(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-48645(P2017-48645A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】鉄筋継手スリーブへの充填材注入管
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20170217BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20170217BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
E04C5/18 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-174324(P2015-174324)
(22)【出願日】2015年9月4日
(71)【出願人】
【識別番号】390005186
【氏名又は名称】日本スプライススリーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113321
【弁理士】
【氏名又は名称】熊田 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100109966
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】虻川 真大
(72)【発明者】
【氏名】濱田 洋徳
(72)【発明者】
【氏名】金子 昭男
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA25
(57)【要約】
【課題】本発明は、鉄筋継手スリーブへの充填材注入管からの注入作業後に注入用ノズル内に留まった充填材が外方へ漏れることをなくしたものである。
【解決手段】パイプ状の長尺ノズル、該長尺ノズルの周側壁に沿って摺動自在に移動可能な長尺鞘管及び該長尺ノズルの一端側を注入口、他端側を筒状把持部として形成した鉄筋継手スリーブへの充填材注入管において、該長尺鞘管の一端側に逆止弁を設けたことを特徴とする鉄筋継手スリーブへの充填材注入管。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ状の長尺ノズル、該長尺ノズルの周側壁に沿って摺動自在に移動可能な長尺鞘管及び該長尺ノズルの一端側を注入口、他端側を筒状把持部として形成した鉄筋継手スリーブへの充填材注入管において、該長尺鞘管の一端側に逆止弁を設けたことを特徴とする鉄筋継手スリーブへの充填材注入管。
【請求項2】
長尺ノズルの一端側の注入口を30度乃至60度の傾斜面としたことを特徴とする請求項1記載の鉄筋継手スリーブへの充填材注入管。
【請求項3】
長尺鞘管は、硬質ビニル管よりなり、その内径を長尺ノズルの外径より大とし、該長尺ノズル長より短く形成し、その一端側から他端側まで摺動自在としてなることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄筋継手スリーブへの充填材注入管。
【請求項4】
逆止弁は、ゴム又はプラスチックよりなる弾性体とし、中央に切断部を設け、長尺ノズルの先端側が出入可能としてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の鉄筋継手スリーブへの充填材注入管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋相互を継ぐ鉄筋継手スリーブへ充填材を注入するための充填材注入管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋継手スリーブへの充填材の充填は、該鉄筋継手スリーブの周側壁に形成した注入孔より行っていた。例えば、柱鉄筋の継手として鉄筋継手スリーブを使用する場合、該鉄筋継手スリーブは、柱を立設した垂直位置で使用することになり、その周側壁に形成した注入孔側を下に、排出孔側を上にして取り付け、該注入孔より充填した充填材が該排出孔より排出されたことを目視することで該鉄筋継手スリーブ内に充填材が充填されたことを確認していた。
【0003】
