【解決手段】血液分析装置1は、試料調製部5と、検出部63,64と、出力部310と、解析部3とを備える。試料調製部5は、赤血球を収縮させる希釈液、核酸を染色する染色色素及び血液試料から測定試料を調製する。検出部63,64は、試料調製部によって調製された測定試料に対して光を照射して得られる蛍光強度及び散乱光強度を検出する。解析部3は、検出部によって検出された蛍光強度及び散乱光強度に基づいてリングフォームのマラリア原虫に感染した赤血球を含む集団を特定する。解析部3は、特定されたリングフォームのマラリア原虫に感染した赤血球を含む集団に属する粒子の散乱光強度分布に基づいて、熱帯熱マラリア原虫の感染に関する情報を出力部310に出力させる。
前記解析部は、前記蛍光強度及び前記散乱光強度に基づいてリングフォームのマラリア原虫が1つ入った赤血球を含む集団を特定し、特定された前記リングフォームのマラリア原虫が1つ入った赤血球を含む集団に属する粒子の散乱光強度分布に基づいて、熱帯熱マラリア原虫の感染に関する情報を前記出力部に出力させる、
請求項1に記載の血液分析装置。
前記リングフォームのマラリア原虫に感染した赤血球を含む集団は、前記散乱光強度が白血球を含む集団である第1粒子群より小さく、前記蛍光強度が前記第1粒子群より小さく且つマラリア原虫に感染していない赤血球を含む集団である第2粒子群より大きい第3粒子群である、
請求項1又は2に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記第3粒子群に属する粒子の散乱光強度の代表値に基づいて、前記熱帯熱マラリア原虫の感染に関する情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項3に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記第3粒子群に属する粒子の散乱光強度の最頻値に基づいて、前記熱帯熱マラリア原虫の感染に関する情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項4に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記代表値が所定値未満の場合に、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性があることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項4又は5に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記代表値が前記所定値以上の場合に、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫以外のマラリア原虫に感染している可能性があることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項6に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記代表値が前記所定値未満の場合に、前記散乱光強度が前記第3粒子群と同程度であり、且つ、前記蛍光強度が前記第3粒子群より大きい第4粒子群を特定し、前記第4粒子群に属する粒子数が第2所定値以上のときに、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項6又は7に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記第4粒子群に属する粒子数が前記第2所定値未満のときに、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項8に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記代表値が前記所定値以上の場合に、前記散乱光強度が前記第3粒子群より大きく、且つ、前記蛍光強度が前記第3粒子群より大きい第5粒子群を特定し、前記第5粒子群に属する粒子数が第3所定値以上のときに、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫以外のマラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項7に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記第5粒子群に属する粒子数が前記第3所定値未満のときに、前記血液試料が熱帯熱マラリア原虫以外のマラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項10に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記第5粒子群に属する粒子数が前記第3所定値以上のときに、トロフォゾイト又はシゾントが前記血液試料中に出現している可能性があることを示す情報を前記出力部にさらに出力させるように構成されている、
請求項10又は11に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記散乱光強度が前記第3粒子群より大きく、且つ、前記蛍光強度が前記第3粒子群と同程度である第6粒子群を特定し、前記第6粒子群に属する粒子数に基づいて、ガメトサイトが前記血液試料中に出現している可能性があることを示す情報を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項3乃至12の何れか1項に記載の血液分析装置。
前記解析部は、前記散乱光強度が前記第1粒子群より小さく、且つ、前記蛍光強度が前記第2粒子群より大きい第7粒子群を特定し、前記第7粒子群に属する粒子数を前記出力部に出力させるように構成されている、
請求項3乃至13の何れか1項に記載の血液分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態では、血液試料及び試薬から調整された測定試料に光を照射したときに発生する蛍光強度と前方散乱光強度に基づいて、マラリア感染赤血球を含む集団を特定し、赤血球に感染したマラリア原虫が熱帯熱マラリア原虫か否かを判定する血液分析装置について説明する。
