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特開2017-51003積層鉄心の分離治具、分離装置及び分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-51003(P2017-51003A)
(43)【公開日】2017年3月9日
(54)【発明の名称】積層鉄心の分離治具、分離装置及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20170217BHJP
【FI】
   H02K15/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-173095(P2015-173095)
(22)【出願日】2015年9月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】松林 敏
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇人
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615AA03
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化する。
【解決手段】積層鉄心の分離装置1は、ヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う鉄心片同士がヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心を、各鉄心片に分離するように構成されている。分離装置1は、積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材50と、各分離部材50を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材50を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与するように構成されたアクチュエータ20とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーク部と、前記ヨーク部に交差する方向に前記ヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う前記鉄心片同士が前記ヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心を、前記各鉄心片に分離するように構成された分離治具であって、
アクチュエータによって前記積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ前記積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材を備える、積層鉄心の分離治具。
【請求項2】
前記アクチュエータによって駆動されるように構成されたシャフトをさらに備え、
前記各分離部材のうち前記径方向内側に位置する内周面は、前記積層鉄心の中心軸に対して傾斜しており、
前記シャフトは、前記各内周面と対応する形状を呈する錐面を有する、請求項1に記載の分離治具。
【請求項3】
表面から突出する突起を有する案内部材を更に備え、
前記各分離部材のうち前記案内部材との対向面には、前記径方向に延びる開口部が設けられ、
前記突起は前記開口部内に挿通されている、請求項1又は2に記載の分離治具。
【請求項4】
前記鉄心片のうち隣り合う前記ティース部間において画定されたスロット内に配置される規制部材を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離治具。
【請求項5】
前記各分離部材は、前記各ティース部に一対一で対応するように配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離治具。
【請求項6】
ヨーク部と、前記ヨーク部に交差する方向に前記ヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う前記鉄心片同士が前記ヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心を、前記各鉄心片に分離するように構成された分離装置であって、
前記積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ前記積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材と、
前記各分離部材を前記径方向の外側に向けて移動させることにより、前記各分離部材を介して前記積層鉄心に対し前記径方向の外向きの力を付与するように構成されたアクチュエータとを備える、積層鉄心の分離装置。
【請求項7】
前記各分離部材のうち前記径方向内側に位置する内周面は、前記積層鉄心の中心軸に対して傾斜しており、
前記アクチュエータは、
前記各内周面と対応する形状を呈する錐面を有するシャフトと、
前記錐面が前記各内周面に当接した状態で前記シャフトを前記各分離部材に対して押しつける押圧機とを有する、請求項6に記載の分離装置。
【請求項8】
表面から突出する突起を有する案内部材を更に備え、
前記各分離部材のうち前記案内部材との対向面には、前記径方向に延びる開口部が設けられ、
前記突起は前記開口部内に挿通されている、請求項6又は7に記載の分離装置。
【請求項9】
前記鉄心片のうち隣り合う前記ティース部間において画定されたスロット内に配置される規制部材を更に備える、請求項6〜8のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項10】
前記各分離部材は、前記各ティース部に一対一で対応するように配置される、請求項6〜9のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項11】
