特開 2017-52599 移載装置、および、移載装置の制御方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】特開2017-52599(P2017-52599A)

(43)【公開日】2017年3月16日

(54)【発明の名称】移載装置、および、移載装置の制御方法

(51)【国際特許分類】

   B65G 1/04 20060101AFI20170224BHJP

【ＦＩ】

   B65G1/04 511

【審査請求】有

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

【全頁数】15

(21)【出願番号】特願2015-177002(P2015-177002)

(22)【出願日】2015年9月8日

(71)【出願人】

【識別番号】000006297

【氏名又は名称】村田機械株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100109210

【弁理士】

【氏名又は名称】新居 広守

(72)【発明者】

【氏名】虎澤 政佳

【テーマコード（参考）】

3F022

【Ｆターム（参考）】

3F022FF01

3F022JJ07

3F022JJ11

3F022KK14

3F022MM67

(57)【要約】

【課題】荷物を滑らせて移載する移載装置において荷物に対する移載部材の位置合わせ精度を緩和する。
【解決手段】荷物２００の被係合部２０１と第一面部２９１との間に挿入される移載部材１２２と、移載部材１２２を回動揺動させる回動駆動装置１０３と、移載部材１２２を移載方向に往復動させる移載駆動装置１０４と、移載駆動装置１０４を制御して、荷物２００に対して第一面部２９１から離れた位置に移載部材１２２を配置し、回動駆動装置１０３を制御して、被係合部２０１と係合しない位置にまで移載部材１２２を突出させ、移載駆動装置１０４を制御して、移載部材１２２を第一面部２９１に当接させる制御装置とを備える移載装置。
【選択図】図８

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第一保持部との間で滑らせて移載する荷物を保持する第二保持部を有する移載装置であって、
前記荷物の移載方向と交差する面にある第一面部から移載方向外側に向かって所定距離離れた状態で前記荷物に設けられる被係合部と前記第一面部との間に、移載方向に沿った回動軸を中心に回動することにより挿入される移載部材と、
前記移載部材を回動揺動させる回動駆動装置と、
前記移載部材を移載方向に往復動させる移載駆動装置と、
前記第二保持部に保持される荷物を前記第一保持部に移載するに際し、前記移載駆動装置を制御して、前記荷物に対して前記第一面部から前記第一保持部と反対側に離れた位置に前記移載部材を配置し、前記回動駆動装置を制御して、前記被係合部と係合しない位置にまで前記移載部材を突出させ、前記移載駆動装置を制御して、前記移載部材を前記第一面部に当接させる制御装置と
を備える移載装置。

【請求項2】

さらに、
前記回動軸に沿い荷物側に向かって前記移載部材を付勢する付勢部材を
備える請求項１に記載の移載装置。

【請求項3】

前記移載部材は、
前記被係合部と前記第一面部との間に挿入される係合部材と、
前記係合部材の前記荷物側に配置され、前記回動軸を中心に前記移載部材の動作に連動して回動し、荷物の下方位置から前記係合部材が前記被係合部と前記第一面部との間に挿入される位置までの間で止まる当接部材とを備える
請求項１または２に記載の移載装置。

【請求項4】

第一保持部との間で滑らせて移載する荷物を保持する第二保持部と、前記荷物の移載方向と交差する面にある第一面部から移載方向外側に向かって所定距離離れた状態で前記荷物に設けられる被係合部と前記第一面部との間に、移載方向に沿った回動軸を中心に回動することにより挿入される移載部材と、前記移載部材を回動揺動させる回動駆動装置と、前記移載部材を移載方向に往復動させる移載駆動装置とを備える移載装置の制御方法であって、
前記第二保持部に保持される荷物を前記第一保持部に移載するに際し、
前記移載駆動装置を制御して、前記荷物に対して前記第一面部から前記第一保持部と反対側に離れた位置に前記移載部材を配置し、
前記回動駆動装置を制御して、前記被係合部と係合しない位置にまで前記移載部材を突出させ、
前記移載駆動装置を制御して、前記移載部材を前記第一面部に当接させる
移載装置の制御方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本願発明は、第一保持部と前記第一保持部の近傍に配置される第二保持部との間で荷物を滑らせて移載する移載装置に関する。

【背景技術】

【0002】

荷物が上下方向、および、左右方向に並べて保管可能な保管棚と、前記保管棚との間で移載する荷物を保持し搬送するスタッカクレーンなどの搬送装置と、前記搬送装置に設けられる移載装置とを備えた自動倉庫が物流業界などで用いられている。

【0003】

このような自動倉庫では例えば、スタッカクレーンの両側に保管棚が配置される場合があり、一方の保管棚に保管されている荷物の端部と係合させて移載装置まで荷物を移載し、荷物と係合する位置を変えて他方の保管棚に移載する移載装置を備えた自動倉庫が提案されている（特許文献１参照）。

