【解決手段】本発明の導水樋の設置方法は、プリプレグシートを用いて導水樋を設置する工法であって、プリプレグシートとして、設置時に要求される機能に応じて光硬化性を有する液状組成物を含浸した基材の第1領域を予め硬化させないことで構成した未硬化部分と、設置時に要求される機能に応じて基材の第2領域を予め硬化させることで構成した硬化部分とを含むシートを用い、前記第1領域の一部を貼り付けることで前記シートを設置面に設置する設置工程と、現場に設置したプリプレグシートに光を照射することで第1領域を硬化させる硬化工程と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、トンネル等のコンクリート構造体表面との間に導水用空間を形成する導水樋の設置方法について説明する。本実施形態では、コンクリート構造体としてカルバートボックスのジョイント部分に導水樋を設置する場合を例に挙げる。
【0012】
まず、本発明の導水樋の設置方法を説明するに先立ち、導水樋の設置に用いるプリプレグシートの構造について説明する。
図1は、導水樋の設置に用いるプリプレグシート1の断面構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプリプレグシート1は、基材2と、該基材2の両面を覆う一対の保護フィルム3,4とを含む。
【0013】
基材2は、後述する、硬化性樹脂、モノマー、光重合開始剤および増粘材を含む液状組成物が含浸する繊維基材から構成される。
【0014】
繊維基材を構成する繊維(構成繊維)としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等の無機繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維等の樹脂繊維を挙げることができる。中でも、光透過性及び強度の点で優れ、また低廉でもあるガラス繊維を好適に用いることができる。これらの構成繊維は、1種のみ用いることとしてもよく2種以上を併用してもよい。
【0015】
繊維基材は、織物(織布)であってもよいし、編物であってもよいし、不織布又はガラスマットであってもよい。厚みは0.01mm以上10mm以下のものを好ましく用いることができる。
【0016】
基材2は、主成分である硬化性樹脂の他、モノマー、光重合開始剤および増粘剤を含んでいる。
【0017】
硬化性樹脂としては、例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂を用いることができる。これらは、1種のみ用いることとしてもよく、2種以上を併用することとしてもよい。
【0018】
ビニルエステル樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂と、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和一塩基酸と、の反応物が挙げられる。また、ビニルエステル樹脂に含まれるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型等を挙げることができる。
【0019】
不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、多価アルコールと、不飽和多塩基酸(および必要に応じて飽和多塩基酸)と、の縮合反応による反応物を挙げることができる。
【0020】
モノマーは、上記硬化性樹脂を溶解し粘度を調整する溶媒として機能するとともに、重合して上記硬化性樹脂を架橋する架橋剤としても機能する。
【0021】
光重合開始剤としては、光照射によってラジカルを生成し、ラジカル重合を開始させることができるものを用いる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アシルホスフィンオキサイド系のような公知のものを用いることができる。
【0022】
光重合開始剤は、例えば、365nm以上410nm以下に吸収波長帯域を有し、この範囲の波長帯域の光を吸収してラジカルを生成するものを好適に用いることができる。このような波長帯域の光は、硬化性樹脂の紫外線吸収領域とずれているため、光重合開始剤のラジカル生成反応に必要な光エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0023】
