特開2017-48283(P2017-48283A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-48283(P2017-48283A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】樹脂ペレットと中空成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20170217BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20170217BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20170217BHJP
【FI】
   C08L77/06
   C08L67/02
   C08J3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-171126(P2015-171126)
(22)【出願日】2015年8月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 晋
(72)【発明者】
【氏名】金山 学
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA28
4F070AA47
4F070AA54
4F070AB03
4F070AB11
4F070DA11
4F070DA55
4J002BB063
4J002CD193
4J002CF062
4J002CL031
(57)【要約】
【課題】特殊な設備や複雑な作業を必要とすることなく、簡易な設備や作業によって乾燥することができる樹脂ペレットと、前記樹脂ペレットを用いて成形された安価で視認性及びガスバリア性が良好な中空成形体の提供を目的とする。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートを1.0〜30質量%とナイロンMXD6を99〜70質量%とからなる樹脂成分100質量%に、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を0.5〜2.0質量%混練した樹脂ペレットと、ポリエチレンテレフタレートとを、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が3〜7質量%となるように混合した樹脂組成物からインジェクションブロー成形で中空成形体とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートを1.0〜30質量%(質量部)とナイロンMXD6を99〜70質量%(質量部)とからなる樹脂成分100質量%(質量部)に、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を0.5〜2.0質量%(質量部)混練した樹脂ペレット。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂ペレットとポリエチレンテレフタレートを、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%(質量部)中のナイロンMXD6の含量が3〜7質量%(質量部)となるように混合した樹脂組成物から成形されたことを特徴とする中空成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットと前記樹脂ペレットを用いて成形される中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性及び透明性を改善するために、ポリエチレンテレフタレート(PET)とナイロンMXD6からなる単層樹脂から成形されたボトル等の中空成形体が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、単層樹脂を用いて視認性を良好(白化や黄変の無い)にするためには、(1)押出機によるコンパウンド工程、(2)コンパウンド工程で得られた樹脂ペレットの乾燥及び結晶化工程を行った後に中空成形する工程が必要になる。
【0004】
さらに、従来の樹脂ペレットの乾燥及び結晶化工程については、水分が完全に除去できなかったり、ポリエチレンテレフタレート(PET)が熱で融着してペレット同士がくっつき、樹脂が乾燥機から取り出せなくなったり、成形機のホッパー内で樹脂が架橋状態となって停滞するブリッジを生じたりして、中空成形が困難になる問題が発生する。また、一旦くっついた樹脂を砕いて分離させる作業が必要になることもある。
【0005】
前記樹脂ペレットの乾燥及び結晶化工程の問題を解決するために、特殊な設備が提案されている(特許文献2、3)。しかし、特殊な設備を使用することで、設備や作業が複雑になり、中空成形体の成形コストが嵩む問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5076565号公報
【特許文献2】特開2003−71834号公報
