特開2017-48503(P2017-48503A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017048503-雨樋 図000003
  • 特開2017048503-雨樋 図000004
  • 特開2017048503-雨樋 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-48503(P2017-48503A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】雨樋
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20170217BHJP
【FI】
   E04D13/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-170081(P2015-170081)
(22)【出願日】2015年8月31日
(11)【特許番号】特許第6035394号(P6035394)
(45)【特許公報発行日】2016年11月30日
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】従来の筒型の雨樋に代えて使用できる新規な雨樋を提供する。
【解決手段】雨樋10は、基部12と基部12より突出した複数の歯片11とを有して断面櫛歯状とされ、歯片11、11間に上下方向に水が流通する流路14を備えている。このような形状とすることで、歯片11の先端側に相当する雨樋の一方の側面が、流路14が空気に接するように開放されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と該基部より突出した複数の歯片とを有して断面櫛歯状とされ、前記歯片間に上下方向に水が流通する流路を備えたことを特徴とする雨樋。
【請求項2】
請求項1において、
上端部では、前記歯片の上端が、開放端側が前記基部側よりも高くなるように傾斜していることを特徴とする雨樋。
【請求項3】
請求項1または2において、
上端部には、前記歯片のうちの幅方向の両側端片と前記基部とが上方に延出したコ字状の集水部が形成されていることを特徴とする雨樋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
前記基部の両側端に、背面が略面一となるように、相互に離れるようにフランジ片が突出形成されていることを特徴とする雨樋。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
竪樋として用いられることを特徴とする雨樋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雨樋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の竪樋の多くのものは、円筒または角筒形状である。この種の竪樋の(最大)排水量の計算には、トリチェリーの式を使用することができる。その式には、流量係数が有効断面積に対して乗算する係数として与えられており、一般的には、流量係数は0.6とされている。すなわち、竪樋の横断面の断面積の少なくとも40%は雨水が流れず、空気の逃げ道となっている。これは、排水口(竪樋の上部の入り口近傍)で気泡やうずなどの発生により、空気が入り込むからである。この程度の空気が流通しなければ、雨水はスムーズに流れない。
【0003】
したがって、雨水の流通量が断面積の60%を超えるほどの大量の雨が降った場合、竪樋の上端部の入り口で雨水が溢れ出るおそれがある。また、周壁により内部が見えないため、ごみ詰まりを発見しにくく、詰まった場合の掃除もしにくいという問題がある。
【0004】
一方、従来の竪樋には上記形状のものの他に、玄関先などで高級感を創出するために設置されるくさり竪樋がある(たとえば、特許文献1参照)。くさり竪樋は、複数に連ねた鎖部材に雨水を伝わせ落下させる構造であり、筒体ではなく周囲が開放されているため、空気の逃げ道を考慮する必要はないし、ごみ詰まりに苦慮する必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−150834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、建物に設置する竪樋のすべてをくさり竪樋にすることはできない。そもそも、くさり竪樋は、大量の雨水が流れた場合に水が溢れ出ても問題がないように、周囲に壁などの構造物がない箇所で吊り下げ設置されるようになっている。したがって、壁面に近づけて吊り下げ設置した場合には、雨水が壁面にも飛散し、くさり竪樋の後方に位置する壁面の一部に、雨水の飛散による集中的な汚れが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、従来の円筒または角筒形状の筒型の雨樋(竪樋)に代えて使用できる新規な雨樋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の雨樋は、基部と基部より突出した複数の歯片とを有して断面櫛歯状とされ、歯片間に上下方向に水が流通する流路を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の雨樋は、上端部では、歯片の上端が、開放端側が基部側よりも高くなるように傾斜していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の雨樋は、上端部には、歯片のうちの幅方向の両側端片と前記基部とが上方に延出したコ字状の集水部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の雨樋は、基部の両側端に、背面が略面一となるように、フランジ片が相互に離れるように突出形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の雨樋は、竪樋として用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された雨樋によれば、上述の構成となっているため、従来の筒型の竪樋に代えて使用することができる。すなわち、雨樋は断面が櫛歯状となるよう形成してあるため、一方の側面が開放された状態となり、そのため竪樋に使用した場合に空気の逃げ道を考慮する必要がない。大量の雨水が流れてきてオーバーフローした場合でも、開放された側面より雨水が溢れ出るだけなので、上端部の雨水の入り口でのオーバーフローが発生する可能性は低い。また、開放された側面を前方に向けて設置すれば、内部が見やすく、ごみ詰まりがあってもすぐに発見することができ、すぐにごみを取り除くこともできる。
