【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の装置は台車にジャッキ機構が内蔵されているという複雑な構造となっている。
【0006】
また、内蔵されているジャッキ機構は主に側溝の天井面を持ち上げるものとなっている。従って、特許文献1〜4に記載の装置は、使用の際、以下に示すような様々な課題があるものとなっている。
1)装置を側溝内部の所定の位置、すなわちジャッキが側面の天井面を確実に持ち上げることができる位置に配置する必要がある。
2)天井面を持ち上げた際にジャッキの受皿のみで側溝の荷重を支えることになることから受皿を当てる天井面の位置を十分に考慮しないと。持ち上げた際にバランスを崩して側溝を転倒させてしまう恐れがある。
3)ジャッキ機構が2つある装置の場合には両方の受皿が天井面に当たるように装置の配置場所を十分に考慮しないと、持ち上げた際にバランスを崩して側溝を転倒させてしまう可能性が極めて高くなる。
【0007】
今般、本願発明者らは鋭意検討を行った結果、簡素な構成でありながら、側溝の高さ調整を安全かつ容易に行うことができる側溝施工用治具を開発するに至った。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、簡素な構成でありながら、側溝の高さ調整を安全かつ容易に行うことができる側溝施工用治具の提供を目的とする。
また、簡素な構成で側溝の移動作業を行うことができる側溝施工用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る側溝施工用治具は、側溝を施工するための治具であって、横長状の主部材と、主部材の両端部に設けた脚部を備え、脚部には外側に向けて張り出した板状部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る側溝施工用治具は、主部材の長さが、側溝の幅方向の内寸よりも短いことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る側溝施工用治具は、板状部材の両先端部間の長さが、側溝の幅方向の寸法よりも長いことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る側溝施工用治具は、主部材の両端部の角部のうち、少なくとも対角線上の角部が上面視において面取りされていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る側溝施工用治具は、部材の下面に、ジャッキの受皿を当接させるための当接部を少なくとも1つ設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6に係る側溝施工用治具は、脚部に、補強リブを設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7に係る側溝の移動方法は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の側溝施工用治具を側溝内部の前方および後方に配置する工程と、側溝施工用治具の主部材の下部に車輪付きジャッキの受皿を配置し、車輪付きジャッキをジャッキアップする工程と、車輪付きジャッキの車輪を用いて側溝を移動させる工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る側溝施工用治具によれば、横長状の主部材と主部材の両端部に設けた脚部を設け、さらに脚部には外側に向けて張り出した板状部材を設けることによって、側溝の高さ調整を安全に行うことができる。
また、側溝側壁の底部を板状部材に乗せて昇降することから側溝を大きく持ち上げる必要がなく、その結果高さ調整時にバランスを崩すような不具合が生じた場合でも大きな事故に発展することなく安全に施工を行うことができる。
さらに、高さ調整を従前のような複雑な機構(ジャッキ機構や台車機構)を採用することなく、市販のジャッキを用いて行うという簡素な構成で行うことができる。その結果、それほど熟練度が高くない作業者であっても安全かつ正確に側溝の施工を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項2に係る側溝施工用治具によれば、主部材の長さを側溝の幅方向の内寸よりも短くすることによって、側溝施工用治具を側溝の内部に持ち込み易くすることができる。
