【課題】ハードコート層表面のアンチブロック性と、粘着層に対する密着性とのトレードオフとなる関係を緩和し、一方の機能が求められる場面ではその機能を有効に発揮させ、他方の機能を阻害しないように良好なバランスを図り、高性能かつ信頼性の高いハードコート層を与えることができる活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物等を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートに由来する構造単位と水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位とを含むウレタンプレポリマー、(B)平均一次粒径が30nm未満のシリカフィラー、(C)前記成分(B)のシリカフィラーとの平均一次粒径の差が20nm以上のシリカフィラー、(D)特定の化学構造を有するウレタンプレポリマーを含有する活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
前記成分(A)100重量部に対して、前記成分(B)及び前記成分(C)の合計が30〜150重量部である請求項1〜3のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
前記成分(B)100重量部に対して、前記成分(C)が20〜50重量部である請求項1〜4のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
フッ素化合物又はシリコーン化合物が含まれておらず、硬化膜表面に対する水の接触角が70°未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
前記成分(B)のシリカフィラーと前記成分(C)のシリカフィラーとの平均一次粒径の差が20nm〜60nmである請求項1〜6のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
透明プラスチックシートの一面に積層された、請求項1〜8のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化層を含むハードコート付き透明プラスチックシート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書においては、「(メタ)アクリル」は「メタクリル」及び/又は「アクリル」、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」を表す。
以下に示す各成分はいずれも、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0008】
〔活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物〕
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物(以下単に「本発明の樹脂組成物」ということがある)は、主として、上述したように、
(A)鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートに由来する構造単位と水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位とを含むウレタンプレポリマー、
(B)平均一次粒径が30nm未満のシリカフィラー、
(C)前記成分(B)のシリカフィラーとの平均一次粒径の差が20nm以上のシリカフィラーを含有する。
本発明の樹脂組成物は、さらに、(D)片末端水酸基含有ポリアルキレングリコール化合物又は(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加化合物に由来する構造単位と、ジイソシアネート化合物又はジイソシアネート単量体の重縮合物であるポリイソシアネート化合物に由来する構造単位と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位とを含むウレタンプレポリマーを含有することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤及び溶剤等が含まれていることが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、可視光線、紫外線、放射線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化させることが可能である。この樹脂組成物の硬化重合体は、その表面においてハードコート機能及びアンチブロッキング機能の双方を発揮させることができる。
【0010】
<ウレタンプレポリマー>
ウレタンプレポリマーは、鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとの反応物であり、鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートに由来する構造単位と水酸基含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位とを含む。以下このウレタンプレポリマーを(A)ウレタンプレポリマーということがある。
(A)ウレタンプレポリマーにおいて、鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートとしては、鎖状脂肪族炭化水素に2つのイソシアネート基が置換された化合物である。
鎖状脂肪族炭化水素は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよく、脂肪族炭化水素としては、飽和の炭化水素が挙げられる。この場合の炭素数は、例えば、2〜10程度が好ましく、3〜8程度がより好ましい。
飽和の炭化水素としては、エタン、n−プロパン、イソプロパン、n−ブタン、sec−ブタン、tert−ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0011】
鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0012】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、分子中に水酸基が1以上含有されているものであればよいが、ジイシソアネートとの反応により架橋、ゲル化を制御して、所望のウレタンプレポリマーを得やすいという観点から、水酸基が1つ含有されているものが好ましい。