【0011】
<血液分析装置の構成>
図1を参照し、血液分析装置の構成について説明する。血液分析装置1は、測定部2と、解析部3とを備える。測定部2は、血液試料を取り込み、血液試料から測定試料を調製し、測定試料を光学測定する。解析部3は、測定部2の測定により得られた測定データを処理し、血液試料の分析結果を出力する。
【0012】
測定部2は、吸引部4と、試料調製部5と、光学検出部6と、第2検出部7と、信号処理回路81と、マイクロコンピュータ82と、通信インターフェース83とを備える。
【0013】
吸引部4は、図示しない吸引管を有し、試験管に収容された血液試料を吸引管によって吸引する。
【0014】
試料調製部5は、反応槽54を有し、試薬容器51,52,53に接続されている。試薬容器52は、赤血球を収縮させる第1希釈液を収容する。試薬容器53は、核酸を染色する染色色素を含有する染色用試薬を収容する。試薬容器51は、第2希釈液を収容する。吸引部4は、吸引管を反応槽54の上方へ移動させ、吸引された血液試料を反応槽54に吐出する。血液試料と、第1希釈液と、染色用試薬とが反応槽54で混合され、測定試料が調製される。測定試料は、白血球及びマラリア感染赤血球の測定に用いられる。吸引部4によって吸引された血液試料と、第2希釈液とが反応槽54で混合され、第2測定試料が調製される。第2測定試料は、赤血球の測定に用いられる。
【0015】
試薬容器52に収容される第1希釈液について説明する。第1希釈液は、溶血力が異なる2種類の界面活性剤を含んでいる。具体的には、第1希釈液は、カチオン系界面活性剤である2.95mMのラウリルトリメチルアンモニウムクロライドと、カチオン系界面活性剤である1.11mMのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドとを含む。ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドの方がラウリルトリメチルアンモニウムクロライドよりも溶血力が強い。溶血力が異なる2種類の界面活性剤であれば、上記の組み合わせに限られない。また、第1希釈液は、ノニオン系界面活性剤である2.90mMのPBC−44と、20mMのADAと、適量のNaClと、1Lの精製水とをさらに含んでいる。ADAのpHは6.1である。また、第1希釈液のpHは5.0以上7.0以下である。血球を収縮させるために、第1希釈液の浸透圧が200mOsm/kg・H2O以上であることが好ましい。具体的には、第1希釈液の浸透圧は200mOsm/kg・H2O以上、300mOsm/kg・H2O以下である。
【0016】
第2希釈液は、赤血球を収縮させるための第1希釈液とは異なり、シースフローDC検出法による赤血球の測定用の希釈液である。また、第2希釈液は、フローサイトメトリー方式による血球の測定においてシース液としても利用される。第1希釈液は、シース液として利用されない。
【0017】
試薬容器53に収容される染色用試薬について説明する。染色用試薬は、染色色素(ヘキスト34580)を含む。染色用試薬における染色色素の濃度は0.3μM以上0.6μM以下であることが好ましく、具体的には、0.45μMである。また、測定試料における染色色素の濃度が0.15μM以上1.0μM以下であることが好ましい。ヘキスト34580の化学式を以下に示す。
【化1】
【0018】
なお、第1希釈液と染色用試薬とを分けずに、赤血球を収縮させる第1希釈液と染色色素とを含有する1つの試薬を、血液試料と混合して測定試料を調製してもよい。
【0019】
光学検出部6は、フローサイトメトリー法による白血球及びマラリア感染赤血球の測定に用いられる。光学検出部6は、フローセル61と、光源部62と、検出部63及び64とを備える。フローセル61は、試薬容器51に収容された第2希釈液及び試料調製部5により調製された測定試料が供給される。フローセル61は、測定試料を第2希釈液であるシース液で包んだ流れを形成する。
【0020】
光源部62は、半導体レーザ光源であり、波長405nmの青紫色レーザ光をフローセル61へ照射する。
【0021】
検出部63及び64は、フローセル61中の測定試料の流れに光が照射されたときに、測定試料から発せられる光を検出する。検出部63及び64には、アバランシェフォトダイオードを採用できる。以下の説明では、光源部62とフローセル61とを結ぶ方向を「X方向」といい、X方向に対して直交する方向をY方向という。検出部63は、フローセル61からY方向側に配置されたミラーを介して、測定試料から発せられる蛍光を検出できる。また、検出部64は、フローセル61からX方向側に配置される。さらに具体的には、検出部64は、フローセル61を挟んで光源部62の反対側に配置される。検出部63は、検出部64は、測定試料から発せられる前方散乱光を検出できる。
【0022】
なお、前方散乱光に代えて、側方散乱光、後方散乱光など、他の散乱光を検出するようにしてもよい。
【0023】
検出部63及び64のそれぞれは、受光強度を示すアナログ信号を出力する。以下、検出部63から出力されるアナログ信号を「蛍光信号」といい、検出部64から出力されるアナログ信号を「前方散乱光信号」という。
【0024】
第2検出部7は、シースフローDC検出法による赤血球の測定に用いられる。第2検出部7には、試料調製部5から第2測定試料が供給される。第2検出部7は、図示しないシースフローセルを備え、シースフローセルを流れる第2測定試料に電圧を印加する。血球がシースフローセルを通過すると、血球の電気抵抗によって電圧が変化する。第2検出部7は、電圧の変化を捉えて電気抵抗を検出し、これによって血球を検出する。第2検出部7は、電圧を示すアナログ信号を出力する。
【0025】
信号処理回路81は、検出部63及び64、並びに第2検出部7が出力するアナログ信号に対して信号処理を行う。信号処理回路81は、蛍光信号及び前方散乱光信号に含まれるパルスのピーク値を特徴パラメータとして抽出する。以下、蛍光信号のピーク値を「蛍光強度」といい、前方散乱光信号のピーク値を「前方散乱光強度」という。信号処理回路81は、第2検出部7の出力信号のピーク値を、赤血球の検出データとして抽出する。
【0026】
マイクロコンピュータ82は、吸引部4、試料調製部5、光学検出部6、第2検出部7、信号処理回路81、および通信インターフェース83を制御する。