ヨーク部と、前記ヨーク部に交差する方向に前記ヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う前記鉄心片同士が前記ヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心の中央部の空間内に、前記積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ前記積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材が位置するように、前記積層鉄心及び前記各分離部材を配置する第1の工程と、
アクチュエータによって前記各分離部材を前記径方向の外側に向けて移動させることにより、前記各分離部材を介して前記積層鉄心に対し前記径方向の外向きの力を付与する第2の工程とを含む、積層鉄心の分離方法。
【請求項12】
前記第2の工程では、案内部材によって径方向に案内されるように構成された前記各分離部材を前記アクチュエータによって前記径方向の外側に移動させることにより、前記各分離部材を介して前記積層鉄心に対し前記径方向の外向きの力を付与する、請求項11に記載の分離方法。
【請求項13】
前記第2の工程では、周方向における積層鉄心の移動を規制部材によって規制した状態で、アクチュエータによって前記各分離部材を前記径方向の外側に向けて移動させることにより、前記各分離部材を介して前記積層鉄心に対し前記径方向の外向きの力を付与する、請求項11又は12に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心、特に複数の鉄心片に分割された分割型積層鉄心を各鉄心片に分離するための分離治具、分離装置及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層鉄心は、モータ(電動機)を構成する部品である。積層鉄心は、所定形状に加工された複数の電磁鋼板を積み重ねて締結することにより得られる。積層鉄心は、一般に、環状のヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びる複数のティース部とを有する。モータを得るために、各ティース部には巻線が所定回数巻回される。しかしながら、一般に、隣り合うティース部同士の間隔が狭いので、巻線のティース部への巻回作業が困難となる傾向にある。
【0003】
そこで、特許文献1は、ヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を形成する工程と、各ティース部に巻線を巻回する工程と、隣り合うヨーク部同士を接続するように各鉄心片を組み立てて、環状の積層鉄心を得る工程とを含む積層鉄心の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−081799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の鉄心片を形成するための第1の方法として、鉄心片の形状に加工された複数の電磁鋼板を積み重ねて締結することが考えられる。しかしながら、この場合、鉄心片が一つずつ個別に形成されるので、鉄心片の製造に手間及び時間を要する傾向にある。また、電磁鋼板のうち鉄心片として利用できる部分が少なくなるので、材料のロスに繋がりうる。
【0006】
そこで、複数の鉄心片を形成するための第2の方法として、電磁鋼板に複数の切断線を形成することと、切断線を有する電磁鋼板を積層鉄心の形状となるように打ち抜き、切断線を有する加工体を得ることと、複数の加工体を積み重ねて締結することにより環状の積層鉄心を得ることと、得られた積層鉄心を切断線において分離することとが考えられる。ここで、切断線は、例えば、電磁鋼板の切り曲げ後、プッシュバックによって切り曲げ部分を元の位置に戻して、切り曲げ部分を元の電磁鋼板に圧入することによって得られる。これにより、鉄心片同士が切断線において嵌合された状態の積層鉄心が構成される。この方法によれば、いったん積層鉄心を構成した後に、切断線において積層鉄心を個片化するだけで、複数の鉄心片を得ることができる。
【0007】
しかしながら、上記のとおり、鉄心片同士が切断線において嵌合されているので、作業者が切断線部分に手で力を加えただけでは、積層鉄心を個片化することができない。そのため、所定の工具を用いて作業者が積層鉄心を鉄心片に一つずつ個片化しなければならず、個片化作業に手間と時間を要することがある。
【0008】
そこで、本開示は、積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化することが可能な積層鉄心の分離治具、分離装置及び分離方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の分離治具は、ヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う鉄心片同士がヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心を、各鉄心片に分離するように構成された分離治具であって、アクチュエータによって積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材を備える。
【0010】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の分離治具では、複数の分離部材が、アクチュエータによって積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置されている。そのため、アクチュエータによって各分離部材が径方向外側に向けて移動されると、各分離部材により、積層鉄心の各鉄心片に対して径方向外向きの力が略同時に且つ略均一に付与される。従って、アクチュエータによって各分離部材を移動させるだけで、積層鉄心が各鉄心片へと略同時に個片化される。その結果、積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化することが可能となる。
【0011】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の分離治具は、アクチュエータによって駆動されるように構成されたシャフトをさらに備え、各分離部材のうち径方向内側に位置する内周面は、積層鉄心の中心軸に対して傾斜しており、シャフトは、各内周面と対応する形状を呈する錐面を有していてもよい。この場合、アクチュエータによってシャフトが各分離部材に対して押しつけられると、シャフトの錐面が各内周面上を摺動しながら各内周面に外向きの力を付与する。そのため、各分離部材が、径方向に押し出される。従って、極めて簡易な構成で、各分離部材を径方向外側に移動させることができる。
