【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はかかる実施例に限定されない。以下、特に断らない場合「%」は質量%、「部」は質量部を表す。以下の実施例1は、本発明のコラーゲン産生促進用組成物の実施例であり、実施例2は本発明のコラーゲン吸収促進用組成物の実施例であり、実施例3は、本発明の抗肥満用組成物の実施例である。
【0040】
〔実施例1〕
キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムの死菌の粉末を用いた。この死菌の粉末は、前記の製造方法で製造されたキムチから前記の分離方法で分離されたラクトバチルス・プランタラムを前記の方法で培養した後、殺菌し、凍結乾燥処理により乾燥して粉末化したものである。
まず、エッペンドルフチューブに、5%のウシ胎児血清(Life Technologies社製)を含有するHam-F12培地(シグマ社製)(以下、5%FBS含有Ham-F12培地と記載する)を1 mL入れた。このエッペンドルフチューブに、前記の粉末を10mg(1.0 x 10
9 cfu)入れた。エッペンドルフチューブを1時間ボルテックスミキサーにかけて懸濁液を調製した。次に、エッペンドルフチューブを10,000 x g、10 min、4℃の条件で遠心分離にかけた。得られた上清を回収して、5%FBS含有Ham-F12培地で10倍希釈した。得られた希釈物を、0.2 μmのフィルターでろ過滅菌し、得られたろ液を原液とした。この原液を、5%FBS含有Ham-F12培地で10倍、100倍、1000倍にそれぞれ希釈して10倍希釈サンプル、100倍希釈サンプル、1000倍希釈サンプルとした。
【0041】
〔参考例1〕
5%FBS含有Ham-F12培地をそのままサンプルとして用いたものを、陰性コントロールである参考例1とした。
【0042】
〔参考例2〕
アスコルビン酸Na(和光純薬社製)を、5%FBS含有Ham-F12培地に溶解後、得られた溶液を同培地で希釈して、アスコルビン酸の濃度が100μg/mLとなるように調製した。
【0043】
前記で供した実施例1のサンプル及び参考例1及び2の各サンプルを以下の<コラーゲン産生試験及び線維芽細胞試験>に供した。
【0044】
<コラーゲン産生試験及び線維芽細胞試験>
(1)線維芽細胞の前培養
理化学研究所から入手した胎児皮膚由来正常線維芽細胞(HFSKF-II)を用いた。この線維芽細胞を、15%FBS含有Ham-F12培地で継代し、2.0 x 10
4 cells/wellの密度で96 well plateに播種した。この線維芽細胞を24時間、37℃で前培養した。
【0045】
(2)コラーゲン量の測定
(1)で前培養した96 well plate中の培地を、実施例1、参考例1、2のサンプル(実施例1の場合は100倍希釈のサンプル)に置換した後、24時間、37℃で本培養した。その後、各wellから培地上清を180μLずつ、3wellの上清を1つにまとめるようにしてエッペンチューブに回収した。得られた培地上清を50倍希釈した。この希釈した培地上清中のコラーゲン量を、Procollagen Type I C-peptide(PIP) EIA Kit (タカラバイオ社製)を用いて測定した。測定の手順はキット付属のプロトコールに記載の通りとした。実施例1及び参考例2で得られたコラーゲン量を、参考例1で得られたコラーゲン量を100としたときの該コラーゲン量に対する比(%)として
図1に示す。
【0046】
(3)細胞生存率の測定
(1)で前培養した96 well plate中の培地を、実施例1、参考例1、2のサンプル(実施例1の場合は10倍、100倍及び1000倍希釈の各サンプル)で置換した。培地置換後の線維芽細胞を24時間及び144時間(6日間)それぞれ37℃で本培養した。その後、各wellから培地上清を除去した。次いで、無血清Ham-F12培地100 μLで各well中の線維芽細胞を洗浄した。その後、無血清Ham-F12培地で30倍希釈したWST-8試薬 (同仁化学社製)を各wellに150 μLずつ添加した。37℃で2時間インキュベーションした後、450 nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(Thermo electron製VARIOSKAN)で測定した。得られた吸光度の平均値(n=3)を求め、参考例1で得られた吸光度の平均値を100としたときの該吸光度に対する比(%)を算出し、これを細胞生存率とした。サンプル添加後、24時間培養した線維芽細胞の生存率を
