特開2017-52759(P2017-52759A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

特開2017-52759オニウム化合物の製造方法、及び硬化性樹脂組成物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52759(P2017-52759A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】オニウム化合物の製造方法、及び硬化性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 209/00 20060101AFI20170224BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20170224BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20170224BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20170224BHJP
   C07C 211/64 20060101ALI20170224BHJP
   C07C 229/60 20060101ALI20170224BHJP
   C07F 9/54 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   C07C209/00
   C08G59/68
   C07C381/12
   C07F5/02 A
   C07C211/64
   C07C229/60
   C07F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2016-175614(P2016-175614)
(22)【出願日】2016年9月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-180038(P2015-180038)
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4H050
4J036
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB40
4H006BJ50
4H006BT12
4H006BT32
4H006BU50
4H048AA02
4H048AB40
4H048VA11
4H048VA75
4H048VB10
4H050AA02
4H050AB40
4H050WA26
4J036AA01
4J036GA02
4J036GA03
4J036GA04
(57)【要約】
【課題】 特定のオニウム化合物を簡便な方法かつ高収率で製造可能なオニウム化合物の製造方法などの提供。
【解決手段】 下記(A)、(B)、及び(C)のいずれかであるオニウム化合物の製造方法である。
(A)水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかの溶媒中で、一般式(1)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を得る。
(B)水中で、一般式(11)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、一般式(14)で表されるアンモニウム化合物を得る。
(C)水中で、一般式(21)で表される化合物と、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、一般式(24)で表されるホスホニウム化合物を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)、及び(C)のいずれかであることを特徴とするオニウム化合物の製造方法。
(A)水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかの溶媒中で、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を得る。
(B)水中で、下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(14)で表されるアンモニウム化合物を得る。
(C)水中で、下記一般式(21)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(24)で表されるホスホニウム化合物を得る。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
ただし、前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す(ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは下記一般式(A)で表される基である。)。
前記一般式(2)及び一般式(4)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、下記一般式(B)で表される基、下記一般式(C)で表される基、及び下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(2)中、Zは、ハロゲン原子を表す。
前記一般式(3)中、Xは、Li、Na、及びKのいずれかを表す。
前記一般式(3)及び一般式(4)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【化5】
ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいナフチルメチル基、アルキルカルボニルメチル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、及び置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基のいずれかを表す。
【化6】
前記一般式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【化7】
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、メチル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化8】
前記一般式(D)中、Rは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。
【化9】
【化10】
ただし、前記一般式(11)及び一般式(14)中、R11、及びR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(11)及び一般式(14)中、R13は、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表し、前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.60以下である。
前記一般式(14)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(14)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【化11】
【化12】
ただし、前記一般式(21)及び一般式(24)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す。前記R21における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R22における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R23における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。
前記一般式(24)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(24)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【請求項2】
前記一般式(3)、前記一般式(4)、前記一般式(14)、及び前記一般式(24)における前記Yが、B(C、SbF、PF、PF(C、及びC(CFSOのいずれかである請求項1に記載のオニウム化合物の製造方法。
【請求項3】
前記アルコールが、メタノール、及びエタノールの少なくともいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(3)、前記一般式(4)、前記一般式(14)、及び前記一般式(24)における前記Rが、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、シンナミル基、アリル基、メタリル基、及び2−エトキシカルボニルプロペニル基のいずれかである請求項1から3のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法。
【請求項5】
オニウム化合物を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
前記オニウム化合物が、請求項1から4のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法により得られることを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記硬化性樹脂組成物が、更にエポキシ化合物を含有する請求項5に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、光、及び熱の少なくともいずれかにより硬化するための重合触媒として有用なオニウム化合物の製造方法、及び該製造方法を利用した硬化性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ系樹脂などのカチオン硬化成分のカチオン硬化触媒に用いるオニウム塩化合物、代表的には、熱カチオン硬化として有用なベンジル構造又はシンナミル構造の解離種を有するスルホニウム塩は、多数知られている。
【0003】
オニウム塩を代表してスルホニウム塩の通常の製造方法を紹介する(例えば、特許文献1〜4参照)。まず、チオエーテルにベンジル構造又はシンナミル構造のハライド化合物を反応させ、対応するスルホニウムハロゲン化物を合成する。その後、水中、若しくは有機溶媒中、又は水と有機溶剤との2相系で、強酸アニオンにアニオン交換する。
しかし、この方法では、より低温での熱硬化を目的としたスルホニウム化合物の製造方法においては、対応するスルホニウムハロゲン化物の合成が困難となり、収率が悪化するという問題がある。
【0004】
そこで、p−ヒドロキシフェニル基を有する特定のスルホニウム塩をまず合成し、その後、p−ヒドロキシ基を特定のカルボニルハライド化合物或いはイソシアネート化合物を用いて修飾し、より低温硬化可能なスルホニウム塩の製造方法が開示されている(例えば、特許文献5及び6参照)。しかし、この製造方法では、2段階の製造が必要であり、プロセスコスト上、不利となる。また、この製造方法は、製造プロセスの厳密な管理が必要であり負荷となる。更に、この製造方法は、カルボニルハライドやイソシアネートのような反応性の高いものには適用できるが、前述の特許文献1〜4に記載のスルホニウム化合物の製造においては、反応がほとんど進行せず、高温あるいは長時間の反応が余儀なくされ、その結果スルホニウム化合物の分解を過度に伴うという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−188569号公報
