特開2017-48229(P2017-48229A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-48229(P2017-48229A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】制御放出粘膜付着システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20170217BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20170217BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170217BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20170217BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170217BHJP
【FI】
   A61K31/167
   A61K9/06
   A61K9/08
   A61K9/12
   A61K9/20
   A61K9/68
   A61K9/70
   A61K47/10
   A61K47/28
   A61K47/34
   A61P1/02
   A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-215838(P2016-215838)
(22)【出願日】2016年11月4日
(62)【分割の表示】特願2013-539955(P2013-539955)の分割
【原出願日】2011年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/413,982
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】593172050
【氏名又は名称】ジ・オハイオ・ステイト・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】THE OHIO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】マレー,スーザン・アール
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン,ピーター・イー
(72)【発明者】
【氏名】ストーナー,ゲーリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】シュウェンデマン,スティーブン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,カシャッパ−グード
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA69
4C076AA72
4C076BB22
4C076CC22
4C076CC26
4C076DD08E
4C076DD09E
4C076DD37N
4C076DD38N
4C076EE10A
4C076EE32A
4C076EE47A
4C076FF15
4C076FF34
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA06
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA77
4C206NA11
4C206NA13
4C206ZA67
4C206ZB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】口腔癌及び前癌病変の化学予防のための製剤並びに該製剤を製造するための方法の提供。
【解決手段】少なくとも1つの粘膜付着材料;少なくとも有効量、例えば、約0.1重量%〜約5重量%のフェンレチニド又はその医薬的に許容される塩;及び、プロピレングリコール、メントール、及びテルペン又はテルペノイド組成物の1以上より選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤;並びに少なくとも1つの可溶化剤、を含んでなる製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粘膜付着材料;少なくとも有効量のフェンレチニド又はその医薬的に許容される塩;及び、プロピレングリコール(PG)、メントール、及びテルペン又はテルペノイド組成物の1以上より選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤;並びに少なくとも1つの可溶化剤、を含んでなる製剤。
【請求項2】
フェンレチニドが約0.1重量%〜約5重量%で存在する、請求項1の製剤。
【請求項3】
経粘膜浸透促進剤が約1重量%〜約2.5重量%のPGと1重量%〜約5重量%のメントールを含む、請求項1の製剤。
【請求項4】
フェンレチニドと少なくとも1つの浸透促進剤が少なくとも共通の粘膜上で接触するように適用される、請求項1の製剤。
【請求項5】
粘膜が頬側粘膜である、請求項4の製剤。
【請求項6】
練り歯磨き剤、口腔洗浄剤又は洗口剤、ゲル又はペースト剤、スプレー剤、チューインガム剤、及び/又は口内錠剤のような口腔用製品として提示される、請求項1の製剤。
【請求項7】
10μg、15μg、25μg、50μg、100μg、500μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、及び10mgからなる群より選択される量での所定量のフェンレチニドと付着材料を含有し、付着材料は、被検者の口腔粘膜への付着を提供する、請求項1の製剤。
【請求項8】
口腔粘膜より吸収されるフェンレチニドの量が、剤形中の薬物の少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、及び少なくとも99%からなる群より選択される、請求項1の製剤。
【請求項9】
請求項1の製剤より構成される少なくとも1つの薬物放出層、少なくとも1つの付着層、及び少なくとも1つの支持層を含んでなる、経粘膜薬物送達システム。
【請求項10】
少なくとも有効量のフェンレチニド又はその医薬的に許容される塩と、プロピレングリコール(PG)及びメントールより選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤を含んでなる製剤;並びに、
医薬剤形の口腔粘膜への付着を提供する付着材料、
を含んでなる、経口経粘膜投与用の医薬剤形。
【請求項11】
疾患又は障害の治療及び予防のための、請求項1の製剤。
【請求項12】
疾患又は障害が癌状態又は前癌状態である、請求項11の製剤。
【請求項13】
疾患又は障害が、口腔扁平上皮癌、口腔内異形成病変、頭頚部扁平上皮癌の1以上を含む、請求項11の製剤。
【請求項14】
頭頚部扁平上皮癌細胞を含んでなる腫瘍の増殖を阻害するための、及び/又は頭頚部扁平上皮癌細胞を含んでなる腫瘍のサイズを減少させるための、請求項1の製剤。
【請求項15】
日射性口唇炎を含む光線誘発性の前癌病変を改善するための、請求項1の製剤。
【請求項16】
口腔癌又は前癌状態の化学予防のための請求項1の製剤であって、そのような化学予防の必要な被検者へ局所投与される、製剤。
【請求項17】
被検者の口腔の内部へ投与される、請求項16の製剤。
【請求項18】
被検者への単回又は反復の経口経粘膜投与が70%より大きいか、75%より大きいか、80%より大きいか、90%より大きいか、又は94%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす、請求項17の製剤。
【請求項19】
被検者への単回又は反復の経口経粘膜投与が、変動係数が30%未満、又は40%未満であるバイオアベイラビリティをもたらす、請求項17の製剤。
【請求項20】
被検者への薬物剤形の単回の経口経粘膜投与が約6時間〜約8時間、又は約6時間〜約12時間のTmaxをもたらす、請求項17の製剤。
【請求項21】
請求項1の製剤を含んでなる経粘膜システムであって、
被検者の粘膜へ適用され;
該粘膜と療法上有効な期間接触させられ;そして
任意選択的に、所望される治療効果が達成されたときに除去される、経粘膜システム。
【請求項22】
粘膜付着材料を含む、請求項21の経粘膜システム。
【請求項23】
製剤と粘膜付着材料が別々のコンパートメントに存在する、請求項22の経粘膜システム。
【請求項24】
粘膜が頬側粘膜である、請求項21の経粘膜システム。
【請求項25】
i)請求項1の製剤からなる薬物放出層を製造すること;
ii)付着層を製造すること;及び、
iii)該薬物層と該付着層を支持層の上へ構築すること、
を含んでなる、頬側薬物送達システムを作製するための方法。
【請求項26】
i)一定量の少なくとも1つの可溶化剤、少なくとも1つの粘膜付着ポリマー、及び少なくとも1つの浸透促進剤を溶媒中で混合して溶媒混合物を形成させること;
ii)工程i)の溶媒混合物へ一定量のフェンレチニドを加えること;及び、任意選択的に、その容量を、工程i)の溶媒混合物で10mLへ調整すること;
iii)工程ii)のフェンレチニド混合物の層を形成させること;並びに、
iv)工程iii)の層を乾燥させること、
を含んでなる、請求項1の製剤を作製するための方法。
【請求項27】
可溶化剤が、非イオン性界面活性剤であるTween(登録商標)80、ポリエトキシル化ソルビタン及びオレイン酸より誘導される乳化剤、並びにデオキシコール酸ナトリウムの1以上を含む、請求項26の方法。
【請求項28】
浸透促進剤がプロピレングリコール及びメントールを含む、請求項26の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Susan R. Mallery, Peter E. Larsen, Gary D. Stoner, Steven R. Schwendenman, Kashappa-Goud Desai
関連出願への相互参照
[001] 本出願は、その開示全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、米国仮
特許出願番号:61/413,982(2010年11月15日出願)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府支援研究に関する陳述
[002] 本発明は、いかなる政府支援でもなされなかったので、政府は、本発明に権利
を有さない。
【0003】
本発明の技術分野と産業上の利用可能性
[003] 本発明は、口腔癌及び前癌病変の化学予防用の製剤と該製剤を製造するための
方法へ向けられる。
【0004】
[004] 具体的には、本発明は、口腔癌及び前癌病変の化学予防のための局所送達用に
製剤化される、疎水性製剤(フェンレチニドのような)を含有する生体付着ゲル剤に関する。本発明はまた、該製剤の化学予防成分を安定化してその効力を高めるための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
[005] 頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)は、世界全体の健康問題であって、今年は、
およそ36,000名の米国人が罹患して、死亡数は7,000を超える。広汎な研究と放射線強化のような先端治療法の導入にもかかわらず、HNSCCを有する人々の予後は、すべての固形腫瘍の中で最低の群にあり続けている。
【0006】
[006] 前癌段階で、進行を妨げるか又は退縮を誘導するのに有効な化学予防剤で介入
することは、臨床成績を大いに改善するだろう。他の表層起源の悪性腫瘍と同様に、始動された頭頚部上皮は、明白な癌腫への変換に先立って、進行性の増殖障害(様々な度合いの上皮異形成)を受ける。さらに、これらの異形成病変の多くは、眼で見える粘膜において生じるので、局所適用と病変進行の直接的な臨床モニタリングが実施可能である。完全な外科的切除が得られるにもかかわらず、これら異形成病変の多くは再発し、後続の外科手術が必要になって、癌の進展に関する患者の不安を高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[007] 頬側粘膜は、粘膜付着パッチを使用することによって、口腔癌を治療又は予防
するための治療剤の局在化送達にとって魅力的な部位である。しかしながら、この投与経路の利益は、頬側粘膜の障壁特性により制限され得る。頬側粘膜は、多くの外来薬剤へ曝露される組織であるので、頬側粘膜の顕著な障壁特性により、療法上活性な化合物の輸送が妨げられる場合がある。
【0008】
[008] 例えば、logPが1.6〜3.3である親油性の低分子薬物は、一般に、そ
の組織中へのより大きな分配のために十分浸透すると考えられる。しかしながら、logPが3.5より大きい高親油性の薬物では、その水溶性の制限により、浸透性の減少が観測される。実のところ、皮膚を介した薬物浸透性を促進することでより知られているほと
んどの薬剤は、頬側粘膜を通過する化合物の輸送も向上させる。
【0009】
[009] 薬物の浸透性を高めるためには、化学浸透促進剤(例、界面活性剤、胆汁酸塩
、及び脂肪酸)の活用のような化学的アプローチだけがパッチ調製物へ適用可能であろう。しかしながら、頬側粘膜障壁を容易に通過し得る製剤には、依然としてニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
[0010] 第一の広い側面において、本明細書中、少なくとも1つの粘膜付着材料;少なくとも1つのレチニド組成物又はその医薬的に許容される塩;及び、粘膜を通過するレチニド組成物の浸透を促進するために選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤;並びに、任意選択的に、レチニド組成物の粘膜付着材料からの放出を促進するための少なくとも1つの可溶化剤、を含んでなる製剤を提供する。