【0012】
本開示の一つの観点に係る積層鉄心の分離治具は、表面から突出する突起を有する案内部材を更に備え、各分離部材のうち案内部材との対向面には、径方向に延びる開口部が設けられ、突起は開口部内に挿通されていてもよい。この場合、開口部内に挿通された突起によって、分離部材が開口部の延在方向に案内される。そのため、極めて簡易な構成で、各分離部材を確実に径方向に案内することができる。
【0013】
鉄心片のうち隣り合うティース部間において画定されたスロット内に配置される規制部材を更に備えていてもよい。この場合、周方向における積層鉄心のぶれが規制部材によって抑制される。そのため、各分離部材から各鉄心片に対して径方向外向きの力が効果的に作用する。従って、積層鉄心をよりスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0014】
各分離部材は、各ティース部に一対一で対応するように配置されていてもよい。この場合、各分離部材により、積層鉄心の各鉄心片に対して径方向外向きの力がより均一に付与される。そのため、特定の鉄心片に集中的に力が付加されることが抑制される。従って、積層鉄心をさらにスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0015】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離装置は、ヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う鉄心片同士がヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心を、各鉄心片に分離するように構成された分離装置であって、積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材と、各分離部材を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与するように構成されたアクチュエータとを備える。
【0016】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離装置では、アクチュエータによって各分離部材を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与している。そのため、各分離部材により、積層鉄心の各鉄心片に対して径方向外向きの力が略同時に且つ略均一に付与される。従って、アクチュエータによって各分離部材を移動させるだけで、積層鉄心が各鉄心片へと略同時に個片化される。その結果、積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化することが可能となる。
【0017】
各分離部材のうち径方向内側に位置する内周面は、積層鉄心の中心軸に対して傾斜しており、アクチュエータは、各内周面と対応する形状を呈する錐面を有するシャフトと、錐面が各内周面に当接した状態でシャフトを各分離部材に対して押しつける押圧機とを有してもよい。この場合、押圧機によってシャフトが各分離部材に対して押しつけられると、シャフトの錐面が各内周面上を摺動しながら各内周面に外向きの力を付与する。そのため、各分離部材が、径方向に押し出される。従って、極めて簡易な構成で、各分離部材を径方向外側に移動させることができる。
【0018】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離装置は、表面から突出する突起を有する案内部材を更に備え、各分離部材のうち案内部材との対向面には、径方向に延びる開口部が設けられ、突起は開口部内に挿通されていてもよい。この場合、開口部内に挿通された突起によって、分離部材が開口部の延在方向に案内される。そのため、極めて簡易な構成で、各分離部材を確実に径方向に案内することができる。
【0019】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離装置は、鉄心片のうち隣り合うティース部間において画定されたスロット内に配置される規制部材を更に備えてもよい。この場合、周方向における積層鉄心のぶれが規制部材によって抑制される。そのため、各分離部材から各鉄心片に対して径方向外向きの力が効果的に作用する。従って、積層鉄心をよりスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0020】
各分離部材は、各ティース部に一対一で対応するように配置されてもよい。この場合、各分離部材により、積層鉄心の各鉄心片に対して径方向外向きの力がより均一に付与される。そのため、特定の鉄心片に集中的に力が付加されることが抑制される。従って、積層鉄心をさらにスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0021】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離方法は、ヨーク部と、ヨーク部に交差する方向にヨーク部から延びるティース部とを含む複数の鉄心片を有し、隣り合う鉄心片同士がヨーク部の端部において仮接続されることにより一体化された環状の積層鉄心の中央部の空間内に、積層鉄心の径方向に移動可能に構成され且つ積層鉄心の周方向に沿って並ぶように配置された複数の分離部材が位置するように、積層鉄心及び各分離部材を配置する第1の工程と、アクチュエータによって各分離部材を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与する第2の工程とを含む。
【0022】
本開示の他の観点に係る積層鉄心の分離方法では、第2の工程において、アクチュエータによって各分離部材を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与している。そのため、各分離部材により、積層鉄心の各鉄心片に対して径方向外向きの力が略同時に且つ略均一に付与される。従って、アクチュエータによって各分離部材を移動させるだけで、積層鉄心が各鉄心片へと略同時に個片化される。その結果、積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化することが可能となる。
