前記第1処理工程は、処理塔に充填された前記ゼオライトに処理用ガスを通気することにより実施され、前記処理塔の出口における前記被処理ガス成分の濃度が、前記処理塔の入口における前記被処理ガス成分の濃度と同じになるまで、前記処理用ガスを通気する、請求項1〜3の何れか一項記載のガス浄化方法。
前記第2処理工程では、前記ゼオライトは加熱炉において、通風が無い状態で400℃〜500℃の温度で加熱することにより、前記第1処理工程において吸着された前記被処理ガス成分を除去する、請求項1〜5の何れか一項記載のガス浄化方法。
前記除去工程は、前記被処理ガス成分を吸着する吸着剤が充填される吸着塔に、前記酸化処理工程において処理された前記被処理ガスを通気させることにより、前記被処理ガス成分を除去する、請求項1〜7の何れか一項記載のガス浄化方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の技術では、オゾン供給装置を設置する必要があるので、全体の装置構成が複雑となり、コストがかかる。一方、オゾンを用いない場合は、非特許文献1に見られるように、常温下で容器にNOと酸素(O
2)を加えても、NOからNO
2への酸化速度は非常に遅く、数秒程度ではほとんど酸化されない。また、非特許文献2に見られるように、市販品のシリカゲル及びゼオライトによる触媒酸化によってNOからNO
2への酸化が認められるものの酸化率は高くない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡易かつ安価に被処理ガスに含まれる被処理ガス成分の酸化を促進し、被処理ガス成分の除去率を高めることができるガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガス浄化方法は、酸素及び被処理ガス成分を含む被処理ガスを浄化するガス浄化方法であって、ゼオライトに被処理ガス成分を含む処理用ガスを通気することにより、ゼオライトに被処理ガス成分を吸着させて破過させる第1処理工程と、第1処理工程において処理されたゼオライトを加熱することにより、第1処理工程において吸着された被処理ガス成分を除去する第2処理工程と、第2処理工程において処理されたゼオライトに被処理ガスを通気することにより、被処理ガスに含まれる少なくとも一部の被処理ガス成分を酸化させる酸化処理工程と、酸化処理工程によって酸化された被処理ガス成分を除去する除去工程と、を含む。
【0011】
このガス浄化方法では、ゼオライトに被処理ガスを通気させることにより被処理ガスに含まれる被処理ガス成分を被処理ガスに含まれる酸素によって酸化させる。この場合、被処理ガスを通気させるゼオライトに対し、予め第1処理及び第2処理を施しておくことにより、被処理ガス成分の酸化を促進させることができる。第1処理及び第2処理は、高価な希少金属を担持させたり、細孔制御などの複雑な処理を施したりすることがない、比較的簡易かつ安価な方法による処理である。これにより、例えば、被処理ガス成分を吸着剤に吸着させて除去する場合には、被処理ガス成分を吸着剤に吸着され易い酸化物に酸化させることができるので、被処理ガス成分の除去率を高めることができる。また、例えば、乾式法によって被処理ガス成分を分解させて除去する場合においても、被処理ガス成分を分解反応が進みやすい酸化物に酸化させることができるので、被処理ガス成分の除去率を高めることができる。この結果、簡易かつ安価に被処理ガスに含まれる被処理ガス成分の酸化を促進し、被処理ガス成分の除去率を高めることができる。
【0012】
なお、除去工程において除去される被処理ガス成分は、酸化処理工程において酸化された被処理ガス成分と、酸化処理工程において酸化されなかった被処理ガス成分との両方を含む。
【0013】
本発明のガス浄化方法では、ゼオライトは、シリカ/アルミナ比(mol/mol)が10以上のZSM−5型ゼオライトであってもよい。
【0014】
このガス浄化方法では、ゼオライトのシリカ/アルミナ比が10以上であるので、酸化処理工程における酸化率を高めることができる。
【0015】
本発明のガス浄化方法では、被処理ガス成分には、窒素酸化物及び硫黄酸化物の少なくとも一方が含まれていてもよい。
【0016】
このガス浄化方法によれば、酸化処理工程において、被処理ガス成分としての窒素酸化物又は硫黄酸化物を効果的に酸化してNO
2又は三酸化硫黄(SO
3)にすることができる。
【0017】
本発明のガス浄化方法では、第1処理工程は、処理塔に充填されたゼオライトに処理用ガスを通気することにより実施され、処理塔の出口における被処理ガス成分の濃度が、処理塔の入口における被処理ガス成分の濃度と同じになるまで、処理用ガスを通気してもよい。