【0027】
通信インターフェース83は、通信ケーブルによって解析部3に接続される。測定部2は、通信インターフェース83によって、解析部3とデータ通信を行う。通信インターフェース83は、血液試料の測定が行われると、各特徴パラメータを含む測定データを解析部3へ送信する。
【0028】
図2を参照し、解析部3の構成について説明する。解析部3は、本体300と、入力部309と、出力部310とを備えている。本体300は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、ハードディスク304と、読出装置305と、入出力インターフェース306と、画像出力インターフェース307と、通信インターフェース308とを有する。本実施の形態においては、出力部310として画像を表示するディスプレイを用いている。しかしながら、出力部310としては、印刷により紙等に出力するプリンタを用いてもよい。
【0029】
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302およびハードディスク304に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。RAM303は、コンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。
【0030】
ハードディスク304には、測定部2から与えられた測定データを解析し、分析結果を出力するためのコンピュータプログラム320がインストールされている。
【0031】
読出装置305は、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等であり、可搬型記録媒体321に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体321には、コンピュータを解析部3として機能させるためのコンピュータプログラム320が格納されている。可搬型記録媒体321から読み出されたコンピュータプログラム320は、ハードディスク304にインストールされる。
【0032】
入力部309は、入出力インターフェース306に接続される。出力部310は、画像出力インターフェース307に接続される。通信インターフェース308は、測定部2の通信インターフェース83に接続される。
【0033】
<血液分析装置の動作>
図3を参照し、血液分析装置1の動作について説明する。
【0034】
まず、解析部3のCPU301が、ユーザからの測定実行の指示を、入力部309を介して受け付ける(ステップS101)。測定実行の指示を受け付けると、CPU301は、測定部2に測定開始を指示する指示データを送信し(ステップS102)、測定部2が指示データを受信する(ステップS103)。マイクロコンピュータ82は、測定試料調製処理を実行し(ステップS104)、第1測定処理を実行し(ステップS105)、第2測定処理を実行する(ステップS106)。
【0035】
図4を参照して、測定試料調製処理について説明する。マイクロコンピュータ82が吸引部4を制御して、反応槽54に所定量、例えば17μLの血液試料を供給する(ステップS201)。次に、マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、試薬容器52から反応槽54に所定量、例えば1mLの第1希釈液を供給し、試薬容器53から反応槽54に所定量、例えば20μLの染色用試薬を供給する(ステップS202)。
【0036】
反応槽54は、ヒータによって所定温度になるように加温されている。加温された状態で、反応槽54内の混合物の撹拌が行われる(ステップS203)。ステップS201〜S203の動作により、反応槽54において測定試料が調製される。マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、測定試料を反応槽54から光学検出部6へ導出する(ステップS204)。
【0037】
マイクロコンピュータ82が吸引部4を制御して、試験管から血液試料を所定量吸引させ、反応槽54に所定量、例えば4μLの血液試料を供給する(ステップS205)。次に、マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、試薬容器51から反応槽54に所定量、例えば2000μLの第2希釈液を供給する(ステップS206)。
【0038】
次に、試料調製部5が反応槽54内の混合物を撹拌する(ステップS207)。ステップS205〜S207の動作により、反応槽54において第2測定試料が調製される。マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、第2測定試料を反応槽54から第2検出部7へ導出する(ステップS208)。
【0039】
ステップS208の処理が終了すると、マイクロコンピュータ82は、メインルーチンへ処理をリターンする。
【0040】
再び
図3を参照する。第1測定処理では、光学検出部6による測定試料の測定が行われる。試料調製部5がシース液と共に測定試料をフローセル61に供給する。光源部62がフローセル61中の測定試料の流れに光を照射する。
【0041】
測定試料がフローセル61を流れると、白血球、血小板凝集、及び赤血球がフローセル61を順次通過する。ここで、「血小板凝集」とは、2つ以上の血小板が凝集したものである。赤血球にマラリア感染赤血球が含まれている場合、マラリア感染赤血球の内部には、マラリア原虫が入っている。第1希釈液の作用により、測定試料中の赤血球は縮小している。マラリア感染赤血球は、内部にマラリア原虫を保持したまま、第1希釈液によって縮小される。また、マラリア原虫には核が存在するため、染色用試薬によって染色される。白血球も核を有するため、染色試薬によって染色される。マラリア原虫に感染していない赤血球(以下、「正常赤血球」という)及び血小板凝集には核が存在しないため、染色用試薬によってはほとんど染色されない。
【0042】
血球に光が照射される都度、血球(白血球、血小板凝集、赤血球)からは蛍光及び前方散乱光が発せられる。血球から発せられた蛍光は検出部63によって検出される。血球から発せられた前方散乱光は検出部64によって検出される。
