さらにより好ましくは80g/Lまで、最も好ましくは100g/Lまでの5%(w/w)の不溶性凝集物を形成する結合タンパク質及び/又は結合ドメインである。不溶性凝集物の形成は、視覚的な沈殿の出現、ゲルろ過、又は動的光散乱により検出することができ、それらは、不溶性凝集物の形成時に強く増加する。不溶性凝集物は、タンパク質サンプルから、10’000xgで10分間にわたる遠心により除去することができる。好ましくは、結合タンパク質及び/又は結合ドメインは、言及したインキュベーション条件下で、37℃で、PBS中で、2%未満、より好ましくは1%、0.5%、0.2%、0.1%、又は、最も好ましくは0.5%(w/w)未満の不溶性凝集物を形成する。不溶性凝集物のパーセンテージは、可溶性タンパク質からの不溶性凝集物の分離、それに続く、標準的な定量化方法による可溶性及び不溶性画分中のタンパク質量の決定により決定することができる。
【0114】
また、好ましいのは、100mMジチオトレイトール(DTT)を含むPBS中での1又は10時間にわたる37℃でのインキュベーション時に、その天然三次元構造を失わない結合タンパク質及び/又は結合ドメインである。
【0115】
1つの特定の実施態様において、本発明は、アンキリンリピートドメインである結合ドメインを含み、xSAに特異的に結合し、上に定義する通りの、示された又は好ましい中点変性温度及び非凝集特性を有する結合タンパク質に関し、ここで、前記結合タンパク質は、血清タンパク質(例えばxSAなど)に結合しない結合ドメインと比較して、哺乳動物において少なくとも5倍高い血漿中終末相半減期を有する。
【0116】
好ましくは、前記結合ドメインは、血清タンパク質(例えばxSAなど)に結合しない結合ドメインと比較して、哺乳動物において、少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、40倍、100倍、300倍、又は、最も好ましくは少なくとも10
3倍高い血漿中終末相半減期を有する。
【0117】
また、好ましくは、前記xSAに結合しない結合ドメインは、xSAの結合についての10
−4Mを上回る、より好ましくは10
−3Mを上回る、又は、最も好ましくは10
−2Mを上回るKdにより示される。xSAに結合しない結合ドメインの例は、配列番号32のリピートドメインである。
【0118】
さらに好ましくは、前記結合ドメインは、リピートドメインであって、配列番号32のリピートドメインと比較して、又は、DARPin#32、DARPin#41、もしくはDARPin#42と比較して、哺乳動物において少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、20倍、40倍、100倍、300倍、又は、最も好ましくは少なくとも10
3倍高い(即ち、長い)血漿中終末相半減期を有する。
【0119】
好ましい結合タンパク質は、ヒトにおいて、1を上回る、より好ましくは、3、5、7、10、15を上回る、又は、最も好ましくは、20日を上回る血漿中終末相半減期を有するHSAについての結合特異性を伴う結合ドメインを含む。
【0120】
結合ドメインの血漿中終末相半減期を、当業者に周知のアッセイにより決定することができる(Toutain, P.L., and Bousquet-Melou, A., J. Vet.Pharmacol.Ther.27(5), 427-439, 2004)。血漿中終末相半減期の決定に関する例を、実施例に与える。
【0121】
薬物、例えば、本発明の結合タンパク質又は結合ドメインなどの用語「血漿中終末相半減期」は、偽平衡に達した後に、哺乳動物に適用される薬物の血漿中濃度の半分に達するために要求される時間を指す。この半減期は、哺乳動物に投与された薬物の用量の半分を排除するために要求される時間として定義されない。
【0122】
1つの特定の実施態様において、本発明は、アンキリンリピートドメインである結合ドメインを含み、xSAに特異的に結合し、生物活性化合物を含む結合タンパク質に関する。
【0123】
用語「生物活性化合物」は、前記疾患を有する哺乳動物に適用された場合に、疾患修飾性である化合物を指す。生物活性化合物は、アンタゴニスト特性又はアゴニスト特性を有しうるが、タンパク質性の生物活性化合物又は非タンパク質性の生物活性化合物でありうる。
【0124】
そのようなタンパク質性の生物活性化合物は、例えば、本発明の結合ドメインに、標準的なDNAクローニング技術、それに続く、それらの標準的な発現及び精製を使用した遺伝子融合ポリペプチドの生成により、共有結合的に付着させることができる。例えば、DARPin#36は、ヒト成長因子(即ち、生物活性化合物)についての結合特異性を伴うリピートドメイン、それに続くHSAについての結合特異性を伴うリピートドメインを含む。
【0125】
そのような非タンパク質性の生物活性化合物を、例えば、本発明の結合ドメインに、化学的手段により、例えば、マレイミドリンカーを介したシステインチオールへの結合により、共有結合的に付着することができ、システインは、本明細書に記載する通りに、ペプチドリンカーを介して、結合ドメインのN又はC末端に結合されている。
【0126】
タンパク質性の生物活性化合物の例は、異なる標的特異性を有する(例、それに結合することにより成長因子を中和する)結合ドメイン、サイトカイン(例、インターロイキン)、成長因子(例、ヒト成長ホルモン)、抗体及びそれらのフラグメント、ホルモン(例、GLP−1)、及び任意の可能なタンパク質性薬物である。
【0127】
非タンパク質性の生物活性化合物の例は、毒素(例、ImmunoGenからのDM1)、GPCRを標的とする小分子、抗生物質、及び任意の可能な非タンパク質性薬物である。
【0128】
1つの特定の実施態様において、本発明は、xSAに特異的に結合するアンキリンリピートドメインを含み、生物活性化合物をさらに含む結合タンパク質に関し、ここで、前記結合タンパク質は、前記の未修飾の生物活性化合物の終末相半減期と比較して、哺乳動物において少なくとも2倍高い終末相半減期を有し、ここで、前記のより高い終末相半減期が、前記リピートドメインにより、前記結合タンパク質に与えられる。
【0129】
好ましくは、前記結合タンパク質は、前記の未修飾の生物活性化合物と比較して、哺乳動物において、少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、20倍、40倍、100倍、300倍、又は、最も好ましくは10