【0018】
このガス浄化方法では、第1処理工程においてゼオライトにおける被処理ガス成分の酸化能を確実に高めることができる。
【0019】
本発明のガス浄化方法では、被処理ガス成分は、窒素酸化物であり、第1処理工程における処理用ガスには、100〜10,000ppmの窒素酸化物と、1%以上の酸素を有する空気と、が含まれていてもよい。
【0020】
本発明のガス浄化方法は、第2処理工程では、ゼオライトは加熱炉において、通風が無い状態で400℃〜500℃の温度で加熱することにより、第1処理工程において吸着された被処理ガス成分を除去してもよい。
【0021】
このガス浄化方法によれば、ゼオライトに吸着された被処理ガス成分を効果的に除去することができる。
【0022】
本発明のガス浄化方法では、被処理ガス中の酸素濃度を、0.005vol%以上としてもよい。
【0023】
このガス浄化方法によれば、被処理ガスに含まれる被処理ガス成分の除去率を更に高めることができる。
【0024】
本発明のガス浄化方法では、除去工程は、被処理ガス成分を吸着する吸着剤が充填される吸着塔に、酸化処理工程において処理された被処理ガスを通気させることにより、被処理ガス成分を除去してもよい。
【0025】
このガス浄化方法によれば、被処理ガス成分が吸着剤に吸着され易い酸化物に酸化されているので、効率的に被処理ガス成分を除去することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡易かつ安価に被処理ガスに含まれる被処理ガス成分の酸化を促進し、被処理ガス成分の除去率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して一実施形態のガス浄化方法を実施可能なガス浄化装置1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0029】
本実施形態のガス浄化装置1は、NO
Xなどの窒素酸化物(被処理ガス成分)を含む被処理ガスG1から窒素酸化物を吸着することにより除去する装置である。被処理ガスG1は、例えば焼却設備、内燃機関、発電設備、ボイラーなどからの排ガスである。被処理ガスG1は、硝酸製造又は金属溶解などの化学プロセスからのオフガスであってもよい。被処理ガスG1は、酸性ガス成分(被処理ガス成分)として窒素酸化物(NO
Xなど)を含む。窒素酸化物には、NO、NO
2、亜酸化窒素(N
2O)、四酸化二窒素(N
2O
4)又はそれらのホモ若しくはヘテロ会合体などが含まれる。これらの酸性ガス成分は、非常に高い生体毒性を有する。また、被処理ガスG1は、酸素と、水蒸気及び炭酸ガスの少なくとも一方と、を含み得る。
【0030】
図1に示されるように、ガス浄化装置1は、主に、酸化処理装置11と、吸着装置(除去装置)13とを備えている。
【0031】
酸化処理装置11は、被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物(被処理ガス成分)の少なくとも一部を、被処理ガスG1に含まれる酸素を用いて酸化させる装置である。酸化処理装置11は、被処理ガスG1を流通させる経路上に、酸化反応を促進させる触媒層12Aが配置されている。触媒層12Aは、酸化塔12内に設置され得る。酸化塔12内には、複数層(例えば2層)の触媒層12Aが設置されてもよい。
【0032】
酸化処理装置11は、触媒層12Aに被処理ガスG1を流通させることにより、被処理ガスG1に含まれる酸素によって被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物を酸化させる。例えば、NOをNO
2に酸化させる。なお、被処理ガスG1が他の酸性ガス成分を含む場合、他の酸性ガス成分も酸化される。
【0033】
触媒層12Aは、NOの酸化触媒作用を有するゼオライト12Bが充填されている。ゼオライト12Bは、合成ゼオライトであり、シリカ/アルミナ比が10以上のZSM−5型のゼオライトである。本実施形態では、市販品として購入されるゼオライトがそのまま触媒層12Aに充填されているのではなく、触媒層12Aに充填する前に使用前処理(第1処理及び第2処理)がなされている点に一つの特徴がある。
【0034】
すなわち、触媒層12Aに充填されるゼオライト12Bは、ゼオライトに被処理ガス成分(NO、NO
