(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52842(P2017-52842A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】ポリクロロプレンラテックス組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 11/02 20060101AFI20170224BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20170224BHJP
C09K 15/08 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
C08L11/02
C08K5/13
C09K15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-176318(P2015-176318)
(22)【出願日】2015年9月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000195616
【氏名又は名称】精工化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】八巻 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 梢
【テーマコード(参考)】
4H025
4J002
【Fターム(参考)】
4H025AA15
4H025AA18
4H025AC01
4J002AC091
4J002EJ036
4J002FD076
4J002GJ01
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】耐熱変色性に優れるポリクロロプレンラテックス組成物を提供する。
【解決手段】ポリクロロプレンラテックスに、下記一般式(1)で表される化合物を配合したポリクロロプレンラテックス組成物。
(但し、一般式(1)中、R
1は、相互に独立に、置換されていても良い炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、R
2は、水酸基であり、R
3は、相互に独立に、水素、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜3のアルキレン基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリクロロプレンラテックスに、下記一般式(1)で表される化合物を配合したポリクロロプレンラテックス組成物。
【化1】
(但し、一般式(1)中、R
1は、相互に独立に、置換されていても良い炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、R
2は、水酸基であり、R
3は、相互に独立に、水素、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜3のアルキレン基である。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物を、酸化防止剤として用いる請求項1に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項3】
ポリクロロプレンラテックス100質量部に対して、0.1〜10.0質量部の前記一般式(1)で表される化合物を配合した請求項1または2に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物は、前記一般式(1)におけるR1が、相互に独立に、1つのメチル基が置換された炭素数3〜8のシクロアルキル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル−p−クレゾール)である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンラテックス組成物に関する。更に詳しくは、耐熱変色性に優れるポリクロロプレンラテックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリクロロプレンラテックスは、高い接着力を有するため広範囲に利用されている。しかし、このポリクロロプレンラテックスは、例えば、加熱によって接着強度が低下したり、光に曝されると変色したりするという問題がある。
【0003】
そこで、加熱後における接着強度が低下し難い性質(耐熱性)及び耐候変色性が改良されたポリクロロプレンラテックス組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−336579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のポリクロロプレンラテックス組成物は、耐熱変色性を有するものであるが、更に優れた耐熱変色性を有するポリクロロプレンラテックス(ポリクロロプレンラテックス組成物)の開発が切望されていた。
【0006】
本発明の課題は、ポリクロロプレンラテックスに、所定の化合物を配合することにより、耐熱変色性に優れるポリクロロプレンラテックス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリクロロプレンラテックスに一般式(1)で表される化合物を配合すれば、上記問題を解決することを見出した。
【0008】
[1] ポリクロロプレンラテックスに、下記一般式(1)で表される化合物を配合したポリクロロプレンラテックス組成物。
【0009】
【化1】
(但し、一般式(1)中、R
1は、相互に独立に、置換されていても良い炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、R
2は、水酸基であり、R
3は、相互に独立に、水素、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜3のアルキレン基である。)
