特開2017-53052(P2017-53052A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-53052(P2017-53052A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   D01H 11/00 20060101AFI20170224BHJP
【FI】
   D01H11/00 E
   D01H11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-176529(P2015-176529)
(22)【出願日】2015年9月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀年
(72)【発明者】
【氏名】平尾 修
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA19
4L056BD12
4L056BG04
4L056BG16
4L056BG42
4L056BG52
4L056BG55
4L056EB17
4L056EB28
4L056EC27
4L056EC32
4L056EC36
4L056EC53
4L056EC85
(57)【要約】
【課題】複数のセクションダクトとメインダクトを接続している糸巻取機において、フィルタ部材に堆積する風綿を除去可能な構成を提供する。
【解決手段】精紡機は、紡績ユニットと、複数のセクションダクト31と、セクションブロア32と、フィルタ部材33と、メインダクト37と、メインブロアと、開閉部材(第1開閉部材65及び第2開閉部材66)と、支持部材(第1回動軸部材68及び第2回動軸部材69)と、を備える。開閉部材(第1開閉部材65及び第2開閉部材66)は、セクションブロア32及びメインブロアの少なくとも一方が発生させた吸引流82,82が作用する流路にセクションダクト31毎に設けられる。支持部材は、開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差により流路の開閉状態が変化するように開閉部材を開閉可能に支持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の巻取ユニットと、
前記巻取ユニットの少なくとも1つで発生した除去物質が流れる複数のセクションダクトと、
前記セクションダクト毎に設けられ、当該セクションダクトに吸引流を発生させて前記巻取ユニットから前記除去物質を移動させるセクション吸引装置と、
前記セクションダクトと前記セクション吸引装置の間に配置されたフィルタ部材と、
複数の前記セクションダクトと接続され、複数の前記セクションダクトから前記除去物質が流入するメインダクトと、
前記セクションダクトからの前記除去物質を移動させるための吸引流を前記メインダクトに発生させるメイン吸引装置と、
前記セクション吸引装置及び前記メイン吸引装置の少なくとも一方が発生させた吸引流が作用する流路に前記セクションダクト毎に設けられる開閉部材と、
吸引流の流れ方向において、前記開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差により前記流路の開閉状態が変化するように前記開閉部材を開閉可能に支持する支持部材と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記開閉部材は、前記セクションダクトと前記メインダクトとの間の第1接続開口の開閉状態を変化させる第1開閉部材であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記メインダクトには、前記第1接続開口よりも前記メイン吸引装置に近い位置に形成されたメインダクト開口と、前記メインダクト開口の開閉状態を変化させるダクト開口開閉部材とが設けられており、
前記セクション吸引装置が吸引流を発生させている状態において、前記ダクト開口開閉部材により前記メインダクト開口が開放されている場合、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を閉鎖することを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記セクション吸引装置が吸引流を発生させており、かつ、前記第1開閉部材が前記第1接続開口を閉鎖している状態において、前記ダクト開口開閉部材により前記メインダクト開口が閉鎖された場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を開放することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記セクション吸引装置及び前記メイン吸引装置が吸引流を発生させている状態において、前記メイン吸引装置の運転が停止した場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を閉鎖することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項2から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記セクション吸引装置が吸引流を発生させており、かつ、前記メイン吸引装置の運転が停止している状態において、前記メイン吸引装置の運転が開始した場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を開放することを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項2から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記第1接続開口の開閉状態を前記第1開閉部材とは独立して変化させる補助開閉部材を備え、
前記補助開閉部材は、前記吸引流の流れ方向において、前記補助開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差が生じても前記第1接続開口の前記開閉状態を維持することを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記開閉部材は、前記フィルタ部材と前記セクション吸引装置との間の第2接続開口の開閉状態を変化させる第2開閉部材であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取機であって、