図2に示す。また、サンプル添加後、6日間培養した線維芽細胞の生存率を
図3に示す。
図2及び
図3のエラーバーは標準偏差(S.D.)を示す(以下同様)。
【0047】
図1に示すように、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムを線維芽細胞に添加した実施例1では、アスコルビン酸ナトリウムを用いた陽性コントロールである参考例2と同様に、コラーゲン産生量が増加することが判る。またキムチ由来のラクトバチルス・プランタラムを線維芽細胞に添加した実施例1では、
図2に示すように、添加24時間後において線維芽細胞の生存率が向上していた。この線維芽細胞の生存率の向上は、
図3に示すように、添加6日後においても示された。これに対して、陽性コントロールであるアスコルビン酸ナトリウムは、添加6日後に細胞生存率が大きく低下していた。以上から、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムは、線維芽細胞を活性化してコラーゲン産生量を増加させること、特に、線維芽細胞を持続的に活性化できることにより、コラーゲン産生を持続的に増加させうることが判る。
【0048】
〔実施例2〕
実施例1で用いた死菌の粉末と同様の粉末を用いた。この粉末を、蒸留水に溶解ないし懸濁させて2mg/mLの濃度とした。この濃度は乳酸菌数としては2×10
8cfu/mL以上となる。これをサンプル液とした。
【0049】
〔参考例3〕
陰性コントロールとして蒸留水をサンプル液とした。
【0050】
実施例2及び参考例3のサンプル液を以下の<コラーゲン吸収試験>に供した。
<コラーゲン吸収試験>
7週齢の雄性SD系ラット(九動株式会社)を14匹、5日間馴化した後、平均体重が同等になるように、実施例2の液の投与群と参考例3の液の投与群との2群に分けた。群分け後、実施例2の液の投与群のラットに実施例2のサンプル液を1日に1回として8日強制経口投与した。ここで投与量は、1匹に対する1日の投与量がラット1kgあたり10mL、つまりラット1kgあたり乳酸菌数で2×10
9cfu以上となる量とした。参考例3投与群のラットにはサンプル液としてラット1kgあたり10mLの蒸留水を1日1回、実施例2の液の投与と同期間、強制経口投与した。馴化期間とサンプル液の投与期間との両方とも、MF固形飼料(オリエンタル酵母工業社)を両群のラットに自由摂取させた。その後、サンプル液の投与終了日に絶食を開始した。翌日16時間以上絶食させたラットにコラーゲンの水溶液(濃度:25mg/mL)を、ラット1kg体重当たりコラーゲンが500mgとなる量で強制経口投与した。ここでコラーゲンとしては、魚由来の平均分子量が約2000のものを用いた。コラーゲン投与前(コラーゲン投与から0時間)、及びコラーゲン投与から0.5、1、2、3及び6時間後に経時的に採血した。得られた血液を室温で30分間以上放置した後、遠心分離し、上清を回収して血清を採取した。得られた血清中の血中Hyp量(μg/mL)を、キット(Hydroxyproline Assay kit [K555-100], BioVision社) により測定した。得られた測定値の平均値を、コラーゲン投与開始から6時間経過まで経過時間ごとにプロットした。得られた折れ線グラフを
図4に示す。2群間の有意差検定は、student’s t-testにより有意水準p<0.05で行った(以下同様)。
【0051】
更に、ラットごとに、Hypについて血中濃度−時間曲線下面積(Area Under the Blood Concentration-Time Curve、以下AUCという、単位:μg/mL×hr)を求めた。具体的には、前記で得られた各測定値から、コラーゲン投与前の測定値を引いた値を求めて血中Hyp量の変化量とし、この変化量を、コラーゲン投与からの経過時間に対してプロットし、得られた折れ線下の面積値をAUCとした。ここで面積値の算出において、コラーゲン投与後、血中Hyp量がコラーゲン投与前よりも大きい時間帯の面積は正の面積とし、血中Hyp量がコラーゲン投与前よりも小さい時間帯の面積は負の面積とした。得られたAUCの平均値を