【0004】

当該自動倉庫では、一台のスタッカクレーンで両側に配置される保管棚にアクセスすることができるため、自動倉庫の収納効率を向上させることが可能となる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開２００６−５２０６４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

ところが、従来の技術では、移載装置が荷物と係合するためには、正確な位置合わせが必要になる。しかし、荷物を搬送するために荷物を保持した状態の移載装置を移動させる際などに、荷物が僅かにずれる場合があり、正確な位置合わせのために荷物のずれを移載の度にセンサで検出するなどを行っているため、搬送効率の低下に繋がっている。

【0007】

本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、荷物と係合する移載部材と荷物との位置合わせが簡単にできる移載装置の提供を目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上記目的を達成するために、本願発明にかかる移載装置は、第一保持部との間で滑らせて移載する荷物を保持する第二保持部を有する移載装置であって、前記荷物の移載方向と交差する面にある第一面部から移載方向外側に向かって所定距離離れた状態で前記荷物に設けられる被係合部と前記第一面部との間に、移載方向に沿った回動軸を中心に回動することにより挿入される移載部材と、前記移載部材を回動揺動させる回動駆動装置と、前記移載部材を移載方向に往復動させる移載駆動装置と、前記第二保持部に保持される荷物を前記第一保持部に移載するに際し、前記移載駆動装置を制御して、前記荷物に対して前記第一面部から前記第一保持部と反対側に離れた位置に前記移載部材を配置し、前記回動駆動装置を制御して、前記被係合部と係合しない位置にまで前記移載部材を突出させ、前記移載駆動装置を制御して、前記移載部材を前記第一面部に当接させる制御装置とを備えることを特徴としている。

【0009】

これによれば、荷物に予期しないずれが発生しているような場合であっても、荷物と干渉しない位置に移載部材を配置し、被係合部と干渉せず荷物の第一面部と干渉できる位置に移載部材を回転させた後に移載部材と第一面部とを当接させることで、移載部材と被係合部との位置関係を正確に合わせることが可能となる。従って、当該状態で移載部材をさらに回転させることにより移載部材を被係合部と係合可能な状態に容易にすることが可能となる。以上により、第二保持部から第一保持部へスムーズに荷物を移載することが可能となる。

【0010】

さらに、前記回動軸に沿い荷物側に向かって前記移載部材を付勢する付勢部材を備えてもかまわない。

【0011】

これによれば、当接部材が荷物に当接することで付勢部材が予期せぬ荷物のずれを吸収し、荷物に強い衝撃を与えることなく移載部材を精度良く第一面部と係合部との隙間に挿入することが可能となる。

【0012】

また、前記移載部材は、前記被係合部と前記第一面部との間に挿入される係合部材と、前記係合部材の前記荷物側に配置され、前記回動軸を中心に前記移載部材の動作に連動して回動し、荷物の下方位置から前記係合部材が前記被係合部と前記第一面部との間に挿入される位置までの間で止まる当接部材とを備えてもかまわない。

【0013】

これによれば、回動が停止した当接部材を第一面部に当接させることにより、被係合部と係合部材との位置決めを正確に行うことができ、第一面部と被係合部との隙間が狭い場合でも、当該隙間に簡単に係合部材を挿入することが可能となる。また、当接部材の位置を維持したまま係合部材を回転させ、係合部材が荷物に擦れることなく隙間に挿入されるため、発塵や荷物の損傷を抑制することが可能となる。

【0014】

また、上記目的を達成するために、本願発明にかかる移載装置の制御方法は、第一保持部との間で滑らせて移載する荷物を保持する第二保持部と、前記荷物の移載方向と交差する面にある第一面部から移載方向外側に向かって所定距離離れた状態で前記荷物に設けられる被係合部と前記第一面部との間に、移載方向に沿った回動軸を中心に回動することにより挿入される移載部材と、前記移載部材を回動揺動させる回動駆動装置と、前記移載部材を移載方向に往復動させる移載駆動装置とを備える移載装置の制御方法であって、前記第二保持部に保持される荷物を前記第一保持部に移載するに際し、前記移載駆動装置を制御して、前記荷物に対して前記第一面部から前記第一保持部と反対側に離れた位置に前記移載部材を配置し、前記回動駆動装置を制御して、前記被係合部と係合しない位置にまで前記移載部材を突出させ、前記移載駆動装置を制御して、前記移載部材を前記第一面部に当接させることを特徴とする。