前記セクション吸引装置の羽根の回転速度を低下させた場合、前記第2開閉部材は前記第2接続開口を閉鎖することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項9に記載の糸巻取機であって、
前記セクション吸引装置の羽根の回転速度を上昇させた場合に、前記第2開閉部材は前記第2接続開口を開放することを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
複数の前記セクションダクトのそれぞれに対して設けられ、前記フィルタ部材を通り抜けた吸引流が通過して外部に排出される排出口を有する排出ダクトを更に備え、
前記フィルタ部材は、前記セクションダクトと前記排出ダクトとの間に設けられており、
前記セクション吸引装置は、前記排出ダクトにおいて前記フィルタ部材と前記排出口との間に設けられていることを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、風綿及び糸屑等を除去する構成を備えた糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
糸巻取機等の繊維機械は繊維束及び/又は糸等を処理するため、稼動に伴って不要な風綿及び糸屑等(除去物質)が発生する。仮にこの除去物質を放置すれば、除去物質がパッケージ等に付着してパッケージの品質が低下したり、繊維機械自体の不具合を招いたりする。そのため、従来から、適宜の箇所に吸引流を作用させて除去物質を吸引除去可能な繊維機械が知られている。特許文献1と2は、この種の繊維機械を開示する。
【0003】
特許文献1は、所定数の紡績ユニット毎に設けられたセクションダクト及びセクションブロアと、セクションダクトで集められた風綿等をまとめて搬送するメインダクト及びメインブロアと、を備える繊維機械を開示する。セクションブロアとセクションダクトの間には、フィルタ部材が配置されている。フィルタ部材とセクションブロアの間には、流路を遮断可能な遮断部材が設けられている。遮断部材により流路を遮断することで、フィルタ部材に堆積していた風綿をメインブロアの吸引流によってメインダクトに搬送することができる。特許文献1では、遮断部材を動作させる方法として、作業者の操作による方法と、状況(風綿の堆積量又は時間)に応じて自動で行う方法と、が記載されている。
【0004】
特許文献2では、風綿を回収する複数のニューマボックスと、複数のニューマボックスで回収された風綿を回収する集綿機と、を備える装置が開示されている。ニューマボックスと集綿機とは主ダクトによって接続されている。ニューマボックスと主ダクトの間には、流路を開閉可能な自動開閉弁体が配置されている。自動開閉弁体は、通常は流路を閉鎖している。主ダクトのブロアを運転させた状態でニューマボックスの吸引ファンの運転を停止させることで、圧力差の影響を受けて自動開閉弁体が流路を開放し、ニューマボックスと主ダクトを接続する。特許文献2には、複数のニューマボックスと主ダクトを同時に接続した場合は1台の集綿機で風綿を回収できないと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−132112号公報
【特許文献2】特開昭61−26381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、作業者の操作で遮断部材を動作させる場合、作業者の作業量が増加する。遮断部材を自動で動作させる場合であっても、遮断部材を動作させる駆動源及び風綿の堆積量等を検出するセンサ等が必要となるため、コストが増加する。
【0007】
特許文献2は、複数のニューマボックスと主ダクトを同時に接続する構成ではない。
【0008】
本発明の主要な目的は、複数のセクションダクトとメインダクトを接続している糸巻取機において、フィルタ部材に堆積する風綿を除去可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の観点によれば、糸巻取機は、複数の巻取ユニットと、複数のセクションダクトと、セクション吸引装置と、フィルタ部材と、メインダクトと、メイン吸引装置と、開閉部材と、前記支持部材と、を備える。前記複数のセクションダクトのそれぞれには、前記巻取ユニットの少なくとも1つで発生した除去物質が流れる。前記セクション吸引装置は、前記セクションダクト毎に設けられ、当該セクションダクトに吸引流を発生させて前記巻取ユニットから前記除去物質を移動させる。前記フィルタ部材は、前記セクションダクトと前記セクション吸引装置の間に配置される。前記メインダクトは、複数の前記セクションダクトと接続され、複数の前記セクションダクトから前記除去物質が流入する。前記メイン吸引装置は、前記セクションダクトからの前記除去物質を移動させるための吸引流を前記メインダクトに発生させる。前記開閉部材は、前記セクション吸引装置及び前記メイン吸引装置の少なくとも一方が発生させた吸引流が作用する流路に前記セクションダクト毎に設けられる。前記支持部材は、吸引流の流れ方向において、前記開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差により前記流路の開閉状態が変化するように前記開閉部材を開閉可能に支持する。
【0010】
これにより、複数のセクション吸引装置とメイン吸引装置を接続している糸巻取機において、フィルタ部材に堆積した除去物質を、流路内の圧力差により自動的に除去することができる。
【0011】
前記の糸巻取機において、前記開閉部材は、前記セクションダクトと前記メインダクトとの間の第1接続開口の開閉状態を変化させる第1開閉部材である。
【0012】
これにより、セクションダクトとメインダクトの開閉状態を変化させることができる。
【0013】
前記の糸巻取機において、前記メインダクトには、前記第1接続開口よりも前記メイン吸引装置に近い位置に形成されたメインダクト開口と、前記メインダクト開口の開閉状態を変化させるダクト開口開閉部材とが設けられている。前記セクション吸引装置が吸引流を発生させている状態において、前記ダクト開口開閉部材により前記メインダクト開口が開放されている場合、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を閉鎖する。
【0014】
これにより、メインダクト開口が開放されている場合、メインダクト内(第1接続開口の下流側)の圧力が上昇して圧力差が変化することにより、第1接続開口が閉鎖する。その結果、セクション吸引装置が発生させた吸引流を効果的に活用できるので、セクションダクトとメインダクトとが接続されていない状態においても、例えば、巻取ユニットの運転を継続することができる。