【0013】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリオール(メタ)アクリレート類、アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類及びエポキシ樹脂とカルボン酸とから誘導されるもの等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類は、炭素数2〜12程度のアルキル基を含有するもの、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
ポリオール(メタ)アクリレート類は、例えば、炭素数2〜10程度の2〜4価のポリオール(メタ)アクリレート類、具体的には、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
アルキレンオキサイド付加ポリオール(メタ)アクリレート類は、炭素数2〜10程度(好ましくは、炭素数2〜8程度)のアルキレンオキサイドを含有するもの、例えば、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
エポキシ樹脂とカルボン酸とから誘導されるものとしては、グリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0017】
(A)ウレタンプレポリマーは、ヘキサメチレンジイソシアネート又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類又はポリオール(メタ)アクリレート類との反応によって得られるもの、つまり、ヘキサメチレンジイソシアネート又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに由来する構造単位と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類又はポリオール(メタ)アクリレート類に由来する構造単位とを含むものが好ましい。
【0018】
(A)ウレタンプレポリマーは、例えば、分子量が500〜5,000程度のものが適当である。分子量が大きすぎると硬度が低下する傾向がある。このような(A)ウレタンプレポリマーは、例えば、特開2000−264936号に記載された方法によって製造することができる。
本明細書において、分子量は、スチレン基準の換算で算出の重量平均分子量を表し、このような分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(例えば、キャリアー:THF、カラム:Shodex GPC-LF804×2、検出部:示差屈折率計)により測定することができる。
【0019】
(A)ウレタンプレポリマーにおいて、鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネートのモル比は、水酸基含有(メタ)アクリレートのモル比の1/2以下であることが好ましい。水酸基含有(メタ)アクリレートの官能基の数が多いほど、架橋重合させた時に硬度が増大し、逆に少ないほど硬度は低下する傾向がある。従って、これらを調整することにより、適切な硬度の硬化重合体を得ることができる。具体的には、鎖状脂肪族炭化水素系ジイソシアネート:水酸基含有(メタ)アクリレート(モル比)=1.0:1.8〜2.5程度が挙げられ、1.0:1.8〜2.2程度が好ましい。
【0020】
また、本発明の樹脂組成物は、(A)ウレタンプレポリマーと異なるウレタンプレポリマーを含有していることが好ましい。以下このウレタンプレポリマーを(D)ウレタンプレポリマーということがある。
(D)ウレタンプレポリマーは、式(I)に示される構造からなる。
(R
1O−CONH−)
m−R
2−(−NHCO−OR
3)
n (I)
(式中、R
1O−はポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物の脱水素残基、−R
2−はジイソシアネート単量体の重縮合物であるポリイソシアネート化合物の脱イソシアネート基残基、R
3O−は水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の脱水素残基、m+n=1〜50の整数)
【0021】
ポリエーテルポリオールを主鎖とする化合物としては、例えば、アルコキシポリアルキレングリコール類、(メタ)アクリロキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリロキシポリプロピレングリコールが挙げられる。具体的には、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリテトラメチレングリコール、2−ヒドロキシエチルアクリレートのエチレンオキサイド付加体(例えば、付加モル数は、1〜20程度)、アルキレンオキサイド(例えば、炭素数2〜6程度)を(メタ)アクリル酸に付加させたものが挙げられる。
【0022】
ジイソシアネート単量体の重縮合物であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の2官能イソシアネートのビウレット体又はヌレート化物である3官能以上のイソシアネートが挙げられる。なかでも、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物、例えば、鎖状又は環状アルキル又はアリール基(例えば、炭素数6〜12程度)を含むポリイソシアネート化合物、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のヌレート化物が好ましい。
【0023】
<シリカフィラー>
本発明の樹脂組成物には、2種類の平均一次粒子径を有するシリカフィラーが含有される。ここでいうシリカフィラーとは樹脂に対して機能向上を目的として混合されるマイクロからナノレベルの粒径の微粒子状となった二酸化珪素を指す。2種類のシリカフィラーの平均一次粒子径は、例えば、数nm〜数μmのものが挙げられるが、なかでも、数nm〜数百nmのものが好ましく、数nm〜100nm程度のものがより好ましく、5nm〜80nm程度のものがさらに好ましい。
【0024】
シリカフィラーの市販品としては以下のものが例として挙げられる。ELCOM V−8802、ELCOM V−8804(日揮触媒化成株式会社製)、MEK−AC−2140Z、PGM−AC−2140Y、PGM−AC−4130Y、MEK−AC−5140Z(日産化学工業株式会社製)、PL−2L−PGME、PL−2L−MEK、HSP−3C(扶桑化学工業株式会社製)。
【0025】