施工場所で鉄筋を組み立て、その鉄筋に該鉄筋継手スリーブを使用する場合、上記した充填材の注入方法が一般的な施工手段として行われているが、例えば、梁や柱等の鉄筋を地上で予め組み立てて鉄筋篭を造り、それを施工場所へクレーンにて揚重して取り付ける地組等の工法の場合、水平位置での鉄筋組み立てとなるため鉄筋継手スリーブの位置も水平となっており、充填材を注入孔から注入し、排出孔からの排出をもって鉄筋継手スリーブ内に充填材が充填されたことを確認するよりも、大きな開口部となっている鉄筋継手スリーブの左右の鉄筋挿入口のいずれかより直接充填した方が効率良く充填材を充填することができる。特に、鉄筋継手スリーブによってはより大きく形成されている注入孔側の鉄筋挿入口より直接充填することにより充填材の充填作業をより速く確実に行うことが可能となる。
【0004】
鉄筋を地組する際に、鉄筋相互の継手となる鉄筋継手スリーブに予め充填材を充填して梁や柱の鉄筋篭を形成し、該鉄筋篭を揚重して施工場所となる所定位置にセットする際、鉄筋相互の継手となる鉄筋継手スリーブを用いて充填材を充填することにより工事の施工時間を大幅に短縮することが可能となる。上記地組工法の例に限らず、施工場所で組み立てた鉄筋に使用する鉄筋継手スリーブにおいても同様の充填材の充填方法を採用することができる。本発明は、上記鉄筋継手スリーブへ充填材を充填するための注入管を提供するものである。
【0005】
特許文献1は、
図6に示すように、充填材となるグラウトを注入する装置で、圧送器に連結されたホースAの先端に注入ノズルBを接続し、該注入ノズルBには継手Cのホルダの役割をする部材Dを備え、その内側に突出した先端を該継手Cの注入孔に合わせると同時に、該ホルダDにより該継手Cを押えた状態とすることで該注入ノズルBを注入孔に嵌め込み保持することができ、一人の作業員でも注入作業を可能とするものである。
【0006】
特許文献2のグラウト材注入用ノズルは、
図7に示すように、グラウト材注入用ノズルEの外周に外筒Fを外嵌装し、該外筒Fの先端側にカプラーの注入孔と合致する注入用ノズルの先窄状先端部Gを突出させ、後端側に蓋体Hを設けて注入用ノズルEの後端開口部を閉塞しているもので、グラウト材注入用ノズルの水平移動を確実にし、施工性に優れたものを提供している。
【0007】
上記特許文献1の注入ノズルBは、従来のものと同様、細長いロッド形状の筒状管の先端に固定され、該筒状管はグラウトが送られてくるホースAの先端に取り付けられているだけであり、グラウト注入後の注入ノズルBは、そのまま露出状態とされ、該注入ノズルBの先端から注入ノズルBや筒状管内に残されたグラウトが流出することになる。また、組み立てた鉄筋の内側や反対側に位置する継手CにもホルダDを使用することになり、その取り付け作業を必要とし、グラウトを注入する作業には時間と困難を伴なうものがあった。
【0008】
また、上記特許文献2に示されているグラウト材注入用ノズルEは、外筒Fが外嵌装されているが、該外筒F内を該注入用ノズルEが摺動自在となるように設けたものではなく、特許文献1と同様、使用後の注入用ノズルEの先端からグラウトが漏れることになる。また、注入用ノズルEは長尺ではないので、特許文献1と同様、組み立てた鉄筋の内側や反対側に位置する継手内にグラウトを注入する作業には困難を伴なうものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−81678号公報
【特許文献2】実開昭63−89050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記欠点を解決したもので、鉄筋継手スリーブへの充填材注入管からの注入作業後に注入用ノズル内に留まった充填材が該充填材注入管外へ漏れることがなく、且つ、未使用時には鋭敏な形状となっている注入用ノズルの先端部が露出することなく、該充填材注入管の鞘管内に収納することができ、更に、注入用ノズルを作業のし易い長尺の形状としたことにより、組み立てた鉄筋の内側や反対側等の離れた位置の鉄筋継手スリーブ内等においても充填材を簡単に注入することを可能としたものである。
【0011】
また、鉄筋継手スリーブの鉄筋を挿入する鉄筋挿入口側の拡開となる開口部より充填材を注入することができるので、注入作業を短時間で行うことを可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、パイプ状の長尺ノズル、該長尺ノズルの周側壁に沿って摺動自在に移動可能な長尺鞘管及び該長尺ノズルの一端側を注入口、他端側を筒状把持部として形成した鉄筋継手スリーブへの充填材注入管において、該長尺鞘管の一端側に逆止弁を設けた鉄筋継手スリーブへの充填材注入管を特徴とする。
