【解決手段】プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレン共重合体が分散しているポリプロピレン樹脂組成物であって、前記組成物中の前記エチレン−プロピレン共重合体の量が15〜35重量%、前記共重合体中のプロピレン含量が70〜85重量%、であり、前記組成物の25℃におけるキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が2〜4dl/g、前記組成物の230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分、前記組成物のキシレン不溶分のMw/Mnが7〜12、かつ前記組成物の歪み硬化指数が1を超え10未満である、ポリプロピレン樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
安価で剛性、耐湿性、および耐熱性に優れているポリプロピレンは、各種産業分野において広く使用されている。特にポリプロピレン樹脂組成物は、外観、機械的性質、包装適性等が優れているため、成形品、特にレトルトフィルムに代表される食品包装や繊維包装などの包装用途におけるシートおよびフィルム状成形品を製造することに用いられている。
【0003】
特許文献1には、チーグラー・ナッタ型触媒を用いて重合したエチレン−プロピレン共重合体が開示されており、これを溶融押出し製膜してなるフィルムも開示されている。
特許文献2には、ポリプロピレンとプロピレンとエチレンまたは炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体エラストマーとを含有する組成物が開示されており、これを用いたフィルムは、低温での耐衝撃性と剛性とのバランスがよく、透明性に優れ、ヒートシール強度にも優れることが開示されている。
特許文献3には、プロピレンとエチレンまたは炭素数4〜12のα−オレフィン共重合体ブロックを有し広角X線回折法によるb軸配向を有するポリプロピレン樹脂成形物が開示されている。
【0004】
これらの特許文献に記載の技術では、共重合体を重合する際に、フタル酸ジイソブチルを内部電子供与体化合物として含むチーグラー・ナッタ型固体触媒系(フタレート系触媒)を使用している。フタレート系触媒を用いて重合した共重合体は、分子量分布が若干狭く、また共重合体中の分散性に劣るという問題があった。このため、上記の引用文献の共重合体はいずれもフィッシュアイの発生の問題を完全には解決できていない。
【0005】
特許文献4には、内部電子供与体化合物として環状エステル化合物を用いた、オレフィン重合用固体状チタン触媒成分が開示されている。
特許文献5には、内部電子供与体化合物としてエステル構造またはジエステル構造を有する化合物を用いた、オレフィン重合用固体状チタン触媒成分が開示されている。
特許文献6には、内部電子供与体化合物として15族から選ばれるヘテロ原子を有するジエステル化合物を用いた、α−オレフィン重合用触媒成分が開示されている。
特許文献7には、内部電子供与体化合物として16族から選ばれるヘテロ原子を有するジエステル化合物を用いた、α−オレフィン重合用触媒成分が開示されている。
特許文献8には、内部電子供与体化合物としてコハク酸エステル(スクシネート)を用いた、オレフィン重合用の成分が開示されている。
【0006】
特許文献4〜8には、種々のスクシネート系化合物(コハク酸エステル構造を有する化合物)を含む固体触媒系が開示されているが、これを用いてインフレーションフィルムに好適な特定の性質を有する樹脂組成物を製造することは言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者らは、前記特許文献に記載の樹脂組成物では、インフレーション成形における安定した製膜性および偏肉とフィッシュアイの少ないインフレーションフィルムを得ることは困難であることを見出した。以上を鑑み、本発明はインフレーション成形における安定した製膜性および偏肉の少ないインフレーションフィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、特定の組成、および特定範囲の多分散度および歪み硬化指数等を有するポリプロピレン樹脂組成物により前記課題が解決できることを見出した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[1]プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレン共重合体が分散しているポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記組成物中の前記エチレン−プロピレン共重合体の量が15〜35重量%、
前記共重合体中のプロピレン含量が70〜85重量%、であり、
前記組成物の25℃におけるキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が2〜4dl/g、
前記組成物の25℃におけるキシレン不溶分のMw/Mnが7〜12、かつ
前記組成物の230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分、
前記組成物の歪み硬化指数が1を超え10未満である、
ポリプロピレン樹脂組成物。
[2] 前記歪み硬化指数が1を超え5以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;
(B)有機アルミニウム化合物;ならびに
(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて、プロピレンとエチレンとを重合させて得た、[1]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて製造されたインフレーションフィルム。
[5] 少なくとも一層に[4]に記載されたインフレーションフィルムを含むレトルト用シーラントフィルム。
[6] (A)マグネシウム、チタン、ハロゲン、およびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒;
(B)有機アルミニウム化合物;ならびに
(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物
を含む触媒を用いて、プロピレンとエチレンとを重合させる工程、を含む、[1]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[7] 前記[6]に記載の方法で前記樹脂組成物を製造する工程、および前記樹脂組成物をインフレーション成形する工程、を含む、フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、インフレーション成形における安定した製膜性および偏肉とフィッシュアイの少ないインフレーションフィルムを与えるポリプロピレン樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明において「〜」はその両端の値を含む。すなわち、「X〜Y」はXおよびYの双方を含む。また、「XまたはY」はXおよびYのいずれか一方、あるいは両方を含む。