【特許文献3】特許第3591521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、特殊な設備や複雑な作業を必要とすることなく、簡易な設備や作業によって乾燥することができる樹脂ペレットと、前記樹脂ペレットを用いて成形された安価で視認性及びガスバリア性が良好な中空成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ポリエチレンテレフタレートを1.0〜30質量%(質量部)とナイロンMXD6を99〜70質量%(質量部)とからなる樹脂成分100質量%(質量部)に、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を0.5〜2.0質量%(質量部)混練した樹脂ペレットに係る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の樹脂ペレットとポリエチレンテレフタレートを、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%(質量部)中のナイロンMXD6の含量が3〜7質量%(質量部)となるように混合した樹脂組成物から成形された中空成形体に係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ポリエチレンテレフタレートを1.0〜30質量%とナイロンMXD6を99〜70質量%とからなる樹脂成分100質量%に、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を0.5〜2.0質量%を混練したものから樹脂ペレットがなるため、特殊な装置を用いることなく通常の乾燥装置で樹脂ペレットの乾燥を行うことができ、ペレット同士がくっつきを防ぐことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の樹脂ペレットとポリエチレンテレフタレートを、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が3〜7質量%となるように混合した樹脂組成物から成形された中空成形体であるため、成形機のホッパー内で樹脂が架橋状態となって停滞するブリッジを生じることを防止でき、かつ安価で視認性及びガスバリア性が良好で、黄変を抑えた中空成形体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の樹脂ペレット及び中空成形体について説明する。
本発明の樹脂ペレットは、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6とからなる樹脂成分にエチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を混練したものからなる。
【0013】
ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によって製造することができる。
【0014】
ナイロンMXD6は、メタキシレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合反応により得られる結晶性のポリアミドである。ナイロンMXD6はガスバリア性に優れ、かつ強度及び弾性率が高く、低吸水性、低透湿性の特徴を有する。
【0015】
ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の割合は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6とからなる樹脂成分100質量%中、ポリエチレンテレフタレートを1.0〜30質量%、ナイロンMXD6を99〜70質量%とするのが好ましい。ポリエチレンテレフタレートの量を30質量%以下としたことにより、特殊な装置を用いることなく通常の乾燥装置で樹脂ペレットの乾燥を行うことができるようになる。なお、ポリエチレンテレフタレートの量を減らし過ぎる(ナイロンMXD6の量を増やし過ぎる)と、中空成形体の製造時に配合するポリエチレンテレフタレートの量が多くなり、中空成形体の黄変化を抑えるのが難しくなるという問題も発生する。
【0016】
エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体は、水素結合性の極性基が、水素結合性を有する極性基であればよく、特に制限されるものではない。水素結合性の極性基として、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、カルボン酸アミド、スルホ基、スルホ基の塩、スルホンアミド基、ホスホ基、ホスホ基の塩、ホスホンアミド、カルボニル基等を挙げることができる。
【0017】
エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体の例として、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、グリシジルメタクリレート(GMA)、酸変性ポリエチレン等を挙げることができる。例えば、東ソー社製の「メルセンH6410」、「メルセンH6051」、「メルセンH6820」等の「メルセンH」シリーズ、住友化学社製の「(登録商標)ボンドファースト7L」、「(登録商標)ボンドファースト7M」等の「(登録商標)ボンドファースト」シリーズ、日油社製の「(登録商標)モディパーA4300」、「(登録商標)モディパーA4400」等の「(登録商標)モディパーA」シリーズなどを挙げることができる。また、前記エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体は、一種類に限られず、複数種類を併用してもよい。
【0018】
前記エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体の量は、ポリエチレンテレフタレートが1.0〜30質量%とナイロンMXD6が99〜70質量%とからなる樹脂成分100質量%に対して0.5〜2.0重量%である。0.5質量%よりも少ない場合には、樹脂ペレット同士の相溶が悪くなり成形品が白化し、逆に2.0質量%よりも多くなると、成形品が上記添加剤の色が強くなり不透明となる。
【0019】
本発明の樹脂ペレットの製造は、前記ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6を前記割合とした樹脂成分と前記エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体とを前記割合で二軸押出機に投入して260〜300℃で溶融混練し、ストランド状に押出してカッターでペット形状にカッティングすることにより行われる。
【0020】
前記樹脂ペレットは、乾燥された後に袋詰めされて保管等されたり、中空成形体の成形場所に運搬されたりする。前記樹脂ペレットの乾燥には、特別の方法が要求されず、通常の乾燥方法、例えば除湿乾燥、熱風乾燥方法等により行うことができ、通常の乾燥装置、例えば熱風乾燥機、脱湿乾燥機等を使用することができる。乾燥温度は、100〜160℃の範囲が好ましい。乾燥温度が低すぎると水分の除去が不十分となり、成形品の物性が低下する問題があり、高すぎると樹脂が溶融して樹脂同士が互着する。本発明の樹脂ペレットは、通常の乾燥方法で行っても、水分が完全に除去できなかったり、ポリエチレンテレフタレートが熱で融着してペレット同士がくっつき、樹脂が乾燥機から取り出せなくなったりすることがない。
【0021】
前記樹脂ペレットを用いる中空成形体の製造について説明する。前記樹脂ペレットは、中空成形体の製造に際してポリエチレンテレフタレートが混合され、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が3〜7質量%となるように、ポリエチレンテレフタレートの混合量が調整される。ナイロンMXD6の含量が3質量%未満の場合には酸素透過度が0.018(cm/day/bottle/2.1×10Pa)以上となってガスバリア性の有効性を得られず、一方、前記ナイロンMXD6の含量が7質量%を超えると製品の外観が不透明になる。
【0022】
前記樹脂ペレットにポリエチレンテレフタレートを混合した樹脂組成物に対して予備乾燥が行われる。予備乾燥は熱風乾燥装置、除湿乾燥装置等を用いて行われ、乾燥温度は100〜150℃が好ましい。予備乾燥時、前記樹脂ペレットはくっついて固まることがなく、その後の成形作業が妨げられることがない。なお、予備乾燥は、水分除去のために行われる。
【0023】
前記予備乾燥後、前記樹脂組成物をインジェクションブロー成形して中空成形体が製造される。中空成形体はボトル状等からなる。ブロー成形には、押出ブロー成形とインジェクションブロー成形がある。
押出ブロー成形は、押出機から押し出した溶融状態のパリソンを金型内に配置し、パリソン内に空気を吹き込んで金型形状に膨らませ、冷却して金型内面形状の中空成形体を成形する方法である。
【0024】
インジェクションブロー成形(射出ブロー成形)は、射出成形機を用いる射出成形によって形成した試験管状のプリフォームを金型にセットして、プリフォームに空気を吹き込んで中空成形体とする方法である。さらにインジェクションブロー成形の中でも延伸ブロー成形は、透明性及び強度の高い中空成形体が得られるため、好ましい成形方法である。
【0025】
延伸ブロー成形には、ホットパリソン法とコールドパリソン法とがある。ホットパリソン法は、射出成形機で前記ペレットとポリエチレンテレフタレートを混練してパリソンを射出成形し、そのパリソンが冷却する前に金型にセットし、空気を吹き込んで樹脂を延伸させ、中空成形体を成形する方法である。一方、コールドパリソン法は、射出成形により試験管状のパリソンを予め成形し、冷却したパリソンを延伸ブロー成形機の金型にセットして再加熱し、その状態で空気を吹き込んで樹脂を延伸させ、中空成形体を成形する方法である。
【0026】
本発明の中空成形体は、前記ポリエチレンテレフタレートの全量のうち一部については前記樹脂ペレットの製造時に既に混練されており、インジェクションブロー成形(射出ブロー成形)の際の射出成形時には、残りのポリエチレンテレフタレートが前記樹脂ペレットと混練されることになるため、ポリエチレンテレフタレートから発生するアルデヒドとナイロンのアミド基が反応することによる中空成形体の黄変を抑えることができる。本発明の中空成形体は、YI値(JIS K7373に準拠)が18以下(0に近い)であり、黄変の少ないものである。なお、YI値(JIS K7373に準拠)は、0を基準として+(プラス)の値が大ほど黄色が強くなり、一方−(マイナス)の値が大ほど青色が強くなる。
