(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52090(P2017-52090A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】緊締ジョーおよび緊締ジョーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20170224BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20170224BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20170224BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
B23Q3/06 304J
B23Q11/12 B
B22F3/105
B22F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-171667(P2016-171667)
(22)【出願日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】10 2015 114 710.6
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516049733
【氏名又は名称】レーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアート シュヴァイガート
(72)【発明者】
【氏名】イェンス グレースレ
【テーマコード(参考)】
3C016
4K018
【Fターム(参考)】
3C016CB06
4K018AA03
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA40
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA70
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加工時の熱を除去する冷却通路を有し、かつ剛性低下を招くことのない緊締ジョーを提供する。
【解決手段】ベース体2と、ワークに接触するように設けられていて冷却装置によって冷却可能な緊締輪郭3とを備えた、ワークを緊締または保持する緊締ジョーに関し、冷却装置は、冷媒を収容するように設けられた少なくとも1つの冷媒通路4によって実現されており、該冷媒通路4は、ベース体2に補助孔が不要であるように、付加製造方法によってベース体2に形成されている。本発明はさらに、緊締ジョー1を製造する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体(2)と、ワークに接触するように設けられていて冷却装置によって冷却可能な緊締輪郭(3)とを備えた、ワークを緊締または保持する緊締ジョーであって、
前記冷却装置は、冷媒を収容するように設けられた少なくとも1つの冷媒通路(4)によって実現されており、該冷媒通路(4)は、前記ベース体(2)に補助孔が不要であるように、付加製造方法によって前記ベース体(2)に形成されていることを特徴とする、緊締ジョー。
【請求項2】
前記冷媒通路(4)は、少なくとも1つの円弧部分(7)を有している、請求項1記載の緊締ジョー。
【請求項3】
前記冷媒通路(4)は、蛇行形状の部分を含んでいる、請求項1または2記載の緊締ジョー。
【請求項4】
前記冷媒通路(4)の形状は、前記緊締輪郭(3)に合わせられている、請求項1から3までのいずれか1項記載の緊締ジョー。
【請求項5】
前記緊締輪郭(3)と前記冷媒通路(4)との間における壁厚は、前記冷媒通路(4)の直径よりも小さい、請求項1から4までのいずれか1項記載の緊締ジョー。
【請求項6】
前記ベース体(2)に冷媒入口(5)および冷媒出口(6)が形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の緊締ジョー。
【請求項7】
前記冷媒は、空気、水およびオイルを含むグループから成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載の緊締ジョー。
【請求項8】
前記ベース体(2)は金属から形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の緊締ジョー。
【請求項9】
前記ベース体(2)は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよび銅を含有する合金から形成されている、請求項8記載の緊締ジョー。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の緊締ジョーを製造する方法であって、
ベース体(2)を形成するために、冷媒通路(4)の場所を空けながら、材料を層状に設けるステップと、
緊締輪郭(3)を同時に形成するステップと、
を有することを特徴とする、方法。
【請求項11】
冷媒入口(5)および冷媒出口(6)を同時に加工するステップ
をさらに有する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース体と、ワークに接触するように設けられていて冷却装置によって冷却可能な緊締輪郭とを備えた、ワークを緊締または保持する緊締ジョーに関する。本発明はさらに、本発明に係る緊締ジョーを製造する方法に関する。