【0013】
1.ポリプロピレン樹脂組成物
(1)プロピレン単独重合体とエチレン−プロピレン共重合体
本発明の樹脂組成物は、プロピレン単独重合体の中にプロピレン−エチレン共重合体(以下「BIPO」ともいう)が分散している。本発明の単独重合体は、重合体の製造プロセスの特質上混入する可能性のある微量(0.3質重量%未満)のα−オレフィンとの共重合体も含む。BIPOの量は15〜35重量%であり、好ましくは17〜34重量%である。BIPOの量が15重量%未満であると衝撃強度が低下し、35重量%を超えると溶出成分が増えるためレトルト用途では好ましくない。
【0014】
BIPO中のプロピレン含量は、BIPOの重量を基準として70〜85重量%であり、好ましくは73〜82重量%である。BIPO中のプロピレン含量が70重量%未満であるとフィルムとしたときにフィッシュアイが増加し、さらに衝撃強度も低下しうる。また、プロピレン単独重合体との相溶性が不十分となるので本発明の樹脂組成物の比較的広い分子量分布においても、本発明に必要な歪み硬化指数が得られない。一方、プロピレン含量が85重量%を超えるとフィルムのべたつきが強くなる。
【0015】
(2)XSIV
本発明の樹脂組成物の25℃でのキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)は2〜4dl/gであり、好ましくは2.1〜3.3dl/gである。キシレン可溶分は結晶性を持たない成分であり、XSIVはその成分の分子量の指標である。キシレン可溶分の主体はBIPOに由来する。当該組成物におけるXSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の固有粘度を定法にて測定することで求められる。ポリプロピレン樹脂組成物のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)と、フィルムのヒートシール強度との間には強い相関があることが知られており、XSIVの値が大きいほどフィルムのヒートシール強度が向上する。一方で、XSIVが大きすぎるとフィッシュアイが増加する。以上から、前記範囲のXSIVを有する本発明の樹脂組成物から得られるフィルムはヒートシール性とフィッシュアイの少なさとのバランスに優れる。
【0016】
(3)メルトフローレート
本発明の樹脂組成物の230℃、荷重21.18Nにおけるメルトフローレート(以下「MFR」ともいう)は0.1〜10g/10分であり、好ましくは1.0〜4.0g/10分である。MFRが0.1(g/10分)未満であるとフィルム成形機での樹脂圧力が上昇して生産性が低下する、フィルム表面の平滑度が低下してフィルムの品質が低下する等の不具合が生じうる。MFRが10(g/10分)を超えると、フィルムの強度、特に衝撃強度の低下が顕著となりうる。
【0017】
(4)分子量分布
本発明の樹脂組成物の分子量分布(Mw/Mn)は比較的広い。本発明の樹脂組成物の分子量分布は25℃でのキシレン不溶分で評価され、その値は7〜12であり、好ましくは7.5〜11である。分子量分布はゲル浸透クロマトグラフィーによって、重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnを測定することで得られる。キシレン不溶分の主体はプロピレン単独重合体に由来するが、キシレン不溶分のMw/Mnが大きいことは、共重合体(BIPO)部分の分子量分布が広いことが予想され、ポリプロピレン単独重合体と共重合体(BIPO)との分散性が向上すると考えられる。分子量分布が広いことは、プロピレン単独重合体部分および共重合体(BIPO)部分とも、高分子量の分子が相対的に多いことを意味する。この高分子量成分により、本発明の樹脂組成物は伸長時にある程度高い歪み硬化指数を有する。その結果、溶融状態にある樹脂組成物が均一に伸び、インフレーション成形を行った際に偏肉の少ないフィルムが得られる。一方、分子量分布が広いことは、低分子量の分子も相対的に多いことを意味する。この低分子量成分により流動性が良好となるため、溶融時の押出負荷を低減できる。
【0018】
(5)歪み硬化指数
歪み硬化指数は、溶融樹脂の伸長変形下での粘度である伸長粘度を測定することによって求められる。本発明の樹脂組成物の歪み硬化指数は1を超え10未満であり、好ましくは1を超え5以下である。歪み硬化指数がこの範囲にあると溶融した樹脂組成物が均一に伸びやすくなり、得られるフィルムの編肉を低減できる。本発明において歪み硬化指数は、伸長粘度計を用いて、測定温度:200℃、剪断速度:0.1s
−1の条件で測定した伸長粘度から以下のようにして算出される。
【0019】
1)伸長粘度(Pa・sec)の対数を縦軸に、伸長時間(秒)の対数を横軸にプロットし、40秒(以下、「歪み4」という。)のときの伸長粘度の値を(1)とする。
2)10秒(以下、「歪み1」という。)から歪み硬化が始まる前の範囲の曲線を、傾きが最も小さくなる直線で近似する。その直線を歪み4まで外挿したときの伸長粘度の値を(2)とする。
3)(1)/(2)で表される値を歪み硬化指数とする。
【0020】
(6)添加剤等
この他、本発明の樹脂組成物は、油展および他のオレフィン系重合体に通常用いられる慣用の添加剤(造核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、耐電防止剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物)および顔料(有機または無機)を含んでいてもよい。
【0021】
2.本発明の樹脂組成物の製造方法
本発明の樹脂組成物は、前記特性を満たせばどのように製造された樹脂組成物であっても限定されない。しかしながら、スクシネート系触媒を用いてプロピレンおよびエチレンを重合して得られた樹脂組成物が好ましい。
【0022】
(1)スクシネート系触媒
スクシネート系触媒とは電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を含む触媒である。本発明においては、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよびスクシネート系化合物から選択される電子供与体化合物を必須成分として含有する固体触媒、(B)有機アルミニウム化合物、ならびに(C)ケイ素化合物から選択される外部電子供与体化合物を含む触媒が好ましい。スクシネート系触媒を用いると広い分子量分布を有する樹脂組成物が得られる。当該触媒を用いて重合された樹脂組成物は、別な触媒を用いて重合されたポリマーをペレットあるいはパウダーブレンドして得た同じ分子量分布を有する樹脂組成物に比べて高い歪み硬化指数かつ優れた流動性を示す。これは、スクシネート系触媒を用いて製造した樹脂組成物は高分子量成分と低分子量成分が分子レベルに近い状態で一体となっているが、後者の樹脂組成物は分子レベルに近い状態では混ざり合ってはおらず見かけ上同一の分子量分布を示しているにすぎないためと考えられる。しかし、このことを請求項において言葉で表現することは現実的ない。
