【実施例】
【0027】
以下の成分を表1の配合にして押出成形機(品名:KT−X、神戸製鋼所製)で溶融混練し、径2mmのストランド状に押し出し、カッターで長さ3〜5mmで切断し、実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットを製造した。溶融混練条件は、270℃である。
【0028】
・ポリエチレンテレフタレート(PET):華潤有限公司製「CR8816」
・ナイロンMXD6:三菱ガス化学社製「S6007」
・共重合体A:グリシジルメタクリレート含有量15質量%のエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)とアクリロニトリルスチレン共重合体(AS)のグラフト共重合体(EGMA−g−AS)、EGMA/AS(質量%比)=70/30、日油社製「(登録商標)モディパーA4400」
・共重合体B:酢酸ビニル含有率28質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を100%加水分解したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、東ソー社製「メルセンH6051」
【0029】
実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットに対して互着性の評価を行った。互着性は、樹脂ペレットを乾燥装置(品名:DKM−600、ヤマト科学製)により140℃で5時間乾燥させ、乾燥後の樹脂ペレットの100gを、上端内径が120mm、下端内径が35mm、高さ140mmのステンレス製の円錐筒状疑似ホッパーに上方から投入し、3秒以内に全てが自重で下端から排出されるか否かで判断した。3秒以内に全て自重で排出された場合には樹脂ペレット同士がくっつき難いと判断して合格「〇」とし、3秒以内に一部でも排出されない場合、樹脂ペレット同士がくっつき易いと判断して不合格「×」とした。結果は表1に併記した。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1〜実施例3は、樹脂ペレットが円錐筒状疑似ホッパーから全て自重で3秒以内に排出され、互着性評価が「〇」であった。一方、比較例1と比較例2はポリエチレテレフタレートの量が本発明の範囲よりも多い70質量%であり、樹脂ペレットが円錐筒状疑似ホッパーから3秒以内に全排出されず、互着性評価が「×」であった。
【0032】
前記実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットにポリエチレンテレフタレートを表2で示す量配合し、予備乾燥装置(品名:DKM−600、ヤマト科学製)を用いて、100〜160℃で予備乾燥を3時間行い、その後にインジェクションブロー成形(詳細は後述する)を行って実施例1〜4及び比較例1、2の中空成形体を製造した。なお、実施例4の中空成形体は、実施例3の樹脂ペレットを使用し、かつ実施例3の中空成形体とは樹脂ペレットの量を異ならせた例である。なお、比較例1及び比較例2は、樹脂ペレットがくっつき易いため、樹脂ペレットをタンブラーで分離させた後に予備乾燥を行ない、その後にインジェクションブロー成形を行った。
【0033】
また、実施例3の樹脂ペレットを用いてナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外となるようにポリエチレンテレフタレートを配合して比較例3の中空成形体を製造した。また、樹脂ペレットを用いることなく比較例4〜6の中空成形体をインジェクションブロー成形で製造した。なお、比較例4は、ポリエチレンテレフタレートのみで中空成形体を製造した例、比較例5は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6から製造した例、比較例6は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6に以下の共重合体Cを添加した例である。
・共重合体C:EGMAとブチルアクリレート(BA)−MMA共重合体のグラフト物(P(BA/MMA))、EGMA/P(BA/MMA)比=70/30、EGMA中のGMA含有量=15質量%、日油社製「(登録商標)モディパーA4300」
また、中空成形体の製造時に使用したポリエチレンテレフタレートは樹脂ペレットの製造に使用したものと同一である。
【0034】
インジェクションブロー成形は、まず、インジェクションブロー成形機(日精エー・エス・ビー社製、型式:ASB250EXH)を用いて重量27g、全長105mmの有底パリソン(プリフォーム)を成形した。この時の成形された有底パリソン(プリフォーム)の側面部の厚みは1.0mmであった。
その後、前記有底パリソン(プリフォーム)を80〜120℃に調温して二軸延伸ブロー成形し、全長160mm、内容量300mlのボトル形状の中空成形体(容器)を成形した。
成形したボトル形状の中空成形体の側面部は、厚みが0.2mmであり、成形時の延伸によって1/5の厚みとなり、延伸倍率が5倍であった。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例及び比較例の中空成形体に対して、YI値(黄変性)、透過度(透明性)、ヘイズ(曇り度)、酸素透過度を以下の方法で測定した。