2)を含む処理用ガスを通気することにより、ゼオライトに被処理ガス成分を吸着させて破過させる第1処理と、第1処理されたゼオライトを加熱することにより、第1処理において吸着された被処理ガス成分を除去する第2処理と、が施されている。当該第1処理及び第2処理について、後段にて詳細に説明する。
【0035】
酸化処理装置11には、浄化対象となる被処理ガスG1を供給するためのダクトD1が接続されている。また、酸化処理装置11(酸化塔12)を通過した被処理ガスG1を被処理ガスG2として吸着装置13に供給するためのダクトD2が接続されている。
【0036】
吸着装置13は、吸着層14Aを含んでいる。吸着層14Aは、吸着塔14内に設置され得る。吸着塔14内には、複数層(例えば2層)の吸着層14Aが設置されてもよい。吸着装置13には、酸化処理装置11によって酸化処理された被処理ガスG2が供給されるダクトD2が接続されている。また、吸着装置13には、吸着装置13を通過した被処理ガスG2を清浄ガスG3として系外に排出するためのダクトD3が接続されている。
【0037】
吸着層14Aは、被処理ガスG2から窒素酸化物及び水蒸気を吸着する吸着剤14Bが充填されることにより形成されている。吸着剤14Bは、疎水性を有してもよい。吸着剤14Bは、例えば疎水性処理が施されたゼオライトを含む。
【0038】
なお、吸着剤14Bは、上述した触媒層12Aに充填されるZSM−5型のゼオライトを充填してもよいが、上述の使用前処理(第1処理及び第2処理)は施されていなくてもよい。吸着層14Aに充填される吸着剤14Bは、被処理ガスG2を流通させたとき、窒素酸化物が吸着飽和(破過状態)になる前までに交換されるのに対し、触媒層12Aに充填されるゼオライト12Bは、窒素酸化物が破過した後もそのまま使用される。これは、吸着層14Aに充填される吸着剤14Bが窒素酸化物の吸着を目的としているのに対し、触媒層12Aに充填されるゼオライト12Bは、窒素酸化物の酸化を目的としている点で、互いに目的が異なるからである。
【0039】
ガス浄化装置1では、酸化処理装置11の上流側に、酸化処理装置11に供給する被処理ガスG1の酸素濃度を調整する酸素濃度調整装置17を備えていてもよい。酸素濃度調整装置17は、酸素供給源17Aと、酸素混合部17Bと、を有している。酸素供給源17Aは、酸素を格納するタンクである。酸素混合部17Bは、ダクトD1内において、酸素ガス供給源からの酸素を被処理ガスG1に供給し、被処理ガスG1に酸素を混合させる。
【0040】
例えば、酸素濃度調整装置17は、酸化処理装置11に供給する被処理ガスG1の酸素濃度を0.0050〜50vol%、好ましくは、4.0〜25vol%の範囲に調整する。なお、酸化処理装置11に供給される被処理ガスG1の酸素濃度が、0.0050〜50vol%(好ましくは、4.0〜25vol%)の範囲にある場合には、酸素濃度調整装置17は設けられなくてもよい。
【0041】
図2(a)は、一実施形態に係るガス浄化方法を示すフローチャートであり、
図2(b)は、一実施形態に係るガス浄化方法に用いられるゼオライトの使用前処理を示すフローチャートである。本実施形態に係るガス浄化方法は、例えば以下のように、
図1に示されるガス浄化装置1によって実施される。本実施形態に係るガス浄化方法は、
図2(a)に示されるように、酸素濃度調整工程S1と、酸化処理工程S2と、吸着工程S3と、を含んでいる。本実施形態に係るガス浄化方法における酸化処理工程S2で用いられるゼオライトは、
図2(b)に示されるように、第1処理工程S21と、第2処理工程S22と、を含む使用前処理がなされる。
【0042】
第1処理工程S21及び第2処理工程S22は、触媒層12Aに充填するゼオライトを、触媒層12Aに充填する前に処理する使用前処理工程である。なお、処理前のゼオライトは、シリカ/アルミナ比が10以上のZSM−5型のゼオライトであり、市販されているものであってもよい。
【0043】
第1処理工程S21は、上述したシリカ/アルミナ比が10以上のZSM−5型のゼオライトを処理塔に投入し、当該処理塔に窒素酸化物NO
X(NO,NO
2)を含む処理用ガスを通気することにより、窒素酸化物NO
Xを吸着させて破過させる。第1処理工程S21に用いられる窒素酸化物NO
Xを含む処理用ガスは、常温で、NO
X:100〜10,000(volppm)、O
2:1.0〜25vol%を含むガスである。具体的には、第1処理工程S21は、処理塔に投入された上記ゼオライトに0.01〜1.0(m/秒)の流速で処理用ガスを通気することにより実施され、処理塔の出口における窒素酸化物NO
Xの濃度が、処理塔の入口における窒素酸化物NO
Xの濃度と同じになるまで、処理用ガスを通気する。
【0044】