一方のシリカフィラー(B)は、平均一次粒子径が、例えば、30nm未満であり、28nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、20nm以下又は未満がさらに好ましい。また、シリカフィラー(B)は、他方のシリカフィラー(C)よりも20nm以上の平均一次粒子径の差を有していることが好ましく、20nm〜100nm又は20nm〜60nmの平均一次粒子径の差を有することがより好ましく、20nm程度(±5nm)の平均一次粒子径の差を有していることがさらに好ましい。
【0026】
例えば、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は30nm未満でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は30nm以上が挙げられ、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は25nm以下でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は30nm以上、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は20nm以下でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は35nm以上、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は20nm以下でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は40nm以上、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は20nm以下でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は50nm以上、(B)のシリカフィラーの平均一次粒子径は20nm以下でありかつ(C)のシリカフィラーの平均一次粒子径は60nm以上の組み合わせ等が挙げられる。
【0027】
このように、平均一次粒子径に差を有する2種類のシリカフィラーを組み合わせて用いることにより、小粒径フィラーによって、ハードコート膜の硬度向上及び硬化収縮率の低下を確保しながら、大粒径フィラーによって、アンチブロッキング性を最大限に発揮させることができることを見出した。このことは、比較的大粒径フィラーのみを使用してもアンチブロッキング性が発現されないという事実を考慮すると予想外の効果である。
シリカフィラーの平均一次粒子径は、例えば、TEMなどの電子顕微鏡により観察される粒子によって測定することができる。あるいは、特定の粒子径が表示された市販品を用いてもよい。
【0028】
シリカフィラーの平均一次粒子径は、例えば、平均一次粒子径の異なる2種類のシリカフィラーを含有した樹脂組成物を用いて得られたハードコート膜表面の特徴的な凹凸を、接触式の表面粗さ測定器によって測定した場合、その荒さ曲線における最大高さ:Rz(JIS B 0601:2001に準拠)の値が、従来のハードコート膜と比較して大きく測定されることから確認できる。接触式の表面粗さ測定器の一例としては、例えば、株式会社東京精密(TOKYO SEIMITSU CO., LTD.)製の「サーフコム590A−3D−12(商品名)」などが挙げられる。
【0029】
シリカフィラーは、表面が有機修飾されていないものでもよいが、分散性の向上のために、有機修飾されているものが好ましい。ここでの表面の有機修飾とは、シリカフィラー表面に、有機化合物又は有機基を物理的又は化学的(好ましくは、化学的)に導入した複合体の形態となることを意味する。導入される有機化合物又は有機基としては、当該分野で公知のものが挙げられるが、活性エネルギー線硬化により得られる硬化膜の強度の向上を考慮すると、(メタ)アクリロイル基による修飾が好ましい。
【0030】
成分(B)と(C)との合計含有量は、成分(A)100重量部に対して10〜200重量部が挙げられ、30〜180重量部が好ましく、30〜150重量部がより好ましく、50〜150重量部、70〜130重量部、90〜130重量部又は100〜130重量部がさらに好ましい。
また、ウレタンプレポリマーが(D)のウレタンプレポリマーを含有する場合には、成分(B)と(C)との合計含有量は、成分(A)及び(D)100重量部に対して10〜200重量部が挙げられ、30〜180重量部が好ましく、30〜150重量部がより好ましく、50〜150重量部、70〜130重量部、90〜130重量部又は100〜130重量部がさらに好ましい。
【0031】
成分(C)は、成分(B)100重量部に対して、10〜200重量部とすることが挙げられ、20〜200重量部が好ましく、20〜200重量部がより好ましく、30〜180重量部、30〜150重量部、35〜150重量部、20〜100重量部、20〜50重量部がさらに好ましい。なお、成分(B)及び(C)は、溶剤又は水分散物として供給されることがあるが、上述した重量割合は、固形分の含有量を意味する。
【0032】
<その他の成分>
(光重合開始剤)
本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことが好ましい。ただし、硬化させる際の活性エネルギー線として電子線等を用いる場合など光重合開始剤を必要としない場合には、必ずしも含有していなくてもよい。
光重合開始剤は、活性エネルギー線によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0033】
光重合開始剤としては、当該分野で公知のもの、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン等、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア907(いずれもBASF社製)等が挙げられる。
【0034】
光重合開始剤は、本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の固形分(溶剤以外の全成分の合計重量)100重量部に対して、0.3〜20重量部程度含有されていることが好ましく、0.4〜8重量部程度がより好ましい。
【0035】
(溶剤)
溶剤は、通常、樹脂組成物に使用されるものを適宜選択して使用することができる。
例えば、アルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類、その他等が用いることができる。なかでも、アルコール類以外の溶剤を用いることが好ましい。
【0036】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0037】