【0023】
第2の工程では、案内部材によって径方向に案内されるように構成された各分離部材をアクチュエータによって径方向の外側に移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与してもよい。この場合、案内部材によって各分離部材がより確実に径方向外側に移動する。そのため、積層鉄心に対し径方向の外向きの力がより効果的に作用する。従って、積層鉄心をよりスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0024】
第2の工程では、周方向における積層鉄心の移動を規制部材によって規制した状態で、アクチュエータによって各分離部材を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材を介して積層鉄心に対し径方向の外向きの力を付与してもよい。この場合、周方向における積層鉄心のぶれが規制部材によって抑制される。そのため、各分離部材から各鉄心片に対して径方向外向きの力が効果的に作用する。従って、積層鉄心をさらにスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示に係る積層鉄心の分離治具、分離装置及び分離方法によれば、積層鉄心を簡易且つ短時間で鉄心片に個片化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の積層鉄心を構成する架構体を示す上面図である。
図3図3は、積層鉄心の分離装置を示す分解斜視図である。
図4図4は、上プレートの下面側を示す斜視図である。
図5図5は、分離装置に搭載された積層鉄心が分離される前の状態を、アクチュエータを省略して示す上面図である。
図6図6は、分離装置に搭載された積層鉄心が分離される前の状態を側方から見た断面図である。
図7図7は、分離装置に搭載された積層鉄心が分離された後の状態を側方から見た断面図である。
図8図8は、分離装置に搭載された積層鉄心が分離された後の状態を、アクチュエータを省略して示す上面図である。
図9図9は、積層鉄心の他の例を示す斜視図である。
図10図10は、図9の積層鉄心の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0028】
[積層鉄心の構成]
まず、図1及び図2を参照して、積層鉄心100の構成について説明する。積層鉄心100は、例えば、モータ(電動機)のステータ(固定子)である。積層鉄心100は、図1に示されるように、円筒形状を呈する。すなわち、積層鉄心100は、その中心軸Ax方向から見て環状を呈している。積層鉄心100の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔101が設けられている。貫通孔101内には、モータのロータ(回転子)が配置可能である。
【0029】
積層鉄心100は、ヨーク部102と、複数のティース部103とを有する。ヨーク部102は、円環状を呈しており、中心軸Ax囲むように延びている。ヨーク部102の径方向における幅は、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさとなりうるが、例えば2mm〜40mm程度であってもよい。
【0030】
各ティース部103は、ヨーク部102の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部102の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部103は、ヨーク部102の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。図1に示される積層鉄心100においては、12個のティース部103がヨーク部102に一体的に形成されている。
【0031】
各ティース部103は、ヨーク部102の周方向において、略等間隔で並んでいる。積層鉄心100がモータとして構成される場合には、各ティース部103には、巻線(図示せず)が所定回数巻回される。隣り合うティース部103の間には、巻線を配置するための空間であるスロット104が画定されている。
【0032】
積層鉄心100は、図2に示される複数の加工体200によって構成されている。具体的には、積層鉄心100は、複数の加工体200を積み重ね、これらを締結することによって得られる。複数の加工体200を締結するために、種々の公知の方法を採用してもよい。例えば、接着剤又は樹脂材料を用いた接合、カシメ、溶接等によって、複数の加工体200を締結してもよい。このうち、低コスト及び作業効率性の観点から、カシメ又は溶接によって複数の加工体200を締結してもよい。一方、モータにおける高トルクの発現及び低鉄損の観点から、接着剤又は樹脂材料を用いた接合によって複数の加工体200を締結してもよい。加工体200に仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の加工体200を締結して積層体を得た後、仮カシメを当該積層体から除去することによって、積層鉄心100を得てもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の加工体200を一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(積層鉄心100)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0033】
加工体200は、例えば、被加工板(電磁鋼板)が加工(例えば、打ち抜き加工、切り曲げ加工等)されることにより得られる。加工体200に仮カシメが設けられていない場合、中心軸Ax方向から見た加工体200の形状は、中心軸Ax方向から見た積層鉄心100の形状と略同一である(図1及び図2参照)。そのため、加工体200も、図2に示されるように、中心軸Ax方向から見て円環状を呈している。加工体200の中央部分には、貫通孔201が設けられている。