第2処理工程S22は、第1処理工程S21において処理されたゼオライトを加熱することにより、第1処理工程S21において吸着された窒素酸化物NO
Xを除去する。具体的には、第1処理されたゼオライトを処理塔から取り出して加熱炉に投入し、当該ゼオライトを、通気のない状態で400℃以上500℃以下の温度で加熱し、窒素酸化物NO
Xの発生がなくなるまで加熱を続ける。
【0045】
酸素濃度調整工程S1は、被処理ガスG1に酸素を混合して、被処理ガスG1中の酸素濃度を調整する。酸素濃度調整工程S1は、
図1に示される酸素濃度調整装置17において、被処理ガスG1に酸素を混合して、被処理ガスG1中の酸素濃度を調整する。被処理ガスG1中の酸素濃度は、通常0.0050〜50vol%、好ましくは、4.0〜25vol%の範囲に調整される。なお、酸化処理装置11に供給される被処理ガスG1中の酸素濃度が上記範囲にある場合には、酸素濃度調整工程S1を実施しなくてもよい。
【0046】
酸化処理工程S2は、第1処理工程S21及び第2処理工程S22において処理されたゼオライトに被処理ガスG1を通気することにより、被処理ガスG1に含まれる少なくとも一部の窒素酸化物NO
Xを酸化させる。具体的には、
図1に示される酸化処理装置11の触媒層12Aに第1処理及び第2処理がなされたゼオライトを充填する。次に、当該ゼオライトが充填された触媒層12Aに被処理ガスG1を通気させることにより、被処理ガスG1に含まれる酸素によって、被処理ガスG1に含まれる少なくとも一部の窒素酸化物(NO)を酸化させる。本実施形態では、被処理ガスG1に含まれるNOをNO
2に酸化させる。
【0047】
吸着工程S3は、酸化処理工程S2によって酸化された被処理ガス成分を除去する。具体的には、
図1に示される吸着装置13において窒素酸化物NO
Xを吸着する吸着剤14Bが充填された吸着塔14に、酸化処理工程S2において処理された被処理ガスG2を通気させる。これにより、被処理ガスG2に含まれる窒素酸化物NO
Xを吸着剤14Bに吸着させ、窒素酸化物NO
Xを除去する。
【0048】
次に、上記実施形態のガス浄化方法の作用効果を説明する。上記実施形態のガス浄化方法では、酸化塔12の触媒層12Aとして充填されたゼオライトに被処理ガスG1を通気させることにより被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物NO
Xを被処理ガスG1に含まれるO
2によって酸化させる場合において、当該ゼオライトに第1処理及び第2処理を施すことにより、窒素酸化物NO
Xの酸化を促進させることができる。第1処理及び第2処理は、高価な希少金属を担持させたり、細孔制御などの複雑な処理を施したりすることがない比較的簡易かつ安価な方法による処理である。これにより、窒素酸化物NO
Xを吸着剤14Bに吸着され易いNO
2に酸化させることができるので、窒素酸化物NO
Xの除去率を高めることができる。この結果、簡易かつ安価に被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物NO
Xの酸化を促進し、窒素酸化物NO
Xの除去率を高めることができる。
【0049】
〔実験例1〕
次に、使用前処理(第1処理及び第2処理)がなされたゼオライト12Bが充填された触媒層12Aに被処理ガスG1を通過させることにより、被処理ガスG1に含まれる酸素によって被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物NO
Xを効果的に酸化させることができる点について、下記の実験例1に基づいて説明する。
【0050】
実施例1では、酸化反応を促進させる触媒層に充填する触媒として、合成ゼオライト(ZSM−5型、シリカ/アルミナ比が17以上)を準備した。次に、この合成ゼオライトを、下記に示す(1)破過処理及び(2)加熱処理からなる使用前処理を施して、NOの酸化触媒作用を強化した。
【0051】
(1)破過処理(第1処理)
破過処理に用いられる被処理ガス成分を含む処理用ガスは、常温で、NO
X:100〜10,000(volppm)、O
2:1.0〜25vol%を含むガスである。破過処理では、市販品の上記ゼオライトを破過処理塔に投入し、上記処理用ガスを0.01〜1.0(m/秒)の流速で通気することにより実施され、処理塔の出口におけるNO
X濃度が、処理塔の入口におけるNO
X濃度と同じになるまで、処理用ガスを通気する。
【0052】
(2)加熱処理(第2処理)
破過処理された上記ゼオライトを処理塔から取り出し、加熱炉に投入した。当該加熱炉では、通気のない状態において400℃以上500℃以下の温度で加熱し、NO
