特開2017-49059(P2017-49059A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-49059(P2017-49059A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】免疫測定装置および免疫測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170217BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20170217BHJP
【FI】
   G01N35/02 Z
   G01N33/553
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-171112(P2015-171112)
(22)【出願日】2015年8月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】川元 祐峰
(72)【発明者】
【氏名】福寿 利勝
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA09
2G058CD11
2G058CD21
2G058CD26
2G058CE08
2G058CF01
2G058EA16
2G058GA02
(57)【要約】
【課題】検体処理に要する時間を短縮する。
【解決手段】この免疫測定装置100は、第1反応容器16内で、固相試薬に含まれる磁性粒子82上に検体中の被検物質81および標識試薬に含まれる標識物質83を含む免疫複合体84を形成させた後、遊離試薬85によって免疫複合体84を磁性粒子82から遊離させる処理を行う処理機構部10と、第1保持部14および磁力源15を有し、第1位置61で第1保持部14に受け入れた第1反応容器16内の磁性粒子82を磁力源15により集磁しながら第2位置62まで移送する移送部11と、第2位置62に移送された第1反応容器16内の遊離した免疫複合体84を含む液相80aを吸引して第2反応容器17に分注する分注部12と、第2反応容器17に分注された液相80a中の免疫複合体84に含まれる標識に基づく信号を検出する検出部13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を測定する免疫測定装置であって、
第1反応容器内で、固相試薬に含まれる磁性粒子上に検体中の被検物質および標識試薬に含まれる標識物質を含む免疫複合体を形成させた後、遊離試薬によって前記免疫複合体を前記磁性粒子から遊離させる処理を行う処理機構部と、
前記第1反応容器を保持するための第1保持部および磁力源を有し、第1位置で前記第1保持部に受け入れた前記第1反応容器内の前記磁性粒子を前記磁力源により集磁しながら第2位置まで移送するための移送部と、
前記第2位置に移送された前記第1反応容器内の遊離した前記免疫複合体を含む液相を吸引して第2反応容器に分注するための分注部と、
前記第2反応容器に分注された前記液相中の前記免疫複合体に含まれる標識に基づく信号を検出するための検出部とを備える、免疫測定装置。
【請求項2】
前記移送部は、反応容器を保持するための第2保持部をさらに含み、
前記分注部は、前記磁性粒子から遊離した前記免疫複合体を含む液相を、前記第1保持部に設置された前記第1反応容器から吸引し、吸引した前記液相を前記第2保持部に設置された前記第2反応容器に分注する、請求項1に記載の免疫測定装置。
【請求項3】
前記処理機構部は、反応容器に試薬を分注するための試薬分注部を含み、
前記移送部は、複数の前記第2保持部を含み、
前記試薬分注部は、一の前記第2保持部に設置された前記第1反応容器に試薬を分注し、
前記分注部は、他の前記第2保持部に設置された前記第2反応容器に、前記磁性粒子から遊離した前記免疫複合体を含む液相を分注する、請求項2に記載の免疫測定装置。
【請求項4】
前記処理機構部は、前記第1反応容器に検体を分注するための検体分注部を含み、
前記分注部は、前記検体分注部であり、
前記検体分注部は、前記移送部により検体分注位置に移送された前記第1反応容器に検体の分注を行い、前記第2位置に移送された前記第1反応容器から前記免疫複合体を含む液相を吸引し、前記検体分注位置に移送された前記第2反応容器に前記液相を分注する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫測定装置。
【請求項5】
前記第2位置は、前記検体分注位置と同じ位置であり、
前記移送部は、前記検体分注位置に前記第1反応容器を位置付けて前記免疫複合体を含む液相を吸引させ、前記検体分注位置に前記第2反応容器を位置付けて前記免疫複合体を含む液相を分注させる、請求項4に記載の免疫測定装置。
【請求項6】
前記検体分注部は、先端に分注チップが着脱可能に構成され、前記検体の分注と、前記磁性粒子から遊離した前記免疫複合体を含む液相の吸引および分注とを、別々の前記分注チップを装着して行う、請求項4または5に記載の免疫測定装置。
【請求項7】
前記処理機構部は、前記反応容器中の試料を加温して反応させるための反応部を含み、
前記移送部は、前記遊離試薬によって前記免疫複合体を前記磁性粒子から遊離させた前記第1反応容器を前記第1位置で前記反応部から受け取り、受け取った前記第1反応容器を前記第2位置に移送する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の免疫測定装置。
【請求項8】
前記磁力源は、前記第1保持部の側方または下方に設置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の免疫測定装置。
【請求項9】
前記磁力源は、前記第1保持部の側方に設置された永久磁石を含み、
前記永久磁石は、着磁面が前記第1保持部側を向き、かつ、前記第1保持部に設置される前記第1反応容器の長手方向に沿って延びている、請求項8に記載の免疫測定装置。
【請求項10】
前記永久磁石は、一対設けられ、
前記一対の永久磁石は、異なる極性を有する着磁面がそれぞれ前記第1保持部側を向き、かつ、前記第1反応容器の前記長手方向と直交する方向に並んで配置されている、請求項9に記載の免疫測定装置。
【請求項11】
抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を測定する免疫測定方法であって、
第1反応容器内で、固相試薬に含まれる磁性粒子上に検体中の被検物質および標識試薬に含まれる標識物質を含む免疫複合体を形成させる工程、
前記免疫複合体を前記磁性粒子から遊離させるための遊離試薬を前記第1反応容器に分注する工程、
磁力源によって前記磁性粒子を集磁する第1位置に、前記第1反応容器を移送する工程、
前記磁力源によって前記第1反応容器内の前記磁性粒子を集磁しながら、前記第1反応容器を前記第1位置から第2位置まで移送する工程、
前記第2位置において前記磁性粒子を集磁した状態で、前記第1反応容器内の遊離した前記免疫複合体を含む液相を吸引する工程、
吸引した前記液相を前記第1反応容器とは異なる第2反応容器に分注する工程、
前記第2反応容器に分注された前記液相中の前記免疫複合体に含まれる標識に基づく信号を検出する工程、を含む免疫測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検体中の被検物質の測定を行う免疫測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定装置による測定を高感度化するための技術として、免疫複合体転移法がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された技術では、抗原抗体反応を利用して被検物質と標識抗体との免疫複合体が担体上で生成される。免疫複合体と担体との結合体を含む測定試料に、遊離試薬が投入された後、担体から遊離された免疫複合体が測定試料中から抽出される。これにより、担体に非特異的に吸着された標識抗体が除去される。次に、抽出された免疫複合体に含まれる標識に基づく測定が行われる。
【0004】
上記特許文献1には開示されていないが、担体から遊離された免疫複合体を測定試料中から抽出する方法としては、反応容器内に担体を集めた状態で、反応容器から液相を吸引する方法がある。たとえば担体として磁性粒子を用いる場合、液相の吸引位置に配置した反応容器中の磁性粒子に磁力を作用させることにより、磁性粒子を集磁できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1-254868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように吸引位置に配置した反応容器中の磁性粒子を集磁して液相を吸引する場合、反応容器を吸引位置に配置してから磁性粒子が十分に集磁されるまでの時間が必要になる。そのため、磁性粒子を集磁するための待機時間が発生して、検体処理に要する時間が増大してしまう。そこで、検体処理に要する時間を短縮することが望まれている。
【0007】
この発明は、検体処理に要する時間を短縮することに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による免疫測定装置は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を測定する免疫測定装置であって、第1反応容器内で、固相試薬に含まれる磁性粒子上に検体中の被検物質および標識試薬に含まれる標識物質を含む免疫複合体を形成させた後、遊離試薬によって免疫複合体を磁性粒子から遊離させる処理を行う処理機構部と、第1反応容器を保持するための第1保持部および磁力源を有し、第1位置で第1保持部に受け入れた第1反応容器内の磁性粒子を磁力源により集磁しながら第2位置まで移送するための移送部と、第2位置に移送された第1反応容器内の遊離した免疫複合体を含む液相を吸引して第2反応容器に分注するための分注部と、第2反応容器に分注された液相中の免疫複合体に含まれる標識に基づく信号を検出するための検出部とを備える。
【0009】
この発明の第2の局面による免疫測定方法は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を測定する免疫測定方法であって、第1反応容器内で、固相試薬に含まれる磁性粒子上に検体中の被検物質および標識試薬に含まれる標識物質を含む免疫複合体を形成させる工程、免疫複合体を磁性粒子から遊離させるための遊離試薬を第1反応容器に分注する工程、磁力源によって磁性粒子を集磁する第1位置に、第1反応容器を移送する工程、磁力源によって第1反応容器内の磁性粒子を集磁しながら、第1反応容器を第1位置から第2位置まで移送する工程、第2位置において磁性粒子を集磁した状態で、第1反応容器内の遊離した免疫複合体を含む液相を吸引する工程、吸引した液相を第1反応容器とは異なる第2反応容器に分注する工程、第2反応容器に分注された液相中の免疫複合体に含まれる標識に基づく信号を検出する工程、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、検体処理に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による免疫測定装置の概要を示した模式図である。
図2】一実施形態による免疫測定装置の移送部の構成例を示した模式図である。
図3】一実施形態による免疫測定装置の移送部の他の構成例を示した模式図である。
図4】一実施形態による免疫測定装置の第1階層を示した模式的な平面図である。
図5】一実施形態による免疫測定装置の第2階層を示した模式的な平面図である。
図6図3および図4に示した免疫測定装置による測定の概要を説明するための図である。
図7図3および図4に示した免疫測定装置の移送部の構成例を示した斜視図である。
図8】移送部の第1保持部および第2保持部の構成例を示した斜視図である。
図9図8に示した移送部の平面図である。
図10図8に示した移送部の側面図である。
図11】磁力源の永久磁石と第1反応容器との位置関係を説明するための模式的な平面図である。
図12】第1保持部に第1反応容器を設置した状態の第1保持部の縦断面図である。
図13】磁力源の他の構成例を示した模式的な縦断面図である。
図14】一実施形態による免疫測定装置の測定処理動作を説明するためのフローチャートである。
図15図14に示した液相の吸引および分注動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
[免疫測定装置の概要]
まず、図1を参照して、一実施形態による免疫測定装置100の概要について説明する。
【0013】
免疫測定装置100は、抗原抗体反応を利用して検体中の被検物質を測定する装置である。被検物質は、たとえば、血液に含まれる抗原または抗体、タンパク質や、ペプチドなどである。免疫測定装置100は、血清を検体として取得して、検体に含まれる抗原または抗体などを定量測定または定性測定する。検体は、血漿でもよい。なお、抗原抗体反応は、抗原と抗体との反応のみならず、アプタマー等の特異的結合物質を用いた反応を含む。アプタマーは、特定の物質と特異的に結合するように合成された核酸分子またはペプチドである。
【0014】
本実施形態では、免疫測定装置100は、免疫複合体転移法による免疫複合体の分離処理を行う。免疫複合体転移法は、被検物質と標識物質とを含む免疫複合体(抗原抗体反応による結合体)を固相担体上に形成させた後、免疫複合体と固相担体とを解離させ、解離した免疫複合体を固相担体から分離する手法である。これにより、免疫複合体を固相担体に形成させる過程で固相担体に非特異的に結合した不要な標識物質が、免疫複合体から固相担体と一緒に分離される。その結果、免疫複合体転移法を行わずに測定が行われる場合と比較して、ノイズレベルを下げることができるので、測定データのベースラインを下げて、免疫測定の高感度化ができる。
【0015】
図1に示すように、免疫測定装置100は、処理機構部10と、移送部11と、分注部12と、検出部13とを備える。本実施形態では、後述するように、免疫複合体84を含む液相80aを第1反応容器16から第2反応容器17に分注することにより、免疫複合体転移が行われる。第1反応容器16および第2反応容器17は、たとえば、一端側が開口し他端側の底部がふさがった円筒状容器であり、内部に検体や試薬などの液体を収容できる。これらの反応容器は、たとえば、使い捨て可能な樹脂製の容器である。この場合、使用済みの反応容器をそのまま廃棄することができる。
【0016】
処理機構部10は、免疫測定のために必要な処理を、反応容器に対して実施する機能を備える。本実施形態では、処理機構部10は、第1反応容器16内で、固相試薬に含まれる磁性粒子82上に検体中の被検物質81および標識試薬に含まれる標識物質83を含む免疫複合体84を形成させる処理を行う。また、処理機構部10は、免疫複合体84を形成させた後、遊離試薬85によって免疫複合体84を磁性粒子82から遊離させる処理を行う。処理機構部10は、免疫複合体84を形成させる処理および免疫複合体84を遊離させる処理以外に、他の処理をさらに実行する構成であってもよい。
【0017】
処理機構部10は、反応容器に対する処理工程の種類および数に応じて、1または複数の処理ユニットを含むことができる。1つの処理ユニットが、1種類の処理工程を実施してもよいし、複数種類の処理工程を実施できる処理ユニットであってもよい。
【0018】
たとえば、処理機構部10は、第1反応容器16に検体を分注するための検体分注部を含んでもよい。この場合、処理機構部10は、被検物質81を含む検体を分注する工程を実施できる。予め検体が分注された第1反応容器16を処理機構部10が処理する場合、処理機構部10に検体分注部を設ける必要はない。
【0019】
また、処理機構部10は、第1反応容器16に試薬を分注するための試薬分注部を含んでもよい。この場合、処理機構部10は、磁性粒子82を含む固相試薬を分注する工程、標識物質83を含む標識物質を分注する工程、および、遊離試薬85を分注する工程を実施できる。これらの試薬が予め分注された第1反応容器16を処理機構部10が処理する場合、処理機構部10に試薬分注部を設ける必要はない。
【0020】
また、処理機構部10は、第1反応容器16中の試料を加温して反応させるための反応部を含んでもよい。この場合、処理機構部10は、免疫複合体84を形成させる処理や、免疫複合体84を遊離させる処理に際して、反応に適した温度環境で試料の反応を促進させることができるので、効率的に処理ができる。第1反応容器16中の試料を加温しなくても反応が十分進行する場合や、処理機構部10全体が所定温度の恒温槽として構成されている場合などには、処理機構部10に反応部を設ける必要はない。
【0021】
