特開2017-48259(P2017-48259A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化スタイロンポリカーボネート株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-48259(P2017-48259A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】樹脂製容器用部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20170217BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20170217BHJP
   C08K 5/5393 20060101ALI20170217BHJP
   C08K 5/5333 20060101ALI20170217BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L67/02
   C08K5/5393
   C08K5/5333
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-170157(P2015-170157)
(22)【出願日】2015年8月31日
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化スタイロンポリカーボネート株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀澤 和史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF052
4J002CF072
4J002CG001
4J002CG011
4J002CG021
4J002EW126
4J002EW136
4J002FD076
4J002GG01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】均一な動作を精度良く長期間実行する、半導体関連部品の運搬等に好適に用いられ得る樹脂製容器用部材の提供。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂80〜50重量%及びポリアルキレンテレフタレート20〜50重量%からなる樹脂成分(A)と式(1)又は式(2)で表されるリン系酸化防止剤(B)とを含有し、リン系酸化防止剤(B)の量が、樹脂成分(A)100重量部に対して0.02〜0.5重量部である樹脂組成物を成形し、樹脂組成物から射出成形された厚み3mmの成形片の動摩擦係数が0.3以下である樹脂組成物。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂80〜50重量%およびポリアルキレンテレフタレート20〜50重量%からなる樹脂成分(A)と下記一般式(1)または一般式(2)で表されるリン系酸化防止剤(B)とを含有してなり、該リン系酸化防止剤(B)の量が、該樹脂成分(A)100重量部に対して0.02〜0.5重量部である樹脂組成物を成形してなり、該樹脂組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K−7125に準拠した動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする、樹脂製容器用部材。
一般式(1):
【化1】
(一般式(1)において、R1〜R4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
【請求項2】
前記ポリアルキレンテレフタレートの固有粘度が0.9〜1.2である、請求項1記載の樹脂製容器用部材。
【請求項3】
前記ポリアルキレンテレフタレートが、ポリブチレンテレフタレートである、請求項1記載の樹脂製容器部材。
【請求項4】
前記樹脂製容器がハードディスク容器、太陽電池容器または半導体関連部品容器である、請求項1記載の樹脂製容器用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、熱安定性、及び摺動性をバランスよく備える樹脂製の容器用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられているが、最近では、耐熱性、熱安定性、耐衝撃性等に優れることから、例えば半導体関連部品等の容器等にも使用が検討されている。
【0003】
半導体関連部品等の容器としては、複数枚のシリコンウエハを貯蔵、及び、運搬する容器やシリコンウエハ一枚を収納したシリコンウエハ容器等が挙げられる他、容器としては、ハードディスクの基盤であるガラスやアルミ板、それらガラス板やアルミ板をメディア化したハードディスク複数枚を貯蔵、及び運搬するハードディスク容器、近年では太陽電池部品を貯蔵、及び、運搬する太陽電池容器等がある。
【0004】
また、容器用部材としては、例えば、運搬容器内においてシリコンウエハ等の半導体関連部品等を収納し運搬する役割を担う樹脂製のウエハホルダ等の部材が挙げられる。半導体関連部品はこの樹脂製容器用部材と接触し、又摺動することがある。従来の容器用部材においては、半導体関連部品に対する摺動特性は十分ではないことから、容器用部材上を半導体関連部品が円滑に移動することができないことがあった。これにより、容器用部材から半導体関連部品等を円滑に取り出せないといった不具合や半導体関連部品等の表面が微細な損傷を受けるといった不具合が発生する場合があった。
【0005】
さらに、半導体関連部品等と容器用部材との擦れにより容器用部材が削れることにより、パーティクルが発生するといった不具合が発生する場合があった。
【0006】