Xの発生がなくなるまで処理を続けた。
【0053】
次に、使用前処理がなされていないゼオライト(以下、「未処理ゼオライト」と称する。)及び使用前処理がされたゼオライト(以下、「処理ゼオライト」と称する。)をそれぞれ処理塔に表1に示すとおり充填し、被処理ガス(NO
X濃度:900ppm)を6L/minの流量で通気させ、処理塔の出口付近におけるNO
X濃度を測定した。
図3は、未処理ゼオライト及び処理ゼオライトに被処理ガスを通気させたときの処理塔の出口付近におけるNO
X濃度の経時変化を示した図であり、下記表1は、未処理ゼオライト及び処理ゼオライトにおけるNO
Xの吸着量を示した表である。
【0054】
処理塔出口におけるNO
X濃度の経時変化において、未処理ゼオライトの場合破過時間が短いが、処理ゼオライトを使用すると、破過時間が長くなっている。この理由は、未処理ゼオライトの場合は、NOからNO
2への酸化が進まず吸着のみになっており、処理ゼオライトの場合は、NOがNO
2に酸化され吸着されやすくなっていることが考えられる。つまり、ゼオライトをNO
Xが含まれるガスに一旦曝すことで、ゼオライトにNO
Xと凝縮した水が付着し、そこでNO
Xが水に吸収され硝酸などの酸性溶液が生じ、ゼオライトに含まれるアルミニウム成分を溶かし、結晶骨格のシリカ/アルミナ比、細孔径分布、比表面積などが変化してNOのNO
2への酸化触媒機能に変化をもたらしたと考えられる。すなわち、シリカ/アルミナ比の増大、大きい細孔径の増大、比表面積の増加などがNOのNO
2への酸化触媒機能を増大したと考えられる。
【表1】
【0055】
〔実験例2〕
次に、使用前処理がなされたゼオライト12Bが充填された触媒層12Aに被処理ガスG1を通過させることにより、被処理ガスG1に含まれる酸素によって被処理ガスG1に含まれる被処理ガス成分を効果的に酸化させることができる点について、下記に示す実施例1〜4と、比較例1〜4と、に基づいて説明する。なお、本発明は、下記実施例1〜4に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
実施例1では、酸化反応を促進させる触媒層に充填する触媒として、合成ゼオライト(ZSM−5型、シリカ/アルミナ比が17以上)を準備した。次に、この合成ゼオライトを、下記に示す(1)破過処理及び(2)加熱処理からなる使用前処理を施して、NOの酸化触媒作用を強化した。
【0057】
(1)破過処理(第1処理)
破過処理に用いられる被処理ガス成分を含む処理用ガスは、常温で、NO
X:100〜10,000(volppm)、酸素1.0〜25(vol%)を含むガスである。破過処理では、市販品の上記ゼオライトを破過処理塔に投入し、上記処理用ガスを0.01〜0.1(m/秒)の流速で通気することにより実施され、処理塔の出口におけるNO
X濃度が、処理塔の入口におけるNO
X濃度と同じになるまで、処理用ガスを通気する。
【0058】
(2)加熱処理(第2処理)
破過処理された上記ゼオライトを処理塔から取り出し、加熱炉に投入した。当該加熱炉では、通気のない状態において400℃以上500℃以下の温度で加熱し、NO
Xの発生がなくなるまで処理を続けた。
【0059】
次に、使用前処理が施された合成ゼオライトを、常圧固定床円柱型反応管(内径60mm)に、直径1.6mm、長さ4mmに成形した上記触媒を300g充填した。このときの、合成ゼオライトの充填高さは、175mmであった。
【0060】
次に、混合ガス中の酸素濃度を5.0%とし、
図4の図表に示される下記の流入条件で、標準ガス(NO:20vol%/N
2)を酸素含有窒素ガスで希釈した、
図4の図表に示される組成の混合ガス(被処理ガス)を、常圧固定床円柱型反応管(以後、単に「反応管」と称する。)の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
流入条件(流量):5.1リットル/分
流入条件(流速):0.03m/秒
【0061】
次に、反応管の上部にある反応管出口におけるNO
X濃度を、化学発光方式によりNO
Xを測定するNO
X計を用いて測定した。反応管に混合ガスの流入を始めてから3時間後の反応管出口における混合ガスの組成は、
図4の図表に示されるとおりである。
【0062】
図4の図表に示されるように、反応管入口におけるNO
X中のNO
2の割合が8.0%であったものが反応管出口では96%になった。なお、実施例1では、吸着剤1gあたり0.013gのNO
