特開2017-52922(P2017-52922A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-52922(P2017-52922A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】自動車用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/02 20060101AFI20170224BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170224BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170224BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   C09J163/02
   C09J11/06
   C09J175/04
   C08G59/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-180240(P2015-180240)
(22)【出願日】2015年9月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591084207
【氏名又は名称】サンライズ・エム・エス・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】東向 優昇
(72)【発明者】
【氏名】横尾 嘉彦
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB09
4J036AD15
4J036DA01
4J036DC31
4J036DC40
4J036FA10
4J036FA12
4J036HA12
4J036JA06
4J040EC061
4J040EF281
4J040EF331
4J040HB15
4J040HB43
4J040HC10
4J040HC26
4J040KA16
4J040LA06
4J040MA02
4J040NA16
(57)【要約】

【課題】 硬化後において制振性に優れた自動車用接着剤を提供する。
【解決手段】 この自動車用接着剤は、(a)化1の構造式を持つ変性エポキシ樹脂、(b)ブロックウレタン樹脂、(c)化2の構造式を持つ反応性希釈剤及び(d)硬化剤を含有する。
【化1】

(式中、nは1〜10である。)
【化2】

(式中、Rは炭化水素残基又はカルボン酸残基である。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)、(b)、(c)及び(d)を含有してなる自動車用接着剤。
(a)化1の構造式を持つ変性エポキシ樹脂
【化1】
(式中、nは1〜10である。)
(b)ブロックウレタン樹脂
(c)化2又は化3の構造式を持つ反応性希釈剤
【化2】
(式中、Rは炭化水素残基又はカルボン酸残基である。)
【化3】
(式中、Rは炭化水素残基又はカルボン酸残基である。)
(d)硬化剤
【請求項2】
さらに、(e)充填材を含有してなる請求項1記載の自動車用接着剤。
【請求項3】
請求項1記載の自動車用接着剤を加熱し硬化させて被着体を接着させることを特徴とする接着方法。
【請求項4】
加熱し硬化させて得られる接着剤皮膜の損失係数tanδが、10Hz及び20℃の条件下で0.8以上である請求項3記載の接着剤方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボデーにおいて、アルミニウム板と鋼板等を接着するために用いる自動車用接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボデーに用いる接着剤として、エポキシ樹脂が用いられている。エポキシ樹脂は硬化後において、硬くて脆いという欠点があるため、柔軟性を付与するために種々の改良がなされている。たとえば、特許文献1には、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するため、ウレタン変性キレートエポキシ樹脂とブロックウレタン樹脂と硬化剤を含有する自動車用接着剤が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−239890号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者も、柔軟性を持つエポキシ系樹脂を開発するために種々研究を行っていたところ、予期せぬことに、制振性に優れたエポキシ系樹脂組成物を見出した。すなわち、特定のエポキシ系樹脂とブロックウレタン樹脂と特定の反応性希釈剤とを含む接着剤組成物が、硬化後において優れた制振性を持つことを見出し、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、下記の(a)、(b)、(c)及び(d)を含有してなる自動車用接着剤に関するものである。
(a)は、化1の構造式を持つ変性エポキシ樹脂である。ここで、化1は、
【化1】
なる構造式を持つものであり、式中のnは1〜10である。
(b)は、ブロックウレタン樹脂である。
(c)は、化2又は化3の一般式を持つ反応性希釈剤である。ここで、化2は、
【化2】
なる一般式を持つものであり、式中のRは炭化水素残基又はカルボン酸残基である。また、化3は、
【化3】
なる一般式を持つものであり、式中のRは炭化水素残基又はカルボン酸残基である。
(d)は、硬化剤である。
【0006】
本発明で用いる変性エポキシ樹脂は、化1なる構造式を持つものである。この変性エポキシ樹脂は、ビスフェノールAとトリエチレングリコールジビニルエーテルを共重合して得られた中間体のOH基をエポキシ化したものである。かかる変性エポキシ樹脂は、硬化後において、トリエチレングリコールジビニルエーテルに由来する基がソフトセグメントとなり、柔軟性に優れたものとなる。自動車用接着剤中における変性エポキシ樹脂の重量割合は、約20〜40重量%程度である。
【0007】