第1反応容器16に分注される各種試薬は、液体試薬であり、種類毎にそれぞれ別々の試薬容器に収容される。固相試薬は液体中に磁性粒子82を含んだ液体試薬であり、標識試薬は液体中に標識物質83を含んだ液体試薬である。上記のように、磁性粒子82は、免疫複合体84の担体となる。
【0022】
磁性粒子としては、磁性を有する材料を基材として含み、通常の免疫測定に用いられる粒子であればよい。例えば、基材としてFeおよび/またはFe、コバルト、ニッケル、フィライト、マグネタイトなどを用いた磁性粒子が利用できる。磁性粒子82は、被検物質81と結合するための結合物質がコーティングされていてもよいし、磁性粒子82と被検物質81とを結合させるための捕捉物質を介して被検物質81と結合してもよい。捕捉物質は、磁性粒子82および被検物質81と相互に結合する抗原または抗体などである。この場合、捕捉物質を含む試薬が第1反応容器16に分注される。
【0023】
標識物質83は、被検物質81と抗原抗体反応により結合し、検出部13により測定可能な標識を含有する。標識物質83は、免疫測定で用いられる公知の標識を含む抗体であれば、特に限定されない。捕捉物質を用いる場合、標識物質83が捕捉物質と結合してもよい。標識物質に含まれる標識としては、たとえば、酵素、蛍光物質、放射性同位元素などである。酵素としては、アルカリホスファターゼ(ALP)、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、チロシナーゼ、酸性ホスファターゼなどが挙げられる。蛍光物質としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、ルシフェリンなどが利用できる。放射性同位元素としては、125I、14C、32Pなどが利用できる。本実施形態における標識物質83に用いる標識としては、酵素が好ましい。
【0024】
標識が酵素である場合、標識物質83の酵素に対する基質は、用いる酵素に応じて適宜公知の基質を選択すればよい。例えば、酵素としてアルカリホスファターゼを用いる場合の基質としてはCDP−Star(登録商標)、(4−クロロ−3−(メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2’−(5’−クロロ)トリクシロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)、CSPD(登録商標)(3−(4−メトキシスピロ{1,2−ジオキセタン−3,2−(5’−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン}−4−イル)フェニルリン酸2ナトリウム)などの化学発光基質;p−ニトロフェニルホスフェート、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド(NBT)、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)などの発光基質;4−メチルウムベリフェニル・ホスフェート(4MUP)などの蛍光基質;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、5−ブロモ−6−クロロ−インドリルリン酸2ナトリウム、p−ニトロフェニルリンなどの発色基質などが利用できる。
【0025】
遊離試薬85は、被検物質81と標識物質83とを含む免疫複合体84と磁性粒子82との結合を解消させ、免疫複合体84を磁性粒子82から遊離させる。磁性粒子82と被検物質81とが結合する場合、遊離試薬85は、磁性粒子82と被検物質81との結合を解消させる。磁性粒子82が捕捉物質を介して被検物質81と結合する場合、遊離試薬85は、磁性粒子82と捕捉物質との結合、または、被検物質81と捕捉物質との結合を解消させればよい。遊離試薬85は、免疫複合体84と磁性粒子82との結合の種類に応じて選択される。
【0026】
たとえば、免疫複合体84と磁性粒子82との結合がハプテン−抗ハプテン抗体による結合である場合、ハプテンまたはハプテン誘導体が遊離試薬として利用できる。また、免疫複合体84と磁性粒子82との結合が、イオン結合による結合である場合は、遊離試薬としてイオンを含む溶液が利用できる。また、免疫複合体84と磁性粒子82との結合が、分離可能結合としてリガンド−レセプターによる結合である場合は、遊離試薬としてリガンドまたはリガンド類似体が利用できる。免疫複合体84と磁性粒子82との結合が、分離可能結合としてレクチン−糖鎖による結合である場合は、遊離試薬として糖質が利用できる。免疫複合体84と磁性粒子82との結合が、ビオチン−アビジンにより結合している場合は、遊離試薬としてビオチンが利用できる。
【0027】
移送部11は、反応容器を移送できる。移送部11は、第1反応容器16を保持するための第1保持部14および磁力源15を有する。本実施形態では、移送部11は、第1位置61で第1保持部14に受け入れた第1反応容器16内の磁性粒子82を磁力源15により集磁しながら第2位置62まで移送できる。第1位置61は、磁力源15による磁性粒子82の集磁を開始する位置である。第2位置62は、後述するように、分注部12によって免疫複合体84を含む液相80aを吸引する位置である。移送部11は、1または複数の容器移送ユニットから構成され、複数の容器移送ユニットが反応容器を順次受け渡していく構成であってもよい。
【0028】
移送部11は、第1位置61および第2位置62の他に、処理機構部10の各部に第1反応容器16または第2反応容器17を移送可能であってもよい。処理機構部10が検体分注部、試薬分注部および反応部などの処理ユニットを含む場合、移送部11は、たとえば、反応容器を、検体分注部の検体分注位置、試薬分注部の試薬分注位置、反応部への反応容器の受け渡し位置に移送できるように構成してよい。また、移送部11は、第1位置61および第2位置62の他に、検出部13への第2反応容器17の受け渡し位置に移送できるように構成してもよい。
【0029】
磁力源15は、第1保持部14の近傍に配置されており、磁力源15の磁力により、磁性粒子82を集磁できる。集磁とは、磁力を作用させて磁性体を集めることである。磁力源15は、第1保持部14に設置された第1反応容器16内の磁性粒子82に対して磁力を作用させ、磁性粒子82を第1反応容器16の内側面や底部などの所定位置に集磁する。磁力源15としては、たとえば永久磁石または電磁石が採用できる。
【0030】
磁力源15は、第1位置61から第2位置62への第1反応容器16の移送経路に沿って設置された複数の磁力源により構成されていてもよいし、第1保持部14に設けられて第1保持部14と一体的に移動する磁力源により構成されていてもよい。磁力源15が第1保持部14と一体的に移動する構成では、磁力源15を第1反応容器16とともに移送できるので、磁力源を第1反応容器16の移送経路に沿って設置する場合と比べて、装置構成を簡素化できる。
【0031】
分注部12は、第2位置62に移送された第1反応容器16内の遊離した免疫複合体84を含む液相80aを吸引して第2反応容器17に分注する機能を備える。分注部12は、第2位置62において磁性粒子82が集磁された状態で、第1反応容器16内から所定量の液相80aを吸引し、吸引した液相80aを第1反応容器16とは異なる第2反応容器17に吐出する。これにより、第1反応容器16中に固相80bとして集磁された磁性粒子82と、液相80a中に含まれる免疫複合体84とが分離される。処理機構部10が検体分注部や試薬分注部を含む場合には、専用の分注部12を設ける代わりに、検体分注部または試薬分注部が分注部12として機能してもよい。したがって、分注部12が処理機構部10の一部であってもよい。
【0032】
検出部13は、第2反応容器17に分注された液相80a中の免疫複合体84に含まれる標識に基づく信号を検出する機能を備える。検出は、標識物質83に用いる標識の種類に応じた適切な方法で行われればよく、検出方法は特に限定されない。たとえば、標識物質83に用いる標識が酵素である場合、測定は、酵素に対して基質を反応させることにより発生する光、色などを測定することにより行うことができる。この場合の検出部13として、分光光度計、ルミノメータなどが利用できる。また、標識物質が放射性同位体である場合、検出部13としてシンチレーションカウンターなどが利用できる。
【0033】