【0011】
[0011] 別の広い側面において、本明細書中、少なくとも1つの粘膜付着材料;少なくとも1つのレチニド治療剤;及び、プロピレングリコール(PG)及びテルペン又はテルペノイド組成物の1以上より選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤;並びに、任意選択的に、少なくとも1つの可溶化剤、を含んでなる製剤を提供する。
【0012】
[0012] 別の広い側面において、本明細書中、少なくとも有効量の医薬的に活性なフェンレチニド組成物と、プロピレングリコール(PG)及びメントールより選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤、を含んでなる製剤を提供する。
【0013】
[0013] 別の広い側面において、本明細書中、少なくとも有効量の医薬的に活性なフェンレチニド組成物と、プロピレングリコール(PG)及びメントールを含んでなる経粘膜浸透促進剤、を含んでなる製剤を提供する。
【0014】
[0014] ある態様において、該製剤は、約1重量%〜約2.5重量%のPGと1重量%〜約5重量%のメントールを含む。
[0015] ある態様において、該製剤は、約1重量%〜約2.5重量%のPGと約5重量%のメントールを含む。
【0015】
[0016] ある態様において、該製剤は、約1重量%のPGと約5重量%のメントールを含む。
[0017] ある態様において、該製剤は、約2.5重量%のPGと約5重量%のメントールを含む。
【0016】
[0018] ある態様において、医薬的に活性なフェンレチニド組成物と少なくとも1つの浸透促進剤は、少なくとも共通の粘膜上で接触するように適用される。
[0019] ある態様において、粘膜は、頬側粘膜である。
【0017】
[0020] 別の広い側面において、本明細書中、本明細書に広く記載される製剤からなる少なくとも1つの薬物放出層、少なくとも1つの生体付着材料、及び少なくとも1つの支持材料を含んでなる経粘膜システムを提供する。
【0018】
[0021] 別の広い側面において、本明細書中、i)本明細書に広く記載される製剤を含んでなる経粘膜システムを提供すること;この経粘膜システムを被検者の粘膜へ適用すること;及び、この経粘膜システムを粘膜と療法上有効な期間接触させること;並びに、任意選択的に、所望される治療効果が達成されたときに、この経粘膜システムを除去するこ
と、を含んでなる方法を提供する。
【0019】
[0022] ある態様において、経粘膜システムに、生体付着材料を含む。
[0023] ある態様において、該製剤と生体付着材料は、別々のコンパートメントに存在する。
【0020】
[0024] 別の広い側面において、本明細書中、疾患の治療及び予防の方法を提供し、該方法は、そのような治療の必要な被検者へ本明細書に広く記載される製剤を投与することを含んでなる。
【0021】
[0025] 別の広い側面において、本明細書中、少なくとも有効量の医薬的に活性なフェンレチニド組成物と、プロピレングリコール(PG)及びメントールより選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤を含んでなる、口腔粘膜への適用のための製剤を提供する。
【0022】
[0026] 別の広い側面において、本明細書中、本明細書に広く記載される製剤の有効量を被検者へ投与することを含んでなる、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を治療又は予防するための方法を提供する。
【0023】
[0027] 別の広い側面において、本明細書中、本明細書に広く記載される製剤を含んでなる、経口経粘膜投与用の医薬剤形を提供する。ある態様において、この医薬剤形には、生体付着材料がさらに含まれて、この生体付着材料は、被検者の口腔粘膜への付着を提供する。ある態様において、口腔粘膜は、周口膜である。
【0024】
[0028] 別の広い側面において、本明細書中、少なくとも有効量の医薬的に活性なフェンレチニド組成物と、プロピレングリコール(PG)及びメントールより選択される少なくとも1つの経粘膜浸透促進剤からなる製剤;並びに、口腔粘膜への付着を提供する生体付着材料を含んでなる、経口経粘膜投与用の医薬剤形を提供する。
【0025】
[0029] ある態様において、該製剤は、10μg、15μg、25μg、50μg、100μg、500μg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、及び10mgからなる群より選択される量での所定量の医薬的に活性なフェンレチニド組成物と、被検者の口腔粘膜への付着を提供する生体付着材料を含有する。
【0026】
[0030] ある態様において、口腔粘膜を介して吸収される医薬的に活性なフェンレチニドの量は、該剤形中の薬物の少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、及び少なくとも99%からなる群より選択される。
【0027】
[0031] ある態様において、被検者への単回又は反復の経口経粘膜投与は、70%より大きい、75%より大きい、80%より大きい、85%より大きい、90%より大きい、又は94%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす。
【0028】
[0032] ある態様において、被検者への単回又は反復の経口経粘膜投与は、変動係数が30%未満、又は40%未満であるバイオアベイラビリティをもたらす。
[0033] ある態様において、該医薬剤形の被検者への単回経口経粘膜投与は、約6時間〜約12時間のTmaxをもたらす。
【0029】
[0034] ある態様において、該医薬剤形の被検者への単回経口経粘膜投与は、約6時間〜約8時間のTmaxをもたらす。
[0035] 別の広い側面において、本明細書中、本明細書に広く記載される製剤を、被検者における症状を軽減するか又は消失させるのに有効な薬物の医薬的に活性な量で投与することを含んでなる、症候性の医学的状態を示す被検者を治療する方法を提供する。ある態様において、その症候性の医学的状態は、口腔癌又は前癌状態である。
【0030】
[0036] 別の広い側面において、本明細書中、本明細書に広く記載される製剤を投与することを含んでなる、被検者における口腔癌又は前癌状態を治療する方法を提供する。
[0037] 別の広い側面において、本明細書中、i)一定量の少なくとも1つの可溶化剤と少なくとも1つの浸透促進剤を溶媒中で混合して溶媒混合物を形成させること;ii)工程i)の溶媒混合物へ一定量のフェレンチニドを加えること;及び、任意選択的に、その容量を、工程i)の溶媒混合物で10mLへ調整すること;iii)工程ii)のフェレンチニド混合物の層を形成させること;並びに、iv)工程iii)の層を乾燥させること、を含んでなる、本明細書に広く記載される製剤を作製するための方法を提供する。
【0031】
[0038] ある態様において、可溶化剤は、非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80(ブランド名としては、Alkest(登録商標)、Canarcel(登録商標)、及びTween(登録商標)80(ICI Americas 社の登録商標)が挙げられる)と、
ポリエトキシル化ソルビタン及びオレイン酸より誘導される乳化剤、並びにデオキシコール酸ナトリウムの1以上を含む。
【0032】
[0039] ある態様において、浸透促進剤は、プロピレングリコール及びメントールを含む。
[0040] 別の広い側面において、本明細書中、口腔癌又は前癌状態の化学予防のための方法であって、そのような化学予防の必要な被検者へ本明細書に広く記載される製剤を局所投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0033】
[0041] ある態様において、該製剤は、被検者の口腔の内部へ投与される。
[0042] なおさらなる側面では、疎水性製剤の口腔粘膜浸透を促進する共溶媒系を含んでなる、高疎水性製剤の口腔内投与及び徐放出に有用な粘膜付着システムについて本明細書に記載する。
【0034】
[0043] ある態様において、該製剤は、高疎水性の化学予防剤を含む。ある態様において、該製剤は、フェンレチニドのようなレチニド組成物を含む。
[0044] 本明細書に記載するのは、ヒドロゲルベースの制御放出システムにおける共溶媒の同時組み込みを含んでなる、疎水性製剤の口腔粘膜浸透を促進するための方法である。
【0035】
[0045] ある態様において、該方法には、フェンレチニド、混合非イオン性界面活性剤を含有する粘膜付着材料Eudragit(登録商標)RL POフィルム、及びデオキシコール酸可溶化剤を含んでなる薬物層を形成させることが含まれる。ある態様において、該薬物層は、非イオン性界面活性剤、胆汁酸塩、リン脂質、及びポリマー性可溶化剤の1以上を含む。
【0036】
[0046] 本明細書に記載するのは、ヒドロゲルベースの制御放出粘膜付着システムを含んでなる、口腔癌又は前癌状態の化学予防用の製剤である。
[0047] ある態様において、該製剤は、少なくとも1つの治療剤を化学予防に有効な量で含む。
【0037】
[0048] ある態様において、付着担体は、フェンレチニドの経粘膜送達に適用される粘膜付着ゲル剤である。
[0049] 本明細書に記載するのは、口腔癌又は前癌状態の化学予防のための方法であって、そのような化学予防の必要な被検者へ浸透促進剤と混合した可溶化フェンレチニド調製物を局所投与することを含んでなる、方法である。
【0038】
[0050] ある態様において、浸透促進剤と混合されたフェンレチニド調製物は、被検者の口腔の内部へ投与される。
[0051] ある態様において、浸透促進剤は、プロピレングリコール、L−メントール、及びオレイン酸の混合物を含む。
【0039】
[0052] 本明細書に記載するのは、口腔癌又は前癌状態のリスクがある被検者の体組織又は体液中の疎水性治療剤の濃度を高めるための方法であって、治療剤を含有する調製物を被検者の口腔の内部へ適用することを含んでなる、方法である。
【0040】
[0053] ある態様において、体組織又は体液は、粘膜組織、口腔粘膜組織、口腔組織、末梢血、血清、及び唾液からなる群より選択される。
[0054] 本明細書に記載するのは、口腔癌又は前癌状態の化学予防用の製剤を製造するための方法である。
【0041】
[0055] 本明細書に記載するのは、フェンレチニド調製物を提供すること;このフェンレチニド調製物を浸透促進剤製剤と混合して混合物を形成させること;その後、この混合物を化学予防の必要な被検者の口腔へ適用することを含んでなる、口腔癌又は前癌状態の化学予防用の製剤の効力を向上させるための方法である。
【0042】
[0056] 本明細書に記載するのは、該製剤からなる薬物放出層を製造すること;付着層を製造すること;及び、該薬物層と該付着層を支持層の上で構築することを含んでなる、頬側薬物送達システムを作製するための方法である。
【0043】
[0057] 本明細書に記載するのは、パッチからのフェンレチニドの放出を促進するための可溶化剤;及び、粘膜を通過するフェンレチニドの浸透を向上させるための浸透促進剤を含んでなる製剤である。
【0044】
[0058] 本明細書に記載するのは、レチニド組成物を可溶化剤と混合すること、及びこの混合物を薬物放出層に成形することを含んでなる、レチニド組成物の薬物放出層からの放出を高めるための方法である。
【0045】
[0059] 本明細書に記載するのは、プロピレングリコール及びメントールの1以上からなる浸透促進剤とレチニド組成物を混合すること、及びこの混合物を薬物放出層に成形することを含んでなる、レチニド組成物の必要な被検者の粘膜の中へのその浸透を高めるための方法である。
【0046】
[0060] 本明細書に記載するのは、レチニド組成物を可溶化剤及び浸透促進剤と混合すること、及びこの混合物を薬物放出層に成形することを含んでなる、レチニド組成物の薬物放出層からの放出を高めて、レチニド組成物の必要な被検者の粘膜の中へのその浸透を高めるための方法である。
【0047】
[0061] 本明細書に記載するのは、疾患の治療及び予防の方法であって、そのような治療の必要な被検者へ該製剤を投与することを含んでなる、方法である。
[0062] 本明細書に記載するのは、口腔癌又は前癌状態のリスクがある被検者の体組織
又は体液中のレチニド組成物の濃度を高めるための方法であって、該被検者の口腔の内部へ該製剤を適用することを含んでなる、方法である。ある態様において、体組織又は体液は、粘膜組織、口腔粘膜組織、及び口腔組織より選択される。
【0048】
[0063] 当業者には、以下の図面と詳細な説明について考察すれば、本発明の他の系、方法、特徴、及び利点が明らかであるか又は明らかになろう。そのようなすべての追加の系、方法、特徴、及び利点も、本明細書の記載中に含まれ、本発明の範囲内にあって、添付の特許請求の範囲によって保護されることが企図される。
【0049】
図面の簡単な説明
[0064] 本特許又は出願ファイルは、カラー図面及び/又は1以上の写真で実施された1以上の図面を含有する。本特許又は特許出願公報のカラー図面(複数可)及び/又は写真(複数可)を含むコピーは、請求して必要代金を支払えば、特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】[0065] 図1A−C 薬物層(可溶化剤を含むか又は含まないフェンレチニド−粘膜付着材料(Eudragit(登録商標)RL PO))、付着層(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)4KM:ポリカーボフィル(3:1))、及び支持層(TegadermTM包帯剤)を含んでなる粘膜付着パッチの概略図(図1A)、写真画像(図1B)、及び概略断面図(図1C)。 [0066] 図1D 5重量%メントール(写真A)、10%メントール(写真B)、及び1重量% PG+5重量%メントール(写真C)を負荷したフェンレチニド/Eudragit(登録商標)(薬物放出)層の写真。
