【実施例】
【0012】
図1〜
図6は、この発明の実施例を示すものである。
図1・
図2に示すように、建物1は、躯体を構成する床2や壁3、天井(図示せず)により個室4を区画している。個室4を区画する壁3には、床2から上方に延びる長四角穴形状の出入り口5が設けられる。出入り口5には、個室4の内側と外側とを分ける扉装置6が設けられる。扉装置6は、出入り口5に枠体7を取り付け、枠体7内に親扉8及び子扉9からなる親子扉10を組み付ける。
枠体7は、出入り口5上部に取り付けられた上枠11と、出入り口5左右に取り付けられた縦枠12・13とを備える。枠体7は、上枠11と左右の縦枠12・13とによって略逆U字形状に形成される。枠体7の内側には、上枠11に上側戸当たり部14が設けられ、左右の縦枠12・13にそれぞれ左側戸当たり部15・右側戸当たり部16が設けられる。
【0013】
親扉8は、枠体7の上枠11に対応する親扉上縁部17と、左右の縦枠12・13のいずれか一方、実施例では左の縦枠12に対応する親扉一側縁部18と、を有する片開き戸からなる。親扉8は、枠体7の上枠11に対応する親扉上縁部17と左の縦枠12に対応する親扉一側縁部18とを残して、床2に対応する側と右の縦枠13に対応する側とを切除した長四角形状の開口部19を有する逆L字形状に形成する。親扉8は、親扉上縁部17の右の縦枠13側に、右の体枠13の上部に対応する親扉他側縁部20を備える。
親扉8は、閉鎖時に枠体7内に位置する。このとき、親扉8は、親扉上縁部17を上戸当たり部14に個室4の内側から接し(
図3・
図4参照)、親扉一側縁部18を左側戸当たり部15に個室4の内側から接し(
図5参照)、また、親扉他側縁部20を右側戸当たり部16の上部に個室4の内側から接する(
図6参照)。親扉8は、
図2・
図5に破線で示すように、開放時に戸先側の親扉他側縁部20が個室4の内側に開くように、吊り元側の親扉一側縁部18を左の縦枠12に親扉用ヒンジ21により取り付ける。
【0014】
子扉9は、親扉8の親扉上縁部17に対応する子扉上縁部22と、親扉一側縁部18に対応する子扉一側縁部23と、左右の縦枠12・13のいずれか他方、実施例では右の縦枠13に対応する子扉他側縁部24と、を有する片開き扉からなる。子扉9は、親扉8の開口部19の寸法とほぼ一致する長四角形状に形成する。
子扉9は、閉鎖時に親扉8の開口部19内に位置する。このとき、子扉9は、子扉他側縁部24を、右側戸当たり部16に接しない(
図5参照)。よって、子扉9は、開口部19の幅よりもわずかに短い幅の長四角形状に形成される。右の縦枠13の内側には、
図5に示すように、上部の親扉他側縁部20に対応する部分よりも下側であって、右側戸当たり部16の個室4の内側に、子扉他側縁部24に対応する子扉用戸当たり部25が設けられる。子扉9は、
図2・
図5に破線で示すように、開放時に戸先側の子扉他側縁部24が個室4の外側に開くように、吊り元側の子扉一側縁部23を親扉一側縁部18に子扉用ヒンジ26により取り付ける。
【0015】
扉装置6は、子扉用錠機構27を備える。子扉用錠機構27は、
図4に示すように、受け具28と操作具29とからなる。受け具28は、親扉8の個室4の外側であって、親扉他側縁部20の下端に設けられる。操作具29は、子扉9の個室4の外側であって、子扉他側縁部24の上端に設けられる。
受け具28は、受け部30を備える。操作具29は、バネ31によって押進付勢されて受け具28の受け部30に係合するラッチ部材32と、ラッチ部材32をバネ31の付勢に抗して後退させて受け部30から離脱させる操作ハンドル33と、を備える。ラッチ部材32は、子扉9が個室4の外側から内側に向かって閉鎖されるときに、受け部30との当接でバネ31の付勢に抗して後退されて受け部30を乗り越えるように、子扉9の閉鎖される側に傾斜面34を備える。
【0016】
子扉用錠機構27は、子扉9を個室4の内側に向かって閉じる際に、子扉9の閉鎖動作につれて、受け具28の受け部30と操作具29のラッチ部材32の傾斜部34との当接によりラッチ部材32がバネ31の付勢に抗して後退され、ラッチ部材32が受け部30を乗り越えるとバネ31の付勢により受け部30に係合し、子扉9を親扉8と結合する。