脂肪族環状ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノン、オルト、メタ、パラ−メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
酢酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチルが挙げられる。
さらに、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−オクタン、イソオクタン等の飽和炭化水素溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等を用いてもよい。
【0038】
溶剤は、上述した成分(A)、(B)及び(C)の合計又は成分(A)、(B)、(C)及び(D)、任意にその他の成分の合計100重量部に対して、通常、10〜2000重量部含有されていることが好ましく、50〜500重量部含有されていることがより好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、顔料、染料、無機フィラー、有機フィラー、重合開始剤、希釈剤、レベリング剤、潤滑性付与剤、紫外線安定剤及び酸化防止剤、その他の添加剤等が混合されていてもよい。ただし、本発明の樹脂組成物は、含フッ素化合物又はシリコーン化合物が含まれていないことが好ましい。ここで、含まれていないとは、積極的に添加しないことを意味し、各成分又は添加剤等において不純物として含有されるものは許容される。つまり、含フッ素又はシリコーン化合物が不純物として含有されていたとしても、上述した成分(A)、(B)及び(C)の合計又は成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計の0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、0.1重量%以下にとどめられていることを意味する。
【0040】
レベリング剤及び潤滑性付与剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンとの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等が挙げられる。
顔料、染料、紫外線安定剤、酸化防止剤、重合開始剤及び希釈剤としては、当該分野で公知のものを使用することができる。
【0041】
〔ハードコート付き透明プラスチックシート〕
本発明のハードコート付き透明プラスチックシートは、主として、透明なプラスチックシートと、ハードコート層、つまり、上述した活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の硬化層とを備える。
例えば、透明なプラスチックシートの一面に、上述した活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物が塗布又は積層されたもの、例えば、上述した樹脂組成物を塗布し、乾燥し、硬化させることによって得られた硬化層が透明なプラスチックシートの一面に接着又は積層されたものとすることができる。
【0042】
透明プラスチックシートとしては、例えば、自然光又は光源からの可視又は白色光の透過率が60%以上、70%以上又は80%以上が挙げられ、90%以上の透光性を有するものが好ましい。
例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエピスルフィド樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のような(メタ)アクリル系重合体、アリル系重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ポリカーボネート、MS樹脂、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等各種合成樹脂からなるシートが挙げられる。シート材は、平板状、曲板状、フィルム状等のいずれの形状であってもよい。また、その表面に凹凸を有するもの、所定のパターンが形成されたものでもよい。
【0043】
塗布は、例えば、ディップコート法、フローコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ダイコート法、グラビアオフセット法、はけ塗り法等により行うことができる。
塗布の厚みは、硬化後に1.0〜20μm程度とすることが適している。
乾燥は、特に限定されるものではなく、風乾、加熱乾燥等のいずれでもよい。
光照射は、例えば、紫外線等により約100〜1,500mJ/cm
2程度が挙げられる。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物は、簡易な成分の選択及び組み合わせによって、その構成をシンプルなものとすることができる一方、ハードコート層において求められる、ハードコート機能に加えて、巻き取り時及び間のアンチブロッキング性を効果的に発揮すること、さらに、その後の適用において必要な粘着層に対する密着性を阻害することなくアンチブロッキング性を十分に発揮させること等が可能となる。このような密着性の確保は、アンチブロッキング性の発現に寄与する含フッ素化合物又は含シリコーン化合物を含有しないことに基づき、リコート性の阻害を回避することができる。
これによって、積層構造を構成する多層構造体のような煩雑な積層工程を経ることなく、簡便かつ安価にハードコート付透明プラスチックシート及び各種部材(例えば、光学部材)を形成することができる。
【0045】
加えて、得られた樹脂組成物の硬化物自体は、各機能層に分離/剥離することなく、強固に被塗布物である各種部材に密着させることができ、長期にわたって安定にハードコート機能を発揮させることができる。
【0046】
また、OCA層の密着性、つまりリコート性を示す指標として、水接触角が小さいことが好ましいことから、本願においては、得られたハードコート層の評価にこの指標を利用している。
【0047】
ハードコートの密着性等を向上させるために、あらかじめ透明プラスチックシートの表面にプライマー層を設けるか、あるいは、アルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理等の前処理を行ってもよい。
プライマー層としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。プライマー層の厚みは2〜50nm程度が適している。プライマー層は、これらの樹脂溶液を、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法などいずれかの方法で塗布することにより形成することができる。