このように、本実施形態では、移送部11に磁力源15を設け、第1位置61で第1保持部14に受け入れた第1反応容器16内の磁性粒子82を磁力源15により集磁しながら第2位置62まで移送するように移送部11を構成する。これにより、第1位置61から第2位置62へ第1反応容器16を移送するまでの間に、磁性粒子82を集磁するために第1反応容器16の移送を停止させる必要がないか、第1反応容器16を停止させて集磁する場合でも集磁に必要な停止時間を短縮させることができる。その結果、磁性粒子82の集磁のための停止時間が無くなるかまたは短縮する分だけ、検体処理に要する時間を短縮することができる。
【0034】
なお、図1では、免疫複合体転移法による免疫複合体の分離処理を行う免疫測定装置100に上記構成を適用した例を示したが、免疫複合体転移法を行わずに免疫測定を行う免疫測定装置について、上記構成を適用してもよい。
【0035】
図2および図3は、移送部11の構成例を示す。図2および図3の構成例では、磁力源15は、移送部11に設けられ、第1反応容器16とともに移送される。
【0036】
図2の構成例では、移送部11は、第1保持部14を有する保持部材11aをガイド部11bに沿って移動できる。この構成例では、第1保持部14は、第1反応容器16を設置可能な設置孔である。磁力源15は、第1保持部14の近傍に位置するように保持部材11aに設けられ、第1保持部14と一体で移動する。
【0037】
図3の構成例では、移送部11は、上下方向および水平方向の所望の方向に移動可能なロボット機構11cにより第1保持部14を移動できる。この構成例では、第1保持部14は、反応容器を把持するためのキャッチャである。磁力源15は、移送部11において、第1保持部14に第1反応容器16を把持させた状態で第1反応容器16に近接できる位置に設けられ、第1保持部14と一体で移動する。
【0038】
[免疫測定装置の具体的な構成例]
次に、免疫測定装置100の具体的な構成例について詳細に説明する。上記した免疫測定装置100の各部は、たとえば図4および図5に示すような構成によって具体的に実現できる。
【0039】
免疫測定装置100は、処理機構部10、移送部11、分注部12、検出部13および制御部45(図5参照)を備える。この構成例では、処理機構部10は、検体分注部18、試薬分注部19a〜19e、および、反応部20a〜20cを含む。また、免疫測定装置100は、筐体21と、検体搬送部22と、チップ供給部23と、容器供給部24と、試薬保持部25と、階層間搬送部26とを備える。また、免疫測定装置100は、これらの各部に反応容器を搬送する移送部27、28および29を備えている。
【0040】
筐体21は、平面視において長方形状を有する。筐体21は、免疫測定装置100の各部を内部に収容している。筐体21は、上下方向に複数の階層が設けられた階層構造を有している。筐体21は、第1階層21a(図4参照)と、第1階層21aの下側にある第2階層21b(図5参照)とを含んでいる。反応容器は、階層間搬送部26によって第1階層21aと第2階層21bとの間を移送される。なお、筐体21は、1つの階層のみで構成されていてもよい。以下では、便宜的に、筐体21の長辺に沿う水平方向をX方向とし、筐体21の短辺に沿う水平方向をY方向とする。X方向およびY方向と直交する上下方向をZ方向とする。
【0041】
以下、図4を参照して、第1階層21aに設置された各部の構成について説明する。
【0042】
検体搬送部22は、検体を収容した試験管22aが複数設置されたラック22bを所定の検体吸引位置まで搬送できる。チップ供給部23は、多数の分注チップ23a(図7参照)を貯留し、検体分注部18に分注チップ23aを供給できる。分注チップ23aは、たとえば所定量の検体を収容可能な中空筒状の先端部品であり、使い捨て可能に構成されている。分注チップ23aを介して検体を吸引して分注チップ23a内に収容し、反応容器に吐出することにより、分注チップ23aのみを検体と接触させて分注ができる。分注チップ23aを使い捨てにすることにより、検体のキャリーオーバーを防止できる。
【0043】
容器供給部24は、第1反応容器16および第2反応容器17を貯留している。容器供給部24は、反応容器供給位置63において、移送部11に第1反応容器16または第2反応容器17を1つずつ順次供給できる。この構成例では、第1反応容器16および第2反応容器17として、同一種類の反応容器が用いられる。なお、第1反応容器16および第2反応容器17を区別する必要がない場合は、単に「反応容器」という。
【0044】
検体分注部18は、第1反応容器16に検体を分注する機能を有する。検体分注部18は、試験管22a中の検体を吸引し、吸引した検体を検体分注位置64に配置された第1反応容器16に分注できる。
【0045】
本実施形態では、検体分注部18を分注部12として機能させてもよい。図4の構成例では、検体分注部18が、検体の分注と、液相80aの吸引および分注とを行う。
【0046】
検体分注部18は、移送部11により検体分注位置64に移送された第1反応容器16に検体の分注を行い、第2位置62に移送された第1反応容器16から免疫複合体84を含む液相80aを吸引し、検体分注位置64に移送された第2反応容器17に液相80aを分注する。これにより、検体分注部18を分注部12として機能させることができる。そのため、免疫測定装置100に検体分注部18と分注部12とを別々に設けた場合と比較して免疫測定装置100を小型化できるので、移送部11の移動距離を短くして第1反応容器16の移送に要する時間を短縮できる。
【0047】
第2位置62は、検体分注位置64と同じ位置であってもよい。この場合、移送部11は、検体分注位置64(=第2位置62)に第1反応容器16を位置付けて免疫複合体84を含む液相80aを吸引させ、検体分注位置64に第2反応容器17を位置付けて免疫複合体84を含む液相80aを分注させる。これにより、検体分注位置64と第2位置62とが別々の位置である場合と異なり、第1反応容器16からの液相80aの吸引と、第2反応容器17への液相80aの吐出と行う際に、検体分注部18側が移動する必要がないので、液相80aの吸引と液相80aの吐出とを迅速に行うことができる。
【0048】
検体分注部18を分注部12として機能させる場合、検体分注部18は、検体の分注と、磁性粒子82から遊離した免疫複合体84を含む液相80aの吸引および分注とを、別々の分注チップ23aを装着して行う。これにより、検体分注部18を分注部12としても機能させる場合でも、分注チップ23aを介した検体のキャリーオーバーが防止できる。
【0049】
図4の構成例では、移送部11は、第1保持部14および磁力源15を含み、Y方向に直線移動できる。移送部11は、第1位置61、第2位置62、反応容器供給位置63、検体分注位置64(=第2位置62)および試薬分注位置65に移動できる。後述するように、図4の構成例では、第1位置61は、反応部20aと移送部11との間での反応容器の受け渡し位置として設定されている。
【0050】
移送部11を、第2位置62と、反応容器供給位置63と、検体分注位置64(=第2位置62)とに移動するように構成することによって、反応容器供給位置63における空の第2反応容器17の移送部11への設置と、第2位置62(検体分注位置64)における液相80aの吸引と、検体分注位置64における液相80aの分注および検体の分注とを、移送部11を移動させるだけで行うことができる。これにより、各種の動作を移送部11の移動経路上で行うことができるので、検体処理に要する時間をより短縮することができる。
【0051】
試薬保持部25は、円筒形状のケース25aと、円環状の試薬設置部25bおよび25cと、を含んでいる。試薬保持部25は、断熱機能を有するケース25a内に設置した試薬を冷却機構によって冷却する保冷庫である。
【0052】
円環状の試薬設置部25bおよび25cは、同心状に配置されていて、互いに独立して回転できる。外周側の試薬設置部25bは、試薬容器25dを複数保持できる。内周側の試薬設置部25cは、試薬容器25eを複数保持できる。これらの試薬容器25dまたは試薬容器25eには、後述するR1試薬〜R7試薬が収容されている。試薬設置部25bおよび25cの回転によって、複数の試薬容器25dおよび25eがそれぞれ所定の試薬吸引位置に位置付けられる。ケース25aの上面には、開閉可能な吸引口25f、25gおよび25hが、試薬分注部19a〜試薬分注部19cのそれぞれの吸引用に3つ設けられている。
【0053】