また、側溝施工用治具を側溝の内部に差し入れることができることから、人間が内部に入れないような内寸の側溝でも側溝施工用治具と市販のジャッキ(ジャッキの受皿部分)を側溝の内部に差し入れることができれば安全かつ容易に側溝の高さ調整を行うことができる。
【0018】
本発明の請求項3に係る側溝施工用治具によれば、板状部材の両先端部間の長さを側溝の幅方向の寸法よりも長くすることによって確実に側溝を持ち上げることができ、側溝の高さ調整をより容易に行うことができる。
【0019】
本発明の請求項4に係る側溝施工用治具によれば、主部材の両端部の角部のうち、少なくとも対角線上の角部が上面視において面取りすることによって、側溝施工用治具を側溝の中に持ち込み易くすることができる。
また、側溝施工用治具を側溝の中に持ち込んだ後、主部材を側溝の幅方向にセットする際(板状部材を側溝の側壁底部にセットする際)においても側溝の内壁面に角部が接触することなく、スムースにセットを行うことができる。また、作業後においてもスムースに取り外して回収を行うことができる。
さらに、角部を面取りしていることから、主部材の長さを側溝の幅方向の内寸近くまで伸ばすことができる。すなわち、主部材を側溝の幅方向にセットしたときに、脚部と板状部材の付け根部分(最も加重の加わる部分)が側溝の側壁の底部に位置する長さまで主部材の長さを伸ばすことができる。その結果、側溝を持ち上げる際の側溝施工用治具のたわみをより少なくすることができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る側溝施工用治具によれば、主部材の下部に当接部を少なくとも1つ設けることによって、より安全かつ効率的に側溝の高さ調整作業を行うことができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る側溝施工用治具によれば、脚部に補強リブを設けることによって、側溝を持ち上げる際の側溝施工用治具のたわみをより少なくすることができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る側溝施工用治具によれば、本発明に係る側溝施工用治具を側溝の前後にそれぞれ1つ設置して、各側溝施工用治具を市販のジャッキを用いて持ち上げてジャッキの車輪を用いることよって、簡素な構成で側溝の移動作業を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明に係る側溝施工用治具の一の実施形態を示す斜視図であり、
図2は
図1の側溝施工用治具を別の方向から見た状態を示す斜視図であり、
図3は
図1の側溝施工用治具の脚部付近を拡大した状態を示す拡大斜視図であり、
図4は
図1の側溝施工用治具の正面図および平面図である。
【0025】
まず、本発明に係る側溝施工用治具の構成を
図1に基づいて説明する。
図1〜4に示すとおり、本発明に係る側溝施工用治具1は、横長状の主部材2と、係る主部材2の両端部に設けた脚部3と、係る脚部3に設けた板状部材4を主要部品として構成されている。
次に、各構成要件について説明する。
【0026】
(主部材)
主部材2は側溝が乗せられることになる板状部材4や板状部材4が受ける側溝の荷重を受け止める脚部3を支持するものであり、本発明に係る側溝施工用治具1のいわば「背骨」の役目を果たすものである。
また、主部材2の下面には使用時にジャッキの受け皿を当接させるための当接部5が少なくとも1箇所設けられている構造となっている。なお、
図1に示す主部材2は主部材2の下面が平面となっていることから下面の全面が当接部5であるという構造となっている。
【0027】
さらに、本発明に係る側溝施工用治具1は、後記する使用時の動作において記載するように、側溝の内部に側溝施工用治具1を持ち込み、その後板状部材4を側溝の側壁の底部に滑り込ませるように回転してセットする。従って、側溝の内部において回転動作を容易にするために、主部材2の両端の角部6については上面視において面取り7をすることが好ましい。
なお、面取りの形態については特に限定されないが、側溝の内部において回転動作を容易にするために少なくとも対角線上の角部6を面取り7(
図1〜4においては7a、7b)することが好ましい。
また、面取りの形状についても特に限定されないが、例えば
図4(a)に示すような角部6を上面視において45°カットしたような形状とすれば、主部材2の長さを側溝の幅方向の内寸ぎりぎりにまでとすることができることになるので好ましい。すなわち、主部材2の長さを側溝の幅方向の内寸ぎりぎりにまでとすることができれば、後記する