【0015】

これによれば、荷物に予期しないずれが発生しているような場合であっても、荷物と干渉しない位置に移載部材を配置し、被係合部と干渉せず荷物の第一面部と干渉できる位置に移載部材を回転させた後に移載部材と第一面部とを当接させることで、移載部材と被係合部との位置関係を正確に合わせることが可能となる。従って、当該状態で移載部材をさらに回転させることにより移載部材を被係合部と係合可能な状態に容易にすることが可能となる。以上により、第二保持部から第一保持部へスムーズに荷物を移載することが可能となる。

【0016】

なお、前記移載装置の制御方法が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムを実施することも本願発明の実施に該当する。無論、そのプログラムが記録された記録媒体を実施することも本願発明の実施に該当する。

【発明の効果】

【0017】

本願発明によれば、簡単な構成で荷物に移載部材を迅速に係合させて移載することができる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】図１は、移載装置を荷物、および、第一保持部、第三保持部と共に示す斜視図である。

【図2】図２は、荷物を示す斜視図である。

【図3】図３は、第一保持部を示す斜視図である。

【図4】図４は、移載部材、回転駆動装置などを示す斜視図である。

【図5】図５は、移載部材と移載装置に適合した荷物の部分との関係を被係合部を省略して示す平面図である。

【図6】図６は、制御装置の機能を示すブロック図である。

【図7】図７は、移載装置の動作を段階的に示す図である。

【図8】図８は、移載部材の移載方向における移動を段階的に示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

次に、本願発明に係る移載装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本願発明に係る移載装置の一例を示したものに過ぎない。従って本願発明は、以下の実施の形態を参考に請求の範囲の文言によって範囲が画定されるものであり、以下の実施の形態のみに限定されるものではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、本発明の課題を達成するのに必ずしも必要ではないが、より好ましい形態を構成するものとして説明される。

【0020】

また、図面は、本願発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。

【0021】

図１は、移載装置を荷物、および、第一保持部、第三保持部と共に示す斜視図である。

【0022】

図２は、荷物を示す斜視図である。

【0023】

まず、移載装置１００の移載対象である荷物２００を説明する。

【0024】

荷物２００は、第一保持部３００や第三保持部３０３に保持され、移載装置１００との間で移載される対象であり、移載装置１００に適合した部分を備えている。この移載装置１００に適合した部分とは、被係合部２０１である。また本実施の形態の場合、荷物２００は、移載装置１００に適合した部分として、顎部２１１、壁部２２１、規制部２３１を備えている。さらに、荷物２００は、被係合部２０１、および、顎部２１１、壁部２２１、規制部２３１を面対称となるように複数箇所に備えている。

【0025】

被係合部２０１は、荷物２００の移載方向（図中Ｙ軸方向）と交差する面にある第一面部２９１から移載方向の外側（図中Ｙ軸方向負の向き）に向かって所定距離離れた状態で荷物２００に設けられる部分であり、移載装置１００に備わる後述の移載部材１２２と移載方向に係合し移載部材１２２から荷物２００を移載するための力が付与される部分である。本実施の形態の場合、被係合部２０１は、顎部２１１を介して荷物２００の第一面部２９１に一体に取り付けられている。

【0026】

顎部２１１は、荷物２００の第一面部２９１から外側に向かって突出状態で荷物２００に設けられる部分であり、係合部材１２１の押上部１４１（後述）と上下方向（図中Ｚ軸方向）に係合し係合部材１２１から荷物２００の第一面部２９１を押し上げるための力が付与される部分である。顎部２１１は、第一面部２９１に対し垂直に突出し荷物２００の幅方向（図中Ｘ軸方向）に延在する板状の部分となっている。また、顎部２１１の下端部は、水平面に沿って拡がる下端面を備えている。

【0027】

壁部２２１は、荷物２００の第一面部２９１から外側に向かって突出状態で荷物２００に設けられる部分であり、後述の係合部材１２１の押圧部１５１が荷物２００の幅方向（図中Ｘ軸方向）に押し当てられる部分である。壁部２２１は、第一面部２９１に対し垂直に突出し上下方向（図中Ｚ軸方向）に延在する板状の部分となっている。また、壁部２２１の側端部は、第一面部２９１に垂直かつ鉛直軸を含む平面に沿って拡がる側端面を備えている。

【0028】

本実施の形態の荷物２００は、第一面部２９１に面対称に配置された二つの壁部２２１を備えており、二つの壁部２２１の側端面は対向している。この二つの壁部２２１は、それぞれ係合部材１２１の押圧部１５１が押し付けられる部分であり、それぞれの係合部材１２１からの力をそれぞれの壁部２２１が受けることにより荷物２００をセンタリングすることができるものとなっている。