【0034】
加工体200は、ヨーク部202と、複数のティース部203とを有する。ヨーク部202は、円環状を呈しており、中心軸Ax囲むように延びている。ヨーク部202の径方向における幅は、ヨーク部102の径方向における幅と同程度である。
【0035】
ヨーク部202には、複数の切断線CLが設けられている。図2に示される加工体200においては、ヨーク部202に12本の切断線CLが設けられている。各切断線CLは、ヨーク部202を横断するようにヨーク部202の径方向に沿って延びている。各切断線CLは、ヨーク部202の周方向において、略等間隔で並んでいる。各切断線CLは、例えば、被加工板(電磁鋼板)を切り曲げ加工又は打ち抜き加工した後、切り曲げ部分又は打ち抜き部分をプッシュバックして、元の被加工板に圧入することにより、形成されてもよい。被加工板が切り曲げ加工又は打抜き加工されると、切り曲げ部分又は打ち抜き部分が塑性変形して若干延びるので、当該部分が元の被加工板へ圧入されると、当該部分と元の被加工板とは、人手では簡単に外れない程度にしっかりと嵌まり合う。
【0036】
切断線CLの形状は、図1及び図2に示されるような凹凸状に限定されず、ヨーク部202の外周縁と内周縁との間を横断していれば、直線状、曲線状、クランク状、弧状、円弧状等の種々の形状であってもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、ヨーク部202の径方向に沿って延びていてもよいし、ヨーク部202の径方向に対して所定の角度傾斜した状態で延びていてもよい。切断線CLの形状が直線状である場合には、小さな力でヨーク部202を切断線CLにおいて個片化しやすい傾向にある。
【0037】
各ティース部203は、ヨーク部202の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部202の径方向に沿って延びている。すなわち、各ティース部203は、ヨーク部202の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。本実施形態においては、12個のティース部203がヨーク部202に一体的に形成されている。
【0038】
各ティース部203は、ヨーク部202の周方向において、略等間隔で並んでいる。各ティース部203はそれぞれ、ヨーク部202の周方向において、隣り合う切断線CLの間に位置している。隣り合うティース部203の間には、巻線を配置するための空間であるスロット204が画定されている。
【0039】
加工体200が切断線CLにおいて個片化された場合、一つの加工体200から複数の板片205(図2では12個の板片205)が得られる。換言すれば、加工体200は、複数の板片205が組み合わされた組物であるともいえる。一つの板片205は、一つのヨーク部202aと、一つのティース部203とで構成されている。ヨーク部202aは、ヨーク部202が切断線CLで分離されたときのヨーク部202の一部分である。従って、加工体200は、中心軸Axの周方向において隣り合う板片205がヨーク部202aの端部(切断線CL)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0040】
積層鉄心100は、ヨーク部202同士、ティース部203同士及び切断線CL同士が互いに重なり合うように複数の加工体200を積み重ね、これらを締結して得られる。そのため、積層鉄心100に所定の力を付与して積層鉄心100を切断線CLにおいて個片化すると、一つの積層鉄心100から、複数の鉄心片105(図1では12個の鉄心片105)が得られる。換言すれば、積層鉄心100も、複数の鉄心片105が組み合わされた組物であるともいえる。一つの鉄心片105は、一つのヨーク部102aと、一つのティース部103とで構成されている。ヨーク部102aは、ヨーク部102が切断線CLで分離されたときのヨーク部102の一部分である。従って、積層鉄心100は、中心軸Axの周方向において隣り合う鉄心片105がヨーク部102aの端部(切断線CL)において仮接続されることにより一体化されたものである。
【0041】
[分離装置]
次に、図3及び図4を参照して、積層鉄心100を各鉄心片105に分離(個片化)するための分離装置1の構成を説明する。分離装置1は、保持プレート10(案内部材)と、アクチュエータ20と、複数の案内シャフト30と、複数の規制部材40と、複数の分離部材50とを備える。
【0042】
保持プレート10は、矩形状を呈する板状部材である。保持プレート10は、載置された積層鉄心100を保持するように構成されている。保持プレート10には、貫通孔11と、複数の貫通孔12と、複数の貫通孔13と、複数の案内ピン14(突起)とが設けられている。
【0043】
貫通孔11は、保持プレート10の中央部に位置している。貫通孔11は、円形状を呈している。複数の貫通孔12は、貫通孔11の周囲に位置している。本実施形態においては、4つの貫通孔12が保持プレート10の各角部にそれぞれ位置している。貫通孔12は、円形状を呈している。
【0044】
複数の貫通孔13は、貫通孔11を取り囲み且つ複数の貫通孔12よりも内側に位置している。本実施形態においては、12個の貫通孔13が貫通孔11を取り囲んでいる。各貫通孔13は、貫通孔11の周方向において、略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔13は、台形状を呈している。貫通孔13をなす一対の底辺のうち短辺側は貫通孔11寄りに位置しており、貫通孔13をなす一対の底辺のうち長辺側は保持プレート10の外縁寄りに位置している。すなわち、貫通孔11側に向かうにつれて、貫通孔13の空間が狭くなっている。
【0045】
複数の案内ピン14は、保持プレート10の表面から図3の上方に向けて突出している。複数の案内ピン14は、円柱形状を呈している。複数の案内ピン14は、貫通孔11と貫通孔13との間に位置している。複数の案内ピン14は、貫通孔11から外側に向けて放射状に並んでいる。本実施形態においては、貫通孔11から外側に向けて並ぶ一対の案内ピン14の組が、貫通孔11の周方向において略等間隔で円状に並んでいる。本実施形態では、一対の案内ピン14が12組存在している。平面視において、一対の案内ピン14の組を結ぶ仮想直線は、貫通孔13と交差していない。すなわち、貫通孔11の周方向において、貫通孔13と一対の案内ピン14の組とは、交互に並んでいる。
