【解決手段】単管支柱52に対して張り出しブラケット31を片持ち梁状に支持させ、支柱部材52と張り出しブラケット31の前方寄りの位置の間に斜めに方杖1を配置して下方から張り出しブラケット31を支持する際に、張り出しブラケット31に形成され下方に向かって開口するほぞ穴に対して、まず方杖1の上端に形成されたほぞを嵌挿させて方杖1を連結する一方、方杖1の下部位置に形成したクランプ装置16によって方杖1を単管支柱52に連結して固定するようにした。
支柱部材に対して片持ち梁状に支持される横架材を、前記支柱部材と前記横架材の前方寄りの位置の間に斜めに配置される斜材によって下方から支持するようにした足場における横架材の支持構造において、
前記横架材に形成され下方に向かって開口するほぞ穴に対して前記斜材の上端に形成されたほぞを嵌挿させて前記斜材を連結する一方、前記斜材下部位置に形成した連結手段によって前記斜材を前記支柱部材に連結して固定するようにした足場における横架材の支持構造。
支柱部材に対して片持ち梁状に支持される横架材を、前記支柱部材と前記横架材の前方寄りの位置の間に斜めに配置される斜材によって下方から支持するようにした足場における横架材の支持構造において、
前記横架材に形成され下方に向かって突出するほぞを前記斜材の上端に形成されたほぞ穴に嵌挿させて前記斜材を連結する一方、前記斜材下部位置に形成した連結手段によって前記斜材を前記支柱部材に連結して固定するようにした足場における横架材の支持構造。
前記斜材と前記横架材との間には前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に前記横架材側と係合して前記斜材を連結状態に保持させるための保持手段を配設したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の足場における横架材の支持構造。
前記保持手段は前記横架材の一部に係合される係合部材であり、前記係合部材は前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に前記横架材に対して前記斜材を連結を解除する方向に後退させても干渉しない第1の周方向位置と、前記斜材を連結を解除する方向に後退させると前記横架材と干渉する第2の周方向位置を取り得るように前記斜材の上部位置に配設され、
前記第1の周方向位置に配置させた状態で前記斜材を前記架材側に対して連結させ、その後前記斜材を周方向に回動させて第2の周方向位置に移動させることで前記係合部材を前記横架材に干渉する位置に配置させて前記斜材の前記横架材からの離脱を防止するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の足場における横架材の支持構造。
前記保持手段は前記ほぞの外周に出没可能に配設された突起体と、前記ほぞ穴側の内周面に形成した透孔であり、前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させる際に前記突起体を前記ほぞ穴の内周面に相対的に押動させて前記ほぞ方向に退避させ、前記透孔に照合させることで前記突起体を前記透孔内に進出させて前記斜材の前記横架材からの離脱を防止するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の足場における横架材の支持構造。
前記支柱部材の外周の所定の位置にはホルダーが形成され、前記横架材は前記ホルダーに対してくさび片によって支持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の足場における横架材の支持構造。
前記連結手段は前記支柱部材の外周の所定の位置に形成されたホルダーに対して重複状に配置される連結部本体と、重複状に配置された前記ホルダーと前記連結部本体とを上方から挿通して固定するくさび部材とから構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の足場における横架材の支持構造。
前記斜材は上端側を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に、前記斜材の前記横架材からの離脱を防止させた段階で前記斜材の前記支柱部材方向への揺動を可能としたことを特徴とする請求項1〜13に記載の足場における横架材の支持構造。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような足場を拡幅させる際の足場用ブラケット103の方杖105による補強では次のような課題があった。
(1)上下のクランプ装置106、107を足場用ブラケット103や単管支柱101に固定する際には作業者は方杖105の下方位置と上方位置のそれぞれに移動して操作をしなければならず面倒であった。取り外す際も同様である。