【特許文献2】特開平4−210673号公報
【特許文献3】特開平11−255739号公報
【特許文献4】特許第5561199号公報
【特許文献5】特開平3−47164号公報
【特許文献6】特開2011−231243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特定のオニウム化合物を簡便な方法かつ高収率で製造可能なオニウム化合物の製造方法、及び該製造方法を利用した硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記(A)、(B)、及び(C)のいずれかであることを特徴とするオニウム化合物の製造方法である。
(A)水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかの溶媒中で、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を得る。
(B)水中で、下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(14)で表されるアンモニウム化合物を得る。
(C)水中で、下記一般式(21)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(24)で表されるホスホニウム化合物を得る。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
ただし、前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す(ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは下記一般式(A)で表される基である。)。
前記一般式(2)及び一般式(4)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、下記一般式(B)で表される基、下記一般式(C)で表される基、及び下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(2)中、Zは、ハロゲン原子を表す。
前記一般式(3)中、Xは、Li、Na、及びKのいずれかを表す。
前記一般式(3)及び一般式(4)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【化5】
ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいナフチルメチル基、アルキルカルボニルメチル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、及び置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基のいずれかを表す。
【化6】
前記一般式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【化7】
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、メチル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化8】
前記一般式(D)中、Rは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。
【化9】
【化10】
ただし、前記一般式(11)及び一般式(14)中、R11、及びR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(11)及び一般式(14)中、R13は、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表し、前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.60以下である。
前記一般式(14)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(14)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【化11】
【化12】
ただし、前記一般式(21)及び一般式(24)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す。前記R21における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R22における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R23における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。
前記一般式(24)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(24)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
<2> 前記一般式(3)、前記一般式(4)、前記一般式(14)、及び前記一般式(24)における前記Yが、B(C、SbF、PF、PF(C、及びC(CFSOのいずれかである前記<1>に記載のオニウム化合物の製造方法である。
<3> 前記アルコールが、メタノール、及びエタノールの少なくともいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法である。
<4> 前記一般式(3)、前記一般式(4)、前記一般式(14)、及び前記一般式(24)における前記Rが、ベンジル基、o−メチルベンジル基、α−ナフチルメチル基、シンナミル基、アリル基、メタリル基、及び2−エトキシカルボニルプロペニル基のいずれかである前記<1>から<3>のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法である。
<5> オニウム化合物を含有する硬化性樹脂組成物の製造方法であって、
前記オニウム化合物が、前記<1>から<4>のいずれかに記載のオニウム化合物の製造方法により得られることを特徴とする硬化性樹脂組成物の製造方法である。
<6> 前記硬化性樹脂組成物が、更にエポキシ化合物を含有する前記<5>に記載の硬化性樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、特定のオニウム化合物を簡便な方法かつ高収率で製造可能な製造方法、及び該製造方法を利用した硬化性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(オニウム化合物の製造方法)
本発明のオニウム化合物の製造方法は、下記(A)、(B)、及び(C)のいずれかであることを特徴とする。
(A)水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかの溶媒中で、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を得る。
(B)水中で、下記一般式(11)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(14)で表されるアンモニウム化合物を得る。
(C)水中で、下記一般式(21)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(24)で表されるホスホニウム化合物を得る。
【0010】
<スルホニウム化合物の製造方法(A)>
本発明の前記オニウム化合物の製造方法の一態様のスルホニウム化合物の製造方法では、水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかの溶媒中で、下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(4)で表されるスルホニウム化合物を得る。
【0011】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
ただし、前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(1)及び一般式(4)中、Rは、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す(ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは下記一般式(A)で表される基である。)。
前記一般式(2)及び一般式(4)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、下記一般式(B)で表される基、下記一般式(C)で表される基、及び下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(2)中、Zは、ハロゲン原子を表す。
前記一般式(3)中、Xは、Li、Na、及びKのいずれかを表す。
前記一般式(3)及び一般式(4)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【化17】
ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいナフチルメチル基、アルキルカルボニルメチル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、及び置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基のいずれかを表す。
【化18】
前記一般式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【化19】
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、メチル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
【化20】
前記一般式(D)中、Rは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の溶媒と、特定の原材料との組合せによって、反応途中で中間体(スルホニウムハライド)の単離、精製を要せずに、カチオン硬化触媒として使用可能な特定のスルホニウム化合物を合成できることを見出した。
【0013】
即ち、本発明者らは、カチオン硬化触媒として使用可能なスルホニウム化合物を、中間体の単離及び精製を行わず一度に製造する際に、前記溶媒として、水を主成分とする場合、前記一般式(1)で表される化合物におけるRのフェニル基の置換基の電子吸引性、又は電子供与性が、反応性の点で重要になることに気がついた。そこで、本発明者らは、種々の置換基について検討し、ハメットの置換基定数と、製造可能性との関係を調べた結果、スルホニウム化合物の製造において、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計が0.30以下である場合、スルホニウム化合物が製造可能であり、かつ収率も高いことを見出した。なお、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は、適度な熱硬化性を有するスルホニウム化合物が得られる点から、−0.40〜0.20が好ましく、−0.30〜0.00がより好ましい。
前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計が0.30を超えると、スルホニウム化合物の製造が困難になる。それは、チオエーテルの求核性の低下による反応性の低下、及び目的とする生成物の安定性の低下のためと考えられる。
【0014】