【0043】
検出部63及び64のそれぞれは、受光レベルに応じた電気信号を、蛍光信号及び前方散乱光信号として出力する。信号処理回路81は、蛍光信号から蛍光強度を抽出し、前方散乱光信号から前方散乱光強度を抽出する。
【0044】
第2測定処理では、第2検出部7による第2測定試料の測定が行われる。第2検出部7は、シースフローセルを流れる第2測定試料に電圧を印加し、電圧を示すアナログ信号を信号処理回路81へ出力する。赤血球がシースフローセルを通過する都度、その電気抵抗に応じて電圧が変化する。信号処理回路81は、信号処理により電気抵抗の変化を捉え、赤血球を検出する。これにより、信号処理回路81は、第2検出部7の出力信号を赤血球の検出データに変換する。
【0045】
第2測定処理の後、マイクロコンピュータ82は、各特徴パラメータを含む測定データを解析部3へ送信し(ステップS107)、処理を終了する。
【0046】
解析部3は、測定データを受信する(ステップS108)。その後、CPU301は、測定データ解析処理を実行し、血液試料の分析結果を生成して、分析結果をハードディスク304に格納する(ステップS109)。
【0047】
図5を参照し、測定データ解析処理について説明する。測定データ解析処理を開始すると、まずCPU301は、測定データに含まれる赤血球の検出データを用いて、赤血球を計数する(ステップS301)。
【0048】
シースフローDC検出法に代えて、測定データに含まれる前方散乱光強度を用いて赤血球を計数することもできる。赤血球は、第1希釈液によって縮小される。前方散乱光強度は、血球の大きさを反映した特徴パラメータであり、縮小された赤血球の前方散乱光強度は特定の範囲の値を取る。したがって、赤血球が出現する特定範囲内の前方散乱光強度を有する粒子を赤血球とし、赤血球を計数してもよい。前方散乱光強度に代えて、前方散乱光のパルス幅、パルス面積を用いて、赤血球を検出することもできる。前方散乱光に代えて、側方散乱光を検出し、側方散乱光のパルスのピーク値、パルス幅、またはパルス面積を用いて、赤血球を検出することもできる。
【0049】
次に、CPU301は、測定データに含まれる蛍光強度及び前方散乱光強度に基づいて、白血球、血小板凝集、正常赤血球、及びマラリア感染赤血球を分類し、それぞれを計数する(ステップS302)。なお、この処理では、解析対象の粒子から正常赤血球を除外するため、蛍光強度が所定の閾値以下の粒子を除外している。正常赤血球の多くは染色色素によって十分に染色されず、蛍光を発しないか、微弱な蛍光を発する。したがって、蛍光強度が所定の閾値以下の粒子を解析対象から除外することで、ほとんどの正常赤血球を除外することができる。ただし、網状赤血球などの若干の蛍光を発する正常赤血球は除外されない。ステップS302では、このように除外されなかった正常赤血球が、他の血球と区別して検出される。
【0050】
図6を参照して、白血球、血小板凝集、正常赤血球、及びマラリア感染赤血球の分類について説明する。
図6のスキャッタグラムにおいて、縦軸は前方散乱光強度を示し、横軸は蛍光強度を示す。
【0051】
白血球を含む集団は、前方散乱光強度及び蛍光強度が大きい領域401に概ね出現する。血小板凝集を含む集団は、前方散乱光強度が白血球を含む集団の領域401と同程度であり、且つ、蛍光強度が領域401よりも小さい領域402に概ね出現する。正常赤血球は第1希釈液によって強く縮小される。また、上述したように、蛍光強度が所定の閾値以下の正常赤血球は解析対象から除外されているが、除外されなかった正常赤血球も染色用試薬によって十分に染色されておらず、弱い蛍光しか発しない。このため、第1希釈液によって縮小された正常赤血球を含む集団は、前方散乱光強度が白血球を含む集団の領域401よりも小さく、且つ、蛍光強度が領域401よりも小さい領域403に正常赤血球として概ね出現する。
【0052】
マラリア感染赤血球は第1希釈液によって強く縮小され、また、核を有するマラリア原虫を内部に保持しているため染色用試薬によって染色される。このため、マラリア感染赤血球を含む集団は、前方散乱光強度が白血球を含む集団の領域401より小さく、且つ、蛍光強度が正常赤血球を含む集団の領域403より大きい領域404に概ね出現する。
【0053】
ステップS302の処理において、CPU301は、測定データにおける前方散乱光強度の粒度分布と、蛍光強度の粒度分布とを組み合わせて、白血球を含む集団、血小板凝集を含む集団、正常赤血球を含む集団、及びマラリア感染赤血球を含む集団を特定する。より具体的には、CPU301は、前方散乱光強度が白血球を含む集団である第1粒子群より小さく、蛍光強度が正常赤血球を含む集団である第2粒子群より大きい第7粒子群を特定する。この第7粒子群はマラリア感染赤血球を含む集団である。なお、ここで前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群より小さい粒子群とは、前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群より少なくとも一部において少ない粒子群をいう。また、前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群より大きい粒子群とは、前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群より少なくとも一部において大きい粒子群をいう。また、前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群と同程度の粒子群とは、前方散乱光強度又は蛍光強度が特定の粒子群と少なくとも一部において同程度の粒子群をいう。
【0054】
再び
図5を参照する。CPU301は、マラリア種判定処理を実行する(ステップS303)。
【0055】
図7を参照し、マラリア種判定処理について説明する。マラリア種判定処理は、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあるか、熱帯熱マラリア以外の種(以下、「その他の種」という)のマラリア原虫に感染している疑いがあるかを判定するための処理である。
【0056】