また、光重合開始剤の吸収波長帯域は、365nm以上410nm以下の波長帯域に含まれていなくてもよい。その場合、365nm以上410nm以下の波長帯域に吸収波長帯域を有する光増感剤を併用することが好ましい。
【0024】
増粘材は、例えば未架橋のアクリル樹脂粉末等の従来公知のものが用いられ、増粘方法としては金属増粘法、化学増粘法、ポリマー膨潤増粘法、或いは近赤外線ラジカル重合増粘法等を例示できる。
【0025】
保護フィルム3,4は、基材2の保存中に基材2の表面を保護するフィルムである。なお、保護フィルム3,4のうちいずれか一方のみが設けられていても良いし、保護フィルム3,4自体が設けられていなくても良い。
【0026】
保護フィルム3,4は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ビニロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等を用いることができる。
【0027】
保護フィルム3,4の少なくとも一方は、基材2に含まれる光重合開始剤または光増感剤の吸収波長帯域の光を透過させるように、当該吸収波長帯域の光に対して実質的に透明であることが好ましい。これにより、基材2に光を照射して硬化させる際に、一対の保護フィルム3,4のうち少なくとも一方は基材2に貼合したままとすることができ、プリプレグシート1を用いた作業を容易なものとしている。
【0028】
図2は、プリプレグシート1の平面図である。なお、
図2においては、図を見易くするため、保護フィルム3,4の図示を省略し、基材2のみを図示している。
【0029】
本実施形態において、プリプレグシート1は、導水樋を形成する用途に用いられる。基材2は所定形状に予め切り出されており、施工時に基材2を切断加工する必要はない。
【0030】
基材2は、
図2に示すように、矩形状のシート体からなり、未硬化部分2Aと硬化部分2Bとを含んでいる。未硬化部分2Aは、プリプレグシート1の設置時(後述の導水樋の形成時)に要求される機能に応じて、基材2の第1領域A1について光照射を行わずに非硬化状態とすることで(硬化させないことで)構成されたものである。
【0031】
第1領域A1は、プリプレグシート1の使用時に折り曲げられる、又は、施工面に貼り付けられる領域である。すなわち、第1領域A1は、プリプレグシート1を用いて導水樋を形成する際、折り曲げ機能あるいは貼り付け機能が要求される領域に相当する。
【0032】
本実施形態において、基材2は矩形状からなり、例えば、長辺方向のサイズが1m、短辺方向のサイズが30cmとなっている。
【0033】
未硬化部分2Aは、第1未硬化部位2A1、第2未硬化部位2A2、第3未硬化部位2A3、および第4未硬化部位2A4を含む。第1未硬化部位2A1、第2未硬化部位2A2、第3未硬化部位2A3、および第4未硬化部位2A4は、それぞれ基材2の長辺方向に沿う短冊状の部位である。
【0034】
第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2は、プリプレグシート1を導水樋の形に整形する際、折り曲げる部分として機能する。
第3未硬化部位2A3および第4未硬化部位2A4は、プリプレグシート1を施工面に貼り付ける接着シロとして機能する。
【0035】
硬化部分2Bは、導水樋の設置時に要求される機能に応じて、基材2の第2領域A2について光照射を部分的に行って硬化状態とすることで(硬化させることで)構成されたものである。第2領域A2は、導水樋を形成する際、導水樋の骨格部分としての機能が要求される部位である。
【0036】
硬化部分2Bは、第1硬化部位2B1、第2硬化部位2B2、及び第3硬化部位2B3を含む。第1硬化部位2B1、第2硬化部位2B2、及び第3硬化部位2B3は、それぞれ基材2の長辺方向に沿う短冊状の部位である。
【0037】
第1硬化部位2B1は、上記第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2に挟持されている。第1硬化部位2B1は、後述のように導水樋を設置する際、導水樋の骨格部分(底板)を構成する。
【0038】
第2硬化部位2B2は、上記第1未硬化部位2A1および第3未硬化部位2A3に挟持されている。第2硬化部位2B2は、後述のように導水樋を設置する際、導水樋の骨格部分(側板)を構成する。