【0015】
前記の糸巻取機において、前記セクション吸引装置が吸引流を発生させており、かつ、前記第1開閉部材が前記第1接続開口を閉鎖している状態において、前記ダクト開閉部材により前記メインダクト開口が閉鎖された場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を開放する。
【0016】
これにより、メインダクト開口が閉鎖されることでメインダクト内の圧力が低下して圧力差が変化することにより、第1接続開口が開放する。そのため、メインダクト内の吸引力が上昇したタイミングで自動的に第1接続開口を開放させて、メイン吸引装置が発生させた吸引流を利用することができる。
【0017】
前記の糸巻取機において、前記セクション吸引装置及び前記メイン吸引装置が吸引流を発生させている状態において、前記メイン吸引装置の運転が停止した場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を閉鎖する。
【0018】
これにより、メイン吸引装置の運転が停止することでメインダクト内の圧力が上昇して圧力差が変化することにより、第1接続開口が閉鎖する。そのため、メインダクト内の吸引力が低下したタイミングで自動的に第1接続開口を閉鎖させて、セクション吸引装置が発生させた吸引流を効果的に活用することができる。その結果、セクションダクトとメインダクトとが接続されていない状態においても、例えば、巻取ユニットの運転を継続することができる。
【0019】
前記の糸巻取機において、前記セクション吸引装置が吸引流を発生させており、かつ、前記メイン吸引装置の運転が停止している状態において、前記メイン吸引装置の運転が開始した場合に、前記第1開閉部材は前記第1接続開口を開放する。
【0020】
これにより、メイン吸引装置の運転が開始することでメインダクト内の圧力が低下して圧力差が変化するため、第1接続開口が開放する。そのため、メインダクト内の吸引力が上昇したタイミングで自動的に第1接続開口を開放させて、メイン吸引装置が発生させた吸引流を利用することができる。
【0021】
前記の糸巻取機は、前記第1接続開口の開閉状態を前記第1開閉部材とは独立して変化させる補助開閉部材を備える。前記補助開閉部材は、前記吸引流の流れ方向において、前記補助開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差が生じても前記第1接続開口の前記開閉状態を維持する。
【0022】
これにより、メンテナンス時等において第1接続開口を閉鎖し続けることができるので、セクション毎にメンテナンスを行うことができる。
【0023】
前記の糸巻取機において、前記開閉部材は、前記フィルタ部材と前記セクション吸引装置との間の第2接続開口の開閉状態を変化させる第2開閉部材である。
【0024】
これにより、フィルタ部材を挟んだ2つの領域間の圧力差により、フィルタ部材とセクション吸引装置の間の開閉状態を変化させることができる。
【0025】
前記の糸巻取機において、前記セクション吸引装置の羽根の回転速度を低下させた場合に、前記第2開閉部材は前記第2接続開口を閉鎖する。
【0026】
これにより、セクション吸引装置の羽根の回転速度が低下することで、フィルタ部材よりも下流側の圧力が上昇して圧力差が変化するため、第2接続開口が閉鎖される。第2接続開口が閉鎖されることで、除去物質がフィルタ部材に吸い付かなくなるため、メイン吸引装置が発生させた吸引流によって当該除去物質を除去することができる。
【0027】
前記の糸巻取機において、前記セクション吸引装置の羽根の回転速度を上昇させた場合に、前記第2開閉部材は前記第2接続開口を開放する。
【0028】
これにより、セクション吸引装置の羽根の回転速度が上昇することで、フィルタ部材よりも下流側の圧力が低下して圧力差が変化するため、第2接続開口が開放される。そのため、セクションダクト内の吸引力が上昇したタイミングで第2接続開口を開放させて、当該吸引流を利用することができる。
【0029】
前記の糸巻取機は、複数の前記セクションダクトのそれぞれに対して設けられ、前記フィルタ部材を通り抜けた吸引流が通過して外部に排出される排出口を有する排出ダクトを更に備える。前記フィルタ部材は、前記セクションダクトと前記排出ダクトとの間に設けられている。前記セクション吸引装置は、前記排出ダクトにおいて前記フィルタ部材と前記排出口との間に設けられている。
【0030】
これにより、セクション吸引装置が発生させた吸引流をより効率的にセクションダクトに作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の正面図。
図2】精紡機の縦断面図。
図3】風綿除去部の構成を示す正面断面図。
図4】セクションブロア及びメインブロアを運転させた状態(通常状態)の風綿除去部の様子を示す拡大断面図。
図5】セクションブロアを運転させ、メインブロアの運転を停止させた状態の風綿除去部の様子を示す拡大断面図。
図6】セクションブロア及びメインブロアを運転させ、フィルタ部材に風綿が大量に堆積した状態の風綿除去部の様子を示す拡大断面図。
図7】メインブロアの運転を継続しつつセクションブロアの運転を停止させ、フィルタ部材に堆積した風綿を除去している状態の風綿除去部の様子を示す拡大断面図。
図8】スライド開閉部材で第1接続開口を閉鎖した状態を示す風綿除去部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(糸巻取機)について、図面を参照して説明する。図1に示す糸巻取機としての精紡機1は、並べて配置された多数の紡績ユニット(巻取ユニット)2と、糸継台車3と、ブロアボックス4と、原動機ボックス5と、を備えている。
【0033】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置9と、風綿除去部30と、糸貯留装置12と、巻取装置13と、を備えている。図1及び図2の説明において「上流」及び「下流」とは、紡績時でのスライバ15、繊維束8及び紡績糸10の走行(搬送)方向における上流及び下流を意味する。
【0034】
ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ対16、サードローラ対17、ミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。ミドルローラ対19には、エプロンベルト18が各ローラに対して設けられている。ドラフト装置7は、図略のスライバケースから供給されるスライバ15を、所定の太さになるまでドラフトする。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。
