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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52554(P2017-52554A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】合成樹脂製折り畳み容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/18 20060101AFI20170224BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   B65D6/18 C
   B65D81/38 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-179852(P2015-179852)
(22)【出願日】2015年9月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】天藤 理
【テーマコード(参考)】
3E061
3E067
【Fターム(参考)】
3E061AA05
3E061AB10
3E061AD07
3E061CA02
3E061DB11
3E061DB17
3E067BA05A
3E067BB17A
3E067BC06A
3E067CA18
3E067DA06
3E067FA01
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA06
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、連結部分の気密性を向上することができるうえ、容器のがたつきを抑制することができ、また、部材同士の連結部分の強度を向上させることができる。
【解決手段】側板3、4は底板2の周壁部21、27に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に向けて回転自在に設けられ、隣接する一対の側板3、4のうち一方の前後側板3A、3Bが連設する底板2の第1周壁部21の上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、下方に傾く下り傾斜面が形成され、左右側板4A、4Bの下端が当接する底板2の第2周壁部27の上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、上方に傾く上り傾斜面が形成された合成樹脂製折り畳み容器を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周部から立設される周壁部を有する底板と、該周壁部に起立姿勢で連設される側板と、を備えた合成樹脂製折り畳み容器であって、
前記側板は、前記底板の周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に向けて回転自在に設けられ、
隣接する一対の側板のうち一方の第1側板が連設する前記底板の周壁部の第1上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、下方に傾く下り傾斜面が形成されていることを特徴とする合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項2】
前記第1側板に隣接する他方の第2側板が連設する前記底板の周壁部の第2上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、上方に傾く上り傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項3】
前記第1側板の両側縁部には、前記第1側板に隣接する他方の第2側板に向けて突出する第1係合凸部を有する第1連結部が設けられ、
前記第2側板の両側縁部の下部には、それぞれ前記第1係合凸部の下方に位置するように突出する第2係合凸部を有する第2連結部が設けられ、
該第2係合凸部は、前記底板と前記側板との間に嵌合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項4】
前記第1係合凸部の下端部および前記第2係合凸部の上端部の少なくとも一方は、容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、下方に傾斜する直線状、または凸曲線状のテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項5】
前記テーパ面は、前記側板の高さ方向に沿う傾斜高さ寸法が、前記側板の厚さ方向に沿う傾斜長さ寸法以下であることを特徴とする請求項4に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項6】
外周部から立設される周壁部を有する底板と、該周壁部に起立姿勢で連設される側板と、を備えた合成樹脂製折り畳み容器であって、
前記側板は、周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に向けて回転自在に設けられ、
前記底板の周壁部の上端部には、厚さ方向の容器外側が前記周壁部の延在方向に沿って上方に向けて突出する第1凸壁部が形成され、
前記ヒンジ部は、前記周壁部の上面のうち前記第1凸壁部の容器内側または容器外側に配設されていることを特徴とする合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項7】
前記側板によって囲まれる容器開口を覆うとともに、前記側板の上端部に対してヒンジ継手を介して回転自在な蓋板が設けられ、
前記側板の上端部は、厚さ方向の容器内側および容器外側のいずれかが前記側板の延在方向に沿って上方に向けて突出する第2凸壁部が形成され、
前記ヒンジ継手は、前記側板の上面のうち前記第2凸壁部の容器内側または容器外側に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【請求項8】