3倍高い血漿中終末相半減期を有する。
【0130】
別の好ましい実施態様は、xSAに特異的に結合する結合ドメインを含む組換え結合タンパク質であって、ここで、前記結合ドメインは、アンキリンリピートドメイン又は設計アンキリンリピートドメインである。そのようなアンキリンリピートドメインは、xSAへの結合に関与する1つ、2つ、3つ、又それ以上の内部リピートモジュールを含みうる。好ましくは、そのようなアンキリンリピートドメインは、N末端キャッピングモジュール、2〜4の内部リピートモジュール、及びC末端キャッピングモジュールを含む。好ましくは、前記結合ドメインは、アンキリンリピートドメイン又は設計アンキリンリピートドメインである。また、好ましくは、前記キャッピングモジュールは、キャッピングリピートである。
【0131】
特に、本発明は、本明細書において上に定義する通りの結合タンパク質に関し、ここで、アンキリンリピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンへの結合について、配列番号17〜31及び43〜48;好ましくは配列番号17〜31;より好ましくは配列番号19、21、27、及び28、特に、配列番号19及び27からなる群より選択されるアンキリンリピートドメインと競合する。
【0132】
最も好ましくは結合タンパク質であり、ここで、前記アンキリンリピートドメインは、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択され、ここで、前記アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している。
【0133】
また、好ましくは、前記リピートドメインは、xSAへの結合について、DARPin#17〜31及び43〜48の群より選択される結合タンパク質と競合する。好ましくは、前記リピートドメインは、xSAへの結合について、DARPin#19、21、27、28、45、46、47、及び48の群より選択される結合タンパク質と競合する。より好ましくは、前記リピートドメインは、xSAへの結合について、結合タンパク質DARPin#19、45、46、48、又は27と競合する;さらにより好ましくは、前記リピートドメインは、xSAへの結合について、結合タンパク質DARPin#46又は27と競合する。
【0134】
用語「結合について競合する」は、同じ標的に同時に結合するための本発明の2つの異なる結合ドメインの不能を意味し、両方が個々に同一の標的に結合することができる。このように、そのような2つの結合ドメインは、前記標的への結合について競合する。好ましくは、前記の2つの競合する結合ドメインは、前記標的上のオーバーラップする又は同じ結合エピトープに結合する。2つの結合タンパク質が標的への結合について競合するか否かを決定するための方法、例えば競合酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又は競合SPR測定(例、BioRadからのProteon機器を使用することによる)は、当業者に周知である。
【0135】
別の好ましい実施態様は、配列番号17〜31のリピートドメインからなる群より選択される、xSAについての結合特異性を伴うリピートドメインを含む結合タンパク質である。好ましくは、前記リピートドメインは、配列番号19、21、27、又は28のリピートドメインである。より好ましくは、前記リピートドメインは、配列番号19のリピートドメインである。また、より好ましくは、前記リピートドメインは、配列番号21のリピートドメインである。また、より好ましくは、前記リピートドメインは、配列番号27のリピートドメインである。また、より好ましくは、前記リピートドメインは、配列番号28のリピートドメインである。
【0136】
さらに好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、xSAについての結合特異性を伴う前記リピートドメインは、リピートドメインの前記群のリピートドメインと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記のアミノ酸配列同一性は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び、最も好ましくは少なくとも95%である。
【0137】
さらに好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、xSAについての結合特異性を伴う前記リピートドメインは、リピートドメインの前記群のリピートドメインのリピートモジュールと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有するリピートモジュールを含む。好ましくは、前記のアミノ酸配列同一性は、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び、最も好ましくは少なくとも95%である。
【0138】
さらに好ましいのは、結合タンパク質であって、ここで、前記結合タンパク質は、xSAについての結合特異性を伴う前記リピートドメインの2つ又はそれ以上を含む。好ましくは、前記結合タンパク質は、前記リピートドメインの2つ又は3つを含む。前記の2つ又はそれ以上のリピートドメインは、同じ又は異なるアミノ酸配列を有する。
【0139】
本発明に従ったリピートドメインを含む結合タンパク質のさらに好ましい実施態様において、前記リピートドメインのリピートモジュールのアミノ酸残基の1つ又は複数を、リピート単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸残基により交換する。好ましくは、30%までのアミノ酸残基を交換し、より好ましくは、20%まで、さらにより好ましくは、10%までのアミノ酸残基を交換する。最も好ましくは、そのようなリピート単位は、天然リピート単位である。
【0140】
本発明に従ったリピートドメインを含む結合タンパク質のさらに好ましい実施態様において、前記リピートドメインのN末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基の1つ又は複数を、N末端キャッピング単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸残基により交換する。好ましくは、30%までのアミノ酸残基を交換し、より好ましくは、20%まで、さらにより好ましくは、10%までのアミノ酸残基を交換する。最も好ましくは、そのようなN末端キャッピング単位は、天然N末端キャッピング単位である。