【0046】
案内ピン14は、保持プレート10と一体的に形成されていてもよいし、保持プレート10と別体であってもよい。案内ピン14が保持プレート10と別体である場合には、例えば、保持プレート10に設けられた孔に案内ピン14の基端部が取り付けられてもよい。
【0047】
アクチュエータ20は、押圧機21と、上プレート22(案内部材)とを有する。押圧機21は、上プレート22を押圧して、上プレート22を保持プレート10に向けて近づけるように構成されている。押圧機21は、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、電動シリンダ等の直動機構であってもよい。押圧機21は、上プレート22を保持プレート10から離間させるように構成されていてもよい。すなわち、押圧機21は、保持プレート10に近接及び離間するように上プレート22を移動させてもよい。
【0048】
上プレート22は、図3及び図4に示されるように、矩形状を呈する板状部材である。上プレート22には、押圧シャフト23(シャフト)と、複数の貫通孔24と、複数の貫通孔25と、複数の案内ピン26(突起)とが設けられている。
【0049】
押圧シャフト23は、上プレート22の中央部に位置している。押圧シャフト23は、上プレート22の表面から図4の上方に向けて突出している。押圧シャフト23は、先端に向かうにつれて縮径する円錐台形状を呈している。そのため、押圧シャフト23の周面は錐面状を呈している。
【0050】
押圧シャフト23は、上プレート22と一体的に形成されていてもよいし、上プレート22と別体であってもよい。押圧シャフト23が上プレート22と別体である場合には、例えば、上プレート22に設けられた孔に押圧シャフト23の基端部が取り付けられてもよい。
【0051】
複数の貫通孔24は、押圧シャフト23の周囲に位置している。本実施形態においては、4つの貫通孔24が上プレート22の各角部にそれぞれ位置している。
【0052】
複数の貫通孔25は、押圧シャフト23を取り囲み且つ複数の貫通孔24よりも内側に位置している。本実施形態においては、12個の貫通孔25が押圧シャフト23を取り囲んでいる。各貫通孔25は、押圧シャフト23の周方向において、略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔25は、貫通孔13と同様の形状及び大きさである。貫通孔25をなす一対の底辺のうち短辺側は押圧シャフト23寄りに位置しており、貫通孔25をなす一対の底辺のうち長辺側は上プレート22の外縁寄りに位置している。すなわち、貫通孔25側に向かうにつれて、貫通孔25の空間が狭くなっている。
【0053】
複数の案内ピン26は、上プレート22のうち押圧シャフト23と同じ側の表面から図4の上方に向けて突出している。複数の案内ピン26は、円柱形状を呈している。複数の案内ピン26は、押圧シャフト23と貫通孔25との間に位置している。複数の案内ピン26は、押圧シャフト23から外側に向けて放射状に並んでいる。本実施形態においては、押圧シャフト23から外側に向けて並ぶ一対の案内ピン26の組が、押圧シャフト23の周方向において略等間隔で円状に並んでいる。本実施形態では、一対の案内ピン26が12組存在している。平面視において、一対の案内ピン26の組を結ぶ仮想直線は、貫通孔25と交差していない。すなわち、押圧シャフト23の周方向において、貫通孔25と一対の案内ピン26の組とは、交互に並んでいる。
【0054】
案内ピン26は、上プレート22と一体的に形成されていてもよいし、上プレート22と別体であってもよい。案内ピン26が上プレート22と別体である場合には、例えば、上プレート22に設けられた孔に案内ピン26の基端部が取り付けられてもよい。
【0055】
複数の案内シャフト30は、円柱形状を呈する。本実施形態においては、分離装置1は、貫通孔12,24と同数の4本の案内シャフト30を備えている。案内シャフト30の直径は、貫通孔12の直径と略同一であるが、貫通孔24の直径よりも僅かに小さい。各案内シャフト30は、保持プレート10の各貫通孔12にそれぞれ圧入固定されている。そのため、保持プレート10は各案内シャフト30に対して移動しない。各案内シャフト30は、上プレート22の各貫通孔24にそれぞれ挿通可能である。そのため、上プレート22は、案内シャフト30が貫通孔24に挿通された状態で、案内シャフト30に沿って移動可能である。
【0056】
複数の規制部材40は、台形柱状を呈する。すなわち、規制部材40は、一対の底面が台形状の角柱である。本実施形態においては、分離装置1は、貫通孔13,25と同数の12個の規制部材40を備えている。平面視において、規制部材40の外形は、貫通孔13,25と略同一であるか、貫通孔13,25よりも僅かに小さい。各規制部材40は、保持プレート10の各貫通孔13にそれぞれ挿通可能である。各規制部材40は、上プレート22の各貫通孔25にそれぞれ挿通可能である。規制部材40が貫通孔13,25に挿通された状態で、保持プレート10及び上プレート22は、規制部材40に沿って移動可能である。
【0057】
複数の分離部材50は、扇形状を呈する。分離部材50は、例えば、円環状の柱部材を複数に分割することにより得ることができる。より詳細には、保持プレート10及び上プレート22とそれぞれ対向する分離部材50の一対の底面は、円弧状の外周縁と、当該外周縁よりも長さが短い円弧状の内周縁と、外周縁の一端と内周縁の一端を接続する直線と、外周縁の他端と内周縁の他端とを接続する直線とで構成されている。分離部材50の内周面51は、図6及び図8に示されるように、図3の下方に向かうにつれて内側に近づく傾斜面を呈している。内周面51の形状は、押圧シャフト23の周面と対応している。
【0058】