また、本発明者らは、カチオン硬化触媒として使用可能なスルホニウム化合物を、中間体の単離及び精製を行わず一度に製造する際に、前記溶媒として、水を主成分としない場合、前記一般式(1)で表される化合物におけるRの構造が、反応性の点で重要になることに気がついた。そこで、本発明者らは、前記Rの構造について種々検討した結果、前記Rの構造が、前記一般式(A)で表される基であるときに、スルホニウム化合物が製造可能であり、かつ収率も高いことを見出した。
【0015】
ここで、ハメットの置換基定数とは、置換安息香酸の酸解離平衡定数における置換基の効果を数値で表したものである。この定数は、置換基の電子求引性及び電子供与性の強度を示すパラメーターとなる。
フェニル基の置換基は、一般的に以下のようなハメットの置換基定数を有する。
【0016】
【表1】
表1中、「Me」はメチル基を表す。「Et」はエチル基を表す。「Ph」及び「C」はフェニル基を表す。
上記ハメットの置換基定数は、例えば、「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに開示されている。また、置換基の種類にも因るが、ChemBioDraw等を用いた計算により算出することもできる。
【0017】
また、本発明において、「溶媒が水を主成分とする」とは、溶媒分の50質量%以上が水であることをいい。「溶媒が水を主成分としない」とは、溶媒分の50質量%未満が水であることをいう。
【0018】
<<一般式(1)で表される化合物>>
【化21】
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(1)中、Rは、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す(ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは下記一般式(A)で表される基である。)。
【化22】
ただし、前記一般式(A)中、Rは、水素原子、及び炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。Rは、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいナフチルメチル基、アルキルカルボニルメチル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、及び置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基のいずれかを表す。
【0019】
<<<R>>>
前記Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0020】
<<<R>>>
前記Rは、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す。ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは前記一般式(A)で表される基である。
前記ハメットの置換基定数の計算対象となる前記置換基としては、例えば、炭素数1〜10の置換基や、前記表1に記載の置換基などが挙げられる。
【0021】
−一般式(A)で表される基−
−−R−−
前記一般式(A)で表される基におけるRは、水素原子、及び炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル、t−ブチル基などが挙げられる。
【0022】
−−R−−
前記一般式(A)で表される基におけるRは、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいベンジル基、置換基を有していてもよいナフチルメチル基、アルキルカルボニルメチル基、置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルメチル基、及び置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基のいずれかを表す。
【0023】
前記Rにおける前記アルキル基としては、例えば、炭素数18以下のアルキル基などが挙げられる。前記炭素数18以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0024】
前記Rにおける置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。前記ナフチル基としては、例えば、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
【0025】
前記Rにおける置換基を有していてもよいナフチルメチル基におけるナフチルメチル基としては、例えば、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などが挙げられる。ここで、前記置換基は、ナフチル基に結合している。
【0026】
前記Rにおけるアルキルカルボニルメチル基におけるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基などが挙げられる。前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。
【0027】
前記Rにおける置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基におけるアリールカルボニルメチル基としては、例えば、フェニルカルボニルメチル基、ナフチルカルボニルメチル基などが挙げられる。ここで、前記置換基は、アリール基に結合している。
【0028】
前記Rにおけるアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基などが挙げられる。
【0029】
前記Rにおける置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。ここで、前記置換基は、アリール基に結合している。
【0030】
前記置換基を有していてもよいアリール基、前記置換基を有していてもよいナフチル基、前記置換基を有していてもよいベンジル基、前記置換基を有していてもよいナフチルメチル基、前記置換基を有していてもよいアリールカルボニルメチル基、及び前記置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニルメチル基における置換基としては、例えば、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。また、前記置換基は1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
ここで、前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rが、前記一般式(A)で表される基以外の基であるとき、例えば、下記一般式(AA)で表される基であるとき、本発明のスルホニウム化合物の製造方法を適用しても、スルホニウム化合物は生成しない。これは、アルコール及びアセトニトリルに対するスルホニウム化合物の溶解性が高く、反応の平衡がスルホニウム化合物の生成に移動しないためと考えられる。
【化23】
ここで、前記一般式(AA)中、R15は、アルキル基、アルコキシル基、及びフェニルアミノ基のいずれかを表す。
【0032】
<<一般式(2)で表される化合物>>
【化24】
前記一般式(2)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、下記一般式(B)で表される基、下記一般式(C)で表される基、及び下記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。Zは、ハロゲン原子を表す。
【0033】
前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
前記炭素数1〜4のアルキル基は、芳香族環に1つ置換されていてもよいし、複数置換されていてもよい。
【化25】
前記一般式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかを表す。
【0034】
前記Rにおける前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
前記Rにおける前記炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
【化26】
前記一般式(C)中、Rは、水素原子、メチル基、及びフェニル基のいずれかを表す。
前記Rが水素原子の場合、前記一般式(C)で表される基は、アリル基である。
【化27】
前記一般式(D)中、Rは、アルキル基、アルコキシカルボニル基、及びアリールオキシカルボニル基のいずれかを表す。
前記Rがメチル基の場合、前記一般式(D)で表される基は、メタリル基である。
前記Rがエトキシカルボニル基の場合、前記一般式(D)で表される基は、2−エトキシカルボニルプロペニル基である。
【0035】
前記Rにおける前記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
前記Rにおける前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、前記炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
前記Rにおける前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0036】
前記Zにおける前記ハロゲン原子としては、例えば、F(フッ素原子)、Cl(塩素原子)、Br(臭素原子)、I(ヨウ素原子)などが挙げられる。
【0037】
<<一般式(3)で表される化合物>>
【化28】
前記一般式(3)中、Xは、Li、Na、及びKのいずれかを表す。Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【0038】
前記Xとしては、前記一般式(3)で表される化合物がより安価な原料にすることができる点で、K、Naが好ましい。
【0039】
カチオン硬化成分をより低温で重合可能とするためには、前記Yは、B(C、SbF、PF(C、C(CFSOであることが好ましく、B(C、SbFであることがより好ましい。
また、結晶性の塩が得られやすい点から、前記Yは、B(C、SbF、PF、PF(C、C(CFSOであることが好ましい。
【0040】
<<一般式(4)で表される化合物>>
【化29】
前記一般式(4)中、Rは、前記一般式(1)中のRと同じである。Rは、前記一般式(1)中のRと同じである。Rは、前記一般式(2)中のRと同じである。前記Yは、前記一般式(3)中のYと同じである。
【0041】
<<混合>>
前記溶媒中で、前記一般式(1)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物とを混合する際の混合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記混合割合として、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜3.0モルが好ましく、0.8モル〜1.5モルがより好ましい。前記一般式(2)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、3.0モルを超えると、原料が過剰なため、高コストになること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