(2)上側のクランプ装置106を足場用ブラケット103に固定するためには、方杖105は足場用ブラケット103の下側ではなく側面位置に配置されるような位置関係となる。つまり、方杖105は足場用ブラケット103から側方にオフセットした位置に配置されることとなり、方杖105は足場用ブラケット103を直接的に下方から支持するわけではない。
そのため、クランプ装置を使用した方杖において簡単に作業ができかつ横架材の下方から支持することのできる技術が求められていた。また、上記のような足場を拡幅する場合に限らず、クランプ装置を使用して方杖を設置するような足場では広くこのような技術が望まれていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、操作が簡単で横架材の下側から支持することができる足場における横架材の支持構造、及びそのような構造を有する足場を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために手段1として、支柱部材に対して片持ち梁状に支持される横架材を、前記支柱部材と前記横架材の前方寄りの位置の間に斜めに配置される斜材によって下方から支持するようにした足場における横架材の支持構造において、前記横架材に形成され下方に向かって開口するほぞ穴に対して、まず前記斜材の上端に形成されたほぞを嵌挿させて前記斜材を連結する一方、前記斜材下部位置に形成した連結手段によって前記斜材を前記支柱部材に連結して固定するようにした。
また、手段2として、支柱部材に対して片持ち梁状に支持される横架材を、前記支柱部材と前記横架材の前方寄りの位置の間に斜めに配置される斜材によって下方から支持するようにした足場における横架材の支持構造において、
前記横架材に形成され下方に向かって突出するほぞを、まず前記斜材の上端に形成されたほぞ穴に嵌挿させて前記斜材を連結する一方、前記斜材下部位置に形成した連結手段によって前記斜材を前記支柱部材に連結して固定するようにした。
【0006】
これらのように構成することで、横架材の補強のために斜材を配設する際に、斜材の上部側はほぞとほぞ穴との関係で連結され、下部側のみを連結手段によって支柱部材に連結できるため、作業者は斜材を上側と下側の両方の位置でそれぞれ連結操作をしなくともよく作業性が向上する。また、横架材を下側から支持することができる。
ここに、「横架材」とは足場において水平方向に架設される部材であって、例えば張り出しブラケットや手すりが挙げられる。横架材は支柱部材に対して片持ち梁状に支持されるのであればどのような方式で支持されてもよい。例えば支柱の外周の周方向の一部を包囲するように形成された緊結ホルダーに対してくさび片で固定するようにしても、例えばクランプ装置で固定するようにしてもよい。
【0007】
また、手段3として、前記斜材はその上部位置であって前記ほぞよりも下方位置で揺動可能とされているようにした。
また、手段4として、前記斜材はその上部位置であって前記ほぞ穴よりも下方位置で揺動可能とされているようにした。
つまり、ほぞ又はほぞ穴の部分は独立して揺動するということである。これによって横架材側とほぞ又はほぞ穴の関係で連結した後で斜材のそれより下部分を独立して動かすことができ、容易に連結手段を支柱部材に連結することができる。
【0008】
また、手段5として、前記斜材の前記ほぞが嵌挿される前記ほぞ穴は前記横架材の先端位置に形成されるようにした。
また、手段6として、前記斜材の前記ほぞ穴に嵌挿される前記ほぞは前記横架材の先端位置に形成されるようにした。
横架材側のほぞ穴(又はほぞ)がこの位置にあれば横架材上に例えば踏み板を架設する場合でも邪魔になることがなく、また、横架材において片持ち梁状に張り出す部分が少なくなるためよい。
【0009】
また、手段7として、前記斜材と前記横架材との間には前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に前記横架材側と係合して前記斜材を連結状態に保持させるための保持手段を配設するようにした。
このように構成することで、作業者は斜材の上端側をほぞとほぞ穴の関係で連結させた後、一時的に斜材を支持しなくとも斜材が脱落しなくなるため、その後の連結手段の支柱部材への連結作業や取り外し作業を含む各種作業がしやすくなる。
【0010】
また、手段8として、前記保持手段は前記横架材の一部に係合される係合部材であり、前記係合部材は前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に前記横架材に対して前記斜材を連結を解除する方向に後退させても干渉しない第1の周方向位置と、前記斜材を連結を解除する方向に後退させると前記横架材と干渉する第2の周方向位置を取り得るように前記斜材の上部位置に配設され、前記第1の周方向位置に配置させた状態で前記斜材を前記架材側に対して連結させ、その後前記斜材を周方向に回動させて第2の周方向位置に移動させることで前記係合部材を前記横架材に干渉する位置に配置させて前記斜材の前記横架材からの離脱を防止するようにした。