【0141】
本発明に従ったリピートドメインを含む結合タンパク質のさらに好ましい実施態様において、前記リピートドメインのC末端キャッピングモジュールのアミノ酸残基の1つ又は複数を、C末端キャッピング単位のアラインメント上の対応する位置で見出されるアミノ酸残基により交換する。好ましくは、30%までのアミノ酸残基を交換し、より好ましくは、20%まで、さらにより好ましくは、10%までのアミノ酸残基を交換する。最も好ましくは、そのようなC末端キャッピング単位は、天然C末端キャッピング単位である。
【0142】
さらに別の特定の実施態様において、アミノ酸残基の30%まで、より好ましくは、アミノ酸残基の20%まで、さらにより好ましくは、10%までを、リピート単位、N末端キャッピング単位、又はC末端キャッピング単位の対応する位置において見出されないアミノ酸を用いて交換する。
【0143】
さらなる実施態様において、本明細書において記載するxSA結合タンパク質又はドメインのいずれかを、1つ又は複数の追加の部分、例えば、異なる標的に結合し、二重特異的結合薬剤を作る部分、生物活性化合物、標識部分(例、蛍光標識、例えばフルオレセイン、又は放射活性トレーサーなど)、タンパク質精製を促進する部分(例、小ペプチドタグ、例えばHisタグ又はstrepタグなど)、改善された治療的効力のためにエフェクター機能を提供する部分(例、抗体依存的な細胞媒介性細胞傷害性を提供する抗体のFc部分、毒性タンパク質部分、例えば緑膿菌外毒素A(ETA)など、又は小分子毒性薬剤、例えばメイタンシノイド又はDNAアルキル化薬剤など)、又は改善された薬物動態を提供する部分などに共有結合的に結合させてもよい。改善された薬物動態は、認知された治療的な必要性に従って評価されうる。しばしば、恐らくは、タンパク質が、投与後に、血清中で利用可能なままである時間を増加させることにより、バイオアベイラビリティを増加させること及び/又は用量の間の時間を増加させることが望ましい。一部の例において、経時的なタンパク質の血清濃度の連続性を改善させる(例、投与後から短時間での濃度と次の投与前から短時間での濃度の間のタンパク質の血清濃度における差を減少させる)ことが望ましい。
【0144】
さらなる実施態様において、本発明は、特定の結合タンパク質、特定のN末端キャッピングモジュール、又は特定のC末端キャッピングモジュールをコードする核酸分子に関する。さらに、前記核酸分子を含むベクターを考える。
【0145】
さらに、上で言及した結合タンパク質、特に、リピートドメインを含む結合タンパク質、又は特定の結合タンパク質をコードする核酸分子の1つ又は複数、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な担体及び/又は希釈剤を含む医薬的組成物を考える。医薬的に許容可能な担体及び/又は希釈剤は当業者に公知であり、下でより詳細に説明する。さらに、上で言及した結合タンパク質、特に、リピートドメインを含む結合タンパク質の1つ又は複数を含む診断用組成物を考える。
【0146】
医薬的組成物は、上に記載する結合タンパク質及び医薬的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤を含む(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. [1980]に記載される通り)。当業者に公知の適した担体、賦形剤、又は安定剤は、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、固定油、オレイン酸エチル、生理食塩水中の5%デキストロース、等張性及び化学的安定性を改善させる物質、緩衝液、ならびに保存剤である。他の適した担体は、それ自体が、組成物を受ける個体に有害な抗体の産生を誘導しない任意の担体、例えば、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、及びアミノ酸共重合体などを含む。医薬的組成物は、また、追加の活性薬剤(例えば抗癌剤又は抗血管形成剤など)を含む組み合わせ製剤でありうる。
【0147】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌又は滅菌でなければならない。これは、滅菌ろ過膜を通したろ過により容易に達成される。
【0148】
医薬的組成物は、当業者の知識内の任意の適した方法により投与されうる。好ましい投与の経路は非経口的である。非経口投与において、本発明の医薬は、上に定義する医薬的に許容可能な賦形剤との関連において、単位投与量の注射可能な形態(例えば、溶液、懸濁液、又は乳濁液など)において製剤化される。投与量及び投与の様式は、処置される個人及び特定の疾患に依存する。一般的に、医薬的組成物は、本発明の結合タンパク質が、1μg/kg〜20mg/kgの間、より好ましくは10μg/kg〜5mg/kgの間、最も好ましくは0.1〜2mg/kgの間の用量で与えられるように投与される。好ましくは、それはボーラス用量として与えられる。連続注入も使用してもよく、浸透圧ミニポンプを介した連続的な皮下送達を含む。そのような場合、医薬的組成物は、5〜20μg/kg/分の間、より好ましくは7〜15μg/kg/分の間の用量で注入されうる。
【0149】
さらに、上で言及する医薬的組成物のいずれかが、障害の処置のために考えられる。本発明は、さらに、処置の方法を提供する。この方法は、それを必要とする患者に、本発明の結合タンパク質の治療的に効果的な量を投与することを含む。
【0150】
さらに、それを必要とする患者に、上で言及する医薬的組成物の効果的な量を投与することを含む、ヒトを含む哺乳動物において病理学的状態を処置する方法が考えられる。
【0151】
本発明に従った結合タンパク質は、いくつかの方法、例えばバクテリオファージ(WO 1990/002809、WO 2007/006665)又は細菌細胞(WO 1993/010214)の表面上でのディスプレイ、リボソームディスプレイ(WO 1998/048008)、プラスミド上でのディスプレイ(WO 1993/008278)、又は共有結合的RNAリピートタンパク質ハイブリッド構築物を使用することにより(WO 2000/032823)、又は細胞内発現及び選択/スクリーニング、例えばタンパク質相補性アッセイ(WO 1998/341120)などにより得られうる及び/又はさらに進化されうる。そのような方法は、当業者に公知である。