【0023】
1)成分(A)
成分(A)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。成分(A)の調製に用いられるチタン化合物として、一般式:Ti(OR)
gX
4−gで表される4価のチタン化合物が好適である。式中、Rは炭化水素基、Xはハロゲン、0≦g≦4である。チタン化合物として、より具体的にはTiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O
n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(OisoC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(O
n−C
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O
n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(O
n−C
4H
9)
4などのテトラアルコキシチタンなどが挙げられる。これらの中で好ましいものはハロゲン含有チタン化合物、特にテトラハロゲン化チタンであり、より特に好ましいものは、四塩化チタンである。
【0024】
成分(A)の調製に用いられるマグネシウム化合物としては、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を有するマグネシウム化合物、例えばジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジアミルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジデシルマグネシウム、エチル塩化マグネシウム、プロピル塩化マグネシウム、ブチル塩化マグネシウム、ヘキシル塩化マグネシウム、アミル塩化マグネシウム、ブチルエトキシマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムハイドライドなどが挙げられる。これらのマグネシウム化合物は、例えば有機アルミニウム等との錯化合物の形で用いることもでき、また、液状であっても固体状であってもよい。さらに好適なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、フッ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、イソプロポキシ塩化マグネシウム、ブトキシ塩化マグネシウム、オクトキシ塩化マグネシウムのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェノキシ塩化マグネシウム、メチルフェノキシ塩化マグネシウムのようなアリロキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、n−オクトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム、ジメチルフェノキシマグネシウムのようなアリロキシマグネシウム;ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなマグネシウムのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0025】
成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。本触媒では電子供与体化合物としてスクシネート系化合物を用いる。スクシネート系化合物とはコハク酸のジエステルまたは置換コハク酸のジエステルをいう。以下、スクシネート系化合物について詳しく説明する。本発明で好ましく使用されるスクシネート系化合物は、以下の式(I)で表される。
【0027】
式中、基R
1およびR
2は、互いに同一かまたは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり;基R
3〜R
6は、互いに同一かまたは異なり、水素、或いは場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基であり、同じ炭素原子または異なる炭素原子に結合している基R
3〜R
6は一緒に結合して環を形成してもよい。
【0028】
R
1およびR
2は、好ましくは、C
1〜C
8のアルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基である。R
1およびR
2が第1級アルキル、特に分岐第1級アルキルから選択される化合物が特に好ましい。好適なR
1およびR
2基の例は、C
1〜C
8のアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、ネオペンチル、2−エチルヘキシルである。エチル、イソブチル、およびネオペンチルが特に好ましい。
【0029】
式(I)によって示される化合物の好ましい群の1つは、R
3〜R
5が水素であり、R
6が、3〜10個の炭素原子を有する、分岐アルキル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリール基であるものである。このような単置換スクシネート化合物の好ましい具体例は、ジエチル−sec−ブチルスクシネート、ジエチルテキシルスクシネート、ジエチルシクロプロピルスクシネート、ジエチルノルボニルスクシネート、ジエチルペリヒドロスクシネート、ジエチルトリメチルシリルスクシネート、ジエチルメトキシスクシネート、ジエチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジエチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジエチルフェニルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルスクシネート、ジエチルベンジルスクシネート、ジエチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−t−ブチルスクシネート、ジエチルイソブチルスクシネート、ジエチルイソプロピルスクシネート、ジエチルネオペンチルスクシネート、ジエチルイソペンチルスクシネート、ジエチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチルフルオレニルスクシネート、1−エトキシカルボジイソブチルフェニルスクシネート、ジイソブチル−sec−ブチルスクシネート、ジイソブチルテキシルスクシネート、ジイソブチルシクロプロピルスクシネート、ジイソブチルノルボニルスクシネート、ジイソブチルペリヒドロスクシネート、ジイソブチルトリメチルシリルスクシネート、ジイソブチルメトキシスクシネート、ジイソブチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジイソブチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルスクシネート、ジイソブチルベンジルスクシネート、ジイソブチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−t−ブチルスクシネート、ジイソブチルイソブチルスクシネート、ジイソブチルイソプロピルスクシネート、ジイソブチルネオペンチルスクシネート、ジイソブチルイソペンチルスクシネート、ジイソブチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチルフルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−sec−ブチルスクシネート、ジネオペンチルテキシルスクシネート、ジネオペンチルシクロプロピルスクシネート、ジネオペンチルノルボニルスクシネート、ジネオペンチルペリヒドロスクシネート、ジネオペンチルトリメチルシリルスクシネート、ジネオペンチルメトキシスクシネート、ジネオペンチル−p−メトキシフェニルスクシネート、ジネオペンチル−p−クロロフェニルスクシネート、ジネオペンチルフェニルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチルベンジルスクシネート、ジネオペンチルシクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチルイソブチルスクシネート、ジネオペンチルイソプロピルスクシネート、ジネオペンチルネオペンチルスクシネート、ジネオペンチルイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチルフルオレニルスクシネートである。
【0030】
式(I)の範囲内の化合物の他の好ましい群は、R
3〜R
6からの少なくとも2つの基が、水素とは異なり、場合によってはヘテロ原子を含む、C
1〜C
20の線状または分岐のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、またはアルキルアリール基から選択されるものである。水素とは異なる2つの基が同じ炭素原子に結合している化合物が特に好ましい。具体的には、R
3およびR
4が水素とは異なる基であり、R
5およびR
6が水素原子である化合物である。このような二置換スクシネートの好ましい具体例は、ジエチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジエチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジエチル−2、2−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジエチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジイソブチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジイソブチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−エチル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−ベンジル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシルメチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロペンチル−2−n−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,2−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソブチル−2−エチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(1−トリフルオロメチルエチル)−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−2−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−フェニル−2−n−ブチルスクシネートである。
【0031】
さらに、水素とは異なる少なくとも2つの基が異なる炭素原子に結合している化合物も特に好ましい。具体的にはR
3およびR
5が水素と異なる基である化合物である。この場合、R
4およびR
6は水素原子であってもよいし水素とは異なる基であってもよいが、いずれか一方が水素原子であること(三置換スクシネート)が好ましい。このような化合物の好ましい具体例は、ジエチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジエチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジエチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルジエチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジエチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジエチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジエチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジエチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジエチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジエチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジエチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジエチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジエチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジイソブチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジイソブチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジイソブチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジイソブチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジイソブチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジイソブチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジイソブチル−2−シクロヘキシル−3−シクロペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(トリメチルシリル)スクシネート、ジネオペンチル−2,2−sec−ブチル−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−3−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(2−エチルブチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジエチル−2−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジシクロヘキシル−2−メチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジベンジルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ビス(シクロヘキシルメチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジ−t−ブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジネオペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−ジイソペンチルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−(1−トリフルオロメチルエチル)スクシネート、ジネオペンチル−2,3−テトラデシルスクシネート、ジネオペンチル−2,3−フルオレニルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−イソブチルスクシネート、ジネオペンチル−2−tert−ブチル−3−イソプロピルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソプロピル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−イソペンチル−3−シクロヘキシルスクシネート、ジネオペンチル−2−テトラデシル−3−シクロヘキシルメチルスクシネート、ジネオペンチル−2−シクロヘキシル−3―シクロペンチルスクシネートである。
【0032】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6のうちのいくつかが一緒に結合して環を形成している化合物も好ましく用いることができる。このような化合物として特表2002−542347に挙げられている化合物、例えば、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,6−ジメチルシクロヘキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチル)−2,5一ジメチルシクロペンタン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシアセチルメチル)−2一メチルシクロへキサン、1−(エトキシカルボニル)−1−(エトキシ(シクロヘキシル)アセチル)シクロヘキサンを挙げることができる。他には、例えば国際公開第2009/069483に開示されているような環状スクシネート化合物も好適に用いることができる。他の環状スクシネート化合物の例としては、国際公開2009/057747号に開示されている化合物も好ましい。
【0033】
式(I)の化合物のうち、基R
3〜R
6がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子は窒素およびリン原子を含む第15族原子あるいは酸素およびイオウ原子を含む第16族原子であることが好ましい。基R
3〜R
6が第15族原子を含む化合物としては、特開2005−306910号に開示される化合物が挙げられる。一方、基R
3〜R
6が第16族原子を含む化合物としては、特開2004−131537号に開示される化合物が挙げられる。
【0034】
2)有機アルミニウム化合物(成分B)
成分(B)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
【0035】
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのようなアルキルアルミニウムジハロゲニドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
【0036】
3)電子供与体化合物(成分C)
成分(C)の電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体」と称される。本触媒においては有機ケイ素化合物が好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として以下が挙げられる。
【0037】
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo−トリルジメトキシシラン、ビスm−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、ビスp−トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2−ノルボルナントリメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン。
【0038】
中でも、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルt−ブトキシジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、i−ブチルセク−ブチルジメトキシシラン、エチル(パーヒドロイソキノリン2−イル)ジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン−2−イル)ジメトキシシラン、トリ(イソプロペニロキシ)フェニルシラン、テキシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、i−ブチルi−プロピルジメトキシシラン、シクロペンチルt−ブトキシジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルi−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシラン、ビスp−トリルジメトキシシラン、p−トリルメチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、2−ノルボルナントリエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(3、3、3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、ケイ酸エチルなどが好ましい。