これは具体的な係合部材の構成を説明するものである。このような係合部材を斜材に設けて横架材の一部に係合させるようにすれば、簡単な操作で斜材を脱落しないように支持させることが可能となる。
ここに「係合部材」としては先端が内側に湾曲した鉤状の形状のフック部材であることがよい。このような形状であると断面円形形状である横架材の外周に沿いやすいからである。また、例えば係合部材は斜材の長手方向に沿って延出されるようにすることがよい。このように構成すると係合部材が斜材の幅から大きくはみ出すことがなく、コンパクト化に貢献する。また、横架材に干渉する部分は例えば斜材の内側方向に屈曲あるいは湾曲させることがよい。そのような構成であれば斜材の幅方向からはみ出さず、かつ第2の周方向位置に移動させることで屈曲あるいは湾曲させた部分がちょうど干渉することとなるからである。
【0011】
また、手段9として、前記保持手段は前記ほぞの外周に出没可能に配設された突起体と、前記ほぞ穴側の内周面に形成した透孔であり、前記斜材を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させる際に前記突起体を前記ほぞ穴の内周面に相対的に押動させて前記ほぞ方向に退避させ、前記透孔に照合させることで前記突起体を前記透孔内に進出させて前記斜材の前記横架材からの離脱を防止するようにした。
これも具体的な係合部材の構成を説明するものである。このような係合部材を斜材に設けて横架材の一部に係合させるようにすれば、簡単な操作で斜材を脱落しないように支持させることが可能となる。
【0012】
また、手段10として、前記支柱部材の外周の所定の位置にはホルダーが形成され、前記横架材は前記ホルダーに対してくさび片によって支持されるようにした。
つまり、具体的な横架材の支持構造を説明するものである。このような構成であれば所定の前もって定まった位置に簡単に横架材を固定することができる。
また、手段11として、前記連結手段を前記斜材の下端に揺動可能に取着されたクランプ装置とした。
これによって、斜材の下側は斜材がどのような角度で配置されていても支柱部材のどの位置にも自由に取り付けることが可能となる。
また、手段12として、前記連結手段を前記支柱部材の外周の所定の位置に形成されたホルダーに対して重複状に配置される連結部本体と、重複状に配置された前記ホルダーと前記連結部本体とを上方から挿通して固定するくさび部材とから構成するようにした。
これによって、支柱部材側のホルダーに対して斜材側の連結部本体を重複状に配置し、上方からくさび部材を挿通させるだけで斜材の下側を固定することができるため、作業効率がよく作業時間が短縮される。
また、手段13として、前記連結部本体は前記斜材に対して揺動可能に取着されるようにした。これによって斜材自体が支柱部材に対して様々な角度で配置されても連結部本体とホルダーとの位置関係を常に一定にすることが可能となる。この手段の前提として連結部本体が斜材に対して固定されていてもよい。
また、手段14として、前記斜材は上端側を前記横架材側に対して前記ほぞと前記ほぞ穴の関係で連結させた際に、前記斜材の前記横架材からの離脱を防止させた段階で前記斜材の前記支柱部材方向への揺動を可能とした。
このように構成すれば、斜材は上端側を前記横架材側に対して連結して離脱できないようになったことが確定した後、つまり作業者が斜材を支持していなくとも斜材が脱落しなくなったことで初めて斜材を支柱部材方向へ揺動させて斜材の下端側の固定作業が可能となるので、揺動軸方向がある方向に固定されているような場合では斜材上端を離脱できないように取り付けなければ斜材を支柱部材方向へ揺動させることができず、結果として斜材上端を確実に横架材側離脱不能に取り付けることに寄与する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、斜材によって横架材を支持する際に、その設置作業が簡単であるため作業性が向上し、かつ横架材を下側から支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1の仮設足場に使用する方杖の斜視図。
【
図2】(a)は
図1の方杖における上端側を拡大して示す正面方向からの説明図、(b)は下端側を拡大して示す正面方向からの説明図。
【
図3】張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結する直前の状態を説明する説明図。