【0152】
本発明に従った結合タンパク質の選択/スクリーニングのために使用されるアンキリンリピートタンパク質のライブラリーは、当業者に公知のプロトコールに従って得てもよい(WO 2002/020565、Binz, H.K., et al., J. Mol. Biol., 332, 489-503, 2003、及びBinz et al., 2004、前掲文献)。xSAに特異的なDARPinの選択のための、そのようなライブラリーの使用を、実施例1に与える。同様に、上に提示されるアンキリンリピート配列モチーフを、xSAに特異的なDARPinの選択又はスクリーニングのために使用されうるアンキリンリピートタンパク質のライブラリーを構成するために使用することができる。さらに、本発明のリピートドメインは、本発明に従ったリピートモジュール及び適切なキャッピングモジュール又はキャッピングリピート(Forrer, P., et al., FEBS letters 539, 2-6, 2003)から、標準的な組換えDNA技術(例、WO 2002/020565、Binz et al., 2003、前掲文献、及びBinz et al., 2004、前掲文献)を使用して、モジュール組み立てされうる。
【0153】
本発明は、実施例に記載される特定の実施態様に制限されない。他の供給源を、以下に記載する一般的な概要に従って使用及び加工してよい。
【0154】
実施例
下に開示される出発材料及び試薬の全てが、当業者に公知であり、商業的に利用可能である、又は、周知の技術を使用して調製することができる。
【0155】
材料
化学薬品はFluka(スイス)から購入した。オリゴヌクレオチドはMicrosynth(スイス)からであった。特記なき場合、DNAポリメラーゼ、制限酵素、及び緩衝液は、New England Biolabs(USA)又はFermentas(リトアニア)からであった。クローニング及びタンパク質産生株は、大腸菌XL1−blue(Stratagene、USA)又はBL21(Novagen、USA)であった。異なる種からの精製血清アルブミン及び血清を購入した(例、Sigma-Aldrich、Switzerland又はInnovative Research、USAから)。異なる種のビオチン化血清アルブミンを、標準的なビオチン化試薬及び方法を使用して、精製血清アルブミンの1級アミンへのビオチン部分の結合を介して化学的に得た。
【0156】
分子生物学
特記なき場合、方法は、記載されるプロトコールに従って実施する(Sambrook J., Fritsch E. F. and Maniatis T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring HarborLaboratory 1989, New York)。
【0157】
設計アンキリンリピートタンパク質ライブラリー
N2C及びN3C設計アンキリンリピートタンパク質ライブラリーが記載されている(WO 2002/020565; Binz et al. 2003、前掲文献;Binz et al. 2004、前掲文献)。N2C及びN3C中の桁は、N末端とC末端キャッピングモジュールの間に存在する無作為化リピートモジュールの数を記載する。リピート単位及びモジュール内部の位置を定義するために使用される命名法は、Binz et al. 2004、前掲文献に基づき、アンキリンリピートモジュール及びアンキリンリピート単位の境界が、1つのアミノ酸位置だけシフトしているという改変を伴う。例えば、Binz et al. 2004(前掲文献)のアンキリンリピートモジュールの位置1は、本開示のアンキリンリピートモジュールの位置2に対応する。結果的に、Binz et al. 2004(前掲文献)のアンキリンリピートモジュールの位置33は、以下の本開示のアンキリンリピートモジュールの位置1に対応する。
【0158】
全てのDNA配列をシークエンシングにより確認し、全ての記載されたタンパク質の算出された分子量を質量分析により確認した。
【0159】
実施例1:xSAについての結合特異性を伴うリピートドメインを含む結合タンパク質の選択
リボソームディスプレイ(Hanes, J. and Pluckthun, A., PNAS 94, 4937-42, 1997)を使用し、xSAについての結合特異性を伴う多くの設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)を、Binz et al.2004(前掲文献)により記載されるN2C又はN3C DARPinより選択した。特異的(xSA;即ち、MSA、HSA、又はCSA)及び非特異的(MBP、大腸菌マルトース結合タンパク質)標的に向けた、選択されたクローンの結合を、粗抽出物ELISAにより評価し、xSA結合タンパク質が成功裏に選択されたことを示す。配列番号17〜31のリピートドメインは、xSAについての結合特異性を伴うリピートドメインを含む、選択された結合タンパク質のアミノ酸配列を構成する。選択された結合剤の配列解析によって、選択された結合剤の特定のファミリーに固有の特定のアンキリンリピート配列モチーフが明らかになった。xSAについての結合特異性を伴うリピートドメイン中に存在する、そのようなアンキリンリピート配列モチーフを、配列番号11〜14に提供する。
【0160】
リボソームディスプレイによる血清アルブミンに特異的なアンキリンリピートタンパク質の選択