子扉用錠機構27は、子扉9を個室4の外側に向かって開く際に、操作ハンドル33の解除操作により操作具29のラッチ部材32をバネ31の付勢に抗して後退させ、受け部30から離脱させることで、子扉9の親扉8との結合を解除し、子扉9の開放を許容する。
【0017】
扉装置6は、親扉用錠機構35を備える。親扉用錠機構35は、
図5に示すように、ストライク36と錠本体37とからなる。ストライク36は、右の縦枠13に設けた子扉用戸当たり部25の内側に設けられる。錠本体37は、右の縦枠13に設けた子扉用戸当たり部25に対応する子扉他側縁部24に設けられる。
ストライク36は、係止孔38を備える。錠本体37は、バネ39によって押進付勢されてストライク35の係止孔38に係止するラッチボルト40と、ラッチボルト40をバネ39の付勢に抗して後退させて係止孔38から離脱させる操作レバー41と、を備える。ラッチボルト40は、親扉8が個室4の内側から外側に向かって閉じられるときに、ストライク36との当接で後退されてストライク36を乗り越えるように、子扉9の開放される側に傾斜面42を備える。
【0018】
親扉用錠機構35は、子扉9が結合された親扉8を個室4の外側に向かって閉じる際に、親扉8の閉鎖動作につれて、ストライク36とラッチボルト40の傾斜面42との当接によりラッチボルト40がバネ39の付勢に抗して後退され、ラッチボルト40がストライク36を乗り越えるとバネ39の付勢により係止孔38に係止し、子扉9が結合された親扉8を右の縦枠13に設けた子扉用戸当たり部25と結合する。
親扉用錠機構35は、個室4の内側に向かって親扉8を開く際に、操作レバー41の解除操作によりラッチボルト40をバネ39の付勢に抗して後退させ、係止孔38から離脱させることで、子扉9が結合された親扉8の子扉用戸当たり部25との結合を解除し、親扉8の開放を許容する。
そして、親扉用錠機構35は、子扉用錠機構27の操作ハンドル33の解除操作により子扉9を個室4の外側に向かって開く際に、子扉9の開放動作につれて、ストライク36とラッチボルト40に設けた傾斜面42との当接によりラッチボルト40がバネ39の付勢に抗して後退され、係止孔38から離脱されることで、子扉9の子扉用戸当たり部25との結合を解除し、子扉9の開放を許容する。
【0019】
また、扉装置6は、表示錠43を備える。表示錠43は、
図3に示すように、個室4の内側に設けらたれ施錠ツマミ44を操作することで、子扉9が結合された親扉8を子扉用戸当たり部25に施錠・解錠できる。また、表示錠43は、
図1に示すように、施錠・解錠に応じて個室4の外側に設けられた表示窓45に使用・未使用を表示する。さらに、表示錠43は、緊急時に、個室4の外側に設けられた操作部46をコインなどによって操作することで解錠することができる。
【0020】
次に、扉装置6の動作を説明する。
通常の使用においては、扉装置6の子扉9を子扉用錠機構27により親扉8に結合した状態とする。
扉装置6は、個室4の外側の使用者が親扉用錠機構35の操作レバー41を解除操作すると、錠本体37のラッチボルト40が係止孔38から離脱され、子扉9が結合された親扉8の子扉用戸当たり部25との結合が解除される。
これにより、使用者は、
図2に破線で示すように、子扉9が結合された親扉8を個室4の内側に開いて、個室4に入ることができる。
扉装置6は、使用者が子扉9の結合された親扉8を閉じると、ストライク36に傾斜面42を当接したラッチボルト40が後退してストライク36を乗り越え、係止孔38に係止することで、子扉9の結合された親扉8を子扉用戸当たり部25と結合する。
これにより、使用者は、
図2に実線で示すように、親扉8を閉じることができる。
【0021】
親扉8を閉じた個室4内の使用者は、必要に応じて表示錠43の施錠ツマミ44を操作することで、子扉9の結合された親扉8を子扉用戸当たり部25に施錠できる。表示錠43は、施錠により個室4の外側に設けられた表示窓45に使用中であることを表示する。
扉装置6は、個室4の内側の使用者が表示錠43の施錠ツマミ45を操作して解錠し、親扉用錠機構35の操作レバー41を解除操作すると、子扉9の結合された親扉8の子扉用戸当たり部25との結合が解除される。
これにより、個室4の内側にいる使用者は、子扉9の結合された親扉8を個室4の内側に開いて、個室4から出ることができる。
【0022】
使用者が施錠した状態で個室4内で異常が発生し、個室4内の使用者や物品が障害となり、親扉8を内側に開くことができなくなった場合、個室4の外側から親扉8と結合した子扉9を開くことができる。
扉装置6は、個室4の外側に設けられた表示錠43の操作部46をコインなどによって操作して解錠し、子扉用錠機構27の操作ハンドル33を解除操作すると、ラッチ部材32が後退して受け部30から離脱され、子扉9の親扉8との結合が解除される。
扉装置6は、子扉用錠機構27の操作ハンドル33で子扉9を開くと、子扉9の開放動作につれて、親扉用錠機構35のストライク36とラッチボルト40に設けた傾斜面42との当接によりラッチボルト40が後退され、係止孔38から離脱される。
これにより、子扉9と子扉用戸当たり部25との結合が解除され、個室4の外側にいる人間は、
図2に破線で示すように、子扉9を外側に開くことができる。
【0023】
このように、扉装置6は、親扉9を個室4の内側に開くことができなくなったときに、子扉用錠機構27の解除操作により親扉用錠機構35が右の縦枠13に設けた子扉用戸当たり部25との結合を解除されて子扉9の開放を許容するので、子扉9を個室4の外側に簡単に開くことができ、個室4内の異常に対応することができる。
【0024】
なお、上述実施例においては、親扉8は閉鎖時に枠体7内に位置するとともに開放時に戸先側の親扉他側縁部20が個室4の内側に開くように吊り元側の親扉一側縁部18を左の縦枠12に親扉用ヒンジ21により取り付け、一方、子扉9は閉鎖時に親扉8の開口部19内に位置するとともに開放時に戸先側の子扉他側縁部24が個室4の外側に開くように吊り元側の子扉一側縁部23を親扉一側縁部18に子扉用ヒンジ26により取り付けたが、これに限定されるものではない。
例えば、扉装置6は、
図7に示すように、親扉8は閉鎖時に枠体7内に位置するとともに、開放時に戸先側の親扉他側縁部20が個室4の内側に開くように吊り元側の親扉一側縁部18を右の縦枠13に親扉用ヒンジ21により取り付け、一方、子扉9は閉鎖時に親扉8の開口部19内に位置するとともに、開放時に戸先側の子扉他側縁部24が個室4の外側に開くように吊り元側の子扉一側縁部23を親扉一側縁部18に子扉用ヒンジ26により取り付けることで、子扉9を個室4の外側に簡単に開くことができ、個室4内の異常に対応することができる。
また、扉装置6は、
図8に示すように、親扉8は閉鎖時に枠体7内に位置するとともに、開放時に戸先側の親扉他側縁部20が個室4の内側に開くように吊り元側の親扉一側縁部18を左の縦枠12に親扉用ヒンジ21により取り付け、一方、子扉9は閉鎖時に親扉8の開口部19内に位置するとともに、開放時に戸先側の子扉一側縁部23が個室4の外側に開くように吊り元側の子扉他側縁部24を親扉上縁部17に子扉用ヒンジ26により取り付けることで、子扉9を個室4の外側に簡単に開くことができ、個室4内の異常に対応することができる。
【0025】
さらに、上述実施例においては、親扉8及び子扉9を片開き扉としたが、これに限定されるものではない。
例えば、扉装置6は、
図9に示すように、子扉9は親扉8の親扉一側縁部18に対応する子扉一側縁部23を有する一側子扉部分47と、右の縦枠13に対応する子扉他側縁部24を有する他側子扉部分48とに中間部において縦方向に分割し、中折れヒンジ49により折曲げ可能とした中折れ戸とすることができる。
図9の扉装置6は、親扉8は閉鎖時に枠体7内に位置するとともに、開放時に戸先側の親扉他側縁部20が個室4の内側に開くように吊り元側の親扉一側縁部18を左の縦枠12に親扉用ヒンジ21により取り付け、一方、子扉9は閉鎖時に親扉8の開口部19内に位置するとともに、開放時に一側子扉部分47及び他側子扉部分48が中折れヒンジ49により折れ曲がり、他側子扉部分48が親扉上縁部17との間に設けたスライド機構50によりスライドして親扉一側縁部18に近づきつつ個室4の外側に開くように子扉一側縁部23を親扉一側縁部18に子扉用ヒンジ26により取り付けることで、子扉9を個室4の外側に簡単に開くことができ、個室4内の異常に対応することができる。