【0039】
(2)重合
原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することが好ましい。重合は、液相中、気相中または液−気相中で実施してよい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは33〜45barの範囲であり、気相中で行われる場合には5〜30barの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt
2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
【0040】
また、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いてもよい。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接続されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法は、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体または液体混合物を下降管中に導入する。上記の重合方法として、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
【0041】
3.フィルム
本発明の樹脂組成物はフィルムの製造、特にインフレーション成形によるフィルムの製造に好適である。インフレーション成形は定法に従って実施できる。例えば、インフレーション成形機を用いて、シリンダ温度200〜250℃、ダイス温度240〜280℃等の温度で実施できる。ブロー比は2〜3、フィルム幅(チューブを押し潰した状態の折り径)は300〜500mm、成形速度は10〜50m/分程度としてよい。
【0042】
本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは前述のとおりフィッシュアイが少なくかつ偏肉も少ない。偏肉の度合いは、連続式厚み計で700mm長さ(チューブを開いた状態の幅に相当)のフィルム(厚み:60μm)を5mm間隔で測定し、その最大値と最小値の差で評価できる。本発明においては、前記差が11μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。各分析は以下のように行った。
[MFR]
JIS K 7210に準じ、温度230℃、荷重21.18Nの条件下で測定した。
[共重合体中のプロピレン濃度]
1、2、4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA−400(
13C共鳴周波数100MHz)を用い、
13C−NMR法で測定を行った。
【0044】
[キシレン不溶分とキシレン可溶分の採取]
樹脂組成物2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間、攪拌し、樹脂組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却を行った。得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。このとき濾紙上に残った残留物(キシレン不溶成分と溶媒の混合物)にアセトンを加えて濾過した後、濾過されなかった成分を、80℃設定の真空乾燥オーブンにて、蒸発乾固させ、キシレン不溶分を得た。
上記のキシレン不溶分を得た際の、濾過後の濾液を100mL採取し、アルミカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置し、キシレン可溶分を得た。
[XSIV]
上記のキシレン可溶分を試料とし、ウベローデ型粘度計(SS−780−H1、柴山科学器械製作所製)を用いて135℃テトラヒドロナフタレン中で極限粘度の測定を行った。
【0045】
[キシレン不溶分のMw/Mn]
上記のキシレン不溶分を試料とし、以下のように分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った:
装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4−トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工(株)製UT−G(1本)、UT−807(1本)、UT−806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、キシレン不溶分の試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調整した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580〜745万のポリスチレン標準試料(shodex STANDARD、昭和電工(株)製)を使用し、三次式近似で行った。Mark−Houkinsの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10
−4、α=0.707、ポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10
−4、α=0.75を使用した。
【0046】
[歪み硬化指数]
樹脂組成物を成形して、長さ60mm、厚み2mm、幅7mmの角柱状の測定用試料を作製し、その測定用試料を用い、伸長粘度計RME(レオメトリック サイエンテフィック社製)によって、測定温度:200℃、剪断速度:0.1s
−1の条件で伸長粘度を測定した。測定した伸長粘度から、前述のようにして歪み硬化指数を求めた。
【0047】
[成形安定性]
トミー機械工業(株)製インフレーション成形機:IFC−800−60−TWRJ(φ60mm)を用いて、シリンダ温度230℃、ダイス温度250℃、ブロー比2.2、フィルム幅350mm(チューブを押し潰した状態の折り径)、成形速度18m/分、フィルム厚み60μmの条件でフィルム成形を行った。
成形性はモーター負荷(A)、および以下の基準によるバブル安定性により評価した。
5:最良
4:良
3:やや良
2:不良
1:成形不可
【0048】
[フィッシュアイ]
30cm四方のフィルム試料中の、0.1m
2の面積中に発生した0.1mm以下のフィッシュアイの個数を、目盛り付きルーペを用いて目視により数えた。