【実施例】
【0027】
以下の成分を表1の配合にして押出成形機(品名:KT−X、神戸製鋼所製)で溶融混練し、径2mmのストランド状に押し出し、カッターで長さ3〜5mmで切断し、実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットを製造した。溶融混練条件は、270℃である。
【0028】
・ポリエチレンテレフタレート(PET):華潤有限公司製「CR8816」
・ナイロンMXD6:三菱ガス化学社製「S6007」
・共重合体A:グリシジルメタクリレート含有量15質量%のエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(EGMA)とアクリロニトリルスチレン共重合体(AS)のグラフト共重合体(EGMA−g−AS)、EGMA/AS(質量%比)=70/30、日油社製「(登録商標)モディパーA4400」
・共重合体B:酢酸ビニル含有率28質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位を100%加水分解したエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、東ソー社製「メルセンH6051」
【0029】
実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットに対して互着性の評価を行った。互着性は、樹脂ペレットを乾燥装置(品名:DKM−600、ヤマト科学製)により140℃で5時間乾燥させ、乾燥後の樹脂ペレットの100gを、上端内径が120mm、下端内径が35mm、高さ140mmのステンレス製の円錐筒状疑似ホッパーに上方から投入し、3秒以内に全てが自重で下端から排出されるか否かで判断した。3秒以内に全て自重で排出された場合には樹脂ペレット同士がくっつき難いと判断して合格「〇」とし、3秒以内に一部でも排出されない場合、樹脂ペレット同士がくっつき易いと判断して不合格「×」とした。結果は表1に併記した。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例1〜実施例3は、樹脂ペレットが円錐筒状疑似ホッパーから全て自重で3秒以内に排出され、互着性評価が「〇」であった。一方、比較例1と比較例2はポリエチレテレフタレートの量が本発明の範囲よりも多い70質量%であり、樹脂ペレットが円錐筒状疑似ホッパーから3秒以内に全排出されず、互着性評価が「×」であった。
【0032】
前記実施例1〜3及び比較例1、2の樹脂ペレットにポリエチレンテレフタレートを表2で示す量配合し、予備乾燥装置(品名:DKM−600、ヤマト科学製)を用いて、100〜160℃で予備乾燥を3時間行い、その後にインジェクションブロー成形(詳細は後述する)を行って実施例1〜4及び比較例1、2の中空成形体を製造した。なお、実施例4の中空成形体は、実施例3の樹脂ペレットを使用し、かつ実施例3の中空成形体とは樹脂ペレットの量を異ならせた例である。なお、比較例1及び比較例2は、樹脂ペレットがくっつき易いため、樹脂ペレットをタンブラーで分離させた後に予備乾燥を行ない、その後にインジェクションブロー成形を行った。
【0033】
また、実施例3の樹脂ペレットを用いてナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外となるようにポリエチレンテレフタレートを配合して比較例3の中空成形体を製造した。また、樹脂ペレットを用いることなく比較例4〜6の中空成形体をインジェクションブロー成形で製造した。なお、比較例4は、ポリエチレンテレフタレートのみで中空成形体を製造した例、比較例5は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6から製造した例、比較例6は、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6に以下の共重合体Cを添加した例である。
・共重合体C:EGMAとブチルアクリレート(BA)−MMA共重合体のグラフト物(P(BA/MMA))、EGMA/P(BA/MMA)比=70/30、EGMA中のGMA含有量=15質量%、日油社製「(登録商標)モディパーA4300」
また、中空成形体の製造時に使用したポリエチレンテレフタレートは樹脂ペレットの製造に使用したものと同一である。
【0034】
インジェクションブロー成形は、まず、インジェクションブロー成形機(日精エー・エス・ビー社製、型式:ASB250EXH)を用いて重量27g、全長105mmの有底パリソン(プリフォーム)を成形した。この時の成形された有底パリソン(プリフォーム)の側面部の厚みは1.0mmであった。
その後、前記有底パリソン(プリフォーム)を80〜120℃に調温して二軸延伸ブロー成形し、全長160mm、内容量300mlのボトル形状の中空成形体(容器)を成形した。