【0035】
紡績装置9は、繊維束8を挿通させることが可能な旋回流発生室(図略)を備える。紡績装置9は、旋回流発生室の内部に図略のノズルから圧縮空気を噴射することにより、当該旋回流発生室内に旋回流を発生させる。紡績装置9は、旋回流によって繊維束8に撚りを与えて紡績糸10を生成する。
【0036】
紡績装置9では、紡績時に紡績糸10に撚り込まれなかった繊維(風綿)が発生する。風綿は、風綿除去部30が備える吸引パイプ91、セクションダクト31、及びメインダクト37を介して、図略の集綿ボックスへ搬送される。これにより、風綿が旋回流発生室内に滞留しなくなるため、旋回流の発生が阻害されなくなる。風綿除去部30の詳細な構成については後述する。
【0037】
紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ21と、当該糸貯留ローラ21を回転駆動するモータ25と、を備えている。
【0038】
糸貯留ローラ21は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ21は、外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送する。糸貯留装置12は、糸貯留ローラ21の外周面に紡績糸10を一時的に貯留することができるので、一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取速度(パッケージ45へ巻き取られる紡績糸10の速度)と、が何らかの理由により一致しない不具合(例えば紡績糸10の弛み等)を解消することができる。
【0039】
上流側ガイド23は、糸貯留ローラ21のやや上流側に配置されている。上流側ガイド23は、紡績糸10を糸貯留ローラ21の外周面に案内する。
【0040】
紡績装置9と糸貯留装置12との間には、ヤーンクリアラ52が設けられている。紡績装置9で生成された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前にヤーンクリアラ52を通過する。ヤーンクリアラ52は走行する紡績糸10の太さを監視する。ヤーンクリアラ52は、紡績糸10の糸欠陥を検出した場合、図示しないユニットコントローラへ糸欠陥検出信号を送信する。
【0041】
ユニットコントローラは、ヤーンクリアラ52から糸欠陥検出信号を受信すると、紡績装置9の駆動を停止させて紡績糸10を切断させ、巻取装置13による巻取り等を停止させる。ユニットコントローラは糸継台車3に制御信号を送り、糸継台車3を当該紡績ユニット2まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、糸継台車3による糸継ぎの完了後、紡績装置9を再び駆動し、巻取装置13による巻取りを再開させる。
【0042】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、糸継装置43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、を備えている。糸継台車3は、紡績ユニット2で糸切れ又は糸切断が発生すると、レール41上を走行して当該紡績ユニット2に対する作業位置で停止する。サクションパイプ44は、軸を中心に上方向に回動して、紡績装置9から送出される紡績糸10を捕捉し、軸を中心に下方向に回動することによって当該紡績糸10を糸継装置43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に下方向に回動して、パッケージ45から紡績糸10を捕捉し、軸を中心に上方向に回動することによって当該紡績糸10を糸継装置43へ案内する。糸継装置43は、案内された紡績糸10同士の糸継ぎを行う。
【0043】
巻取装置13は、クレードルアーム71と、巻取ドラム72と、トラバース装置75と、を備えている。クレードルアーム71は、支持70まわりに揺動可能に支持されており、紡績糸10を巻き取るためのボビン48を回転可能に支持することができる。巻取ドラム72は、前記ボビン48又はパッケージ45の外周面に接触した状態で回転する。トラバース装置75は、紡績糸10を案内可能なトラバースガイド76を備えている。巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動する。これにより、紡績糸10を綾振りしつつ、紡績糸10をパッケージ45に巻き取る。
【0044】
次に、図3を参照して、風綿除去部30の構成について説明する。風綿除去部30を説明するときにおいて「上流」及び「下流」とは、吸引流82,83が流れる方向における上流及び下流を意味する。
【0045】
風綿除去部30は、セクションダクト31と、セクションブロア(セクション吸引装置)32と、フィルタ部材33と、メインダクト37と、メインブロア(メイン吸引装置)38(図1)と、を備える。
【0046】
本実施形態の精紡機1には、図2に示す吸引パイプ91が紡績ユニット2毎に配置されている。吸引パイプ91の下流側には、セクションダクト31が接続されている。図3に示すように、1つのセクションダクト31には、所定数(本実施形態では20台)の紡績ユニット2の吸引パイプ91が接続されている。本実施形態では、1台の紡績ユニット2につき1本の吸引パイプ91が配置されるため、20本の吸引パイプ91が1つのセクションダクト31に接続されている。風綿除去部30は、このようなセクションダクト31を複数備えている。セクションダクト31の下流側は、メインダクト37及び排出ダクト34と接続されている。セクションダクト31とメインダクト37を接続する部分が第1接続開口61である。セクションダクト31と排出ダクト34を接続する部分が第2接続開口62である。第1接続開口61が開放されている状態において、セクションダクト31内には、メインブロア38により発生された吸引流も作用している。
【0047】