本発明で用いるブロックウレタン樹脂は、ウレタンプレポリマーの末端にあるイソシアネート基を活性水素化合物で保護したものである。したがって、常温において安定であり、加熱による活性水素化合物が脱落して、反応性のあるイソシアネート基によって硬化するものである。そして、硬化物はウレタンプレポリマーに由来する基がソフトセグメントとなり、柔軟性に優れたものとなる。自動車用接着剤中におけるブロックウレタン樹脂の重量割合は、約10〜30重量%程度である。
【0008】
本発明で用いる反応性希釈剤は、化2又は化3なる一般式を持つものである。化2は単官能の反応性希釈剤であり、化3は二官能の反応性希釈剤である。化2に属する化合物としては、ラウリルグシジリルエーテルや2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル又はp−第三ブチルフェノールグリシジルエーテル、p−クレゾールグリシジルエーテル或いは第二級ブチルフェニルグリシジルエーテル等の芳香族系グリシジルエーテルが用いられる。また、化3に属する化合物としては、脂肪族ジオールや脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエーテルが用いられる。化2に属する化合物は単官能であるため、硬化物の網目構造を緩和し、硬化物に柔軟性を与えることができる。化3に属する化合物は二官能であるため、硬化物の網目構造を促進し、硬化物に硬さを与えることができる。すなわち、反応性希釈剤は、硬化物に所望の柔軟性及び硬さを与えることができる。自動車用接着剤中における反応性希釈剤の重量割合は、約5〜10重量%程度である。反応性希釈剤の重量割合によって、自動車用接着剤の粘度を調整することができる。
【0009】
本発明で用いる硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として公知のものであれば、どのようなものでも用いることができる。特に、ジシアンジアミドやイミダゾール化合物等を用いることができる。自動車用接着剤中における硬化剤の重量割合は、約1〜10重量%程度である。
【0010】
本発明において、上記(a)〜(d)の化合物の他に、充填材や着色剤等の従来公知の任意の第三成分を含有していてもよい。特に、炭酸カルシウム等の充填材は、増量や粘度調整のために含有しておくのが好ましい。自動車用接着剤中における充填材の重量割合は、約20〜40重量%程度である。
【0011】
本発明に係る自動車用接着剤は、加熱硬化型のペースト状接着剤として提供される。したがって、アルミニウム板や鋼板等の被着体に塗布した後、100〜200℃程度に加熱して硬化させることにより、被着体を接着させることができる。本発明に係る自動車用接着剤が硬化した硬化皮膜は、制振性に優れており、20℃における損失係数tanδが0.8以上となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る自動車用接着剤を、自動車の組み立て工程で用いると、制振性の良好な接着剤皮膜でアルミニウム板や鋼板等の被着体を接着することができる。したがって、自動車の運行中における振動を良く吸収し、乗り心地の良好な自動車が得られるという効果を奏する。
【実施例】
【0013】
実施例1
下記化合物を均一に混合し、ペースト状の自動車用接着剤を得た。
変性エポキシ樹脂(化1の構造式を持つもので分子量が900) 70重量部
(DIC社製、商品名;EXA4850−150)
ブロックウレタン樹脂 60重量部
(ADEKA社製、商品名;QR9466)
反応性希釈剤(アルキルグリシジルエーテル) 20重量部
(ビイ・ティ・アイ・ジャパン社製、商品名;AED−9)
硬化剤(ジシアンジアミド) 8重量部
硬化剤(イミダゾール化合物) 1.5重量部
(四国化成社製、商品名;2MA−OK)
充填材(炭酸カルシウム及び酸化カルシウム) 68重量部
【0014】
実施例2
反応性希釈剤として、アルキルグリシジルエーテルで代えて、p−第三ブチルフェノールグリシジルエーテル(ADEKA社製、商品名;ED509)を用いた他は、実施例1と同様にして自動車用接着剤を得た。
【0015】
実施例3
反応性希釈剤として、アルキルグリシジルエーテルで代えて、p−クレゾールグリシジルエーテル(ADEKA社製、商品名;ED529)を用いた他は、実施例1と同様にして自動車用接着剤を得た。
【0016】
実施例4
反応性希釈剤として、アルキルグリシジルエーテルで代えて、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(日油社製、商品名;エピオールEH)を用いた他は、実施例1と同様にして自動車用接着剤を得た。
【0017】
実施例5
反応性希釈剤として、アルキルグリシジルエーテルで代えて、第二級ブチルフェニルグリシジルエーテル(日油社製、商品名;エピオールSB)を用いた他は、実施例1と同様にして自動車用接着剤を得た。
【0018】
実施例6
反応性希釈剤として、アルキルグリシジルエーテルで代えて、脂肪族ジカルボン酸のジグリシジルエーテル(岡村製油社製、商品名;IPU−22G)を用いた他は、実施例1と同様にして自動車用接着剤を得た。
【0019】
[制振性の評価]
実施例1〜6で得られた自動車用接着剤を、170℃で30分間加熱硬化させて、長さ30mm×幅4mm×厚さ1mmの試験片を作成した。この試験片を動的粘弾性測定装置(アイティ計測制御社製、商品名;DVA200)に引張モードで適用し、周波数10Hzにて、−40℃から100℃まで昇温速度5℃/minにて昇温し、20℃における損失係数tanδを測定した。その結果は、表1のとおりであった。
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
tanδ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 0.88
実施例2 0.76
実施例3 0.95
実施例4 0.86
実施例5 1.02
実施例4 0.80
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0020】
表1の結果から明らかなとおり、実施例に係る自動車用接着剤を用いて作成された皮膜の損失係数tanδの値は、0.8以上であり、制振性に優れていることが分かる。