【
図4】張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結した直後の説明図。
【
図5】(a)及び(b)は張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結した後、90度回動させた状態の説明図。
【
図6】張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結し、90度回動させた後にフックで方杖を支持させ、かつ張り出しブラケット先端に単管支柱を立設させた状態の説明図。
【
図7】(a)は張り出しブラケットに対して方杖の上端のほぞを連結し、かつフックで支持させた状態で下垂した状態を説明する説明図、(b)は(a)の状態から方杖の下端のクランプ装置を単管支柱に固定した状態の説明図。
【
図8】本実施の形態1の架設足場を設置した状態の側面図。
【
図10】本実施の形態2において方杖の下端側を単管支柱に連結する直前の状態を説明する説明図。
【
図11】本実施の形態2において方杖の下端側を単管支柱に連結し、クサビ片を挿通させる直前の状態を説明する説明図。
【
図12】本実施の形態2において方杖の下端側を単管支柱に連結し、クサビ片を挿通させた状態を説明する説明図。
【
図13】(a)は実施の形態3の方杖における上端側を拡大して示す正面方向からの説明図、(b)は上端側を拡大して示す側面方向からの説明図。
【
図14】実施の形態3に使用するロックピンユニットの斜視図。
【
図15】本実施の形態3において張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結する直前の状態を説明する説明図。
【
図16】本実施の形態3において張り出しブラケットに対して方杖上端のほぞを連結した直後の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施の形態として足場における横架材の支持構造について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1の足場の拡幅を行う主たる部材である斜材としての方杖1の斜視図である。
図1及び
図2に示すように、方杖1は断面円形形状の合金製パイプ部材からなる方杖本体2を備えている。方杖本体2の前後の端部寄りには180度対向する位置に一対の透孔(取り付け孔)3が形成されている。
方杖本体2の上端にはほぞ側ブラケット4を介してほぞ5が配設されている。ほぞ側ブラケット4は長方形の外形の平板状の鋼材を2カ所で直角に屈曲してチャンネル状に形成した部材であって、ほぞ取り付け部4aとほぞ取り付け部4aの左右の対向位置に平行に配置された一対の支持部4bとから構成されている。支持部4bの間隔はちょうど方杖本体2の外径と一致ている。ほぞ側ブラケット4は支持部4bに形成した透孔(取り付け孔)6と方杖本体2の透孔3とを照合させた状態で
図2(a)に示すようにボルト7とナット8による締結部材によって揺動可能に支持されている。ボルト7の中心軸線が揺動中心となる。
ほぞ5は先端が窄まって形成された方杖本体2よりも小径の断面円形形状の合金製パイプ部材から構成されている。ほぞ5はほぞ側ブラケット4のほぞ取り付け部4aの上面に溶接によって固定されている。ほぞ5のほぞ取り付け部4a寄り位置であってその外周にはリング状のストッパ部9が形成されている。ストッパ部の外径は本実施の形態では方杖本体2の外径と一致する。ほぞ5に隣接するようにほぞ側ブラケット4の側面には保持手段及び係合部材としての合金製の棒材からなる同形状の前後一対のフック10が配設されている。両フック10はほぞ5を挟んだ180度ずれた位置にほぞ5に沿ってほぞ5の前端方向に向かって延出されている。両フック10はほぞ5よりも先端側には突出しない位置でほぞ5の幅方向に交差するように前方側が湾曲させられてJ字状の外観とされている。両フック10の位置は後述するようにほぞ孔に嵌挿させた際に係合する対象(本実施の形態1ではブラケット本体32)との関係で決定される。両フック10の湾曲部分の内周カーブは方杖本体2の外周カーブと略一致している。
【0016】
方杖本体2の下端にはクランプ側ブラケット15を介して連結手段としてのクランプ装置16が配設されている。クランプ側ブラケット15もほぞ側ブラケット4と同形状であり、クランプ取り付け部15aとクランプ取り付け部15aの左右の対向位置に平行に配置された一対の支持部15bとから構成されている。クランプ側ブラケット15は支持部15bに形成した透孔(取り付け孔)17と方杖本体2の透孔3とを照合させた状態で
図2(b)に示すようにボルト7とナット8による締結部材によって揺動可能に支持されている。ボルト7の中心軸線が揺動中心となる。クランプ側ブラケット15はほぞ側ブラケット4が軸支される方向と同じ方向に軸支されている。