前記混合割合として、前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜1.5モルが好ましく、0.8モル〜1.2モルがより好ましい。前記一般式(3)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、1.5モルを超えると、原料が過剰なため無駄が生じること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
【0042】
<<溶媒>>
前記溶媒としては、水、アルコール、及びアセトニトリルの少なくともいずれかであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ただし、前記溶媒が水を主成分とする場合、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.30以下である。前記溶媒が水を主成分としない場合、前記Rは前記一般式(A)で表される基である。
【0043】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどが挙げられる。
【0044】
前記反応が行われる際の、系中の前記溶媒の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜95質量%が好ましい。
【0045】
前記溶媒が水を主成分とする場合、アルコールを併用してもよい。この場合、前記アルコールの割合は、水に対して、0質量%〜50質量%が好ましく、0質量%〜20質量%がより好ましい。
【0046】
前記溶媒が水を主成分としない場合、前記溶媒は水を含有しないことが好ましい。例えば、前記溶媒がアルコール又はアセトニトリルの場合、前記溶媒は、アルコール単独又はアセトニトリル単独であることが好ましい。
【0047】
<<反応>>
前記反応における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以下が好ましく、10℃〜45℃がより好ましい。前記反応温度が、10℃未満であると、反応の進行が遅くなることがあり、45℃を超えると、反応と同時に解離も進行し収率が十分に上がらないことがある。
【0048】
前記反応における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2時間〜48時間が好ましく、5時間〜24時間がより好ましい。
【0049】
前記反応の際には、必要に応じて、反応触媒、酸(例えば、硫酸、塩酸等)、塩基(例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ等)、銀塩(例えば、炭酸銀、硝酸銀等)などを共存させてもよい。
【0050】
以下に、前記一般式(4)で表される化合物の一例を示す。
以下の例は、前記Rにおける前記置換基のハメットの置換基定数の合計が0.30以下であるスルホニウム化合物の例である。
【化30】
【0051】
以下の例は、前記Rが前記一般式(A)で表される基であるスルホニウム化合物の例である。
【化31】
【化32】
【化33】
【0052】
<アンモニウム化合物の製造方法(B)>
本発明の前記オニウム化合物の製造方法の一態様のアンモニウム化合物の製造方法では、水中で、下記一般式(11)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(14)で表されるアンモニウム化合物を得る。
【化34】
【化35】
ただし、前記一般式(11)及び一般式(14)中、R11、及びR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(11)及び一般式(14)中、R13は、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表し、前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.60以下である。
前記一般式(14)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(14)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【0053】
本発明者らは、前述のとおり、鋭意検討した結果、反応途中で中間体(スルホニウムハライド)の単離、精製を要せずに、カチオン硬化触媒として使用可能な特定のスルホニウム化合物を合成できることを見出した。
本発明者らは、更に検討を重ね、反応途中で中間体(アンモニウムハライド)の単離、精製を要せずに、カチオン硬化触媒として使用可能な特定のアンモニウム化合物を合成できることを見出した。
【0054】
<<一般式(11)で表される化合物>>
【化36】
ただし、前記一般式(11)中、R11、及びR12は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記一般式(11)中、R13は、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表し、前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.60以下である。
前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計が0.60を超えると、アンモニウム化合物の製造が困難になる。それは、前記R11、前記R12、及び前記R13に結合する窒素原子の求核性の低下による反応性の低下、及び目的とする生成物の安定性の低下のためと考えられる。
【0055】
<<<R11及びR12>>>
前記R11及びR12としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
【0056】
<<<R13>>>
前記R13において、前記ハメットの置換基定数の計算対象となる前記置換基としては、例えば、炭素数1〜10の置換基や、前記表1に記載の置換基などが挙げられる。
前記R13における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は、適度な熱硬化性を有するアンモニウム化合物が得られる点から、−0.30〜0.55が好ましく、−0.20〜0.50がより好ましい。
【0057】
<<一般式(14)で表される化合物>>
【化37】
前記一般式(14)中、R11は、前記一般式(11)中のR11と同じである。R12は、前記一般式(11)中のR12と同じである。R13は、前記一般式(11)中のR13と同じである。Rは、前記一般式(2)中のRと同じである。前記Yは、前記一般式(3)中のYと同じである。
【0058】
<<混合>>
前記水中で、前記一般式(11)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物とを混合する際の混合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記混合割合として、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(11)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜3.0モルが好ましく、0.8モル〜1.5モルがより好ましい。前記一般式(2)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(11)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、3.0モルを超えると、原料が過剰なため、高コストになること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
前記混合割合として、前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(11)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜1.5モルが好ましく、0.8モル〜1.2モルがより好ましい。前記一般式(3)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(11)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、1.5モルを超えると、原料が過剰なため無駄が生じること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
【0059】
<<水>>
反応系中には、水以外の溶媒が含まれていてもよい。そのような溶媒としては、例えば、アルコール、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0060】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどが挙げられる。
【0061】
前記反応が行われる際の、系中の前記溶媒の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜95質量%が好ましい。
【0062】
前記溶媒における水の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%〜100質量%が好ましく、70質量%〜99質量%がより好ましい。
【0063】
前記溶媒として水とアルコールとを併用する場合、前記アルコールの割合は、水に対して、0質量%〜50質量%が好ましく、0質量%〜20質量%がより好ましい。
【0064】
<<反応>>
前記反応における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以下が好ましく、10℃〜45℃がより好ましい。前記反応温度が、10℃未満であると、反応の進行が遅くなることがあり、45℃を超えると、反応と同時に解離も進行し収率が十分に上がらないことがある。
【0065】
前記反応における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2時間〜48時間が好ましく、5時間〜24時間がより好ましい。
【0066】
前記反応の際には、必要に応じて、反応触媒、酸(例えば、硫酸、塩酸等)、塩基(例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ等)、銀塩(例えば、炭酸銀、硝酸銀等)などを共存させてもよい。
【0067】
<ホスホニウム化合物の製造方法(C)>
本発明の前記オニウム化合物の製造方法の一態様のホスホニウム化合物の製造方法では、水中で、下記一般式(21)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物とを混合した後に反応させ、下記一般式(24)で表されるアンモニウム化合物を得る。
【化38】
【化39】
ただし、前記一般式(21)及び一般式(24)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す。前記R21における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R22における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R23における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。
前記一般式(24)中、Rは、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいα−ナフチルメチル基、芳香族環の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基で置換されてもよいシンナミル基、前記一般式(B)で表される基、前記一般式(C)で表される基、及び前記一般式(D)で表される基のいずれかを表す。