図4の構成例では、3つの反応部20a〜20cは、それぞれ固定的に設置されている。反応部20a〜20cは、それぞれ図示しないヒーターおよび温度センサを備え、反応容器を保持して反応容器に収容された試料を加温して反応させる機能を有する。具体的には、反応部20a〜20cは、それぞれ複数の容器保持孔20dを有し、容器保持孔20dに設置された反応容器に収容された試料を所定温度に加温できる。
【0054】
反応部20aは、移送部11の近傍に設置されている。反応部20aは、第1反応容器16中の試料を加温して反応させる。移送部11は、遊離試薬85によって免疫複合体84を磁性粒子82から遊離させた第1反応容器16を第1位置61で反応部20aから受け取り、受け取った第1反応容器16を第2位置62に移送する。これにより、反応部20aにおいて反応処理が行われた第1反応容器16を速やかに移送部11に設置して、第2位置62に移送することができる。その結果、検体処理に要する時間をより短縮できる。
【0055】
反応部20aと反応部20bとの間には、保持孔内に反応容器を保持して、反応容器内の試料中の磁性粒子を磁石により集める集磁ポート30がある。集磁ポート30において、移送部27と移送部28との間の反応容器の受け渡しができる。
【0056】
反応部20bは、反応部20aと分離部31との間の位置にある。反応部20bと試薬保持部25との間には、分注ポート32aがある。反応部20bと分離部31との間には、分注ポート32bがある。
【0057】
反応部20cは、分離部31に対してX2方向側の位置にある。分離部31と反応部20cとの間には、中継部33と、階層間搬送部26とがある。
【0058】
試薬分注部19a〜試薬分注部19cは、第1反応容器16または第2反応容器17への試薬の分注処理を行う。試薬分注部19aは、試薬の吸引および吐出を行うためのピペット34を、吸引口25fと試薬分注位置65との間で移動できる。ピペット34は、試薬保持部25の試薬容器25eから試薬を吸引し、試薬分注位置65に移送された反応容器に試薬を分注する。
【0059】
試薬分注部19bは、ピペット34を吸引口25gと分注ポート32aとの間で移動できる。ピペット34は、試薬保持部25の試薬容器25dから試薬を吸引し、分注ポート32aに移送された反応容器に試薬を分注する。
【0060】
試薬分注部19cは、ピペット34を吸引口25hと分注ポート32bとの間で移動できる。ピペット34は、試薬保持部25の試薬容器25eから試薬を吸引し、分注ポート32bに移送された反応容器に試薬を分注する。
【0061】
分離部31は、反応容器から、液相80aと固相80bとを分離するBF分離処理を実行する機能を有する。分離部31は、それぞれ反応容器を設置可能な複数の処理ポート35を含む。処理ポート35には、免疫複合体84が形成された磁性粒子82を集磁するための磁力源36が設けられている。磁力源36は、たとえば、永久磁石である。磁力源36は電磁石でもよい。図4の構成例では、処理ポート35は4つ設けられている。また、液相80aを吸引して洗浄液を供給するための洗浄部37が、4つの処理ポート35毎に合計4つ設けられている。分離部31は、免疫複合体84が形成された磁性粒子82を集磁した状態で、洗浄部37により反応容器内の液相を吸引して洗浄液を供給する。これにより、液相に含まれる不要な成分を免疫複合体84と磁性粒子82との結合体から分離して除去できる。
【0062】
中継部33は、反応容器を保持できる保持孔を有する。中継部33において、移送部28と移送部29との間の反応容器の受け渡しが行われる。
【0063】
試薬分注部19dおよび試薬分注部19eは、並んで配置され、それぞれ試薬ノズル38を含む。試薬分注部19dおよび試薬分注部19eは、それぞれ、試薬ノズル38からR8試薬およびR9試薬を反応容器内に吐出する。
【0064】
階層間搬送部26は、反応容器を保持できる保持孔を有する。階層間搬送部26は、後述する昇降装置40によって、第1階層21aと第2階層21bとの間を昇降される。
【0065】
移送部27、28および29は、それぞれ、反応容器を保持して各部に搬送する機能を有する。移送部27、28および29は、いずれも、水平2軸および上下1軸の直交3軸への移動が可能な直交ロボット機構である。移送部27、28および29の構造は基本的に同様であり、公知の構成を採用することができる。
【0066】
移送部27〜29は、反応容器を把持するキャッチャ39を含む。移送部27〜29は、キャッチャ39により1つずつ反応容器を取り出して、可動範囲内の任意の位置に搬送できる。
【0067】
次に、図5を参照して、第2階層21bに設置された各部の構成について説明する。
【0068】
免疫測定装置100は、筐体21の第2階層21bにおいて、検出部13、昇降装置40、容器搬送部41、容器廃棄口42および制御部45を備える。
【0069】
容器搬送部41は、第2階層21bに下降された階層間搬送部26と、検出部13と、容器廃棄口42との間で第2反応容器17を搬送する。
【0070】
検出部13は、光電子増倍管などの光検出器13aを含む。検出部13は、各種処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光検出器13aで取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定する。
【0071】
制御部45は、CPU45aや記憶部45bなどを含む。CPU45aは、記憶部45bに記憶された制御プログラム45cを実行することにより、免疫測定装置100の制御部として機能する。制御部45は、上述した免疫測定装置100の各部の動作を制御する。
【0072】
(免疫測定の概要)
図4および図5に示した構成例では、図6に示すように、R1試薬〜R9試薬を用いて免疫測定が行われる。ここでは、免疫測定の一例として、被検物質81がB型肝炎表面抗原(HBsAg)である例について説明する。
【0073】
まず、第1反応容器16に被検物質81を含む検体とR1試薬とが分注される。R1試薬は、アルカリ性物質を含有し、検体をアルカリ変性させる試薬である。R1試薬は、予め抗体が結合した状態で検体中に存在する抗原を、抗体から遊離させる。次に、第1反応容器16にR2試薬が分注される。R2試薬は、酸性物質を含み、R1試薬分注後の検体のアルカリを中和する中和試薬である。R1試薬およびR2試薬は、予め抗体が結合した状態で検体中に存在する抗原を、抗体から遊離させる前処理として分注される。被検物質81によっては、R1試薬およびR2試薬を分注する必要はない。
【0074】
次に、第1反応容器16にR3試薬が分注される。R3試薬は、標識物質83を含有し、被検物質81と反応して結合する。図6の例では、標識物質は、ALP(アルカリホスファターゼ)標識抗体である。
【0075】
次に、第1反応容器16にR4試薬が分注される。R4試薬は、捕捉物質86を含有し、被検物質81と反応して結合する。捕捉物質86は、捕捉物質86が第1磁性粒子82aと結合するための第1結合物質86aと、捕捉物質86が第2磁性粒子82bと結合するための第2結合物質86bとを含む。第1結合物質86aと第2結合物質86bとは、互いに異なる結合能によって、磁性粒子と結合する物質である。
【0076】
これらの結合物質と磁性粒子との結合には、たとえばビオチンとアビジン類、ハプテンと抗ハプテン抗体、ニッケルとヒスタチジンタグ、グルタチオンとグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどの組み合わせが利用できる。なお、「アビジン類」とは、アビジンおよびストレプトアビジンを含むことを意味する。
【0077】
本実施形態では、捕捉物質86は、DNP(ジニトロフェニル基)とビオチンとで修飾された抗体(DNP/biotin抗体)である。すなわち、捕捉物質86には、第1結合物質86aとしてDNP(ジニトロフェニル基)が修飾され、第2結合物質86bとしてビオチンが修飾されている。
【0078】
次に、第1反応容器16にR5試薬が分注される。R5試薬は、磁性粒子82として、第1磁性粒子82aを含有する。第1磁性粒子82aは、抗DNP抗体を固定した磁性粒子(抗DNP抗体化磁性粒子)である。抗ハプテンである抗DNP抗体化磁性粒子の抗DNP抗体は、ハプテンである捕捉物質86のDNPと反応して結合する。この結果、第1磁性粒子82a上に、被検物質81と、標識物質83と、捕捉物質86とを含む免疫複合体84が形成される。