図2A】[0067] 図2A−C フェンレチニドの模擬唾液(緩衝液、pH6.8)中の可溶化を示すグラフ。フェンレチニドの模擬唾液中の溶解性に対する胆汁酸塩/レシチン(図2A)、界面活性剤(図2B)、及び親水性ポリマー(図2C)の添加の効果。0.5、1、2、及び5%(w/v)の可溶化剤の存在下、37℃でのフェンレチニドの模擬唾液中の溶解度。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図2B】[0067] 図2A−C フェンレチニドの模擬唾液(緩衝液、pH6.8)中の可溶化を示すグラフ。フェンレチニドの模擬唾液中の溶解性に対する胆汁酸塩/レシチン(図2A)、界面活性剤(図2B)、及び親水性ポリマー(図2C)の添加の効果。0.5、1、2、及び5%(w/v)の可溶化剤の存在下、37℃でのフェンレチニドの模擬唾液中の溶解度。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図2C】[0067] 図2A−C フェンレチニドの模擬唾液(緩衝液、pH6.8)中の可溶化を示すグラフ。フェンレチニドの模擬唾液中の溶解性に対する胆汁酸塩/レシチン(図2A)、界面活性剤(図2B)、及び親水性ポリマー(図2C)の添加の効果。0.5、1、2、及び5%(w/v)の可溶化剤の存在下、37℃でのフェンレチニドの模擬唾液中の溶解度。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図3】[0068] 図3 Eudragit(登録商標)RS−POフィルムからのフェンレチニドの累積放出に対する、デオキシコール酸ナトリウムの模擬唾液(pH6.8)中の添加の効果を示すグラフ。薬物負荷は、5重量%であった。
図4】[0069] 図4 Eudragit(登録商標)フィルムからのフェンレチニドの累積放出に対するポリマーマトリックス浸透性の効果を示すグラフ。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)において37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図5】[0070] 図5 Eudragit(登録商標)RL POフィルムからのフェンレチニドの累積放出に対する可溶化剤の同時カプセル化の効果を示すグラフ。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)において37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図6】[0071] 図6 Eudragit(登録商標)RL POフィルムからのフェンレチニドの累積放出に対する混合可溶化剤の同時カプセル化の効果を示すグラフ。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)において37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
図7】[0072] 図7 フェンレチニドと化学浸透促進剤プロピレングリコール、L−メントール、及びオレイン酸の化学構造。
図8】[0073] 図8 プロピレングリコールを含む/含まないパッチよりブタ頬側粘膜を通過して浸透するフェンレチニドの「累積百分率」対「時間」プロファイルを示すグラフ(平均±SD、n=3)。
図9】[0074] 図9 プロピレングリコールを含む/含まないパッチよりブタ頬側粘膜を通過して浸透するフェンレチニドの「累積量」対「時間」プロファイルを示すグラフ(平均±SD、n=3)。
図10】[0075] 図10A−10B フェンレチニドのウシ血清中の可溶化を示すグラフ。フェンレチニドの溶解度に対する、15mLウシ血清に加えたフェンレチニドの量(0.9(●)、2.26(○)、3.97(▼)、8.03(△)、及び20.05(■))とインキュベーション時間の効果(図10A)と、加えたフェンレチニドの量と、平衡に達するのに必要とされる時間との関係(図10B)。光からの防護下に37℃で溶解性試験を実施した。
図11】[0076] 図11A〜11C プロピレングリコール(PG)又はPG+メントールのフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POパッチへの同時組み込みがブタ頬側粘膜を通過するフェンレチニド浸透を有意に促進することを示すグラフ。ブタ頬側粘膜を通過するフェンレチニドのex vivo浸透に対する、パッチ中0(●)、5(○)、及び10(▼)重量%のPG(図11A);5(▲)及び10(▲)重量%メントール(図11B)、及び1重量% PG+5重量%メントール(▲)、2.5重量% PG+5重量%メントール(◇)、及び10重量% PG+5重量%メントール(◆)(図11C)の同時組み込みの効果。ex vivo浸透試験は、サイドバイサイド(side-by-side)フロースルー拡散セルを使用して37℃で実施した。浸透促進剤フリーのパッチは、5重量%フェンレチニド、20重量%Tween(登録商標)80、及び40重量%デオキシコール酸ナトリウムからなった。記号は、平均±SE(n=5)を表す。
図12】[0077] 図12A〜12H 浸透促進剤を負荷した粘膜付着パッチでのフェンレチニド頬側浸透促進の前と後でのブタ頬側組織の組織検査を示す写真。ブタ頬側組織の組織学的変化に対する、フェンレチニド/Eudragit RL PO粘膜付着パッチ中0重量%(図12A)、5重量%(図12B)又は10重量%(図12C)プロピレングリコール(PG);5重量%(図12D)又は10重量%(図12E)重量%メントール;及び、1重量% PG+5重量%メントール(図12F)、又は2.5重量% PG+5重量%メントール(図12G)、又は10重量% PG+5重量%メントール(図12H)の同時組み込みの効果。これらの顕微鏡写真に示されるように、パッチ(浸透促進剤を含むか又は含まない)の適用は、ブタ頬側粘膜を劇的には混乱させなかった。すべての切片は、保存された基底膜及び基底細胞層、錯角化(parakeratotic)層が重なったインタクトな重層扁平表面上皮を示している。注目すべきことに、複数の切片で、広汎な上皮損傷に一致した変化の証拠(例えば、基底細胞層の水症変性又は棘融解)は、観察されなかった。増加したレベルのPGへ曝露された上皮において観察された細胞内及び細胞間の浮腫の証拠(図12C及び図12H)は、おそらくは、被検者の角化細胞並びに細胞間スペースへのPGの拡散を反映するものであろう。画像は光学顕微鏡によって撮った。浸透促進剤フリーのパッチは、5重量%フェンレチニド、20重量% Tween(登録商標)80、及び40重量%デオキシコール酸ナトリウムからなった。放出時間(h)。
図13】[0078] 図13 浸透促進剤フリー及び浸透促進剤負荷のフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL PO粘膜付着パッチの in vitro 及び in vivo 放出特性を示すグラフ。浸透促進剤フリー(○:in vitro;△:in vivo)及び浸透促進剤(2.5重量%プロピレングリコール+5重量%メントール)負荷(●:in vitro;▲:in vivo)パッチより in vitro/in vivo で放出された、時間を関数とするフェンレチニドの累積量。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(pH6.8)において37℃ でin vitro 放出試験を、そしてウサギにおいて in vivo 放出試験を実施した。浸透促進剤フリーのパッチは、5重量%フェンレチニド、20重量% Tween(登録商標)80、及び40重量%デオキシコール酸ナトリウムからなった。記号は、平均±SE(n=4(in vitro)又は6(in vivo))を表す。
図14】[0079] 図14 浸透促進剤(2.5重量%プロピレングリコール+5重量%メントール)のフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POパッチ中の同時組み込みがフェンレチニドの in vivo 頬側粘膜浸透を促進することを示すグラフ。浸透促進剤フリー(黒塗りの棒)パッチと浸透促進剤負荷(白色の棒)パッチのウサギにおける頬側投与時間の関数としてのフェンレチニドの組織レベル。浸透促進剤フリーのパッチは、5重量%フェンレチニド、20重量% Tween(登録商標)80、及び40重量%デオキシコール酸ナトリウムからなった。棒は、平均±SE(n=6)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
好ましい態様の詳細な説明
[0080] 本開示を通して、様々な刊行物、特許、及び公開特許明細書が特定の引用によって参照される。これら刊行物、特許、及び公開特許明細書の開示内容は、本発明が関連する技術分野の水準をより十分に記載するために、参照により本開示に組み込まれる。
【0052】
[0081] 本発明について記載してそれを特許請求するにあたり、以下の技術用語を以下に説明する定義に従って使用する。
[0082] 本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」には、文脈が明らかに他のことを示さなければ、複数の言及が含まれる。例えば、「1つの細胞(a cell)」という用語には、その混合物を含めて、複数の細胞が含まれる。
【0053】
[0083] 本明細書中で使用される場合、「〜する場合がある(may)」、「任意選択的
に(optionally)」、及び「〜であってもよい(may optionally)」という用語は、互換的に使用されて、その状態が生じる場合だけでなくその状態が生じない場合も含まれることを意味する。従って、例えば、ある製剤に「賦形剤が含まれる場合がある(may include an excipient)」という陳述は、該製剤に賦形剤が含まれる場合だけでなく、該製剤に賦形剤が含まれない場合も含まれることを意味する。
【0054】
[0084] 本明細書中で使用される場合、「有益な薬剤」及び「活性な薬剤」という用語は、本明細書で互換的に使用されて、有益な生物学的効果を有する化学化合物又は組成物を意味する。有益な生物学的効果には、治療効果(即ち、障害又は他の望まれない生理状態の治療)と予防効果(即ち、障害又は他の望まれない生理状態(例、癌)の予防)がともに含まれる。この用語にはまた、本明細書において具体的に言及される有益な薬剤の医薬的に許容される薬理学的に活性な誘導体が含まれて、限定されないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、異性体、断片、類似体、等が含まれる。従って、「有益な薬剤」又は「活性な薬剤」という用語が使用される場合、又は特別な薬剤が具体的に特定される場合、この用語には、その薬剤それ自体だけでなく、医薬的に許容される、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、コンジュゲート、活性代謝産物、異性体、断片、類似体、等が含まれると理解されたい。
【0055】
[0085] 本明細書中で使用される場合、被検者を「治療すること」又は被検者の「治療」という用語には、疾患又は障害、又は疾患若しくは障害の症状を予防する、治す、癒す、軽減する、緩和する、変化させる、救済する、寛解させる、改善する、安定化させる、又はそれに影響を及ぼす目的での被検者への薬物の投与が含まれる。「治療すること」及び「治療」という用語はまた、症状の重症度及び/又は頻度の低減、症状及び/又は根本原因の消失、症状及び/又はその根本原因の発生の予防、並びに損傷の改善又は救済を意味し得る。
【0056】
[0086] 本明細書中で使用される場合、被検者における障害又は望まれない生理学的事象を「予防する」という用語は、具体的には、症状及び/又はその根本原因の発生の予防を意味し、ここで被検者は、その障害又は事象に対して高まった感受性を示す場合もあれば示さない場合もある。
【0057】
[0087] 治療剤の「有効量」という用語は、無害であるが、有益な薬剤が所望される効果をもたらすのに十分な量を意味する。「有効」である有益な薬剤の量は、被検者の年齢及び全般状態、特別の有益な1つ又は複数の薬剤、等に依存して、被検者ごとに変動するものである。従って、正確な「有効量」を特定することは、必ずしも可能ではない。しかしながら、どの被検者の症例にも適正な「有効」量は、定型の実験法を使用して、当業者により決定され得る。また、本明細書中で使用される場合、そして他に具体的に述べない限り、有益な薬剤の「有効量」はまた、治療上有効な量と予防上有効な量をともに含む量を意味し得る。
【0058】
[0088] 治療効果を達成するのに必要な薬物の「有効量」は、被検者の年齢、性別、及び体重のような要因に従って変動してよい。投与レジメンは、最適な治療応答をもたらすように調整することができる。例えば、いくつかに分割した用量を毎日投与しても、治療状況の緊急性によって示されるように、その用量を比例的に減らしてもよい。
【0059】
[0089] 本明細書中で使用される場合、治療剤の「治療有効量」は、所望される治療結果を達成するのに有効である量を意味し、治療剤の「予防有効量」は、望まれない生理状態を予防するのに有効である量を意味する。所与の治療剤の治療有効量と予防有効量は、典型的には、治療される障害又は疾患の種類及び重症度、被検者の年齢、性別、及び体重といった因子に関連して変動するものである。
【0060】