前記一般式(24)中、Yは、B(C、SbF、AsF、PF、BF、PF(C、CNO、(CSO、及びC(CFSOのいずれかを表す。
【0068】
本発明者らは、前述のとおり、鋭意検討した結果、反応途中で中間体(スルホニウムハライド、アンモニウムハライド)の単離、精製を要せずに、カチオン硬化触媒として使用可能な特定のスルホニウム化合物、特定のアンモニウム化合物を合成できることを見出した。
本発明者らは、更に検討を重ね、反応途中で中間体(ホスホニウムハライド)の単離、精製を要せずに、カチオン硬化触媒として使用可能な特定のホスホニウム化合物を合成できることを見出した。
【0069】
<<一般式(21)で表される化合物>>
【化40】
ただし、前記一般式(21)中、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、0〜5個の置換基を有するフェニル基を表す。前記R21における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R22における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。前記R23における前記置換基のハメットの置換基定数の合計は0.70以下である。
前記R21における前記置換基のハメットの置換基定数の合計、前記R22における前記置換基のハメットの置換基定数の合計、及び前記R23における前記置換基のハメットの置換基定数の合計のいずれかが0.70を超えると、ホスホニウム化合物の製造が困難になる。それは、前記R21、前記R22、及び前記R23に結合するリン原子の求核性の低下による反応性の低下、及び目的とする生成物の安定性の低下のためと考えられる。
【0070】
<<<R21、R22、及びR23>>>
前記R21、R22、及びR23において、前記ハメットの置換基定数の計算対象となる前記置換基としては、例えば、炭素数1〜10の置換基や、前記表1に記載の置換基などが挙げられる。
前記R21、R22、及びR23のそれぞれにおいて、前記置換基のハメットの置換基定数の合計は、適度な熱硬化性を有するホスホニウム化合物が得られる点から、−0.10〜0.60が好ましく、−0.10〜0.55がより好ましい。
【0071】
<<一般式(24)で表される化合物>>
【化41】
前記一般式(24)中、R21は、前記一般式(21)中のR21と同じである。R22は、前記一般式(21)中のR22と同じである。R23は、前記一般式(21)中のR23と同じである。Rは、前記一般式(2)中のRと同じである。前記Yは、前記一般式(3)中のYと同じである。
【0072】
<<混合>>
前記水中で、前記一般式(21)で表される化合物と、前記一般式(2)で表される化合物と、前記一般式(3)で表される化合物とを混合する際の混合割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記混合割合として、前記一般式(2)で表される化合物は、前記一般式(21)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜3.0モルが好ましく、0.8モル〜1.5モルがより好ましい。前記一般式(2)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(21)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、3.0モルを超えると、原料が過剰なため、高コストになること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
前記混合割合として、前記一般式(3)で表される化合物は、前記一般式(21)で表される化合物1モルに対して、0.8モル〜1.5モルが好ましく、0.8モル〜1.2モルがより好ましい。前記一般式(3)で表される化合物の混合割合が、前記一般式(21)で表される化合物1モルに対して、0.8モル未満であると、反応の進行が低下し、収率が低下することがあり、1.5モルを超えると、原料が過剰なため無駄が生じること、かつ未反応物の精製の手間が余計にかかることがある。
【0073】
<<水>>
反応系中には、水以外の溶媒が含まれていてもよい。そのような溶媒としては、例えば、アルコール、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0074】
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどが挙げられる。
【0075】
前記反応が行われる際の、系中の前記溶媒の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜95質量%が好ましい。
【0076】
前記溶媒における水の量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50質量%〜100質量%が好ましく、70質量%〜99質量%がより好ましい。
【0077】
前記溶媒として水とアルコールとを併用する場合、前記アルコールの割合は、水に対して、0質量%〜50質量%が好ましく、0質量%〜20質量%がより好ましい。
【0078】
<<反応>>
前記反応における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60℃以下が好ましく、10℃〜45℃がより好ましい。前記反応温度が、10℃未満であると、反応の進行が遅くなることがあり、45℃を超えると、反応と同時に解離も進行し収率が十分に上がらないことがある。
【0079】
前記反応における反応時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2時間〜48時間が好ましく、5時間〜24時間がより好ましい。
【0080】
前記反応の際には、必要に応じて、反応触媒、酸(例えば、硫酸、塩酸等)、塩基(例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ソーダ等)、銀塩(例えば、炭酸銀、硝酸銀等)などを共存させてもよい。
【0081】
(硬化性樹脂組成物の製造方法)
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法は、本発明の前記オニウム化合物の製造方法を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0082】
前記硬化性樹脂組成物は、オニウム化合物を少なくとも含有し、好ましくは、カチオン硬化成分、膜形成樹脂を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
前記オニウム化合物は、本発明の前記オニウム化合物の製造方法により得られる。
前記硬化性樹脂組成物は、例えば、前記オニウム化合物と、好ましくはカチオン硬化成分と、膜形成樹脂とを混合して得られる。
【0083】
<カチオン硬化成分>
前記カチオン硬化成分としては、カチオン系硬化剤としての前記オニウム化合物の作用により硬化する成分であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物、及び環状エーテル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
前記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエステル、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、グリシジルエステル系エポキシ化合物、ビフェニルジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートと前記グリシジルメタクリレートと共重合可能なビニル単量体との共重合体などが挙げられる。
【0085】
前記脂環式エポキシ化合物としては、例えば、シクロヘキセンオキシド含有化合物、シクロペンテンオキシド含有化合物などが挙げられる。
【0086】
前記ビニルエーテル化合物としては、例えば、アルキルビニルエーテル化合物、アルケニルビニルエーテル化合物、アルキニルビニルエーテル化合物、アリールビニルエーテル化合物などが挙げられる。
【0087】
前記オキセタン化合物としては、オキセタンアルコール、脂肪族オキセタン化合物、芳香族オキセタン化合物などが挙げられる。
【0088】
前記硬化性樹脂組成物における前記カチオン硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、10質量%〜98質量%が好ましく、20質量%〜90質量%がより好ましい。
【0089】
<オニウム化合物>
前記オニウム化合物は、本発明の前記オニウム化合物の製造方法により製造されるオニウム化合物である。
前記オニウム化合物としては、スルホニウム化合物、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物が挙げられる。
前記スルホニウム化合物は、本発明の前記スルホニウム化合物の製造方法により製造されるスルホニウム化合物である。
前記アンモニウム化合物は、本発明の前記アンモニウム化合物の製造方法により製造されるアンモニウム化合物である。
前記ホスホニウム化合物は、本発明の前記ホスホニウム化合物の製造方法により製造されるホスホニウム化合物である。
【0090】
前記硬化性樹脂組成物における前記オニウム化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、0.5質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜15質量%がより好ましい。
【0091】
<膜形成樹脂>
前記膜形成樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性の点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0092】
前記フェノキシ樹脂としては、例えば、2官能フェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させ高分子量化したもの、あるいは2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類とを重付加することにより得られる樹脂などが挙げられる。
使用される2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
また、2官能フェノール類としては、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。
【0093】
前記硬化性樹脂組成物における前記膜形成樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化性樹脂組成物の不揮発分に対して、10質量%〜90質量%が好ましく、20質量%〜80質量%がより好ましく、30質量%〜60質量%が特に好ましい。
【0094】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チキソトロピー剤、充填剤、レベリング剤、酸化防止剤、着色剤、導電性付与剤、接着付与剤などが挙げられる。
【0095】
前記硬化性樹脂組成物は、例えば、熱により硬化する熱硬化性樹脂組成物、光により硬化する光硬化性樹脂組成物として好適に用いることができる。
【0096】
(硬化性シート)
本発明に関する前記硬化性シートは、本発明の前記硬化性樹脂組成物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0097】