クランプ装置16はキャッチ本体19とアーム部20とボルト部21を備えている。アーム部20はキャッチ本体19の先端側に軸受け部22によって揺動可能に連結されている。キャッチ本体19はクランプ取り付け部15aの下面に溶接によって固定されている。キャッチ本体19とアーム部20は凹形状に湾曲した内周面23A、23Bが向かい合うように配置されている。ボルト部21はキャッチ本体19の基端側に軸受け部23によって揺動可能に連結されている。ボルト部21は外周に雄ネジ24が形成されており、ナット25が雄ネジ24に螺合されており、ボルト部21の長手方向に進退可能とされている。
図2(b)に示すように、クランプ装置16はアーム部2の先端をボルト部21に係合させた状態でナット25によってアーム部2先端をキャッチ本体19方向に押動させることで内周面23A、23B間に配置された締め付け対象(本実施の形態1では後述する単管支柱52)を締め付けて締め付け対象に対して自身を固定するようにする。
【0017】
次に方杖1と組み合わせて足場の拡幅を行う主たる部材である張り出しブラケット31について説明する。
図3〜
図6に示すように、張り出しブラケット31は水平に配置される断面円形形状の合金製パイプ部材からなるブラケット本体32を備えている。ブラケット本体32は方杖1の方杖本体2と同径かつ同材質のパイプ材である。ブラケット本体32の基端にはクサビ片33が形成されている。クサビ片33は大径に構成された基部33aと基部33aから徐々に細くなる挿入部33bから構成され、ブラケット本体32に対して溶接で固定されている。ブラケット本体32の先端には直交方向に延出された連結パイプ34が形成されている。連結パイプ34もブラケット本体32に対して溶接で固定されている。連結パイプ34はブラケット本体32と同じ外径でほぞ5の外径よりも僅かに大きな内径を有する合金製のパイプ材から構成されており、その大部分(全長の75%ほど)はブラケット本体32の上方側に配置されている。連結パイプ34の先端は窄まった形状に構成されている。ブラケット本体32よりも上位置であって連結パイプ34の外周位置には位置決めリング35が遊嵌されている。位置決めリング35にはL状に切り欠かれた案内溝36が形成されており、連結パイプ34の外周に突出形成されたピン37が案内溝36内に露出させられている。そのため、位置決めリング35は案内溝36の両端位置にピン37を移動させることで2種類の高さに配置可能とされている。これは後述する第1の緊結ホルダー61と第2の緊結ホルダー62の高さの違いに対応させるためである。連結パイプ34の位置決めリング35よりも上部分はほぞ38とされている。連結パイプ34の下端は開口部34aとされ、開口部34aからパイプ内部にかけてほぞ孔とされる。ブラケット本体32下方にはブラケット本体32の長手方向から若干連結パイプ34側に寄った位置からクサビ片33の下方位置にかけて斜めに持ち送り枠39が形成されている。持ち送り枠39の先端には当接プレート40が形成されている。持ち送り枠39とブラケット本体32の間には補強枠41が配設されている。
【0018】
次にこのような方杖1と張り出しブラケット31とを使用した架設足場の一例を説明する。まず、
図8及び
図9に基づいて架設足場51の概要を説明する。本実施の形態1では架設足場51は支柱部材としての単管支柱52と、3種類の布材53〜55と、2種類の踏み板56,57と、ジャッキベース58と、上記方杖1と張り出しブラケット31とから構成されている。単管支柱52、布材53〜55、踏み板56,57、ジャッキベース58等は周知の構成であるため詳しい説明は省略する。本実施の形態1では壁面Wと前方の障害物Uとの間の狭い領域に足場1を配置として、障害物Uの存在しない上方で足場を拡幅した足場を構築するようにした。
まず、複数のジャッキベース37を
図8のように壁面Wと障害物Uの近傍に所定間隔で配置し、かつ
図9のようにそれぞれ壁面Wと障害物Uの面に平行な方向にも所定間隔で配置する。そして、それぞれのジャッキベース58に単管支柱52を連結する。
単管支柱52には所定の間隔で緊結ポジション60が設けられており、各緊結ポジション60は180度対向して同じ高さに配置された一対の第1の緊結ホルダー61と、両第1の緊結ホルダー61に対して軸方向にずれた位置でかつ周方向に90度ずれた位置に180度対向して同じ高さに配置される一対の第2の緊結ホルダー62とから構成されている。ここではまず2種類の布材53,54をそれぞれ単管支柱52の第1の緊結ホルダー61間と第2の緊結ホルダー62間に架設する。本実施の形態1では単管支柱52の緊結ポジション60は8箇所に設けられており、各単管支柱52の隣接する緊結ポジション60同士の間隔は等間隔(本実施の形態1では450mm)とされている。本実施の形態1では下から4番目と8番目の位置にある布材53に対して踏み板56を架設するようにする。このようにして架設足場51の一段目(下層階)を組み立てることができる。