【0039】
第3硬化部位2B3は、上記第2未硬化部位2A2および第4未硬化部位2A4に挟持されている。第3硬化部位2B3は、導水樋を形成する際、導水樋の骨格(側板)を構成する。
【0040】
続いて、本実施形態のプリプレグシート1の製造方法について説明する。以下では、上記未硬化部分2A及び硬化部分2Bを含む基材2の形成方法を主体に説明する。本説明では、大判のシート体に光照射を行うことで、該シート体に複数のプリプレグシート1を一括形成した後、個片化することで複数のプリプレグシート1とする場合を例に挙げる。
【0041】
図3は、プリプレグシート1の製造方法を示す工程図である。まず、
図3(a)に示すように、保護フィルム3Aと、大判基材5と、保護フィルム4Aとを有するシート体10を用意する。保護フィルム3Aは、平面視した場合において、保護フィルム3の数倍(本実施形態では3倍)の面積を有する。保護フィルム4Aは、平面視した場合において、保護フィルム4の数倍の(本実施形態では3倍)の面積を有する。大判基材5は、平面視した場合において、基材2の数倍(本実施形態では3倍)の面積を有する。
【0042】
次に、
図3(b)に示すように、シート体10の一方面側、例えば、保護フィルム3A上にマスクMを配置し、光照射を行う。
【0043】
本実施形態において、マスクMは、遮光パターンPMが形成された遮光部分と、遮光パターンPMが形成されない光透過部分とを含む。遮光部分は未硬化部分2Aに対応したパターン形状を有し、光透過部分は硬化部分2Bに対応したパターン形状を有している。
【0044】
そのため、マスクMに入射した光の一部は、光透過部分を透過して大判基材5に入射し、大判基材5を部分的に硬化させることで硬化部分2Bを形成する。一方、マスクMに入射した光の一部は、遮光部分で遮光されることで大判基材5を部分的に硬化させないことで未硬化部分2Aを形成する。
光照射後、シート体10上からマスクMを取り除く。以上のようにして、未硬化部分2Aおよび硬化部分2Bを含んだプリプレグシート1が複数形成されてなるシート体10が得られる。
最後に、
図3(c)に示すように、シート体10を個片化することで複数(本実施形態では3枚)のプリプレグシート1を得ることができる。
【0045】
続いて、本実施形態のプリプレグシート1を使用する場合について説明する。
本実施形態では、プリプレグシート1を用いて、例えばカルバートボックスのジョイント部分に導水樋を施工する場合を例に挙げる。なお、プリプレグシート1による導水樋の形成場所はカルバートボックスのジョイント部分に限られず、他のコンクリート構造体において生じた漏水を排出する用途に利用可能である。
【0046】
以下、カルバートボックスのジョイント部分にプリプレグシート1を用いて導水樋を形成する場合について説明する。なお、以下では、1枚のプリプレグシート1を用いて導水樋を形成する場合を例に挙げる。
【0047】
従来、カルバートボックスのジョイント部分に導水樋を設置する場合において、現場の状況に応じて導水樋の水勾配等を簡便且つ確実に調整することが難しいとの問題があった。
【0048】
これに対し、本実施形態では、上述した未硬化部分2Aおよび硬化部分2Bを含む基材2を備えたプリプレグシート1を用いて導水樋を設置することで上述の問題を解決した。
【0049】
はじめに、導水樋の設置場所となるジョイント部分の寸法を測定し、ジョイント部分に対応した導水樋の形状に関する情報を決定する。
【0050】
続いて、プリプレグシート1を所定のサイズ及び形状の樋状に折り曲げる。プリプレグシート1は可撓性(フレキシブル性)を有する未硬化部分2Aを基点として硬化部分2Bを折り曲げ可能である。以下、折り曲げ成形後のプリプレグシート1を折り曲げ成形シート1Aと称す。
【0051】
図4は折り曲げ成形シート1Aの概略構成を示す斜視図であり、
図5(a)は折り曲げ成形シート1Aの長辺方向における側面図であり、
図5(b)は折り曲げ成形シート1Aの短辺方向における断面図である。なお、
図5(b)には、
図5(a)のA1−A1線、A2−A2線およびA3−A3線による各断面図を示している。
【0052】