分離部材50には、貫通孔52(開口部)が設けられている。貫通孔52は、分離部材50の高さ方向、すなわち一対の底面の対向方向において延びている。貫通孔52は、分離部材50の内周面と外周面との間において延びる長孔状を呈する。貫通孔52の幅は、案内ピン14,26の直径と略同一であるか、案内ピン14,26の直径よりも僅かに大きい。貫通孔52の長さは、一対の案内ピン14の外法寸法及び一対の案内ピン26の外法寸法よりも大きい。そのため、貫通孔52内には、一対の案内ピン14及び一対の案内ピン26がそれぞれ挿通可能である。貫通孔52内に案内ピン14,26が挿通された状態で、分離部材50は貫通孔52の長さ方向に移動可能である。すなわち、案内ピン14,26は、分離部材50を貫通孔52の長さ方向に案内するように構成されている。本実施形態においては、分離装置1は、一対の案内ピン14の組の数及び一対の案内ピン26の組の数と同数の12個の分離部材50を備えている。
【0059】
[分離方法]
続いて、図5図8を参照して、分離装置1を用いて積層鉄心100を各鉄心片に分離(個片化)する方法について説明する。
【0060】
まず、保持プレート10の各貫通孔12,13にそれぞれ、案内シャフト30及び規制部材40を挿通する。次に、各貫通孔52内に一対の案内ピン14の組がそれぞれ挿通されるように各分離部材50を保持プレート10上に載置する。こうして、案内シャフト30、規制部材40及び分離部材50が保持プレート10に取り付けられる。なお、案内シャフト30、規制部材40及び分離部材50を保持プレート10に取り付ける順序は、特に限定されず、任意の順序であってもよい。
【0061】
次に、図5に示されるように、積層鉄心100を保持プレート10上に載置する。このとき、各スロット104内に規制部材40がそれぞれ挿通された状態となる。そのため、積層鉄心100は、その周方向における移動が規制部材40によって規制される。すなわち、規制部材40は、周方向における積層鉄心100の移動を規制するように構成されている。また、このとき、積層鉄心100の貫通孔101内に各分離部材50が収容され、各ティース部103の内周面がそれぞれ、分離部材50の外周面に当接した状態となる。そのため、各分離部材50は、各ティース部103に一対一で対応するように配置される。従って、各分離部材50は、積層鉄心100の周方向に沿って並ぶように配置されている。各分離部材50の内周面51は、積層鉄心100の中心軸Axに対して傾斜している。内周面51の中心軸Axに対する傾斜角は、例えば2°〜10°程度であってもよい。
【0062】
次に、図6に示されるように、アクチュエータ20を保持プレート10及び積層鉄心100上に搭載する。このとき、各貫通孔24内に案内シャフト30がそれぞれ挿通されると共に、各貫通孔25内に規制部材40がそれぞれ挿通された状態となる。また、このとき、各貫通孔52に一対の案内ピン26の組がそれぞれ挿通された状態となる。さらに、このとき、押圧シャフト23の周面(錐面)が各分離部材50の内周面51に当接した状態となる。
【0063】
次に、押圧機21を作動させて、上プレート22を保持プレート10に近づくように押し出す。このとき、図7に示されるように、押圧シャフト23の周面(錐面)が各分離部材50の内周面51に当接した状態のまま、押圧機21によって押圧シャフト23が各分離部材50に対して押しつけられる。そのため、押圧シャフト23の周面(錐面)が内周面51上を摺動しながら内周面51に外向きの力を付与する。従って、各分離部材50は、一対の案内ピン14,26によって案内されつつ、積層鉄心100の径方向外側に移動する。分離部材50の外周面はそれぞれ各ティース部103の内周面に当接した状態であるので、積層鉄心100の径方向外側に移動した各分離部材50は、各ティース部103に対して積層鉄心100の径方向外向きの力を付与する。その結果、図8に示されるように、積層鉄心100が各鉄心片105に個片化される。なお、押圧機21による上プレート22の押圧力は、例えば1000kgf程度であってもよい。押圧機21が上プレート22を保持プレート10に近づける大きさは例えば8mm〜12mm程度であってもよく、各分離部材50が積層鉄心100の径方向外側に移動する大きさは例えば0.3mm〜1.0mm程度であってもよい。
【0064】
[作用]
以上のような本実施形態では、アクチュエータ20(押圧機21及び押圧シャフト23)によって各分離部材50を径方向の外側に向けて移動させることにより、各分離部材50を介して積層鉄心100に対し径方向の外向きの力を付与している。そのため、各分離部材50により、積層鉄心100の各鉄心片105に対して径方向外向きの力が略同時に且つ略均一に付与される。従って、アクチュエータ20によって各分離部材50を移動させるだけで、積層鉄心100が各鉄心片105へと略同時に個片化される。その結果、積層鉄心100を簡易且つ短時間で鉄心片105に個片化することが可能となる。しかも、積層鉄心100の中心軸Axに沿う方向の力を積層鉄心100に対して付与すると、加工体200が剥がれてしまう懸念があるが、本実施形態では、積層鉄心100の径方向外向きの力を積層鉄心100に対して付与しているので、積層鉄心100の個片化の際に加工体200が極めて剥がれ難い。
【0065】
本実施形態では、押圧シャフト23の錐面が各分離部材50の内周面51に当接した状態で、押圧機21が上プレート22(押圧シャフト23)を各分離部材50に対して押しつけている。そのため、押圧シャフト23の周面(錐面)が内周面51上を摺動しながら内周面51に外向きの力を付与する。従って、極めて簡易な構成で、各分離部材50を径方向外側に移動させることができる。
【0066】
本実施形態では、各分離部材50の貫通孔52内に一対の案内ピン14の組及び一対の案内ピン26の組が挿通されている。そのため、貫通孔52内に挿通された一対の案内ピン14の組及び一対の案内ピン26の組によって、各分離部材50が貫通孔52の延在方向に案内される。従って、極めて簡易な構成で、各分離部材50を確実に径方向に案内することができる。また、案内ピン14,26によって各分離部材50がより確実に径方向外側に移動する。そのため、積層鉄心100に対し径方向の外向きの力がより効果的に作用する。従って、積層鉄心100をよりスムーズに鉄心片105に個片化することができる。
【0067】
本実施形態では、分離装置1が、隣り合う鉄心片105のティース部103の間、すなわちスロット104内に配置される規制部材40を備えている。そのため、周方向における積層鉄心100のぶれが規制部材40によって抑制される。従って、各分離部材50から各鉄心片105に対して径方向外向きの力が効果的に作用する。その結果、積層鉄心をよりスムーズに鉄心片に個片化することができる。