CPU301は、マラリア感染赤血球の数が所定値であるT1以上であるか否かを判定する(ステップS401)。ここでT1は、マラリア感染赤血球の数がT1未満であればノイズを考慮してマラリア感染赤血球が出現していないと判断できる数値である。マラリア感染赤血球の数がT1未満の場合(ステップS401においてNO)、血液試料がマラリア原虫に感染していないと判断できる。この場合、CPU301は、マラリア種判定処理を終了し、測定データ解析処理に戻す。
【0057】
マラリア感染赤血球の数がT1以上の場合(ステップS401においてYES)、血液試料がマラリア原虫に感染している可能性があると判断できる。この場合、CPU301は、ステップS402に処理を移す。
【0058】
マラリア原虫の形態の1つであるメロゾイトが赤血球に侵入することで、マラリア原虫の赤内型の生活環が始まる。赤内型の生活環では、マラリア原虫の形態がリングフォーム、トロフォゾイト、シゾントに順に変化する。シゾントは複数のメロゾイトに分裂し、その際に赤血球を破壊する。これにより、多数のメロゾイトが血中に放出される。メロゾイトは次の赤血球に侵入し、再び赤内型の生活環が始まる。このようなサイクルを繰り返し、マラリア原虫は増殖する。
【0059】
血中に放出されたメロゾイトの一部は、雌雄異体のガメトサイトに分化する。感染者が蚊に吸血されると、ガメトサイトが蚊の体内に侵入し、蚊がマラリア原虫を保有することになる。
【0060】
ステップS402において、CPU301は、血液試料に感染している可能性があるマラリア原虫の種に関するマラリア種判定フラグ、血液試料に感染している可能性があるマラリア原虫のステージに関するステージフラグのそれぞれに初期値の0をセットする。マラリア種判定フラグ、及びステージフラグは、RAM303の特定の領域に設けられている。
【0061】
マラリア種判定フラグに0がセットされている場合には、血液試料がマラリア原虫に感染している可能性が低いことを示す。マラリア種判定フラグに1がセットされている場合には、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあることを示す。マラリア種フラグに2がセットされている場合には、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す。なお、熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあるとは、熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性はあるが、高いとまではいえないことをいう。
【0062】
マラリア種判定フラグに3がセットされている場合には、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している疑いがあることを示す。マラリア種判定フラグに4がセットされている場合には、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す。
【0063】
ステージフラグに0がセットされている場合には、トロフォゾイト及びシゾント、並びにガメトサイトが出現している可能性が低いことを示す。ステージフラグに1がセットされている場合には、血液試料にトロフォゾイト又はシゾントが出現している可能性が高いことを示す。 ステージフラグに2がセットされている場合には、ガメトサイトが出現している可能性が高いことを示す。
【0064】
次に、CPU301は、シングルリングフォームを含む集団である第3粒子群、マルチリングフォームを含む集団である第4粒子群、トロフォゾイト又はシゾントを内部に含む赤血球(以下、「トロフォゾイト・シゾント」という)を含む集団である第5粒子群、ガメトサイトを含む集団である第6粒子群を特定し、各粒子群に属する粒子を計数する(ステップS403)。
【0065】
ステップS403の処理を具体的に説明する。
図8に、シングルリングフォームを含む集団とマルチリングフォームを含む集団とが出現したスキャッタグラムの例を示す。
図8に示すように、シングルリングフォームを含む集団は、前方散乱光強度が白血球を含む集団より小さく、蛍光強度が白血球を含む集団より小さい。また、シングルリングフォームを含む集団は、蛍光強度が正常赤血球を含む集団より大きい。つまり、シングルリングフォームを含む集団は、
図9における領域411に概ね出現する。CPU301は、このようなシングルリングフォームを含む集団を、第3粒子群として特定する。
【0066】
図8では、正常赤血球を含む集団が、シングルリングフォームを含む集団及びマルチリングフォームを含む集団の前方散乱光強度よりも大きい領域に出現している。これは、蛍光強度が所定の閾値以下の粒子を解析対象から除外したためである。蛍光強度が所定の閾値以下の粒子を解析対象から除外しない場合には、蛍光強度及び前方散乱光強度が低い領域にこれらの粒子(正常赤血球)が出現する。つまり、シングルリングフォームを含む集団及びマルチリングフォームを含む集団と前方散乱光強度が同程度であり、シングルリングフォームを含む集団よりも蛍光強度が小さい領域に正常赤血球が出現する。
【0067】
また、
図8に示すように、マルチリングフォームを含む集団は、前方散乱光強度がシングルリングフォームを含む集団と同程度であり、且つ、蛍光強度がシングルリングフォームを含む集団より大きい。つまり、マルチリングフォームを含む集団は、
図9における領域412に概ね出現する。CPU301は、このような粒子群を検出した場合、これを第4粒子群として特定する。
【0068】
図8に示すスキャッタグラムでは、トロフォゾイト・シゾントが出現していない。トロフォゾイト・シゾントが出現する場合、図中において破線で示す領域に出現する。つまり、トロフォゾイト・シゾントを含む集団は、前方散乱光強度がシングルリングフォームを含む集団より大きく、且つ、蛍光強度がシングルリングフォームを含む集団より大きい。つまり、トロフォゾイト・シゾントを含む集団は、
図9における領域413に概ね出現する。CPU301は、このような粒子群を検出した場合、これを第5粒子群として特定する。
【0069】
図10に、ガメトサイトを含む集団が出現したスキャッタグラムの例を示す。
