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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52047(P2017-52047A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】回転カッタ研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/42 20060101AFI20170224BHJP
【FI】
   B24B3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-177374(P2015-177374)
(22)【出願日】2015年9月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000127916
【氏名又は名称】株式会社エスケー
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 一仲
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA02
3C158AB01
3C158AB03
3C158CA01
3C158CB04
3C158CB06
3C158DB08
(57)【要約】
【課題】研削面に回転カッタを押し付けるための前後動に際して前記回転カッタを傾けない回転カッタ研削装置を提供する。
【解決手段】地面等に置くベース1と、前記ベース1に設ける研削板2とから構成され、ベース1は、草刈り機4に装着したままの回転カッタ41の下面側にある中心凸部413や、刃411に装着したチップ412との干渉を避けて前記回転カッタ41の下面を摺接させるガイド平面13を表面11に設け、研削板2は、回転カッタ41の刃411に装着したチップ412を結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた平面視円弧状の内周面に研削面21を形成し、前記研削面31がガイド平面13から上方に表れるように前記ベース1に支持させた回転カッタ研削装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面等に置くベースと、前記ベースに設ける研削部とから構成され、
ベースは、草刈り機に装着したままの回転カッタの下面側にある中心凸部や、刃に装着したチップとの干渉を避けて前記回転カッタの下面を摺接させるガイド平面を表面に設け、
研削部は、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた平面視円弧状の内周面に研削面を形成し、前記研削面がガイド平面から上方に表れるように前記ベースに支持させた回転カッタ研削装置。
【請求項2】
ベースは、回転カッタの下面側にある中心凸部を収納させ、前記回転カッタがガイド平面に下面を摺接させて動いても前記中心凸部が内周縁に当接させない大きさの凹部又は開口を表面に設け、
研削部は、研削面を形成する内周面の湾曲中心を前記凹部又は開口内に設定する請求項1記載の回転カッタ研削装置。
【請求項3】
ガイド平面は、凹部又は開口を囲む環状の平坦面である請求項2記載の回転カッタ研削装置。
【請求項4】
ガイド平面は、ベースの平面に対して段差を介して上方に凸となる平坦面である請求項1〜3いずれか記載の回転カッタ研削装置。
【請求項5】
ベースは、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた平面視円弧状の内周面を有する保護部を、前記内周面が研削部の研削面を形成した内周面と周方向に連続させて設けた請求項1〜4いずれか記載の回転カッタ研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを装着した刃を円盤外周に等間隔で並べた回転カッタの前記チップを研削する回転カッタ研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈り機は、ロッドの後端に備えた動力源(ガソリンエンジン又は電動モータ)により、前記ロッドの先端に取り付けた回転カッタを回転させ、回転カッタの外周に並べた刃により、草を刈り取る。草刈り機に用いられる一般的な回転カッタは、各刃にチップ(硬質金属部材)を装着している。チップは、刃より厚く、回転カッタの上面及び下面から僅かにはみ出している。回転カッタは、草刈り作業中、草を刈り取ったり、草以外の小石等にぶつかったりして、刃に装着したチップが摩耗し、径時的に切れ味が低下する。このため、回転カッタは、定期的にチップを研削する必要がある。回転カッタの研削作業は、専用の回転カッタ研削装置が利用される(特許文献1)。