図4に示すように、折り曲げ成形シート1Aは、底板部50A、側板部50Bおよび接着部50Cを含む。底板部50Aおよび側板部50Bは、第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2内に設定された一対の折り曲げ線L1,L2を基点として、第2硬化部位2B2および第3硬化部位2B3を内側に折り曲げる(山折り)ことで形成される。また、接着部50Cは、第3未硬化部位2A3および第4未硬化部位2A4を外側に折り曲げる(谷折り)ことで形成される。
【0053】
底板部50Aは、第1硬化部位2B1と、第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2の一部とから構成される。側板部50Bは、第2硬化部位2B2および第3硬化部位2B3と、第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2の残りとから構成される。接着部50Cは、第3未硬化部位2A3および第4未硬化部位2A4のみから構成される。
【0054】
本実施形態において、一方の端部51側における折り曲げ線L1,L2の間隔は、他方の端部52側における折り曲げ線L1,L2の間隔よりも小さくなっている。側板部50Bは、
図5(a)に示すように、端部51側から端部52側に向かうにつれて高さ(底板部50Aと接着部50Cとの高さ)が次第に増加する。
図5(b)に示すように、端部51から端部52に近づくにつれて、底板部50Aと接着部50Cとの間隔が拡がっている。すなわち、底板部50Aは、端部51側から端部52側に向かうにつれて鉛直方向下方に次第に傾斜した構造となっている。底板部50Aが構成する傾斜面は導水樋に水勾配を付与するものである。水勾配としては、導水樋の長さ1m辺りで5mm程度高さが変化する程度の傾斜角に設定するのが好ましい。
なお、折り曲げ線L1,L2に相当する部分に事前に光照射を行うようにしてもよい。このようにすれば、ジョイント部分に折り曲げ成形シート1Aを設置する際、折り曲げ成形シート1Aの形状が崩れにくくなるので、設置作業が容易となる。
【0055】
次に、上記折り曲げ成形シート1Aをジョイント部分に設置する。なお、導水樋を設置するジョイント部分の接着部に対しては、予め表面処理およびプライマー塗布が行われている。
【0056】
折り曲げ成形シート1Aをジョイント部分の設置面に貼り付ける際、折り曲げ成形シート1Aのうち保護フィルム3,4の少なくとも一方を剥離する。具体的に、上記折り曲げ成形シート1Aの内側、すなわち、ジョイント部分と対向側のフィルムを剥離する。本実施形態では、例えば、保護フィルム3を剥離する。
【0057】
図6はジョイント部分Gの設置面GMに設置された折り曲げ成形シート1Aを示す図である。
図7(a)は折り曲げ成形シート1Aの短辺方向における断面図であり、
図7(b)は折り曲げ成形シート1Aの長辺方向における断面図である。
【0058】
折り曲げ成形シート1Aは、
図7(a)、(b)に示すように、接着部50C(第3未硬化部位2A3、および第4未硬化部位2A4)が設置面GMに貼り付くことで設置される。なお、例えば、墨出し等によって、設置面GM上における折り曲げ成形シート1Aの貼付位置に相当する場所に予めマークを付けるようにしても良い。このようにすれば、設置面GMの所定位置に折り曲げ成形シート1Aを精度良く貼り付けることができる。
【0059】
折り曲げ成形シート1Aは、予め硬化されたことで剛性のある硬化部分2Bが骨格部分として機能し、最低限の剛性が確保された状態となっている。そのため、導水樋の設置作業を行う際、折り曲げ成形シート1Aの取り扱いが容易となるので、設置面GMに対する接着部50Cの貼り付け作業を簡便且つ確実に行うことができる。
【0060】
上述のようにして折り曲げ成形シート1A(プリプレグシート1)の接着部50Cを設置面GMに貼り付けた後、該折り曲げ成形シート1Aに対して保護フィルム4側から所定波長帯(例えば、365nm以上410nm以下)の光を照射する。本実施形態では、保護フィルム4を貼合したままの状態で光照射を行うことができるので、未硬化部分2Aに異物や傷がついてしまうといった不具合の発生が防止される。
【0061】
折り曲げ成形シート1A(プリプレグシート1)は、光照射によって未硬化部分2Aが硬化する。未硬化部分2Aである接着部50Cは設置面GMと良好に密着した状態で硬化する。また、未硬化部分2Aである第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2も同様に硬化する。