【0079】
第1磁性粒子82a上に形成された免疫複合体84と、未反応の標識物質83とは、1次BF分離処理によって分離される。1次BF分離処理によって、未反応の標識物質83などの不要成分が、第1反応容器16中から除去される。1次BF分離処理は、分離部31(図4参照)により行われる。
【0080】
1次BF分離処理の次に、第1反応容器16にR6試薬が分注される。R6試薬は、遊離試薬85である。図6の例では、遊離試薬85としてDNP−Lys(DNP−Lysine)を用いる。DNP−Lysは、第1磁性粒子82aである抗DNP抗体化磁性粒子と反応し結合する。そのため、第1反応容器16にR6試薬が分注されると、捕捉物質86のDNPと第1磁性粒子82aとの結合と、遊離試薬85(DNP−Lys)と第1磁性粒子82aとの結合とが競合し、第1磁性粒子82aから免疫複合体84が解離する。
【0081】
R6試薬によって遊離した免疫複合体84を含む液相80aは、分注部12(図4参照)によって第1反応容器16から吸引され、第2反応容器17に分注される。検体分注部18が分注部12として機能する場合、検体分注部18が液相80aの吸引および分注を行う。これにより、第1磁性粒子82aから遊離した免疫複合体84を含む液相80aが第1反応容器16から第2反応容器17に移し替えられる。免疫複合体84を含む液相80aが吸引された後の第1反応容器16には、第1磁性粒子82aが残留する。この結果、第1磁性粒子82aに非特異的に結合した標識物質83が、免疫複合体84から分離される。
【0082】
免疫複合体84が分注された第2反応容器17には、次にR7試薬が分注される。R7試薬は、磁性粒子82として、第2磁性粒子82bを含有する。第2磁性粒子82bは、捕捉物質86の第2結合物質86bと結合する。第2磁性粒子82bは、ビオチンと結合するストレプトアビジンを固定した磁性粒子(StAvi結合磁性粒子)である。StAvi結合磁性粒子のストレプトアビジンは、第2結合物質86bであるビオチンと反応して結合する。この結果、被検物質81と、標識物質83と、捕捉物質86とを含む免疫複合体84が第2磁性粒子82bと結合する。
【0083】
第2磁性粒子82bと結合した免疫複合体84と、免疫複合体84が形成された第2磁性粒子82b以外の不要成分とは、2次BF分離処理によって分離され、不要成分が第2反応容器17中から除去される。不要成分は、たとえば、液相80a中に含まれていた遊離試薬85や、被検物質81と結合せずに、免疫複合体84とともに液相80a中に含まれていた標識物質83などである。2次BF分離処理は、分離部31(図4参照)により行われる。
【0084】
その後、第2反応容器17にR8試薬およびR9試薬が分注される。R8試薬は、緩衝液を含有する。第2磁性粒子82bと結合した免疫複合体84が緩衝液中に分散される。R9試薬は、化学発光基質を含有する。R8試薬に含有される緩衝液は、免疫複合体84に含まれる標識物質83の標識(酵素)と基質との反応を促進する組成を有する。標識に対して基質を反応させることによって光が発生し、発生する光の強度が検出部13(図5参照)により測定される。
【0085】
[移送部の構造]
次に、図7図12を参照して、移送部11の構造例について説明する。
【0086】
図7の構造例では、移送部11は、反応容器を保持するための保持部材53と、駆動部54およびガイド部55とを備える。駆動部54は、たとえば、パルスモータにより構成される。駆動部54は、サーボモータであってもよい。駆動部54の出力軸と保持部材53とは、ベルト-プーリ機構などの伝達機構56によって接続される。伝達機構56は、たとえばラックアンドピニオン機構であってもよい。ガイド部55は、たとえば図4のY方向に沿って、直線状に延びるガイドレールにより構成される。ガイド部55は、直線状でなくても良く、保持部材53の移動経路に合わせて形成されればよい。保持部材53は、ガイド部55に沿って移動可能な状態でガイド部55に係合している。駆動部54を駆動させることにより、保持部材53がガイド部55に沿ってY方向に直線移動する。第1位置61と、第2位置62と、反応容器供給位置63と、検体分注位置64と、試薬分注位置65とは、Y方向の直線経路上に配置されている。移送部11は、保持部材53を移動させ、これらの第1位置61と、第2位置62と、反応容器供給位置63と、検体分注位置64と、試薬分注位置65とに第1反応容器16および第2反応容器17を配置させることができる。
【0087】
移送部11のY方向の端部には、原点センサ57aが設けられている。原点センサ57aの検出位置である原点位置からのパルス数に基づき、保持部材53の位置が制御される。また、移送部11の所定位置には、容器センサ57bが設けられている。容器センサ57bは、たとえば透過型の光センサである。容器センサ57bの検出信号に基づき、保持部材53に反応容器がセットされているか否かが判別される。移送部11の動作制御や反応容器がセットされているか否かの判別は、制御部45により行われる。
【0088】
図8図12は、保持部材53の構造例を示す。
【0089】
図8図10に示すように、移送部11は、第1反応容器16を保持する第1保持部51を含む。磁力源15は、たとえば、第1保持部51の側方または下方に設置される。これにより、磁性粒子82を第1反応容器16の内側面または底面に沿って集磁できる。そのため、分注部12による液相80aの吸引の際に、集磁された磁性粒子82に分注部12の吸引管または分注チップ23aが干渉し難くなるので、液相80aとともに磁性粒子82の一部が吸引されることを抑制できる。図8図10の構成例では、第1保持部51は、保持部材53に形成された設置孔である。また、磁力源15は、第1保持部51の側方に配置されている。磁力源15は、第1保持部51の下方に設置されてもよい。
【0090】
図8図10の構成例では、磁力源15は、第1保持部51の側方に設置された永久磁石58を含む。磁性粒子82に効率的に磁力を作用させるには、永久磁石58を第1保持部51に設置される第1反応容器16の近傍の位置に設置するのが好ましい。すなわち、第1保持部51に設置された第1反応容器16に対して僅かに離間する位置か、または接触する位置に永久磁石58が配置される。
【0091】
永久磁石58の形状や向きに制限はない。たとえば、永久磁石58は、着磁面58a(図11参照)が第1保持部51側を向き、かつ、第1保持部51に設置される第1反応容器16の長手方向に沿って延びる構成が採用できる。図8図10の構成例では、第1保持部51に設置される第1反応容器16の長手方向は、上下方向(Z方向)に一致する。永久磁石58は、直方体形状を有し、永久磁石58の長手方向と第1反応容器16の長手方向とが一致する。
【0092】
これにより、第1保持部51に設置される第1反応容器16に着磁面58aを近づけることができるので、より強い磁力を液相80a中の磁性粒子82に作用させることができる。具体的には、水平面内(図11参照)で見ると、着磁面58aから第1反応容器16の円筒形状の内側面までの距離が連続的に変化するため、距離が最小となる位置90で最も強い磁力が作用し、位置90から外れるほど作用する磁力が弱くなる。一方、第1反応容器16の長手方向に沿う断面(図12参照)で見ると、距離が最小となる位置90が第1反応容器16の内側面に沿って延びることになる。つまり、第1反応容器16の長手方向に沿ったより広い範囲で、強い磁力を作用させることができる。そのため、永久磁石58が第1反応容器16の長手方向(Z方向)に延びることによって、より強い磁力を液相80a中の磁性粒子82に作用させることができる。これらの結果、より効率的な集磁が可能となる。
【0093】
永久磁石58は、複数設けられてもよい。図11の構成例では、永久磁石58は、一対設けられている。一対の永久磁石58は、異なる極性を有する着磁面58aがそれぞれ第1保持部51側を向き、かつ、第1反応容器16の長手方向と直交する方向に並んで配置されている。つまり、一方の永久磁石58の第1保持部51側の着磁面58aがN極で、他方の永久磁石58の第1保持部51側の着磁面58aがS極となる。そして、一対の永久磁石58が第1反応容器16の長手方向と直交する横方向に並んでいる。言い換えると、一対の永久磁石58同士の接触面58bが、長手方向(図10参照)に沿って延びている。これにより、隣接する一対の永久磁石58の着磁面58aの間の位置に、最も強い磁力を発生させることができる。したがって、一対の永久磁石58同士の接触面58bと同じ平面内に第1反応容器16の長手方向の中心軸が位置するように永久磁石58を配置すれば、第1反応容器16と着磁面58aとの距離が最小となる位置90においてより強い磁力を作用させることができる。その結果、より一層効率的に磁性粒子82を集磁できるようになる。