図5に示す。
【0052】
図4に示すように、参考例3である陰性コントロール群では、血中Hyp量は、コラーゲンの投与1時間後にピークを迎えた後、投与2〜3時間後に急減し、投与3〜6時間後には、コラーゲン投与前と同レベルにまで減少した。これに対して、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラム投与群である実施例2では、血中Hyp量のピークは、参考例3よりも遅いコラーゲン投与2時間後であった。実施例2では、その後も参考例3よりも血中Hyp量の低下が緩やかであり、コラーゲン投与6時間後の血中Hyp量が、参考例3と比較して有意に高かった(p<0.05)。また、
図5に示すように、血中Hyp量のAUCは、ラクトバチルス・プランタラム投与群である実施例2が、陰性コントロール群である参考例3と比較して有意に高かった(p<0.05)。以上の結果から、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムにコラーゲン吸収促進作用があることは明らかである。
【0053】
〔実施例3〕
実施例1で用いた死菌の粉末と同様の粉末を用いた。この粉末を、3.0×10
7cfu/gとなるように高脂肪食(HFD32:日本クレア株式会社製)に混ぜてサンプル食とした。
【0054】
〔参考例4〕
ノーマル食として、MF固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製)をサンプル食とした。
【0055】
〔参考例5〕
高脂肪食(HFD32)をそのままサンプル食とした。
【0056】
実施例3並びに参考例4及び5のサンプル食を以下の<抗肥満試験>に用いた。
【0057】
<抗肥満試験>
雄性7週齢のddYマウス(日本エスエルシー株式会社より入手)18匹を8日間訓化した。18匹を馴化後、平均体重が同等になるように、6匹ずつ、実施例3摂取群、参考例4摂取群、参考例5摂取群の3群に群分けした。群分けから32日間を試験期間に設定した。この試験期間中、実施例3、参考例4及び5の各サンプル食を、それぞれ対応する摂取群に自由摂取させた。試験開始から28日目まで定期的にマウスの体重を測定した。体重の平均値の推移を
図6に示す。また、試験開始から定期的に摂餌量も測定した。参考例5摂取群は、試験開始から24日目までの総摂餌量の平均値が高かったため、試験開始24日目から28日目まで1匹当たりの1日の摂餌量を4gに制限して給餌した。試験開始から28日間の総摂餌量の平均値及び標準偏差(S.D.)を表1に示す。
試験期間終了時点つまり試験開始32日後から絶食を開始した。約13時間の絶食後、マウスの体重を測定した後、ジエチルエーテル麻酔下で開腹し、肝臓を摘出し、その質量を測定した。また、精巣周囲脂肪組織、腸間膜脂肪組織、後腹膜脂肪組織及び腎周囲脂肪組織をそれぞれ採取し、それらの質量を測定した。次いで、肝臓と各脂肪組織の合計質量を求め、内臓脂肪合計質量とした。肝臓の質量及び各脂肪組織の質量並びに内臓脂肪合計質量のそれぞれについて、マウスの体重で割った値に100の数を掛け合わせることで、マウスの体重100gあたりの相対質量を算出した。得られた相対質量の平均値及び標準偏差(S.D.)を
図7に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
図6に示すように、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムを摂取した実施例3の摂取群は、試験開始から28日後にかけて、コントロール群である参考例5の摂取群に比べて、平均体重が下回った。
また
図7に示すように、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムを摂取した実施例3の摂取群は、コントロール群である参考例5摂取群に比べて、各脂肪組織の相対質量が低かった。更に、実施例3の摂取群は、内臓脂肪合計の相対質量が、コントロール群である参考例5摂取群に対して有意に低かった。
以上の結果から、キムチ由来のラクトバチルス・プランタラムが抗肥満作用を有することは明らかである。