【課題】癌患者における非造血性非腫瘍性EphA3発現細胞を検出するための、およびEphA3を検出マーカーとして用いて患者の予後をモニターするための、方法および組成物を提供する。
【解決手段】末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを、固形腫瘍の存在を診断するために用いる。EphA3+細胞がCD34、CD45、CD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む。EphA3を発現する非造血性非腫瘍細胞の血中レベルが増大している患者を治療するための方法も記載する。
第1の抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープでEphA3に選択的に結合する第2の抗体と前記細胞とを接触させることをさらに含む、請求項10記載の方法。
癌治療物質が、EphA3に選択的に結合する治療的抗体であり、かつEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する段階が、該治療的抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープに結合する抗体と該細胞とを接触させることを含む、請求項19〜27のいずれか一項記載の方法。
試料における非造血性細胞の存在を検出するためのキットであって、EphA3エピトープに選択的に結合する第1の抗体、および異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体を含む、前記キット。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Eph受容体チロシンキナーゼ(Eph)は、タンパク質をチロシン残基でリン酸化するキナーゼである受容体チロシンキナーゼ(RTK)の大きな群に属する。Ephおよびそれらの膜結合型エフリンリガンド(エフリン)は、細胞の位置決定および組織の組織化を制御する(Poliakov, et al., Dev Cell 7:465-80, 2004)。さまざまなEphおよびエフリンは、数あるパターン形成機能の中でも特に、血管発生において役割を果たすことが示されている。EphB4およびエフリン-B2のノックアウトは、毛細血管床を血管にリモデリングさせる能力の喪失(Poliakov, et al.、前記)および胚致死をもたらす。ある種のEph受容体およびエフリンの持続的発現は、新たに形成された成体微小血管でも観察されている(Brantley-Sieders, et al., Curr Pharm Des 10:3431-42, 2004;Adams, J Anat 202:105-12, 2003)。
【0003】
EphA3は最初に、原腸形成の際に発現されて中胚葉パターン形成を導く(例えば、Oates, et al., Mech Dev 83:77-94, 1999を参照)。EphA3-/-マウスは致死性の心血管表現型を有する。心血管パターン形成におけるその機能に一致して、新たに出現しつつある微小血管系上で、特に固形腫瘍の血管細胞上および血管周囲細胞上で、ならびに周期的な成体新血管形成が起こる臓器である再生中のヒト子宮内膜において、低酸素により制御されるEphA3発現が最近観察されている。抗EphA3アゴニスト抗体は腫瘍微小血管の完全性を損なわせることによって固形癌の増殖を阻害し、このことは腫瘍血管の集成および維持におけるEphA3の役割を示している(WO2008/112192を参照)。
【0004】
腫瘍の増殖、浸潤性および転移には、腫瘍内皮細胞とストロマ細胞との間の広範なやり取りが係わっている(Bhowmick et al., Nature 432:332-337, 2004)。この腫瘍微小環境はまず、近傍の血管組織および間質組織の転用(co-option)および拡張によって生じるが(例えば、Folkman, N Engl J Med 285:1182-1186, 1971)、循環内皮前駆細胞(CEP)、間葉系幹細胞(MSC)および炎症性白血球を含む骨髄由来細胞(BMD)の活発な動員およびその後の増殖によっても生じる(例えば、Psaila & Lyden Nat Rev Cancer 9:285-293, 2009;Carmeliet, Nature 438:932-936, 2005)。拡張性組織増殖に起因する低酸素分圧は低酸素誘導転写因子(HIF)を安定化し(Pugh & Ratcliffe Nat Med 9:677-684, 2003)、それは血管原性タンパク質および血管新生タンパク質の発現を誘導して、ひいては血管細胞および壁細胞の動員および増殖、ならびにそれらの新たな血管への集成を指揮する。腫瘍の進行および転移における、これらのCD133
+(ヒト)CEP、PDGFRβ
+/αSMA
+血管周囲始原細胞、浸潤白血球(Lyden, Nat Med 7: 1194-1201, 2001)(腫瘍関連マクロファージ、VEGFR1
+骨髄性始原細胞)およびMSC(McAllister et al., Cell 133:994-1005, 2008)の重要な役割が、最近のいくつかの前臨床試験および臨床試験で確認されている(Psaila, 2009、前記)。今では、血管新生性サイトカインおよび炎症誘発性サイトカインがBMDミエロイドおよびMSCを一括して動員し、転移前の部位を腫瘍細胞の到達前に既に運命づけていることを示唆する証拠もある(McAllister, 2008、前記;Karnoub, et al. Nature 449:557-563, 2007)。
【0005】
当然のことながら、BMD前駆細胞のこの役割は、それらを心疾患および癌などの病変をモニターする代用マーカーとして用いることへの大きな関心を引き起こした(Carmeliet、前記、Rafii et al., Nat Med 9:702-712, 2003)。現在までに、多色フローサイトメトリーによるCEPの計数が、神経膠芽腫(Batchelor, et al. Cancer Cell 11:83-95, 2007)、非小細胞肺癌(Dome, et al., Cancer Res 66:7341-7347, 2006)および直腸癌(Duda, et al., J Clin Oncol 24:1449-1453, 2006)の患者の病期分類および層別化を行うため、ならびに癌に対する「メトロノミック(metronomic)」化学療法の臨床的有益性を予測するために用いられている(Mancuso, et al., Blood 108:452-459, 2006)。しかし、この分析は、生存している循環内皮細胞(CEC)とCEPとを識別するための、CD31、CD34、CD45、CD105、CD133、CD146、CD309(KDR)を含む細胞表面マーカーの組み合わせに依拠している。CEPの表現型上の定義を標準化するための詳細なプロトコールが提案されているが(Duda, et al., Nature protocols 2; 805-810, 2007;Yoder, et al., Blood 109; 1801-1809, 2007;Mancuso, et al., Clin Cancer Res 15:267-273, 2009)、CEC、CEPおよび造血細胞の識別のための多パラメーター分析につきまとう高度の困難さのために、このアッセイの日常的使用が制約されてきた。
【0006】
骨髄由来始原細胞集団の中でも、MSCは、稀な、非造血性で多能性のコロニー形成単位(CFU)-線維芽性細胞集団であり、これらはインビトロおよびインビボで中胚葉系列、内皮系列、外胚葉系列および内胚葉系列に分化する能力を特徴とする(Jiang, et al., Proc Natl Acad Sci USA 101:16891-16896, 2004;Jiang, et al., Nature 418:41-49, 2002)。それらの複雑な機能プロファイルおよび遺伝子発現プロファイルならびに多系列分化能(Pittenger, et al., Science 284:143-147, 1999)は、従来の「幹細胞」としてのそれらの分類に関して若干の混乱を招いており、これらのプラスチック付着性間葉系始原細胞を命名するために「BM由来複能性(multipotent)間葉系間質細胞」(BM-MSC)という用語が提案されている(Horwitz, et al., Cytotherapy 7:393-395, 2005)。それらの定義のための特異的マーカーはないものの、CD44、CD73、CD90、CD105およびCD309(KDR)を含む、多岐にわたる種々の細胞表面タンパク質、特に造血マーカー(CD34、CD45、CD14)および内皮マーカー(CD34、CD31、vWF)の欠如が、それらの同定のために一般的に用いられている(Jiang et al.、前記 2002;Roorda, et al., Crit Rev Oncol Hematol 69:187-198, 2009)。組織集成へのBM-MSCの寄与は、傷害または炎症後の組織リモデリング時にのみ明らかに見てとれる;かなりの証拠により、腫瘍増殖および転移に対するそれらの重要な寄与、特に、腫瘍間質における腫瘍線維芽細胞として、腫瘍血管系における内皮様細胞および周細胞様細胞としてのそれらの関与、ならびに二次部位での転移を引き起こさせるそれらの能力が確認されている(上記に引用した参考文献)。病的な組織リモデリングにおけるそれらの中心的な役割に一致して、循環末梢血MSCがいくつかの種において同定され、記述されてはいるが、BM由来の対応物と比較して極めて頻度が低く、特にヒト末梢血試料ではそうである(He, et al., Stem Cells 25:69-77, 2007)。しかしながら、MSCのレベルは乳癌患者の末梢血では上昇していることが見いだされており(Tondreau, et al., Stem Cells 23: 1105-1112, 2005)、細胞表面マーカー発現プロファイルおよび多系列分化能の類似性(multi-lineage potential)(He, 2007、前記;Ahn & Brown, Angiogenesis 12:159-164, 2009)は、骨髄移植実験から示唆されるように、これらの循環MSCがBM起源であること、および腫瘍進行におけるそれらの役割を裏づけるものである。
【0007】
病的組織リモデリングおよび発癌増殖における骨髄由来の内皮始原細胞、間質始原細胞および造血始原細胞の必須な役割、ならびに患者の血液循環におけるそれらの存在量の増加は、癌を含むさまざまな疾患の代用診断マーカーとしてそれらを用いることへの大きな関心を引き起こした。しかし、それらの表現型の正確な特徴づけの困難さは、診断法および予後予測法を開発する上での困難さをもたらしてきた。本発明はこれらの問題を克服する。
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な概要
本発明は一部には、ヒト末梢血試料におけるEphA3