【0003】
特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、草刈り機に装着したままの回転カッタの下面側にある中心凸部を載せて前後動自在に支持するベースと、前記回転カッタの前進方向を中心とし、前記回転カッタの外周縁に倣って左右方向に湾曲させた平面視円弧状の周面である研削面とから構成される(特許文献1・[請求項1])。特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、グラインダの角度調節や回転カッタの着脱をなくし、グラインダの電源も不要にして、研削作業を現場で簡単かつ短時間にする(特許文献1・[0017]))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-80825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、回転カッタが前後動する方向を規制するため、回転カッタの下面側にある中心凸部を載せるV字溝又はU字溝の摺接ガイドをベースに設けている(特許文献1・[請求項2])。ここで、金属製の中心凸部を回転させながら摺接ガイドに載せても問題がないが、近年増えつつある樹脂製の中心凸部を回転させながら摺接ガイドに載せる場合、中心凸部が摺接ガイドに擦れて削れてしまう虞がある。これから、特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、樹脂製の中心凸部を備える回転カッタの研削作業に向いていなかった。
【0006】
また、回転カッタは、摺接ガイドに載せる中心凸部を中心として前後左右に傾く問題があった。回転カッタが傾くと、研削面に対するチップの当たり方に偏りが生じ、全周にわたって均一にチップを研削できなくなったり、研削面にチップが当たることで回転カッタが研削面に与える押す力が偏り、摺接ガイドを設けたベースを動かしてしまう虞があった。このため、特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、ベースを設けた杭挿通孔を通じて杭を設置面に打ち込み、前記ベースを位置固定していた(特許文献1・[0025])。
【0007】
特許文献1が開示する回転カッタ研削装置は、草刈り機に装着したままの回転カッタの刃を研削面に押し付けてチップを研削できる点で好ましいものの、使い勝手の面で、なお改善すべき点がいくつか散見された。そこで、回転カッタの中心凸部が金属製か、樹脂製かを問わずに利用でき、研削面に回転カッタの刃を押し付けるための前後動に際して前記回転カッタを傾けないようにできる回転カッタ研削装置を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、地面等に置くベースと、前記ベースに設ける研削部とから構成され、ベースは、草刈り機に装着したままの回転カッタの下面側にある中心凸部や、刃に装着したチップとの干渉を避けて前記回転カッタの下面を摺接させるガイド平面を表面に設け、研削部は、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた平面視円弧状の内周面に研削面を形成し、前記研削面がガイド平面から上方に表れるように前記ベースに支持させた回転カッタ研削装置である。ベースは、法線が概ね上方を向く面を表面とし、回転カッタの下面側にある中心凸部と前記表面との干渉を回避した平面視形状を有する中実体又は中空体である。
【0009】
本発明の回転カッタ研削装置は、水平な地面等にベースを置いて、容易に動かないようにして使用される。ベースが容易に動かなければ、前記地面等が傾斜しても構わない。地面等は、ベースが動かない程度に摩擦や引っかかりが働く面であればよく、土又は砂の地面のほか、コンクリート面、アスファルト面等を含む。ベースは、平坦な底面を地面等に接面させて前記底面全体に摩擦を働かせたり、底面から突出する脚部を地面等に当接させ、前記脚部を地面に引っかからせたりすることにより、動かないようにする。
【0010】