[0090] 「治療有効量」という用語はまた、所望される治療効果(疼痛緩和のような)を促進するのに有効な、治療剤の量、又は治療剤の送達速度(例、経時的な量)を意味し得る。所望される正確な治療効果は、治療される状態、被検者の忍容性、投与される薬物及び/又は薬物製剤(例、治療剤(薬物)の効力、製剤中の薬物濃度、等)、並びに当業者によって考慮される様々な他の要因に従って、変動するものである。
【0061】
[0091] 本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容される」成分という用語は、生物学的にも他の点でも望まれなくはない成分を意味し得るので、その成分は、顕著な望まれない生物学的効果を引き起こすことも、それが含まれる製剤の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用することも無く、本発明の医薬製剤の中へ取り込まれ、本明細書に記載のように被検者へ投与され得る。賦形剤へ言及するのに「医薬的に許容される」という用語が使用される場合は、その成分が毒性学的試験及び製造試験の標準規格に合致しているか又は米国食品医薬品局によって作成された「不活性成分ガイド(Inactive Ingredient Guide)」にそれが含まれることが通常含意される。
【0062】
[0092] また、本明細書中で使用される場合、「薬理学的に活性な」誘導体又は類似体という用語にあるような、「薬理学的に活性な」(又は、単に「活性な」)という用語は
、元の化合物と同じ種類でほぼ同等の度合いの薬理活性を有する誘導体又は類似体(例、塩、エステル、アミド、コンジュゲート、代謝産物、異性体、断片、等)を意味し得る。
【0063】
[0093] 本明細書中で使用される場合、「混合物」という用語には、該混合物の成分が完全に混和し得る溶液、並びに該混合物の成分が完全には混和し得ない懸濁液又は乳状液を含めることができる。
【0064】
[0094] 本明細書中で使用される場合、「被検者」という用語は、限定されないが、ヒト、家畜動物、イヌ、ネコ、及び他の哺乳動物が含まれる哺乳動物のような、生きている生物を意味し得る。治療剤の投与は、被検者の治療に有効な投与量及び期間で行うことができる。いくつかの態様において、被検者は、ヒトである。いくつかの態様において、本発明のシステムの薬物動態プロファイルは、雄性の被検者と雌性の被検者で同様である。
【0065】
[0095] 本明細書中で使用される場合、「制御薬物送達」という用語は、所望の薬物動態プロファイルを in vivo で達成するための、所与の剤形からの薬物の制御された形式
での放出又は投与を意味する。「制御」薬物送達の側面は、所望される薬物放出の動態を確定するために、製剤及び/又は剤形を操作する能力である。
【0066】
[0096] 本明細書中で使用される場合、「持続薬物送達」という用語は、ある供給源(例、薬物製剤)からの治療剤の、延長されたが特定の期間(これは、数分間から数時間、数日、数週、又は数ヶ月に延びる場合もある)に及ぶ持続形式の放出又は投与を意味する。ある態様において、「持続」という用語は、中間放出相の非存在を特徴とする、静脈内投与より得られるようなプロファイルがある、一定したレベルの治療剤の、数分から1日の範囲の期間にわたる送達を意味し得る。
【0067】
[0097] 本発明は、少なくとも一部は、浸透促進剤を利用することによって、フェンレチニドの経粘膜取込みが促進される可能性があるという発見に基づく。このような浸透促進剤は、例えば、そこに含まれる治療剤の絶対的なバイオアベイラビリティが高められる一方で、その治療剤に所望の送達期間も提供するので、有利である。また、このシステムでは、先行技術のシステムと対比して、治療効果を送達するのに必要とされる治療剤がより少ない。
【0068】
[0098] 特に、有効な粘膜付着システム開発には重大な課題があったが、それは、そのシステムからの連続的かつ完全な薬物放出を達成することである。
[0099] 1つの側面において、本明細書に記載するのは、連続的かつほぼ完全な薬物放出を今や提供する粘膜付着システムである。今回、本明細書において記載するように、この粘膜付着システムは、改善された技術を提供し、ここで、この粘膜付着システムを使用する全身投与は、顕著な副作用を誘発することなく口腔へ治療レベルを提供する。
【0069】
[00100] この粘膜付着システムに基づくアプローチは、有害な全身効果を誘発せずに
、治療レベルのフェンレチニドの、治療部位に標的化された送達を提供する。
[00101] 本明細書に記載される粘膜付着システムは、様々な疎水性薬物の送達システ
ムの効力に付随する諸課題を克服する。
【0070】
[00102] 本明細書中で使用される場合、「経粘膜」という用語は、粘膜を介したあら
ゆる投与経路を意味する。例としては、限定されないが、頬側、舌下、経鼻、膣内、及び直腸投与が挙げられる。1つの態様において、投与は、頬側である。1つの態様において、投与は、舌下である。本明細書中で使用される場合、「直接の経粘膜」という用語は、口腔粘膜を介した粘膜投与、例えば、頬側及び/又は舌下投与を意味する。
【0071】
[00103] 「頬側パッチ」又は「フィルム」という用語は、典型的には、口腔粘膜へ付
着して治療剤を送達する柔軟なフィルムを意味する。そのようなフィルムは、治療剤を即時的に放出する速溶解又は分散性のいずれのフィルムであってもよく、治療剤がある期間にわたり放出される粘膜付着特性を有するフィルムであってもよい。これらのパッチ又はフィルムは、典型的には、諸成分を混合すること、加熱すること、押し出し成形すること、乾燥させること、次いで正確な量の医薬品を送達するために、そのシートを寸法決めすること、によって製造される。
【0072】
[00104] 本発明は、製造するのが容易であり、良好な安定性を示して、製剤の柔軟性
を可能にする、経粘膜投与用の製剤を提供する。
[00105] 本発明は、投与される用量と得られる効果に対して正確な制御を可能にする
、経粘膜投与用の製剤を提供する。
【0073】
[00106] 本発明は、簡単で、投与するのに都合がよく、取り扱うのが容易であり、高
い患者アクセプタンス及びコンプライアンスを促進する、経粘膜投与用の製剤を提供する。
【0074】
[00107] 1つの態様において、この粘膜付着システムは、治療剤のパッチからの放出
を促進する、有効な可溶化剤の使用を含む。
[00108] 1つの態様において、図1A〜1Cにおいて概略的に例示されるように、そ
して以下にさらに記載されるように、可溶化剤と浸透促進剤は、治療剤とともに薬物層のフィルムに同時に組み込まれる。可溶化剤は、治療剤の薬物フィルム層からの放出を促進し、一方、浸透促進剤は、粘膜を通過する治療剤の浸透を高める。しかしながら、別の態様において、該製剤は、可溶化剤と治療剤からなる「単一の」製剤であってよいことに留意されたい。
【0075】
[00109] 別の広い側面において、本明細書中、制御放出されるレチニド粘膜付着シス
テムを提供する。
[00110] 別の広い側面において、本明細書中、治療組成物の有効な制御放出のための
粘膜付着システムの製剤を提供する。
【0076】
[00111] 本発明はまた、経粘膜パッチを粘膜へ適用して、治療に有効な期間、それを
接触させたままにする、治療剤の経粘膜投与の方法を提供する。所望される治療効果が達成されたときは、パッチを取り除いてもよい。
【0077】
[00112] 1つの態様において、該製剤は、様々な経粘膜経路によって送達することが
できる。特別な態様において、該製剤は、頬側粘膜を介して送達される。頬側粘膜は、容易にアクセス可能であって、パッチの適用のために望まれる広い面積の平滑筋を提供する。加えて、頬側粘膜を通した吸収は、内頸静脈を通した全身循環の中へ治療剤を直接的に送達することにより、肝代謝系を迂回する。また、頬側粘膜は酵素活性が低い傾向があるので、頬側粘膜を通した治療剤の送達では、胃液及び腸液中での分解が回避される。
【0078】
[00113] ある態様において、該製剤は、治療剤の頬側粘膜を通した即時送達と時間制
御送達の両方に適している。
[00114] 制御放出粘膜付着システムの設計
[00115] 図1A〜1Cに例示される態様において、「パッチ」又は粘膜付着送達シス
テム10は、支持層12、付着層14、及び薬物放出層20を通常含む。本明細書に開示されるように、「送達システム」及び「パッチ」という用語は、互換的に使用し得る。パッチ10は、粘膜へ適用されるように設計されて、治療剤を経粘膜投与により送達するために使用される。この送達パッチ10は、所望されるどんな形状及び寸法でもあり得る。
【0079】
[00116] このシステムのそれぞれの粘膜付着層は、1以上の治療剤(即ち、薬物)の
有効な制御送達に向けて特定の役割を遂行して貢献する。支持層12(これは、唾液、水、等に溶けない)は、薬物放出層20の後部表面からの薬物損失/放出を防いで、それによって単方向性の薬物放出を提供する。付着層14は、粘膜表面との強い粘膜付着を提供する。薬物放出層20は、実質的に連続的かつ完全な薬物送達を提供することができる。
【0080】
[00117] 1つの態様において、本明細書の「実施例」に記載のように、支持層12は
、Tegaderm(登録商標)包帯剤フィルムより構成され得る;付着層14は、1以上の粘膜付着ポリマーより構成され得る;そして、薬物放出層20は、治療剤からなる製剤、例えば、Eudragit(登録商標)ポリマー+薬物可溶化剤より構成され得る。
【0081】
[00118] 図1Cに言及すると、パッチ10の概略断面図が示されている。付着層12
は、任意の好適な一般的全体配置を有し得る。図1Cに示すように、付着層12は、窪み18を規定し得る。この窪みの深さは、当業者によって容易に決定し得ると理解されたい。付着層18には、このパッチが被検者に配置される準備ができているときに、保護層(示さず)を取り除くときに曝露される外側付着面19がある。
【0082】
[00119] 図1A〜1Cに示すように、薬物放出層20は、使用時に薬物放出層20の
外側薬物放出面22が粘膜(示さず)へ曝露されるように窪み18の中に納まるように設計することができる。薬物放出層20の残る側面と内側表面は、実質的には、付着層14によって囲まれ得る。付着層14と薬物放出層22は、ともに一緒になって、単一の構造体を形成し得る。そのような構造体では、薬物放出層20の外側薬物放出面22は、付着層14の外側付着面19によって規定される平面と実質的に同じ面にあるので、パッチ10が粘膜へ付着するとき、外側薬物放出面22と外側付着層は、ともに粘膜(示さず)と接触する。
【0083】
[00120] 付着層14と薬物放出層20の両方の寸法は、投与される治療剤とその投与
量により選択される。双方の長さ(即ち、円状の窪みの場合は、直径)の比は、パッチ10の粘膜への適切な付着を可能にするのに十分な面積を付着面19が有するように選択することができる。パッチ10の厚さは、可能な限り最少の異物感覚とより良好な患者コンプライアンス及び口腔感覚を確立するように、可能な最小値に保たれる。例えば、その厚さは、約0.5mm〜約5mmの範囲であり得る。ある態様は円の形状であるが、パッチ10の代わりの形状は容易に製造することができる。他の形状の非限定的な例としては、卵形、楕円形、莢形、等が挙げられる。ある態様において、その形状には、パッチが使用の間に機械的不安定性及び刺激のような懸念を生じる可能性がより少ないように、鋭い縁がない。しかしながら、その形状に対しては、様々な幾何学的形状を作製すること、又は両方のコンパートメントを異なる形状にすることといった他の改変が当業者には明らかであって、本発明の一部として考慮されると理解されたい。
【0084】
[00121] 薬物放出層20は、1以上の治療剤と、任意選択的に賦形剤を含んでなる製
剤を含有する。ある態様において、治療剤は、その用量と製剤因子に依存して、パッチの約0.1〜約99%(w/w)、好ましくは、約1〜約90%(w/w)の範囲で存在し得る。
【0085】
[00122] 製剤及び治療製剤
[00123] 「治療製剤(複数可)」及び「製剤(複数可)」という用語は、本明細書に
おいて互換的に使用し得る。1つの側面において、該製剤には、少なくとも1つの粘膜付着材料;レチニド組成物のような、少なくとも1つの活性薬剤、又は治療剤;及び、少なくとも1つの浸透促進剤;並びに、ある態様では、少なくとも1つの可溶化剤が含まれる
【0086】
[00124] 本発明は、疾患の治療及び予防の方法をさらに提供し、該方法は、そのよう
な治療の必要な被検者へ本発明の製剤を投与することを含んでなる。
[00125] ある態様において、該製剤には、ゲル剤、リンス剤(a rinse)、及び2つの局所注射可能な送達製剤(ポリラクチド−コグリコリドより送達され得る製剤と、注射後に体温に達してハイブリダイゼーションを起こすゲル剤として送達され得る別の製剤)が含まれて、それとして提供され得る。
【0087】
[00126] 粘膜付着材料
[00127] 該製剤には、好適な賦形剤との組合せであってもよい、1以上の粘膜付着材
料が含まれる。ある態様において、粘膜付着材料は、製剤の約1%〜約99%(w/w)、好ましくは約5〜約95%(w/w)の範囲で存在する。
【0088】
[00128] 粘膜付着材料の有用な例としては、アクリル酸エステルのポリマー、アクリ
ル酸共重合体、ビニルポリマー、ビニル共重合体、ビニルアルコールのポリマー、カルボキシビニルポリマー及び共重合体、ビニルエステル、アルコキシポリマー、酸化ポリエチレンポリマー、ポリエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0089】
[00129] 本明細書中の実施例では、粘膜付着材料はメタクリレート共重合体を含む。
1つの非限定的な例は、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、及び低含量の四級アンモニウム基を有するメタクリル酸エステルの共重合体である、商標名:Eudragit(登録商標)で市販されている。アンモニウム基は、塩として存在して、このポリマーを浸透可能にする。化学/IUPAC名は、ポリ(アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重−メタクリル酸トリメチルアンモニオエチル塩化物共重)1:2:0.1であり;INCI名称は、:アクリレート/メタクリル酸アンモニウム共重合体である。