例えば、上記欠点を改良する目的でポリカーボネート樹脂にポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合した樹脂組成物が提案(特許文献1参照)されている。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を配合することで摺動性は改良されるものの、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性が損なわれるという問題があり、更なる改良が求められていた。他方、このような容器用部材は、例えば、使用前に高温で温水洗浄されるため優れた耐熱性や熱安定性が要求される場合があるが、これらの特性をバランス良く備えた容器用材料は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−259059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の樹脂製容器用部材の課題であった、耐熱性及び摺動性等をバランスよく備え、特に、均一な動作を精度良く長期間実行する、例えば、半導体関連部品の運搬等に好適に用いられ得る樹脂製容器用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂にポリアルキレンテレフタレートを配合した樹脂組成物に、特定のリン系酸化防止剤を含有させることにより、驚くべきことに、容器用樹脂製部材に必要とされる耐熱性及び摺動性等をバランス良く満足できることを見出し、この材料を容器用部材に適用することにより本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂80〜50重量%およびポリアルキレンテレフタレート20〜50重量%からなる樹脂成分(A)と下記一般式(1)または一般式(2)で表されるリン系酸化防止剤(B)とを含有してなり、該リン系酸化防止剤(B)の量が、該樹脂成分(A)100重量部に対して0.02〜0.5重量部である樹脂組成物を成形してなり、該樹脂組成物から射出成形された厚み3mmの成形片のJIS K−7125に準拠した動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする、樹脂製容器用部材を提供するものである。
一般式(1):
【0011】
【化1】
(一般式(1)において、R1〜R4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(2):
【0012】
【化2】
(一般式(2)において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂製容器用部材は、耐熱性、熱安定性及び摺動性をバランスよく備える。特に摺動性に優れるため、例えば、シリコンウエハ等のコンテンツの容器用部材を介した容器への収納動作が繰り返された場合であっても、容器用部材への収納、取り出しの際の移動に不具合が生じることが可及的に防止される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0016】
本発明の容器用部材とは、複数枚のシリコンウエハを貯蔵、及び、運搬する容器やシリコンウエハ一枚を収納したシリコンウエハ容器、ハードディスクの基盤であるガラスやアルミ板、それらガラス板やアルミ板をメディア化したハードディスク複数枚を貯蔵、及び、運搬するハードディスク容器、近年では、太陽電池部品を貯蔵、及び、運搬する太陽電池容器等に用いられる部材を意味し、例えば、複数枚の半導体ウエハを運搬する容器内に複数のウエハを収納する際にウエハと容器との間に介在されるウエハホルダと呼ばれる樹脂製部材等を意味する。また、これに限らず、容器本体や容器蓋自体として使用される場合をも含むものとする。さらに、容器用部材との用語には、射出成形などによる一体品、容器用部品を組み合せた別体品、およびその容器用部品用の構成樹脂部品等を含むものとする。
【0017】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0018】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0019】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0020】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
【0021】
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
【0022】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、更に好ましくは18000〜28000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0023】
本発明にて使用されるポリアルキレンテレフタレートとしては、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体などが挙げられる。ポリアルキレンテレフタレートは、JIS K−7233に基づいて計測された固有粘度が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.4の範囲のものが好適に使用できる。0.9〜1.2の固有粘度であることが、摺動性、耐熱性、および熱安定性のバランスの観点から好ましい。市販品としては、ポリプラスチックス社製 600FP(固有粘度1.0)及び700FP(固有粘度1.14)等があげられる。
【0024】
本発明にて使用されるポリアルキレンテレフタレートの配合量としては、20〜50重量%である。20重量%を下回ると摺動性に劣るという問題があり、50重量%を超えると耐熱性、熱安定性に劣るため、好ましくない。より好適な配合量としては、25〜45重量%の範囲である。
【0025】
ポリカーボネート樹脂およびポリアルキレンテレフタレートの混合方法には、特に制限はなく公知の混合機、例えばタンブラー、リボン・ブレンダー、高速ミキサー等で混合し、溶融混練する方法が挙げられる。
【0026】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(B)は下記一般式(1)または(2)に示す化合物が挙げられる。
一般式(1):
【0027】
【化3】
(一般式(1)において、R1〜R4は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(2):
【0028】
【化4】
(一般式(2)において、R5、R6は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
【0029】
前記一般式(2)において、R5及びR6は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
【0030】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
【0031】
一般式(1)の化合物としてはクラリアントジャパン社製サンドスタブP−EPQが、一般式(2)の化合物としてはアデカ社製アデカスタブPEP−36が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0032】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂80〜50重量%、ポリアルキレンテレフタレート20〜50重量%からなる樹脂組成物100重量部あたり、0.02〜0.5重量部である。配合量がこの範囲を外れる場合、黄色度が上がるため好ましくない。配合量は、0.03〜0.4重量部が好適で、さらに好ましくは0.04〜0.1重量部である。この範囲では、黄色度が上がらず、優れた熱安定性を示す。