ガイド平面は、地面等に動かないように置かれたベースに従って位置固定され、草刈り機に装着したまま回転させる回転カッタを摺接させ、平行移動させる。回転させた回転カッタを安定な姿勢で平行移動させるため、ガイド平面は、回転カッタの中心凸部を囲む位置関係で、前記中心凸部を中心とする周方向に断続又は連続して設けることにより、回転カッタ全体を均等に支持する。ガイド平面は、ベースの表面と独立した平坦面又は凹凸面でもよいし、例えば回転カッタの中心凸部や、周縁に並ぶ刃に装着され、回転カッタの上面及び下面から僅かにはみ出しているチップに干渉しなければ、ベースの表面をそのまま利用してもよい。
【0011】
研削部は、ガイド平面に摺接させながら平行移動させた回転カッタの刃に装着したチップを研削面に押し当てさせることにより、前記チップを研削する。研削部は、研削面が回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた内周面に形成されていれば、全体形状が板材でも、ブロック体でもよい。回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ習い外周縁は、チップの半径方向の最も外側に位置する部分を周方向に結んだ外周縁を意味する。
【0012】
研削面は、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた内周面に形成されているため、前記研削面に押し当てられる回転カッタの刃(特にチップ)は一度に数個程度である。研削面の曲率半径は、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きければ特に上限はなく、周方向に曲率半径が一様であることを基本とするが、例えば周方向に曲率半径が変化してもよい。好ましい研削面の曲率半径は、回転カッタを平行移動させる方向を変えても常に数個の刃が当たるようにする観点から、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より数%大きな周方向一律の曲率半径である。
【0013】
研削部は、ベースに対して位置固定で支持されていればよい。例えばベースが回転カッタの刃に装着したチップより内側に収まる平面視形状であれば、研削部は、ベースから延びる支持部材を介して前記ベースの側面から離して支持される。また、ベースの側面が研削面の曲率半径に一致させた周面であれば、研削部は、ベースの側面に宛てがって位置固定し、ベースに直接支持させてもよい。いずれも、研削面がガイド平面から上方に表れるように、研削部をベースに対して位置固定で支持させる。
【0014】
研削部の研削面は、全周に及ぶ平面視環状でなくてもよく、部分的な平面視円弧状でよい。部分的な平面視円弧状の研削面は、同型の研削部を周方向に複数並べることにより長い平面視円弧状又は平面視環状にする。研削面は、例えば研削砥粒を研削部に設けた内周面に接着して形成する。研削面は、前記内周面全域に形成してもよいが、高さ方向長さ又は周方向長さの一方又は双方を内周面より短くしてもよい。回転カッタの刃を一方向からのみ押し当てる場合、研削面は120度〜200度ぐらいあればよい。この場合、研削部に設けられる内周面は、前記研削面に等しい周方向長さ又はそれ以上とする。
【0015】
ベースは、表面と中心凸部との干渉を回避する構造とするため、回転カッタの下面側にある中心凸部を収納させ、前記回転カッタがガイド平面に下面を摺接させて動いても前記中心凸部が内周縁に当接させない大きさの凹部又は開口を表面に設け、研削部は、研削面を形成する内周面の湾曲中心を前記凹部又は開口内に設定するとよい。凹部は、ベースの表面から凹んでいるが底面に貫通しない構造を、開口は、ベースの表面から底面に貫通した構造をそれぞれ意味する。ガイド平面は、凹部又は開口を囲む位置関係で、前記凹部又は開口を囲む周方向に断続又は連続して設ける。回転カッタを全方向に安定な姿勢で平行移動できるガイド平面は、凹部又は開口を囲む環状の平坦面である。
【0016】
ガイド平面は、刃に装着したチップがベースの平面と干渉することを防止するため、ベースの平面に対して段差を介して上方に凸となる平坦面にするとよい。これにより、回転カッタの下面のみがガイド平面に摺接し、チップが前記ガイド平面から一段下がったベースの平面に干渉しなくなる。ベースの平面に対して凸な平坦面であるガイド平面は、ベースと別部材を表面に取り付けたり、前記平面を上方に膨出させたりして構成する。
【0017】