【0090】
[00130] 粘膜付着材料は、他の材料と混合してよい;例えば、粘膜付着材料は、結合
剤、着色剤、希釈剤、酵素阻害剤、充填剤、香味剤、滑沢剤、安定化剤、甘味剤、等のような、任意選択の賦形剤と混合してよい。
【0091】
[00131] 治療剤
[00132] 本明細書に記載の治療製剤は、前癌性の口腔上皮病変がある被検者の治療に
特に有用である。
【0092】
[00133] 1つの特別な側面において、治療剤は、合成ビタミンA組成物(レチニド組
成物のような)のような疎水性組成物である。特別な態様において、粘膜付着システムには、レチニド組成物の送達に特に有用である製剤が含まれる。ある態様において、レチニド組成物は、フェンレチニドのような合成レチノイドを含む。フェンレチニド(4−ヒドロキシ(フェニル)レチナミド)は、きわめて親油性の薬物であって、8.03のlogPを有し、このことは、ごくわずかな頬側粘膜取込み及び浸透をもたらす。この薬物及び浸透促進剤の化学構造を図7に示す。
【0093】
[00134] しかしながら、これまでは、フェンレチニドを使用する所望の抗腫瘍活性の
達成は、フェンレチニドの口腔投与後の低いバイオアベイラビリティ(低い膜浸透性による)とその静脈内投与後の身体からの速やかな消失によって制限されてきた。故に、血中の治療薬物レベルと、それによる強力な口腔癌化学予防を達成するには、フェンレチニドの頻回投薬が必要とされた。ヒドロゲルベースの粘膜付着システムからの局所送達は、治療的フェンレチニドレベルを治療部位で直接的に提供して、それによって、癌化学予防におけるフェンレチニドの治療効力を向上させる。しかしながら、フェンレチニドは、高疎
水性の薬物であって、水溶解性がきわめて低い(HPLC検出限界未満)。フェンレチニドは、望ましい上皮分化能とアポトーシス誘導能をともに保有するが、そのこれまでの臨床使用は、経口の全身投与に限定されてきた。
【0094】
[00135] 経粘膜浸透剤
[00136] 本明細書により詳しく記載する経粘膜浸透促進剤は、治療剤の促進された送
達プロファイルとより効率的な送達を提供する。経粘膜浸透促進剤の追加の利点についても本明細書に記載する。例えば、ある態様において、経粘膜浸透促進剤は、プロピレングリコール(PG)及びテルペノイド又はテルペン(メントール、D−リモネン、ゲラニオール、ネロリドールのような)とこれらの混合物の1以上を含む。
【0095】
[00137] 1つの態様において、経粘膜浸透促進剤は、プロピレングリコール(PG)
及びメントールより選択される。特別な態様において、経粘膜浸透促進剤は、約1重量%〜約2.5重量%のPGと1重量%〜約5重量%のメントールを含む。
【0096】
[00138] 別の態様において、経粘膜浸透促進剤は、約1重量%〜約2.5重量%のP
Gと約5重量%のメントールを含む。
[00139] 別の態様において、経粘膜浸透促進剤は、約1重量%のPGと約5重量%の
メントールを含む。
【0097】
[00140] なお別の態様において、経粘膜浸透促進剤は、約2.5重量%のPGと約5
重量%のメントールを含む。
[00141] 可溶化剤
[00142] ある態様において、該製剤は、粘膜付着材料からの連続的なin vitro 及び in vivo 放出を促進するのに有効な量の1以上の可溶化剤を含む。放出/レシーバーチャ
ンバ媒体において所望されるシンク条件を維持するために、適正量の好適な可溶化剤を組み込むことができる。この実施例において、放出媒体中の非イオン性界面活性剤の最適量は、ウシ血清中のそれへ薬物溶解度を適合することによって選択した。
【0098】
[00143] 可溶化剤の非限定的な例としては、デオキシコール酸、ポリオキシ−エチレ
ン−ソルビタン高級脂肪酸エステル(例、Tween(登録商標)80)が挙げられる。
【実施例】
【0099】
[00144] 実施例
[00145] 本発明を以下の「実施例」においてさらに明確にするが、ここでは、特に明
記しない限り、すべての割合及び百分率は重量によるものであり、度数は摂氏である。これらの実施例は、本発明の好ましい態様を示すが、例示のためにのみ示されると理解されたい。上記の考察とこれらの実施例より、当業者は、本発明の本質的な特徴を把握し得て、その精神及び範囲より逸脱することなく、それを様々な使用法及び条件へ適用するために、本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。本明細書において参照される、特許及び非特許文献を含むすべての刊行物は、参照により明示的にに組み込まれる。以下の実施例は、特に断らなければ、本発明のある好ましい態様について例解することを企図するのであって、特許請求の範囲において確定されるような本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0100】
[00146] 実施例1
[00147] ヒドロゲルベースの制御放出フェンレチニド粘膜付着システムの製造:
[00148] 付着層の製造
[00149] ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC 4KM)及びポリカーボ
フィル(PC)の重量比3:1の混和に基づいて、付着層をキャスト法によって製造した
。簡潔に言えば、必要量(ポリマー質量に基づいて、20重量%)のプロピレングリコールを含有するddHO中の1.5%ポリマー溶液を、このポリマー/水混合物を一晩撹拌することによって調製した。次いで、約50mLのポリマー溶液をガラスペトリ皿(150x20mm)の上へ注ぎ込んで、50℃で48時間インキュベートした。次いで、このポリマーフィルムを必要なサイズに切断して、さらなる使用まで、乾燥器において室温で保存した。
【0101】
[00150] 薬物放出(フェンレチニド)層/フィルムの製造
[00151] フェンレチニドフィルムの製造は、光からの防護下で実施した。所望量の可
溶化剤(Tween(登録商標)80及びデオキシコール酸ナトリウム)、浸透促進剤(1、2.5、5、及び10重量%)、及び粘膜付着材料、Eudragit(登録商標)RL POを15mLポリプロピレン管中に秤量して、これへ8mLの50:50(v/v)アセトン−エタノール混合物を加えた。加える可塑剤又は可溶化剤の量は、ポリマーの質量に基づいて計算した。生じる混合物を、すべての成分が溶解するまで、激しく撹拌した。次いで上記に製造したポリマー−可溶化剤又はポリマー−可溶化剤−浸透促進剤(複数可)溶液へ必要量(ポリマー+賦形剤の総量に基づいて、5重量%)のフェンレチニドを加え、再び激しく撹拌して、その容量を同じ溶媒混合物で10mLへ調整した。5ミリリットルのフェンレチニド−ポリマー溶液をTeflon(Scientific Commodities
社、アリゾナ州レイクハバスシティ、アメリカ)を上乗せしたガラスペトリ皿(60x15mm)の上へ加えて、38℃で48時間インキュベートした。十分な乾燥の後で、フェンレチニド負荷されたポリマーフィルムを必要なサイズ(直径7mm)へ切断し、アルミホイルに包んで、さらなる使用まで、乾燥器において−20℃で保存した。
【0102】
[00152] フェンレチニドの口腔粘膜付着パッチの構築
[00153] 先のフィルムを11mmと7mmのコルクボーラーでそれぞれ切断すること
によって、11mm(外径)及び7mm(内径)の寸法の環状の付着層を成形した。次いで、この付着層をTegadermTMフィルム(支持層)の付着側の上へ置いて、続いて、先に切断した7mmのフェンレチニド/Eudragit(登録商標)層を付着層の開面領域へ挿入して、フェンレチニドの口腔粘膜付着パッチを得た。図1Dは、5重量%メントール(写真A)、10%メントール(写真B)、及び1重量% PG+5重量%メントール(写真C)を負荷したフェンレチニド/Eudragit(登録商標)(薬物放出)層の外観を示す。
【0103】
[00154] フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POフィルムの形態
に対する、メントールの同時組み込みの効果
[00155] メントールを含まないフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL
PO(薬物放出)フィルムは、良好なフィルム形成と外観を示した。5%又は10%メントールを負荷したフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POフィルムは、良好なフィルム形成も外観も示さなかった(図1Dの写真A及び写真Bを参照のこと)。この相分離は、フィルム形成の間に、メントールの沈殿生成及び/又は凝集によって生じたようであった。図1Dの写真Cに示すように、共溶媒としての1% PGの添加は、望ましいフィルム形成を促進した。
【0104】
[00156] 様々な可溶化剤での、フェンレチニドの模擬唾液中の可溶化
[00157] 数多くの可溶化剤(胆汁酸塩、界面活性剤、親水性ポリマー、及び共溶媒)
による、フェンレチニドの溶解促進の程度について、0.5、1、2、及び5%(w/v)可溶化剤の存在下で模擬唾液中の溶解度を決定することによって調べた。簡潔に言えば、可溶化剤の0.5、1、2、及び5%(w/v)溶液(Nパージ模擬唾液を使用して調製)の1mLを含有する別々の琥珀色アンプルの中へ過剰量のフェンレチニドを加えて、ヘッドスペースより酸素を除去するために、真空下で密封した。次いで、このアンプル
を37℃に維持したインキュベーターに入れて、240RPMで72時間(この時間は、平衡に達するのに十分であるように決定された)振盪した。72時間後、このアンプルを割って、混合物を0.45μm PVDFフィルターユニット(ミリポア、アメリカ)に通過させ、それぞれの可溶化剤溶液で適切に希釈して、模擬唾液に可溶化したフェンレチニドの量をHPLCによって決定した。
【0105】
[00158] 実施例1の結果
[00159] 図2A〜2Cは、模擬唾液(緩衝液、pH6.8)中でのフェンレチニドの
可溶化を明示するグラフを示す。フェンレチニドの模擬唾液中の溶解性に対する胆汁酸塩/レシチン(図2A)、界面活性剤(図2B)、及び親水性ポリマー(図2C)の添加の効果。0.5、1、2、及び5%(w/v)の可溶化剤の存在下、37℃での、フェンレチニドの模擬唾液中の溶解度。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
【0106】
[00160] 下記の表1は、評価した、ヒドロゲルベースの制御放出フェンレチニド粘膜
付着システムの製剤の例を示す。
【0107】
【表1】
【0108】
[00161] Eudragit(登録商標)RS PO/RL POフィルムのフェンレ
チニド負荷効率について、下記の表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
[00162] in vitro 薬物放出の間にシンク条件を維持するのに適した放出媒体の同定
[00163] 本薬物は、模擬唾液(pH6.8)に溶けない。故に、in vitro 薬物放出試験の間に模擬唾液中でシンク条件を維持することは可能でない。シンク条件を維持するために、模擬唾液中へ2.5及び5%(w/v)のデオキシコール酸ナトリウムを加えた。ある態様において、シンク条件を維持するために使用する可溶化剤は不活性であり、フィルムの薬物放出特性を変化させない。現象を理解するために、2.5及び5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液中のEudragit(登録商標)フィルムからのフェンレチニドの in vitro 放出試験を実施した。
【0111】
[00164] 図3は、Eudragit(登録商標)RS−POフィルムからのフェンレ
チニドの累積放出に対する、デオキシコール酸ナトリウムの模擬唾液(pH6.8)中の添加の効果を例示する。薬物負荷は、5重量%であった。異なる画分のデオキシコール酸ナトリウムの添加は、ポリマーフィルムの薬物放出特性を変化させず、この可溶化剤が不活性であって、模擬唾液中でのシンク条件を維持するために使用し得ることを示唆した。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液において、さらなる放出試験を実施した。
【0112】
[00165] Eudragit(登録商標)フィルムからのフェンレチニドの in vitro
放出に対するポリマーマトリックス浸透性の効果
[00166] 図4は、Eudragit(登録商標)フィルムからのフェンレチニドの累
積放出に対するポリマーマトリックス浸透性の効果を例示する。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)において37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
【0113】
[00167] Eudragit(登録商標)フィルムからのフェンレチニドの in vitro
放出に対する可溶化剤の同時カプセル化の効果
[00168] 図5は、Eudragit(登録商標)RL POフィルムからのフェンレ
チニドの累積放出に対する可溶化剤の同時カプセル化の効果を例示する。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)中で37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表
す。
【0114】
[00169] 図6は、Eudragit(登録商標)RL POフィルムからのフェンレ