+非造血性非腫瘍細胞の発見に基づくものであり、固形腫瘍癌患者においてこれらの細胞の頻度は有意に増加している。これらの細胞のレベルは抗血管(anti-vascular)癌治療法の後に低下し、それ故に治療有効性の指標として役立つ。いくつかの態様において、末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを利用して、腫瘍の存在を診断することができる。したがって、本発明は、固形腫瘍を有するか、または腫瘍を有する疑いのある患者の末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞の存在に関するスクリーニングの方法を提供する。
【0009】
1つの局面において、本発明は、固形腫瘍を有するか、または固形腫瘍を有する可能性のある患者からの生物試料における非造血性非腫瘍性EphA3
+細胞の集団を同定する方法であって、固形腫瘍を有するか、または固形腫瘍を有する可能性のある患者由来の末梢血細胞を含む試料を用意する段階;および試料中の非造血性非腫瘍細胞におけるEphA3+の発現を検出する段階を含む方法を提供する。そのような細胞の、正常を上回るレベルの増大によって、腫瘍の存在が示される。本発明の方法は、EphA3に加えて他の細胞表面マーカーを検出する段階をさらに含みうる。これらの表面マーカーには、CD34、CD45、CD44、CD90、および/またはKDRが含まれる。典型的には、非造血性非腫瘍細胞由来のEphA3
+細胞はCD34
-かつCD45
-であり、しかしCD44、CD90、およびKDRを発現する。いくつかの態様において、本方法は、EphA3の発現を検出する段階、ならびにEphA3
+細胞がCD34
-および/またはCD45
-であるかどうかを決定する段階を含む。いくつかの態様において、本方法は、EphA3
+細胞がCD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む。いくつかの態様において、本方法は、EphA3+細胞がCD34、CD45、CD44、CD90、およびKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む。
【0010】
本発明の方法のいくつかの態様において、EphA3の発現を検出する段階は、非造血性非腫瘍細胞の表面における発現を検出する段階を含む。典型的には、非造血性非腫瘍細胞の表面における発現を検出する段階は、EphA3に選択的に結合する第1の抗体と該細胞とを接触させることを含む。いくつかの態様においては、非造血性非腫瘍細胞の表面におけるEphA3の発現を検出するためにフローサイトメトリーを用いる。いくつかの態様において、本方法は、異なるエピトープでEphA3に結合する第2の抗体と非造血性非腫瘍細胞とを接触させることをさらに含みうる。典型的な態様において、第2の抗体は、EphA3に対する結合について第1の抗体と競合しない。第1および第2の抗体は検出可能な同じ標識で標識されてよい。または、第1および第2の抗体が異なる検出可能な標識で標識されてもよい。
【0011】
いくつかの態様において、本発明の方法は末梢血細胞を含む試料を用いて利用され、試料は、乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、前立腺腺癌、黒色腫、または神経膠芽腫を有する患者に由来する。いくつかの態様において、本発明の方法は、固形腫瘍、例えば乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、前立腺腺癌、黒色腫、または神経膠芽腫などを有する疑いのある患者からの試料を用いて利用される。
【0012】
いくつかの態様において、EphA3の発現を検出する段階は、RT-PCR反応を含む。RT-PCR反応は、造血細胞を除くように選別された単一細胞または細胞の集団に対して行うことができる。
【0013】
多くの場合、本発明の方法は、癌治療物質を患者に投与する段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、前記物質は、患者の、EphA3を発現する非造血性非腫瘍細胞の血中レベルが、0.01%を上回る、典型的には0.02%を上回る、多くの場合には0.025%または0.05%を上回る場合に投与される。癌治療物質は、腫瘍を治療するために用いられる任意の物質であってよい。これらには、抗血管物質である物質、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニスト、またはEphA3を活性化して細胞円形化をもたらす抗体などが含まれる。他の態様において、癌治療物質は、EphA3と選択的に結合してADCCを介して細胞に対して細胞傷害性となる抗体、および/またはEphA3をリン酸化してアポトーシスを引き起こす抗体であってよい。
【0014】
1つのさらなる局面において、本発明は、癌治療物質の有効性をモニターする方法であって、癌治療物質による治療後の、固形腫瘍を有する患者由来の末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する段階;および末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを癌治療物質による治療前のレベルと比較する段階を含む方法を提供する。いくつかの態様において、癌治療物質は抗血管治療物質、例えばVEGFアンタゴニスト、またはEphA3を活性化して細胞円形化を誘導する抗体などである。いくつかの態様において、癌治療物質はEphA3と選択的に結合してADCCを介して細胞傷害性となる抗体、および/またはEphA3を活性化してアポトーシスを引き起こす抗体である。
【0015】
いくつかの態様において、治療有効性をモニターするための本発明の方法は、EphA3+細胞がCD34-および/またはCD45-であるかどうかを決定する段階をさらに含みうる。いくつかの態様において、本方法は、CD44、CD90、およびKDRの発現を検出する段階をさらに含みうる。典型的な態様において、癌作用物質の治療有効性を評価するためにモニターされる非造血性非腫瘍細胞は、EphA3+、CD34-、CD45-、CD44+、CD90+およびKDR+であるが、他の細胞表面マーカーが存在してもよい。
【0016】
典型的な態様において、治療有効性をモニターするためにEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する方法は、非造血性非腫瘍細胞の表面におけるEphA3発現を、好ましくは、EphA3に選択的に結合する第1の抗体と該細胞とを接触させることを含む、該細胞の表面における発現を検出することによって、検出する段階を含む。いくつかの態様においては、非造血性非腫瘍細胞の表面におけるEphA3を検出するためにフローサイトメトリーを用いる。いくつかの態様において、本方法は、異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体と細胞とを接触させることをさらに含む。いくつかの態様において、第2の抗体は、EphA3に対する結合について第1の抗体と競合しない。第1および第2の抗体は検出可能な同じ標識で標識されてもよく;または異なる検出可能な標識を利用してもよい。
【0017】
代替的な態様において、癌治療物質の治療有効性をモニターする方法は、末梢血における非造血性非腫瘍細胞上でのEphA3+の発現を、RT-PCRなどの増幅反応を用いて検出する段階を含みうる。いくつかの態様において、RT-PCR反応は、試料から造血細胞が除かれた、患者由来の末梢血細胞に対して行われる。
【0018】
いくつかの態様においては、癌作用物質の治療有効性を、乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、移行上皮癌、腎細胞癌、前立腺腺癌、黒色腫、または神経膠芽腫を有する患者に関して、本発明に従ってモニターする。
【0019】
1つのさらなる局面において、本発明は、試料におけるEphA3
+非造血性細胞、非腫瘍の存在を検出するためのキットであって、EphA3エピトープに選択的に結合する第1の抗体および異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体を含むキットを提供する。第1および第2の抗体は標識されていてよい。いくつかの態様において、第1および第2の抗体は検出可能な同じ標識で標識されており、一方、代替的な態様において、第1および第2の抗体は異なる標識で標識されている。いくつかの態様において、キットは、以下の抗体のうちの1つまたは複数をさらに含みうる:CD34に選択的に結合する抗体、CD45に選択的に結合する抗体、CD44に選択的に結合する抗体、CD90に選択的に結合する抗体、および/またはKDRに選択的に結合する抗体。
【0020】
いくつかの態様において、本発明の検出方法を、癌を有する疑いのある患者、例えば癌の症状を有する患者における、固形腫瘍の存在を検出するために用いてもよい。
[本発明1001]
以下の段階を含む、固形腫瘍を有する患者を同定する方法:
固形腫瘍を有する可能性のある患者由来の末梢血単核細胞を含む試料を用意する段階;
該試料における正常を上回るEphA3
+非造血性非腫瘍細胞のレベルを検出する段階であって、それにより、固形腫瘍を有する患者を同定する、段階。
[本発明1002]
EphA3
+細胞がCD34
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
EphA3
+細胞がCD45
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
EphA3
+細胞がCD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
EphA3
+細胞がCD34
-およびCD45
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
EphA3
+細胞がCD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
患者が乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、前立腺腺癌、または黒色腫を有する、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
EphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを検出する段階が、該細胞の表面におけるEphA3発現を検出する段階を含む、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1009]
細胞の表面におけるEphA3発現が、フローサイトメトリーによって検出される、本発明1008の方法。
[本発明1010]
細胞の表面における発現を検出する段階が、EphA3に選択的に結合する第1の抗体と該細胞とを接触させることを含む、本発明1008の方法。
[本発明1011]