【0048】
本願の樹脂組成物を適用することができる成形品は、上述した透明プラスチックシートのみならず、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂等の汎用樹脂からなるプラスチック成形品、木材、ガラス、金属、セラミック、紙、セメント、これらの複合品等の種々の材料で成形された成形品に貼着して用いてもよい。これにより、これらの成形品に対して、ハードコート機能を付与することができる。
【0049】
〔光学部材〕
本発明の光学部材は、上述した活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物又はハードコート付透明プラスチックシートを用いて構成される。
光学部材としては、例えば、プリズムレンズシート、フレネルレンズ、眼鏡レンズ、非球面レンズ等の光学プラスチックレンズ、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス用部材が挙げられる。また、これら光学部材等に使用し得る印刷インキ、塗料、クリアコート剤、ツヤニス等としても使用することができる。
【0050】
以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物の実施例を詳細に説明する。
実施例及び比較例
(A)のウレタンプレポリマー、
(B)のシリカフィラー、
(C)のシリカフィラー、
任意に(D)のウレタンプレポリマー、に加えて、光重合開始剤及び溶剤を、それぞれ、表1及び表2に示す組成比(重量部)で混練し、固形分約50重量%を含む樹脂組成物を得た。
【0051】
【表1】
()内の数字は有効成分の配合量を示す。
【0052】
【表2】
()内の数字は有効成分の配合量を示す。
【0053】
表1の成分は、以下のとおりである。
(A)−1 商品名:UA−306H、HDI系ウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製)
(A)−2 商品名:UA−510H、HDI系ウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製)
(D) 商品名:WS−22、ポリアルキレングリコール含有型HDI系ウレタンプレポリマー(共栄社化学株式会社製)
(B) 商品名:MEK−AC−2140Z(日産化学工業株式会社製)(平均一次粒子径 10nm)
(C)−1 商品名:PGM−AC−4130Y(日産化学工業株式会社製) (平均一次粒子径 40nm)
(C)−2 商品名:MEK−AC−5140Z(日産化学工業株式会社製) (平均一次粒子径 70nm)
光重合開始剤 商品名:IRGACURE 184(BASF社製)
含フッ素化合物 商品名:LE−604、フッ素含有アクリルポリマー(共栄社化学株式会社製)
溶剤 MEK:メチルエチルケトン (東燃化学合同会社製)
【0054】
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を易接着PET(50μm厚)上に塗布し、溶剤を90℃、60秒の条件で乾燥した。これを6m/分のスピードのコンベアーに積載し、80W/cmの高圧水銀灯により高さ10cmの位置から2回紫外線を照射して架橋重合させて、硬化重合体を含む約2μm厚のハードコートを形成した。
得られたハードコートについて、密着性、ヘイズ値、水接触角、アンチブロッキング性、耐スチールウール性の評価を行った。
【0055】
<密着性>
JIS K5600−5−6の方法に従い、クロスカット1mm碁盤目試験による密着性を確認した。XX/100中のXXは密着試験後に密着している枡目(100/100の場合は100個密着している)を表す。
【0056】
<ヘイズ値>
JIS K7136の方法に従い、スガ試験機株式会社製ヘーズメーターHZ−2を用いて、測定した。
<水接触角>
協和界面科学株式会社製 Drop Master 500を用い、蒸留水を得られたコート層に滴下した際の接触角を測定した。
【0057】
<アンチブロッキング性>
JIS P8147の方法に従い、コーティングを施したフィルムのコーティング面同士を重ね合わせ一定面積に一定の荷重を掛けた状態で徐々に傾けて重ね合わせたフィルムが滑った時点の角度を滑落角とした。この滑落角が小さいほど滑り性が高く、すなわちアンチブロッキング性が高いと評価ができる。従って、重ね合わせの面積が3cm×5cmの15cm
2で荷重500gを掛けて試験をした時にこの滑落角が25°以下を良好として○、25°より大きい場合を不良として×を、表1及び2に示した。
【0058】
<耐スチールウール性>
得られたコート層に約500g重及び1kg重の負荷をかけたスチールウール(#0000)で10往復、擦ることにより行った。目視により観察したとき、傷が付かなかったものを○、傷が付いたものを×として評価した。
スチールウール(#0000)に1kgの負荷をかけ得られたコート層の表面を10往復、擦ることにより試験した。目視により観察したとき、傷が付かなかったものを○、傷が付いたものを×として評価した。
【0059】
表1から、実施例では、上述した成分(A)、(B)(C)及び(D)を特定の範囲での比率にて含有することにより、密着性、ヘイズ値、アンチブロッキング性、耐スチールウール性等の全ての評価において満足のいく結果を得ることができた。さらに若干、水接触角の低さが劣るが(D)を使用しない場合でも全ての物性が許容の範囲内で発現することが判明した。
一方、比較例では、特に、水接触角と、アンチブロッキング性の両立が実現しなかった。
【0060】
実施例8
実施例1で得られた活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を、上述した各特性の評価用と同様に、TACフィルムに塗布し、コート層を形成し、ハードコート付透明プラスチックシートを作製した。
得られたシートを、射出成形金型に挟みこみ、成形同時射出成型法にてアクリル樹脂を射出した。冷却後、ハードコート層を有するパネル状の光学成型品を得た。
【0061】
このように、本発明の組成物は、特に、水接触角と、アンチブロッキング性とを樹脂組成物による単一層の形成によって実現することができ、ハードコート層本来の機能に加え、その表面のアンチブロック性と、粘着層に対する密着性とのバランスを図り、他方の機能を阻害せず、一方の機能が求められる場面ではその機能を有効に発揮させ、高性能かつ信頼性の高いハードコート層を与えることができる。