前記合成樹脂製折り畳み容器の合成樹脂が合成発泡樹脂により発泡形成された材料により形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の合成樹脂製折り畳み容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製折り畳み容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の運搬には、合成樹脂製の容器が広く使用されている。このような合成樹脂製の容器として、とくに特許文献1に記載されるような、底板と、該底板の周囲に立設される側板と、底板および側板によって連結された容器上面の開口を覆う蓋板と、を備え、四面からなる各側板は、ヒンジ部を介して底板に対して立設可能に、かつ立設姿勢から容器内側に回転自在に設けられる構成の折り畳み容器が知られている。折り畳み容器の場合には、容器の不使用時には折り畳んで容器の全体形状を小さくすることができることから、保管スペースを増大させない利点や、輸送コストを低減できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−240867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した合成樹脂製の折り畳み容器では、以下のような問題があった。
すなわち、底板、側板、および蓋板の連結部分がヒンジ部を介して回転自在とすることで折り畳み可能な構造となっているが、折り畳むという性質上、底板や側板、および蓋板における各部材同士の連結部分に隙間が生じ易く、容器の気密性が低下したり、運搬時等で容器ががたつくという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0005】
また、上述した従来の折り畳み容器では、各部材(底板、側板、および蓋板)同士の連結部分に容器の荷重が集中することから、上述したようながたつきと相俟って連結部分が破損するおそれがあった。
そして、上述した特許文献1では、連結部分の破損の防止や容器のがたつきを抑制するために、組み立て時に連結される側板の端部同士を強固に嵌合する構造としているが、形状が複雑であり、成形が難しくなるという問題があった。さらに、単に側板同士を嵌合させるだけの構造では、容器のがたつきを十分に抑制することができない。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、連結部分の気密性を向上することができるうえ、容器のがたつきを抑制することができる合成樹脂製折り畳み容器を提供することを課題とする。
また、本発明の他の目的は、部材同士の連結部分の強度を向上させることができる合成樹脂製折り畳み容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器では、外周部から立設される周壁部を有する底板と、該周壁部に起立姿勢で連設される側板と、を備えた合成樹脂製折り畳み容器であって、前記側板は、前記底板の周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に向けて回転自在に設けられ、隣接する一対の側板のうち一方の第1側板が連設する前記底板の周壁部の第1上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、下方に傾く下り傾斜面が形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明では、側板を底板の周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に回転させて倒すことで、折り畳むことが可能となる。そのため、容器のみを運搬する際や不使用時には、側板を折り畳んだ状態とすることができ、容器の保管スペースを小さくすることができる。
【0009】
また、本発明では、第1側板が連設する底板の周壁部の第1上面に下り傾斜面が形成されているので、下り傾斜面上に連設される第1側板が容器内側に倒れるように作用する。そのため、隣接する側板同士が互いに当接し合った状態で嵌合され、側板同士の連結が外れ難くなるうえ、組み立てた際の容器のがたつきを低減することができる。
このように本発明では、容器のがたつきを低減することができ、部材同士の連結部分に隙間が生じ難くなることから、容器の気密性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器では、前記第1側板に隣接する他方の第2側板が連設する前記底板の周壁部の第2上面には、容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、上方に傾く上り傾斜面が形成されていることが好ましい。
【0011】
この場合には、第1側板が連設する第1上面に容器内側に向けて下る下り傾斜面が形成され、第2側板が連設する第2上面に容器内側に向けて上る上り傾斜面が形成されているので、下り傾斜面上に連設される第1側板が容器内側に倒れるように作用し、かつ上り傾斜面上に連設される第2側板が容器外側に倒れる方向に作用する。そのため、連結される第1側板および第2側板同士が互いに引き寄せ合いより密接した状態で嵌合される。つまり、強固な嵌合状態を構成することができ、側板同士の連結が外れ難くなるうえ、組み立てた際の容器のがたつきを低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器では、前記第1側板の両側縁部には、前記第1側板に隣接する他方の第2側板に向けて突出する第1係合凸部を有する第1連結部が設けられ、前記第2側板の両側縁部の下部には、それぞれ前記第1係合凸部の下方に位置するように突出する第2係合凸部を有する第2連結部が設けられ、該第2係合凸部は、前記底板と前記第1側板との間に嵌合されていることが好ましい。
【0013】
