特開2017-52743(P2017-52743A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52743(P2017-52743A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】モンテルカスト医薬品製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20170224BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170224BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170224BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170224BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170224BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170224BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170224BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170224BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   A61K31/47
   A61P11/06
   A61P29/00
   A61P37/08
   A61K9/20
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-188861(P2015-188861)
(22)【出願日】2015年9月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】穀田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】目黒 智崇
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC10
4C076CC15
4C076DD29
4C076DD38B
4C076DD41
4C076EE31
4C076EE32E
4C076EE38B
4C076EE41T
4C076FF06
4C076FF63
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】 安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠を提供することにある。
【解決手段】 D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
【請求項2】
D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
【請求項3】
D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンおよびモンテルカストナトリウムを湿式造粒することを特徴とする請求項1乃至2記載のモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
【請求項4】
さらに、三二酸化鉄および/または酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1乃至3に記載のモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたモンテルカストナトリウム医薬品製剤に関する。具体的には、安定性および崩壊性が優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
モンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠に関する従来技術が知られている。特表2006−524650(文献1)は、ケイ化微結晶セルロースおよび低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)等を用いた口腔内速崩壊錠に関する特許出願である。本特許出願には、いくつかの医薬品を用いた口腔内速崩壊錠の具体例が記載されており、モンテルカストナトリウムを用いた実施例も記載されている。
一方、安定化を改善したモンテルカストナトリウム医薬品製剤が知られている。特開2013−49709(文献2)は、微結晶性セルロースがモンテルカストナトリウムの安定性に影響があるとして、微結晶性セルロースを除く医薬組成物としている技術である。
【0003】
しかしながら、文献1に記載されているモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠は、崩壊時間が30秒以内と良好な口腔内速崩壊錠であるものの、安定性等についての記載は全くない。さらに、文献1に記載されているモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠は、本発明に用いられているヒドロキシプロピルセルロース並びにトウモロコシデンプンを用いておらず、本発明と構成を異にするものである。
【0004】
また、文献2に記載されている剤形としては、錠剤、カプセル剤、膜被覆錠剤、チュアブル剤が記載されているにすぎず、本発明の対象である口腔内速崩壊錠についての記載は全くない。したがって、口腔内での崩壊時間等は一切記載されていない。さらに、文献2に記載されている製剤には、本発明に用いられているトウモロコシデンプンを用いておらず、本発明と構成を異にするものである。
したがって、安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠に関する従来技術は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献1】
特表2006−524650号
【文献2】
特開2013−49709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決したモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠、すなわち、安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために種々検討を加えた結果、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠やD−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠が、上記の課題を解決した良好な医薬品製剤を提供することができることを見出した。すなわち、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠やD−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠とすることにより、安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠とすることができることを見出した。
また、さらに本発明は、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースなどを含有し、湿式造粒することにより、上記の課題を解決したより良好なモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠を提供することができることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。すなわち、本発明は下記に掲げるモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠である。
(1)D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
(2)D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
(3)D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンおよびモンテルカストナトリウムを湿式造粒することを特徴とする(1)または(2)記載のモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
