【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明では下記(1)〜(6)の手段を講じている。
【0008】
(1)本発明の金属被膜の形成方法は、0.1μm以上0.9μm以下の範囲内の最大粒径(mwΦ)の炭化タングステン粉末(mw)を所定の重量比混合割合(Rwc)で結合剤(mc)と混合させ造粒焼結させた金属粉末(mm)のプラズマ溶射と、レーザービームによるレーザー照射とを、基材(1)表面内で重畳させた溶射スポット(p)に対して同時に複合照射することで、基材(1)上に金属皮膜を形成する金属皮膜の形成方法であって、
少なくとも、前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」、並びに、前記レーザー照射における「レーザー照射速度(L1)」、及び「レーザー出力(L2)」、並びに、溶射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」のそれぞれを含む設定要素を、それぞれ所定の設定値に設定して制御手段に記憶させる設定工程と、
前記設定工程によって設定された設定要素の各設定値に従って前記複合溶射を行いながら溶射スポット(p)を基材表面上で移動させる、複合溶射中の移動工程と、を含んでなり、
前記設定工程は、エネルギー密度(ED)〔J/mm2〕、パワー密度(PD)〔W/mm2〕、及び一次増加率(A)からなる一次相関関係に従って、以下のいずれかの混合割合条件に応じた設定要素の各設定値を設定することを特徴とする。
〔混合割合条件1〕炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)が50%以上80%未満の場合:エネルギー密度(ED)〔J/mm
2〕が3以上7以下、パワー密度(PD)〔W/mm
2〕が20以上90以下の範囲内であって、かつパワー密度(PD)はエネルギー密度(ED)の単位増加あたり10の一次増加率A〔W/J〕に応じたPD値に設定される。
〔混合割合条件2〕炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)が80%以上95%未満の場合:エネルギー密度(ED)〔J/mm
2〕が6以上16以下、パワー密度(PD)〔W/mm
2〕が55以上115以下の範囲内であって、かつパワー密度(PD)はエネルギー密度(ED)〔J/mm2〕の単位増加あたり−15の一次増加率A〔W/J〕に応じたPD値に設定される。
【0009】
(2)本発明の金属皮膜の形成方法は、1.0μm以上2.0μm以下の範囲内の最大粒径(mwΦ)の炭化タングステン粉末(mw)を所定の混合割合(Rwc)で結合剤(mc)と混合させ造粒焼結させた金属粉末(mm)のプラズマ溶射と、レーザービームによるレーザー照射とを、基材(1)表面内で重畳させた溶射スポット(p)に対して同時に複合照射することで、基材(1)上に金属皮膜を形成する金属皮膜の形成方法であって、
少なくとも、前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」、並びに、前記レーザー照射における「レーザー出力(L2)」、並びに、溶射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」のそれぞれを含む設定要素を、それぞれ所定の設定値に設定して制御手段内の記憶領域に記憶させる設定工程と、
前記設定工程によって記憶された設定要素の各設定値に従って前記複合溶射を行いながら溶射スポット(p)を基材表面上で移動させる、複合溶射中の移動工程と、を含んでなり、
前記設定工程は、
エネルギー密度(ED)〔J/mm
2〕及びパワー密度(PD)〔W/mm
2〕の一次相関関係に従って、以下の混合割合条件に応じた設定要素の各設定値を設定することを特徴とする。
〔混合割合条件3〕炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)が50%以上80%未満の場合:エネルギー密度(ED)〔J/mm
2〕が3以上12以下、パワー密度(PD)〔W/mm
2〕が60以上120以下の範囲内であって、かつパワー密度(PD)がエネルギー密度(ED)の単位増加あたり20の一次減少率−A〔W/J〕(A:正値の一次係数)に応じて設定される。