3:少ない
2:中程度
1:多い
【0049】
[偏肉]
連続式厚み計(山文電気(株)製TOF−4R05)で700mm長さ(チューブを開いた状態の幅に相当)のフィルムを5mm間隔で測定し、その最大値と最小値の差で評価した。
【0050】
[製造例]固体触媒成分の調製
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl
4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl
2・1.8C
2H
5OH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、および9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl
4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
【0051】
[実施例1]
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)およびジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が18であり、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
【0052】
得られた予備重合物を、1段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た後、得られた重合体を2段目の重合反応器に導入して共重合体(プロピレン・エチレン共重合体)を重合させた。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.19モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、1.33モル%、0.19モル比であった。また、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。得られたポリプロピレン重合体に、酸化防止剤として、BASF社製B255を0.2重量%、中和剤として、淡南化学(株)製カルシウムステアレートを0.05重量%配合し、ヘンシェルミキサーで1分間攪拌、混合した後、ナカタニ機械(株)製NVCφ50mm単軸押出機で、シリンダ温度230℃で押出し、ストランドを水中で冷却した後、ペレタイザーでカットし、ペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。
【0053】
次いで、当該ポリプロピレン樹脂組成物を上記の方法でインフレーション成形して、インフレーションフィルムを得た。得られたフィルムを評価した。
【0054】
[実施例2]
一段目の反応器の水素濃度を0.15モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ2.21モル%、0.22モル比とし、共重合体成分の量が18重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0055】
[実施例3]
一段目の反応器の水素濃度を0.10モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ2.04モル%、0.13モル比とし、共重合体成分の量が33重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0056】
[比較例1]
MgCl
2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5に記載された方法により調製した。次いで、上記固体触媒と、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウム(TEAL)と、外部電子供与体化合物としてジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を用い、固体触媒に対するTEALの重量比が20、TEAL/DCPMSの重量比が10となるような量で、12℃において24分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃にて5分間保持することによって予備重合を行った。得られた予備重合物を、二段の重合反応器を直列に備える重合装置の一段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を製造し、二段目の重合反応器でエチレン−プロピレン共重合体を製造した。重合中は、温度と圧力を調整し、水素を分子量調整剤として用いた。
【0057】
重合温度と反応物の比率は、一段目の反応器では、重合温度、水素濃度が、それぞれ70℃、0.14モル%、二段目の反応器では、重合温度、水素濃度、C2/(C2+C3)が、それぞれ80℃、1.52モル%、0.44モル比であった。また、共重合体成分の量が27重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。この樹脂組成物組成物を用いて実施例1と同様にしてインフレーションフィルムを製造し評価した。
【0058】
[比較例2]
一段目の反応器の水素濃度を0.08モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ1.61モル%、0.30モル比とした以外は、比較例1と同様に実施した。
[比較例3]
一段目の反応器の水素濃度を0.04モル%とした以外は、比較例2と同様に実施した。
【0059】
[比較例4]
一段目の反応器の水素濃度を0.15モル%、二段目の反応器の水素濃度、C2/(C2+C3)を、それぞれ1.00モル%、0.44モル比とし、共重合体成分の量が21重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、比較例1と同様に実施した。
【0060】
[比較例5]
2段目の重合反応器にプロピレンの代わりにブテン−1導入して共重合体(エチレン・ブテン−1共重合体)を重合させた。一段目の反応器の水素濃度を0.08モル%とし、二段目の反応器のH2/C2、C4/(C2+C4)を、それぞれ0.13モル比、0.52モル比とし、共重合体成分の量が30重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した。それ以外は、比較例1と同様に実施した。
【0061】
[比較例6]
市販のポリプロピレン単独重合体「PF−814」(サンアロマー(株)社製、MFR=3.0g/10分)を用いて、上記と同様にインフレーションフィルムを製造し評価した。
成形安定性が悪く、得られたものは波打った状態でシワの多いフィルムとなり、偏肉は評価できなかった。
結果を表1に示す。
【0063】
表1から、本発明の樹脂組成物は、優れたインフレーション成形性を有し、かつ偏肉の少ないフィルムを与えることが明らかである。