第1の抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープでEphA3に選択的に結合する第2の抗体と前記細胞とを接触させることをさらに含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
第2の抗体が、第1の抗体と同じ検出可能な標識で標識されている、本発明1011の方法。
[本発明1013]
EphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを検出する段階がRT-PCR反応を含む、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1014]
癌治療物質を患者に投与する段階をさらに含む、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1015]
患者が乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、前立腺腺癌、または黒色腫を有する、本発明1014の方法。
[本発明1016]
癌治療物質が抗血管(anti-vascular)治療物質である、本発明1014の方法。
[本発明1017]
抗血管治療物質が、血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニストであるか、またはEphA3を活性化する抗体である、本発明1016の方法。
[本発明1018]
癌治療物質が、EphA3に選択的に結合する抗体である、本発明1014の方法。
[本発明1019]
以下の段階を含む、癌治療物質の有効性をモニターする方法:
癌治療物質による治療後に、固形腫瘍を有する患者由来の末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する段階;
末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを、癌治療物質による治療前のレベルと比較する段階。
[本発明1020]
癌治療物質が抗血管治療物質である、本発明1019の方法。
[本発明1021]
抗血管治療物質が、VEGFアンタゴニストであるか、またはEphA3を活性化する抗体である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
癌治療物質が、EphA3
+に選択的に結合する抗体である、本発明1019の方法。
[本発明1023]
EphA3
+細胞がCD34
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1024]
EphA3
+細胞がCD45
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1025]
EphA3
+細胞がCD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1026]
EphA3
+細胞がCD34
-およびCD45
-であるかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1019の方法。
[本発明1027]
EphA3
+細胞がCD44、CD90、および/またはKDRを発現するかどうかを決定する段階をさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
EphA3
+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する段階が、該細胞の表面におけるEphA3発現を検出する段階を含む、本発明1019〜1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
細胞の表面におけるEphA3発現が、フローサイトメトリーによって検出される、本発明1028の方法。
[本発明1030]
非造血性細胞の表面における発現を検出する段階が、EphA3に選択的に結合する第1の抗体と該細胞とを接触させることを含む、本発明1028の方法。
[本発明1031]
異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体と前記細胞とを接触させることをさらに含む、本発明1030の方法。
[本発明1032]
第1および第2の抗体が検出可能な同じ標識で標識されている、本発明1031の方法。
[本発明1033]
癌治療物質が、EphA3に選択的に結合する治療的抗体であり、かつEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルを決定する段階が、該治療的抗体が結合するエピトープとは異なるエピトープに結合する抗体と該細胞とを接触させることを含む、本発明1019〜1027のいずれかの方法。
[本発明1034]
患者が乳癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、結腸腺癌、腎細胞癌、移行上皮癌、前立腺腺癌、または黒色腫を有する、本発明1019〜1027のいずれかの方法。
[本発明1035]
EphA3+の発現を検出する段階がRT-PCR反応を含む、本発明1019〜1027のいずれかの方法。
[本発明1036]
試料における非造血性細胞の存在を検出するためのキットであって、EphA3エピトープに選択的に結合する第1の抗体、および異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体を含む、前記キット。
[本発明1037]
第1および第2の抗体が検出可能な同じ標識で標識されている、本発明1036のキット。
[本発明1038]
CD34、CD45、CD90、およびKDRからなる群より選択される表面マーカーに結合する抗体をさらに含む、本発明1036のキット。
[本発明1039]
以下の段階を含む、患者由来の末梢血におけるEphA3
+細胞の非造血性非腫瘍集団の存在または非存在を同定する方法:
患者由来の末梢血細胞を含む試料を用意する段階;
試料中の非造血性非腫瘍細胞におけるEphA3
+の発現の存在または非存在を検出する段階であって、非造血性非腫瘍細胞上のEphA3+発現の存在によって固形腫瘍の存在が示される、段階。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いる場合、「固形腫瘍」とは、対象における新生物細胞を含む異常な組織塊のことを指す。固形腫瘍は良性であっても悪性であってもよい。本発明の方法および組成物を用いて検出および/またはモニターすることのできる固形腫瘍は、新血管形成によって特徴づけられる。腫瘍血管系(微小血管系とも称される)は、内皮細胞の急速な増殖、不良な壁構造、血漿タンパク質の透過性の増大、および、需要に応じて血流を増加させる能力が限られていることによって特徴づけられる。腫瘍血管系は、腫瘍塊の腫瘍細胞が、正常細胞と比較して増殖面での優位性を獲得することを可能にする。固形腫瘍は、それを形成する細胞の種類にちなんで命名される。固形腫瘍の例には、肉腫、癌腫(上皮腫瘍)、黒色腫および神経膠芽腫がある。
【0023】
「癌細胞」または「腫瘍細胞」という用語は、互換的に用いられ、新生物細胞を指す。この用語は、良性および悪性である細胞を含む。新生物形質転換は、腫瘍細胞の由来元である細胞種に対する腫瘍細胞の表現型変化を伴う。この変化には、接触阻害の喪失、形態変化、および異常増殖が含まれうる(Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique (3rd edition, 1994)を参照)。
【0024】
本発明との関連において、「非造血性非腫瘍細胞」とは、造血器由来でなく、かつ新生物性でもない細胞のことを指す。そのような細胞は、腫瘍塊、または血流などの部位に存在しうる。非造血性非腫瘍細胞にはEphA3+間質始原細胞が含まれる。
【0025】
本明細書で用いる場合、「EphA3
+間質始原細胞」は、「間葉系EphA3
+細胞」または「CD34
-EphA3
+始原細胞」という用語と互換的に用いられ、表現型CD34
-CD45
-CD44
+CD90
+KDR
+EphA3
+を有する、癌患者の末梢血中に見いだされる細胞の集団に特徴的な細胞を指す(他の細胞表面マーカーがこの細胞集団上に存在してもよい)。これらの細胞は、正常患者(すなわち、癌を有しない個体)と比較して、癌患者において増加している。当技術分野において公知であるように、これらの表面抗原は代替的な名称を有しうる。例えば、KDR
+細胞をCD309
+細胞またはVEGFR-2
+細胞と称してもよい。
【0026】
本明細書で用いる場合、「固形腫瘍由来の細胞」という用語は、腫瘍細胞、または腫瘍内に存在する新生物性ではない細胞のことを指す。これらには、内皮細胞および平滑筋細胞を含む、血管細胞などの細胞が含まれる。
【0027】
本発明との関連において「癌の増殖を阻害すること」とは、増殖を緩徐にすること、および/または癌を有する患者の癌細胞負荷を減少させることを指す。したがって、「癌の増殖を阻害すること」は、癌細胞を死滅させることを含む。
【0028】
本明細書で用いる場合、「癌治療物質」または「抗癌治療物質」という用語は、互換的に用いられ、癌に罹患した患者に治療的有効用量で投与した場合に、その疾患およびその疾患に伴う合併症の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に停止させる物質のことを指す。
【0029】
本明細書で用いる場合、「腫瘍血管系内皮細胞」とは、腫瘍の血管系の中に存在する内皮細胞、または腫瘍の血管系の一部となる前駆細胞のことである。
【0030】
本明細書で用いる「抗血管治療物質」または「抗血管原性治療物質」とは、脈管形成および血管形成を阻害する治療物質のことを指す。そのような物質の例には、抗EphA3抗体および血管内皮増殖因子(VEGF)アンタゴニストが含まれる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「EphA3」とは、Eph受容体A3のことを指す。この受容体はまた、「ヒト胚キナーゼ」、「hek」、「eph様チロシンキナーゼ1」、「etk1」、または「tyro4」とも称されている。EphA3は、タンパク質-チロシンキナーゼファミリーのエフリン受容体サブファミリーに属する。Eph受容体およびEph関連受容体は、発生イベントの媒介に関係づけられている。Ephサブファミリーの受容体は、典型的には、単一のキナーゼドメイン、ならびにCysリッチドメインおよび2つのIII型フィブロネクチン反復配列を含む細胞外ドメインを有する。エフリン受容体は、それらの細胞外ドメイン配列の類似性、ならびにエフリン-Aリガンドおよびエフリン-Bリガンドとの結合に関するそれらの親和性に基づいて、2つの群に分類される。EphA3はエフリン-Aリガンドと結合する。EphA3の核酸配列およびタンパク質配列は公知である。例示的なヒトEphA3アミノ酸配列は、アクセッション番号(EAW68857)に基づいて入手可能である。