この場合には、一方の第1側板とこれに隣接する他方の第2側板とを連結させて、側板を起立姿勢にして組み立てる際に、先ず第1側板をヒンジ部回りに回転させて起立姿勢とし、その後、第2側板の第2係合凸部を第1側板の第1係合凸部の下方に位置するようにヒンジ部回りに回動させることで、第2係合凸部が底板と第1側板との間に嵌合される。そのため、例えば第2係合凸部を有する第2側板に取っ手を備えておき、この第2側板を手に持って容器を持ち上げる際に、第2係合凸部で第1側板の第1係合凸部が下方から持ち上げられ、これにより第2側板にかかる容器全体の荷重が第1側板に分散させることができる。したがって、特定の部材の連結部分に荷重が集中することがなくなり、破損やがたつきを抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器では、前記第1係合凸部の下端部および前記第2係合凸部の上端部の少なくとも一方は、容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、下方に傾斜する直線状、または凸曲線状のテーパ面が形成されていてもよい。
【0015】
このような構成とすることで、側板を折り畳み状態から起立させて組み立てる際に、第2側板の第2係合凸部を第1側板の第1係合凸部の下面に対して干渉することなくテーパ面に沿ってスムーズに移動させることができる。そのため、第2係合凸部が底板と第1係合凸部との間に無理に嵌め込まれることがなくなり、連結部分の破損を防ぐことができる。
【0016】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器では、前記テーパ面は、前記側板の高さ方向に沿う傾斜高さ寸法が、前記側板の厚さ方向に沿う傾斜長さ寸法以下であることが好ましい。
【0017】
本発明では、テーパ面の傾斜高さ寸法を傾斜長さ寸法以下となる寸法に設定することで、起立させようとする第2側板の第2係合凸部をテーパ面に沿って、より滑らかに干渉させることなく嵌合させることができる。
【0018】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器は、外周部から立設される周壁部を有する底板と、該周壁部に起立姿勢で連設される側板と、を備えた合成樹脂製折り畳み容器であって、前記側板は、周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に向けて回転自在に設けられ、前記底板の周壁部の上端部には、厚さ方向の容器外側が前記周壁部の延在方向に沿って上方に向けて突出する第1凸壁部が形成され、前記ヒンジ部は、前記周壁部の上面のうち前記第1凸壁部の容器内側または容器外側に配設されていることを特徴としている。
【0019】
本発明では、側板を底板の周壁部に対してヒンジ部を介して起立姿勢から容器内側に回転させて倒すことで、折り畳むことが可能となる。そのため、容器のみを運搬する際や不使用時には、側板を折り畳んだ状態とすることができ、容器の保管スペースを小さくすることができる。
また、本発明では、側板を底板の周壁部に対して起立させた組立状態において、ヒンジ部の容器内側または容器外側に第1凸壁部が設けられているため、ヒンジ部周囲に形成される容器内部と容器外部との連通部分がなくなり、容器の密閉性を向上させることができる。
【0020】
しかも、本発明では、ヒンジ部よりも容器外側に第1凸壁部が設けられており、側板の容器内側または容器外側への回転が規制されるから、組み立てた際の容器のがたつきや隙間が形成されることを低減することができる。
このように本発明では、容器のがたつきを低減することができ、部材同士の連結部分に隙間が生じ難くなることから、容器の気密性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器は、前記側板によって囲まれる容器開口を覆うとともに、前記側板の上端部に対してヒンジ継手を介して回転自在な蓋板が設けられ、前記側板の上端部は、厚さ方向の容器内側および容器外側のいずれかが前記側板の延在方向に沿って上方に向けて突出する第2凸壁部が形成され、前記ヒンジ継手は、前記側板の上面のうち前記第2凸壁部の容器内側または容器外側に配設されていてもよい。
【0022】
この場合には、蓋板を側板の上端部に対して閉じた状態において、ヒンジ継手の容器外側または容器内側に第2凸壁部が設けられているため、ヒンジ継手の周囲に形成される容器内部と容器外部との連通部分がなくなり、容器の密閉性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明に係る合成樹脂製折り畳み容器は、前記合成樹脂製折り畳み容器の合成樹脂が合成発泡樹脂により発泡形成された材料により形成されていることが好ましい。
【0024】
本発明では、例えば合成発泡樹脂として、ビーズ法発泡成形によるポリオレフィン系発泡体を採用すれば、ポリスチレン発泡体よりも耐久性や柔軟性があるので、各連結部分の強度や耐久性を向上させることができ、再使用回数を増やすことができる。また、合成発泡樹脂の柔軟性により気密性(保温・保冷性能)のある合成樹脂製折り畳み容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の合成樹脂製折り畳み容器によれば、簡単な構造で、連結部分の気密性を向上することができるうえ、容器のがたつきを抑制することができる。
また、本発明の合成樹脂製折り畳み容器によれば、部材同士の連結部分の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態による合成樹脂製の折り畳み容器の全体構成を示す斜視図であって、組み立てた状態を示す図である。
図2図1に示す折り畳み容器を折り畳んだ状態を示す斜視図である。
図3図1に示す折り畳み容器の折り畳む途中段階の状態を示す斜視図であって、側板に対して蓋板を開けた状態を示す図である。
図4図3に続く折り畳み容器の折り畳む途中段階の状態を示す斜視図であって、第2側板を容器内側に倒した状態を示す図である。
図5】底板の構成を示す斜視図である。
図6図5に示すA−A線断面図であって、底板を前後方向に破断した断面図である。