セクションブロア32は、排出ダクト34の内部であって、フィルタ部材33の近傍に配置されている。第2接続開口62は、セクションダクト31とセクションブロア32の間に設けられた開口部である。セクションブロア32を運転させることで、セクションダクト31内を負圧の状態にすることができる。セクションブロア32は、回転することで吸引流を発生させる羽根32aと、当該羽根32aを駆動するセクションブロア駆動部32bと、を備えている。セクションブロア駆動部32bは、電動モータである。セクションブロア駆動部32bの運転は、セクションブロア制御部39によって制御されている。セクションブロア制御部39は、精紡機1の全体の制御を行う制御装置に設けられていても良いし、セクション毎に設けられていても良い。セクションとは、所定数の紡績ユニット2の集まりである。各セクションで紡績ユニット2の数は同じであっても良いし、異なっていても良い。従って、セクションダクト31に接続される吸引パイプ91の数及び紡績ユニット2の数は、全てのセクションダクト31で同一であっても良いし、セクションダクト31毎に異なっていても良い。
【0048】
フィルタ部材33は、図3に示すように、セクションダクト31と排出ダクト34の間に配置されている。フィルタ部材33は、網状に構成されている。フィルタ部材33の網目は、除去物質81が通過しないように、かつ空気(後述の吸引流82)が通過できるように構成されている。
【0049】
フィルタ部材33とセクションブロア32の間には、第2開閉部材(開閉部材)66が配置されている。第2開閉部材66は、2枚の矩形状の板状部材から構成されている。それぞれの板材の一端部は、第2回動軸部材(支持部材)69によって回動可能(開閉可能)に支持されている。支持部材は、軸部材に限られず、排出ダクト34の内壁に対して設けられたヒンジ等であっても良い。この構成により、第2開閉部材66は、第2接続開口62の開閉状態(開放状態か閉鎖状態)を変化させることができる。第2接続開口62を開放状態にするときの第2開閉部材66の位置を開放位置とし、第2接続開口62を閉鎖状態にするときの第2開閉部材66の位置を閉鎖位置とする。本実施形態では、第2開閉部材66に付勢部材等は取り付けられていない。従って、第2開閉部材66は、セクションダクト31内と排出ダクト34内の圧力差(換言すれば第2開閉部材66の上流側と下流側の圧力差)の影響を受けて開閉する(詳細は後述)。第2開閉部材66に対して付勢部材を設け、第2開閉部材66に力が掛かっていない場合に第2開閉部材66が開放位置又は閉鎖位置に付勢されるようにしても良い。第2開閉部材66の形状は、どのような形状であっても良く、フィルタ部材33の形状に応じて変更しても良い。
【0050】
セクションブロア32は、フィルタ部材33を介してセクションダクト31側の空気を吸引し、当該セクションダクト31内及び吸引パイプ91の内部等に吸引流82を発生させることができる。吸引流82は、主に、紡績装置9で発生した除去物質81を、吸引パイプ91を介してセクションダクト31の下流側端部の近傍まで移動させるために用いられる。セクションブロア32は、セクションダクト31内に吸引流を発生させることが可能であれば、ブロア以外の吸引装置であっても良い。
【0051】
吸引流82の一部は、排出ダクト34の排出口34aを介して精紡機1の外部に排出される。残りの吸引流82は、第1接続開口61を通過して、除去物質81とともにメインダクト37へ流れる。セクションダクト31とメインダクト37の間には、第1開閉部材(開閉部材)65及びスライド開閉部材(補助開閉部材)67が配置されている。
【0052】
第1開閉部材65は、第1接続開口61の近傍に配置されている。第1開閉部材65は、矩形の板状部材であり、一端部(吸引流83が流れる方向の上流側端部)において、第1回動軸部材(支持部材)68によって回動可能(開閉可能)に支持されている。支持部材は、軸部材に限られず、メインダクト37の内壁に対して設けられたヒンジ等であっても良い。本実施形態では、第1開閉部材65に付勢部材等は取り付けられていない。従って、第1開閉部材65は、セクションダクト31内とメインダクト37内の圧力差(換言すれば第1開閉部材65の上流側と下流側の圧力差)の影響を受けて開閉する(詳細は後述)。第1開閉部材65が開閉することにより、第1接続開口61の開閉状態を、第1開閉部材65が閉鎖位置に位置して第1接続開口61が閉鎖された閉鎖状態と、第1開閉部材65が開放位置に位置して第1接続開口61が開放された開放状態と、に切替可能である。第1開閉部材65に力が掛かっていない場合に第1開閉部材65を開放位置又は閉鎖位置に付勢する付勢部材が設けられていても良い。第1開閉部材65の形状は、どのような形状であっても良く、第1接続開口61の形状に応じて変更しても良い。
【0053】
スライド開閉部材67は、第1接続開口61の近傍に配置されている。スライド開閉部材67は、矩形の板状部材であり、オペレータからの指示等によって動作する図略の駆動源の動力によって、メインダクト37の長手方向に沿ってスライド可能である。スライド開閉部材67は、スライドすることで、スライド開閉部材67が閉鎖位置に位置して第1接続開口61が閉鎖された閉鎖状態と、スライド開閉部材67が開放位置に位置して第1接続開口61が開放された開放状態と、を切替可能である。上記の駆動源を備える構成に代えて、スライド開閉部材67に操作部を設け、オペレータが操作部を操作することによってスライド開閉部材67がスライド可能であっても良い。この場合、操作部はスライド開閉部材67の一部であっても良いし、スライド開閉部材67とは別に設けられた部材であっても良い。
【0054】
メインダクト37の一端部の近傍であって前記ブロアボックス4内にはメインブロア38が配置されている(図1)。メインブロア38を運転させてメインダクト37の下流側を負圧にすることで、当該メインダクト37内に吸引流83が発生する。メインブロア38は、メインダクト37内に吸引流を発生させることが可能であれば、ブロア以外の吸引装置であっても良い。基本的には、メインブロア38は常時(紡績糸10の巻取実行中)運転されている。除去物質81は、この吸引流83により、メインダクト37に沿って集綿ボックスまで流される。メインダクト37には、メインダクト開口が形成されている。ブロアボックス4には、図1に示すように、メインダクト開口の開閉状態を変化させる開閉扉4aが設けられている。オペレータは、所定のタイミングで開閉扉(メインダクト開口開閉部材)4aを開けて(メインダクト開口を開放して)、集綿ボックスに集められた風綿を除去する。開閉扉4aが開けられることで、メインブロア38が発生させた吸引流83が外部に漏れるため、メインダクト37内の圧力が上昇し(大気圧に近づき)、メインブロア38の吸引力が低下する。メインダクト開口及び開閉扉4aの位置は任意であり、第1接続開口61よりもメインブロア38に近い位置に形成されるのであれば、ブロアボックス4よりも上流側に形成されていても良い。
【0055】