このほか、ベースは、回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させた平面視円弧状の内周面を有する保護部を、前記内周面が研削部の研削面を形成した内周面と周方向に連続させて設けるとよい。保護部は、内周面が回転カッタの刃に装着したチップを結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させて形成されていれば、全体形状が板材でも、ブロック体でもよい。また、例えば弾性のある金属板は、一面に研削面を形成し、前記研削面を半径方向内側にすれば研削部、前記研削面を半径方向外側にすれば保護部として利用することも考えられる。保護部は、研削部の研削面を形成した内周面に連続して周方向延び、研削部と共に回転カッタを周方向の広い範囲で囲む。研削部及び保護部を合わせて、回転カッタを周方向全域で囲んでもよいし、回転カッタの周方向一部のみを囲んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の回転カッタ研削装置は、回転カッタの下面をガイド平面に摺接させて平行移動させれば、前記回転カッタの刃に装着したチップを研削部の研削面に押し当てることができる。このとき、回転カッタの移動方向に限定はなく、前記移動先に研削部の研削面があれば回転カッタの刃に装着したチップを研削できる。また、回転カッタは、平行移動に際して姿勢を安定させているので、研削作業を安全にするほか、研削面に対する刃に装着したチップの当たり方が一定となり、良好な仕上がりでチップを研削できる。こうした利点は、ガイド平面は回転カッタの下面のみに摺接し、中心凸部との干渉を避けているので、中心凸部が金属製か、樹脂製かを問わずほとんどの回転カッタで享受できる。
【0019】
ベースの表面に設ける凹部又は開口は、回転カッタの中心凸部を収納させることで、確実に前記中心凸部がガイド平面に干渉しないようにすると共に、凹部又は開口の内周縁に前記中心凸部が当たる範囲で回転カッタの平行移動を許すことにより、前記回転カッタの移動範囲を制限する。研削部は、内周面の湾曲中心を前記凹部又は開口内に設定することにより、回転カッタを前記移動範囲で平行移動させると、研削部の内周面に形成した研削面に、刃に装着したチップを確実に押し当てることができる。また、凹部又は開口による回転カッタの移動制限は、過剰な回転カッタの平行移動を防止し、研削作業を安全にする効果をもたらす。
【0020】
ガイド平面は、ベースの平面に対して段差を介して上方に凸となる平坦面とすることにより、刃に装着したチップがベースの表面に干渉しないように、前記ベースの平面に対して回転カッタを浮かせて平行移動させることができる。更に、上述のように、中心凸部を収納する凹部又は開口をベースの表面に設けると、回転カッタは、ガイド平面に下面のみを摺接させ、姿勢の安定した平行移動が実現される。これは、研削作業の安全性を高める効果をもたらす。
【0021】
このほか、ベースは、研削部の内周面と周方向に連続する内周面を有する保護部を設けると、回転カッタが研削部の研削面に向かう以外の方向へ平行移動した際も、前記保護部の内周面により過剰な平行移動が防止される。このとき、研削部及び保護部の内周面が周方向に連続していれば、回転している回転カッタの刃に装着したチップが変に引っかかることがない。こうして、保護部は、研削部と共に、刃に装着したチップを傷つけることなく、回転カッタの過剰な平行移動を防止し、研削作業の安全性を高める効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した回転カッタ研削装置の一例を表す斜視図である。
図2】本例の回転カッタ研削装置の分解斜視図である。
図3】本例の回転カッタ研削装置の平面図である。
図4】本例の回転カッタ研削装置の縦断面図である。
図5】回転カッタ研削装置に回転カッタを載せる前の状態を表す斜視図である。
図6】回転カッタ研削装置に回転カッタを載せた後の状態を表す縦断面図である。
図7】回転カッタ研削装置に回転カッタを載せた後の状態を表す斜視図である。
図8】回転カッタ研削装置に載せた回転カッタを前進させた状態を表す縦断面図である。
図9】回転カッタ研削装置に載せた回転カッタを前進させた状態を表す斜視図である。