【0029】

規制部２３１は、第一面部２９１から外側に向かって突出状態で荷物２００に設けられる部分であり、後述の係合部材１２１の被規制部１６１と上下方向（図中Ｚ軸方向）に係合する部分である。規制部２３１は、第一面部２９１に対し垂直に突出し荷物２００の幅方向（図中Ｘ軸方向）に延在する板状の部分となっている。また、顎部２１１よりも幅方向において短くなっている。また、規制部２３１の上端部は、水平面に沿って拡がる上端面を備えている。なお、規制部２３１は被規制部１６１から下方向に向かう力が付与されてもかまわない。

【0030】

図３は、第一保持部を示す斜視図である。

【0031】

同図に示すように、第一保持部３００は、荷物２００を保持する部分である。本実施の形態の場合、第一保持部３００は、荷物２００を載置状態で保持する板状の部分であり、荷物２００の幅方向の両端部を下方から保持するものとなっている。また、第一保持部３００は、移載装置１００側の端縁部に地震などの震動によって荷物２００が第一保持部３００から落下することを抑制するストッパ３０１が上方突出状態で設けられている。

【0032】

また、第一保持部３００は、保管棚（図示せず）の一部であり、保管棚は、第一保持部３００を上下方向に複数段備え、さらに、荷物２００の幅方向にも複数列にわたって並べて保持している。

【0033】

なお、第三保持部３０３は、移載装置１００を挟んで第一保持部３００と面対称に配置されており、ストッパ３０１も備えている。

【0034】

次に、移載装置１００について説明する。

【0035】

図１に示すように、移載装置１００は、第一保持部３００、または、第三保持部３０３に対し荷物２００を滑らせながら移載する装置であり、例えば、スタッカクレーンや走行車など荷物２００を搬送することができる搬送装置（図示せず）などに取り付けられる装置である。また、移載装置１００は、搬送装置によって第一保持部３００、または、第三保持部３０３に対応する位置に移動することが可能となっている。移載装置１００は、第二保持部１０１と移載部材１２２と、停止手段１０６とを備えている。本実施の形態の場合、移載装置１００はさらに、係合部材１２１と当接部材１０２とを複数備え、さらに、回動駆動装置１０３と、移載駆動装置１０４と、付勢部材１０７と、弾性部材１０８と、制御装置１０９（後述）を備えている。

【0036】

第二保持部１０１は、荷物２００を保持する部分である。本実施の形態の場合、第二保持部１０１は、基体１０５の上方であって基体１０５の幅方向（図中Ｘ軸方向）の両端に取り付けられている。また、第二保持部１０１は、第一保持部３００に対応し、荷物２００を載置状態で保持する板状の部分であり、荷物２００の幅方向の両端部を下方から保持するものとなっている。

【0037】

図４は、移載部材などを示す斜視図である。

【0038】

図５は、移載部材と移載装置に適合した荷物の部分との関係を被係合部を省略して示す平面図である。

【0039】

これらの図に示すように本実施の形態の移載部材１２２は、係合部材１２１と当接部材１０２とを備えている。

【0040】

係合部材１２１は、移載方向（図中Ｙ軸方向）に沿った回動軸１３１を中心に回動することにより荷物２００の第一面部２９１と被係合部２０１との間に挿入され、被係合部２０１に対し荷物２００を移載するための力を付与する部材である。本実施の形態の場合、係合部材１２１はさらに、顎部２１１を押し上げる押上部１４１と、押圧部１５１と、被規制部１６１と、傾斜部１７１とを備えている。

【0041】

押上部１４１は、荷物２００に設けられた顎部２１１に対し上方向の力を付与する部分であり、荷物２００が第一保持部３００に保持され、移載装置１００が第一保持部３００との間で荷物２００を移載することができる位置に配置された状態において、荷物２００の顎部２１１の下端部と回動軸１３１との距離Ｈ（図７参照）よりも長い回転半径Ｒとなる位置に設けられる部分である。

【0042】

本実施の形態の場合、押上部１４１は、顎部２１１と面接触するように平面となっている。また、押上部１４１は、板状の係合部材１２１の周縁部の一部である。

【0043】

押圧部１５１は、壁部２２１の側端部に対し係合部材１２１の回動により荷物２００の幅方向に押し付けられる部分である。押圧部１５１は、押上部１４１が顎部２１１と接触し第一面部２９１を持ち上げた状態において、壁部２２１の側端面と接触し荷物２００の幅方向に力を付与する部分となっている。従って、荷物２００が幅方向において所定の位置に配置されていなかった場合、押圧部１５１からの力により荷物２００は幅方向に移動させることが可能となっている。