図7】前後側板を容器外面側から見た斜視図である。
図8】前後側板を容器内面側から見た斜視図である。
図9】前後側板の連結部の要部を示す拡大斜視図である。
図10】左右側板を容器外面側から見た斜視図である。
図11】左右側板を容器内面側から見た斜視図である。
図12】左右側板の連結部の要部を示す拡大斜視図である。
図13】二分割された蓋板を容器内面側から見た斜視図である。
図14図13に示す蓋板を容器外面側から見た斜視図である。
図15】前後側板と蓋板を連結するヒンジ継手の構成を示す斜視図である。
図16】底板と前後側板の連結部分の構造を示す部分断面図であって、(a)は起立状態を示す図、(b)は起立前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態による合成樹脂製折り畳み容器について、図面に基づいて説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による合成樹脂製折り畳み容器(以下、単に折り畳み容器1という)は、内容物を収容して搬送する際に用いられ、不使用時や容器のみを搬送する際には組み立てた状態(図1に示す組立状態T)から折り畳んだ状態(図2に示す折り畳み状態S)で小さくすることが可能な発泡合成樹脂からなる容器である。
折り畳み容器1は、平面視で矩形状の底板2と、底板2の四辺から上方に向けて延在して互いに対向する一対の前後側板3(3A、3B)(第1側板)、及び左右側板4(4A、4B)(第2側板)と、底板2と各側板3A、3B、4A、4Bによって囲まれる容器開口を閉じる蓋板5(5A、5B)と、を備えている。
【0029】
ここで、折り畳み容器1は、組立状態Tで一方に長い略長方形状をなしており、上から見た平面視で長手方向を左右方向X1、短手方向を前後方向X2として以下説明する。また、底板2を下にした折り畳み容器1の姿勢において、底板2の板面に直交する方向を上下方向Yとし、上下方向Yに沿う底板2側を下側、下方とし、蓋板5側を上側、上方とする。
【0030】
折り畳み容器1は、底板2に対して、各側板3、4および蓋板5が折り畳まれる形態であり、図2に示す折り畳み状態Sにおいて全体として容量を小さく、具体的には嵩を低くした状態とされる。前後側板3A、3Bと左右側板4A、4Bは、それぞれ底板2に折り畳み可能に連結している。そして、折り畳み容器1を折り畳む際には、図3に示すように、一対の蓋板5A、5Bを開き、図4に示すように、左右側板4A、4Bを容器内側に折り畳む。その後、折り畳まれた左右側板4A、4B上に前後側板3A、3Bを蓋板5A、5Bとともに重ねるように折り畳む(詳しくは後述する)。
【0031】
蓋板5は、図1に示すように、前後方向X2を二分割するように左右方向X1に沿って、それぞれ前後側板3A、3Bの上端縁に対して回転自在に支持され、底板2と側板3、4によって組み立てられた容器開口を開閉できるようになっている。二分割された蓋板5をそれぞれ符号5A、5Bで示している。
【0032】
底板2は、図5に示すように、前後方向X2の両端2a、2aには、左右方向X1に沿って第1周壁部21(本発明の周壁部に相当)が所定の高さで立設され、その第1周壁部21の上端部に対して図1に示す前後側板3A、3Bがヒンジ(図7図8に示す前後側板3の第1側板ヒンジ31)を介して左右方向X1に沿う軸線回りに回転自在に連結されている。
【0033】
第1周壁部21は、図5及び図6に示すように、下部壁22と、上部壁23(第1凸壁部)と、を有している。上部壁23は、厚さ方向の容器外側が第1周壁部21の延在方向に沿って上方に向けて突出している。すなわち、第1周壁部21は、下部壁22と上部壁23とによって断面視で容器内側が低くなる段状に形成されている。図5に示すように、下部壁22における左右方向X1の両側には、上部壁23の容器内側の位置で第1側板ヒンジ31を保持するための第1ヒンジ保持部24が突設されている。左右方向X1で一対の第1ヒンジ保持部24、24同士の間には、第1側板ヒンジ31を回転自在に収容する第1凹部25が形成されている。
第1ヒンジ保持部24と第1側板ヒンジ31は、樹脂製のヒンジ棒26によって連結されている。つまり、第1ヒンジ保持部24には、左右方向X1に貫通するヒンジ孔24aが形成され、このヒンジ孔24aに挿通されたヒンジ棒26(図8参照)を第1側板ヒンジ31の端面31aにも挿通させることにより、双方(第1ヒンジ保持部24および第1側板ヒンジ31)をヒンジ棒26回りに回転自在に支持するヒンジ部を構成している。
【0034】
また、図5及び図6に示すように、上部壁23の上端面(第1上面)は、厚さ方向(前後方向X2)で容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、下方に傾斜する下り傾斜面23aが形成されている。この下り傾斜面23aは、上部壁23の上端において、左右方向X1の全体にわたって形成されており、傾斜角度としては例えば0〜20°、好ましくは5〜10°に設定することができる。傾斜角度が5°未満であると、側板が倒れる作用が小さくなり、がたつきを抑制する効果が得にくく、傾斜角度が20°を超えると、折り畳み状態からスムーズに側板を立設させることが難しくなる。
また、前後方向X2に対向する第1周壁部21、21の下部壁22、22同士の離間は、左右側板4の幅寸法(前後方向X2の長さ寸法)に一致するように設定されている。
【0035】
また、図5に示すように、底板2の左右方向X1の両端縁2b、2bには、それぞれ前後方向X2の全体にわたって上方に向けて突出する第2周壁部27、27(第1凸壁部)が形成されている。左右側板4A、4Bは、第2周壁部27の容器内側の位置において、ヒンジ(図10及び図11に示す左右側板4の第2側板ヒンジ41)を介して前後方向X2に沿う軸線回りに回転自在に連結されている。
【0036】
第2周壁部27の容器内側における前後方向X2の両側には、第2側板ヒンジ41を保持するための第2ヒンジ保持部28が容器内側へ突設されている。そして、前後方向X2で一対の第2ヒンジ保持部28、28同士の間には、第2側板ヒンジ41が回転自在に収容される第2凹部29が形成されている。