【0032】
本発明において、「EphA3抗体」または「抗EphA3抗体」は、互換的に用いられ、EphA3と特異的に結合する抗体のことを指す。
【0033】
本発明との関連において、EphA3を「活性化する」抗体は、EphA3のリン酸化、および典型的には、細胞の円形化を引き起こす。
【0034】
「mAb IIIA4」という用語は、EphA3をアフィニティー単離するために、当初はLK63ヒト急性プレB白血病細胞に対して産生されたモノクローナル抗体IIIA4のことを指す(Boyd, et al. J Biol Chem 267:3262-3267, 1992)。mAb IIIA4は、ネイティブEphA3球状エフリン結合ドメインと結合する(例えば、Smith, et al., J. Biol. Chem 279:9522-9531, 2004)。これは、アクセッション番号91061920の下で、欧州動物細胞培養収集機関(European Collection of Animal Cell Cultures)に寄託されている(例えば、欧州特許第EP0590030号を参照)。
【0035】
本明細書で用いるVEGFアンタゴニストとは、VEGFにより媒介されるシグナル伝達を阻害する物質、例えば、VEGFと結合してVEGF受容体の結合を阻害する抗体、またはVEGF受容体と結合してVEGFの結合を阻害する抗体などのことを指す。
【0036】
本明細書で用いる場合、「抗体」とは、結合タンパク質として機能的に定義され、かつ、抗体を産生する動物の免疫グロブリンコード遺伝子のフレームワーク領域に由来することが当業者によって認識されているアミノ酸配列を含むとして構造的に定義されるタンパク質のことを指す。抗体は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなりうる。認知されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκまたはλのいずれかとして分類される。重鎖はγ、μ、α、δまたはεとして分類され、これらは結果としてそれぞれ、免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定する。
【0037】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は2つの同一なポリペプチド鎖の対からなり、各対は1本の「軽」鎖(約25kD)および1本の「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識を主に担う約100〜110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(V
L)および可変重鎖(V
H)という用語はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖のことを指す。
【0038】
本明細書で用いる「抗体」という用語には、結合特異性を保っている抗体断片も含まれる。例えば、十分に特徴づけられている抗体断片がいくつか存在する。すなわち、例えば、ペプシンは抗体をヒンジ領域内のジスルフィド結合のC末端で消化して、それ自体がジスルフィド結合によってVH-CH1に連結している軽鎖であるFabの二量体、F(ab)'
2を生じる。F(ab)'
2を穏和な条件下で還元させてヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断し、それにより、F(ab')
2二量体をFab'単量体に変換させることができる。Fab'単量体は本質的には、ヒンジ領域の部分を伴うFabである(他の抗体断片のより詳細な説明については、Fundamental Immunology, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993)を参照)。無傷の抗体の消化に関してはさまざまな抗体断片が定義されているが、当業者は、化学的に、または組換えDNA法を用いることによって、そのような断片を新規に合成しうることを理解しているであろう。したがって、本明細書で用いる抗体という用語には、完全抗体の修飾によって生成されるか、または組換えDNA法を用いて合成される抗体断片も含まれる。
【0039】
抗体には、可変重鎖領域と可変軽鎖領域が(直接に、またはペプチドリンカーを介して)連結して一つになり、連続したポリペプチドを形成した、単鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)などの単鎖抗体(単一のポリペプチド鎖として存在する抗体)を含むV
H-V
L二量体が含まれる。単鎖Fv抗体とは、直接連結しているか、またはペプチドコードリンカーによって連結しているV
Hコード配列およびV
Lコード配列を含む核酸から発現されうる、共有結合したV
H-V
Lのことである(例えば、Huston, et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)。V
HおよびV
Lは単一ポリペプチド鎖として互いに接続しているが、V
HドメインおよびV
Lドメインは非共有結合により会合する。または、抗体は別の断片であってもよい。例えば組換え手法を用いて、可溶性タンパク質として、またはディスプレイ法から得られる断片として、他の断片を作製することもできる。抗体には、ダイアンチボディ(diantibody)およびミニアンチボディ(miniantibody)も含まれうる。また、本発明の抗体には、ラクダ科動物由来の抗体などの重鎖二量体も含まれる。本発明において、抗体は、間質始原細胞の表面に存在するEphA3と結合することができる形態で利用される。
【0040】
本明細書で用いる場合、「V領域」とは、CDR3およびフレームワーク4を含めた、フレームワーク1、CDR1、フレームワーク2、CDR2、およびフレームワーク3のセグメントを含む抗体可変領域ドメインのことを指し、これらのセグメントは、B細胞分化の際に重鎖および軽鎖のV領域遺伝子の再構成の結果としてVセグメントに加えられる。
【0041】
本明細書で用いる場合、「相補性決定領域(CDR)」とは、軽鎖可変領域および重鎖可変領域によって構築される4つの「フレームワーク」領域の間に差し挟まれた、各鎖における3つの超可変領域のことを指す。CDRは、抗原のエピトープに対する結合を主に担う。各鎖のCDRは典型的には、N末端から順に番号を付してCDR1、CDR2およびCDR3と称され、典型的には個々のCDRが位置する鎖によっても特定される。すなわち、V
H CDR3はそれが見いだされる抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方、V
L CDR1はそれが見いだされる抗体の軽鎖の可変ドメインに由来するCDR1である。
【0042】
異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成要素である軽鎖および重鎖のフレームワーク領域が組み合わさったものであり、三次元空間にCDRを位置づけて整列させる働きをする。
【0043】
CDRおよびフレームワーク領域のアミノ酸配列は、当技術分野において周知のさまざまな定義、例えば、Kabat, Chothia, international ImMunoGeneTicsデータベース(IMGT)、およびAbMなどを用いて決定することができる(例えば、Johnson et al.、前記;Chothia & Lesk, 1987, Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins. J. Mol. Biol. 196, 901-917;Chothia C. et al., 1989, Conformations of immunoglobulin hypervariable regions. Nature 342, 877-883;Chothia C. et al., 1992, structural repertoire of the human VH segments J. Mol. Biol. 227, 799-817;Al-Lazikani et al., J.Mol.Biol 1997, 273(4)を参照)。抗原結合部位の定義は、以下のものにも記載されている:Ruiz et al., IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res., 28, 219-221 (2000);およびLefranc,M.-P. IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res. Jan 1;29(1):207-9 (2001);MacCallum et al., Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography, J. Mol. Biol., 262 (5), 732-745 (1996);およびMartin et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86, 9268-9272 (1989);Martin, et al., Methods Enzymol., 203, 121-153, (1991);Pedersen et al., Immunomethods, 1, 126, (1992);およびRees et al., In Sternberg M.J.E. (ed.), Protein Structure Prediction. Oxford University Press, Oxford, 141-172 1996)。
【0044】
「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体が結合する抗原上の部位のことを指す。エピトープは、連続したアミノ酸、またはタンパク質の三次フォールディングによって近接する非連続的なアミノ酸の両方から形成されうる。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは典型的には、変性溶媒に曝露されても保たれるが、一方、三次フォールディングによって形成されるエピトープは典型的には、変性溶媒による処理によって失われる。エピトープは、特有の空間的高次構造内に典型的には少なくとも3個のアミノ酸、より一般的には少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的高次構造を決定する方法には、例えば、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照。
【0045】