血清アルブミンに特異的なアンキリンリピートタンパク質の選択は、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun、前掲文献)により、標的タンパク質としてのHSA、CSA、又はMSA、記載される設計アンキリンリピートタンパク質のライブラリー(WO 2002/020565、Binz et al., 2003、前掲文献、及びBinz et al., 2004、前掲文献)、及び確立されたプロトコール(Zahnd, C., Amstutz, P. and Pluckthun, A., Nat. Methods 4, 69-79, 2007)を使用して実施した。リボソームディスプレイ選択ラウンドを、HSA、CSA、又はMSA(ニュートラアビジン又はストレプトアビジン上に固定化されたHSA又はMSAのビオチン化変異体を含む)上で、N2C及びN3C DARPinライブラリーの両方を用いて、確立されたプロトコール(Binz et al. 2004、前掲文献)を使用して実施した。各々の選択ラウンド後の逆転写(RT)−PCRサイクルの数を、40から30に、一定に低下させ、結合剤の濃縮に起因する収率に調整した。HSA、CSA、又はMSA上での4つの選択ラウンドは、マイクロモルからナノモルの親和性DARPinのプールをもたらし、単一クローンのELISA及びSPR測定により明らかにされた通りである。特定のDARPinの親和性を、さらに、当業者に周知の方法による親和性成熟を使用して、改善した(上に記載する通りに、改善された結合剤についてのエラープローンPCRならびに選択及びスクリーニングによりDARPinクローンを多様化することによる)。
【0161】
選択されたクローンは、粗抽出物ELISAにより示される通り、血清アルブミンに特異的に結合する
xSAに特異的に結合する個々の選択されたDARPinを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により、DARPin発現細胞の大腸菌粗抽出物を使用して、標準的なプロトコールを使用して同定した。リボソームディスプレイにより、選択されたクローンを、pQE30(Qiagen)発現ベクター中にクローン化し、大腸菌XL1−Blue(Strategene)中に形質転換し、次に、37℃で、1mlの成長培地(1%グルコース及び100μg/mlアンピシリンを含む2YT)を含む96深底ウェルプレート(単一ウェル中に各々のクローン)中で一晩成長させた。50μg/mlアンピシリンを含む1mlの新鮮2YTに、新たな96深底ウェルプレートにおいて、100μlの一晩培養物を用いて接種した。2時間にわたる37℃でのインキュベーション後、発現を、IPTG(1mM最終濃度)を用いて誘導し、3時間にわたり継続させた。細胞を収集し、100μlのB−PERII(Pierce)中に再懸濁し、室温で振盪しながら15分間にわたりインキュベートした。次に、900μlのPBS−TC(0.25%カゼイン加水分解物、0.1% Tween20(登録商標)、pH7.4を添加したPBS)を加え、細胞細片を遠心により除去した。100μlの各々の溶解クローンを、xSA又はそれらのビオチン部分を介して固定化された無関係のMBPのいずれかを含む、NeutrAvidinコーティングしたMaxiSorpプレートのウェルに適用し、1時間にわたり室温でインキュベートした。PBS−T(0.1% Tween 20(登録商標)を添加したPBS、pH7.4)を用いた十分な洗浄後、プレートを、モノクローナル抗RGS(His)4抗体(34650、Qiagen)を一次抗体として、アルカリフォスファターゼと共役させたポリクローナルヤギ抗マウス抗体(A3562、Sigma)を二次試薬として使用した標準的なELISA手順を使用して開発した。結合を、次に、2ナトリウム4−ニトロフェニルリン酸(4NPP、Fluka)をアルカリフォスファターゼのための基質として使用することにより検出した。色の発生を、405nmで測定した。そのような細胞粗抽出物ELISAによる数百のクローンのスクリーニングによって、xSAについての特異性を伴う百を上回る異なるDARPinが明らかになった。これらの結合タンパク質を、さらなる解析のために選んだ。xSAに特異的に結合する、選択されたリピートドメインのアミノ酸配列の例を、配列番号17〜31、37〜40、及び43〜48において提供する。
【0162】
xSAについての結合特異性を伴う、選択されたリピートドメインからのリピート配列モチーフの推定
xSAについての結合特異性を伴う、選択されたリピートドメインのアミノ酸配列を、さらに、当業者に公知の配列解析ツールにより解析した(WO 2002/020565; Forrer et al., 2003、前掲文献;Forrer, P., Binz, H.K., Stumpp, M.T.及びPluckthun, A., ChemBioChem, 5(2), 183-189, 2004)。しかしながら、天然リピートモチーフを使用し、リピート配列モチーフを推定したWO 2002/020565とは対照的に、本明細書において、リピート配列モチーフを、xSAについての結合特異性を伴う、選択されたリピートドメインのリピート単位から推定した。それにより、共通のリピート配列モチーフを含む、選択されたリピートドメインのファミリーを決定した。xSAについての結合特異性を伴うリピートドメイン中に存在する、そのようなリピート配列モチーフを、配列番号11〜14に提供する。
【0163】
DARPinの高レベル及び可溶性発現
さらなる解析のために、上に記載する通りの細胞粗抽出物ELISAにおいて特異的なxSA結合を示す、選択されたクローンを、大腸菌BL21又はXL1−Blue細胞において発現させ、標準的なプロトコールを使用し、それらのHisタグを使用して精製した。25mlの一晩静置培養物(LB、1%グルコース、100mg/Lアンピシリン;37℃)を使用し、1Lの培養物(同じ媒質)に接種した。600nmでの吸光度0.7で、培養物を、0.5mMのIPTGを用いて誘導し、37℃で4時間にわたりインキュベートした。培養物を遠心し、結果として得られたペレットを、40mlのTBS500(50mM Tris−HCl、500mM NaCl、pH8)中に再懸濁し、超音波処理した。ライセートを再遠心し、グリセロール(10%(v/v)最終濃度)及びイミダゾール(20mM最終濃度)を、結果として得られた上清に加えた。タンパク質を、製造業者(QIAgen、ドイツ)の指示に従い、Niニトリロ三酢酸カラム(2.5mlカラム容積)上で精製した。あるいは、6xHisタグを欠くDARPin又は選択されたリピートドメインを、陰イオン交換クロマトグラフィー、それに続くサイズ排除クロマトグラフィーにより、標準的な樹脂及び当業者に公知のプロトコールに従って精製した。血清アルブミンへの結合特異性を伴う、高度に可溶性のDARPinの200mgまでを、1リットルの大腸菌培養物から精製することができ、SDS−15% PAGEから推定した通り、純度>95%を伴う。そのような精製DARPinを、さらなる特徴付けのために使用する。
【0164】
実施例2:xSAについての結合特異性を伴うDARPinの安定性解析及びサイズ排除クロマトグラフィー