第2ヒンジ保持部28と第2側板ヒンジ41は、樹脂製のヒンジ棒26(図11参照)によって連結されている。つまり、第2ヒンジ保持部28および上述した第1周壁部21には、前後方向X2に貫通するヒンジ孔28aが形成され、このヒンジ孔28aに挿通されたヒンジ棒26を第2側板ヒンジ41の端面41aに形成されたヒンジ孔41bにも挿通させることにより、双方(第2ヒンジ保持部28および第2側板ヒンジ41)をヒンジ棒26回りに回転自在に支持するヒンジを構成している。
【0037】
また、第2周壁部27の上端面(第2上面)は、厚さ方向(左右方向X1)で容器外側から容器内側に向かうに従い漸次、上方に傾斜する上り傾斜面27aが形成されている。この上り傾斜面27aは、第2周壁部27の上端において、前後方向X2の全体にわたって形成されており、傾斜角度としては上述した第1周壁部21の下り傾斜面23aの傾斜角度とほぼ同等に設定されている。
なお、第1周壁部21および第2周壁部27の立ち上がりの高さ寸法、及び下部壁22の高さは、任意に設定することができるが、前後側板3及び左右側板4を容器内側に互いに干渉することなく折り畳むことが可能な寸法に設定されることが好ましい。
【0038】
図7及び図8に示すように、前後側板3(3A、3B)は、平面形状が略長方形状をなし、高さ寸法(上下寸法)が後述する左右側板4(4A、4B)よりもほぼ第1周壁部21の高さ寸法だけ小さくなっており、図1に示す組立状態Tで全ての側板3、4の上端が同じ高さとなるように設定されている。
前後側板3A、3Bの下端部は、底板2の第1周壁部21の上端部に対応する段状に形成され、さらにその段部の下端に沿うとともに、この下端からさらに下方に向けて突出する第1側板ヒンジ31が設けられている。第1側板ヒンジ31は、上述した底板2の第1周壁部21に形成される第1凹部25(図5参照)内において回転自在に支持されている。
第1側板ヒンジ31の左右方向X1の両端面31aには、上述したヒンジ棒26の一端が挿入されるヒンジ孔31b(図9参照)が形成されている。
【0039】
また、前後側板3A、3Bの左右方向X1の両端縁には、それぞれ前後方向X2の内側に向けて突出する第1係合凸部32を有する第1連結部30が設けられている。そして、第1係合凸部32の下側部分には、底板2の第2周壁部27との間の部分に係合凹部11(図1参照)が形成されている。
本折り畳み容器1では、第1連結部30を左右側板4A、4Bの第2連結部40(図10及び図11で後述する)に対して着脱可能に連結させることで、前後側板3A、3Bと左右側板4A、4Bとがバランスよく起立した姿勢でずれることなく組み立てられる構成となっている。
【0040】
第1係合凸部32は、前後側板3A、3Bの上下方向Yの全体にわたって配置されている。第1係合凸部32は、上下方向Yの略中間部分から上端までの範囲において、突出先端縁から容器内側に直交する方向に向けて突出する第1係止凸片32Aを有し、第1係止凸片32Aと前後側板3の内面との間に第1係止溝32Bが形成されている。
【0041】
また、第1係合凸部32の下面は、図8及び図9に示すように、容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、下方に傾斜する直線状の第1テーパ面33を形成している。この第1テーパ面33は、図9に示すように、前後側板3の高さ方向に沿う傾斜高さ寸法Hが、前後側板3の厚さ方向に沿う傾斜長さ寸法L以下に設定することができる。
【0042】
また、図8に示すように、前後側板3A、3Bの内面には、上下方向Yに所定の長さで延びるとともに容器内側に向けて僅かに膨出した係止突条34が形成されている。この係止突条34は、前後側板3A、3Bの第1連結部30に連結した状態の左右側板4A、4Bの容器内側を向く内面縁部に係止可能な位置に設けられている。これにより左右側板4A、4Bは、前後側板3A、3Bの第1連結部30と係止突条34との間に挟持された状態となり、左右方向X1にずれることなく固定される。
なお、係止突条34の膨出高さは、先に起立させた前後側板3A、3Bに対して左右側板4A、4Bを回動させて起立する際に、左右側板4A、4Bが係止突条34を乗り越えて回動可能な適宜な寸法に設定されている。
【0043】
また、前後側板3A、3Bの上端部には、図1及び図7に示すように、厚さ方向の容器内側が前後側板3A,3Bの延在方向に沿って上方に向けて突出する上壁部36(第2凸壁部)が形成されている。そして、前後側板3A、3Bには、それぞれ分割された蓋板5A、5Bを回転自在に支持するためのヒンジ継手6(後述)の一部を収容する切欠き凹部35を形成している。切欠き凹部35は、上壁部36の容器外側に位置し、左右方向X1の両端(上角部3a、3a)を残した中央部分に沿って延在している。そして、上角部3a、3aのそれぞれには、左右方向X1に貫通するヒンジ孔3bが形成されている。このヒンジ孔3bには、後述するヒンジ継手6(図15参照)に対して挿通支持されるヒンジ棒60の一端が挿通される。
【0044】
図10及び図11に示すように、左右側板4A、4Bは、それぞれ外面のほぼ中央部分に持ち運び時に指先が入る取っ手凹部42が形成されている。
左右側板4A、4Bの下端部には、下方に向けて突出する第2側板ヒンジ41が設けられている。第2側板ヒンジ41は、上述した底板2の第2周壁部27に形成される第2凹部29(図5参照)内において回転自在に支持されている。左右側板4A、4Bは、第2側板ヒンジ41を介して回動により転倒させて折り畳んだ状態で底板2の第2周壁部27の内側に格納され、起立させて組み立てた状態で外面が底板2の第2周壁部27の外面と同一面となる。
第2側板ヒンジ41の前後方向X2の両端面には、上述したヒンジ棒26の一端が挿入されるヒンジ孔41bが形成されている。
【0045】