【0019】
本実施の形態1では架設足場51の一段目では障害物Uがあるため、踏み板56だけを敷くようにしていたが、障害物Uが障害とならない二段目(上層階)で方杖1を使用して拡幅をしてもう一枚の踏み板57を敷くようにする。以下に拡幅の工程を説明する。
図3に示すように、作業者は足場31の一段目を構成する障害物U側の単管支柱32の最上部の緊結ポジション60に対して張り出しブラケット31を支持させる。張り出しブラケット31の第1の緊結ホルダー61に対してクサビ片33を係止させ、持ち送り枠39の先端の当接プレート40を単管支柱32の側面に当接させて張り出しブラケット31のブラケット本体32を水平に支持させる。そして
図3に示すように、作業者は方杖1を支持し、連結パイプ34の下端側から方杖1を接近させ、ほぞ5を開口部34aから連結パイプ34内に嵌挿させていく。以下、作業者は
図6の状態となるまで方杖1(方杖本体2)を掴んで支持こととなる。この時、方杖1側のフック10が方杖1の上昇に伴ってブラケット本体32に干渉しないようにする、つまりフック10が常にブラケット本体32の下側位置にないようにする必要がある。フック10は180度対向する位置に一対で配置されている。そのため、両方のフック10がブラケット本体32の側面をちょうど通過する位置、つまり、方杖1のほぞ5を連結パイプ34に嵌挿させる際にほぞ側ブラケット4のボルト7の中心軸線(揺動中心線)がブラケット本体32の延出方向と平行となるように配置することで両フック10ともにブラケット本体32に干渉しないで進出することができることとなる。
図4に示すように、方杖1のほぞ5を連結パイプ34の下端側から嵌挿させていき、ほぞ5のストッパ部9の上端面を連結パイプ34の下端、つまり開口部34aに当接させる。この状態ではフック10の湾曲した先端位置はわずかに連結パイプ34の最上部よりも上の位置に配置されるため、この位置で方杖1を周方向に回動させてもフック10が連結パイプ34に干渉することはない。つまり、ほぞ5に対するフック10の取り付け位置はストッパ部9の位置との関係で決定される。この段階で
図5(a)(b)に示すように、方杖1を90度回動させる。この段階で作業者が方杖1を離すと方杖1はわずかに自重で下動し、フック10は張り出しブラケット31側の連結パイプ34に係止されることとなる(保持状態)。
【0020】
方杖1側のフック10が張り出しブラケット31側の連結パイプ34に係止された状態では
図7(a)に示すように、作業者が支持しなくとも方杖1はほぞ5が連結パイプ34内に嵌挿された状態で下垂される。このときほぞ側ブラケット4のボルト7の中心軸線(揺動中心線)は張り出しブラケット31のブラケット本体32の延出方向と直交方向に配置される。つまり、方杖本体2はほぞ側ブラケット4に対して揺動し、その揺動方向は単管支柱52に対して接離する方向となる。また、このときクランプ側ブラケット15のボルト7の中心軸線(揺動中心線)も同様に張り出しブラケット31のブラケット本体32の延出方向と直交方向に配置される。
作業者は方杖本体2を持って単管支柱52側に引き寄せクランプ側ブラケット15とともにクランプ装置16を単管支柱52方向に揺動させる。そしてクランプ装置16を操作して単管支柱52に固定する。この際にフック10に支持されている方杖1全体を上に若干押し上げて再びストッパ部9の上端面を連結パイプ34の下端に当接させるようにする。尚、方杖1を張り出しブラケット31から取り外す際は以上と逆の操作をする。
以上の拡幅のための張り出しブラケット31と方杖1の取り付け操作を障害物Uの面方向に沿って配置された各単管支柱52に対してそれぞれ実行し、その後、
図8及び
図9に示すように張り出しブラケット31上に踏み板57を架設する。以後はこのように拡幅した状態で上層に単管支柱52、布材53〜55を組んでいく。
【0021】
上記のように構成することにより本実施の形態1の架設足場51では次のような効果が奏されることとなる。
(1)架設足場5の拡幅のために張り出しブラケット31を配置した場合に、従来とは異なりほぞとほぞ孔の関係で支持することのできる方杖1を使用したため、上端側の連結作業が簡略化され、下端側のクランプ装置16を固定するだけでよいため、作業が簡略化し、作業効率がアップする。
(2)平面的に見た際に方杖1は張り出しブラケット31の真下に配置されることとなり、方杖1は張り出しブラケット31を下方から支持することとなる。その結果、方杖1の長手方向に直接的に荷重がかかることとなり、大きな力で張り出しブラケット31にかかる重量を支えることができる。