【0014】
請求項2に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に上端部で基部側に雨水を誘導でき、そのため雨水を流路の基部側に流通させることができる。その結果、雨水の開放側面側へのオーバーフロー量を少なくすることができる。
【0015】
請求項3に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に上端部で雨水を集めやすく、多くの雨水をスムーズに流すことができる。
【0016】
請求項4に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に、フランジ片で、背面側の壁などの構造物に固定具止めすることができ、竪樋として簡易に取り付けすることができる。
【0017】
請求項5に記載の雨樋によれば、竪樋として用いられるため、一方が開放されたことにより、樋内への空気の流通を考慮する必要がなく、効果的に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る雨樋の一部を省略した断面斜視図、(b)は雨樋の取付状態を示す拡大横断面図である。
図2】(a)(b)は、雨樋を流れる雨水の量を表した横断面図である。
図3】(a)は雨樋の上端部の部分斜視図、(b)は雨樋の上端部を縦断面で示した部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る雨樋について、添付図面にもとづいて説明する。
【0020】
本雨樋10は、おもに竪樋に使用され、基部12と基部12より突出した複数の歯片11とを有して断面櫛歯状とされ、歯片11、11間に上下方向に水が流通する流路14を備えている(図1参照)。以下、詳述する。
【0021】
図1(a)(b)に示すように、この雨樋10は、横断面が櫛歯状であり、基部12と、複数の歯片11のうちの両側端片13、13とで外殻が略コ字状に形成されている。本実施形態では、雨樋10は、基部12の外面を壁面3に添わせるようにして取り付けられる。よって、基部12側を後方、両側端片13、13の開放端側を前方とする。
【0022】
両側端片13、13間には、基部12より前方に突出するように、ほぼ等間隔に配列された他の複数の歯片11、11を形成されている。両側端片13、13は両側端片13、13間の歯片11(以下、たんに歯片11という)の先端よりも少し長く突出している。
【0023】
また、基部12の両側端には、背面が略面一となるように、相互に離れるように両フランジ片18、18が突出形成されている。このフランジ片18は、雨樋10を竪樋として用いる場合に壁面3に添わせるように配することができる、釘打ちなどに用いられる固定片である。フランジ片18には、固定具5打ち込み用の挿通孔18aが開設されている。
【0024】
上述したように、歯片11、11間には上下に延びた流路14が形成されており、側端片13と、それに隣接する歯片11との間にも、歯片11、11間の流路14よりもやや幅広な流路14が形成されている。
【0025】
この雨樋10は、竪樋として、フランジ片18を介して固定具5で壁面3に固定することで、基部12の裏面が建物の壁面3に接するように配することができる。こうして、各流路14の上から下へと雨水を流すことができる。
【0026】
また、雨樋10の両側にフランジ片18が形成されているため、雨樋10を竪樋として簡易に取り付けることができる。また、一方のフランジ片18から他のフランジ片18までの背面側が面一に形成されているため、雨樋10の裏面を壁面3に密着させてほとんど隙間なく取り付けることができる。
【0027】
雨水が流路14の基部12側(後部側)を集中的に流れる場合には、雨水は、その量により、たとえば図2(a)(b)に示すように、基部12の前端から2点鎖線までのクロスハッチングで示した横断面部を埋めるように流れる。雨水の量が少量であっても大量であっても、前方側(歯片11の開放端11a側)が開放されているため、雨水は大量の空気に接しながらスムーズに下方に流れていく。
【0028】
また、さらに大量の雨水がこの雨樋10の上端部15(図3参照)に流れてきた場合には、雨水は流路14から図2(b)に白抜き矢印で示した方向に溢れ出るおそれがある。しかし、雨水は前方へ溢れ出るから、流路14内で詰まったり滞留したりすることはない。このように大量の雨水が流れてきたときは前方へオーバーフローするが、流れが滞らないため、上端部15(集水部17)(図3参照)での雨水のオーバーフローは発生しにくい。また、側端片13が歯片11よりも前方に突出しているため、前方へオーバーフローした雨水が横方向に飛び出す可能性もあまりない。
【0029】
このように雨水の溢れ出はほぼ前方のみに集中するので、溢れ出た雨水が基部12と壁面3との間に流れ込む可能性はほとんどない。そのため、基部12の背面側の壁面3に、雨水による集中的な汚れが発生したり、雨水の付着により壁面3の劣化が早まったりすることを防止することができる。
【0030】
また、流路14を有効に利用し、かつ前方へのオーバーフロー水を多く発生させないためには、雨水を、その後方に空気を含まないように、流路14の基部12側に流すようにすることが望ましい。流路14内において空気が雨水の基部12側に入り込むと、その空気が雨水を前方に押し出すおそれもある。
【0031】
このように雨水を流路14の基部12側を通過させるためには、雨樋10の上端部15を図3に示すような構造とすることが望ましい。図3を参照しながら、雨樋10の上端部15における集水構造について説明する。
【0032】