本明細書で用いる場合、「キメラ抗体」とは、(a)抗原結合部位(可変領域)が、クラス、エフェクター機能および/もしくは種が異なるかもしくは改変された定常領域、または該キメラ抗体に新たな特性を付与する全く異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬物などと連結されるように、定常領域またはその一部分が改変、置換または交換されている、免疫グロブリン分子;または(b)可変領域またはその一部分が、異なるもしくは改変された抗原特異性を有する可変領域もしくはその一部分によって;または別の種由来もしくは別の抗体クラスもしくはサブクラス由来の対応する配列によって改変、置換、または交換されている、免疫グロブリン分子のことを指す。
【0046】
本明細書で用いる場合、「ヒト化抗体」とは、ドナー抗体由来のCDRがヒトのフレームワークに移植された免疫グロブリン分子のことを指す。ヒト化抗体はまた、フレームワーク配列中にドナー起源の残基を含んでもよい。ヒト化抗体はまた、ヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分を含んでもよい。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見いだされない残基を含んでもよい。ヒト化は、「超ヒト化(superhumanizing)」抗体(Tan et al., J. Immunol. 169: 1119, 2002)および「表面再処理(resurfacing)」(例えば、Staelens et al., Mol. Immunol. 43: 1243, 2006;およびRoguska et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 91: 969, 1994)などの手法を含む、当技術分野において公知の方法(例えば、Jones et al., Nature 321:522-525; 1986;Riechmann et al., Nature 332:323-327, 1988;Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536, 1988);Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596, 1992;米国特許第4,816,567号)を用いて行うことができる。
【0047】
本発明との関連における「ヒューマニア化(Humaneered)(商標)」抗体とは、参照抗体の結合特異性を有する改変ヒト抗体のことを指す。本発明に用いるための「ヒューマニア化(商標)」抗体は、ドナー免疫グロブリンに由来する最小配列を含む免疫グロブリン分子を有する。典型的には、抗体は、参照抗体の重鎖のCDR3領域由来の結合特異性決定基(BSD)をコードするDNA配列をヒトV
Hセグメント配列と連結させ、かつ参照抗体由来の軽鎖CDR3 BSDをヒトV
Lセグメント配列と連結させることによって「ヒューマニア化」される。ヒューマニア化のための方法は、米国特許出願公開第20050255552号および米国特許出願公開第20060134098号に提供されている。
【0048】
本明細書で用いる「ヒト」抗体は、ヒト化抗体およびヒューマニア化(商標)抗体、ならびに公知の手法を用いて作製されるヒトモノクローナル抗体を包含する。
【0049】
本明細書で用いる「治療用」抗体とは、固形腫瘍を有する患者に投与されるヒト抗体またはキメラ抗体のことを指す。
【0050】
「組換え」という用語は、例えば細胞、または核酸、タンパク質もしくはベクターへの言及で用いられる場合、該細胞、該核酸、該タンパク質または該ベクターが、異種核酸もしくは異種タンパク質の導入またはネイティブの核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、または該細胞がそのように改変された細胞に由来することを示している。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)型の細胞では見いだされない遺伝子を発現するか、または通常であれば異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されないネイティブ遺伝子を発現する。本明細書における「組換え核酸」という用語は、一般には、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼなどを用いる核酸の操作によって、元々はインビトロで形成された、天然には通常見いだされない形態にある核酸を意味する。このようにして、種々の配列の機能的な連結が達成される。したがって、通常は連結していないDNA分子を連結させることによってインビトロで形成される、線状形態にある単離核酸、または発現ベクターはいずれも、本発明において組換え体とみなされる。組換え核酸を作製し、宿主細胞または宿主生物に再導入すれば、それは非組換えにより、すなわちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて複製される;しかし、そのような核酸は、組換えにより産生された後には非組換えにより複製されるが、それでもなお本発明において組換え体とみなされることが理解されよう。同様に、「組換えタンパク質」とは、組換え手法を用いて、すなわち上述したような組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0051】
抗体と「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という語句は、タンパク質またはペプチドに言及している場合、抗体が関心対象のタンパク質と結合する結合反応のことを指す。本発明との関連において、抗体は典型的には、他の抗原に対する親和性よりも少なくとも100倍高い親和性でEphA3と結合する。
【0052】
「平衡解離定数(K
D)」という用語は、解離速度定数(k
d、時間
-1)を会合速度定数(k
a、時間
-1、M
-1)で除算したもののことを指す。平衡解離定数は、当技術分野における任意の公知の方法を用いて測定することができる。本発明の抗体は高親和性抗体である。そのような抗体は、500nM未満、多くの場合には50nM未満または10nM未満の高い親和性を有する。したがって、いくつかの態様において、本発明の抗体は、500nM〜100pMの範囲、または50nMもしくは25nM〜100pMの範囲、または50nMもしくは25nM〜50pMの範囲、または50nMもしくは25nM〜1pMの範囲の親和性を有する。
【0053】
「標識」または「検出可能な部分」とは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物のことである。例えば、有用な標識には、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAに一般的に用いられるもの)、放射性標識、ビオチン、ジゴキシゲニン、もしくはハプテンおよびタンパク質、または検出可能にすることのできる他の実体が含まれる。標識は抗体へと任意の場所で組み入れることができる。さらに、標識は抗EphA3抗体と直接コンジュゲートされている必要はなく、抗EphA3抗体と結合する二次抗体などの二次検出用物質上に存在してもよい。例えば、Hermanson,
Bioconjugate Techniques 1996, Academic Press, Inc., San Diegoに記載された方法を用いるといった、抗体を標識とコンジュゲートさせるための当技術分野において公知の任意の方法を利用することができる。
【0054】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基の重合体を指す。この用語は、天然のアミノ酸重合体、修飾残基を含むもの、および天然に存在しないアミノ酸重合体ばかりでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学模倣体である、アミノ酸重合体にも適用される。
【0055】
「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体のことを指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンなどのことである。アミノ酸類似体とは、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、例えば、α炭素に水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基が結合したもの、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどのことを指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有しうるが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保っている。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同様に機能する化合物のことを指す。
【0056】
アミノ酸は、本明細書中で、一般的に知られているそれらの3文字記号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されている1文字記号のいずれかによって言及することができる。ヌクレオチドも同様に、一般的に受け入れられているそれらの1文字コードによって言及することができる。
【0057】
「1つの(a)」または「1つの(an)」は、他に指示のない限り、「1つまたは複数」を意味するものとする。
【0058】
序論
本発明は一部には、固形腫瘍を有する癌患者の末梢血における、EphA3を発現する非造血性非腫瘍細胞の発見に基づく。そのような細胞は、癌治療物質による治療後、例えば抗血管形成療法後に減少し、そのような患者における治療の治療有効性の指標として用いることができる。さらに、そのような細胞を、患者、例えば、癌の症状を有するか、またはさもなければ癌を有する疑いのある患者における固形腫瘍の存在を診断するために用いることもできる。
【0059】
本発明に従ってモニターまたは診断することのできる患者には、抗EphA3抗体などの癌作用物質を投与することが望ましい、任意の種類の固形腫瘍を有するか、または任意の種類の固形腫瘍を有する疑いのある患者が含まれる。これらの腫瘍には、乳癌、肺癌、前立腺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝癌、卵巣癌、外陰部癌、腎臓癌、移行上皮癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症、子宮内膜症、絨毛癌、頭頸部癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、肝芽腫、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、血管腫、海綿状血管腫、血管芽腫、膵癌、網膜芽腫、星状細胞腫、神経膠芽腫、神経鞘腫、乏突起膠腫、髄芽腫、神経芽腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫を含む肉腫、尿路癌、甲状腺癌、ウィルムス腫瘍、脳腫瘍、および腎細胞癌を含む固形腫瘍が含まれる。本発明に従ってモニターまたは診断することのできる患者はまた、母斑症に関連した異常血管増殖および浮腫(脳腫瘍に関連したものなど)を有してもよい。