前記硬化性シートは、例えば、基材フィルム(剥離基材)上に前記硬化性樹脂組成物からなる硬化性接着層が形成されてなるものである。前記基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
前記硬化性シートは、保管性、使用時のハンドリング性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等に必要に応じてシリコーン等で剥離処理した基材フィルムに、前記硬化性樹脂組成物からなる硬化性接着層が5μm〜50μmの平均厚みで形成されていることが好ましい。
【0098】
前記硬化性樹脂組成物、及び前記硬化性シートは、電子部品分野に好ましく適用できる。特に、前記硬化性シートは、フレキシブルプリント配線板の端子部等と、その裏打ちするためのポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ガラスエポキシ、ステンレス、アルミニウム等の厚み50μm〜2mmの補強用シートとを接着固定するために好ましく適用でき、その適用により、フレキシブルプリント配線板の端子部と補強用シートとが、前記硬化性シートの基材フィルムを除いた硬化性接着層の硬化物で接着固定されてなる補強フレキシブルプリント配線板が得られる。
【0099】
前記硬化性シートを接着シートとして使用する場合、組成中には熱可塑性樹脂が含有されていることが好ましい。使用される熱可塑性樹脂としては、前記<膜形成樹脂>の欄でも記載のポリアクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられる。この中でも、上述したように成膜性、相溶性、耐熱性の観点でフェノキシ樹脂が含有されていることが好ましい。
金属を接着する接着シートとして使用される場合、組成中にシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばエポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。
導電性を付与する接着シートとして使用される場合、組成中に導電性粒子を含有することが好ましい。導電粒子の種類は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば金、銀、銅、スズ、ニッケル等の金属粒子、金属酸化物あるいはシリカ等の無機粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子、樹脂粒子に金属メッキあるいは蒸着等により金属を被覆した粒子などが挙げられる。粒子の形状も特に制限はなく、球状、針状、不定形、細かい突起を有する形状等が挙げられる。
【0100】
前記硬化性シートは、例えば、熱により硬化する熱硬化性シート、光により硬化する光硬化性シートとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0102】
(合成例1)
<化合物(B)の合成>
東京化成工業社製4−メチルチオフェノール6g(42.8mmol)とアセトニトリル20mL、炭酸カリウム7.09g(51.4mmol)を入れた100mL三口フラスコを70℃で30分間、攪拌し、そこへ東京化成工業社製1−クロロピナコリン6.91g(51.4mmol)を滴下した。70℃で6時間、攪拌し、塩を除去後、水洗、抽出を行い、溶媒を留去することで下記構造式で表される化合物(B)を9.12g(収率89%)得た。
【0103】
【化42】
【0104】
(合成例2)
<化合物(C)の合成>
合成例1において、1−クロロピナコリンを東京化成工業社製のクロロアセトン4.76g(51.4mmol)に変更した以外は、合成例1と同様に合成を行い、下記構造式で表される化合物(C)を7.36g(収率87.6%)得た。
【0105】
【化43】
【0106】
(合成例3)
<化合物(D)の合成>
合成例1において、1−クロロピナコリンを東京化成工業社製のフェナシルクロライド7.95g(51.4mmol)に変更した以外は、合成例1と同様に合成を行い、下記構造式で表される化合物(D)を9.12g(収率82.5%)得た。
【0107】
【化44】
【0108】
(合成例4)
<化合物(E)の合成>
合成例1において、1−クロロピナコリンを東京化成工業社製のクロロ酢酸メチル4.76g(51.4mmol)に変更した以外は、合成例1と同様に合成を行い、下記構造式で表される化合物(E)を7.57g(収率90.1%)得た。
【0109】
【化45】
【0110】
(合成例5)
<化合物(F)の合成>
4−メチルチオフェノール4g(28.5mmol)と無水酢酸8g(78.4mmol)を100ml三口フラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で少量の濃硫酸を添加し、室温にて3時間攪拌、反応させた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40g、及び酢酸エチル20gを入れ、攪拌後、分液ロートに移し、油相を取り出し、さらに油相の水洗を行った後溶媒を留去後、減圧乾燥を行うことで淡黄色液状の化合物(F)を5.091g得た(収率97.9%)。
【0111】
【化46】
【0112】
(合成例6)
<化合物(G)の合成>
4−メチルチオフェノール1.5g(10.7mmol)とアセトニトリル20gを100ml三口フラスコに入れ、10℃まで冷却後、トリエチルアミン1.137g(11.2mmol)を添加後10分攪拌し、さらに発熱に注意しながら東京化成工業社製クロロ蟻酸エチル1.220g(11.2mmol)を10分かけて滴下した。その後4時間反応を行ったのち、濾過により析出したトリエチルアミン塩酸塩を除去後、溶媒を留去し、水洗後減圧乾燥を行うことで、下記構造式で表される化合物(G)を2.04g得た(収率89.7%)。
【0113】
【化47】
【0114】
(合成例7)
<化合物(H)の合成>
窒素置換した100ml三口フラスコに4−メチルチオフェノール5.0g(35.7mmol)、トルエン30g、及びトリエチルアミン0.05gを入れ、60℃、窒素雰囲気下で東京化成工業社製イソシアン酸フェニル5.098g(42.8mmol)を発熱に注意しながら30分間かけて滴下した。その後60分攪拌、反応を行い、冷却放置後、濾過を行い、トルエンにて洗浄後、減圧乾燥することで、下記構造式で表される化合物(H)を7.59g得た(収率82.1%)。
【0115】
【化48】
【0116】
(実施例1)
<スルホニウム化合物1の合成>
下記構造式で表される化合物(A)1.000g、1−ナフチルメチルクロライド1.260g、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカリウム塩4.656g、及びエタノール2.00gを50ml三口フラスコに仕込み、25℃24時間攪拌、反応を行った。反応終了後、酢酸エチル10gを投入した後、しばらく攪拌を行い、その後濾過により析出したKClを除去し、濾液を回収した。濾液から溶媒を留去することで粗結晶が得られたため、粗結晶を純水で水洗後、減圧乾燥を行い、エタノール/ヘキサンで再結晶することでスルホニウム化合物(1)の白色結晶を収率82.3%で得た。
【0117】
【化49】
【0118】
得られたスルホニウム化合物(1)の構造確認は、LC/MSにより行った。結果、得られたスルホニウム化合物(1)は、後述する構造であることが確認できた。
なお、以下の実施例2〜17、比較例1〜7においても、構造確認の方法は、同様である。
【0119】
(実施例2〜17)
実施例1と同様にして、以下のスルホニウム化合物(2)〜(11)を合成した。合成に使用した原材料の構造、及び仕込み量、使用溶媒、並びに収率は下記表2〜3に記載した。
【0120】
【化50】
【化51】
【0121】
(比較例1)
<スルホニウム化合物12の合成>
4−メチルカルボニルオキシ−フェニルメチルスルフィド1.000g、ベンジルクロライド0.903g、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカリウム4.656g、及びエタノール2.00gを50ml三口フラスコに仕込み、25℃24時間攪拌、反応を行った。反応終了後、酢酸エチル10gを投入した後、しばらく攪拌を行い、その後濾過により析出したKClを除去し、濾液を回収した。濾液から溶媒を留去したが、結晶は析出せず黄色粘調液状となった。この粘調液をLC/MSで分析したところ、目的のスルホニウム化合物(12)はほとんど生成していなかった。
【0122】
(比較例2〜5)
比較例1と同様にして、スルホニウム化合物(13)〜(15)の合成を試みた。合成に使用した原材料の構造、及び仕込み量、使用溶媒、並びに収率は下記表4に記載した。
LC/MSで分析したところ、目的のスルホニウム化合物(13)〜(15)はほとんど生成していなかった。
なお、比較例1〜4において合成しようとしたスルホニウム化合物は特開平3−47164号公報に記載の類似化合物である。比較例5において合成しようとしたスルホニウム化合物は特開2011−231243号公報に記載の化合物である。
【0123】
比較例1〜5において合成しようとしたスルホニウム化合物(12)〜(15)の構造は以下のとおりである。
【化52】
【0124】
(比較例6)
<スルホニウム化合物(4)の合成>
4−(3,3ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニルメチルスルフィド1.000gと1−ナフチルメチルクロライド0.815gとメタノール2gを50ml三口フラスコに仕込み、25℃にて24時間攪拌、反応させた。反応後、溶媒を留去したところ黄色粘調液状物が得られた。この粘調物をLC/MSで分析したところスルホニウム化合物(スルホニウムクロライド)はほとんど生成していなかったため、その後のテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートへのアニオン交換ができなかった。
【0125】
(比較例7)
<スルホニウム化合物(4)の合成>
4−(3,3ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニルメチルスルフィド1.000gと1−ナフチルメチルクロライド0.815gと水10gを50ml三口フラスコに仕込み、25℃にて24時間攪拌、反応させた。反応終了後、この反応液に酢酸エチル10g、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウム2.946gを投入し、15分攪拌した。その後、酢酸エチル相を回収し、溶媒を留去することで、黄色粘調液状物を回収した。この粘調物をLC/MSで分析したところスルホニウム化合物(4)はほとんど生成しなかった。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
表2〜4中、化合物(A)〜(H)は以下の構造である。
【化53】
【化54】
【0130】
実施例・比較例で用いた原材料の購入先は以下のとおりである。
化合物Aは、東京化成工業社製である。
1−ナフチルメチルクロライドは、東京化成工業社製である。
o−メチルベンジルクロライドは、東京化成工業社製である。
シンナミルクロライドは、東京化成工業社製である。
1−ナフチルメチルブロマイドは、Alfa Aesar社製である。
ベンジルクロライドは、東京化成工業社製である。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカリウムは、東ソー・ファインケム社製である。
トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムは、セントラル硝子社製である。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウムは、日本触媒社製である。
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートリチウムは、東ソー・ファインケム社製である。
六フッ化アンチモン酸ナトリウムは、Alfa Aesar社製である。
【0131】
(実施例18)
4−(メチルチオ)フェノール2.35g(16.8mmol)に対し、クロロメチルナフタレン(1−ナフチルメチルクロライド)2.96g(16.8mmol)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウム塩(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウム)の10質量%水溶液(日本触媒製)を117.8g(16.8mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。ろ過、水洗、乾燥後、ヘキサンによる洗浄を行い、再度乾燥することで目的とするスルホニウム化合物を得た。収率は90%であった。
なお、使用した溶媒は、水のみである。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、−0.37である。
【0132】
得られたスルホニウム化合物の構造は以下のとおりである。構造確認は、LC/MSにより行った。
なお、実施例19〜22、比較例8〜12においても、構造確認の方法は、同様である。
【化55】
【0133】
(実施例19)
4−(メチルチオ)フェノール2.35g(16.8mmol)に対し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウム塩の10質量%水溶液(日本触媒製)を117.8g(16.8mmol)を加え、室温で攪拌した。そこへ、クロロメチルナフタレン(1−ナフチルメチルクロライド)2.96g(16.8mmol)をエタノール10gで溶解したものを滴下し室温で24時間攪拌した。ろ過、水洗、乾燥後、ヘキサンによる洗浄を行い、再度乾燥することで目的とするスルホニウム化合物を得た。収率は91%であった。
なお、使用した溶媒は、水:エタノール=10:1(質量比)である。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、−0.37である。
【0134】
得られたスルホニウム化合物の構造は以下のとおりである。
【化56】
【0135】
(実施例20)
実施例19において、4−(メチルチオ)フェノールを4−メトキシチオアニソール〔前記化合物(A)〕2.59g(16.8mmol)に変えた以外は、実施例19と同様にして、スルホニウム化合物を合成した。収率は93%であった。
なお、使用した溶媒は、水:エタノール=10:1(質量比)である。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、−0.27である。
【0136】
得られたスルホニウム化合物の構造は以下のとおりである。
【化57】
【0137】
(実施例21)
実施例19において、4−(メチルチオ)フェノールを3,3−ジメチル−1−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]ブタン−2−オン〔前記化合物(B)〕4.00g(16.8mmol)に変えた以外は、実施例19と同様にして、スルホニウム化合物を合成した。収率は92%であった。
なお、使用した溶媒は、水:エタノール=10:1(質量比)である。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、0.14である。
【0138】
得られたスルホニウム化合物の構造は以下のとおりである。
【化58】
【0139】
(実施例22)
実施例19において、4−(メチルチオ)フェノールをチオアニソール2.08g(16.8mmol)に変えた以外は、実施例19と同様にして、スルホニウム化合物を合成した。収率は93%であった。
なお、使用した溶媒は、水:エタノール=10:1(質量比)である。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、0である。
【0140】
得られたスルホニウム化合物の構造は以下のとおりである。
【化59】
【0141】
(比較例8)
実施例18において、ボレート塩を用いずに合成を行い、塩化物として単離を実施した。塩化物の収率は70%であった。その後、塩交換でボレート塩にすることで目的とするスルホニウム化合物を得た。収率は56%であった。
なお、使用した溶媒は、水:エタノール=10:1(質量比)である。前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、−0.37である。
【0142】
(比較例9)
実施例20において、ボレート塩を用いずに合成を実施した。しかし、塩化物は得られず、目的とするスルホニウム化合物は得られなかった。
【0143】
(比較例10)
実施例21において、ボレート塩を用いずに合成を実施した。しかし、塩化物は得られず、目的とするスルホニウム化合物は得られなかった。
【0144】
(比較例11)
実施例22において、ボレート塩を用いずに合成を実施した。しかし、塩化物は得られず、目的とするスルホニウム化合物は得られなかった。
【0145】
(比較例12)
実施例18において、4−(メチルチオ)フェノールを4−(メチルスルファニル)フェニルアセテート〔前記化合物(F)〕2.59g(16.8mmol)に変えた以外は、実施例18と同様にして合成を実施したが、目的とするスルホニウム化合物は得られなかった。
なお、目的とするスルホニウム化合物の構造は以下のとおりであり、前記Rにおける置換基のハメットの置換基定数の合計は、0.31である。
【化60】
【0146】
なお、実施例18〜22、比較例8〜12で用いた原材料の購入先は、前述した以外は、以下のとおりである。
4−(メチルチオ)フェノールは、東京化成工業社製である。
チオアニソールは、東京化成工業社製である。
【0147】
(実施例23)
<化合物(101)の合成>
攪拌器、温度計を設置した200ml三口フラスコに、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの10質量%水溶液(日本触媒製)を水:エチルアルコールが10:1の質量比となるよう調整した9.17質量%溶液128.6g(16.8mmol)と、4−(メチルチオ)フェノール(東京化成工業製)2.35g(16.8mmol)と、1−ナフチルメチルブロマイド(東京化成工業製)4.09g(18.5mmol)を投入し、室温で24時間攪拌した。攪拌終了後、沈澱した結晶をろ過で取り出し、純水による水洗を3回行い、減圧乾燥により水を除去後、ヘキサンによる洗浄を行い、再度減圧乾燥を行うことで白色固体状の下記化合物(101)を得た。収率は91%であった。
【化61】
【0148】
(実施例24)
<化合物(102)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)を4−メトキシチオアニソール(東京化成工業製)2.59g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(102)を得た。収率は87%であった。
【化62】
【0149】
(実施例25)
<化合物(103)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)をチオアニソール(東京化成工業製)2.09g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(103)を得た。収率は89%であった。
【化63】
【0150】
(実施例26)
<化合物(104)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)を3−メトキシチオアニソール(東京化成工業製)2.59g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(104)を得た。収率は82%であった。
【化64】
【0151】
(実施例27)
<化合物(102)の合成>
実施例24において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸リチウムの固形分92質量%含水品(東ソー・ファインケム製)を水:エタノールの10:1質量比溶液で10質量%に調整した溶液115.2g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例24と同様にして化合物(102)を得た。収率は81%であった。
【0152】
(実施例28)
<化合物(102)の合成>
実施例24において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸カリウム(東ソー・ファインケム製)を水:エチルアルコールの10:2質量比溶液で10質量%に調整した溶液120.6g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例24と同様にして化合物(102)を得た。収率は78%であった。
【0153】
(実施例29)
<化合物(105)の合成>
実施例24において、1−ナフチルメチルブロマイドをベンジルクロライド(東京化成工業製)2.34g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例24と同様にして下記化合物(105)を得た。収率は82%であった。
【化65】
【0154】
(実施例30)
<化合物(106)の合成>
実施例24において、1−ナフチルメチルブロマイドをo−メチルベンジルクロライド(東京化成工業製)2.60g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例24と同様にして下記化合物(106)を得た。収率は75%であった。
【化66】
【0155】
(実施例31)
<化合物(107)の合成>
実施例24において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(セントラル硝子製)の10質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液70.3g(16.8mmol)とした以外は、実施例24と同様にして下記化合物(107)を得た。収率は71%であった。
【化67】
【0156】
(実施例32)
<化合物(108)の合成>
実施例24においてテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をヘキサフルオロリン酸ナトリウム(東京化成工業製)の2.5質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液112.9g(16.8mmol)とした以外は、実施例24と同様にして下記化合物(108)を得た。収率は73%であった。
【化68】
【0157】
(実施例33)
<化合物(109)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオ)フェノールをN,N−ジメチル−p−トルイジン(東京化成工業製)2.27g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(109)を得た。収率は87%であった。
【化69】
【0158】
(実施例34)