【0094】
移送部11は、複数の反応容器を保持可能であってもよい。この場合、移送部11は、第1反応容器16と第2反応容器17とを同時に保持できるようになる。図8図10の構成例では、移送部11は、反応容器を保持する第2保持部52をさらに含む。第2保持部52は、第1保持部51とともに保持部材53に形成されている。第2保持部52は、反応容器を上方および側方から挿入可能な切り欠き状に形成されている。磁力源15は、第1保持部14に設けられていればよく、第2保持部52に設けられている必要はない。
【0095】
移送部11が第1保持部51と第2保持部52とを備える場合、分注部12(図12参照)は、磁性粒子82から遊離した免疫複合体84を含む液相80aを、第1保持部51に設置された第1反応容器16から吸引し、吸引した液相80aを第2保持部52に設置された第2反応容器17に分注する。これにより、第1反応容器16からの液相80aの吸引と、吸引した液相80aの第2反応容器17への分注とを行う際に、移送部11側で第1反応容器16と第2反応容器17とを入れ替える必要がなく、各反応容器に対する液相80aの吸引と分注とがまとめて行える。そのため、検体処理に要する時間をより短縮できる。
【0096】
移送部11は、複数の第2保持部52を含んでもよい。図8図10の構成例では、移送部11は、2つの第2保持部52を含む。この場合、試薬分注部19a(図4参照)は、一の第2保持部52に設置された第1反応容器16に試薬を分注し、分注部12は、他の第2保持部52に設置された第2反応容器17に磁性粒子82から遊離した免疫複合体84を含む液相80aを分注する。
【0097】
このように構成すれば、分注部12による液相80aの吸引および分注のために第1保持部51と1つの第2保持部52とを利用している間でも、他の第2保持部52に他の第1反応容器16を保持させて試薬分注位置65に移送することにより、並行して試薬分注を行える。そのため、複数の検体の処理を連続的に行う場合に、分注部12による液相80aの吸引および分注の合間で他の第1反応容器16の移送を行うことができる。その結果、分注部12による液相80aの吸引および分注のために他の第1反応容器16の移送を中断する必要がなくなるので、検体処理に要する時間をより短縮することができる。
【0098】
(磁力源の他の構成例)
図13に示すように、磁力源15の一対の永久磁石58は、異なる極性を有する着磁面58aがそれぞれ第1保持部51側を向き、かつ、第1反応容器16の長手方向に沿って並んで配置されていてもよい。つまり、一対の永久磁石58が第1反応容器16の長手方向に沿って上下に積層されている。この場合、水平面内(図11参照)でも、第1反応容器16の長手方向に沿う断面(図13参照)でも、最も強い磁力が作用する領域が位置90の略点状の局所領域になる。そのため、集磁効率の点では、図8図12に示した構成例の方が好ましい。
【0099】
この他、図示しないが、磁力源15を第1保持部51の下方側に配置してもよい。この場合、磁性粒子82が第1反応容器16の底部に集められるため、第1反応容器16の底部まで液相80aを吸引することが難しくなる。そのため、液相80aを極力少量にして被検物質81の希釈化を低減するためには、図8図12に示した構成例のように磁力源15を第1保持部51の側方側に配置して磁性粒子82を第1反応容器16の内側面に集めると、少量の液相80aでも第1反応容器16の底部まで液相80aを吸引することができるので好ましい。
【0100】
(免疫測定処理動作の説明)
次に、図4および図5に示した免疫測定装置100の測定処理動作を、図14を用いて説明する。以下の説明では、測定処理動作の各ステップについて図14を参照し、免疫測定装置100の各部について図4および図5を参照するものとする。免疫測定装置100の測定処理の動作制御は、制御部45により行われる。
【0101】
ステップS1において、第1反応容器16にR1試薬が分注される。具体的には、容器供給部24から移送部11の第2保持部52に第1反応容器16が供給される。移送部11が試薬分注位置65に第1反応容器16を移送し、試薬分注部19aが移送部11に保持された第1反応容器16にR1試薬を分注する。
【0102】
ステップS2において、第1反応容器16に検体が分注される。具体的には、検体分注部18が、チップ供給部23により供給された分注チップ23aを装着し、試験管22aから検体を吸引する。検体分注部18は、検体分注位置64で、吸引した検体を移送部11に保持された第1反応容器16に分注する。分注後、分注チップ23aは図示しない廃棄口に廃棄される。検体分注部18は、分注チップ23aの装着、検体の吸引、検体の分注および分注チップ23aの廃棄を単位シーケンスとする検体分注動作を、2回繰り返す。これにより、分注チップ23aによって分注可能な単位量の2倍の量の検体が、第1反応容器16に分注される。
【0103】
検体の分注後、移送部11が、第1位置61に第1反応容器16を移送する。移送部27が第1反応容器16を第2保持部52から取り出して反応部20aに設置する。第1反応容器16は、反応部20aで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0104】
ステップS3において、第1反応容器16にR2試薬が分注される。具体的には、移送部27が第1反応容器16を反応部20aから取り出して移送部11に設置する。移送部11が試薬分注位置65に第1反応容器16を移送し、試薬分注部19aが移送部11に保持された第1反応容器16にR2試薬を分注する。R2試薬の分注後、移送部27が第1位置61で第1反応容器16を第2保持部52から取り出して反応部20aに設置する。第1反応容器16は、反応部20aで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0105】
ステップS4において、第1反応容器16にR3試薬が分注される。具体的には、移送部27が第1反応容器16を反応部20aから取り出して分注ポート32aに設置する。移送部28が第1反応容器16を分注ポート32aから分注ポート32bに移送する。試薬分注部19cが、分注ポート32bに設置された第1反応容器16にR3試薬を分注する。R3試薬の分注後、移送部28が第1反応容器16を分注ポート32bから反応部20bに移送する。第1反応容器16は、反応部20bで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0106】
ステップS5において、第1反応容器16にR4試薬が分注される。具体的には、移送部28が第1反応容器16を反応部20bから分注ポート32bに移送する。試薬分注部19cが、分注ポート32bに設置された第1反応容器16にR4試薬を分注する。R4試薬の分注後、移送部28が第1反応容器16を分注ポート32bから反応部20bに移送する。第1反応容器16は、反応部20bで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0107】
ステップS6において、第1反応容器16にR5試薬が分注される。具体的には、移送部28が第1反応容器16を反応部20bから分注ポート32aに移送する。試薬分注部19bが、分注ポート32aに設置された第1反応容器16にR5試薬を分注する。R5試薬の分注後、移送部28が第1反応容器16を分注ポート32aから反応部20bに移送する。第1反応容器16は、反応部20bで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0108】
ステップS7において、分離部31により、1次BF分離処理が行われる。具体的には、移送部28が第1反応容器16を反応部20bから取り出して分離部31の処理ポート35に設置する。分離部31は、第1反応容器16中の試料に対して1次BF分離処理を行い、液相を除去して洗浄液により固相を洗浄する。
【0109】