【0044】

被規制部１６１は、規制部２３１の上端部に係合し第一面部２９１の上方向への移動を規制する部分である。被規制部１６１は、押上部１４１が顎部２１１と接触し第一面部２９１を持ち上げた状態において、顎部２１１と規制部２３１との間に挿入される部分となっている。従って、係合部材１２１が第一面部２９１を持ち上げる以上に上昇しようとした場合、被規制部１６１と規制部２３１とが係合し、それ以上第一面部２９１が上昇することを被規制部１６１が抑制している。また、被規制部１６１が規制部２３１に当接した状態を維持することにより、係合部材１２１が荷物２００の第一面部２９１を固定状態で保持することが可能となる。

【0045】

傾斜部１７１は、押上部１４１から周方向に沿って徐々に回転半径が短くなる部分であり、荷物２００が第一保持部３００に保持され、移載装置１００が第一保持部３００との間で荷物２００を移載することができる位置に配置された状態において、荷物２００の顎部２１１の下端部と回動軸１３１との距離よりも短い回転半径となる部分を備えている。

【0046】

傾斜部１７１は、荷物２００の第一面部２９１を持ち上げるに際し、押上部１４１も先に顎部２１１に当接し、係合部材１２１の回動に従い徐々に第一面部２９１を持ち上げる部分である。具体的に傾斜部１７１は、回動軸１３１とは異なる位置に中心を備えた円弧形状となっている。

【0047】

当接部材１０２は、係合部材１２１の荷物２００側に配置され、回動軸１３１を中心に係合部材１２１の動作に連動して回動する部材である。また、当接部材１０２は、停止手段１０６により回動が止められた状態において、荷物２００の第一面部２９１と当接する部材であり、荷物２００を第二保持部１０１から第一保持部３００に移載する際に荷物２００を押し出す力を付与する部材である。本実施の形態の場合、当接部材１０２は、停止手段１０６により回動が止められた状態において、上端縁が水平となる水平部１２０を備えている。

【0048】

当接部材１０２は、係合部材１２１と同じ軸体に取り付けられているが当該軸体には固定されておらず、軸体に対して自由に回動できるように取り付けられている。本実施の形態の場合、当接部材１０２は、突出方向への回動については弾性部材１０８により係合部材１２１と連動している。

【0049】

弾性部材１０８は、係合部材１２１と当接部材１０２とを連結する伸縮可能な部材である。本実施の形態の場合、弾性部材１０８はバネであり、係合部材１２１が突出方向へ回動すると当該回動力を当接部材１０２に伝達して当接部材１０２を回動させる。また、当接部材１０２が停止手段１０６により停止すると、係合部材１２１によって弾性部材１０８が係合部材１２１が停止するまで伸びる。弾性部材１０８により、当接部材１０２は所定の位置まで係合部材１２１に連動して回動し、当接部材１０２が所定の位置で停止した後は係合部材１２１のみが回動することが可能となる。また、係合部材１２１が没入方向に回動した場合、弾性部材１０８が当接部材１０２を押すことにより当接部材１０２を没入方向に連動して回動させてもかまわない。

【0050】

なお、係合部材１２１と当接部材１０２の連動は、弾性部材１０８を用いる場合ばかりでなく、クラッチのように摩擦を利用するものなど他の方法により実現されるものでもかまわない。

【0051】

停止手段１０６は、荷物２００の下方位置である没入状態から係合部材１２１が被係合部２０１と第一面部２９１との間に挿入される位置である突出状態までの間で当接部材１０２の回動を止める手段である。本実施の形態の場合、停止手段１０６は、回動駆動装置１０３から突出状態で取り付けられる棒状の部材であり、当接部材１０２に設けられた停止部１２９に当接することで、当接部材１０２の突出方向の回動を止めている。また、停止手段１０６は、当接部材１０２の上端縁に配置される水平部１２０が水平に沿う位置で当接部材１０２の回動を止めるものとなっている。

【0052】

なお、停止手段１０６は、機械的に当接部材１０２の回動を止めるものばかりでなく、電磁的に止めるなどの他の方法を採用してもかまわない。

【0053】

また、停止手段１０６は、荷物２００側に設けられてもかまわない。

【0054】

付勢部材１０７は、回動軸１３１に沿い移載装置１００側から荷物２００側に向かって係合部材１２１と当接部材１０２とを共に付勢する部材である。本実施の形態の場合、付勢部材１０７は、弦巻バネであり、係合部材１２１を回動させる軸体が挿入された状態で配置され、回動駆動装置１０３に対して係合部材１２１、および、当接部材１０２を外方に向けて付勢している。

【0055】

なお、本実施の形態の場合、移載装置１００は、係合部材１２１と当接部材１０２と移載方向と直交する幅方向に並んで二つ備え、また、移載方向に並んで二つ備えている。これにより、移載装置１００の全体の厚み（図中Ｚ軸方向の長さ）を薄くすることができる。