図10】本発明を適用した回転カッタ研削装置の別例を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の回転カッタ研削装置は、例えば図1図4に見られるように、全体が平面視円形となるように作られる。本例の回転カッタ研削装置は、扁平な金属製円筒であるベース1の周面(環状の側面)12に、周方向に半割された長さより少し長い長方形の金属板からなる研削板(研削部)2及び保護板(保護部)3を、それぞれ固定ボルト123及び固定ナット124で固定した外観である。本例から分かるように、本発明の回転カッタ研削装置は構成要素が少なく、全体として簡素な構成となることから、製造コストを低廉に押さえることのできる利点がある。
【0024】
本例のベース1は、平面視円形の平坦面である表面11の外周縁から周面12を下ろし、前記周面12の下縁から、周方向等間隔で4基の脚部121を突出させている。脚部121は、ベース1の周面12に沿って僅かに湾曲し、それぞれの角部が地面等に対して引っかかる方向が異なっている。このため、地面等に接地させた脚部121は、ベース1を平行移動させようとしても、それぞれの角部や下縁が地面等に対して異なる方向で引っかかり、回転カッタ41に押されるベース1が不用意に動くことを防止し、安定した姿勢による回転カッタ41の研削作業を保証する。
【0025】
ベース1は、円形環状の平坦面であるガイド平面13と、前記ガイド平面13に囲まれた円形の開口14とを、表面11に同心で設けている。ガイド平面13は、ベース1の表面11に対して凸な平坦面とするため、前記表面11との境界に段差131を形成している。ガイド平面13の幅(半径方向の長さ)は、例えば回転カッタ41の中心凸部413から刃411に装着したチップ412までの距離の1/3〜1/5あれば、下面を摺接させる回転カッタ41を安定な姿勢で平行移動させることができる。本例のガイド平面は、回転カッタ41の中心凸部413から刃411に装着したチップ412までの距離の約1/4である。
【0026】
開口14は、回転カッタ41の下面側にある中心凸部413(後掲図6及び図7参照)を収納させ、前記回転カッタ41を前後左右に平行移動させた際、刃411に装着したチップ412が研削面21に当たったときでも前記中心凸部413が内周縁に当たらない大きさの平面視円形に形成されている。ベース1の周面12は、表面11との境界縁に沿って周方向等間隔で6個の挿通孔122を設けている。
【0027】
ガイド平面は、回転カッタの中心凸部や、刃に装着され、回転カッタの上面及び下面から僅かにはみ出しているチップが干渉しない形状であればよい。本例のガイド平面13は、平面視円形の開口14を囲んで周方向に連続する同幅の円環状であるが、回転カッタの下面が引っかからない限り、周方向に断続してもよい。また、本例のガイド平面13は、平坦面であるが、多数の凹凸を有する凹凸面としてもよい。この場合、周方向に規則的又は不規則的に並ぶ複数の凸に回転カッタ41の下面を摺接させることになる。
【0028】
また、例えばそれぞれの表面が回転カッタの中心凸部やチップに干渉しない大きさ又は形状である円筒を、周方向等間隔に配置した3基又は4基の筒体をベースとして構成すれば、各円筒の表面をそのままガイド平面として利用できる。この場合、周方向均等間隔に円筒の隙間が、回転カッタの中心凸部を収納する開口に相当する。回転カッタは、前記隙間に沿って中心凸部が移動するように平行移動させることになる。また、研削板2及び保護板3は、本例と同じ平面視円形に配置させるため、各円筒から支持部材を介して支持させることになる。
【0029】
本例のベース1は、1枚の金属板から、表面11、周面12及び脚部121、ガイド平面13及び段差131及び開口14をプレス加工により一体に形成している。これにより、ベース1は、扁平で中空な円筒として構成され、軽量化が図れる。また、ベース1は、表面11と周面12とは円環状に延びる角部を境界とし、前記表面11とガイド平面13とは円環状に延びる段差131を境界として繋がっている。これにより、本例のベース1は、断面係数が高められ、回転する回転カッタ41をガイド平面13に下面を摺接させる際の負荷によっても変形しない全体強度及び剛性が確保されている。
【0030】
研削板2は、ベース1の周面12を半割した長さより若干長い長方形の金属板で、弾性変形により面直交方向に湾曲させることができる。研削面21は、湾曲させた研削板2の内周面に形成される。本例の研削面21は、研削板2の上縁及び下縁から一定の余白を残し、前記研削板2の高さ方向長さより幅を狭くしている。研削面21は、ダイアモンド砥粒等の研削砥粒を研削板2の内周面に固着して形成する。本例の研削板2は、下縁に沿って周方向等間隔で4個のボルト孔22を設けている。