チニドの累積放出に対する混合可溶化剤の同時カプセル化の効果を例示する。薬物負荷は、5重量%であった。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液(緩衝液、pH6.8)において37℃で放出試験を実施した。数値は、平均±SE(n=3)を表す。
【0115】
[00170] 可溶化剤フリーのEudragit(登録商標)RL PO/RS POフ
ィルムからのフェンレチニドの放出は、きわめて遅かった(8時間後に13〜15%放出)。フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POフィルムにおける単一可溶化剤(20重量%のTween(登録商標)20及び80とデオキシコール酸ナトリウムを負荷したフィルムからは、1時間後と8時間後に、それぞれ17〜22%と50〜58%の放出)又は混合可溶化剤(20重量%のTween(登録商標)80+40重量%のデオキシコール酸ナトリウムを負荷したフィルムからは、1時間後と8時間後に、それぞれ24%と75%の放出)の同時カプセル化は、8時間にわたる薬物放出の有意な改善をもたらした。
【0116】
[00171] 実施例2
[00172] 材料
[00173] デオキシコール酸ナトリウム(シグマ・アルドリッチ社、ミズーリ州セント
ルイス)、Tween(登録商標)80(シグマ・アルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)、Eudragit(登録商標)RL−PO(Rohm GmbH, Pharma Polymers, ダームシュタット、ドイツ)、プロピレングリコール(MP Biomedicals, LLC, オハイオ州ソ
ロン)。フェンレチニド(MK−4016)は、メルク社より提供された。
【0117】
[00174] ブタ頬側組織は、地元の畜殺場より入手して、屠殺の2時間以内に使用した
。運搬の間は、組織を氷上に保った。上皮は、その下の結合組織より外科的手技で分離させた。
【0118】
[00175] 実施例2の方法
[00176] 口腔パッチの製造
[00177] 様々な種類の粘膜付着層をキャスト法によって製造した。簡潔に言えば、様
々な粘膜付着ポリマーの約50mLポリマー溶液(1.5%(w/v))を、水中で一晩撹拌することによってそれぞれ調製して、ガラスペトリ皿の中へ注いだ。このペトリ皿を50℃で24時間インキュベートすることによって、水分を蒸発させた。次いで、このフィルムを取り出して、さらなる使用まで、乾燥器に保存した。
【0119】
[00178] 薬物層も、Eudragit(登録商標)RL−POポリマーを使用して、
キャスト法によって製造した。簡潔に言えば、12%(w/w)Tween(登録商標)80、33%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、5%(w/w)フェンレチニド、50%(w/w)Eudragit(登録商標)RL−PO、及び5%(w/w)又は10%(w/w)浸透促進剤を10mlのアセトン:エタノール(50:50)に溶解させた。いずれの重量対重量比も、ポリマー、賦形剤、及び薬物の総量に基づいた。
【0120】
[00179] この溶液をテフロン(登録商標)(Teflon)コートしたペトリ皿の上へ注い
だ。次いで、このペトリ皿を37℃で24時間インキュベートした。このフィルムを取り出して、さらなる使用まで、乾燥器において−20℃で保存した。
【0121】
[00180] ウシ血清中のフェンレチニド溶解度の決定
[00181] ポリプロピレン管中の胎仔ウシ血清へ過剰量のフェンレチニドを加えた。こ
の試料をメカニカルサーキュレーター上に置いて、遮光しながら37℃でインキュベートした。24時間ごとに(フェンレチニドが血清中で飽和に達するまで)、試料を8000rpmで10分間遠心分離した。この上清より0.2ml試料を抜き取った。この容量は、ブランク血清を使用して、即座に置き換えた。この管を振盪して上清と沈殿物を混合してから、メカニカルサーキュレーター上に再び置いて、37℃でインキュベートした。上清中のフェンレチニド濃度は、アセトニトリルを使用する抽出の後で、HPLCアッセイによって測定した。
【0122】
[00182] in vitro 浸透
[00183] サイドバイサイドのフランツ型(Franz)拡散セル装置を使用して、in vitro
浸透試験について検討した。ドナーコンパートメントとレセプターコンパートメントの
両方のオリフィス径は、1cm(0.785cm)であった。この拡散セルのドナーコンパートメントとレシーバーコンパートメントの間にブタ周口膜を載せた。支持層がドナーチャンバに対面して、付着フィルムがその膜に対面するようなやり方で、フェンレチニドパッチを周口膜の表面側に置いた。レセプターコンパートメントは、HPLCフィルターを通す真空濾過によって使用前に脱気した、0.084% Tween80(v/v)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4)を保持した。ドナーコンパートメントは、唾液緩衝液を保持した。自動温度制御浴より水を再循環させることによって、コンパートメント温度を37℃で一定に維持した。600rpmで回転する撹拌子によって、連続撹拌を提供した。レセプターコンパートメントより、決められた時間間隔(1、2、3、4、5、6、7、8、及び12時間)で1ml試料を採取した。この容量は、予め温めたブランクPBS緩衝液を使用して即座に置き換えた。次いで、この試料をHPLCによって分析した。
【0123】
[00184] フェンレチニドHPLCアッセイ
[00185] 2996 フォトダイオードアレイ検出器と Empower 2 ソフトウェアを備えたパ
ーソナルコンピュータからなる Waters 2695 アライアンスシステム(マサチューセッツ
州ミルフォード、アメリカ)でHPLCアッセイを実施した。シンメトリーC18カラム(4μm,150mmx4.6mm)を使用した。アセトニトリル:0.1%(v/v)リン酸(67:33(v/v))での定組成(isocratic)溶出を1.0ml/分の流速
で利用して、検出波長は365nmに設定した。注入量は50μlであった。すべての試料を室温で分析した。フェンレチニドの標準曲線をアセトニトリル:エタノール(50:50)において確定して、この標準曲線より未知試料の濃度を計算した。
【0124】
[00186] 実施例2の結果
[00187] フェンレチニドのウシ血清中の溶解度
[00188] 6日間のインキュベーション後のフェンレチニドの血清中の溶解度は、20
.945±1.022μg/mlであった。フェンレチニドの本来の水溶解度は、きわめて低い(0.0098μg/ml)(実質的に水に溶けない)ので、血清中で達成されたフェンレチニド濃度は、アルブミン、リポタンパク質、及び血清レチノール結合タンパク質(RBP)のような血清タンパク質に結合したフェンレチニドである可能性がある。RBPは、糖タンパク質であって、レチノールを血漿中で輸送する、十分に特性決定されたタンパク質である。それは、1分子のレチノールへ結合する、21kDの単一ポリペプチド鎖からなる。それは、肝臓において全トランスレチノール(ATRol)と複合体を形成して、ATRolの血中輸送に関与する。フェンレチニドもRBPと相互作用して強い複合体を形成するが、その親和性は、レチノールのそれより低い。
【0125】
[00189] 本発明者は、本明細書において、Tween(登録商標)80の添加がフェ
ンレチニドの溶解度を向上させ得ることを示した。故に、身体内の生理学的条件を模倣す
るために、フェンレチニドの血清中の溶解度が0.084% Tween80(v/v)溶液中のそれに等しいので、PBS緩衝液(pH7.4)を含有するレシーバー中0.084% Tween80(v/v)の存在下で in vitro 浸透試験を実施した。
【0126】
[00190] ブタ頬側組織を通したフェンレチニドの浸透
[00191] 時間に対してプロットした、フェンレチニドの浸透プロファイル、即ち、ブ
タ頬側粘膜を通して浸透したフェンレチニドの累積百分率と累積量を、それぞれ図8図9に示す。図8〜9は、本明細書に記載される共溶媒系がフェンレチニドの口腔粘膜浸透を促進することを示す。特に、ヒドロゲルベースのフェンレチニド制御放出システムでは、プロピレングリコール(共溶媒)の同時組み込みによる、フェンレチニドの口腔粘膜浸透の促進がある。
【0127】
[00192] 表3に、定常状態流束(J)、レシーバー及び組織中のフェンレチニドの
累積量及び累積百分率、並びにPGを組み込んだパッチからの促進率を示す。
【0128】
【表3】
【0129】
[00193] 表3の結果は、5% PGと10% PGを含有するパッチがともにフェン
レチニドの頬側粘膜浸透及び保持を高めたことを実証する。この促進は、より多くのPG(10%)がパッチに組み込まれたときに、より大きな程度であった。プロピレングリコールは、頬側組織に入り、脂質二重層の極性頭部の溶媒和部位について競合して、この部位での浸透物(permeant)の溶解性を高める。結果として、パッチから頬側組織への薬物の分配が増加する。
【0130】
[00194] 10% PGを含有するパッチの中へ5%メントールが組み込まれたとき、
頬側組織からさらにより多くの薬物(促進剤を含まないパッチと比較して、3.9倍)が回収された。テルペン類は、プロプラノロールが含まれる親水性薬物とテストステロンのような脂溶性薬物をともに促進することができる。この浸透促進は、プロピレングリコールとメントールの相乗効果より生じる。メントールは、細胞間パッキングを変化させ、脂質の高秩序化構造を破壊することにより膜中の薬物拡散性を高めることによって、薬物の
浸透を向上させる。
【0131】
[00195] プロピレングリコールは、フェンレチニドの頬側粘膜浸透及び保持の促進に
効果がある。プロピレングリコールと他の促進剤の組合せは、相乗効果を提供して、促進剤の活性を有意に高める。そういうものとして、ある態様において、本明細書中、PGと他の浸透促進剤(例、L−メントール、オレイン酸)を含有する頬側パッチとその方法も提供する。
【0132】
[00196] 実施例3
[00197] 化学品、組織、及び動物
[00198] フェンレチニドは、メルク社(ニュージャージー州ホワイトハウスステーシ
ョン)からの無料サンプルとして受け取った。デオキシコール酸ナトリウム、Tween(登録商標)80、及びL−メントールは、シグマ・アルドリッチ社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。Noveon(登録商標)AA−1ポリカーボフィル(PC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)4KM、及びEudragit(登録商標)RL−POは、それぞれ、Lubrizol 社(オハイオ州ウィックリフ)、Colorcon(
登録商標)社(ペンシルヴェニア州ウェストポイント)、及び Evonik Degussa 社(ニュージャージー州ピスカタウェイ)からのいずれも無料品であった。プロピレングリコールは、MP Biomedicals, LLC(オハイオ州ソロン)より購入した。Teflon(登録商標
)オーバーレイは、Scientific Commodities 社(アリゾナ州レイクハバスシティ)より
購入した。TegadermTMロールは、3M Health Care(ミネソタ州セントポール)より購入した。ブタ頬側組織は、畜殺場(Dunbar Meat Packing Company, ミシガン州ミ
ラン、アメリカ)より入手した。ウサギは、Harlan Laboratories(インディアナ州イン
ディアナポリス、アメリカ)より購入した。
【0133】
[00199] フェンレチニドの頬側浸透促進用の口腔粘膜付着パッチの製造
[00200] 本明細書に記載のような溶媒キャスト技術と構築技術によって、フェンレチ
ニド/Eudragit(登録商標)RL−PO/可溶化剤パッチであって浸透促進剤(PG及びメントール)を含むもの及び含まないものを製造した。フェンレチニドパッチの製造には3つの工程が関与した:付着層(ヒドロキシプロピルメチルセルロースとポリカーボフィル、3:1の重量比)の成形、薬物放出層(5重量%フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−PO/40重量%デオキシコール酸ナトリウム/20重量%Tween(登録商標)80)の成形、並びに、付着層及び薬物放出層の支持層(TegadermTMフィルム)上への構築(図1A〜1Cを参照のこと)。薬物放出(フェンレチニド)層は、上記に示した製剤に加えて、浸透促進剤(複数可)を含んだ。PG単独(5及び10重量%)又はメントール単独(5及び10重量%)、又はその組合せ(1重量% PG+5重量%メントール、2.5重量% PG+5重量%メントール、及び10重量% PG+5重量%メントール)を負荷した、Eudragit(登録商標)RL−PO/5重量%フェンレチニド/40重量%デオキシコール酸ナトリウム/20重量% Tween(登録商標)80層を製造した。
【0134】
[00201] フェンレチニドHPLCアッセイ
[00202] 2996 フォトダイオードアレイ検出器と Empower 2 ソフトウェアを備えたパ
ーソナルコンピュータからなる Waters 2695 アライアンスシステム(マサチューセッツ
州ミルフォード、アメリカ)でHPLCアッセイを実施した。シンメトリーC18カラム(4μm,150mmx4.6mm)を使用した。アセトニトリル:0.1%(v/v)リン酸(67:33(v/v))での定組成(isocratic)溶出を1.0mL/分の流速
で利用して、検出波長は365nmに設定した。フェンレチニドの標準曲線をアセトニトリル:エタノール(50:50)において確定して、この標準曲線より未知試料の濃度を計算した。
【0135】
[00203] フェンレチニドのウシ血清中の溶解度の決定
[00204] 15mLウシ胎仔血清を含有するポリプロピレン管へ既知量(0.9、2.