【0060】
EphA3
+非造血性非腫瘍細胞を有する患者の同定
EphA3+非造血性非腫瘍細胞を有する癌患者は、患者由来の末梢血細胞上でのEphA3の発現を検出することによって同定することができる。
【0061】
EphA3発現は、当技術分野において周知の方法を用いて検出することができる。多くの場合には、免疫学的アッセイを用いて、細胞表面のEphA3タンパク質の存在を検出することができる。免疫学的アッセイには、ELISA、蛍光活性化細胞選別などが含まれる。または、EphA3をコードするmRNAのレベルを検出することによってEphA3発現を検出することもできる。例えば、RT-PCRなどの核酸増幅法を利用して、RNAの量を定量する。
【0062】
細胞をEphA3+非造血性非腫瘍細胞として同定するためには、細胞を典型的には、CD45の発現に関しても評価する。任意で、細胞を、CD34、CD44、CD90、およびKDRのうちの1つまたは複数に関してさらに評価することもできる。
【0063】
EphA3発現を評価するために、患者から、末梢血細胞を含む試料を入手する。それらの血液細胞を、公知の手法、例えば、フローサイトメトリーまたは他の抗体ベースのアッセイなどを用いて、EphA3の発現および任意でCD34または他のマーカーの発現に関して評価する。
【0064】
患者は、末梢血におけるEphA3+単核細胞のレベルが、固形腫瘍を有しない正常個体で観察されるレベルよりも、例えば、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍または10倍を上回って高ければ、EphA3
+非造血性非腫瘍細胞に関して陽性とみなされる。正常個体では典型的には、末梢血単核細胞の約0.002%がEphA3+であるに過ぎない。したがって、正常値を上回るレベルは固形腫瘍の存在を示す。
【0065】
EphA3+非造血性非腫瘍細胞を有する癌患者は、典型的には、固形腫瘍を標的とする癌治療物質によって治療される。そのような物質には、EphA3を活性化する抗EphA3抗体を含む抗血管治療物質;および/またはVEGFアンタゴニストなどの物質が含まれる。血管系を標的とする抗EphA3抗体の例は、例えば、WO2008/112192に記載されている。固形腫瘍を有する患者の治療のために用いうる抗EphA3抗体の他の例は、WO/2011/053465に提示されている。
【0066】
いくつかの態様において、本発明は、固形腫瘍を有する患者に対する癌治療の治療有効性をモニターする方法を提供する。治療物質による治療後に、患者からの末梢血試料を入手して、EphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルが治療前のレベルと比べて低下したかどうかを決定するために評価する。そのような細胞の濃度における少なくとも20%、典型的には少なくとも50%または100%またはそれ以上の低下により、その治療の治療効果が示される。
【0067】
いくつかの態様において、患者におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞の存在は、その患者が、細胞増殖を阻害する他の癌治療物質に反応性であることを示す。そのような化合物は細胞死を引き起こしてもよく、そうでなくてもよい。EphA3+間質細胞を有する患者に投与しうる細胞傷害性物質には、抗体、例えば、VEGFアンタゴニスト、Her2/neu抗体など;L-アスパラギナーゼ、インターロイキン、インターフェロン、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン剤、抗アンドロゲン剤、副腎皮質ステロイド、ゴナドレリンアゴニスト、トポイソメラーゼ1および2の阻害剤、微小管活性物質、アルキル化剤、ニトロソ尿素、抗新生物性代謝拮抗剤、白金含有化合物、脂質キナーゼまたはプロテインキナーゼ標的物質、プロテインホスファターゼまたは脂質ホスファターゼ標的物質、血管新生阻害物質、抗アポトーシス経路阻害剤、アポトーシス経路アゴニスト、テロメラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤およびアミノペプチダーゼ阻害剤などの物質といった化合物が含まれる。そのような物質の例には、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、カルムスチン、エストラムチン、ロムシチン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲニステイン、タキソール、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、ブスルファン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、エソルビシン、デトルビシン、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン類、エトポシド、ビンブラスチンおよびビンクリスチン、ビノレルビンなどのビンカアルカロイド類、アムサクリン、トレチノイン、ダカルバジン(DTIC)、アクチノマイシン、マイタンシノール、リファマイシン、ストレプトバリシン、カルミノマイシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、マイトマイシン、カンプトテシン、ボルテゾミブ、テモゾロミド、コンブレタスタチン、コンブレタスタチンA-2、コンブレタスタチンA-4、カリチアマイシン、ロイプロリド、およびペガスパルガーゼ、フルオロデオキシウリジン、プトラフール(ptorafur)、5'-デオキシフルオロウリジン、カペシタビン、タモキシフェン、トレメフィン(toremefine)、トルムデックス(tolmudex)、チミタック(thymitaq)、フルタミド、フルオキシメステロン、ビカルタミド、フィナステリド、トリオキシフェン、酢酸リュープロレリン(leuproelin)、エストラムスチン、ドロロキシフェン、酢酸メゲステロール、アミノグルテチミド、テストラクトン、マイトマイシンA、BおよびC、ミトラマイシン、アントラマイシン、ポルフィロマイシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、テトラプラチン、白金-DACH、オルマプラチン、サリドマイド、レナリドマイド、テロメスタチン、ポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシン、テニポシド、アミノプテリン、メトプテリン、6-メルカプトプリン、チオグアニン、アザッツオプリン(azattuoprine)、アロプリノール、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン、2-クロロアデノシン、デオキシシチジン、シトシンアラビノシド、シタラビン、アザシチジン、5-アザシトシン、ゲンシタビン(gencitabine)、5-アザシトシン-アラビノシド、ロイロシン、ロイロシジン、ビンデシン、エチレンイミンならびにメチルメラミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
抗EphA3抗体
一般的に用いられる数多くのイムノアッセイを、EphA3発現を検出するために用いることができる。適用しうる抗体技術の一般的概要については、Harlow & Lane, Antibodies: A Laboratory Manual (1988)およびHarlow & Lane, Using Antibodies (1999)に記載がある。Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, volume 37 (Asai, ed. 1993);Basic and Clinical Immunology (Stites & Terr, eds., 7th ed. 1991、およびCurrent Protocols in Immunology (Coligan, et al. Eds, John C. Wiley, 1999-present)を含む他の情報源も参照されたい。免疫学的結合アッセイには、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれを用いることもできる。
【0069】
一般的に用いられるアッセイには、非競合的アッセイ(例えば、サンドイッチアッセイ)および競合的アッセイが含まれる。一般的に用いられるアッセイ形式には、フローサイトメトリーに基づくアッセイ、ならびに他のイムノアッセイが含まれる。
【0070】
細胞表面のEphA3を検出するための抗EphA3抗体を、EphA3タンパク質もしくは断片に対して産生させること、または組換えにより作製することができる。数多くの手法を、抗体の結合特異性を決定するために用いることができる。抗体の結合特異性を決定するために用いうるイムノアッセイの形式および条件の記載については、例えば、Harlow & Lane、前記を参照されたい。
【0071】
いくつかの態様において、抗EphA3抗体はポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体の調製方法は当業者に公知である(例えば、Harlow & Lane, Methods in Immunology、いずれも前記)。ポリクローナル抗体は、免疫剤および必要に応じてアジュバントを1回または複数回注射することによって、哺乳動物において産生させることができる。免疫剤には、EphA3受容体タンパク質またはその断片が含まれる。
【0072】
いくつかの態様において、抗EphA3抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体はハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスターまたは他の適切な宿主動物に対して、典型的には免疫剤による免疫処置を行って、該免疫剤と特異的に結合すると考えられる抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘発する。または、インビトロでリンパ球に対して免疫処置を行ってもよい。
【0073】