【0062】
これにより、折り曲げ成形シート1Aは未硬化部分2Aの全域が硬化することで全体が硬化部分からなる導水樋50を形成する。導水樋50は、設置面GMに対して良好に密着した状態となるため、高い施工信頼性を備えたものとなる。
【0063】
以上述べたように、本実施形態の導水樋50の設置方法によれば、未硬化部分2Aおよび硬化部分2Bを含む上記プリプレグシート1を用いている。そのため、作業者が施工現場で折り曲げ線L1,L2による折り曲げ位置を変化させて側板部50Bにおける端部51および端部52の高さの差を調整することで底板部50Aの傾斜角度を任意に設定することができる。よって、導水樋50の設置面GMの実際の形状に応じて所望の水勾配(底板部50Aの傾斜角度)を有した導水樋50を設置することができる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0065】
例えば、上記実施形態では、1枚のプリプレグシート1を用いて導水樋50を形成する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されず、設置面GMの長さによっては複数枚のプリプレグシート1を用いて導水樋を形成しても良い。
【0066】
このように複数枚のプリプレグシート1を用いる場合において、各プリプレグシート1の端部同士を連結する必要が生じる。
【0067】
複数のプリプレグシートを連結する手法としては、例えば、プリプレグシートの端部に未硬化部分を形成し、該未硬化部分をのりしろとして利用することでプリプレグシートの端部同士を連結するようにしてもよい。
【0068】
図8は端部に未硬化部分を形成したプリプレグシート11の平面図である。なお、
図8においては、図を見易くするため、保護フィルム3,4の図示を省略し、基材2のみを図示している。なお、以下では上記実施形態と共通の構成および部材については同じ符号を付し、その詳細な説明については省略する。
【0069】
図8に示すように、プリプレグシート11において、未硬化部分2Aは、第1未硬化部位2A1、第2未硬化部位2A2、第3未硬化部位2A3、第4未硬化部位2A4に加えて、第5未硬化部位2A5を含む。第5未硬化部位2A5は端部51Aに設けられ、基材2の短辺方向に沿う短冊状の部位である。第5未硬化部位2A5は、プリプレグシート11の端部を貼り付ける接着シロとして機能する。
【0070】
図9は、プリプレグシート1およびプリプレグシート11を連結することで形成した導水樋の構造を示す図である。なお、
図9においてプリプレグシート11は、プリプレグシート1の底板部50Aおよび側板部50Bと連結可能なサイズとなるように、その未硬化部分2Aおよび硬化部分2Bの形状が設定されている。
【0071】
図9に示すように、プリプレグシート11は、第5未硬化部位2A5がプリプレグシート1の端部52の外側から重ねるようにして配置される。第5未硬化部位2A5は未硬化状態のため、接着性を有することからプリプレグシート1の端部52に接着可能である。
【0072】
第5未硬化部位2A5がプリプレグシート1の端部52に貼り付けられた状態で、プリプレグシート1およびプリプレグシート11に光照射することでプリプレグシート1およびプリプレグシート11の2枚からなる導水樋55を形成することができる。プリプレグシート1およびプリプレグシート11は、第5未硬化部位2A5が光照射によって硬化することで良好に連結されたものとなる。
【0073】
複数のプリプレグシート1を連結する別の手法としては、例えば、接続部材を用いて端部同士を連結するようにしても良い。接続部材をコーキング剤で覆うようにしても良く、このようにすれば接続部分での水漏れを防止することができる。
【0074】
また、未硬化部分のみで形成された従来のプリプレグシートを用いて、各プリプレグシート1の端部同士を連結するようにしてもよい。このようにすれば、連結用のプリプレグシートの硬化と、プリプレグシート1の未硬化部分2Aの硬化とを1度の光照射工程で同時に行うことができる。
【0075】
また、上記実施形態では、未硬化部分2A及び硬化部分2Bを形成する際、マスクMを用いるようにしたが、本発明はこれに限定されず、マスクMを構成する遮光パターンPMが