xSAについての結合特異性を伴うDARPin#19〜22及びDARPin#27〜30を、上に記載する通り、それらのHisタグを使用して、均質近くまで精製し、28日間にわたり、30mg/ml(〜2mM)で、40℃でPBS中に保存した(安定性試験)。0日目(
図1a)及び28日目(
図1b)に、サンプルを取り、500μMまで希釈し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により解析し、それらの見掛けの分子量及び安定性(即ち、それらの凝集、多量体化、又は分解傾向)を経時的に評価した。
【0165】
さらなる実験(
図1c)において、xSAについての結合特異性を伴うDARPin#19及びDARPin#43〜48を、上に記載する通り、それらのHisタグを使用して、均質近くまで精製し、28日間にわたり、約100mg/mlで、−80℃でPBS中に保存し、500μMまで希釈し、特徴付け(即ち、それらの凝集、多量体化、又は分解傾向)のためにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により解析した。注目すべきは、最初の解析シリーズと比較して、より大きなカラムを使用した(下を参照のこと)。
【0166】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
分析的SECを、Superdex 200 5/150カラム(
図1a及び
図1b)又はSuperdex 200 10/300GLカラム(
図1c)(GE Healthcare)のいずれかを使用したHPLCシステム(Agilent 1200シリーズ)を使用して、20℃で行った。Superdex 200 5/150カラムは、床容積3.0ml、及び空隙容積1.08mlを有する(ブルーデキストランを使用して実験的に決定)。Superdex 20010/300GLカラムは、床容積24ml、及び空隙容積約8mlを有する。測定は、当業者に公知の標準的手順に従って実施した。泳動を、流速0.2ml/分及び最高圧力15バール(Superdex 200 5/150)又は0.6ml/分及び最高圧力18バール(Superdex 200 10/300GL)で、PBS中で行った。タンパク質のサンプルを、PBS中で約20〜500μMまで希釈し、ろ過し(0.22μm)、希釈サンプルの20〜100μlを、分離のために、カラム上に注入した。タンパク質サンプルの溶出プロファイルを、280nmでの吸光度を読むことにより記録した。分子量6.5kDaを伴うアプロチニン(AP)、分子量29kDaを伴う炭酸脱水酵素(CA)、及び分子量75kDaを伴うコンアルブミン(CO)を標準タンパク質として使用し、サンプルタンパク質の見掛けの分子量を決定することができる較正曲線を得た。
【0167】
結果を
図1に示す。DARPin#19−22及び27−30は、安定性試験の0日目及び28日目での区別不能なSECクロマトグラム(即ち、区別不能な溶出プロファイル)を示す。結論的には、全てのDARPinが、アッセイ条件下で単量体として溶出し、DARPin#19−23及び27−30は、40℃で、PBS中で、少なくとも1ヶ月間にわたり安定である(即ち、それらの溶出プロファイルによって、いかなる凝集、多量体化、又は分解傾向も示さなかった)。
【0168】
実施例3:xSAについての結合特異性を伴うDARPinの熱的安定性
xSAについての特異性を伴うDARPinの熱的安定性を、蛍光ベースの熱的安定性アッセイを用いて解析した(Niesen, F.H., Nature Protocols 2(9): 2212-2221, 2007)。それにより、タンパク質(即ち、そのようなDARPin)がアンフォールディングする温度を、タンパク質の疎水性部分(タンパク質がアンフォールディングする時に露出される)についての親和性を伴う色素(例、SYPRO Orange; Invitrogen、カタログ番号S6650)の蛍光における増加により測定する。それにより得られた蛍光遷移の中点(より低い蛍光強度からより高い蛍光強度まで)での温度は、次に、分析したタンパク質の中点変性温度(Tm)に対応する。
【0169】
蛍光ベースの熱的安定性アッセイ
SYPROオレンジを蛍光色素として使用したDARPinの熱的変性を、リアルタイムPCR機器(即ち、CFX96光学システム(BioRad)との組み合わせにおけるC1000サーマルサイクラー(BioRad))を使用して測定した。DARPinを、80μM濃度で、1xSYPRO Orange(5’000x SYPRO Orange原液から希釈、Invitrogen)を含むPBS(pH7.4)又はMES緩衝液(pH5.8)のいずれかにおいて調製し、50μlのそのようなタンパク質溶液又は緩衝液だけを、白色96ウェルPCRプレート(Bio-Rad)中に加えた。プレートを、Microseal 'B' Adhesive Seals(Bio-Rad)を用いてシールし、リアルタイムPCR機器において20℃から95℃まで、0.5℃増分(各々の温度増分後の25秒の保持段階を含む)で加熱した。DARPinの熱的変性の後に、各々の温度増分でのサンプルの相対蛍光単位の測定が続いた。プレートのウェル中の相対蛍光単位を、リアルタイムPCR機器のチャネル2(即ち、励起は515〜535nmであり、検出は560〜580nmであった)を使用して測定した。緩衝液だけについて得られた、対応する値を減算した。それにより得られた熱的変性転移の中点から、分析されたDARPin についてのTm値を決定することができる。
【0170】
PBS(pH7.4)又はMES緩衝液(pH5.8)中での熱的変性、それに続く、SYPRO Orangeの蛍光強度における増加の結果を、
図2及び
図3に示す。測定された熱的変性転移は、分析された、xSAについての結合特異性を伴う全てのDARPinが、(pH7.4及びpH5.8の両方で)40℃を十分に上回るTm値を有する。
【0171】
実施例4:表面プラズモン共鳴解析による、xSAについての結合特異性を伴うDARPinの特徴付け
xSAについての結合特異性を伴うDARPinを、フローセル中で、それらのHisタグを介して、コーティングされたα−RGS−His抗体(Qiagen、カタログ番号34650)に固定化し、ヒト、カニクイザル(cyno)、マウス、ラット、ウサギ、及びイヌの血清アルブミンと固定化DARPinとの相互作用を解析した。
【0172】
表面プラズモン共鳴(SPR)解析