【0056】

回動駆動装置１０３は、回動軸１３１を中心に係合部材１２１を回動揺動させることができる装置である。本実施の形態の場合、回動駆動装置１０３は、複数の係合部材１２１を同時に回動軸１３１を中心に回動揺動させることができるものとなっている。さらに、回動駆動装置１０３は、平行に配置される二つの回動軸１３１の中央に拡がる面において、係合部材１２１の動きが対称となるように係合部材１２１を駆動している。また、回動駆動装置１０３は当接部材１０２を直接駆動するのではなく、係合部材１２１を介して当接部材１０２を駆動している。具体的に回動駆動装置１０３は、回動軸１３１、および、回動軸１３１に交差方向に回動軸が配置されるモータとモータの駆動力を伝達するシャフトや継手とを備え、モータを移載方向と交差する方向に並ぶ二つの係合部材１２１の間に配置することで、前記対称の動作を実現している。

【0057】

移載駆動装置１０４は、係合部材１２１、および、当接部材１０２を移載方向に往復動させる装置であり、被係合部２０１と係合する係合部材１２１、または、第一面部２９１と係合する当接部材１０２を介して荷物２００を移載方向に往復動させることができる装置である。本実施の形態の場合、移載駆動装置１０４は、係合部材１２１と当接部材１０２を移載方向に往復動させ、またこれに伴って回動駆動装置１０３も往復動させている。具体的に例えば移載駆動装置１０４は、係合部材１２１、当接部材１０２、および、回動駆動装置１０３を移載方向に案内するレールやこれらを往復動させる直動ユニットを備えている。

【0058】

図６は、制御装置の機能を示すブロック図である。

【0059】

同図に示すように、制御装置１０９は、回動駆動装置１０３と移載駆動装置１０４とを制御する装置であって、回動駆動制御部１９１と、移載駆動制御部１９２と、連動管理部１９３とを備えている。制御装置１０９は、一般的には、ＣＰＵ（Ｃｅｎｔｒａｌ Ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ Ｕｎｉｔ）と記憶部とを備え、ＣＰＵが記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより各機能部を実現するものである。

【0060】

回動駆動制御部１９１は、回動軸１３１を中心に移載部材１２２を回動させ、荷物２００と干渉しない位置である格納位置、第一面部２９１とは干渉するが被係合部２０１とは干渉しない位置である当接位置、被係合部２０１と係合する係合位置の少なくとも三つの位置に移載部材１２２が移動するように回動駆動装置１０３を制御する処理部である。本実施の形態の場合、一つの回動駆動装置１０３に複数（四つ）の移載部材１２２が接続されており、回動駆動制御部１９１は、回動駆動装置１０３に接続される全移載部材１２２の移動を同時に制御するものとなっている。

【0061】

なお、回動駆動制御部１９１は、回動駆動装置１０３に設けられたエンコーダなどの回動位置検出手段から送信される回動位置情報に基づいて回動駆動装置１０３を制御してもかまわない。

【0062】

移載駆動制御部１９２は、移載部材１２２が移載方向に沿って直線的に移動し、所定の位置で停止するように回動駆動装置１０３を制御する処理部である。本実施の形態の場合例えば、第一保持部３００に保持されている荷物２００の被係合部２０１に移載部材１２２を係合させる位置、第一保持部３００から移載される荷物２００を第二保持部１０１に保持させる位置、第二保持部１０１に保持される荷物２００を第三保持部３０３に移載するために移載部材１２２を配置する準備位置、第二保持部１０１に保持される荷物２００を第三保持部３０３に移載するために移載部材１２２を被係合部２０１に係合させる位置、第二保持部１０１から移載される荷物２００を第三保持部３０３に保持させる位置のそれぞれで移載部材１２２が停止できるように移載駆動制御部１９２は、移載駆動装置１０４を制御する。

【0063】

また本実施の形態においては、移載方向に離れていた状態で複数（二つ）の移載部材１２２が回動駆動装置１０３に接続され、これらが回動駆動装置１０３と共に一体に移載駆動装置１０４によって移動するため、移載駆動制御部１９２は、これらの移載部材１２２の位置関係を考慮して停止位置の制御をするものとなっている。

【0064】

なお、移載駆動制御部１９２は、移載駆動装置１０４に設けられたエンコーダなどの移載位置検出手段から送信される移載位置情報に基づいて移載駆動装置１０４を制御してもかまわない。

【0065】

連動管理部１９３は、移載部材１２２の回動と移載方向の移動との関係を回動駆動制御部１９１と移載駆動制御部１９２とを調整することにより管理する処理部である。連動管理部１９３は、例えば、移載部材１２２が格納位置に在る場合は、移載方向における移載装置の一端部から他端部にまで移載部材１２２を移動させるなどの管理を行う。