図10に示すように、ガメトサイトを含む集団は、前方散乱光強度がシングルリングフォームを含む集団より大きく、且つ、蛍光強度がシングルリングフォームを含む集団と同程度である。つまり、ガメトサイトを含む集団は、
図9における領域414に概ね出現する。CPU301は、このような粒子群を検出した場合、これを第6粒子群として特定する。
【0070】
再び
図7を参照する。CPU301は、第6粒子群に属する粒子数、つまりガメトサイトの数が所定値であるT2以上であるか否かを判定する(ステップS404)。ここでT2は、第6粒子群に属する粒子数がT2未満であればノイズを考慮してガメトサイトが出現していないと判断できる数値である。第6粒子群に属する粒子数がT2以上である場合(ステップS404においてYES)、ガメトサイトが血液試料中に出現したと判断できる。この場合、CPU301は、ステージフラグに2をセットし(ステップS405)、ステップS406へ処理を移す。
【0071】
第6粒子群に属する粒子数がT2未満である場合(ステップS404においてNO)、ガメトサイトが血液試料中に出現していないと判断できる。この場合、CPU301は、ステップS406へ処理を移す。
【0072】
なお、ステップS404のガメトサイトの出現の判定処理を省略してもよい。
【0073】
CPU301は、第3粒子群に属する粒子数、つまりシングルリングフォームの数が所定値であるT3以上であるか否かを判定する(ステップS406)。ここでT3は、第3粒子群に属する粒子数がT3未満であればノイズを考慮してシングルリングフォームが出現していないと判断できる数値である。第3粒子群に属する粒子数がT3未満である場合(ステップS406においてNO)、CPU301はステップS411に処理を移す。
【0074】
第3粒子群に属する粒子数がT3以上である場合(ステップS406においてYES)、CPU301は、第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値が、所定値であるT4以上であるか否かを判定する(ステップS407)。
【0075】
なお、ステップS406のシングルリングフォームの出現の判定処理を行わず、ステップS407を実行してもよい。
【0076】
熱帯熱マラリア原虫のシングルリングフォームの大きさは、その他の種のマラリア原虫のシングルリングフォームの大きさと比べて小さい。また、前方散乱光強度は細胞の大きさを反映している。したがって、
図11に示すように、熱帯熱マラリア原虫のシングルリングフォームを含む集団は、その他の種のマラリア原虫のシングルリングフォームを含む集団よりも前方散乱光強度が全体的に小さい。また、代表値はデータ群の特徴を表す。このため、熱帯熱マラリア原虫のシングルリングフォームを含む集団の前方散乱光強度の代表値M1は、その他の種のマラリア原虫のシングルリングフォームを含む集団の前方散乱光強度の代表値M2よりも小さい。ここでT4は、熱帯熱マラリア原虫とその他の種のマラリア原虫とを識別するための数値である。以上より、第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4未満であるか以上であるかを判定することで、血液試料への感染が疑われるマラリア原虫が熱帯熱マラリア原虫であるかその他の種のマラリア原虫であるかを判定できる。このように、血液分析装置1では、シングルリングフォーム及びマルチリングフォームの数等に影響されることなく、熱帯熱マラリア原虫に感染しているか否かを精度よく判定できる。
【0077】
代表値としては、最頻値、平均値、中央値、重心値等を採用できる。特に、最頻値は、第3粒子群に属する粒子において、最も多い前方散乱光強度の値であり、第3粒子群に属する粒子の大きさに関する全体の傾向を反映している。したがって、代表値には最頻値を採用することが好ましい。
【0078】
なお、前方散乱光強度の代表値に代えて、側方散乱光強度(側方散乱光のピーク値)又は後方散乱光強度(後方散乱光のピーク値)など、他の散乱光強度の代表値を採用することもできる。
【0079】
また、ステップS407において、シングルリングフォームを含む集団である第3粒子群に代えて、マルチリングフォームを含む集団である第4粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値に基づいて、感染が疑われるマラリア原虫が熱帯熱マラリア原虫であるか否かを判定することもできる。また、シングルリングフォームとマルチリングフォームとを合わせたリングフォーム全体の粒子群を特定し、この粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値に基づいて、感染が疑われるマラリア原虫が熱帯熱マラリア原虫であるか否かを判定することもできる。
【0080】
再び
図7を参照する。第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4未満である場合(ステップS407においてNO)、熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性がある。この場合、CPU301は、第4粒子群に属する粒子数が所定値であるT5以上であるか否かを判定する(ステップS408)。ここでT5は、第4粒子群に属する粒子数がT5未満であればノイズを考慮してマルチリングフォームが出現していないと判断できる数値である。
【0081】
熱帯熱マラリア原虫の感染者の末梢血中にはマルチリングフォームが出現することが多く、その他の種のマラリア原虫の感染者の末梢血中にはマルチリングフォームがほとんど出現しない。第4粒子群に属する粒子数がT5未満である場合(ステップS408においてNO)、マルチリングフォームが血液試料中に出現していないと判断できる。この場合、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いとはいえない。その一方で、ステップS407において、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性があると判断されている。そこで、CPU301は、マラリア種判定フラグに1をセットし(ステップS409)、マラリア種判定処理を終了し、測定データ解析処理に戻す。
【0082】
熱帯熱マラリア原虫に感染した血液試料でも、マルチリングフォームが出現しない場合がある(