2が吸着した。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトを反応管に充填した。そして、
図4の図表に示されるように、混合ガス中の酸素濃度を10%(実施例1では5.0%)とした点以外、実施例1と同様の条件及び方法で、反応管の下部にある反応管入口から混合ガスを流入させた。このとき、反応管に混合ガスの流入を始めてから4時間後の反応管出口における混合ガスの組成は、
図4の図表に示されるとおりである。
【0064】
図4の図表に示されるように、反応管入口におけるNO
X中のNO
2の割合が12%であったものが反応管出口では99%になった。なお、実施例2では、吸着剤1gあたり0.016gのNO
2が吸着した。
【0065】
(実施例3)
実施例3では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトを準備し、反応管(内径65mm)に、直径1.6mm、長さ4mmに成形したゼオライトを300g充填した。このときの、合成ゼオライトの充填高さは、115mmであった。次に、
図4の図表に示される下記の流入条件で、標準ガス(NO:20vol%/N
2)を酸素含有窒素ガスで希釈した
図4の図表に示される組成の混合ガスを、反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
流入条件(流量):45リットル/分
流入条件(流速):0.23m/秒
【0066】
反応管に混合ガスの流入を始めてから0.5時間後の反応管出口における混合ガスの組成は、
図4の図表に示されるとおりである。
【0067】
図4の図表に示されるように、反応管入口におけるNO
X中のNO
2の割合が14%であったものが反応管出口では90%になった。なお、実施例3では、吸着剤1gあたり0.010gのNO
2が吸着した。
【0068】
(実施例4)
実施例3では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトを準備し、反応管(内径65mm)に、直径1.6mm、長さ4mmに成形したゼオライトを1000g充填した。このときの、合成ゼオライトの充填高さは、370mmであった。次に、
図4の図表に示される下記の流入条件で、標準ガス(NO:20vol%/N
2)を酸素含有窒素ガスで希釈した
図4の図表に示される組成の混合ガスを、反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
流入条件(流量):38リットル/分
流入条件(流速):0.19m/秒
【0069】
反応管に混合ガスの流入を始めてから1時間後の反応管出口における混合ガスの組成は、
図4の図表に示されるとおりである。
【0070】
図4の図表に示されるように、反応管入口におけるNO
X中のNO
2の割合が13%であったものが反応管出口では98%になった。なお、実施例4では、吸着剤1gあたり0.010gのNO
2が吸着した。
【0071】
図5は、実施例4における、反応管出口付近におけるNO
X濃度、NO濃度及びNO
2濃度と時間との関係を示したグラフである。言い換えれば、触媒層となる合成ゼオライト上でNOの酸化反応が進む様子を時系列に示したグラフである。
図5に示されるように、反応初期においては、NO
X濃度及びNO濃度が共に緩やかに上昇していることから、NO
Xがゼオライトに吸着されていて、かつ、NO
2については全て吸着されていることが分かる。更に時間が経過すると(1時間後)、ゼオライトにおける吸着能が完全に破過した状態に至っている。そして、破過に至る途中で、濃度の差分(NO
X濃度とNO濃度の差分(NO
X−NO))、すなわち、NO
2の濃度が上がり始めていることから、NOがNO
2に酸化されたことが分かる。なお、
図5は、実施例4を示したものであるが、実施例1〜3においても、同様の傾向が観察された。
【0072】
(比較例1)
比較例1では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトを準備し、反応管(内径60mm)に、直径1.6mm、長さ4mmに成形したゼオライトを300g充填した。このときの、合成ゼオライトの充填高さは、175mmであった。次に、下記の流入条件で、標準ガス(NO:20vol%/N
2)を窒素ガスで希釈した、
図4の図表に示される組成の混合ガスを、反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
流入条件(流量):5.1リットル/分
流入条件(流速):0.03m/秒
【0073】