26、3.97、8.03、及び20.5mg)のフェンレチニドを加えた。この試料をリグ付き(rigged)回転翼を使用する一定回転と光からの防護の下に37℃でインキュベートした。7日目まで24時間ごとに、この試料を8000rpmで10分間遠心して、200μlの上清を抜き取った。抜き取った血清試料を新鮮な血清試料に置き換え、適切に混合して、類似の条件下で再びインキュベートした。抜き取った試料(200μl)へ2mLのアセトニトリルを加え、光から防護しながらメカニカルシェーカー上で一晩撹拌し、0.45μm PVDFフィルターユニットに通過させて、HPLCによって分析した。
【0136】
[00205] フェンレチニド負荷の決定
[00206] フェンレチニド/Eudragit(登録商標)フィルムをアセトニトリル
:エタノール(50:50)に温浸させ、0.45μm PVDFフィルターユニットに通して、適切な希釈の後でHPLCによって分析した。フェンレチニド負荷は、フィルム混合物(即ち、フェンレチニド、Eudragit(登録商標)、及び他の賦形剤)の総重量に対するフェンレチニドの量の百分率として計算した。
【0137】
[00207] フェンレチニドの口腔粘膜付着パッチからの in vitro 放出の評価
[00208] 模擬唾液は、14.4mM塩化ナトリウム、16.1mM塩化カリウム、1
.3mM塩化カルシウム二水和物、0.55mM塩化マグネシウム六水和物、及び2mM二塩基性リン酸カリウムからなり、pHを6.8へ調整した。5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウムを含有する模擬唾液において完全なシンク条件の下で in vitro 放出試験を実施した。粘膜付着パッチを50mL管(それぞれのサンプリング間隔用に別々の管)に入れて、それぞれの管へ40mLの放出媒体を加えた。この管を37℃に維持したインキュベーターに入れて、100RPMで振盪した。所定の時間間隔(0.5、3、及び6時間)で管を取り出して、パッチを即座に凍結乾燥させた。負荷アッセイにおいて記載した方法に従って、パッチに残存するフェンレチニドの量を決定した。最初の薬物含量よりパッチに残存する画分を差し引くことによって、放出されたフェンレチニドの累積量を計算した。
【0138】
[00209] ブタ頬側粘膜を通過するフェンレチニドのex vivo浸透
[00210] サイドバイサイドのフロースルー拡散セル(ドナー及びレシーバーのチャン
バ容量=3mL)を使用して、ブタ頬側粘膜を通過するフェンレチニドのex vivo浸透を
実施した。拡散界面は、直径1cmの球形状であった。ブタ頬側組織は、地元の畜殺場より入手して、屠殺の2時間以内に使用した。この組織は、取り出してすぐに、クレブス(Krebs)緩衝液中に4℃で保存した。上皮は、その下の結合組織より解剖用メスで分離さ
せて、ドナーチャンバとレシーバーチャンバの間に載せた。次いで、このドナーチャンバ中の頬側粘膜へフェンレチニドパッチを付着させた(付着層が粘膜に対面して、支持層が緩衝液へ曝露される)。ドナーチャンバとレシーバーチャンバを0.084% Tween(登録商標)80(v/v)と模擬唾液(pH6.8)をそれぞれ含有する3mLの脱気リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH=7.4)で満たした。いずれのチャンバも、自動温度制御された水浴より水を循環させることによって37℃に維持した。レシーバーチャンバの媒体は、600rpmで撹拌した。特定の継続時間(1、2、3、4、5、6、7、8、及び12時間)の後で、レシーバーチャンバより1mL試料を抜き取って、新鮮な媒体に即座に置き換えた。フェンレチニドをHPLCによって定量した。浸透試験の最後に、ドナーチャンバへフェノールレッドを300μg/mlの濃度で加えて、頬側粘膜の完全性をチェックした。フェノールレッドは、インタクトなブタ周口膜では浸透しない、マーカー化合物として作用する。ex vivo浸透試験の完了後すぐにブタ頬側組織を取り
出して、組織中のフェンレチニドレベルを下記に記載のように決定した。
【0139】
[00211] 頬側組織中のフェンレチニドレベルの決定
[00212] 処置済みのブタ頬側組織を小片へ切断して、4mLポリプロピレン管に入れ
た。この管へ1ミリリットルの水を加えて、1分間ホモジェナイズした。次いで、この管へ2mLのアセトニトリルを加えて、1時間激しく撹拌した。1時間後、管を2600g、25℃で20分間遠心して、上清をHPLCによって分析して、フェンレチニド含量を決定した。
【0140】
[00213] ヘマトキシリン及びエオシン染色
[00214] それぞれの組織の一部を緩衝化10%ホルマリン中で固定して、パラフィン
ワックスに包埋した。次いで、5μm切片を顕微鏡スライド上に置き、キシレンを使用して脱パラフィン化して、80%〜100%までの勾配のエタノール溶液と蒸留水を使用して再水和させた。この組織スライスを0.7%(w/w)ヘマトキシリン溶液に入れ、酸性エタノール(95%エタノール中0.1N HCl)で2回濯いで、過剰な染色液を除いた。引き続き、この組織スライスを0.1%(w/w)エオシン溶液に入れて、80%〜100%までの勾配のエタノールの溶液と、次いでキシレンを使用して脱水させた。
【0141】
[00215] 光学顕微鏡検査法での分析
[00216] Olympus BX51 顕微鏡(オリンパス、東京、日本)を40倍の倍率で使用して、光学顕微鏡検査法を実施した。切片の画像は、付属カメラ(オリンパス、DP70 デジタ
ルカメラ、東京、日本)とソフトウェア(オリンパス DP コントローラー、東京、日本)を使用して撮った。
【0142】
[00217] in vivo フェンレチニド放出及び浸透の評価
[00218] 動物試験は、オハイオ州立大学研究所の動物実験委員会によって承認されて
、米国立衛生研究所のガイドラインを遵守した。雌性ニュージーランド白色種ウサギ(12週齢、2.7〜3.1kgの範囲の体重)を、パッチの配置及び除去のために、イソフルラン(酸素中5%(v/v))で吸入により麻酔した。各時点で6個のフェンレチニド口腔粘膜付着パッチ(薬物層+付着層を粘膜に対面させた)を被検ウサギの口腔の頬側粘膜上に置いた。ウサギ頬側粘膜との粘膜付着を確立するために、軽度の圧力をパッチの支持層へ1分間かけた。異なる付着時間(0.5、3、及び6時間)の後で、パッチを慎重に取り出して、パッチに残存するフェンレチニドをHPLCによって決定した。最初の薬物含量よりパッチに残存する画分を差し引くことによって、放出されたフェンレチニドの累積量を決定した。組織中の薬物レベルを決定するために、フェンレチニドの抽出及び定量を頬側組織切片中のフェンレチニドレベルの決定において記載したように実施した。
【0143】
[00219] 統計解析
[00220] 結果は、平均±SE(n=3/4(in vitro)又は5(ex vivo)又は6(in
vivo))として表す。対応のないスチューデントのt検定と片側ANOVAを使用して
、in vitro 及び in vivo 薬物放出、フェンレチニドのex vivoブタ頬側粘膜浸透レベル
及び組織レベル、フェンレチニドの in vivo 組織レベルの平均を比較して、統計学的有
意差を評価した。p<0.001であれば、結果を統計学的に有意とみなした。
【0144】
[00221] 実施例3の考察
[00222] 薬物浸透性が促進された粘膜付着フェンレチニドパッチ
[00223] 本明細書に記載されるように、フェンレチニドの粘膜付着パッチ製剤を、口
腔癌の部位特異的な化学予防について試験した。可溶化剤フリーのパッチは、乏しい in vitro 及び in vivo 薬物放出挙動を示した。フェンレチニド/Eudragit(登録
商標)パッチにおける単一可溶化剤又は混合可溶化剤(例、Tween(登録商標)20
及び80、デオキシコール酸ナトリウム)のいずれかの同時組み込みは、連続的なin vitro 及び in vivo フェンレチニド放出の有意な改善をもたらした。これまで、口腔癌の化学予防におけるフェンレチニドの使用は、いくつかの重要な制限事項(例、低い溶解度、生体膜浸透性及びバイオアベイラビリティ、並びに、薬物の身体からの速やかな消失)によって妨げられてきた。主としてそのきわめて高い疎水性(logP=8.03)と低い水溶解度(検出限界未満)によって、望まれない効果がもたらされている。
【0145】
[00224] 表4に見られるように、溶媒キャスト法によって、90〜95%の薬物負荷
効率で、フェンレチニド負荷Eudragit(登録商標)RL PO層であって浸透促進剤を含むもの及び含まないものを製造した。
【0146】
【表4】
【0147】
[00225] フェンレチニド層及び付着層、並びにTegadermTM付着フィルムの
厚さは、それぞれ約0.28、0.28、及び0.05mmであると測定された。薬物層と付着層を支持層の上へ構築した後で、パッチ全体の厚さは、約0.33mmであると測定された。
【0148】
[00226] フェンレチニドのex vivoシンク条件を維持するのに最適な界面活性剤の量の決定:フェンレチニドのウシ血清中の溶解性
[00227] シンク条件は、疎水性薬物の in vitro 放出又はex vivo生体膜浸透性を支配する重要な特徴の1つである。パッチ(ドナーコンパートメント)からレシーバー媒体(レシーバーコンパートメント)へのex vivo薬物輸送のプロセスには、パッチから頬側表
面への薬物の放出、頬側組織中への薬物の浸透、及びこの組織からレシーバーチャンバ媒体中への薬物の(必要であれば、溶解後の)放出が関与する。
【0149】
[00228] 本明細書に記載のパッチは、きわめて疎水性のフェンレチニドに有用であっ
て、連続的なin vitro 及び in vivoフェンレチニド放出を促進するのに有効な量の1以
上の可溶化剤と、頬側粘膜を通過するフェンレチニドの浸透性を改善する組織浸透促進剤を含む。放出/レシーバーチャンバ媒体において所望されるシンク条件を維持するために、適正量の好適な可溶化剤を組み込むことができる。この実施例において、非イオン性界面活性剤の放出媒体中の最適量は、薬物溶解度をウシ血清中のそれと適合させることによって選択した。
【0150】
[00229] 図10A〜10Bには、異なるフェンレチニド濃度(0.9、2.26、3
.97、8.03、及び20.5mg)及びインキュベーション時間(1〜7日)でのフェンレチニドのウシ血清中の溶解度を示す。フェンレチニドのウシ血清中の溶解度は、2
1±1μg/mLであることがわかった(図10A)。ウシ血清は、数多くのタンパク質、即ち、アルブミン、リポタンパク質、及び血清レチノール結合タンパク質(RBP)を含む。ウシ血清中でのフェンレチニドの促進された溶解度は、タンパク質−薬物の結合又は複合体形成に起因する可能性がある。
【0151】
[00230] ウシ血清との平衡に達するのにフェンレチニドが要する時間は、ウシ血清に
加えたフェンレチニドの量によって影響された。例えば、フェンレチニドの量が0.9mgから8.03mgへ増加したとき、平衡に達するのに要する時間は、7日から4日へ低下した(図10B)。フェンレチニドの量をさらに増やしても平衡に要する時間を低下させなかったので、15mLの血清との平衡状態に達するには、最低でも約8mgのフェンレチニドと4日のインキュベーション時間が必要であることが示唆された。次いで、「PBS中のフェンレチニド溶解度」対「界面活性剤の臨界ミセル濃度を超えたTween(登録商標)80濃度」の完全な直線関係より、試験媒体(レシーバーチャンバ媒体、即ち、PBS,pH7.4)中のフェンレチニドの同等の溶解度(ウシ血清中21μg/mL)に達するのに必要とされるTween(登録商標)80の濃度が0.084%であることを決定した。従って、ex vivo薬物浸透試験において生理学的な可溶化/シンク条件を
模倣するのに、PBS+0.084% Tween(登録商標)80を使用した。
【0152】
[00231] フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチ中のプロ
ピレングリコール及びメントールの同時組み込みによるフェンレチニドのex vivoブタ頬
側粘膜浸透の促進
[00232] 図11A〜11Cには、フェンレチニドのex vivoブタ頬側粘膜浸透に対する、フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL PO粘膜付着パッチ中の単一(5及び10重量%のPG又はメントール)浸透促進剤と混合(1重量% PG+5重量%メントール、2.5重量% PG+5重量%メントール、又は10重量% PG+5重量%メントール)浸透促進剤の同時組み込みの効果を示す。フェンレチニドのex vivo浸透
は、8時間にわたって着実に増加してから、その後プラトーに達した。定常状態での流束(Js)と促進率(EF=促進剤有りのJs/促進剤無しのJs)をともに計算した。
【0153】
[00233] 表5に、頬側粘膜を通過して浸透した薬物の画分と頬側組織に沈着した薬物
の画分、並びにJsとEFの値を示す。
【0154】
【表5】
【0155】
[00234] パッチ中の単一浸透促進剤(図11A及び図11B)又は混合浸透促進剤(
図11C)の同時組み込みは、ブタ頬側粘膜を通過するフェンレチニド浸透の速度及び程度において有意な促進(p<0.001)をもたらした(表5を参照のこと)。
【0156】
[00235] 例えば、浸透促進剤フリーのパッチの流束は、約10μg cm−2−2)であることを見出した。10重量% PG又は10重量% PG+5重量%メントールの同時組み込みの後で、流束は、それぞれ約23(EF=2.3)と40(EF=4)μg
cm−2−2へ増加した。対照的に、メントールパッチ製剤では、流束のごくわずか
な増加(Js=約13μg cm−2−2が観測された。薬物の組織中のレベルは、流
束の数値に一致していた(表5を参照のこと)。浸透促進剤フリーのパッチでの12時間のex vivo浸透後の頬側組織中のフェンレチニド含量は、約44μg/gであることがわ
かった。PG又はPG+メントールの同時組み込みは、頬側組織からの有意に高い量のフェンレチニド回収(10重量% PG製剤と10重量% PG+5重量%メントール製剤で、それぞれ約171μgと241μgのフェンレチニド/g(組織))をもたらし、それによって、PG又はPG+メントールの存在下でフェンレチニドの組織局在化/浸透が増加することを示した。メントール単独によっては、中等度の促進効果が示された。
【0157】
[00236] プロピレングリコールは、脂質二重層の極性頭部の溶媒和部位について競合