図12参照)。このような血液試料についても、上記のようなマラリア種判定処理を行うことで、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあると判定することができる。
【0083】
再び
図7を参照する。第4粒子群に属する粒子数がT5以上である場合(ステップS408においてNO)、マルチリングフォームが血液試料中に出現している可能性があると判断できる。この場合、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いと判定できる。そこで、CPU301は、マラリア種判定フラグに2をセットし(ステップS410)、マラリア種判定処理を終了し、測定データ解析処理に戻す。
【0084】
なお、ステップS408のマルチリングフォームの出現の判定処理を省略することもできる。この場合、ステップS407において第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4未満であれば、マラリア種判定フラグに1をセットすればよい。
【0085】
第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4以上である場合(ステップS407においてYES)、その他の種のマラリア原虫に感染している可能性がある。この場合、CPU301は、第5粒子群に属する粒子数が所定値であるT6以上であるか否かを判定する(ステップS411)。ここでT6は、ノイズを考慮してトロフォゾイト・シゾントが出現していないと判断するための基準値である。
【0086】
熱帯熱マラリア原虫の感染者の末梢血中にはトロフォゾイト・シゾントがほとんど出現せず、その他の種のマラリア原虫の感染者の末梢血中にはトロフォゾイト・シゾントが出現することが多い。第5粒子群に属する粒子数がT6未満である場合(ステップS411においてNO)、トロフォゾイト・シゾントが血液試料中に出現していないと判断できる。この場合、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性が高いとはいえない。その一方で、ステップS407において、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している疑いがあると判断されている。そこで、CPU301は、マラリア種判定フラグに3をセットし(ステップS412)、マラリア種判定処理を終了し、測定データ解析処理に戻す。
【0087】
その他の種のマラリア原虫に感染した血液試料でも、トロフォゾイト・シゾントが出現しない場合がある(
図13参照)。このような血液試料についても、上記のようなマラリア種判定処理を行うことで、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している疑いがあると判定することができる。
【0088】
再び
図7を参照する。第5粒子群に属する粒子数がT6以上である場合(ステップS411においてYES)、トロフォゾイト・シゾントが血液試料中に出現していると判断できる。また、この場合、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性が高いと判定できる。そこで、CPU301は、マラリア種判定フラグに4を、ステージフラグに1をそれぞれセットし(ステップS413)、マラリア種判定処理を終了し、測定データ解析処理に戻す。
【0089】
熱帯熱マラリア原虫に感染した血液試料でも、トロフォゾイト・シゾントが出現する場合がある(
図14参照)。上記のマラリア種判定処理では、トロフォゾイト・シゾントが出現したか否かの判定処理であるステップS409に先立ち、感染が疑われるマラリア原虫が熱帯熱マラリア原虫であるかその他の種のマラリア原虫であるかを判定する処理であるステップS406を実行する。このため、上記のような血液試料についても、熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあると判定することができる。なお、ステップS409を実行した後、ステップS406を実行してもよい。
【0090】
また、ステップS411のトロフォゾイト・シゾントの出現の判定処理を省略することもできる。この場合、ステップS406において第3粒子群に属する粒子数がT3未満であるか、ステップS407において第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4以上であれば、マラリア種判定フラグに3をセットすればよい。
【0091】
再び
図5を参照する。上記のようなマラリア種判定処理を終了すると、CPU301は、赤血球数とマラリア感染赤血球数との比率(以下、「マラリア感染赤血球比率」という)を算出する(ステップS304)。以上で、CPU301は、測定データ解析処理を終了し、メインルーチンへ処理をリターンする。
【0092】
再び
図3を参照する。上記のような測定データ解析処理を終了すると、CPU301は、分析結果を出力部310に出力して(ステップS110)、処理を終了する。分析結果には、赤血球数、白血球数、マラリア感染赤血球数、及びマラリア感染赤血球比率の各測定結果と、診断の参考となる参考情報とが含まれる。マラリア種判定処理において、第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4以上であるか未満であるかによって、熱帯熱マラリアの感染に関する情報が参考情報として出力される。つまり、マラリア種判定処理において、第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4未満である場合は、参考情報として、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性があることを示す情報(以下、「熱帯熱マラリア感染情報」という)が出力される。マラリア種判定処理において、第3粒子群に属する粒子の前方散乱光強度の代表値がT4以上である場合は、参考情報として、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性があることを示す情報(以下、「他種感染情報」という)が出力される。