本実施形態では、排出ダクト34を介して排出される吸引流82の流量が、メインダクト37へ導入される吸引流82の流量よりも大きくなるように風綿除去部30が構成されている。これにより、メインブロア38が吸引する吸引流83の流量を減らすことができるので、当該メインブロア38の消費電力を低減することができる。しかし、排出ダクト34を介して排出される吸引流82の流量が、メインダクト37へ導入される吸引流82の流量よりも小さくても良い。
【0056】
このように、本実施形態では、吸引流82及び吸引流83の両方により、除去物質81を吸引して除去するため、基本的には全てのセクションにおいて、第1接続開口61は開放状態である。従って、除去物質81をセクションダクト31からメインダクト37へ移動させる処理を、複数のセクションで同時に行うことができる。
【0057】
次に、図4から図8までを参照して、第1開閉部材65、第2開閉部材66、及びスライド開閉部材67の開閉について説明する。
【0058】
図4には、紡績糸10の巻取りを実行中の状態(通常状態)の風綿除去部30の様子が示されている。通常状態では、セクションブロア32及びメインブロア38は運転中である。セクションブロア32を運転させることで、セクションダクト31内よりも排出ダクト34内(より具体的には、排出ダクト34内のうち、フィルタ部材33とセクションブロア32との間の領域)の圧力が低くなるため、その圧力差の影響を受けて第2開閉部材66が開放位置に配置される。これにより、セクションダクト31内に吸引流82を発生させることができる。
【0059】
メインブロア38を運転させることで、メインダクト37内の圧力が低下する(メインダクト37内に吸引流83が発生する)。メインダクト37内の圧力はセクションダクト31内の圧力よりも小さいため、この圧力差の影響を受けて第1開閉部材65が開放位置に配置される。その結果、第1接続開口61が開放状態となり、メインブロア38が発生させた吸引流83をセクションダクト31にも発生させることができる。
【0060】
このように、通常状態では、圧力差の影響を受けて自動的に第1接続開口61及び第1開閉部材65が開放位置に配置されることで、セクションブロア32が発生させた吸引流82及びメインブロア38が発生させた吸引流83によって、除去物質81を吸引してブロアボックス4に回収することができる。
【0061】
次に、通常状態からセクションブロア32の運転を継続しつつ、メインブロア38の運転を停止した場合について図5を参照して説明する。メインブロア38の運転を停止する場合とは、メインブロア38のメンテナンスを行う場合又はメインブロア38が故障した場合等である。
【0062】
セクションブロア32の運転は継続しているので、図5に示すように、第2開閉部材66は開放位置に位置したままである。一方、メインブロア38の運転を停止することでメインダクト37内の圧力が上昇する(吸引流83が発生しなくなる)。従って、セクションダクト31内の圧力よりもメインダクト37内の圧力の方が大きくなり(圧力差の関係が逆転し)、第1開閉部材65は閉鎖位置に切り替えられる。その結果、第1接続開口61は閉鎖状態となる。
【0063】
メインブロア38の運転を停止した場合、吸引流83が存在しないため、第1接続開口61を閉鎖状態に切り替えることで、吸引流82を効果的にセクションダクト31に作用させることができる。このように、第1開閉部材65を圧力差で開閉可能に構成することで、メインブロア38の運転が停止しても、セクションダクト31内の吸引力の低下を自動的に最小限に抑えることができる。
【0064】
上記では、メインブロア38の運転が完全に停止した場合を想定して説明した。しかし、メインブロア38の運転が完全に停止しない場合であっても、メインダクト37内の吸引力が所定以上低くなるときは、第1開閉部材65が閉鎖状態に切り替えられる。例えば、オペレータがブロアボックス4に回収された風綿を除去するために開閉扉4aを開放させた場合、第1開閉部材65が閉鎖状態に切り替えられる可能性がある。
【0065】
メンテナンス等が終了し、メインブロア38の運転が再開した場合、セクションダクト31内とメインダクト37内の圧力差が元に戻るため、第1開閉部材65を開放位置に移動させることができる。このように、第1開閉部材65を圧力差で開閉可能に構成することで、駆動源を用いることなく、メインブロア38のメンテナンス中の吸引力の低下を抑えることができる。開閉扉4aを開放させた後に閉鎖させた場合も同様に、セクションダクト31内とメインダクト37内の圧力差が元に戻るため、第1開閉部材65を開放位置に移動させることができる。
【0066】
次に、通常状態からメインブロア38の運転を継続しつつ、セクションブロア32の運転を停止した場合について図6及び図7を参照して説明する。
【0067】
セクションダクト31内においてフィルタ部材33上では吸引流82の一部が当該フィルタ部材33に垂直な方向(セクションブロア32側)に流れるため、除去物質81は、フィルタ部材33に押し付けられるように力を受ける。従って、除去物質81は、フィルタ部材33に引っ掛かり易くなり、除去物質81がフィルタ部材33上に堆積し易くなってしまう。その結果、通常状態でセクションブロア32の運転を継続すると、図6に示すように除去物質81がフィルタ部材33に堆積することがある。
【0068】
この堆積した除去物質81を除去するために、本実施形態ではセクションブロア32の運転を一時的に停止する。セクションブロア32の運転を完全に停止せずに羽根32aの回転速度を所定速度以下にすれば、同様の効果が得られる。セクションブロア32の運転を停止することで、セクションダクト31内の圧力が排出ダクト34内(より具体的には、排出ダクト34内のうち、フィルタ部材33とセクションブロア32(羽根32a)との間の領域)の圧力より小さくなり、第2開閉部材66は閉鎖位置に移動する。その結果、第2接続開口62は閉鎖状態に切り替えられる。
【0069】
第2接続開口62が閉鎖状態に切り替えられることで、除去物質81をフィルタ部材33に押し付ける力が働かなくなる。メインブロア38が発生させた吸引流83は、セクションダクト31内にも作用するため、吸引流83によって除去物質81をメインダクト37へ移動させることができる(図7を参照)。このように、セクションブロア32の運転を停止させたり、羽根32aの回転速度を低下させたりすることで、フィルタ部材33に堆積した除去物質81を効果的に除去することができる。
【0070】
フィルタ部材33に堆積した除去物質81を除去した後に、セクションブロア32の羽根32aの回転速度を上昇させることで、セクションダクト31内と排出ダクト34内(より具体的には、排出ダクト34内のうち、フィルタ部材33とセクションブロア32との間の領域)の圧力差が元に戻るため、第2開閉部材66を開放位置に移動させることができる。このように、第2開閉部材66を圧力差で開閉可能に構成することで、駆動源を用いることなく、フィルタ部材33に堆積した除去物質81を除去できる。