いくつかの態様においては、ヒトモノクローナル抗体を用いることが望ましい場合がある。ヒトモノクローナル抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野において公知のさまざまな手法を用いて作製することができる。同様に、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活化されているトランスジェニック動物、例えばマウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって、ヒト抗体を作製することもできる。抗原刺激を行うとヒト抗体の産生が観察されるが、これは遺伝子再構成、構築および抗体レパートリーを含むすべての点で、ヒトにおいて見られるものとよく似ている。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、および以下の科学出版物:Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992);Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996);Neuberger, Nature Biotechnology 14:826 (1996);Lonberg & Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)に記載されている。
【0074】
抗体特異性
本発明との使用に適した抗体の一例は、mAb IIIA4の結合特異性を有する抗体である。モノクローナル抗体mAb IIIA4は、ネイティブEphA3球状エフリン結合ドメインと結合する(Smith et al., J. Biol. Chem. 279:9522-9531, 2004;およびVearing et al., Cancer Res. 65:6745-6754, 2005)。EphA3表面に対する高親和性mAb IIIA4結合は、EphA3とのエフリンA5相互作用の全体的な親和性にほとんど影響を及ぼさない。
【0075】
例えば、末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルが正常を上回ると決定された患者に投与される治療用抗体として、本発明とともに用いるのに適したヒト改変抗体の例は、WO/2011/053465に提供されている。そのような抗体を診断用に用いることもできる。
【0076】
抗EphA3抗体を治療用に用いる場合には、治療有効性をモニターするための、末梢血におけるEphA3+非造血性非腫瘍細胞のレベルに関するその後の分析で、EphA3の異なるエピトープに結合する抗体を使用することが好ましい。
【0077】
いくつかの態様においては、EphA3に対する結合についてmAb IIIA4と競合するか、またはmAb IIIA4と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体を用いて、末梢血細胞上でのEphA3発現を評価する。いくつかの競合的結合アッセイのいずれかを用いて、同じ抗原に対する結合をめぐる2つの抗体間の競合を測定することができる。例えば、この目的にサンドイッチELISAアッセイを用いることができる。例示的なアッセイでは、ウェルの表面を被覆するために捕捉抗体を用いることによってELISAを行う。続いて、飽和濃度未満のタグ標識抗原を捕捉表面に添加する。このタンパク質は、特異的な抗体:抗原相互作用を介して抗体と結合すると考えられる。洗浄の後、検出可能な部分と連結している第2の抗体をELISAに添加する。この抗体が捕捉抗体と同じ抗原上の部位と結合するか、またはその部位に対する結合を妨げるのであれば、この部位はもはや結合に利用できないため、この抗体は標的タンパク質に結合することができないと考えられる。しかし、この第2の抗体が抗原上の異なる部位を認識するのであれば、この抗体は結合することができると考えられる。結合は、結合している検出可能な標識の量を定量することによって検出することができる。バックグラウンドは、単一の抗体を捕捉抗体および検出抗体の両方として用いることによって定まり、一方、最大シグナルは、抗原特異的抗体で捕捉して、抗原上のタグに対する抗体で検出することによって確定することができる。バックグラウンドおよび最大シグナルを参照基準として用いることによって、抗体をペアワイズ様式で評価して、特異性を決定することができる。特定の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力は、典型的には、そのような競合アッセイ法によって決定される。
【0078】
上記のアッセイ法のいずれかを用いて、第1の抗体の存在下で、抗原に対する第2の抗体の結合が少なくとも30%、通常は少なくとも約40%、50%、60%または75%、多くの場合は少なくとも約90%減少する場合に、第1の抗体は第2の抗体の結合を競合的に阻害するとみなされる。
【0079】
いくつかの態様において、抗体はmAb IIIA4と同じエピトープに結合する。IIIA4およびヒト改変誘導体に対するエピトープは、EphA3のN末端球状リガンド結合ドメイン(以下の部分的ヒトEphA3配列(SEQ ID NO:1)中のアミノ酸29〜202)内に存在する:
【0080】
IIIA4抗体は、受容体に対してエフリンA5の結合と隣接して結合するが、エフリンA5の結合を実質的には妨げない。抗体IIIA4に対するエピトープは、部位特異的変異誘発を用いて、Smith et al., J. Biol. Chem. 279: 9522, 2004によってさらに特徴づけられている。この分析では、132位のグリシンのグルタミン酸への突然変異(G132E)により、IIIA4に対する結合が消失する。バリン133のグルタミン酸への突然変異(V133E)により、IIIA4抗体に対するEphA3の結合はおよそ100分の1に減少する。その後、本発明者らにより、アルギニン136もエピトープの一部であることが観察された。ラットの高度に保存されたEphA3タンパク質の配列において、この残基をロイシンに変更する(R136L)。ラットEphA3は、IIIA4とも、IIIA4のヒト改変誘導体とも結合しない。したがって、G132、V133およびR136(上記配列において太字および下線で表示)は、IIIA4エピトープ内の重要なアミノ酸である。
【0081】
いくつかの態様においては、EphA3+細胞を、IIIA4抗体エピトープとは異なるエピトープに対する第2の抗体を用いて検出することができる。すなわち、いくつかの態様においては、結合に関して第1のEphA3抗体と競合しない第2のEphA3抗体を使用する。
【0082】
結合親和性
いくつかの態様において、本発明との使用に適した抗体は、ヒトEphA3に対する高親和性結合を有する。本発明においては、抗体の解離定数(K
D)が約10nM未満、例えば約5nM、または約2nM、または約1nM、またはそれ未満であるならば、抗体と抗原との間に高親和性結合が存在する。当業者に周知であるように、表面プラズモン共鳴アッセイ、飽和アッセイ、またはELISAもしくはRIAなどのイムノアッセイといった種々の方法を用いて、抗体のその標的抗原に対する結合親和性を決定することができる。結合親和性を決定するための例示的な方法は、Krinner et al., (2007) Mol. Immunol. Feb;44(5):916-25. (Epub 2006 May 11))に記載されているような、CM5センサーチップを用いるBIAcore(商標)2000装置(Biacore AB, Freiburg, Germany)での表面プラズモン共鳴解析によるものである。
【0083】
EphA3発現の検出のための抗EphA3抗体は、EphA3の任意の領域に結合することができる。
【0084】
EphA3発現を検出するために用いられる抗体は、典型的には、検出可能な標識で標識される。アッセイに用いられる具体的な標識または検出可能な基は、それがアッセイに用いられる抗体の特異的結合を著しく妨げない限り、本発明の決定的に重要な局面ではない。標識は、抗体と直接結合させてもよく、または検出アッセイに用いられる別の物質、例えば二次抗体などと結合させてもよい。検出可能な基は、検出可能な物理的特性または化学的特性を有する任意の物質でありうる。そのような検出可能な標識は、イムノアッセイの分野において十分に開発されており、一般に、そのような方法において有用なほとんどあらゆる標識を本発明の方法に適用することができる。すなわち、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的な手段によって検出可能な任意の組成物である。本発明において有用な標識には、蛍光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、フルオレセイン、Alexafluor 488、Alexafluor 647など)、放射性標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAに一般的に用いられるその他のもの)、ストレプトアビジン/ビオチン、および金コロイドまたは着色ガラスまたはプラスチックビーズ(例えばポリスチレン製、ポリプロピレン製、ラテックス製など)、または磁性マイクロビーズを含む磁性ビーズが含まれる。抗体をビーズと直接コンジュゲートさせてもよい。または、ビーズは、ビオチン化抗体と結合することができるストレプトアビジン-コンジュゲート磁性マイクロビーズのように、抗体を捕捉することができる試薬とコンジュゲートさせてもよい。いくつかの態様において、本発明に用いるための抗体-捕捉ビーズは、ストレプトアビジン-コンジュゲートマイクロビーズに、Alexafluor 647などの蛍光性標識をコンジュゲートさせたものである。化学発光性化合物を用いることもできる。
【0085】
固形腫瘍を有するか、または固形腫瘍を有する疑いのある患者の血液中に存在する非造血性非腫瘍細胞上でのEphA3発現を検出するために2つの抗体を利用するいくつかの態様において、シグナルを増幅するために2つの抗体を同じ標識で標識してもよい。他の態様において、抗体は異なる標識で標識してもよい。
【0086】
RNA発現
他の態様において、EphA3の発現は、末梢血細胞において発現される、EphA3をコードするmRNAのレベルを検出することによって検出することができる。多くの場合には、RT-PCRなどの核酸増幅法を利用して、RNAの量を定量する。そのような態様において、典型的には、他の表面マーカーであるCD34、CD45、CD44、CD90、KDRの発現も評価する。そのような態様において、フローサイトメトリーなどによってまず選別した細胞の集団に対して、それがCD34などの表面マーカーを発現するかどうかを決定するために、増幅法を利用してもよい。
【0087】
以下の実施例は例証のためのみに提供されるものであり、限定のために提供されるものではない。当業者は、変更または修正を行っても本質的に同様の結果が得られると考えられる、重要性の低い種々のパラメーターを容易に理解するであろう。
【0088】
キット
本発明はさらに、固形腫瘍を有するか、または固形腫瘍を有する疑いのある患者の血液における非造血性細胞、非腫瘍細胞上でのEphA3発現を評価するためのキットも提供する。キットは、EphA3に選択的に結合する1つまたは複数の抗体を含みうる。典型的な態様において、本発明のキットは、異なるエピトープでEphA3に結合する2つの抗体を含む。いくつかの態様において、この2つの抗体は検出可能な同じ標識で標識されている。または、2つの抗体を異なる検出可能な標識で標識してもよい。