【0031】
保護板3は、ベース1の周面12を半割した長さより若干長い長方形の金属板で、弾性変形により面直交方向に湾曲させることができる。本例の保護板3は、下縁に沿って周方向等間隔で4個のボルト孔32を設けている。本例の保護板3は、研削面21を設けない研削板2に相当する仕様で、前記ボルト孔32を設けた位置も、研削板2と同じ絵ある。これから、例えば研削板2を内外逆にして研削面21を外周面側にすることで、保護板3として利用できる。
【0032】
研削板2及び保護板3は、ベース1の周面12の挿通孔122にボルト孔22又はボルト孔32を連通させ、貫通させる固定ボルト123に固定ナット124に螺着して、ベース1に固定する。研削板2は、ベース1の表面11と周面12との境界縁に沿って設けられた挿通孔122と、研削板2の下縁に沿って設けられたボルト孔22とを一致させてベース1に固定されるため、大部分がベース1の表面11より上に突出し、特に内周面に形成された研削面21がガイド平面13から上方に表れる。また、本例の研削板2は、全周にわたってベース1の周面12に接面し、一律の曲率半径で固定されるため、回転カッタ41の刃411が当たった際、振動が発生しない利点がある。
【0033】
本例の研削板2及び保護板3は、周方向に連続してベース1の表面11及びガイド平面13を全周にわたって囲み、前記ベース1の周面12に密着して固定する。このとき、ベース1の周面12は、回転カッタ41の刃411に装着したチップ412を結ぶ倣い外周縁より大きな曲率半径であるため、前記周面12に密着する研削板2及び保護板3は、必然的に内周面を前記倣い外周縁より大きな曲率半径で湾曲させる。これにより、周方向に連続する研削板2及び保護板3は、回転カッタ41を囲む大きさで、周方向に一律な曲率半径の内周面を構成する。
【0034】
また、本例の研削板2及び保護板3は、周面12を半割した長さより長いため、周方向に連続させる際、それぞれの両端を重ねて挿通孔122、ボルト孔22及びボルト孔32を連通させ、固定ボルト123を貫通させる。ここで、研削板2及び保護板3は、左回転する回転カッタ41の刃411が引っかからないように、研削板2及び保護板3それぞれを左回り辿った際の左端を内側、逆に右端を外側にして重ねている。研削板2及び保護板3の両端を突き合わせる場合、それぞれの両端を若干外向きに折り曲げれば、回転カッタ41の刃が引っかからない。
【0035】
本例の回転カッタ研削装置による回転カッタ41の研削手順を説明する。本例の回転カッタ研削装置は、平坦な地面等に脚部121を接地させて置く。地面等は、地面のほか、コンクリート面、アスファルト面のほか、自動車の荷台等の金属面を含む。また、地面等は、概ね平坦(多少の不陸があってもよい)であれば傾斜面でもよく、必ずしも水平でなくてもよい。ガイド平面13は、設置対象の面方向に一致し、回転カッタ41は前記ガイド平面13に摺接させて平行移動させる。回転カッタ41は、斜め上や斜め下に平行移動させると、研削板2及び保護板3の範囲から逸脱しやすくなり、好ましくない。これから、回転カッタ41をできる限り水平に平行移動させることができるように、設置対象である地面等は水平が好ましい。
【0036】
地面等に設置した回転カッタ研削装置は、図5図7に見られるように、草刈り機4のシャフト42端に設けられたギアケース43に装着したままの回転カッタ41を、中心凸部413が開口14に収納させ、下面がガイド平面13に当接するように、上方から前記ガイド平面13に載せる。このとき、回転カッタ41の下面側にある中心凸部413を開口14の中心付近に収納すれば、回転カッタ41の刃411に装着したチップ412が、研削板2の研削面21や保護板3の内周面に当たることがなく、むしろ全周にわたって前記研削面等との間に隙間を設けることができる。前記隙間は、回転カッタ41の移動範囲となる。
【0037】
草刈り機4に装着したままの回転カッタ41は、例えば回転させながらガイド平面13に載せる。また、回転カッタ41は、ガイド平面13に載せてから回転させる。回転する回転カッタ41は、特にガイド平面13との接触直後や回転開始直後において、ガイド平面13との摩擦により、前後左右のいずれかにぶれる場合がある。しかし、研削板2及び保護板3が全周にわたってガイド平面13を囲んでいるため、平行移動した回転カッタ41は、研削板2又は保護板3の内周面に当たって、前記研削板2及び保護板3から外への逸脱が防止される。
【0038】