【0066】

次に、第三保持部３０３にある荷物２００を第二保持部１０１に移載し、さらに第一保持部３００に移載する際の移載装置１００の動作について説明する。

【0067】

図７は、移載部材の回動動作を段階的に示す図である。

【0068】

図８は、移載部材の移載方向における移動を段階的に示す図である。

【0069】

まず、図８の最上段に示すように、第三保持部３０３に保持される荷物２００に対し、移載装置１００の連動管理部１９３は、移載駆動制御部１９２を介して移載駆動装置１０４を制御して、第二面部２９２と被係合部２０１との隙間に挿入できる位置に移載部材１２２を配置し、回動駆動制御部１９１を介して回動駆動装置１０３を制御し、移載部材１２２を回動させて移載部材を前記隙間に挿入する。この状態で図７の下段に示す状態と同様の状態となっている。

【0070】

なお、図８において移載部材１２２の記載が小さいため、移載部材１２２および回動駆動装置１０３の全体に１２２の符合を付して説明している。

【0071】

次に、図８の上から二段目に示すように、制御装置１０９は、移載部材１２２を移動させて第二保持部１０１に荷物２００を移載する。

【0072】

次に、制御装置１０９は、図７の上段に示すように、移載部材１２２を格納位置に回動させる。この状態で、移載部材１２２と荷物２００とは干渉しないため、移載部材１２２が荷物２００の下方を通過することが可能となる。

【0073】

次に、図８の３段目に示すように、制御装置１０９は、格納状態の移載部材１２２を荷物２００下方空間を通過させ、第二保持部１０１に保持される荷物２００に対して第一面部２９１から外側に離れた位置である準備位置に移載部材１２２を配置する。

【0074】

例えば、この段階で、移載装置１００が搬送装置（図示せず）などによって、移動する場合があり、当該移動時の振動などにより第二保持部１０１における荷物２００の位置がずれる場合がある。制御装置１０９には当該ずれを考慮した準備位置が設定されている。

【0075】

次に、制御装置１０９は、回動駆動制御部１９１を介して回動駆動装置１０３を制御し、図７の中段に示すような第一面部２９１とは当接可能で被係合部２０１と係合しない位置である当接位置にまで移載部材１２２を突出させる。本実施の形態の場合、移載部材１２２は、係合部材１２１と当接部材１０２を備えており、停止手段１０６は、当接部材１０２の水平部１２０が水平となる突出状態で当接部材１０２の回動を停止する。この状態で、当接部材１０２は、荷物２００の第一面部２９１と当接することができる状態となっている。

【0076】

その後、図８の４段目に示すように、移載駆動装置１０４を制御して、移載部材１２２を第一面部２９１に当接させる。本実施の形態の場合、移載部材１２２の当接部材１０２が第一面部２９１と当接する。

【0077】

この際、制御装置１０９は、第一保持部３００に保持される荷物２００のずれを考慮し、想定される最大のずれが荷物２００に発生しても当接部材１０２が第一面部２９１に当接するような当接部材１０２の移動量が設定されている。これにより、当接部材１０２が確実に第一面部２９１に当接する。また、荷物２００があまりずれていない場合は、当接部材１０２が第一面部２９１と早期に当接するが、付勢部材１０７が衝撃を吸収し、当接以降の移載駆動装置１０４の駆動を付勢部材１０７が吸収する。

【0078】

以上により、係合部材１２１と荷物２００の被係合部２０１との位置決めを確実に行うことができる。

【0079】

次に、移載部材１２２が第一面部２９１に当接した状態で制御装置１０９は、回動駆動装置１０３を制御して、移載部材１２２を第一面部２９１と被係合部２０１との間に挿入させる。本実施の形態の場合、制御装置１０９は、回動駆動装置１０３が係合部材１２１を突出方向に回動するように制御する。この状態において、係合部材１２１と第一面部２９１との間には当接部材１０２が存在するため、係合部材１２１が第一面部２９１に擦れることはなく、発塵や第一面部２９１の損傷を防止することができる。

【0080】

次に、係合部材１２１を突出方向に回動させていくと、係合部材１２１の傾斜部１７１が顎部２１１と当接し、傾斜部１７１が顎部２１１を徐々に押し上げる。

【0081】

以上により、荷物２００の第一面部２９１側は、徐々に持ち上げられる。また、二つの係合部材１２１が逆方向に回転しながら顎部２１１と擦れるため、第一面部２９１側を幅方向にあまりずらすことなく持ち上げることが可能となる。

【0082】

次に、回動駆動装置１０３が係合部材１２１、および、係合部材１２１をさらに回動させることにより、同図下段に示すように、押上部１４１と顎部２１１が当接する状態となる。