【0071】
紡績糸10の生成及び/又は巻取りを行うことで除去物質81はフィルタ部材33に堆積していくことがあるため、セクションブロア32の運転を停止させたり羽根32aの回転速度を低下させたりする処理は、所定のタイミングで行うことが好ましい。このタイミングは、所定時間毎でも良いし、図略の圧力センサの検出結果に応じて決定しても良い。圧力センサを用いる場合、例えば、フィルタ部材33とセクションブロア32との間に圧力センサを設置しても良い。この場合、除去物質81の堆積に伴って排出ダクト34内(より具体的には、排出ダクト34内のうち、フィルタ部材33とセクションブロア32の間の領域)の負圧が強くなるため、検出した圧力値に基づいて除去物質81の堆積量を推定できる。セクションダクト31内及び/又は吸引パイプ91内に圧力センサを設置しても良い。この場合、除去物質81の堆積に伴って検出する圧力が上昇する(換言すると、負圧が弱くなる)ため、検出した圧力値に基づいて除去物質81の堆積量を推定できる。
【0072】
次に、図8を参照して、スライド開閉部材67を動作させる場合について図8を参照して説明する。
【0073】
第1開閉部材65は、圧力差の影響を受けて開閉するため、例えばセクションダクト31又は排出ダクト34(セクションブロア32)等を取り外した場合、第1開閉部材65は開放位置に移動して開放位置で維持される。この場合、メインダクト37内の吸引力が弱くなる。
【0074】
セクションダクト31又は排出ダクト34等を取り外す場合は、上記のようなメインダクト37内の吸引力の低下を回避するために、スライド開閉部材67を先に閉鎖位置に移動させる。スライド開閉部材67は、オペレータの操作力又は駆動源によって位置が切り替わるため、第1開閉部材65が開放位置に移動する程度の圧力差が生じてもスライド開閉部材67は閉鎖位置で維持される(第1接続開口61の開閉状態が維持される)。従って、セクションダクト31又は排出ダクト34等を取り外した場合であっても、メインダクト37内の吸引力が弱くならない。その結果、紡績を10の生成及び/又は巻取りを行いつつ、セクションダクト31又は排出ダクト34等のメンテナンスを行うことができる。
【0075】
本実施形態は、第1開閉部材65に加えてスライド開閉部材67を備える構成に関する。この構成に代えて、第1開閉部材65を少なくとも閉鎖位置でロックする機構を備えても良い。第1開閉部材65を閉鎖位置でロックすることで、スライド開閉部材67がなくても、紡績糸10の生成及び/又は巻取りを行いつつ、セクションダクト31又は排出ダクト34等のメンテナンスをセクション毎に行うことができる。複数のセクションのスライド開閉部材67の開閉状態を一斉に切り替える切替部を設けてもよい。
【0076】
以上に説明したように、精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、複数のセクションダクト31と、複数のセクションブロア32と、複数のフィルタ部材33と、メインダクト37と、メインブロア38と、少なくとも1つの開閉部材(第1開閉部材65及び第2開閉部材66)と、支持部材(第1回動軸部材68及び第2回動軸部材69)と、を備える。複数のセクションダクト31のそれぞれは、少なくとも1つの紡績ユニット2毎に配置され、当該紡績ユニット2で発生した除去物質81がセクションダクト31内を流れる。セクションブロア32は、セクションダクト31毎に設けられ、当該セクションダクト31に吸引流82を発生させて除去物質81を移動させる。フィルタ部材33は、セクションダクト31とセクションブロア32の間に配置される。メインダクト37は、複数のセクションダクト31と接続され、複数のセクションダクト31からの吸引流82及び除去物質81がメインダクト37内に流入する。メインブロア38は、除去物質81を移動させるための吸引流83をメインダクト37に発生させる。開閉部材は、セクションブロア32が発生させた吸引流82及び/又はメインブロア38が発生させた82が作用する流路にセクションダクト31毎に設けられる。支持部材は、開閉部材の上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差により流路の開閉状態が変化するように開閉部材を開閉可能に支持する。
【0077】
これにより、複数のセクションブロア32とメインブロア38を同時に接続している精紡機1において、フィルタ部材33に堆積している除去物質81を、流路内の圧力差により(即ち、開閉部材を駆動する駆動源等を用いることなく)自動的に除去することができる。
【0078】
精紡機1において、メインダクト37には、第1接続開口61よりもメインブロア38に近い位置に形成されたメインダクト開口と、メインダクト開口の開閉状態を変化させる開閉扉4aとが設けられている。セクションブロア32が吸引流82を発生させている状態において、メインダクト開口が開放されている場合、第1開閉部材65は圧力差の影響を受けて第1接続開口61を閉鎖する。
【0079】
これにより、メインダクト開口が開放されている場合、メインダクト37内の圧力が上昇して圧力差が変化することにより、第1接続開口61が閉鎖する。その結果、セクションブロア32が発生させた吸引流82を効果的に活用できるので、セクションダクト31とメインダクト37とが接続されていない状態においても、例えば、紡績ユニット2の運転を継続することができる。
【0080】
精紡機1において、セクションブロア32が吸引流82を発生させており、かつ、第1開閉部材65が第1接続開口61を閉鎖している状態において、開閉扉4aによりメインダクト開口が閉鎖された場合に、第1開閉部材65は圧力差の影響を受けて第1接続開口61を開放する。
【0081】
これにより、メインダクト開口が閉鎖されることでメインダクト37内の圧力が低下して圧力差が変化することにより、第1接続開口61が開放する。これにより、メインダクト37内の吸引力が上昇したタイミングで自動的に第1接続開口61を開放させて、メインブロア38が発生させた吸引流83を利用することができる。
【0082】
精紡機1において、セクションブロア32が吸引流82を発生させており,かつ、メインブロア38が吸引流83を発生させている状態において、メインブロア38の運転が停止した場合に、第1開閉部材65は圧力差の影響を受けて第1接続開口61を閉鎖する。
【0083】