本発明の回転カッタ研削装置は、図8及び図9に見られるように、草刈り機4のシャフト42を持って操作し、下面をガイド平面13に摺接させながら前方にある研削板2の研削面21に向けて回転させた回転カッタ41を平行移動させ、前記研削面21に刃411を押し当て、前記刃411に装着したチップ412を逃げ角0度(正確には逃げ面が円弧状に研削されるため、チップ先端のみで逃げ角が0度)で研削する。チップ412は、一度に3個〜4個が研削面21に接触し、同時に研削される。回転カッタ41が回転しているため、研削面21の同じ位置に刃411を押し当て続けても研削されるチップ412が次々と入れ替わり、最終的に全部のチップ412が研削される。
【0039】
回転カッタ41は、刃411を研削面21に押し当て続ける限り、全部のチップ412を研削できる。しかし、チップ412は、刃411を研削面21に押し当て続けて長時間連続して研削すると、研削面21との摩擦熱が蓄積されて硬度低下を招き、過剰に研削される虞がある。また、作業者は、チップ412と研削面21との摩擦に抗して回転カッタ41を同じ位置に留めておく操作を強いられ、回転カッタ41が研削板2又は保護板3から逸脱させる危険性を増加させる。これから、回転カッタ41を前後に平行移動させて、研磨面21に対するチップ412の接触を間断的にするとよい。
【0040】
本来の研削作業は、チップ先端を挟む逃げ面及び救い面を研削し、チップ412に一定の逃げ角及びすくい角を形成する。これに対し、本発明の回転カッタ研削装置は、逃げ角0度で逃げ面だけを研削してチップ先端を鋭角にするだけの研削作業で、本来の研削作業に劣る。しかし、逃げ面を研削しただけでも鋭角なチップ先端を再生でき、本発明の回転カッタ研削装置で研削作業を終えた回転カッタは、草刈り作業について必要十分な切断作用を発揮する。このように、本発明の回転カッタ研削装置は、草刈り作業に必要十分な切れ味を回復するように、回転カッタ41のチップ412の逃げ面だけを簡易かつ安全に研するところに、特徴及び利点がある。
【0041】
本例は、回転カッタ41を平行移動させる前後方向を中心とした180度の範囲に研削面21を位置させてベース1を地面等に置いている。回転カッタ41は、研削面21に向けて前に平行移動させるだけでなく、刃411が研削面21に押し当てられる限り、左右又は斜めに平行移動させ、チップ412を研削できる。仮に研削面21の左右中心が草刈り機4のシャフト42の延在方向からずれた位置(例えば横向き)であった場合、回転カッタ41は左右や斜めに平行移動させて研削面21に刃411を押し当て、チップ412を研削することもできる。
【0042】
これは、研削面21に刃411を押し当てることのできる範囲で、回転カッタ41を平行移動させる方向が自由であることを意味し、先の研削作業により摩耗した研削面21の部分に代えて違う部分に刃411を押し当てれば、研削面21を交換せずに複数回の研削作業ができる利点をもたらす。このように、回転カッタ41を自由に平行移動させることができれば、研削面21の向きを気にせず、ベース1を地面等に置いてもよい。しかし、回転カッタ41を後ろや左右に平行移動させると、前記回転カッタ41が研削板2又は保護板3から逸脱し、作業者に接触する危険性が増加する。これから、検索作業に際して回転カッタ41が作業者から遠ざかる方向=前に平行移動させることができるように、研削面21が作業者の正面を向くようにベース1を地面等に置くことが望ましい。
【0043】
本例の回転カッタ研削装置は、ベース1に方向性がなく、地面等に対する置き方が自由である。しかし、研削面21が周方向半分の長さなので、回転カッタ41を平行移動させる方向は、前記研削面21のある方向に特定される(実際は、上述した通り、作業者から遠ざかる方向に回転カッタ41を平行移動させることが望まれる)。これに対し、図10に見られるように、2枚の研削板2,2を用い、研削面21を全周に延ばすことにより、回転カッタ41を全方向に平行移動させ、いずれの方向でもチップ412を研削できるように回転カッタ研削装置を構成することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1 ベース
11 表面
12 周面
13 ガイド平面
131 段差
14 開口
2 研削板
21 研削面
22 ボルト孔
3 保護板
32 ボルト孔
4 草刈り機
41 回転カッタ
411 刃
412 チップ
413 中心凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10