【0033】
また、本発明にて用いられる樹脂組成物から射出成形されたISO試験法に準じた試験片を用いた、ISO 75−2に準じ荷重たわみ温度は、80℃以上であることが好ましく、それを下回ると、当該樹脂組成物からなる容器用部材が、温水洗浄等の加温工程で変形を呈する恐れがある。
【0034】
本発明の各種配合成分(A)と(B)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で溶融混練することができる。また、これら配合成分の配合順序や一括混合、分割混合を採用することについても特に制限はない。また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)や強化材(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ等)等、又、他の樹脂を配合することができる。
【0035】
本発明の容器用部材の成形方法については、主として射出成形方法が用いられる。例えば、数個若しくは十数個等複数の容器用部材が同時に成形できるような金型と100〜200Tクラスの射出成形機が用いられる。射出成形温度は、成形加工性の面から260〜290℃が望ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲においては、任意に変更乃至改変して実施することができる。なお、特に断りのない限り、実施例中の「%」及び「部」は、それぞれ重量基準に基づく「重量%」及び「重量部」を示す。
【0037】
原料として以下のものを使用した。
1.樹脂組成物(A):
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ(株)社製カリバー200−13(以下、「PC」と略記)
「カリバー」はスタイロンユーロップゲーエムベーハーの登録商標
ポリブチレンテレフタレート: (ポリアルキレンテレフタレート)
ポリプラスチックス(株)社製ジュラネックス600FP(以下、PBTと略記)
固有粘度:1.0、融点:223℃
【0038】
2.リン系酸化防止剤(B)
以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン
【0039】
【化5】
アデカスタブPEP−36
(商品名、(株)ADEKA製、以下「AO」と略記)
【0040】
前述の各種配合成分を表1及び表2に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、
10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度260℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用い、以下の方法に従って各評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0041】
ア)摺動性の評価
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ105℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて試験片(63x63x3mm)を作成した。得られた試験片をJIS K−7125に準じ、400g荷重をかけ相手材がポリカーボネート樹脂に対する動摩擦係数を測定し、0.3以下を良好とした。
当該相手材の作成条件は、次のとおり:
ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製 カリバー200−13 粘度平均分子量:21000)を用いた。これを125℃で4時間乾燥した後、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度280℃、射出圧力1600kg/cmにて相手材(150x90x3mm)を作成した。
【0042】
イ)耐熱性の評価
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100E−C5)を用いて設定温度250℃、射出圧力1600kg/cmにてISO試験法に準じた試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO 75−2に準じ荷重たわみ温度を測定し、荷重たわみ温度が80℃以上を良好とした。
【0043】
ウ)熱安定性の評価
得られたペレットをそれぞれ120℃×4時間の条件にて乾燥を行った後、射出成形機(日本製鋼所製J100E2P)を用いて、シリンダー設定温度280℃の条件にて15分間滞留前後の平板試験片(縦50mm×横50mm×厚み2mm)を作成後、スペクトロフォトメーター(村上色彩研究所社製CMS−35SP)により、YIの変化(ΔYI)を測定した。ΔYIとは、滞留前後の黄味の程度の差を表し、ΔYIが小さい程、変色は小さく熱安定性に優れている。ΔYIの評価の基準としては、ΔYIの値が10未満であるものを良好(○)、3以上であるものを不良(×)とした。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
樹脂組成物が本発明の構成要件を満足する場合(実施例1〜6)にあっては、摺動性、耐熱性及び熱安定性のそれぞれに亘って良好な結果を示した。
【0047】
一方、樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1はPBTの添加量が本発明の定める範囲よりも少なく、摺動性に劣っていた。
比較例2はPBTの添加量が本発明の定める範囲より多い事から、耐熱性と熱安定性に劣っていた。
比較例3および比較例4はリン系酸化防止剤の添加量が本発明の定める範囲を外れている事から、熱安定性が劣っていた。
【0048】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0049】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0050】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の樹脂製容器用部材は、耐熱性、熱安定性及び摺動性をバランスよく備える。特に摺動性に優れるため、容器用部材を介した容器への収納動作が繰り返された場合であっても、容器用部材への収納、取り出しの際の移動に不具合が生じることが可及的に防止される。本願発明は、以上の通り工業的利用価値が極めて高い。