して水素結合部位を占有することにより、この部位での浸透物の溶解性を高めることによって、その浸透促進効果を発揮する。PGは、脂質流動性を高めて、それが薬物浸透の亢進を促進させる可能性もある。PGの存在下でのフェンレチニドの浸透促進は、これらの機序の一方又は両方に起因する可能性がある。一方、メントールには、二重層中の細胞間脂質のコンホメーション秩序を破壊することによって薬物の拡散性及び/又は分配を変化させる能力がある。メントール単独では、フェンレチニドの有意な浸透促進を提供しなかった(p>0.001)。この結果は、溶媒蒸発の間のメントールの結晶化及び凝集による、フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL POマトリックス中のメントールの不均質な分布(図1Dを参照のこと)に少なくとも一部は起因する可能性がある。
【0158】
[00237] PGをメントールと組み合わせたとき、この課題は克服されて(図1Dを参
照のこと)、メントール単独に比べて、顕著なフェンレチニド浸透促進が観測された(図11C及び表5を参照のこと)。混合浸透促進剤(PG+メントール)で観測された望ましいフェンレチニド浸透は、メントールとPGの間の相乗効果による可能性がある。
【0159】
[00238] 形態学及び組織学上の特性
[00239] 図12A〜12Hに頬側粘膜の切片の顕微鏡写真を示す。ヒト頬側粘膜に類
似したブタ頬側粘膜は、最外層の角化重層扁平上皮とその下に存在する基底膜、粘膜固有層、それに続く最内層としての頬筋含有粘膜下組織からなる。パッチの適用にかかわらず、すべての切片は、適正に成熟している重層扁平上皮を示した。散在する有糸分裂像は、基底層に限局されて、最も外側の顆粒層及び角質層は、表層でのパラケラチン産生によって反映されるような適正な最終分化を示した。接触性粘膜炎に起因し得る広汎な上皮の乱れ(例、基底細胞層の水症変性又は棘融解)に一致した変化の証拠は認めなかった。
【0160】
[00240] 対照(パッチ付着無し)試料では、基底上皮細胞が一緒に緊密に結合してい
る(図12Aを参照のこと)。5重量%(図12Bを参照のこと)及び10重量%(図12Cを参照のこと)のPG負荷パッチの付着の後で、下位層において注目され得る形態学的変化(例、有棘細胞)や表層細胞層の有意な損失は明らかでなかった。しかしながら、PGの負荷が5重量%より高い場合の図12B及び図12Cでは、細胞間浮腫の増加と頬側上皮の腫脹が見られる。
【0161】
[00241] 5重量%メントール負荷パッチと10重量%メントール負荷パッチでの処置
後の頬側上皮の顕微鏡写真を図12D図12Eにそれぞれ示す。いずれの試料でも上皮層がインタクトであったことが見える。加えて、細胞の腫脹並びに有意な組織学的及び超微細構造上の変化の徴候はなかった。
【0162】
[00242] 1重量% PG+5重量%メントール(図12Fを参照のこと)負荷パッチ
と2.5重量% PG+5重量%メントール(図12Gを参照のこと)負荷パッチで処置した試料でも、同様の結果が観測された。対照的に、10重量% PG+5%メントール負荷パッチへ曝露された組織は、細胞内空間と細胞間浮腫の中等度の増加を示した(図12Hを参照のこと)。メントールは上皮細胞のいかなる変化も引き起こさなかったので、パッチ中のより高い(10重量%)PG負荷が、細胞内空間と細胞間浮腫の増加をもたらした可能性がある。
【0163】
[00243] 5及び10重量% PG負荷パッチで処置した組織で観測された組織学的変
化(例、細胞内空間と細胞間浮腫の増加)(図12B図12C、及び図12Hを参照のこと)は、PGが被検者の角化細胞だけでなく細胞間の空間へも拡散することを示す。細胞中に浸透して蓄積すると、PGは、細胞間又は膜の脂質と相互作用して、それにより上皮を通るフェンレチニドの浸透性を高めた可能性がある。2.5重量% PG+5重量%メントール負荷パッチは、形態学及び組織学上の変化を伴わずに最適な薬物浸透促進を示したので、この製剤を選択して使用して、下記に記載のように、フェンレチニドの in vivo 放出、浸透、及び組織沈着の動態をさらに評価した。
【0164】
[00244] 浸透促進剤負荷フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−PO
パッチの in vitro 及び in vivo 放出特性
[00245] 浸透促進剤フリーのフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−
POパッチと2.5重量% PG+5重量%メントール負荷フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチからの in vitro 及び in vivo フェンレチニド放
出を図13に示す。いずれのパッチ製剤も、Eudragit(登録商標)ポリマーマトリックスからの連続的なin vitro 及び in vivo フェンレチニド放出を提供して、PGとメントールの添加は、放出動態に有意には影響を及ぼさず、さらなるフェンレチニドの可溶化及び/又はパッチの膨張挙動への変化があることを示した。この事例において、パッチの放出特性は、パッチ製剤において有効な可溶化の役割として役立つ、デオキシコール酸ナトリウムとTween(登録商標)80によって主に決定された。
【0165】
[00246] 浸透促進剤フリーのフェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−
POパッチと2.5重量% PG+5重量%メントール負荷フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチの in vitro と in vivo のフェンレチニド放出特
性には、連続放出の傾向は同じであったが、有意差(p<0.001)があった(図13を参照のこと)。この差は、試験条件の不同性(例えば、in vitro 薬物放出が模擬唾液
中であるのに対し、in vivo 薬物放出では、頬側粘膜を通過する浸透が続く)に関連する可能性がある。
【0166】
[00247] フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチ中のプロ
ピレングリコール及びメントールの同時組み込みによる、フェンレチニドの in vivo ウ
サギ頬側粘膜浸透及び沈着の促進
[00248] フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチ中の浸透
促進剤(PG+メントール)の同時組み込みの、フェンレチニドの in vivo 頬側粘膜浸
透及び沈着に対する効果を図14に示す。ウサギ頬側組織中のフェンレチニドのレベルは、両方のパッチ製剤(浸透促進剤フリーのパッチと浸透促進剤負荷パッチ)の付着時間の関数として着実に増加して(図14を参照のこと)、それにより、ウサギ頬側粘膜を通過する連続的なin vivo フェンレチニド浸透を提供する、これらパッチ製剤の優れた効力を
示した。2.5重量% PG+5重量%メントール負荷パッチによって提供されるフェンレチニドの浸透及び組織沈着の程度(6時間の付着後、組織1gにつき43.0±7.7μgのフェンレチニド)は、浸透促進剤フリーのパッチのそれ(6時間の付着後、組織1gにつき17.3±0.3μgのフェンレチニド)より有意に高かった(図14を参照のこと)。これらの結果は、フェンレチニドの改善された口腔粘膜浸透及び組織レベルを得るための、PG及びメントールの同時組み込みの優れた有効性を示している。ex vivo試
験と in vivo 試験で得られたフェンレチニドの浸透及び組織沈着の動態が異なるのは、
主要な試験条件における不同性(例、「ブタ」対「ウサギ」の頬側粘膜、「ex vivo」対
「in vivo」のシンク条件)に起因する可能性がある。
【0167】
[00249] これらのデータは、フェンレチニドの粘膜付着パッチでの局所送達によって
付与される療法上の利点(即ち、標的組織において薬理学的に活性なレベルを得ること)を実証する。1μMと10μMの間の in vitro フェンレチニド濃度は、望ましい化学予防効果(例えば、細胞の最終分化(<3μM)及びアポトーシス(>5μM))を誘導するのに有用である。本明細書に示すように、浸透促進剤負荷パッチよりウサギ頬側粘膜へ送達されるフェンレチニドのレベルは、7.75μg/g(0.5時間;19.8μM)〜42.36μg/g(6時間;108.2μM)の範囲であった。故に、ある態様では、標的口腔上皮において療法的に適切な濃度を提供するには、短い持続時間のパッチ適用(即ち、30分未満)が特に有用である。加えて、治療時間の減少により、このような適用は、患者コンプライアンスを促進する可能性がある。
【0168】
[00250] このように、フェンレチニドの促進された頬側粘膜浸透及び組織レベルを提
供する粘膜付着パッチによって、口腔内の部位特異的なフェンレチニド送達が促進された。フェンレチニド/Eudragit(登録商標)RL−POパッチには、好適な浸透促進剤(PG及びメントール)が同時に組み込まれた。溶媒キャスト技術と構築技術によって、所望される薬物送達(フェンレチニド+可溶化剤+浸透促進剤)層、付着層、及び支持層を含有する粘膜付着パッチを製造した。パッチにおけるPG又はPG+メントールの同時組み込みは、きわめて疎水性でほとんど組織に浸透しない化学予防剤であるフェンレチニドの有意なex vivo及び in vivo 頬側粘膜浸透と組織沈着をもたらした。1つの態様では、2.5重量% PG+5重量%メントールを同時組み込みした粘膜付着パッチが、観測される口腔粘膜の組織に有意に影響を及ぼすことなく、所望される口腔粘膜浸透促進を有することを見出した。
【0169】
[00251] 治療の方法
[00252] 本明細書に開示する製剤を使用する方法は、該製剤を口腔の粘膜表面へ局所
的に適用することに広く関わる。
【0170】
[00253] 1つの態様において、該方法は、通常、下記の工程を含む:本明細書に記載
される製剤を含んでなる経粘膜システムを提供すること;この経粘膜システムを被検者の粘膜へ適用すること;及び、この経粘膜システムを粘膜と療法上有効な期間接触させること;並びに、任意選択的に、所望される治療効果が達成されたときに、この経粘膜システムを除去すること。
【0171】
[00254] ある態様において、本パッチは、付着層に存在しないが製剤にのみ存在する
、浸透促進剤を含有する。
[00255] 別の態様において、該方法には、疾患の治療及び予防が含まれ、該方法は、
そのような治療の必要な被検者へ本明細書に記載される製剤を投与することを含んでなる。
【0172】
[00256] ある態様において、該製剤は、練り歯磨き剤、口腔洗浄剤又は洗口剤、ゲル
又はペースト剤、スプレー剤、チューインガム剤、及び/又は口内錠剤のような口腔用製品として提示され得る。
【0173】
[00257] 実施例3
[00258] 療法上の使用
[00259] 本明細書に記載される製剤は、口腔癌の発症を予防すること(一次化学予防
)又は再発を阻むこと(二次化学予防)に有用な臨床応用を有する。
【0174】
[00260] 別の療法上の使用には、頭頚部扁平上皮癌細胞(HNSCC)のような腫瘍
の増殖を阻害するための治療が含まれる。
[00261] 別の療法的治療には、頭頚部扁平上皮癌細胞である腫瘍細胞を含んでなる、
腫瘍の大きさを減少させることが含まれる。
【0175】
[00262] 別の療法的治療には、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)を予防することが含
まれる。
[00263] 別の臨床適用は、日射性口唇炎として知られる、下唇の光線誘発性の前癌病
変に対する該製剤の使用である。口腔内異形成病変ほどの臨床攻撃性は無いものの、口唇病変は外科的に処理する必要があって、口腔扁平上皮細胞癌へ進展する可能性がある。
【0176】
[00264] なお他の臨床適用には、治療部位として、口腔扁平上皮細胞癌(上記の光線
誘発性の口唇病変が含まれる)のすべての変異体を含めることができる。
[00265] 他の臨床適用には、ファンコニー貧血のような口腔上皮異形成の治療、改善
、又は反転が含まれる。
【0177】
[00266] キット
[00267] 本明細書に記載される製剤と被検者へ投与するための方法における使用のた
めの説明書を含んでなるキットも本明細書中に提供される。
【0178】
[00268] 1つの態様において、該キットには、癌状態又は前癌状態の治療における使
用のための説明書が含まれる。ある態様において、該キットには、頭頚部基底細胞が前癌状態又は癌状態にある哺乳動物へ該組成物を投与するための説明書が含まれる。本明細書に記載される製剤は、キット形態で包装し得ると理解されたい。1つの側面において、本発明は、適切に包装された送達システムを含むキットを提供する。
【0179】
[00269] それぞれの製剤は、在庫保存に適している医薬的に許容される担体において
供給される。キットは、緩衝液、反応表面、又は送達粒子を精製する手段のような、本発明の方法及び製剤化手順に有用である追加の成分を提供してもよい。
【0180】
[00270] 加えて、該キットには、送達粒子の製造、製剤化、及び/又は使用といった
、本発明の方法の実施のための指示(即ち、プロトコール)を提供する、表示及び/又は教示又は解釈用の材料が含まれてよい。教示用の材料は、典型的には、書面又は印字の材料を含むが、それらはこれらの形式に限定されない。そのような教示内容を保存して、それらをエンドユーザーへ伝達することが可能な任意の媒体が本発明により考慮される。そのような媒体としては、限定されないが、電子保存媒体(例、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例、CD ROM)、等が挙げられる。そのような媒体には、そのような教示材料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含めてよい。
【0181】
[00271] 1つの態様において、本明細書中、(a)本明細書に記載されるような生体
付着性の医薬製剤;及び(b)該製剤の送達用のパッチ又はフィルムのような送達システ
ムを含んでなる、被検者における疾患の可能性を低下させるための予防用キットが提供される。
【0182】
[00272] 別の態様において、本明細書中、(a)本明細書に記載されるような生体付
着性の医薬製剤;及び(b)該製剤の送達用のパッチ又はフィルムのような送達システムを含んでなる、被検者における疾患を治療するための療法用キットを提供する。
【0183】
[00273] 本発明について、様々な好ましい態様に言及して記載したが、当業者には、
本発明の本質的な範囲より逸脱することなく、様々な変更がなし得て、その諸要素に同等物が代用し得ることが理解されるはずである。加えて、特別な状況又は材料に適応するために、本発明の教示に対して、その本質的な範囲より逸脱することなく、多くの改変をなし得る。
【0184】
[00274] 故に、本発明は、本発明を実行するために考慮される、本明細書に開示され
た特別な態様に限定されず、本発明は、特許請求の範囲に属するすべての態様を含むことが企図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
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図10
図11
図12
図13
図14