図10図11、及び図12に示すように、左右側板4A、4Bの前後方向X2の両端縁には、それぞれ図1に示す係合凹部11に係合可能な第2係合凸部43を有する第2連結部40が設けられている。第2連結部40は、第2係合凸部43より上方の位置であって上下方向Yの略中間部分から上端までの範囲において、左右方向X1の容器外側に向けて突出する第2係止凸片44Aと、第2係止凸片44Aの前後方向X2の内側に連設される第2係止溝44Bと、が形成されている。第2連結部40と第1連結部30とが連結された状態において、第2係止凸片44Aは前後側板3A、3Bの第1係止溝32B内に係止され、第2係止溝44B内には前後側板3A、3Bの第1係止凸片32Aが係止されることで、鍵状に係合するようになっている。
【0046】
第2係合凸部43は、第2係止凸片44Aの下側に位置し、第2係合凸部43の上面が容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、上方に傾斜する直線状の第2テーパ面45を形成している。この第2テーパ面45は、第1テーパ面33に対応する傾斜角度であって、図12に示すように、左右側板4の高さ方向に沿う傾斜高さ寸法Hが、左右側板4の厚さ方向に沿う傾斜長さ寸法L以下(H≦L)に設定することができる。つまり、前後側板3と左右側板4とがそれぞれの第1連結部30および第2連結部40同士を連結させて組み立てられた状態で、第1テーパ面33および第2テーパ面45同士が密接した状態で組み立てられるようになっている。
なお、両テーパ面33、45の傾斜角度は、傾斜高さ寸法H≦傾斜長さ寸法Lの関係であることに限定されるものではない。
【0047】
また、左右側板4A、4Bの上端面には、起立姿勢の左右側板4A、4B上に閉じられた蓋板5A、5Bの下面に形成されている凹溝54(図13参照)に嵌合する上凸部46が前後方向X2に延在して形成されている。
【0048】
図1及び図2に示すように、一対の蓋板5A、5Bは、それぞれ平面視で底板2の前後方向X2の全長を略1/2にした長方形状をなし、前後方向X2の一端(連結端部51)がヒンジ継手6を介して前後側板3A、3Bに連結され、他端が一対の蓋板5A、5B同士が閉止時に接続される閉止端部52となっている。
【0049】
図13及び図14に示すように、連結端部51は、それぞれ分割された蓋板5A、5Bを回転自在に支持するためのヒンジ継手6の一部を収容する切欠き凹部53を形成している。切欠き凹部53は、左右方向X1の両端部5a、5aを残した中央部分に沿って延在している。そして、両端部5a、5aのそれぞれには、左右方向X1に貫通するヒンジ孔5bが形成されている。このヒンジ孔5bには、後述するヒンジ継手6に対して挿通支持される図15に示すヒンジ棒60の一端60aが挿通される。
【0050】
閉止端部52は、左右方向X1の中央から一端側にわたって前後方向X2の外側に突出する上突片52aと、左右方向X1の中央から他端側にわたって上角部が切り欠かれた上切欠部52bと、を有している。そして、一対の蓋板5A、5B同士は、一方の蓋板5Aの上突片52aが他方の蓋板5Bの上切欠部52bに載置し、かつ他方の蓋板5Bの上突片52aが一方の蓋板5Aの上切欠部52bに載置することにより互いに係止され、折り畳み容器1の容器開口を閉じるようになっている。
【0051】
また、各蓋板5A、5Bの下面には、前後方向X2に延在する凹溝54が形成されている。この凹溝54は、蓋板5A、5Bを閉じたときに左右側板4A、4Bの上端に設けられている上凸部46に嵌合される。これにより、図1に示すように、蓋板5A、5Bが左右側板4A、4Bに連結され、左右方向X1にずれて双方の間に隙間が生じることを防止し、容器内の密封性や保温性を高めることができる。
【0052】
ヒンジ継手6は、図15に示すように、前後側板3A,3Bに形成される切欠き凹部35の左右方向X1の長さ寸法にほぼ一致する長さを有する長尺部材であって、前後側板3A、3Bに対して回転自在に支持する側板支持部61と、蓋板5A、5Bに対して回転自在に支持する蓋板支持部62とを有する二軸ヒンジ構造を呈している。これにより、蓋板5A、5Bはそれぞれ、容器組立状態において、容器開口を閉じる閉止位置から開いた開位置までの略270°の回転範囲で回動させることができる。つまり、蓋板5A、5Bを開けた状態では、蓋板5A、5Bが容器開口から外れた位置となるので、容器内側に内容物を収納し易い構成となっている。
【0053】
そして、図1に示すように、ヒンジ継手6のうち側板支持部61は前後側板3A、3Bの切欠き凹部35内に位置し、蓋板支持部62は蓋板5A、5Bの切欠き凹部53内に位置している。このヒンジ継手6は、容器組立時において、前後側板3A、3Bの外面、および蓋板5A、5Bの上面より突出しないように配置される構成となっている。
図15に示すヒンジ継手6の長さ方向(左右方向X1)の両端面には、側板支持部61および蓋板支持部62のそれぞれに対応した所定の長さのヒンジ孔61a、62aが形成されている。これらヒンジ孔61a、62aは、樹脂製のヒンジ棒60の一部60bが挿入される孔径をなし、ヒンジ棒60が回転可能で、かつ軸方向に抜け難い寸法に設定されている。なお、ヒンジ棒60の他端60aは、蓋板5A、5Bの切欠き凹部53、及び前後側板3A、3Bの切欠き凹部35を形成する突片部(上角部3a、端部5a)において左右方向X1に貫通するヒンジ孔3b、5bに挿入されている。
【0054】
このように構成される折り畳み容器1の底板2、前後側板3A、3B、左右側板4A、4B、および蓋板5A、5Bは、任意の発泡樹脂成形体で作ることができるが、熱可塑性樹脂の発泡成形体であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。
なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとを含む複合樹脂(すなわち、上記ピオセラン(登録商標))を用いることが好ましい。
【0055】
次に、上述した構成の折り畳み容器1の組み立て手順、および折り畳み手順について、図面に基づいて説明する。
図2に示す折り畳み状態Sから図1に示す組立状態Tとなるように折り畳み容器1を組み立てる場合には、先ず、図4に示すように、前後側板3A、3Bを底板2に対して容器外側に向けて回動して起立させる。このとき、図16(a)、(b)に示すように、前後側板3A、3Bの下端面が底板2の第1周壁部21上に載置され、第1周壁部21の上部壁23の上面に下り傾斜面23aが形成されているので、前後側板3A、3Bは若干、容器内側に向けて傾いた状態で保持される。そして、この状態において、蓋板5A、5Bは、開いた状態のままにしておく。