<化合物(110)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオ)フェノールをN,N−ジメチルアニリン(東京化成工業製)2.04g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(110)を得た。収率は82%であった。
【化70】
【0159】
(実施例35)
<化合物(111)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオ)フェノールを4−ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成工業製)3.25g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(111)を得た。収率は84%であった。
【化71】
【0160】
(実施例36)
<化合物(112)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオ)フェノールを4’−ジメチルアミノアセトフェノン(東京化成工業製)2.74g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして下記化合物(112)を得た。収率は78%であった。
【化72】
【0161】
(実施例37)
<化合物(113)の合成>
実施例35において、1−ナフチルメチルブロマイドをベンジルクロライド2.34g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例35と同様にして下記化合物(113)を得た。収率は75%であった。
【化73】
【0162】
(実施例38)
<化合物(114)の合成>
実施例35において、1−ナフチルメチルブロマイドをアリルブロミド(東京化成工業製)2.24g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例35と同様にして下記化合物(114)を得た。収率は75%であった。
【化74】
【0163】
(実施例39)
<化合物(115)の合成>
実施例35において、1−ナフチルメチルブロマイドをメタリルブロミド(東京化成工業製)2.50g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例35と同様にして下記化合物(115)を得た。収率は87%であった。
【化75】
【0164】
(実施例40)
<化合物(116)の合成>
実施例35において、1−ナフチルメチルブロマイドを2-(ブロモメチル)アクリル酸エチル(東京化成工業製)3.59g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例35と同様にして下記化合物(116)を得た。収率は90%であった。
【化76】
【0165】
(実施例41)
<化合物(117)の合成>
実施例39において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(セントラル硝子製)の10質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液70.3g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例39と同様にして下記化合物(117)を得た。収率は70%であった。
【化77】
【0166】
(実施例42)
<化合物(118)の合成>
実施例39において、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの9.17質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液をヘキサフルオロリン酸ナトリウム(東京化成工業製)の2.5質量%の水:エチルアルコールの10:1質量比溶液112.9g(16.8mmol)とした以外は、実施例39と同様にして下記化合物(118)を得た。収率は68%であった。
【化78】
【0167】
(実施例43)
<化合物(119)の合成>
攪拌器、温度計を設置した500ml三口フラスコにテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ほう酸ナトリウムの10質量%水溶液(日本触媒製)を水:エチルアルコールが1:1の質量比となるよう調整した5質量%溶液235.9g(16.8mmol)と、トリフェニルホスフィン(東京化成工業製)4.41g(16.8mmol)と、1−ナフチルメチルブロマイド(東京化成工業製)4.09g(18.5mmol)を投入し、室温で24時間攪拌した。攪拌終了後、沈澱した結晶をろ過で取り出し、純水による水洗を3回行い、減圧乾燥により水を除去後、ヘキサンによる洗浄を行い、再度減圧乾燥を行うことで白色固体状の下記化合物(119)を得た。収率は91%であった。
【化79】
【0168】
(実施例44)
<化合物(120)の合成>
実施例43において、トリフェニルホスフィンをトリス(p−トリフルオロメチル)フェニルホスフィン(東京化成工業製)7.83g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例43と同様にして下記化合物(120)を得た。収率は81%であった。
【化80】
【0169】
(実施例45)
<化合物(121)の合成>
実施例43において1−ナフチルメチルブロマイドをメタリルブロミド(東京化成工業製)2.50g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例43と同様にして下記化合物(121)を得た。収率は83%であった。
【化81】
【0170】
(実施例46)
<化合物(122)の合成>
実施例43において、1−ナフチルメチルブロマイドをアリルブロミド(東京化成工業製)2.24g(18.5mmol)に換えた以外は、実施例43と同様にして下記化合物(122)を得た。収率は74%であった。
【化82】
【0171】
(実施例47)
<化合物(123)の合成>
実施例43において、トリフェニルホスフィンをトリス(4−フルオロフェニル)ホスフィン(東京化成工業製)5.31g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例43と同様にして下記化合物(123)を得た。収率は85%であった。
【化83】
【0172】
(比較例13)
<4−メチルカルボニルオキシ−フェニルメチルスルフィドの合成>
4−メチルチオフェノール4g(28.5mmol)と無水酢酸8g(78.4mmol)を100ml三口フラスコに入れ、窒素ガス雰囲気中で少量の濃硫酸を添加し、室温にて3時間攪拌、反応させた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40g、酢酸エチル20gを入れ、攪拌後、分液ロートに移し、油相を取り出し、さらに油相の水洗を行った後溶媒を留去後、減圧乾燥を行うことで淡黄色液状の4−メチルカルボニルオキシ−フェニルメチルスルフィドを5.091g得た。(収率97.9%)
【0173】
<比較化合物(101)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)を上記で合成した4−メチルカルボニルオキシ−フェニルメチルスルフィド2.52g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして合成を行ったところ、合成後は粘調液状の沈殿物となった。これを取り出し、水洗を行い、乾燥後、さらにヘキサンで洗浄を行ったが結晶は析出しなかった。この粘調物をLC/MSで分析したところ、目的物の純度は25%であった。
【化84】
【0174】
(比較例14)
<比較化合物(102)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)を4’−(メチルチオ)アセトフェノン(東京化成工業製)2.69g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして合成を行ったところ、合成後は粘調液状の沈殿物となった。これを取り出し、水洗を行い、乾燥後、さらにヘキサンで洗浄を行ったが比較例13と同様に結晶は析出しなかった。この粘調物をLC/MSで分析したところ、目的物の純度は11%であった。
【化85】
【0175】
(比較例15)
<比較化合物(103)の合成>
実施例23において、4−(メチルチオフェノール)を4−(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル(東京化成工業製)2.46g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例23と同様にして合成を行ったところ、合成後は粘調液状の沈殿物となった。これを取り出し、水洗を行い、乾燥後、さらにヘキサンで洗浄を行ったが比較例13と同様に結晶は析出しなかった。この粘調物をLC/MSで分析したところ、目的物の純度は28%であった。
【化86】
【0176】
(比較例16)
<比較化合物(104)の合成>
実施例43において、トリフェニルホスフィンをトリス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン(東京化成工業製)11.26g(16.8mmol)に換えた以外は、実施例43と同様にして合成を行ったところ、合成後は粘調液状の沈殿物となった。これを取り出し、水洗を行い、乾燥後、さらにヘキサンで洗浄を行ったが比較例13と同様に結晶は析出しなかった。この粘調物をLC/MSで分析したところ、目的物の純度は32%であった。
【化87】
【0177】
実施例23〜実施例47、比較例13〜16について以下にまとめる。
【0178】
【表5】
【0179】
【表6】
【0180】
【表7】
【0181】
上記結果より、本発明のスルホニウム化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせを使用することにより、極めて簡単、かつ高収率でスルホニウム化合物を得ることができることがわかる。
一方、前記一般式(1)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせでは無い場合、スルホニウム化合物は同様の方法では全く製造できない、又は収率が非常に低いことがわかる。
また、比較例6及び7より、本発明のスルホニウム化合物の製造方法で得られるスルホニウム化合物の一部は、従来の方法では製造できないこともわかる。
【0182】
上記結果より、本発明のアンモニウム化合物の製造方法は、前記一般式(11)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせを使用することにより、極めて簡単、かつ高収率でアンモニウム化合物を得ることができることがわかる。
一方、前記一般式(11)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせでは無い場合、アンモニウム化合物の収率は非常に低いことがわかる。
【0183】
上記結果より、本発明のホスホニウム化合物の製造方法は、前記一般式(21)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせを使用することにより、極めて簡単、かつ高収率でホスホニウム化合物を得ることができることがわかる。
一方、前記一般式(21)で表される化合物、前記一般式(2)で表される化合物、及び前記一般式(3)で表される化合物の組み合わせでは無い場合、ホスホニウム化合物の収率は非常に低いことがわかる。
【0184】
よって、本発明の有用性が証明された。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明は、オニウム化合物の製造に好適に用いることができる。