【0010】
[2] 前記一般式(1)で表される化合物を、酸化防止剤として用いる前記[1]に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【0011】
[3] ポリクロロプレンラテックス100質量部に対して、0.1〜10.0質量部の前記一般式(1)で表される化合物を配合した前記[1]または[2]に記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【0012】
[4] 前記一般式(1)で表される化合物は、前記一般式(1)におけるR
1が、相互に独立に、1つのメチル基が置換された炭素数3〜8のシクロアルキル基である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【0013】
[5] 前記一般式(1)で表される化合物が、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル−p−クレゾール)である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリクロロプレンラテックス組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、耐熱変色性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0016】
[1]ポリクロロプレンラテックス組成物:
本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、ポリクロロプレンラテックスに、下記一般式(1)で表される化合物を配合したものである。
【0017】
【化2】
(但し、一般式(1)中、R
1は、相互に独立に、置換されていても良い炭素数3〜8のシクロアルキル基であり、R
2は、水酸基であり、R
3は、相互に独立に、水素、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜3のアルキレン基である。)
【0018】
このようなポリクロロプレンラテックス組成物は、一般式(1)で表される化合物を配合しているため、耐熱変色性に優れる。なお、本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、接着剤として使用した場合、加熱によっても接着強度が維持されるものである。
【0019】
[1−1]ポリクロロプレンラテックス:
ポリクロロプレンラテックスは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、「クロロプレン」と記す)の単独重合体、又は、クロロプレンと、このクロロプレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(単独重合体と共重合体を併せて、以下、「ポリクロロプレン」と記す)が、乳化・分散剤を介して水中に分散しているラテックスである。
【0020】
クロロプレンと共重合可能な他の単量体としては、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、カルボキシル基含有ビニル単量体及びそのエステル類がある。これらの単量体は2種類以上用いることもできる。これらの単量体の中でも、カルボキシル基含有ビニル単量体を用いると、重合反応の制御が容易になるため好ましい。
【0021】
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸などを挙げることができる。これらの単量体の中でも、メタクリル酸を用いると、乳化重合の制御が容易である。これらの単量体を共重合させることによって、ポリクロロプレンのポリマー鎖中にカルボキシル基を導入させたポリクロロプレンラテックスを得ることができる。このようなポリクロロプレンラテックスを用いると、接着剤として使用した場合、ポリクロロプレンラテックス組成物の耐熱接着力を向上させることができる。上記カルボキシル基含有ビニル単量体は2種類以上用いることもできる。
【0022】
クロロプレンと共重合可能な他の単量体としてカルボキシル基含有ビニル単量体を用いる場合、重合時の仕込み量としては、全単量体100質量部に対して、カルボキシル基含有ビニル単量体が0.01〜10質量部となることが好ましい。
【0023】
ポリクロロプレンラテックスを得るには、これらの単量体を、水及び、従来、クロロプレンの重合で用いられる乳化剤、重合触媒、連鎖移動剤、その他添加剤の存在下で乳化重合させた後、重合停止剤を加えて重合を停止させ、未反応の単量体を除去すれば良い。
【0024】
単量体の重合条件は、特に限定されるものではなく、重合温度、重合触媒、連鎖移動剤、重合停止剤、最終重合率、脱モノマーや濃縮条件等を適切に選定、制御することで、固形分濃度、トルエン可溶部の分子量、トルエン不溶分(ゲル含有量)等を調整することが可能である。
【0025】
ポリクロロプレンラテックスは、減圧濃縮などによって濃縮したり水等を添加して希釈することで、固形分濃度を調整することができる。ポリクロロプレンラテックスの固形分濃度は、特に限定するものではないが、40〜65質量%の範囲とすることが好ましい。
【0026】
[1−2]一般式(1)で表される化合物:
一般式(1)で表される化合物は、特に「置換されていても良い炭素数3〜8のシクロアルキル基」を有するため、ポリクロロプレンラテックス組成物における優れた耐熱変色性を良好に発揮させ、また、接着剤として使用した場合に、接着強度の維持を良好に発揮させる。
【0027】