【0002】
従来技術に基づいて、使用目的に応じて種々異なった構成を有する様々な緊締ジョーが既に公知である。緊締ジョーという概念によって、例えばグリッパまたは保持ジョーのような他の保持手段も含まれている。このような緊締ジョーの使用時、例えばワークのハード旋削(Hartdrehen)、切削またはレーザ加工時には、このような材料の加工時に発生する熱が緊締ジョーを介して緊締手段に、かつ最終的には緊締手段に結合された機械ユニットに導かれ、これによって機械ユニットは強く加熱されることがあり、ひいては機械ユニットの機能を損なうことがある、という問題がしばしば発生する。さらに加熱によって、加工すべきワークおよび緊締ジョーが膨張することもあり、これによって製造誤差が増大し、ひいては作業結果に不都合な影響が及ぼされる。
【0003】
冒頭に述べた形式の緊締ジョーは、既に独国特許出願公開第3626974号明細書に基づいて公知であり、この明細書では、図示された緊締ジョーはレーザ溶接のために使用される。加工すべき材料が溶接時に反るもしくは歪むことを回避するために、緊締ジョーにはそれぞれ、水冷式の緊締レールとして形成された冷却装置が対応配置されている。内部に冷却通路が通っているこれらの緊締レールは、しかしながらベース体とは一体に形成されておらず、まずは手間を掛けてベース体に結合されねばならない。
【0004】
欧州特許明細書の翻訳文であるDE60127610T2に基づいて公知の、グリッパとして形成された緊締ジョーは、冷却回路として形成された冷却装置を有している。このとき冷却回路は、互いに垂直に方向付けられた一列の冷却通路部分を有している。これらの冷却通路部分は、通常、グリッパ内に形成される互いに垂直に方向付けられた補助孔によって形成される。これらの補助孔の通路は、互いに交差しており、これによって最終的に1つの冷媒通路が形成される。補助孔からの冷媒の流出を阻止するために、補助孔は次いで手間を掛けて再び閉鎖されねばならない。さらに補助孔の使用は、グリッパを局部的に弱化させ、これによって緊締ジョーのベース体の機械的安定性は、損なわれてしまう。
【0005】
ゆえに本発明の課題は、従来の緊締ジョーにおける上に述べた欠点を減じることである。
【0006】
この課題を解決するために本発明によれば冒頭に述べた形式の緊締ジョーにおいて、冷却装置は、冷媒を収容するように設けられた少なくとも1つの冷媒通路によって実現されており、該冷媒通路は、ベース体に補助孔が不要であるように、付加製造方法によってベース体に形成されている。
【0007】
このように構成されていると、ワークの加工時に発生する熱を、冷媒通路内における冷媒によって効果的に排出することが保証され、これにより作業結果が改善される。ベース体は付加製造方法によって製造されるので、冷媒通路を、ベース体の製造時に直接形成することが可能である。そのために、完成した緊締ジョーにおいて冷媒通路を延在させたい領域は、ベース体の付加製造時に空けられる。さらに、これによって冷媒通路の任意の形状を実現することができ、かつ、ベース体における補助孔を省くことができる。このような補助孔は、緊締ジョーの機械的な負荷耐性に対して不都合な影響を及ぼし、また補助孔は手間を掛けて再び閉鎖する必要があるので、製造プロセスを困難にする。特に、これによってまた比較的小さな緊締ジョーを実現することができ、このような緊締ジョーでは、安定性およびスペースの理由から、緊締ジョー自体の中への冷却装置の組込みは不可能だと思われる。
【0008】
特に好適であることが判明している態様では、冷媒通路は、少なくとも1つの円弧部分を有している。円弧部分の使用によって、冷媒の流れ特性が著しく改善され、これによって最終的に熱の排出を改善することができる。
【0009】
冷却出力を高めるのに有利であることが分かっている別の態様では、冷媒通路は、蛇行形状の部分を含んでいる。このように構成されていると、冷媒通路はベース体の全幅および全高にわたって延在することができ、これによって可能な限り大きな冷却面積を実現することができ、これもまた同様に熱の排出を促進する。
【0010】
好適なことが判明している別の態様では、冷媒通路の形状は、緊締輪郭に合わせられている。本発明に係る緊締ジョーでは、冷媒通路の形状は任意に設計することができるので、冷媒通路の形状は緊締輪郭の形状に合わせることができ、緊締輪郭は例えば、湾曲した面によってされていて、必ずしも平らである必要はない。
【0011】
特に好適であることが判明している別の態様では、緊締輪郭と冷媒通路との間における壁厚は、冷媒通路の直径よりも小さい。このように構成されていると、緊締ジョーをその輪郭近傍において冷却することが可能となり、これにより、発生する熱の効果的な導出が簡単に保証される。これに関連して、本発明の枠内において好適な態様では、冷媒通路の直径は一定である。
【0012】
好適であることが示されている別の態様では、ベース体に冷媒入口および冷媒出口が形成されている。これによって冷媒を特に簡単に、緊締ジョーに対して導入・導出することができ、ひいては冷却出力を一定に保つことができる。このとき本発明の枠内において特に、冷媒入口および冷媒出口は、付加製造時に既に一緒にベース体に形成される。次いで冷媒入口および冷媒出口には、例えば適宜な差込み結合またはねじ結合によって、冷媒管路を簡単に接続することができる。
【0013】
好適なことが判明している別の好適な態様では、冷媒は、空気、水およびオイルを含むグループから成っている。これによって、通常既に存在している単純かつ安価な冷媒が与えられているので、インフラ施設を後から設ける必要はない。