【0013】
また、上記長尺ノズルの一端側の注入口を30度乃至60度の傾斜面とした鉄筋継手スリーブへの充填材注入管を特徴とする。
【0014】
更に、上記長尺鞘管は、硬質ビニル管よりなり、その内径を長尺ノズルの外径より大とし、該長尺ノズル長より短く形成し、その一端側から他端側まで摺動自在としてなる鉄筋継手スリーブへの充填材注入管を特徴とする。
【0015】
また、上記逆止弁は、ゴム又はプラスチックよりなる弾性体とし、中央に切断部を設け、長尺ノズルの先端側が出入可能としてなる鉄筋継手スリーブへの充填材注入管を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
充填材注入管の未使用時或いは使用後において、長尺ノズルの先端部を長尺鞘管に形成した逆止弁の内側に引き込めて収納することができるので、次の鉄筋継手スリーブへの注入作業の移動時や未使用時に、当該先端部より充填材が外部へ垂れたり流出したりすることがなく、作業周りを該充填材により汚すことがなくなった。
【0017】
また、長尺ノズルから充填材が充填しやすいように該長尺ノズルの先端部に形成した注入口の傾斜面となる鋭敏な形状部を未使用時には長尺鞘管内へ隠蔽することができ、施工者に接する危険を未然に回避することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の充填材注入管の先端部の拡大側面図。
【
図4】(a)本発明の充填材注入管の長尺鞘管に逆止弁を取着した状態の側断面図、(b)同正面図。
【
図5】(a)本発明の充填材注入管より鉄筋継手スリーブ充填材を充填している状態を示す斜視図、(b)作業員が充填材注入管を保持している状態を示す斜視図。
【
図6】従来の鉄筋継手用グラウト注入装置の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態について、その実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の鉄筋継手スリーブへの充填材注入管1は、
図1、
図2に示すように、長尺ノズル2、該長尺ノズル2の周側壁側を長手方向に沿って摺動自在に移動可能な長尺鞘管3及び該長尺ノズル2の一端側に設けた把持部4とより構成し、該長尺ノズル2の他端側を充填材の注入口5とし、該鞘管3の注入口5側となる端部に逆止弁6を設けている。
【0021】
該長尺ノズル2は、鉄製、ステンレス製等の硬質のもので製造した筒状の長尺のもので、電動ポンプ(不図示)等により圧送されてきた充填材を筒内を通過させ、該充填材を先端部の注入口5より鉄筋継手スリーブ内に充填させるものである。一例として、長さ約900mm、外径13.2mmφのものである。その一端側には作業員が施工するに際し、該充填材注入管1を把持するための把持部4を設け、同作業員は一方の手で該把持部4を持ち、他方の手で長尺鞘管3を持って一人で充填作業をすることができる。該把持部4は塩ビ管等のようなもので形成する。
【0022】
該長尺ノズル2の注入口5側となる他端側は開口部となって露出し、鉄筋継手スリーブへの充填材の挿入口となる。先端部は、
図3の拡大図に示すように、斜め方向となるテーパ状に切断した傾斜切断部7を形成し、充填材を鉄筋継手スリーブへ充填し易いように形成している。該傾斜切断部7のテーパ面は長尺ノズル2の長手方向に対し30度乃至60度の角度で形成している。約45度前後の切断面が好ましい。また、先端部全体に鋭敏な切断部が形成されないように、先端の円周部に垂直部8を残し、その両縁部よりテーパ状に切断してテーパ面を形成するのが好ましい。
【0023】
図2は、該長尺ノズル2の注入口5を長尺鞘管3内に収納した状態を示している。該長尺鞘管3は、両端開口の筒状体のもので、例えば、硬質のビニル電線管(J管)のVE22のものが良好で、上記長尺ノズル2と組み合わせる場合は、長さ約740mm、外径26mmφ、内径22mmφのものが使用される。該長尺鞘管3の先端側に、
図4に示すように、逆止弁6を固定している。該逆止弁6は、ゴム、プラスチック製の材料よりなり、中央部を可撓性の有る薄片9とし、長尺ノズル2が通過できるように中心部の位置の直径方向に切断部10を形成している。該中央部の薄片9の周囲には嵌合部11が形成され、該長尺鞘管3の先端部に嵌合固定できるように形成している。