【0056】
その後、図3に示すように、一対の左右側板4A、4Bを底板2に対して容器外側に向けて回動させて起立させるとともに、第2連結部40を先行して起立させた前後側板3A、3Bの第1連結部30に連結する。このとき、図7図8図10、及び図11に示すように、左右側板4A、4Bの第2係止凸片44Aが前後側板3A、3Bの第1係止溝32B内に係止され、第2係止溝44B内には前後側板3A、3Bの第1係止凸片32Aが係止されることで、鍵状に係合される。なお、左右側板4A、4Bの下端面が底板2の第2周壁部27上に載置され、第2周壁部27の上面に上り傾斜面27aが形成されているので、左右側板4A、4Bは若干、容器外側に向けて傾いた状態で保持される。すなわち、このとき、容器内側に向けて傾く前後側板3A、3Bの第1連結部30と、容器外側に向けて傾く左右側板4A、4Bの第2連結部40とが互いに引き寄せ合うようにして連結されるため、その連結が外れ難くなり、強固な連結状態となる。
【0057】
さらに、左右側板4A,4Bをそれぞれ起立させるように回動させることで、左右側板4の第2係合凸部43が前後側板3A、3Bと底板2とによって形成される図1に示す係合凹部11に嵌り込む。このとき、係合凹部11に嵌合された第2係合凸部43の上面(第2テーパ面45)と第1係合凸部32の下面(第1テーパ面33)とが当接するので、起立した左右側板4A、4Bの取っ手凹部42を手で持って容器を持ち上げると、第2係合凸部43が第1係合凸部32を持ち上げる作用が生じ、容器の重量が左右側板4A、4Bから前後側板3A、3Bに伝達されて分散されることになる。
この状態で、容器組立てが完了となり、図1に示すように、容器内に内容物を収納し、蓋板5A、5Bをヒンジ継手6を介して回動させて閉じることができる。
【0058】
また、折り畳み容器1を折り畳む際には、組み立てる際の逆の手順により行うことができる。つまり、一対の蓋板5A、5Bをヒンジ継手6を介して開いた後、左右側板4A、4Bをそれぞれ容器内側に向けて回動させることで、第2連結部40と前後側板3の第1連結部30との連結が外れて解除され、折り畳むことができる。次に、起立されたままの前後側板3A、3Bをそれぞれ容器内側に向けて回動させて倒し、これにより折り畳み容器1を図2に示す折り畳み状態Sに折り畳むことができる。
【0059】
次に、上述した構成の合成樹脂製折り畳み容器の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2に示すように、本実施の形態の折り畳み容器1では、前後側板3A、3Bおよび左右側板4A、4Bを底板2に対してそれぞれのヒンジ部(第1側板ヒンジ31、第2側板ヒンジ41)を介して起立姿勢から容器内側に回転させて倒すことで、折り畳むことが可能となる。そのため、容器のみを運搬する際や不使用時に、側板3、4を折り畳んだ状態とすることができ、折り畳み容器1の保管スペースを小さくすることができる。
【0060】
そして、本実施の形態による折り畳み容器1では、前後側板3A、3Bが連設する底板2の周壁部21の下り傾斜面23aが形成されているので、下り傾斜面23a上に連設される前後側板3A、3Bが容器内側に倒れるように作用する。そのため、隣接する側板3、4同士が互いに当接し合った状態で嵌合され、側板3、4同士の連結が外れ難くなるうえ、組み立てた際の折り畳み容器1のがたつきを低減することができる。
このように本実施の形態では、容器のがたつきを低減することができ、部材同士の連結部分に隙間が生じ難くなることから、容器の気密性を向上させることができる。
【0061】
さらに、本実施の形態では、前後側板3A、3Bが連設する上面に容器内側に向けて下る下り傾斜面23aが形成され、左右側板4A、4Bが連設する上面に容器内側に向けて上る上り傾斜面27aが形成されているので、下り傾斜面23a上に連設される前後側板3A、3Bが容器内側に倒れるように作用し、かつ上り傾斜面27a上に連設される左右側板4A、4Bが容器外側に倒れる方向に作用する。そのため、連結される前後側板3A、3Bおよび左右側板4A、4B同士が互いに引き寄せ合いより密接した状態で嵌合される。つまり、強固な嵌合状態を構成することができ、側板3、4同士の連結が外れ難くなるうえ、組み立てた際の容器のがたつきを低減することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、一方の前後側板3A、3Bとこれに隣接する他方の左右側板4A、4Bと連結させて、側板を起立姿勢にして組み立てる際に、先ず前後側板3A、3Bをヒンジ部回りに回転させて起立姿勢とし、その後、左右側板4A、4Bの第2係合凸部43を前後側板3A、3Bの第1係合凸部32の下方に位置するようにヒンジ部回りに回動させることで、第2係合凸部43が底板2と第1係合凸部32との間に形成される係合凹部11に嵌合される。
そのため、本実施の形態のように左右側板4A、4Bに取っ手凹部42を備えておき、この左右側板4A,4Bを取っ手凹部42により手に持って容器を持ち上げる際に、第2係合凸部43で前後側板3A、3Bの第1係合凸部32が下方から持ち上げられ、これにより左右側板4A、4Bにかかる容器全体の荷重が前後側板3A、3Bに分散させることができる。したがって、特定の部材の連結部分に荷重が集中することがなくなり、破損やがたつきを抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態の折り畳み容器1では、左右側板4A、4Bを起立させる際に、左右側板4A、4Bの第2係合凸部43の第2テーパ面45を第1係合凸部32に形成される第1テーパ面33に対して干渉することなく、これらテーパ面33、45に沿ってスムーズに移動させることができる。そのため、前後側板3A、3Bの第2係合凸部43が係合凹部11に無理に嵌め込まれることがなくなり、連結部分の破損を防ぐことができる。