ステップS8において、第1反応容器16にR6試薬が分注される。具体的には、移送部28が、第1反応容器16を分離部31から分注ポート32aに移送する。試薬分注部19bが、分注ポート32aに設置された第1反応容器16にR6試薬を分注する。R6試薬の分注後、移送部27が第1反応容器16を分注ポート32aから反応部20aに移送する。第1反応容器16は、反応部20aで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0110】
ステップS9において、第1反応容器16から免疫複合体84を含む液相80aが吸引される。具体的には、移送部11の第2保持部52に空の第2反応容器17が供給され、移送部27により第1反応容器16が移送部11の第1保持部51に設置される。このとき、磁力源15によって、第1反応容器16内の磁性粒子が集磁される。そして、検体分注部18が移送部11の第1保持部51に保持された第1反応容器16から液相80aを吸引する。吸引後、検体分注部18が移送部11に保持された第2反応容器17に液相80aを分注する。その後、第1反応容器16は廃棄される。第2反応容器17は、移送部27により反応部20aに設置される。第2反応容器17は、反応部20aで所定時間の間、所定温度で保持される。ステップS9の液相80aの吸引および分注処理の詳細については、後述する。
【0111】
ステップS10において、第2反応容器17にR7試薬が分注される。具体的には、移送部27が第2反応容器17を反応部20aから分注ポート32aに移送する。試薬分注部19bが、分注ポート32aに設置された第2反応容器17にR7試薬を分注する。R7試薬の分注後、移送部28が分注ポート32aから中継部33に第2反応容器17を移送する。移送部29が中継部33から反応部20cに第2反応容器17を移送する。第2反応容器17は、反応部20cで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0112】
ステップS11において、分離部31により、2次BF分離処理が行われる。具体的には、移送部29が反応部20cから中継部33に第2反応容器17を移送し、移送部28が中継部33から分離部31に第2反応容器17を移送する。2次BF分離処理の内容はステップS7の1次BF分離処理と同様である。
【0113】
ステップS12において、第2反応容器17にR8試薬が分注される。具体的には、移送部28が分注ポート32aから中継部33に第2反応容器17を移送する。移送部29が中継部33から試薬分注部19dに第2反応容器17を移送する。試薬分注部19dが第2反応容器17にR8試薬を分注する。
【0114】
ステップS13において、第2反応容器17にR9試薬が分注される。具体的には、移送部29が試薬分注部19dから試薬分注部19eに第2反応容器17を移送する。試薬分注部19eが第2反応容器17にR9試薬を分注する。R9試薬の分注後、移送部29が反応部20cに第2反応容器17を移送する。第2反応容器17は、反応部20cで所定時間の間、所定温度で保持される。
【0115】
ステップS14において、免疫複合体84の測定処理が行われる。具体的には、移送部29が反応部20cから階層間搬送部26に第2反応容器17を移送する。階層間搬送部26が第1階層21aから第2階層21bに第2反応容器17を移送する。容器搬送部41が、階層間搬送部26から検出部13に第2反応容器17を移送する。検出部13は、標識に対して基質を反応させることによって生じる光の強度を測定する。検出部13の測定結果は、図示しない制御装置に出力される。
【0116】
検出終了後は、容器搬送部41が、測定済みの第2反応容器17を検出部13から容器廃棄口42に搬送して、測定済みの第2反応容器17を廃棄する。
【0117】
以上により、免疫測定装置100の測定処理動作が行われる。
【0118】
(複合体を含む液相の吸引および分注処理)
次に、図14のステップS9に示した免疫複合体84を含む液相80aの吸引および分注処理の詳細を、図15を用いて説明する。以下の説明では、液相80aの吸引および分注処理の各ステップについて図15を参照し、免疫測定装置100の各部について図4を参照するものとする。液相80aの吸引および分注処理の動作制御は、制御部45により行われる。
【0119】
図15のステップS21において、移送部11は、第2保持部52を反応容器供給位置63に位置付け、容器供給部24から空の第2反応容器17を第2保持部52に受け入れる。
【0120】
ステップS22において、移送部11は、第1位置61に移動し、移送部27が第1反応容器16を反応部20aから取り出して移送部11の第1保持部51に設置する。第1反応容器16が第1保持部51に設置されると、磁力源15による第1反応容器16内の磁性粒子82の集磁が開始する。なお、ステップS21とステップS22とは実行される順序が逆であってもよい。
【0121】
ステップS23において、移送部11が、第1保持部51を検体分注位置64(=第2位置62)に位置付ける。第1位置61から検体分注位置64に第1保持部51を移動させる間にも磁力源15による集磁が進み、検体分注位置64に到達する時点で磁性粒子82の集磁が完了する。
【0122】
ステップS24において、検体分注部18が、チップ供給部23から新たな分注チップ23aを装着し、検体分注位置64(=第2位置62)で移送部11に保持された第1反応容器16から所定量の液相80aを吸引する。
【0123】
ステップS25において、移送部11が、ステップS21で取得した空の第2反応容器17を保持する第2保持部52を検体分注位置64に位置付ける。
【0124】
ステップS26において、検体分注部18が、検体分注位置64で、吸引した所定量の液相80aを、移送部11に保持された第2反応容器17に分注する。液相80aの分注後、検体分注部18は、使用済みの分注チップ23aを図示しない廃棄口に廃棄する。
【0125】
ステップS27において、制御部45により、所定量の液相80aが分注されたか否かが判断される。具体的には、分注チップ23aを用いた所定量の液相80aの分注を、所定回数行ったか否かが判断される。所定回数は、たとえば2回であり、測定に必要な量の液相80aが第2反応容器17に分注される回数であれば何回でもよい。分注回数が所定回数に満たない場合、制御部45は、処理をステップS23に戻し、ステップS23〜S26までの処理が繰り返される。すなわち、検体分注部18は、新たな分注チップ23aの装着、液相80aの吸引、液相80aの分注および使用済み分注チップ23aの廃棄を単位シーケンスとする動作を、所定回数繰り返す。
【0126】
なお、第2保持部52が複数設けられている場合、液相80aが分注される第2反応容器17を保持する第2保持部52以外には、他の検体の測定に供される他の第1反応容器16を設置することが可能である。この場合には、ステップS23〜S27が繰り返される間に、移送部11は、他の第1反応容器16を、試薬分注位置65や第1位置61に移送する。
【0127】
ステップS28において、移送部11は、吸引済みの第1反応容器16と、液相80aが分注された第2反応容器17とを、第1位置61に移送する。ステップS29において、移送部27が反応部20aに第2反応容器17を移送する。
【0128】
一方、ステップS30において、第1反応容器16が廃棄される。具体的には、移送部27が第1反応容器16を第1保持部51から分注ポート32aに移送し、移送部28が第1反応容器16を分注ポート32aから中継部33に移送する。移送部29が第1反応容器16を中継部33から階層間搬送部26に移送し、容器搬送部41が第1反応容器16を階層間搬送部26から容器廃棄口42に搬送して廃棄する。
【0129】
免疫複合体84を含む液相80aの吸引および分注処理が完了すると、処理が図14のステップS10に進む。
【0130】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0131】
10:処理機構部、11:移送部、12:分注部、13:検出部、14:第1保持部、15:磁力源、16:第1反応容器、17:第2反応容器、18:検体分注部、19a:試薬分注部、20a:反応部、23a:分注チップ、51:第1保持部、52:第2保持部、58:永久磁石、58a:着磁面、61:第1位置、62:第2位置、64:検体分注位置、80a:液相、81:被検物質、82:磁性粒子、83:標識物質、84:免疫複合体、85:遊離試薬、100:免疫測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15