成形したボトル形状の中空成形体の側面部は、厚みが0.2mmであり、成形時の延伸によって1/5の厚みとなり、延伸倍率が5倍であった。
【0035】
【表2】
【0036】
実施例及び比較例の中空成形体に対して、YI値(黄変性)、透過度(透明性)、ヘイズ(曇り度)、酸素透過度を以下の方法で測定した。
【0037】
・YI値(黄変性)
YI値の測定はJIS K7373に準拠して行った。測定結果のYI値が18未満(0に近い)を黄変が少ないと判断して合格(〇)とし、18以上を黄変が大と判断して不合格(×)とした。
・透過度(透明性)
有底パリソン(プリフォーム)の元厚が1.0mmであったのが成形時の延伸によって0.2mmとなった部位(延伸倍率5倍)において、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、名称:V−650)を用いてJIS K 7361−1に準拠してτ(試験片を透過した全光束)とτ(入射光の光束)を測定し、表2の下部に示した式(1)により[τ(全光透過率)%]を算出し、得られた[τ]を透過度(透明性)とした。評価は、透過度(%)が80%以上を「〇」、80%未満を「×」とした。
・ヘイズ(曇り度)
紫外可視近赤外分光硬度計(日本分光社製、名称:V−650)を用いてJIS K 7136に準拠してτ(入射光の光束)、τ(試験片を透過した全光束)、τ(装置で拡散した光束)、τ(装置及び試験片で拡散した光束)を測定し、表2の下部に示した式(2)により[ヘイズ(%)]を算出した。評価は、ヘイズ(曇り度)(%)が15%以下を「〇」、15%より大を「×」とした。
・酸素透過度
MOCON社製OX−TRANを用い、JIS K7126−2に基づき、温度23℃、容器内100%RH/容器外50%RHの条件で酸素透過度を測定した。評価は、酸素透過度(cm/day/bottle/2.13×10Pa)が0.018未満を「〇」、0.018以上を「×」とした。
【0038】
実施例1〜4の中空成形体は、何れもYI値、透過度(透明性)、ヘイズ(曇り度)、酸素透過度の評価が「〇」であり、総合判定が「〇」であった。特に、実施例1〜4の中空成形体では、ポリエチレンテレフタレートを、樹脂ペレットと中空体製造時とに分けて混練しているため、黄変を抑制する効果が得られた。なお、実施例1〜4の中空成形体及び比較例1〜3の中空成形体における総合判定は、表1の樹脂ペレットの互着性評価を含むものである。
【0039】
一方、エチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体を、樹脂ペレット及び中空成形体の製造時の何れにも含まない比較例1の中空成形体は、YI値が26.7であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。また、樹脂ペレットにエチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体Bを含み、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外である比較例2の中空成形体は、YI値が14.2であって黄変性が少なかったが、樹脂ペレットの互着性評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。また実施例3の樹脂ペレットを用い、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6の合計量100質量%中のナイロンMXD6の含量が本発明の範囲外である比較例3の中空成形体は、YI値が10.6であって黄変性が少なかったが、酸素透過度評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。
【0040】
樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレート100%からなる比較例4の中空成形体は、YI値が5.6であって黄変性が少なかったが、酸素透過度評価が「×」のため、総合判定は「×」であった。また、樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6のみから直接インジェクションブロー成形した比較例5は、YI値が24.5であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。また、樹脂ペレットを用いず、ポリエチレンテレフタレートとナイロンMXD6及びエチレン鎖及び水素結合性の極性基を有する共重合体Cから直接インジェクションブロー成形した比較例6は、YI値が24.3であって黄変性が大(黄色が大)であり、総合判定が「×」であった。
【0041】
このように、本発明の樹脂ペレットは、特殊な装置を用いることなく通常の乾燥装置で樹脂ペレットの乾燥を行うことができ、ペレット同士のくっつきを防ぐことができる。また、本発明の中空成形体は、成形機のホッパー内で樹脂が架橋状態となって停滞するブリッジを生じることを防止でき、かつ安価で視認性及びガスバリア性が良好で、黄変を抑えることができる。