【0064】
また、本実施の形態では、図9及び図12に示すように、上述したテーパ面33、45の傾斜高さ寸法Hを傾斜長さ寸法L以下となる寸法に設定することで、起立させようとする左右側板4A、4Bの第2係合凸部43をテーパ面33、45に沿ってより滑らかに干渉させることなく嵌合させることができる。
【0065】
さらに、本実施の形態では、側板3、4を底板2の周壁部21、27に対して起立させた組立状態において、ヒンジ部(第1側板ヒンジ31、第2側板ヒンジ41)の容器外側にそれぞれ上部壁23、第2周壁部27が設けられているため、ヒンジ部周囲に形成される容器内部と容器外部との連通部分がなくなり、容器の密閉性を向上させることができる。
しかも、本実施の形態では、前述した第1側板ヒンジ31、第2側板ヒンジ41よりも容器外側に上部壁23、第2周壁部27が設けられており、側板3、4の容器外側への回転が規制されるから、組み立てた際の容器のがたつきや隙間が形成されることを低減することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、例えば合成発泡樹脂として、ビーズ法発泡成形によるポリオレフィン系発泡体を採用すれば、ポリスチレン発泡体よりも耐久性や柔軟性があるので、各連結部分の強度や耐久性を向上させることができ、再使用回数を増やすことができる。また、合成発泡樹脂の柔軟性により気密性(保温・保冷性能)のある合成樹脂製折り畳み容器を提供することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、二軸ヒンジ構造をなすヒンジ継手6を介して前後側板3A、3Bと蓋板5A、5Bとが連結された構成であり、ヒンジ継手6が容器内面より外側に設けられているため、ヒンジ継手6の周囲の気密性を高めることが可能となり、断熱性能をより向上させることができる。
【0068】
さらに、本実施の形態では、図8図11、及び図15に示すように、各ヒンジ棒26、60がそれぞれに対応するヒンジ孔に挿通される構成であり、ヒンジ棒26、60の軸方向の長さ寸法を長くすることができ、またヒンジ孔の周辺に従来のようなヒンジ棒を挿入するための切欠き(スリット)を設ける必要がなくなることから、ヒンジ棒26、60の強度を向上させることができる。また、ヒンジ孔の周辺に切欠き(スリット)を必要としない構成となるので、ヒンジ部分の容器の厚さ寸法を十分に確保することができ、断熱性能の低下を抑えることができる。
さらにまた、ヒンジ棒26、60をヒンジ孔に挿入した状態では、ヒンジ棒26、60が外気に触れる面積が少なく、またヒンジ棒26、60の周囲が発泡樹脂によって覆われた状態となるため、ヒンジ棒26、60の温度変化による膨張収縮が無くなり、スムーズにヒンジ棒回りに回転させることができる。
【0069】
上述のように本実施の形態による合成樹脂製折り畳み容器では、簡単な構造で、連結部分の気密性を向上することができるうえ、容器のがたつきを抑制することができ、また、部材同士の連結部分の強度を向上させることができる。
【0070】
以上、本発明による合成樹脂製折り畳み容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では、左右側板4A、4Bの第2係合凸部43の上面、及び前後側板3A、3Bの第1係合凸部32の下面のそれぞれに容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、下方に傾斜するテーパ面33、45を形成した構成としているが、これに限定されることはなく、いずれか一方にテーパ面が形成された構成であってもかまわない。
また、第2係合凸部43の上面および第1係合凸部32の下面は、それぞれ水平面をなしていてもよい。この場合には、第2係合凸部43を有する左右側板4A、4Bを持ち上げたときの容器の荷重を、効率よく前後側板3A、3Bの第1係合凸部32に伝達させることができ、荷重の分散効果を高めることが可能となる。
【0071】
さらに、本実施の形態のように直線状のテーパ面33、45に限定されず、容器内側から容器外側に向かうに従い漸次、下方に傾斜する凸曲線状のテーパ面が形成されていてもよい。
【0072】
また、底板2と側板3、4との連結構造や、側板3、4同士の連結構造(第1連結部30、第2連結部40)、さらに側板3、4と蓋板5との連結構造については、上述した本実施の形態の構成であることに限定されるものはなく、本実施の形態のように回転自在なヒンジ部分を有した折り畳み構造のものであればよく、他の連結構造を採用することも可能である。また、本実施の形態では、前後側板3A,3Bと蓋板5A,5Bとの連結にヒンジ継手6を用いた二軸支持による構造となっている。さらに、ヒンジ棒26、30を用いない構成や、ヒンジ孔の長さや位置も任意に設定することができる。
【0073】
さらに、底板2、側板3、4、および蓋板5の厚さ寸法、縦横寸法などの形状、大きさなどの構成、あるいは折り畳んだ状態、組み立てた状態の大きさ、高さ等の構成については、適宜設定することができる。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 折り畳み容器(合成樹脂製折り畳み容器)
2 底板
3、3A、3B 前後側板(第1側板)
4、4A、4B 左右側板(第2側板)
5、5A、5B 蓋板
6 ヒンジ継手
11 係合凹部
21 第1周壁部(周壁部)
23 上部壁(第1凸壁部)
23a 下り傾斜面
27 第2周壁部(第1凸壁部)
27a 上り傾斜面
30 第1連結部
31 第1側板ヒンジ(ヒンジ部)
32 第1係合凸部
32A 第1係止凸片
32B 第1係止溝
33 第1テーパ面
34 係止突条
35 切欠き凹部
36 上壁部(第2凸壁部)
40 第2連結部
41 第2側板ヒンジ(ヒンジ部)
43 第2係合凸部
44A 第2係止凸片
44B 第2係止溝
45 第2テーパ面
53 切欠き凹部
60 ヒンジ棒
X1 左右方向
X2 前後方向
Y 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16