【0024】
該嵌合部11は、挿入筒体12と該挿入筒体12の内側先端側の内端側係止リング13及び外部に露出する側の外端側係止リング14とより形成され、例えば、前記した大きさの長尺鞘管3であれば内端側係止リング13の外径は23mmφ、外端側係止リング14の外径は25mmφとすることで、長尺鞘管3の筒状体の内径内に挿入筒体12を嵌合することができ、外端側係止リング14は長尺鞘管3の端部をほぼ隠蔽し、薄片9で筒状体端部の開口側全体を被覆することができる。
【0025】
上記したように、該長尺ノズル2の外径は、長尺鞘管3の筒状体の内径より細く形成されているので、該長尺鞘管3は、該長尺ノズル2の長手方向に沿って摺動自在となるが、該長尺鞘管3の先端部に逆止弁6が固定され、該逆止弁6の中心部に切断部10を形成しているので、該長尺鞘管3を把持部4の反対側となる注入口5側へ移動させることにより、
図2のように右方向へ移動し、該長尺ノズル2の先端部の注入口5は該逆止弁6の薄片9を通過し、該長尺鞘管3内に収まることになる。該注入口5を
図1のように露出させる場合は、上記とは逆の移動を行うことになる。
【0026】
図5(a)は、長尺ノズル2を長尺鞘管3より露出させ、鉄筋継手スリーブSの鉄筋挿入口の開口部と鉄筋との間の隙間に該長尺ノズル2の先端部の注入口5を挿入し、充填材を注入している図を示している。
図5(b)に示すように、作業員は一方の手で長尺鞘管3を握り、他方の手で把持部4を握ることで、圧送に伴なう振動に抵抗する一方で、その手応えを感じることができ、長尺ノズル2の先端部の注入口5が所定位置から外れることなく一人での充填作業を行うことが可能となる。
【0027】
鉄筋継手スリーブSには、その本体に注入孔及び排出孔が各々設けられているので、充填材が当該箇所より流出しないように予めホールシールUをして密封しておく。
【0028】
鉄筋継手スリーブSの鉄筋挿入口の一方の開口部T側から該長尺ノズル2を利用して充填材を充填することになるので、他方の開口部側は開口部封止板等により塞いで充填材の流出止めとしておく。
【0029】
例えば、鉄筋が立設している状態の場合、鉄筋継手スリーブは通常下方側に注入孔、上方側に排出孔が位置するように使用するが、注入孔側の開口部が拡開に形成されているものの使用では、本発明にあっては通常の使用とは逆の注入孔側を上方に位置するように該鉄筋継手スリーブを配設することができることになり、充填材の充填が一層やり易く、且つ、充填作業を速くすることができる。
【0030】
通常の大きさの鉄筋継手スリーブへの通常の送出圧力での充填材の充填作業であれば23秒前後の極めて短時間で充填を達成することができる。また、充填を止めたいときには、長尺鞘管3を注入側となる注入口5側へ移動させることで長尺ノズル2の先端部の注入口5を逆止弁6内に移動させることができ、充填材が外部に流出することなく直ちに鉄筋継手スリーブ内への充填作業を停止させることができる。他の鉄筋継手スリーブへの充填作業のための移動は、前記したように、長尺ノズル2の先端部を逆止弁6の内側となる長尺鞘管3内に引き込め、その状態で次の箇所での充填作業の準備を進めることになる。
【0031】
上記のように、該長尺鞘管3内に充填材が溜まることが生じることがあるので、該長尺ノズル2から該長尺鞘管3を引き抜き、該長尺鞘管3の筒状体内に溜まった充填材の再利用や掃除をすることができる。また、別の長尺鞘管3を用意しておくことにより、すばやく取り替えて充填作業を続行させることもできるので充填作業の継続を担保することができる。
【0032】
上記充填作業は、鉄筋が組み立てられた施工現場、地組する柱や梁が水平状態での鉄筋篭においても可能である。
【0033】
鉄筋継手スリーブへの充填作業は、注入側の開口部が溢れそうになったところで長尺ノズル2の先端側となる注入口5を逆止弁6内に引き込めることで注入作業をストップさせることができるので、該鉄筋継手スリーブからの充填剤の漏れを少なくすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 充填材注入管
2 長尺ノズル
3 長尺鞘管
4 把持部
5 注入口
6 逆止弁
7 傾斜切断部
8 垂直部
9 薄片
10 切断部
11 嵌合部
12 挿入筒体
13 内端側係止リング
14 外端側係止リング