図10に示すように、保護フィルム3,4のいずれか一方(例えば、保護フィルム3)に直接形成されていても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、光照射することで複数のプリプレグシート1を含む大判のシート体を個片化することで各プリプレグシート1を製造する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つのシート体に光照射を行うことでプリプレグシート1をそれぞれ個別に形成するようにしても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、プリプレグシート1から折り曲げ成形シート1Aを形成した後、該折り曲げ成形シート1Aを設置面に設置する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、折り曲げ成形シート1Aを形成することなく、プリプレグシート1を設置面GMに直接貼り付けることで導水樋を形成するようにしても良い。
【0078】
以下、プリプレグシート1を設置面GMに直接貼り付けることで導水樋を形成する場合について説明する。
【0079】
まず、墨出し等によって、設置面上におけるプリプレグシート1の貼付位置に予めマークを付ける。具体的に、
図11に示すような、一対の直線M1,M2からなるマークMを設置面GMに付ける。直線M1,M2は、一方側の間隔D1よりも他方側の間隔D2の方が狭まるように配置される。直線M1は、
図2に示したプリプレグシート1の一方の端部の端辺6に対応し、直線M2は、
図2に示したプリプレグシート1の他方の端部の端辺7に対応する。なお、直線M1,M2の間隔D1,D2は、形成する導水樋の形状に応じて適宜設定される。
【0080】
続いて、直線M1,M2に端辺6,7をそれぞれ沿わせるようにして、
図2に示したプリプレグシート1の第3未硬化部位2A3、および第4未硬化部位2A4を設置面GMに貼り付ける。なお、プリプレグシート1を設置面GMに貼り付けるに際し、例えば保護フィルム3を予め剥離しておく。
【0081】
その後、プリプレグシート1を設置面GMに貼り付けると、プリプレグシート1は、第3未硬化部位2A3と第2未硬化部位2B1との境界および第4未硬化部位2A4と第3硬化部位2B3との境界で折れ曲がり、第1硬化部位2B1が重力によって下方に移動した状態で安定する。
【0082】
上述のようにプリプレグシート1は、上記直線M1,M2に端辺6,7が沿った状態で設置面GMに貼り付けられている。そのため、プリプレグシート1において、第1硬化部位2B1の鉛直方向における高さは、上記間隔D2が狭くなっている他方側よりも上記間隔D1が広くなっている一方側の方が高くなる。すなわち、第1硬化部位2B1と設置面GMとの距離は、他方側(間隔D2側)から一方側(間隔D1側)に向かって大きくなる。すなわち、第1硬化部位2B1は、他方側(間隔D2側)から一方側(間隔D1側)に向かう傾斜面を構成する。このような傾斜面からなる第1硬化部位2B1は、後述のように導水樋を構成した際、水勾配を付与する底板として良好に機能する。
【0083】
なお、プリプレグシート1は、上記直線M1,M2に端辺6,7が沿った状態で設置面GMに設置された際、第1硬化部位2B1の近傍に大きな歪みが生じるおそれがある。
プリプレグシート1は、第1硬化部位2B1の両側に位置する第1未硬化部位2A1および第2未硬化部位2A2が捩れることで上記歪みを吸収する。
【0084】
続いて、設置面GMに貼り付けたプリプレグシート1に対して保護フィルム4側から所定波長帯の光を照射する。これにより、プリプレグシート1は未硬化部分2Aの全域が硬化することで全体が硬化部分からなる導水樋となる。
【0085】
以上述べたように、本変形例における導水樋の設置方法によれば、プリプレグシート1を設置面GMに付したマークMに沿って貼り付け、所定時間放置した後に光照射することで所定の水勾配を有した導水樋を簡便に設置することができる。また、上記間隔D1及びD2を適宜調整することで設置面GMの実際の形状に応じて所望の水勾配を有した導水樋を設置することができる。
【0086】
なお、上記説明した実施形態は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。