(3)方杖1のほぞ5を連結パイプ34に連結した後、フック10によって作業者が必ずしも支持していなくとも方杖1は張り出しブラケット31に吊り下げられるため、作業者の次の作業において手が空くこととなり作業効率がアップする。
(4)方杖1のほぞ5を連結パイプ34に連結した後、方杖1を90度回動させることで簡単にフック10を張り出しブラケット31のブラケット本体32に係止させることができるため、操作上有利である。
(5)方杖1のほぞ5を連結パイプ34に連結した後、方杖1を90度回動させてフック10を係合させるとその位置でちょうど方杖1の揺動方向がクランプ装置16を取り付けるための単管支柱52方向に向くこととなるため、方杖1を引き寄せてクランプ装置16を単管支柱52に取り付ける一連の作業の効率がアップする。
【0022】
(実施の形態2)
図10〜
図12に基づいて実施の形態2を説明する。実施の形態2は上記実施の形態1の方杖1において下端位置に配設したクランプ側ブラケット15及びクランプ装置16の代わりに他の連結手段を用いた例である。実施の形態1と異なる部分のみを説明してその他は実施の形態1と共通であるため説明を省略する。
方杖70の方杖本体71の下端には連結部本体としての連結プレート72が方杖71の下端寄り前面に揺動可能に取着されている。連結プレート72は二枚の同形状のプレートを内部に中空部を有するように連結ピン73によって連結して構成され、上部開口部72aと下部開口部72bが形成されている。連結プレート72の図において左側方(つまり単管支柱52に面した前方部分)には上下開口部72a,72bに面した領域を残して長方形にカットされたカット部74が形成されている。
連結プレート72内には上下開口部72a,72bから脱落不能にスライダ75が遊嵌されている。スライダ75はスライダ本体76とくさび部材としてのクサビ片77から構成されている。クサビ片77はスライダ本体75の前方(つまり単管支柱52に面した側)にスライダ本体75と略平行に上方から下方に向かって延出されている。スライダ本体76は下半身が幅広のボートのパドル形状をなし、スライダ本体76上端に脱落防止を兼ねたハンマーでの叩き込み用の膨出部78が形成されている。クサビ片77は先細りに形成されている。クサビ片77はスライダ本体76の上下動に伴ってカット部74内を通過可能とされている。クサビ片77が最も下動した状態でクサビ片77の先端は第1の緊結ホルダー61を通過して下開口部72bに面した位置に配置される。
【0023】
次に、このような構成の連結手段を使用した方杖1の下端の単管支柱52側への連結作業について説明する。方杖71の上端側は実施の形態1に従った工程ですでに連結済みであるものとする。
図10に示すように、まず方杖71の下端を管支柱52の緊結ポジション60に接近させる。このとき、スライダ75は最も上位置に配置しておく。そして、
図11に示すように、方杖71側を向いた第1の緊結ホルダー61がカット部74に収容されるように連結プレート72を単管支柱52に接近させる。この状態でクサビ片77を下動させることで連結プレート72と第1の緊結ホルダー61が連結状態となる(
図12の状態)。そして、ハンマーで膨出部78を叩いてしっかりとクサビ片77を第1の緊結ホルダー61に固定する。
一方、連結プレート72を第1の緊結ホルダー61から取り外す際には
図12で最も下垂した状態のスライダ本体76の下端をハンマーで叩いてクサビ片77による固定力を解除し、スライダ75全体を持ち上げて
図10のように連結プレート72を第1の緊結ホルダー61から離間させる。
【0024】
上記のように構成することにより本実施の形態2の架設足場51では上記実施の形態1の(1)及び(2)と同様の効果に加え次のような効果が奏されることとなる。
(6)クランプ装置のように固定のためのナットによる締め付け作業が不要となり、作業効率がアップする。
【0025】
(実施の形態3)
図13〜
図16に基づいて実施の形態3を説明する。実施の形態3は上記実施の形態1の方杖1において上端位置に配設したほぞ5に併設したフック10の代わりに他の保持手段を用いた例である。また、実施の形態1とは張り出しブラケット31とは連結パイプ34が異なっている。実施の形態1と異なる部分のみを説明してその他は実施の形態1と共通であるため詳しい説明を省略する。
実施の形態3では実施の形態1と同様のほぞ側ブラケット4を介してほぞ81が配設されている。ほぞ81のほぞ取り付け部4a寄り位置であってその外周には実施の形態1と同様にリング状のストッパ部82が形成されている。ほぞ81には180度対向した位置に一対の円形の透孔83が形成されている。両透孔83の中心を結ぶ直線はボルト7の中心軸線(揺動中心線)と直交する。
図13及び