これにより、メインダクト37内の吸引力が低下したタイミングで自動的に第1接続開口61を閉鎖させて、セクションブロア32が発生させた吸引流82を効果的に活用することができる。
【0084】
精紡機1において、セクションブロア32が吸引流82を発生させており、かつ、メインブロア38の運転が停止している状態において、メインブロア38の運転が開始した場合に、第1開閉部材65は圧力差の影響を受けて第1接続開口61を開放する。
【0085】
これにより、メインブロア38の運転が開始することでメインダクト37内の圧力が低下して圧力差が変化するため、第1接続開口61が開放する。そのため、メインダクト37内の吸引力が上昇したタイミングで自動的に第1接続開口61を開放させて、メインブロア38が発生させた吸引流83を利用することができる。
【0086】
精紡機1において、セクションブロア32の羽根32aの回転速度を低下させた場合に、第2開閉部材66は圧力差の影響を受けて第2接続開口62を閉鎖する。
【0087】
これにより、セクションブロア32の羽根32aの回転速度が低下することで、フィルタ部材33よりも下流側の圧力が上昇して圧力差が変化するため、第2接続開口62が閉鎖される。第2接続開口62が閉鎖されることで、除去物質81がフィルタ部材33に吸い付かなくなるため、メインブロア38が発生させた吸引流83によって当該除去物質81を除去することができる。
【0088】
精紡機1において、セクションブロア32の羽根32aの回転速度を上昇させた場合に、第2開閉部材66は圧力差の影響を受けて第2接続開口62を開放する。
【0089】
これにより、セクションブロア32の羽根32aの回転速度が上昇することで、フィルタ部材33よりも下流側の圧力が低下して圧力差が変化するため、第2接続開口62が開放される。そのため、セクションダクト31内の吸引力が上昇したタイミングで第2接続開口62を開放させて、当該吸引流82を利用することができる。
【0090】
精紡機1は、第1接続開口61の開閉状態を第1開閉部材65とは独立して変化させるスライド開閉部材67を備える。スライド開閉部材67は、上流側の圧力と下流側の圧力との圧力差が生じても第1接続開口61の開閉状態を維持する。
【0091】
これにより、メンテナンス時等において第1接続開口61を閉鎖し続けることができるので、メインブロア38が発生させた吸引流83が漏れることを防止できる。従って、セクション毎にメンテナンスを行うことができる。
【0092】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0093】
上記実施形態では、メインダクト37内の圧力がセクションダクト31内の圧力よりも小さい場合、第1開閉部材65が開放位置に位置されると説明した。しかし、第1開閉部材65が、付勢部材による付勢又は自重等によって閉鎖位置に位置するように力を受けている場合、メインダクト37内の圧力がセクションダクト31内の圧力よりも高くても第1開閉部材65が開放位置に位置することがある。従って、上記実施形態で説明した圧力の大小関係は一例である。また、第1開閉部材65が開放位置に位置するときだけでなく、第1開閉部材65が閉鎖位置に位置するとき、第2開閉部材66が開放位置又は閉鎖位置に位置するときも同様に、上記実施形態で説明した圧力の大小関係は一例である。
【0094】
上記実施形態では、第1開閉部材65が1枚の板状部材で構成されており、第2開閉部材66が2枚の板状部材で構成されている。この構成は、一例である。第1開閉部材65は、2枚の板状部材で構成されていても良い。第2開閉部材66は、1枚の板状部材で構成されていても良い。上記実施形態では、閉鎖状態において、第1接続開口61及び第2接続開口62が完全に閉鎖されているが、ある程度の隙間があっても「閉鎖状態」に該当するものとする。
【0095】
1つのセクションダクト31に接続される紡績ユニット2の台数を20台とすることに代えて、1台〜19台又は21台以上としても良い。
【0096】
上記実施形態では、全てのセクションに第1開閉部材65、第2開閉部材66、及びスライド開閉部材67が設けられているが、少なくとも1つのセクションにおいて、3つの開閉部材のうち少なくとも1つが設けられていなくても良い。
【0097】
フィルタ部材33が配置される位置及び角度は特に限定されない。本実施形態においてフィルタ部材33は、傾斜するように(詳細には吸引流が流れる方向の下流に向かうに従って第1接続開口61に近づくように)配置されている。しかし、例えば、図3において、フィルタ部材33の長手方向がセクションダクト31の長手方向と一致するように、フィルタ部材33が配置されていても良い。
【0098】
吸引パイプ91以外にも、ドラフト装置7のドラフトローラに付着した風綿等が吸引されて搬送される吸引パイプがセクションダクト31に接続されていても良い。紡績ユニット2では、糸屑等を吸引するための吸引口を紡績装置9の下流側に設けられていても良く、当該吸引口を有する吸引パイプがセクションダクト31に接続されていても良い。更には、紡績ユニット2毎に糸継装置を備える精績機では、糸継ぎ時に発生する糸屑等を吸引して搬送するパイプがセクションダクト31に接続されていても良い。
【0099】
紡績ユニット2は、糸貯留装置12により紡績装置9から紡績糸10を引き出しているが、この構成に限られない。例えば、紡績ユニットは、デリベリローラとニップローラとにより紡績装置9から紡績糸10を引き出し、その後、下流側に設けた糸貯留装置12又はスラックチューブにより紡績糸10を貯留するように構成されていても良い。デリベリローラとニップローラとにより紡績装置9から紡績糸10を引き出すように構成した場合は、糸貯留装置12を省略することもできる。
【0100】
本発明の構成は上記のような精紡機に限られず、例えばオープンエンド精紡機、自動ワインダ、撚糸機、合糸機等にも適用することができる。本発明の構成を例えば自動ワインダに適用する場合、糸継ぎ時に発生する糸屑の除去に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット(巻取ユニット)
30 風綿除去部
31 セクションダクト
32 セクションブロア(セクション吸引装置)
33 フィルタ部材
37 メインダクト
38 メインブロア(メイン吸引装置)
61 第1接続開口
62 第2接続開口
65 第1開閉部材(開閉部材)
66 第2開閉部材(開閉部材)
67 スライド開閉部材(補助開閉部材)
68 第1回動軸部材(支持部材)
69 第2回動軸部材(支持部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8