この雨樋10(竪樋)の上端部15は、基部12と両側端片13、13とが、歯片11を囲うように、歯片11よりも高く突出して集水部17を構成している。このコ字壁16で囲まれた空間に、軒樋(不図示)などから雨水が流れ込むようになっている。この集水部17の空間の深さ(容量)は、この集水部17に集まってくる雨水の最大量および流路14の許容流量を想定して定めればよい。
【0033】
雨樋10は、このように上端部15に集水部17が設けてあるため、雨水を集めやすく、多くの雨水をスムーズに下方へ流すことができる。
【0034】
また、図3(b)に示すように、歯片11の上端11bは、開放端11a側が基部12側よりも高くなるように傾斜した形状となっている。歯片11の上端11bがこのような傾斜形状となっているので、雨水の一部は歯片11の上端11bを伝って基部12側へと流れていく。その結果、雨水は図2(a)(b)に示したように、流路14の基部12側に集中して流れるようになる。なお、集水部17において、雨水を基部12側にさらに集中させるために、歯片11の上端において、厚みを厚くした幅広の誘導路を設けてもよいし、歯片11の上端における開放端11a側の流路14の入り口の一部を塞ぐようにしてもよい。
【0035】
以上のように、本雨樋10によれば、上述した構成となっているため、一方の側面(上述の例では前方側)が開放された状態となる。そのため、空気の逃げ道を考慮する必要がない。また、大量の雨水が流れてきてオーバーフローした場合でも、開放された側面より雨水が溢れ出るだけなので、上端部15の集水部17での雨水のオーバーフローが発生する可能性は低い。また、開放端11aを前方に向けて設置すれば、正面より流路14を見ることができ、ごみ詰まりがあってもすぐに発見することができ、またごみをすぐに取り除くこともできる。
【0036】
したがって、この雨樋10は、従来の筒型の竪樋の代わりに使用することができる。もちろん、開放端11a側を上方に向けて這樋としても利用でき、さらに軒樋として利用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 雨樋
11 歯片
11a 開放端
11b 上端
12 基部
13 側端片
14 流路
15 上端部
16 コ字壁
17 集水部
18 フランジ片
18a 挿通孔
3 壁面
5 固定具




図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2016年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と該基部より突出した複数の歯片とを有して断面櫛歯状とされ、前記歯片間に上下方向に水が流通する流路を備えており、
雨水の一部が前記歯片の上端を伝って基部側へと流れていくように、前記歯片の上端が、開放端側が前記基部側よりも高くなるように傾斜していることを特徴とする雨樋。
【請求項2】
請求項1において、
上端部には、前記歯片のうちの幅方向の両側端片と前記基部とが上方に延出したコ字状の集水部が形成されていることを特徴とする雨樋。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記基部の両側端に、背面が略面一となるように、相互に離れるようにフランジ片が突出形成されていることを特徴とする雨樋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、
竪樋として用いられることを特徴とする雨樋。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の雨樋は、基部と基部より突出した複数の歯片とを有して断面櫛歯状とされ、歯片間に上下方向に水が流通する流路を備えており、雨水の一部が歯片の上端を伝って基部側へと流れていくように、歯片の上端が、開放端側が基部側よりも高くなるように傾斜していることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項2に記載の雨樋は、上端部には、歯片のうちの幅方向の両側端片と前記基部とが上方に延出したコ字状の集水部が形成されていることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項3に記載の雨樋は、基部の両側端に、背面が略面一となるように、フランジ片が相互に離れるように突出形成されていることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項4に記載の雨樋は、竪樋として用いられることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
さらに請求項1に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に上端部で基部側に雨水を誘導でき、そのため雨水を流路の基部側に流通させることができる。その結果、雨水の開放側面側へのオーバーフロー量を少なくすることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項2に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に上端部で雨水を集めやすく、多くの雨水をスムーズに流すことができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項3に記載の雨樋によれば、上述した構成となっているため、竪樋に使用した場合に、フランジ片で、背面側の壁などの構造物に固定具止めすることができ、竪樋として簡易に取り付けすることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項4に記載の雨樋によれば、竪樋として用いられるため、一方が開放されたことにより、樋内への空気の流通を考慮する必要がなく、効果的に利用され得る。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
両側端片13、13間には、基部12より前方に突出するように、ほぼ等間隔に配列された他の複数の歯片11、11が形成されている。両側端片13、13は両側端片13、13間の歯片11(以下、たんに歯片11という)の先端よりも少し長く突出している。