図4の図表に示されるように、反応管に充填される充填剤が、酸化反応を促進させる機能を有する実施例1と同様のゼオライトであっても、混合ガスに酸素が含まれていない場合には、ガラス球においては、吸着反応も酸素酸化反応も起きないことが分かった。
【0074】
(比較例2)
比較例2では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトの代わりに、反応管(内径60mm)に、直径3.0mmのガラス球を300g充填した。このときの、ガラス球の充填高さは、160mmであった。次に、
図4の図表に示される下記の流入条件で、標準ガス(NO:20vol%/N
2)を酸素含有窒素ガスで希釈した
図3の図表に示される組成の混合ガスを、反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
流入条件(流量):5.1リットル/分
流入条件(流速):0.03m/秒
【0075】
図4の図表に示されるように、反応管に充填される充填剤が、酸化反応を促進させる機能がないガラス球の場合であって、混合ガスに酸素が含まれていない場合には、吸着反応も酸素酸化反応も起きないことが分かった。
【0076】
(比較例3)
比較例3では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトの代わりに、反応管(内径60mm)に、直径3.0mmのガラス球を300g充填した。そして、
図4の図表に示されるように、混合ガスに含まれる酸素ガス濃度を5%(比較例2では0%)とした点以外、比較例2と同様の条件及び方法で、混合ガスを反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
【0077】
図4の図表に示されるように、反応管に充填される充填剤が、酸化反応を促進させる機能がないガラス球の場合には、吸着反応も酸素酸化反応も起きないことが分かった。
【0078】
(比較例4)
比較例4では、実施例1において用いられた使用前処理がなされたゼオライトの代わりに、反応管(内径60mm)に、直径3.0mmのガラス球を300g充填した。そして、
図4の図表に示されるように、混合ガスに含まれる酸素ガス濃度を10%(比較例2では0%)とした点以外、比較例3と同様の条件及び方法で、混合ガスを反応管の下部にある反応管入口から室温下で流入させた。
【0079】
図4の図表に示されるように、反応管に充填される充填剤が、酸化反応を促進させる機能がないガラス球の場合であって、混合ガスに酸素が含まれ、吸着反応も酸素酸化反応も起きないことが分かった。
【0080】
以上、一実施形態に係るガス浄化方法について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0081】
上記実施形態では、被処理ガスG1は、酸性ガス成分(被処理ガス成分)として窒素酸化物(NO
Xなど)を含む例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、被処理ガスG1は、酸性ガス成分として、窒素酸化物だけでなく、例えば硫黄酸化物(SOx)、塩化水素(HCl)、微小粒子状物質(PM2.5)、アンモニア及びアミンなどの塩基性窒素化合物、アルデヒド及びケトンなどのカルボニル化合物、チオール類などの少なくとも1つを更に含んでいてもよい。硫黄酸化物の例には、例えば二酸化硫黄及び三酸化硫黄などが含まれる。
【0082】
上記実施形態では、ゼオライト12Bが合成ゼオライトである例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。ゼオライト12Bは、例えば、天然ゼオライトであってもよい。また、上記実施形態では、ゼオライト12BがZSM−5型のゼオライトである例を挙げて説明したが、例えば、Y型、A型、及びX型のゼオライトであってもよい。
【0083】
上記実施形態では、除去工程の一例として、酸化処理装置11において酸化処理したNO
Xなどの窒素酸化物を吸着剤により吸着させる方法にて除去する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、酸化処理工程S2において酸化処理したNO
Xなどの窒素酸化物を、例えば、スクラバ法、又は、乾式法(SCR)によって窒素酸化物を除去してもよい。この場合であっても、窒素酸化物の分解反応が進みやすいNO
2となるので、効率的に窒素酸化物を除去することができる。この結果、簡易かつ安価に被処理ガスG1に含まれる窒素酸化物の除去率を高めることができる。