(4)さらに、三二酸化鉄および/または酸化チタンを含有することを特徴とする(1)乃至(3)に記載のモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における有効成分であるモンテルカストナトリウムは、ロイコトリエン受容体拮抗薬であり、気管支喘息およびアレルギー性鼻炎の治療薬として知られている。
【0009】
モンテルカストナトリウムの配合量は、特に限定されるものではないが、一錠剤中、通常0.001〜99重量部、好ましくは0.05〜99重量部、より好ましくは0.05〜50重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0010】
また、本発明に用いられるD−マンニトールは、医薬品業界で主として用いられているものを使用することができる。本発明において、有効成分であるモンテルカストナトリウムと製剤中のD−マンニトールの配合比は、モンテルカスト1重量部に対して0.001〜0.8重量部が好ましい。さらに好ましくは、0.005〜0.5重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0011】
また、本発明に用いられるヒドロキシプロピルセルロースは、医薬品業界で主として用いられているものを使用することができる。本発明において、ヒドロキシプロピルセルロースは極めて重要な役割を果たしている。すなわち、ヒドロキシプロピルセルロースを含有することにより、溶出性の優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠とすることができる。本発明において、有効成分であるモンテルカストナトリウムと製剤中のヒドロキシプロピルセルロースの配合比は、モンテルカスト1重量部に対して0.001〜0.8重量部が好ましい。さらに好ましくは、0.005〜0.5重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0012】
また、本発明に用いられるトウモロコシデンプンは、医薬品業界で主として用いられているものを使用することができる。本発明において、トウモロコシデンプンも極めて重要な役割を果たしている。本発明において、有効成分であるモンテルカストナトリウムと製剤中のトウモロコシデンプンの配合比は、モンテルカスト1重量部に対して0.001〜0.8重量部が好ましい。さらに好ましくは、0.005〜0.5重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【0013】
本発明は、モンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠である。口腔内速崩壊錠は、医薬品の製剤として一般的に知られている剤形である。上記文献2に記載されているモンテルカストナトリウム製剤はチュアブル剤であるが、チュアブル剤は別名咀嚼錠と言われるように、錠剤をかみ砕いたり、唾液で溶かしたりして服用する錠剤とされている剤形である。口腔内崩壊錠と同様、水なしで服用することができるが、口腔内崩壊錠が唾液で自然に崩壊するのに対し、チュアブル錠は噛み砕かなければならず、医薬品剤形としては、まったく異なる剤形として認識されているものである。
【0014】
本発明では以上の成分のほかに、製剤分野で一般的に使用され得る賦形剤、結合剤、崩壊剤等を用いることができる。
【0015】
賦形剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ショ糖、ブドウ糖等の各種の糖類、バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン等の各種デンプン類、結晶セルロース等の各種セルロース類、無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等の各種無機塩類等が挙げられる。
【0016】
結合剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。
【0017】
崩壊剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明の医薬品製剤には、発明の効果に支障のない限り、一般的に用いられている添加剤を配合しても良い。一般的に用いられている添加剤としては、例えば結合剤、嬌味剤、滑沢剤、着色剤、香料などがある。
【0019】
本発明のモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠は、一般的な口腔内速崩壊錠の製造方法でも製造できるが、本発明の効果である安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠とするためには、湿式造粒で製造することが望ましい。
【0020】
本発明の口腔内溶解性錠剤の製造は、一般に製剤の製造で用いられている装置によって行われる。圧縮成型は、一般に錠剤の成型に使用される装置が用いられ、例えばロータリー式打錠機などを用いることができる。圧縮成型に用いる粉体は、配合成分を混合した後、直接打錠法により打錠しても良いが、必要があれば一般的な造粒法、例えば攪拌造粒法、流動層造粒法、乾式造粒法などにより造粒しても良い。
【0021】
本発明の口腔内溶解性錠剤は口腔内で優れた崩壊性、溶解性を示し、日本薬局方による崩壊試験において、崩壊時間が90秒以内である。また、製剤工程、更には流通過程において損傷することのない適度な強度、好ましくは30N以上150N以下の硬度を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、具体的には、D−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有することによって、安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠が得られる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例、比較例および試験例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1
下記表1の処方に従い、以下のようにして口腔内速崩壊錠を製造した。モンテルカストナトリウム、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、黄色三二酸化鉄、ヒドロキシプロピルセルロースを撹拌混合造粒装置に投入し,混合した。さらに、混合物を混合しながら、精製水を添加し、練合した。この湿顆粒を、給気温度を60℃にて乾燥を行った。この乾燥顆粒を、30メッシュ篩を用いて篩過後、D−マンニトール、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、クロスカルメロースナトリウム、黄色三二酸化鉄、アスパルテーム及び香料を加え混合し、その後ステアリン酸マグネシウムを加え混合した。得られた打錠用顆粒をロータリー打錠機により打錠成型し、錠剤とした。
【0025】
【表1】
【0026】
比較例1
D−マンニトールの換わりに乳糖水和物を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の口腔内速崩壊錠を製造した。
【0027】
試験例1
安定性試験
実施例1および比較例1で製造した口腔内崩壊錠を25℃85%RH、40℃75%RH及び60℃の無包装・遮光条件下で2週間及び1箇月保存し、純度試験(類縁物質)を行った。結果を下記表2に示す。
実施例と比較して,比較例1では純度が悪化した。40℃75%RHにおいて,違いが顕著であった。この結果より、本発明であるD−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有した実施例1の口腔内崩壊錠が安定性に優れた製剤であることが確認された。
【表2】
【0028】
試験例2
崩壊試験
実施例1および比較例1で製造した口腔内崩壊錠の口腔内での崩壊時間を試験した。10名で試験した。
【0029】
【表3】
この結果より、本発明であるD−マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンを含有した実施例1の口腔内崩壊錠が口腔内崩壊時間の良好な製剤であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の医薬品製剤は、良好なモンテルカスト医薬品製剤を提供することにある。特に、安定性および崩壊性がともに優れたモンテルカストナトリウム口腔内速崩壊錠を提供することができる。