SPRを、ProteOn機器(BioRad)を使用して測定した。測定は、当業者に公知の標準的な手順に従って実施した。泳動緩衝液は、0.01% Tween 20(登録商標)を含むPBS(pH7.4)であった。抗RGS His抗体を、約2000共鳴単位(RU)のレベルまで、GLCチップ(BioRad)上に共有結合的に固定した。抗体コーティングされたチップ上でのDARPinの固定化を、次に、300秒において150μlの1μM DARPin溶液を注射することにより実施した(流速=30μl/分)。異なる種の血清アルブミンとの相互作用を、次に、60秒間で、濃度400、200、100、50nmで異なる血清アルブミンを含む容積100μl泳動緩衝液(0.01% Tween(登録商標)を含むPBS)(オン速度測定)、それに続く、10〜30分間にわたる泳動緩衝液流(流速=100μl/分)(オフ速度測定)を注入することにより測定した。非コーティングレファレンスセル及びレファレンス注入(即ち、泳動緩衝液だけの注入)のシグナル(即ち、共鳴単位(RU)値)を、血清アルブミンの注入後に得られたRUトレースから減算した(ダブルレファレンス)。オン速度及びオフ速度の測定値から得られたSRPトレースから、対応するDARPin血清アルブミン相互作用のオン及びオフ速度を決定することができる。
【0173】
結果を表1及び表2にまとめる。解離定数(Kd)を、推定されたオン及びオフ速度から、当業者に公知の標準的な手順を使用して算出し、約3〜約300nmまでの範囲であることが見出された。ヒト及びカニクイザルの血清アルブミンは、分析された全てのDARPinにより結合され、ウサギ、マウス、ラット、及びイヌの血清アルブミンは、これらのDARPinのサブセットだけにより結合される。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
実施例5:xSAについての結合特異性を伴うDARPinの血漿中終末相半減期
マウス及びカニクイザル(Macaca fascicularis、また、「cyno」として省略される)におけるDARPinの血漿中終末相半減期を、当業者に公知の標準的な手順に従って決定した(Toutain, et al.、前掲文献)。特定の量のDARPinを、哺乳動物中に静脈内注射し、血漿からのDARPinクリアランスを、その血漿中濃度を追跡することにより経時的に追跡した。DARPin濃度は、最初に、偽平衡に達するまで減少し(アルファ相)、血漿中でのDARPin濃度の指数関数的なさらなる減少が続いた(ベータ相)。このベータ相から、DARPinの血漿中終末相半減期を、次に、算出することができる。
【0177】
マウスにおけるDARPin血漿クリアランスの決定
xSAについての結合特異性を伴うDARPinの血漿クリアランスを評価するために、テストタンパク質を放射標識し、未感作Balb/cマウスの尾静脈中に注射した。以下のDARPinを注射した:DARPin#19、DARPin#21、DARPin#23、DARPin#25、DARPin #18, 、DARPin#32、DARPin#35、DARPin#36 、DARPin#33、DARPin#34、DARPin#37、DARPin#38、DARPin#43、DARPin#44、DARPin#45、DARPin#46、DARPin#47、及びDARPin#48。DARPinを、以前に記載された通りに、
99mTcカルボニル複合体を用いて放射標識した(Waibel, R., et al., Nature Biotechnol.17(9), 897-901, 1999)。DARPin(40μg)を、PBS(pH7.4)中の400μlに希釈する前に、1時間にわたり、
99mTcカルボニル(0.8〜1.6mCi)を用いてインキュベートした。各々のマウスに、それにより得られた標識DARPin溶液(10μgタンパク質及び0.2〜0.4mCiと等価)の100μlを用いて静脈内注射した。マウスの血液サンプルを、初回注射後1時間、4時間、24時間、及び48時間目に採取し、サンプルの放射活性を測定した。特定の時間点で測定した放射活性のレベルは、その時間点で血漿中に依然として存在するDARPinの量についての直接的な測定値である。%注射用量は、
99mTcの放射活性崩壊について補正された注射サンプルの全放射活性と比べた、特定の時間点で測定されたマウスの全血液(18gのマウスについて1.6ml)での全放射活性のパーセンテージである。
【0178】
MSAについての結合特異性を伴うDARPinは、xSAについての結合特異性を有さないDARPin#32と比較した場合、マウスにおいて強く増加した血漿中終末相半減期を有する(
図4)。DARPin#19、DARPin#21、DARPin#23、DARPin#33、DARPin#37、DARPin#43、DARPin#44、DARPin#45、DARPin#46、DARPin#47、及びDARPin#48は、マウスにおける血漿中終末相半減期約2〜2.5日を有した。
【0179】
カニクイザルにおけるDARPin血漿クリアランスの決定
PBS中で希釈したDARPinを、カニクイザルの橈側皮静脈内にボーラス注射として注射した。以下のDARPinを注射した:DARPin#26(0.5mg/kg)、DARPin#24(0.5mg/kg)、DARPin#17(0.5mg/kg)、DARPin#34(1mg/kg)、及びDARPin#32(0.5mg/kg)。注射後の異なる時間点で、血漿を、動物の大腿静脈から採取した血液から生成した。血漿サンプル中のDARPinの濃度を、次に、当業者に公知の標準的なプロトコールを使用したサンドイッチELISA及び公知のDARPin濃度を伴う適切なDARPin標準曲線により決定した。
【0180】
カニクイザルの血漿サンプルを、抗DARPin特異的ウサギモノクローナル抗体を用いてコーティングしたMaxiSorp ELISAプレート上で、PBS−C(0.25%カゼインを含むPBS、pH7.4)中で連続希釈した。PBS−T(0.1% Tween 20(登録商標)を添加したPBS、pH7.4)を用いた十分な洗浄後、プレートを、ホースラディッシュペルオキシダーゼHRP(Qiagen)を用いて標識したモノクローナル抗RGS(His)4抗体を用いて開発した。結合を、次に、100μlのBM-Blue POD基質(Roche Diagnostics)を使用することにより検出した。反応を、50μlの1M H
2SO