【0093】
具体的には、熱帯熱マラリア感染情報は、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報(以下、「第1熱帯熱マラリア感染情報」という)と、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報(以下、「第2熱帯熱マラリア感染情報」という)とを含む。マラリア種判定フラグに2がセットされている場合、第1熱帯熱マラリア感染情報が参考情報として出力され、マラリア種判定フラグに1がセットされている場合、第2熱帯熱マラリア感染情報が参考情報として出力される。
【0094】
また、他種感染情報は、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報(以下、「第1他種感染情報」という)と、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報(以下、「第2他種感染情報」という)とを含む。マラリア種判定フラグに4がセットされている場合、第1他種感染情報が参考情報として出力され、マラリア種判定フラグに3がセットされている場合、第2他種感染情報が参考情報として出力される。
【0095】
ステージフラグに1がセットされている場合、参考情報として、トロフォゾイト又はシゾントが出現している可能性が高いことを示す情報(以下、「トロフォゾイト・シゾント出現情報」という)が出力される。
【0096】
ステージフラグに2がセットされている場合、参考情報として、ガメトサイトが出現している可能性が高いことを示す情報(以下、「ガメトサイト出現情報」という)が出力される。
【0097】
図15を参照し、表示される分析結果についてさらに説明する。出力部310には、分析結果画面500が表示される。分析結果画面500は、試料情報表示領域510と、患者情報表示領域520と、測定結果表示領域530と、参考情報表示領域540とを有する。測定結果表示領域530は、CBC項目表示領域531と、マラリア項目表示領域532とを有する。
【0098】
試料情報表示領域510には、分析結果画面500に表示されている分析結果の元となった血液試料の情報が表示される。患者情報表示領域520には、血液試料を採取された被験者の情報が表示される。
【0099】
測定結果表示領域530には、測定データ解析処理によって得られた各項目の測定値が表示される。CBC項目表示領域531には、血球分析における基本的な測定項目の測定値が表示される。CBC項目表示領域531に表示される測定値は、赤血球(RBC)、及び白血球(WBC)の測定値を含む。マラリア項目表示領域532には、マラリア感染赤血球に関する測定項目の測定値が表示される。マラリア項目表示領域532に表示される測定値は、マラリア感染赤血球数(M−RBC)及びマラリア感染赤血球比率(MR)の測定値を含む。
【0100】
参考情報表示領域540には、測定データ解析処理によって、マラリア原虫の感染が疑われる等のユーザに報告すべき結果が得られた場合に、ユーザへの参考情報が表示される。測定データ解析処理において、マラリア種判定フラグに2がセットされた場合、参考情報表示領域540に、第1熱帯熱マラリア感染情報である「P.falcipalm」が表示され、マラリア種判定フラグに1がセットされた場合、参考情報表示領域540に、第2熱帯熱マラリア感染情報である「P.falcipalm?」が表示される。なお、第1熱帯熱マラリア感染情報は上記に限られず、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報であればよい。第2熱帯熱マラリア感染情報も上記に限られず、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報であればよい。また、マラリア種判定フラグに1又は2がセットされている場合に、血液試料が熱帯熱マラリア原虫に感染している可能性があることを示す同一の情報を出力するようにしてもよい。
【0101】
測定データ解析処理において、マラリア種判定フラグに4がセットされた場合、参考情報表示領域540に、第1他種感染情報である「Other species」が表示され、マラリア種判定フラグに3がセットされた場合、参考情報表示領域540に、第2他種感染情報である「Other species?」が表示される。なお、第1他種感染情報は上記に限られず、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性が高いことを示す情報であればよい。第2他種感染情報も上記に限られず、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している疑いがあることを示す情報であればよい。また、マラリア種判定フラグに3又は4がセットされている場合に、血液試料がその他の種のマラリア原虫に感染している可能性があることを示す同一の情報を出力するようにしてもよい。
【0102】
測定データ解析処理において、ステージフラグに1がセットされた場合、参考情報表示領域540に、トロフォゾイト・シゾント出現情報である「Trophozoite/Scizont present」が表示される。トロフォゾイト又はシゾントは、マラリア原虫の生活環においてリングフォームから進んだステージで出現する。したがって、トロフォゾイト又はシゾントが検出された場合に、トロフォゾイト・シゾント出現情報を出力することで、ユーザに感染者がトロフォゾイト又はシゾントが出現するステージであることを通知することができる。
【0103】
測定データ解析処理において、ステージフラグに2がセットされた場合、参考情報表示領域540に、ガメトサイト出現情報である「Gametocyte present?」が表示される。ガメトサイトは、トロフォゾイト及びシゾントが出現するステージからさらに進んだステージにおいて出現する。マラリア感染症においては、その症状が軽減されたとしても、ガメトサイトが血液中に存在する場合がある。このため、マラリア感染症の治療では、ガメトサイトを消滅させることが重要である。したがって、ガメトサイトが検出された場合に、ガメトサイト出現情報を出力することで、ユーザにガメトサイトが出現するステージであることを通知することができる。