【0014】
好適なことが判明しているさらに別の好適な態様では、ベース体は金属から形成されている。これによって、緊締ジョーのこれに関連した安定性の他に、加工すべきワークと冷媒を通す冷媒通路との間における熱伝導をも確実に保証することができ、その結果、発生する熱の効果的な排出が保証される。例えば工具鋼又はその他の適宜な金属を使用することができる。
【0015】
これに関連して、製造技術的な観点から、特に好適であることが示されている態様では、ベース体は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよび銅を含有する合金から形成されている。このような合金は、高強度であり、しかも付加製造のために使用することも可能である。本発明の枠内においては、このときしかしながらまた、別のアルミニウム合金またはチタン合金およびその他の適宜な合金も使用される。
【0016】
緊締ジョーを製造する方法に関する課題は、製造に関する手間を減じること、および、高い機械的安定性を有すると共に冷却可能である緊締ジョーを、製造することができる方法を提供することである。
【0017】
この課題を解決するために本発明に係る方法は、
下記のステップ:すなわち、
ベース体を形成するために、冷媒通路の場所を空けながら、材料を層状に設けるステップと、
緊締輪郭を同時に形成するステップと、を有する。
【0018】
本発明に係る方法によって、特に緊締輪郭の形状にも合わせることができる様々に構成された冷媒通路を実現することができる。ベース体内における冷媒通路の場所が空けられるように、材料を層状に設けることによって、さもないと、中実の物体に冷媒通路を形成するのに通常使用される補助孔を、簡単に回避することができる。ベース体の製造時に冷媒通路および緊締輪郭が同時に一緒に形成されるので、場合によっては必要な研削オペレーションを除く後加工は省かれ、このことは製造コストおよび製造時間に対してポジティブに作用する。本発明の枠内においてこのとき種々様々な付加製造方法を、特にレーザ溶融またはレーザ焼結を、しかしながらまた鋳造方法を使用することができる。
【0019】
好適であることが判明している態様では、本発明に係る方法はさらに次のステップ、すなわち、
冷媒入口および冷媒出口をベース体に同時に加工するステップを有する。
【0020】
冷媒入口および冷媒出口をただ1つの製造ステップにおいて同時に加工することによって、本発明に係る方法によって製造された緊締ジョーを直接かつ比較的大きな後加工なしに規定通りに使用することが可能である。
【0021】
次に、図示の実施形態を参照して本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る緊締ジョーを示す斜視図である。
【
図3】
図2の断面III−IIIに沿った断面図である。
【0023】
図1には、ワークを緊締または保持するために設けられた緊締ジョー1が示されている。この緊締ジョー1は、主としてベース体2から形成されていて、片側に緊締輪郭3を有しており、この緊締輪郭3は、図示の実施形態では円弧形状に形成されている。
図1に破線で示されているように、緊締ジョー1のベース体2内には、冷媒通路4が形成されており、この冷媒通路4は、冷媒入口5と冷媒出口6とによって画定されている。複数の円弧部分7を有する冷媒通路4は、図示の実施形態では、蛇行形状に緊締輪郭3の形状に合わせられている。ベース体2の上側にはさらに、固定手段を収容するための収容部8が示されており、これらの収容部8によって緊締ジョー1は、適宜な緊締手段に固定することができる。
【0024】
本発明に係る緊締ジョー1に対する、
図2に示した平面図から分かるように、冷媒通路4の形状は緊締輪郭3の形態に合わせられている。このとき冷媒通路4と緊締輪郭3との間における間隔は、冷媒通路4の直径よりも小さいので、これにより可能な限り効果的な冷却を実現することができる。
【0025】
図2のIII−III線に沿った、
図3に示した断面図から、特に、個々の円弧部分7から形成された冷媒通路4の蛇行形状の形態を知ることができる。
【0026】
図4には、本発明に係る緊締ジョー1が背面図で示されている。
図5に示された、
図4の断面V−Vに沿った断面図から、冷媒を冷媒通路4に対して導入もしくは導出することができる冷媒入口5および冷媒出口6の位置が分かる。ベース体2は、図示の実施形態では金属から、つまりアルミニウム、亜鉛、マグネシウムおよび銅を含有する合金から形成されている。しかしながらまた択一的に、ベース体2は、別のアルミニウム合金またはチタン合金から、または工具鋼から製造されていてもよい。
【0027】
以下においては、緊締ジョー1を製造する本発明に係る方法を再度記載する。緊締ジョー1のベース体2の製造は、付加製造方法において層状に材料が適宜な基板に設けられることによって行われる。後で冷媒通路4が形成されていることが望ましい箇所には、材料は設けられないので、ベース体2は層状に冷媒通路4と共に成形される。冷媒入口5および冷媒出口6が設けられている箇所には、本発明に係る製造方法では、相応の接続部が直接、製造プロセス中に空けられるので、付加製造されたベース体2の後加工を回避することができる。緊締ジョー1の製造時に、緊締輪郭3は直接一緒に形成される。個々の層の製造は、このときレーザ焼結を用いて行われる。
【符号の説明】
【0028】
1 緊締ジョー
2 ベース体
3 緊締輪郭
4 冷媒通路
5 冷媒入口
6 冷媒出口
7 円弧部分
8 収容部
【外国語明細書】