4を加えることにより停止した。450nmでの吸光度(620nmでの吸光度を減算)を測定した。血漿サンプル中のDARPinの濃度を、サル血清中で希釈したDARPinの標準曲線上で単一指数回帰を実施することにより算出した(Graphpad Prism)。DARPinの血漿中終末相半減期を、注射後240時間までの決定された濃度値について非線形回帰(二相崩壊)を実施することにより算出した。第二(ベータ)相の半減期は、血漿中終末相半減期に対応する。
【0181】
xSAについての結合特異性を伴うDARPinは、xSAについての結合特異性を有さないDARPin#32と比較して、カニクイザルにおいて増加した血漿中終末相半減期を有する(
図5、表3)。DARPin#19、DARPin#21、DARPin#43、DARPin#44、DARPin#45、DARPin#46、DARPin#47、及びDARPin#48は、カニクイザルにおける血漿中終末相半減期約10〜15日を有した。
【0182】
【表3】
【0183】
実施例6:改善されたC末端キャッピングモジュールを伴うDARPinのより高い熱的安定性
DARPinの熱的安定性を、実施例3に記載する通り、蛍光ベースの熱的安定性アッセイを用いて分析した。あるいは、DARPinの熱的安定性を、CD分光法により、即ち、当業者に周知の技術による222nmでのその円偏光二色性(CD)シグナルに従うことによる、その熱変性の測定により分析した。サンプルのCDシグナルを、1℃/分の温度勾配を使用して、PBS(pH7.4)中で濃度0.02mMのタンパク質を20℃から95℃までゆっくり加熱しながら、Jasco J-715機器(Jasco、日本)において222nmで記録した。これは、DARPinの変性を追跡するための効果的な手段である。なぜなら、それらは、主に、アンフォールディング時に、222nmでのそれらのCDシグナルにおける強い変化を示すアルファヘリックスからなるからである。DARPinについてのそのような測定されたCDシグナルトレースの観察された転移の中点は、そのTm値に対応する。
【0184】
DARPin#37(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号37)の熱的安定性を、蛍光ベースの熱的安定性アッセイを使用して、DARPin#38(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号38)の熱的安定性と比較した。これらの2つのDARPinは、それらのリピートドメインのC末端キャッピングモジュールを除き、同一のアミノ酸配列を持つ。DARPin#38(しかし、DARPin#37ではない)のリピートドメインは、本明細書に記載する通り、改善されたCキャッピングモジュールを含む。DARPin#37及びDARPin #38について決定されたPBS(pH7.4)中のTm値は、それぞれ約63℃及び約73℃であった。DARPin#37及びDARPin#38について決定されたMES緩衝液(pH5.8)中のTm値は、それぞれ約54.5℃及び約66℃であった。
【0185】
DARPin#39(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号39)の熱的安定性を、蛍光ベースの熱的安定性アッセイを使用して、DARPin#40(そのN末端に融合されたHisタグ(配列番号15)を伴う配列番号40)の熱的安定性と比較した。これらの2つのDARPinは、それらのリピートドメインのC末端キャッピングモジュールを除き、同一のアミノ酸配列を持つ。DARPin#40(しかし、DARPin#39ではない)のリピートドメインは、本明細書に記載する通り、改善されたCキャッピングモジュールを含む。DARPin#39及びDARPin#40について決定されたMES緩衝液(pH5.8)中のTm値は、それぞれ約51℃及び約55℃であった。
【0186】
DARPin#41(配列番号41)の熱的安定性を、CD分光法を使用して、DARPin#42(配列番号42)の熱的安定性と比較した。これらの2つのDARPinは、それらのリピートドメインのC末端キャッピングモジュールを除き、同一のアミノ酸配列を持つ。DARPin#42(しかし、DARPin #41ではない)のリピートドメインは、本明細書に記載する通り、改善されたCキャッピングモジュールを含む。DARPin#41及びDARPin#42について決定されたPBS(pH7.4)中のTm値は、それぞれ約59.5℃及び約73℃であった。
少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質であって、ここで、該リピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、該アンキリンリピートドメインは、配列番号17〜31及び43〜48からなる群より選択される1つのアンキリンリピートドメインと少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここで、該アンキリンリピートドメインの位置1のG及び/又は位置2のSが場合により欠損している、結合タンパク質。
少なくとも1つのアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質であって、ここで、該アンキリンリピートドメインは、哺乳動物の血清アルブミンについての結合特異性を有し、ここで、該アンキリンリピートドメインは、下記:
(1)配列番号49、
(2)配列番号50、
(3)配列番号51、
(4)配列番号52、
(5)配列番号49における5つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されているアミノ酸配列、
(6)配列番号50における4つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されているアミノ酸配列、
(7)配列番号51における3つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されているアミノ酸配列、
(8)配列番号52における6つまでのアミノ酸が、任意のアミノ酸により交換されているアミノ酸配列、
からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するアンキリンリピートモジュールを含む、結合タンパク質。