ここで、ポリクロロプレンラテックス組成物が加熱により変色する原因としては、ポリクロロプレンからの脱塩酸によって生じる酸化劣化の促進が考えられる。そこで、本発明においては、一般式(1)で表される化合物を配合することにより、この化合物が酸化防止剤として機能し、この酸化防止剤が有する活性部位であるフェノール性水酸基が、両オルト位に置換されたシクロアルキル基の立体障害によって長時間の加熱環境下において酸化防止効果に対して大きく作用する。そのため、ポリクロロプレンラテックス組成物の変色を良好に防止することができる。このように一般式(1)で表される化合物は、酸化防止剤として良好に用いることができる。
【0028】
一般式(1)で表される化合物は、一般式(1)におけるR
1が、相互に独立に、1つのメチル基が置換された炭素数3〜8のシクロアルキル基であることが好ましい。更に具体的には、一般式(1)で表される酸化防止剤としては、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル−p−クレゾール)であることが更に好ましい。このような条件を満たすことにより、ポリクロロプレンラテックス組成物における更に優れた耐熱変色性を良好に発揮させ、また、接着剤として使用した場合に、接着強度の維持を更に良好に発揮させることができる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、ポリクロロプレンラテックス100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜7.5質量部であることが更に好ましく、1.0〜5.0質量部であることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、酸化防止剤として使用したときに、酸化防止剤としての機能を十分に発揮するため、耐熱変色性が向上するという効果が発揮される。
【0030】
[1−3]その他の成分:
本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、その他の成分として、以下のものを更に含有してもよい。即ち、その他の成分としては、酸化防止剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、増粘剤、充填剤、造膜助剤、可塑剤、加硫剤、加硫促進剤、消泡剤、抗菌剤、防黴剤、受酸剤等を挙げることができる。
【0031】
酸化防止剤としては、一般式(1)で表される化合物以外のものを更に配合することができる。具体的には、アルキルフェノール類化合物、ベンジルフェノール類化合物、アルキルフェニルアクリレート類化合物、アルキルプロピオネート類化合物、アルキルヒドロキシホスホネートジエステル類化合物、アルキルハイドロキノン類化合物などを挙げることができる。
【0032】
粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クマロンインデン樹脂などがある。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および比較例によって、さらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
ポリクロロプレンラテックス(固形分換算)100質量部に対して、粘着付与剤40質量部、酸化亜鉛(関東化学製)5質量部、酸化防止剤として一般式(1)で表される化合物2質量部を添加して配合物を得た。その後、攪拌機で配合物を撹拌して均一化し、得られたものを評価用組成物とした。なお、酸化亜鉛、酸化防止剤は、乳化剤及び水とした混合液を、ボールミルを使用して微粒子化したものを使用した。
【0035】
ポリクロロプレンラテックスとしては、デンカクロロプレンラテックスLA−50(電気化学工業製)を用いた。粘着付与剤としては、タマノルE−100(荒川化学工業製)を用いた。酸化防止剤としては、具体的には、ノンフレックスCBP(精工化学製)を用いた。この「ノンフレックスCBP」は、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル−p−クレゾール)である。
【0036】
(ポリクロロプレンラテックス組成物の評価)
得られた評価用組成物(ポリクロロプレンラテックス組成物)について、下記に示す方法で耐熱変色性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
(耐熱変色性の評価)
得られた評価用組成物を、25mm×150mmの綿帆布の表面に200g/m
2(固形分)になるように刷毛で塗布して試験片を得た。得られた試験片を60℃恒温槽中で5分間乾燥し、評価サンプルとした。
【0038】
作製した評価サンプルについて、ギヤーオーブン(東洋精機製作所製)を用いて、100℃で熱処理(0、2、5、14日間)した際の色の変化を観察し、変色度を測定した。なお、「0日間」は、熱処理前の状態における変色度を意味する。変色度は、色彩色差計(コニカミノルタ社製 CR−100)を用いて標準白色板との色差(ΔE)を測定して得られる値である。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2,3、比較例1〜5)
表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリクロロプレンラテックス組成物を作製した。その後、作製したポリクロロプレンラテックス組成物について、実施例1と同様にして、「耐熱変色性」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
表1より、実施例1〜3のポリクロロプレンラテックス組成物は、比較例1〜5のポリクロロプレンラテックス組成物に対して、一定時間熱処理した後でも僅かな変色に留まっていた。この結果より、クロロプレンラテックス組成物に、一般式(1)で表される酸化防止剤(具体的には、2,2’−メチレンビス(6−(1−メチルシクロヘキシル−p−クレゾール)など)を配合することで優れた耐熱変色性があることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のポリクロロプレンラテックス組成物は、紙、木材、布、皮革、レザー、ゴムなどの様々なものの接着剤などとして適用可能である。