〔混合割合条件4〕炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)が80%以上95%未満の場合:エネルギー密度(ED)〔J/mm
2〕が3以上12以下、パワー密度(PD)〔W/mm
2〕が25以上60以下の範囲内であって、かつパワー密度(PD)がエネルギー密度(ED)の単位増加あたり4の一次減少率−A〔W/J〕(A:正値の一次係数)に応じて設定される。
【0010】
(3)本発明の上記いずれかの金属皮膜の連続形成システムにおいて、前記設定工程は、プラズマ溶射における粉末供給ガス流量〔l/min〕が3.0〜4以内であって、前記「粉末供給速度(mm1)」〔rpm〕が0.5〔rpm〕以上1.0〔rpm〕以下の場合において、前記「相対移動速度(pV)」〔mm/s〕を10以上30以下に設定することが好ましい。
【0011】
(4)本発明の上記いずれかの金属皮膜の連続形成システムにおいて、前記設定工程は、プラズマ溶射及びレーザー溶射の各溶射距離〔mm〕が共に15mm170以下の場合において、前記「レーザー出力(L2)」〔kw〕を0.5以上4.0以下の範囲内に設定することが好ましい。
【0012】
(5)本発明の金属皮膜の連続形成システムは、下記に従って、「レーザー出力(L2)」の可変量、並びに、「相対移動速度(pV)」の可変量を表示画面に出力表示するものである。
すなわち所定の最大粒径(mwΦ)の炭化タングステン粉末(mw)を所定の混合割合(Rwc)で結合剤粉末(mc)と混合させた金属粉末(mm)のプラズマ溶射(P)と、レーザービームによるレーザー照射(L)とを、基材(1)表面内の同一の溶射スポット(p)に重畳させて複合照射を行うことで、基材(1)上に金属皮膜を形成する金属皮膜の連続形成システムであって、
一定の溶射距離で前記金属粉末のプラズマ溶射を行うプラズマ溶射機(P)と、
一定の溶射距離でレーザー光を溶射スポット(p)範囲に合わせて焦点化させたレーザー溶射を行うレーザー照射機(L)と、
プラズマ溶射機及びレーザー照射機(L)による溶射スポットへの複合溶射状態を保ったまま、基材上の溶射スポットの位置を相対移動させる保持移動機(V)と、
少なくとも前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」、並びに、前記レーザー照射における「レーザー出力(L2)」、並びに、溶射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」のそれぞれを含む設定要素を、それぞれ所定の値に可変制御する制御手段と、を具備してなり、
前記制御手段は、使用する金属粉末(mm)の炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)、及び、最大粒径(mwΦ)の各入力値、のそれぞれを記憶する第一記憶領域と、
少なくとも、前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」と、照射スポット(p)の面積値(PA)と、のそれぞれの可変量を記憶する第二記憶領域と、
基準値として入力される少なくとも1つのパワー密度(L2/PA)及びエネルギー密度(pV/(L2・√PA))の組み合わせ値を記憶する基準値記憶領域と、有してなり、
第一記憶領域に記憶された各入力値を、予め棲み分け設定された各入力値範囲の組み合わせからなる第一入力域(1)、第二入力域(2)、第三入力域(3)、第四入力域(4)のいずれかの入力域に分類して当該分類した前記いずれかの入力域に応じて、調整係数Aを下記演算条件から選択し、
基準値記憶領域に記憶された、1つのパワー密度(L2/PA)及びエネルギー密度(pV/(L2・√PA))の組み合わせ値を基準として、下記演算式を基に、第二記憶領域に記憶された設定要素の可変量に対応する、「レーザー出力(L2)」の可変量、並びに、溶射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」の可変量を表示画面に表示することを特徴とする。
〔演算式〕(L2/PA)=A・(pV/(L2・√PA))