【0068】
本実施形態では、各分離部材50が、各ティース部103に一対一で対応するように配置されている。そのため、各分離部材50により、積層鉄心100の各鉄心片105に対して径方向外向きの力がより均一に付与される。従って、特定の鉄心片105に対して集中的に力が付与されることが抑制される。その結果、積層鉄心100をさらにスムーズに鉄心片105に個片化することができる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、上記の実施形態では、内側にロータが配置されるインナーロータタイプの積層鉄心100について説明したが、外側にロータが配置されるアウターロータタイプの積層鉄心にも本発明を適用してもよい。
【0070】
上記の実施形態では、積層鉄心100に対して上側から押圧シャフト23を作用させたが、積層鉄心100に対して他の方向(例えば下側)から押圧シャフト23を作用させてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、規制部材40が各スロット104内に一つずつ挿通されたが、少なくとも一つのスロット104に規制部材40が挿通されていてもよい。分離装置1が規制部材40を備えず、いずれのスロット104内にも規制部材40が挿通されなくてもよい。
【0072】
案内シャフト30の上端部及び下端部は、貫通孔12,24への挿通が容易に行えるよう、テーパ状を呈していてもよい。規制部材40の上端部及び下端部は、貫通孔13,25への挿通が容易に行えるよう、テーパ状を呈していてもよい。案内ピン14,26の先端は、貫通孔52への挿通が容易に行えるよう、テーパ状を呈していてもよい。
【0073】
上記の実施形態では、各分離部材50が、各ティース部103に一対一で対応するように配置されていたが、分離装置1は少なくとも2つの分離部材50を備えていてもよい。各分離部材50が各ティース部103に一対一で対応していない分、各鉄心片105に対して付与される径方向外向きの力の均一性が低下しうるが、この場合でも、積層鉄心100を簡易且つ短時間で鉄心片105に個片化することが可能となる。ただし、規制部材40によって積層鉄心100の移動を規制していれば、この場合でも、各鉄心片105に対して径方向外向きの力を均一に付与しやすくなる。
【0074】
上記の実施形態では、積層鉄心100の貫通孔101内に収容された各分離部材50をアクチュエータ20により積層鉄心100の径方向外側に押し出すことで、積層鉄心100を個片化したが、積層鉄心100をその径方向外側に引っ張ることにより、積層鉄心100を個片化してもよい。
【0075】
上記の実施形態では、各貫通孔52内に一対の案内ピン14の組及び一対の案内ピン26の組がそれぞれ挿通されていたが、一対の案内ピン14の組及び一対の案内ピン26の組に代えて、貫通孔52よりも長さが短い突条が保持プレート10及び上プレート22にそれぞれ設けられていてもよい。保持プレート10上に設けられる突条は、貫通孔11から外側に向けて放射状に延びる(積層鉄心100の径方向に延びる)。上プレート22上に設けられる突条は、押圧シャフト23から外側に向けて放射状に延びる(積層鉄心100の径方向に延びる)。
【0076】
保持プレート10及び上プレート22に溝部が設けられており、当該溝部に挿通される案内ピン又は突条が各分離部材50に設けられていてもよい。保持プレート10に設けられる溝部は、貫通孔11から外側に向けて放射状に延びる(積層鉄心100の径方向に延びる)。上プレート22に設けられる溝部は、押圧シャフト23から外側に向けて放射状に延びる(積層鉄心100の径方向に延びる)。
【0077】
分離部材50の貫通孔52に代えて、分離部材50を貫通しない開口部が、分離部材50のうち保持プレート10及び上プレート22に対向する各対向面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0078】
保持プレート10の貫通孔11〜13に代えて、保持プレート10を貫通しない開口部が保持プレート10に設けられていてもよい。
【0079】
上記の実施形態では、全ての切断線CLが積層方向(中心軸Ax方向)において互いに重なり合うように積層鉄心100が構成されていたが、図9及び図10に示されるように、全ての切断線CLが積層方向において重なり合っていなくてもよい。具体的には、切断線CLが積層方向において互いに重なり合うように積層された複数枚の加工体200aで構成される第1の組と、切断線CLが積層方向において互いに重なり合う複数枚の加工体200bで構成される第2の組とが、積層方向において交互に並んでいてもよい。このとき、加工体200aの切断線CLと、加工体200bの切断線CLとは、積層方向において重なり合っていない。そのため、図10に示されるように、鉄心片105の側面は、突部105aと凹部105bとが積層方向において交互に並んだ凹凸面を呈している。
【0080】
以上の実施形態では、アクチュエータ20(押圧機21)を備える分離装置1について説明したが、アクチュエータ20(押圧機21)を備えない分離治具2(図3参照)に本発明を適用してもよい。分離治具2は、少なくとも分離部材50を備えていればよい。分離治具2は、分離部材50の他に、分離装置1のうち押圧機21以外の部材(保持プレート10、上プレート22、案内シャフト30、規制部材40)を備えていてもよい。この場合、他の装置が備えるアクチュエータ20(押圧機21)によって、分離治具2の各分離部材50を積層鉄心100の径方向外側に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…分離装置、2…分離治具、10…保持プレート(案内部材)、14…案内ピン(突起)、20…アクチュエータ、21…押圧機、22…上プレート(案内部材)、23…押圧シャフト(シャフト)、26…案内ピン(突起)、40…規制部材、50…分離部材、52…貫通孔(開口部)、100…積層鉄心、102,102a…ヨーク部、103…ティース部、104…スロット、105…鉄心片、200…加工体、202,202a…ヨーク部、203…ティース部、205…板片、Ax…中心軸、CL…切断線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10