【0037】
・YI値(黄変性)
YI値の測定はJIS K7373に準拠して行った。測定結果のYI値が18未満(0に近い)を黄変が少ないと判断して合格(〇)とし、18以上を黄変が大と判断して不合格(×)とした。
・透過度(透明性)
有底パリソン(プリフォーム)の元厚が1.0mmであったのが成形時の延伸によって0.2mmとなった部位(延伸倍率5倍)において、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、名称:V−650)を用いてJIS K 7361−1に準拠してτ
2(試験片を透過した全光束)とτ
1(入射光の光束)を測定し、表2の下部に示した式(1)により[τ
t(全光透過率)%]を算出し、得られた[τ
t]を透過度(透明性)とした。評価は、透過度(%)が80%以上を「〇」、80%未満を「×」とした。
・ヘイズ(曇り度)
紫外可視近赤外分光硬度計(日本分光社製、名称:V−650)を用いてJIS K 7136に準拠してτ
1(入射光の光束)、τ
2(試験片を透過した全光束)、τ
3(装置で拡散した光束)、τ
4(装置及び試験片で拡散した光束)を測定し、表2の下部に示した式(2)により[ヘイズ(%)]を算出した。評価は、ヘイズ(曇り度)(%)が15%以下を「〇」、15%より大を「×」とした。
・酸素透過度
MOCON社製OX−TRANを用い、JIS K7126−2に基づき、温度23℃、容器内100%RH/容器外50%RHの条件で酸素透過度を測定した。評価は、酸素透過度(cm
3/day/bottle/2.13×10
4Pa)が0.018未満を「〇」、0.018以上を「×」とした。
【0038】
実施例1〜4の中空成形体は、何れもYI値、透過度(透明性)、ヘイズ(曇り度)、酸素透過度の評価が「〇」であり、総合判定が「〇」であった。特に、実施例1〜4の中空成形体では、ポリエチレンテレフタレートを、樹脂ペレットと中空体製造時とに分けて混練しているため、黄変を抑制する効果が得られた。なお、実施例1〜4の中空成形体及び比較例1〜3の中空成形体における総合判定は、表1の樹脂ペレットの互着性評価を含むものである。
【0039】
一方、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を、樹脂ペレット及び中空成形体の製造時の何れにも含まない比較例1の中空成形体は、YI値が26.7であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。また、樹脂ペレットにエチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体Bを含み、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外である比較例2の中空成形体は、YI値が14.2であって黄変性が少なかったが、樹脂ペレットの互着性評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。また実施例3の樹脂ペレットを用い、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外である比較例3の中空成形体は、YI値が10.6であって黄変性が少なかったが、酸素透過度評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。
【0040】
樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレート100%からなる比較例4の中空成形体は、YI値が5.6であって黄変性が少なかったが、酸素透過度評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。また、樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6のみから直接インジェクションブロー成形した比較例5は、YI値が24.5であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。また、樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6及びエチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体Cから直接インジェクションブロー成形した比較例6は、YI値が24.3であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。
【0041】
このように、本発明の樹脂ペレットは、特殊な装置を用いることなく通常の乾燥装置で樹脂ペレットの乾燥を行うことができ、ペレット同士のくっつきを防ぐことができる。また、本発明の中空成形体は、成形機のホッパー内で樹脂が架橋状態となって停滞するブリッジを生じることを防止でき、かつ安価で視認性及びガスバリア性が良好で、黄変を抑えることができる。