〔演算条件〕上記演算式中のAは、炭化タングステン粉末(mw)及び結合剤粉末(mc)の混合割合(Rwc)に応じ、A1,A2,A3,A4のいずれかから選択される。
(演算条件1)1μm以上の最大粒径(mwΦ1)の炭化タングステン粉末(mw)を50%以上80%未満の混合割合(Rwc1)で含む場合:A1=10
(演算条件2)1μm以上の最大粒径(mwΦ1)の炭化タングステン粉末(mw)を80%以上の混合割合(Rwc2)で含む場合:A2=−15
(演算条件3)1μm未満の最大粒径(mwΦ2)の炭化タングステン粉末(mw)を50%以上80%未満の混合割合(Rwc1)で含む場合:A3=−20
(演算条件4)1μm未満の最大粒径(mwΦ2)の炭化タングステン粉末(mw)を80%以上の混合割合(Rwc2)で含む場合:A4=−4
【0013】
(6)本発明の金属皮膜の連続形成システムは、下記に従って、「レーザー出力(L2)」の可変量、並びに、「相対移動速度(pV)」を含む設定要素の算出値を表示画面に出力表示するものである。
すなわち所定の最大粒径(mwΦ)の炭化タングステン粉末(mw)を所定の混合割合(Rwc)で結合剤粉末(mc)と混合させた金属粉末(mm)のプラズマ溶射(P)と、レーザービームによるレーザー照射(L)とを、基材(1)表面内の同一の溶射スポット(p)に重畳させて複合照射を行うことで、基材(1)上に金属皮膜を形成する金属皮膜の連続形成システムであって、
一定の溶射距離で前記金属粉末のプラズマ溶射を行うプラズマ溶射機(P)と、
一定の溶射距離でレーザー光を溶射スポット(p)範囲に合わせて焦点化させたレーザー溶射を行うレーザー照射機(L)と、
プラズマ溶射機及びレーザー照射機(L)による溶射スポットへの複合溶射状態を保ったまま、基材上の溶射スポットの位置を相対移動させる保持移動機(V)と、
少なくとも前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」、並びに、前記レーザー照射における「レーザー出力(L2)」、並びに、溶射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」のそれぞれを含む設定要素を、それぞれ所定の値に可変制御する制御手段と、を具備してなり、
前記制御手段は、使用する金属粉末(mm)の炭化タングステン粉末(mw)の混合割合(Rwc1)、及び、最大粒径(mwΦ)の各入力値、のそれぞれを記憶する第一記憶領域と、
少なくとも、前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」と、照射スポット(p)の面積値(PA)と、のそれぞれを記憶する第二記憶領域と、を有してなり、
第一記憶領域に記憶された各入力値を、予め棲み分け設定された各入力値範囲の組み合わせからなる複数の入力域のいずれかに分類し、
分類した入力域に応じて、第二記憶領域に記憶された少なくとも、前記プラズマ溶射における金属粉末(mm)の切り出し装置の回転数である「粉末供給速度(mm1)」と、前記レーザー照射における「レーザー出力(L2)」と、照射スポット(p)を基材(1)面上で相対移動させる「相対移動速度(pV)」と、のそれぞれを含む設定要素を、照射スポット(p)の面積値(PA)を用いた以下の演算式に従って算出し、前記演算式に基づく各算出値を所定の設定値に設定し、表示画面に出力表示することを特徴とする。
〔演算式〕(L2/PA)=A・(pV/(L2・√PA))+B
〔演算条件〕上記演算式中のAは、炭化タングステン粉末(mw)及び結合剤粉末(mc)の混合割合(Rwc)に応じ、A1,A2,A3,A4のいずれかから選択される。
(演算条件1)1μm以上の最大粒径(mwΦ1)の炭化タングステン粉末(mw)を50%以上80%未満の混合割合(Rwc1)で含む場合:A1=10、B=0.0
(演算条件2)1μm以上の最大粒径(mwΦ1)の炭化タングステン粉末(mw)を80%以上の混合割合(Rwc2)で含む場合:A2=−15、B=14.0
(演算条件3)1μm未満の最大粒径(mwΦ2)の炭化タングステン粉末(mw)を50%以上80%未満の混合割合(Rwc1)で含む場合:A3=−20、B=180.0
(演算条件4)1μm未満の最大粒径(mwΦ2)の炭化タングステン粉末(mw)を80%以上の混合割合(Rwc2)で含む場合:A4=−4、B=85.0