図14に示すように、ほぞ81内にはロックピンユニット84が配設されている。ロックピンユニット84は板ばねをとなる放物線形状に湾曲させられたユニット本体84と、ユニット本体84の先端を突出状に屈曲形成したピン86から構成されている。ピン86は先端上部が斜めに切り欠かれて当接部86aとされている。ロックピンユニット84はほぞ81内に付勢させた状態で配設され、透孔83からピン86が外方に向かって突出させられている。そのため、ロックピンユニット84がほぞ81内に配設された状態でピン86をほぞ81内に押動するとユニット本体84の付勢力によってピン86は透孔83内方向に押し戻される。
【0026】
実施の形態3ではほぞ81が嵌挿される張り出しブラケット87は実施の形態1の張り出しブラケット31とは異なる連結パイプ88とされている。以下、連結パイプ88を主として説明し、図示では実施の形態1と同じ部材番号を付すことで詳しい説明は省略する。連結パイプ88はブラケット本体32に対して溶接で固定されている。連結パイプ88はブラケット本体32と同じ外径でほぞ81の外径よりも僅かに大きな内径を有する合金製のパイプ材から構成されており、その大部分(全長の75%ほど)はブラケット本体32の上方側に配置されている。連結パイプ88の先端は窄まった形状に構成されている。ブラケット本体32よりも上位置であって連結パイプ88の外周位置には位置決めリング89が形成されている。連結パイプ88の下端は開口部88aとされ、開口部88aからパイプ内部にかけてほぞ孔とされる。位置決めリング89の下方位置であって180度対向した位置に一対の円形の透孔90が形成されている。開口部88aから透孔90までの距離はほぞ81側のストッパ部82上端と透孔83までの距離と一致する。
ロックピンユニット84、透孔83、連結パイプ88の透孔90等は保持手段を構成する。
【0027】
次に、張り出しブラケット87の連結パイプ88に方杖1のほぞ81を連結する際のロックピンユニット84の作用について説明する。
図15に示すように、ブラケット本体32を水平に支持させた状態で張り出しブラケット31の連結パイプ88の開口部88aから方杖1上端のほぞ81を嵌挿させていく。嵌挿に伴ってほぞ81側のピン86は当接部86aが開口部88aに干渉して押動されてほぞ81内に退避しその後は内周面に相対的に押動され続けるため、ほぞ81はスムーズに進出する。嵌挿されたほぞ81はストッパ部82上端が開口部88に当接して位置決めされる。この時、退避していたピン86はほぞ81が進出して透孔83と透孔90の位相が一致した位置で再び突出してほぞ81を連結パイプ88に対してロック状態とする(
図16の状態)。この時、ほぞ側ブラケット4を支持するボルト7の中心軸線(揺動中心線)は連結パイプ88の延出方向と直交する。この状態で方杖1の上端は保持されるため、作業者は方杖1を支持していなくともよく、続いて上記実施の形態1又は2のように下端側を単管支柱52に連結する。
上記のように構成することにより本実施の形態3の架設足場51では上記実施の形態1の(1)及び(2)と同様の効果に加え次のような効果が奏されることとなる。
(7)単にほぞ81を連結パイプ88に嵌挿し、ストッパ部82が開口部88に当接するまで進出させることでロックピンユニット84によるロック機構が作用して方杖1を吊り下げ状態とすることができるため、作業者の次の作業において手が空くこととなり作業効率がアップする。
(8)ロックピンユニット84によるロック機構が作用する位置ではちょうど方杖1の揺動方向がクランプ装置16を取り付けるための単管支柱52方向に向くこととなるため、その後の方杖1を引き寄せてクランプ装置16を単管支柱52に取り付ける一連の作業の効率がアップする。
【0028】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態では方杖1を揺動可能に支持するために1軸のボルト7を使用したが、例えばユニバーサルジョイントのような揺動手段を使用してもよい。
・上記実施の形態2では連結プレート72を方杖1に揺動可能としたが、揺動せずに固定されていてもよい。
・実施の形態3のロックピンユニット84の形状は一例である。
・上記実施の形態の架設足場51では拡幅するためにこのような方杖1を使用したが拡幅ではない場合であっても張り出しブラケット31を支持するための方杖1を適用するようにしてもよい。
・ほぞとほぞ孔の関係は、上記各実施の形態では方杖1側をほぞ5,81としたが、これを逆転し、方杖1にほぞ孔を設け張り出しブラケット31の連結パイプ34側にほぞを設けるようにしてもよい。
・保持手段、連結手段としては上記各実施の形態で示したものは一例であるため、他の構成の保持手段、連結手段で実施するようにしてもよい。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。