【0083】

この状態で、荷物２００の第一面部２９１側は、ストッパ３０１（図８には図示せず）よりも高い位置に持ち上げられる。

【0084】

また、二つの押圧部１５１がそれぞれの壁部２２１を荷物２００の幅方向外向きにそれぞれ押圧する。これにより、荷物２００がセンタリングされ、幅方向のずれが解消される。

【0085】

また、被規制部１６１が規制部２３１と当接、または、ほぼ当接状態となるため、荷物２００の第一面部２９１側がこれ以上上昇することがなく、荷物２００を移載する場合の上下方向のがたつきを抑制することができる。

【0086】

また、係合部材１２１と係合部材１２１とにより荷物２００の第一面部２９１側を固定状態で保持するため、係合部材１２１および係合部材１２１から荷物２００が脱落することを防止できる。

【0087】

なお、上記係合部材１２１と顎部２１１、壁部２２１、規制部２３１との関係は、第三保持部３０３に保持される荷物２００に対しても同様の関係となっている。

【0088】

以上の状態で、制御装置１０９は、移載駆動装置１０４を制御して、移載部材１２２を第一保持部３００の方向に移動させることにより、図８の最下段に示すように、荷物２００を第二保持部１０１から第一保持部３００に移載する。

【0089】

以上のように、第二保持部１０１に保持される荷物２００に対し、移載部材１２２を準備位置に配置した後に第一面部２９１側に移載部材１２２を当接させる制御を行うことで、移載駆動装置１０４の位置制御を細かく制御しなくても確実に移載部材１２２を被係合部２０１に係合させることが可能となる。従って、荷物２００のぶれの発生を抑制しながら荷物２００を第一保持部３００に移載することが可能となる。また、第二保持部１０１に保持される荷物２００を第三保持部３０３に移載する場合も、同様の制御を行うことにより、同様の作用効果を得ることが可能となる。

【0090】

また、荷物２００を移載する際に、荷物２００の第一面部２９１側がストッパ３０１よりも高い位置に維持されるため、ストッパ３０１を通過した直後に荷物２００がストッパ３０１の高さ分落下する様な状況が発生しない。また、荷物２００全体が傾くため第一保持部３００と荷物２００との接触面積が少なくなり、荷物２００を移載する際の摩擦抵抗を低減させることが可能となる。

【0091】

なお、第二保持部１０１から第一保持部３００、または、第三保持部３０３に荷物２００を移載する際は、第一保持部３００、または、第三保持部３０３よりも第二保持部１０１をストッパ３０１の高さ程度上に配置することで、ストッパ３０１に邪魔されることなく荷物２００を移載することができる。

【0092】

次に、荷物２００の移動終了後、係合部材１２１、および、当接部材を図７の上段に示す没入位置にまで回動させることで、荷物２００の第一面部２９１側をゆっくりと第二保持部１０１に降ろすことができ、不本意な衝撃を荷物２００に与えることを回避できる。

【0093】

なお、本願発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本願発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本願発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本願発明に含まれる。

【0094】

例えば、移載部材１２２は、係合部材１２１と当接部材１０２とを備えるものとして説明したが、当接部材１０２を備えなくてもよい。

【0095】

また、第一面部２９１に同時に当接する二つの移載部材１２２を例示したが、当該移載部材１２２は一つでもかまわない。

【0096】

また、移載部材１２２は、移載方向において、一つの係合部材１２１の両側方にそれぞれ当接部材１０２を備えてもかまわない。

【0097】

また、荷物２００は、載置状態で保持するばかりでなく、吊り下げた状態で保持するなど任意の保持状態の荷物２００に適用可能である。

【0098】

また、第一面部２９１に係合部材１２１、顎部２１１などを備える荷物２００を例示したが、荷物２００は、移載方向と交差する面の第一面部２９１と異なる面である第二面部にも係合部材１２１、顎部２１１などを備えてもかまわない。

【産業上の利用可能性】

【0099】

本願発明は、自動倉庫や物流拠点のステーションなどにおいて荷物を移載する移載装置に適用可能である。

【符号の説明】

【0100】

１００ 移載装置
１０１ 第二保持部
１０２ 当接部材
１０３ 回動駆動装置
１０４ 移載駆動装置
１０５ 基体
１０６ 停止手段
１０７ 付勢部材
１０８ 弾性部材
１０９ 制御装置
１２０ 水平部
１２１ 係合部材
１２２ 移載部材
１２９ 停止部
１３１ 回動軸
１４１ 押上部
１５１ 押圧部
１６１ 被規制部
１７１ 傾斜部
１９１ 回動駆動制御部
１９２ 移載駆動制御部
１９３ 連動管理部
２００ 荷物
２０１ 被係合部
２１１ 顎部
２２１ 壁部
２３１ 規制部
２９１ 第一面部
２９２ 第二面部
３００ 第一保持部
３０１ ストッパ
３０３ 第三保持部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】