【0089】
キットは任意で、他の構成要素、例えば、CD34、CD45、CD44、CD90もしくはKDRなどの他の表面マーカーに対する抗体;または、EphA3発現を検出するために用いうる緩衝液、材料および構成要素などを含むことができる。
【実施例】
【0090】
実施例1.腫瘍血管系および間質上でのEphA3発現パターン
腫瘍間質発現を例証するための一例として、ヒト前立腺癌の凍結腫瘍切片を免疫組織化学によって分析するために、マウスIIIA4抗体を用いた(腺房腺癌、n=8)(
図1a)。並行処理した切片でIIIA4染色パターンの特異性を確認し(
図1b)、60倍モル過剰量の組換え可溶性EphA3細胞外ドメインの存在下でIIIA4 mAbを用いたところ、抗EphA3シグナルは、二次抗体のみを用いて試験した対照切片で観察されたバックグラウンドレベルまで減少した(
図1c)。さらに別の切片を、間質性および血管性の構成要素をそれぞれ顕示させるために、抗線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)抗体mF19(
図1d)および抗CD31抗体(
図1e)を用いて分析した。
【0091】
対応する分析を、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌および膀胱癌および黒色腫を含む、多岐にわたるヒト腫瘍に対して行った(表1)。分析した膀胱非移行上皮癌を除き、他の腫瘍ではすべて、間質性構成要素におけるEphA3の発現が明らかになった。免疫組織化学によれば、移行上皮癌(TCC)を有する患者数例は間質陽性である(データは示さず)。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例2.EphA3は、ヒト末梢血中における、循環内皮始原細胞とは別個のサイドポピュレーション上で発現される
本実施例は、ヒト末梢血における、循環内皮細胞とは別個の細胞の集団上でEphA3が発現されることを示す。8mlのBD Vacutainer CPT Tubeを記載された通りに用いて(Duda, et al., Nature protocols 2:805-810, 2007)、正常志願者および癌患者から採取した末梢血の試料から末梢血単核細胞を単離した。各ドナーからの並行処理試料を、EphA3のみ(上のパネル)に関して分析するか(
図2)、または多パラメーターフローサイトメトリーによって、MSCマーカーCD90、CD44およびKDRと合わせて(
図2a)、もしくは内皮始原マーカーCD34、KDRおよびCD133の発現と合わせて(
図2b)、EphA3の発現に関して分析した。試料のそれぞれ、ならびに対照試料において、合計1×10
6個ずつの細胞を分析した。後者には、アイソタイプを合致させた関連のない対照抗体を含む試料、FMO(1項目除外蛍光(fluorescence minus one))試料、および適切な検出器設定を決定するために用いた非染色試料を含めた。興味深いことに、EphA3
+細胞はCD90
+/CD44
+/KDR
+間質細胞集団内では見いだされたが(
図2a)、CD45
dim/CD34
+/CD133
+ CEP細胞集団では見いだされなかった(
図2b)。
【0094】
実施例3.末梢血におけるCEPおよびEphA3+細胞のフローサイトメトリー定量
血液試料におけるCEPの濃度を推定するために、FITCコンジュゲート抗CD34、パシフィックブルーコンジュゲート抗CD45、Alexa 674コンジュゲート抗CD31、およびPEコンジュゲート抗CD133とともにインキュベートした1×10
6個の末梢血単球を、フローサイトメトリーによって逐次的に分析した。単一の細胞集団を特異的に分析するために、分析した細胞をゲート処理にかけて、シグナルの特異性を確認するために、上記に概略を示した対照試料を含めた(
図3a)。生存している単一の細胞集団に対してゲートを調整した後に、α-EphA3 mAb IIIA4により、平行処理した試料からの単一の細胞集団を分析した(
図3b)。
【0095】
実施例4.癌細胞における末梢血中のCEPおよびEphA3+細胞の濃度
本実施例は、癌患者の末梢血において、CEPおよびEphA3
+壁(非内皮血管)細胞の濃度が有意に増加していることを示す。
【0096】
ヒト循環単核細胞を、mab IIIA4を用いてEphA3陽性細胞の濃度(
図4a)に関して、または
図3に概略を示したプロトコールを用いてCEPの濃度(
図4b)に関して分析した。このプロットは、47人の癌患者および37人の正常志願者からのデータをまとめており、ここで2つの試料集団の統計分析はWilcoxonのマッチドペア符号付順位検定を用いて行った。フローサイトメトリー分析の分析により、EphA3陽性細胞およびCEPの数はいずれも、癌患者の末梢血において、正常志願者よりも有意に多いことが明らかになった。
【0097】
実施例5.抗血管療法後のCEPおよびEphA3発現細胞の濃度
CEPおよびEphA3発現細胞の濃度は抗血管療法後に低下する。抗血管療法(アバスチン(Avastin))を受けている合計10人(n=10)の結腸癌患者からの末梢血試料を、治療前および治療を終了したその6週後に、mab IIIA4を用いてEphA3
+細胞の存在に関して、およびCEPの存在に関して分析した。統計分析(Wilcoxonのマッチドペア符号付順位検定)により、治療後にこれらの患者の血液中のEphA3陽性細胞およびCEPの濃度の有意な低下が明らかになった(
図5)。
【0098】
以上を総合すると、これらの実施例は、EphA3が、CEPとは表現型の上で別個の循環CD34-/CD45-/CD44+/CD90+/KDR+/EphA3+ MSCの部分集団の目印となることを示している。疾患と相関したCEP濃度の増大と同様に14、これらのEphA3
+ MSCも癌患者の末梢血中で増加していた。抗血管治療は、被験癌患者の全例において、EphA3陽性細胞の数を、正常志願者において見いだされるレベルまで減少させた。
【0099】
実施例6.EphA3発現を検出するための、mab IIIA4以外の抗体の使用
脾臓B細胞とSP2/0細胞との融合による、マウスに対する組換えEphA3-Fc融合タンパク質による免疫処置を用いて、ヒトEphA3の細胞外ドメインに対する一群のマウスモノクローナル抗体を作製した。ハイブリドーマ上清を、組換えヒトEphA3細胞外ドメインに対する抗体結合、およびIIIA4によって認識されるEphA3上の部位に対する結合をめぐる競合に関してスクリーニングした。EphA3と特異的に結合し、かつIIIA4エピトープに対する結合について競合しない、SL-2、SL-5、SL-6およびSL-7と命名された4種のモノクローナル抗体が同定された。これらの抗体はそれぞれ、マウスIgG1アイソタイプ抗体である。
【0100】
組換えEphA3細胞外ドメインに対する抗体の結合を、EphA3の主要なリガンドであるエフリンA5の組換え細胞外ドメインの存在下または非存在下において、EphA3-Fcを用いるELISAによって決定した。
図6に示されているデータは、これらの抗体のうちの3種(SL-2、SL-6およびSL-7)が、EphA3およびエフリンA5とあらかじめ結合させたEphA3に対して同等な結合活性を有することを示している。抗体SL-5の結合はエフリンA5の存在によって阻害され、それ故にSL-5はエフリン結合部位と重なり合うエピトープを認識する。したがって、SL-2、SL-6およびSL-7はEphA3に対して特異的であるが、エフリン結合部位とも、IIIA4エピトープとも結合しない。この一群の抗体により、EphA3細胞外ドメイン上の少なくとも3つの重なり合わないエピトープが特定される。
【0101】
これらの抗体のうちの3種、SL-2、SL-5およびSL-7の、ヒトLK63細胞の表面でのネイティブEphA3に対する結合を、フローサイトメトリーによって決定した(
図7)。10%熱非働化ウシ胎仔血清を加えたRPMI 1640培地中でLK63細胞を維持した。フローサイトメトリー分析のために、200gでの5分間の遠心処理によって細胞を収集した。細胞をPBS(Invitrogen)中で1回洗浄して、氷上で25分間、2%ウシ血清アルブミン(BSA)+PBS中の10μg/mlラットIgGによってブロックした。細胞を25nM精製抗体とともに氷上で30分間インキュベートし、冷PBS+0.5% BSA中で1回洗浄した上で、氷上で20分間、FITCコンジュゲート抗マウス二次抗体(Jackson Immunoresearch)の1:100希釈物中でインキュベートした。細胞を冷PBS+0.5% BSA中で1回洗浄して、その後にFACS分析のために0.5mlの冷PBS中に再懸濁させた。ヨウ化プロピジウム(1μl/試料、Sigma)を用いて、FITCチャンネルの読み取り値から非生存細胞を除外した。細胞をFACS Caliber装置(Beckton Dickinson)によって分析した。
【0102】
SL-2抗体を、製造元の推奨に従った標準的な方法により、Alexa488とコンジュゲートさせた。この抗体調製物は、抗体1分子につき、Alexa488分子をおよそ10個有する。コンジュゲートさせた抗体を用いて、急性骨髄性白血病(AML)と診断された患者からの骨髄細胞に対するSL-2の結合を決定した。
図8に示されているデータは、SL-2が、癌患者由来の初代細胞上のEphA3の分析のための高感度の検出試薬となることを示している。抗体の最大の結合は、SL-2濃度が0.1μg/mlで達成された。
【0103】
これらの抗体はそれぞれ、EphA3を発現するヒト細胞に結合する。したがって、これらの抗体は、体液および患者試料から得られるEphA3発現細胞の検出に用いるために適した試薬である。
【0104】
本発明をその具体的な態様を参照しながら説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を行ってもよく、等価物で置き換えてもよいことを理解すべきである。加えて、特定の状況、材料、物質組成、工程、工程の1つまたは複数の段階に合わせるために多くの改変を行って、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明によって提供される恩典を達成することもできる。そのような改変はすべて、本明細書に添付される特許請求の範囲内にあるものとする。
【0105】
本明細書中に引用された刊行物、特許出願、アクセッション番号、および他の参考文献はすべて、それぞれの個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別的に示されて参照により組み入れられるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられる。
試料における非造血性細胞の存在を検出するためのキットであって、EphA3エピトープに選択的に結合する第1の抗体、および異なるEphA3エピトープに選択的に結合する第2の抗体を含む、前記キット。