図5(a)〜(c)に示すように主部材2を回転して幅方向にセットした際に脚部3と板状部材4の付け根部分(最も加重の加わる部分)をより側溝の側壁の底部の近くに持っていくことができることになり、その結果、側溝を持ち上げる際の側溝施工用治具1のたわみをより少なくすることができるのである。
【0028】
主部材2の長さについては、本発明に係る側溝施工用治具1が側溝の内部において使用されるものであることから、側溝の幅方向の内寸よりも短いことが必要となる。ここで、側溝はJIS規格などで寸法が決まっている複数種のものが使用されているのが現状であることから、本発明に係る側溝施工用治具についてもこれらの側溝の寸法に合わせて複数種のものを準備しておけば大部分の側溝に対応することができる。具体的には、主部材2の長さを側溝の内寸よりも3〜8cm短くすることが好ましく、その中でも内寸よりも4〜5cm短くすることが好ましい。
【0029】
主部材2の形状としては側溝の荷重を受ける脚部3や板状部材4を支持できる横長状の形状のものであれば特に限定されるものではなく、板状、棒状など各種の形状のものを採用することができる。そしてその中でも、側溝の荷重がかかった際に脚部3や板状部材4を変形させることなく支持することができることから、
図1〜3に示すように断面視においてI状である部材を用いることが好ましい。なお、
図1〜3に示す側溝施工用治具1の主部材2はいわゆるH鋼を加工したものを用いている。
【0030】
主部材2の材質についても特に限定されるものではないが、側溝の荷重がかかった際に脚部3や板状部材4を変形させることなく支持しなければならないことから、金属材料を用いることが好ましい。
【0031】
(脚部、板状部材)
脚部3は側溝の荷重を受け止めるものであり、端部には側溝が乗せられることになる板状部材4が外側に向けて張り出すように設けられている構造となっている。板状部材4は側溝の側壁の底部を載せるためのものであり、薄い板状構造となっている。
また、
図1に示すように脚部3と主部材2の連結部分には、脚部3および板状部材4に側溝の荷重がかかった際に脚部3が内側(
図1〜3の矢印の方向)に倒れ込まないようにするための補強リブ8が設けられている。
【0032】
脚部3の形状としては側溝の荷重を受けとめることができるものであれば特に限定されるものではなく、板状、棒状など各種の形状のものを採用することができる。そしてその中でも、側溝の荷重がかかった際の変形を防止することができることから、
図1〜3に示すように断面視においてV状とすることが好ましい。
【0033】
板状部材4の形状については特に限定されるものではないが、側溝の荷重を受け止めることができるようにするためにある程度の厚みが必要となる一方、あまりにも厚くなりすぎると板状部材4を側溝の側壁の底部に滑り込ませることが困難となるため、5〜15mmとすることが好ましく、その中でも8〜10mmとすることが好ましい。なお、板状部材4の大きさについては特に限定されるものではなく施工する側溝の大きさ(特に側溝の側壁の幅)に応じて適宜決定することができる。
【0034】
脚部3および板状部材4の材質は特に限定されるものではないが、重いものでは1tを超える側溝の荷重を受けとめる必要があることから金属材料(より好ましくは鋼鉄製)を用いることが好ましい。
【0035】
次に、上記のように構成された側溝施工用治具の動作および作用を自由勾配側溝の施工を例に説明する。
図5は
図1の側溝施工用治具の使用手順を示す模式図(側溝の内部を上方向から見た際の使用手順を示す模式図)であり、
図6は
図1の側溝施工用治具の使用状態を示す模式図である。
【0036】
まず、以下に示す、通常の側溝施工作業を行う、
1)側溝Sの施工を行う現場の地面をバックホウなどを用いて床掘りを行う。
2)床掘りをした地面に基礎となる砕石を敷き詰め、締固めを行う。
3)締固めの終わった地面に基礎コンクリート用の型枠を設置し、設計の勾配を考慮して基礎コンクリートの打設を行う。なおこの際、後記するように側溝Sを配置した後、本発明に係る側溝施工用治具を用いて側溝Sの高さ調整を行うことから、設計の高さよりも若干低くして(具体的には後記するスペーサー9の厚み+数mm程度低く)基礎コンクリートの打設を行う。
4)側溝Sをクレーン等を用いて吊り上げ、施工したい箇所に配置を行う。なおこの際、後記するように側溝Sの側壁の底部10に本発明に係る側溝施工用治具の板状部材4を挿入して側溝Sの高さ調整を行うことから、基礎コンクリート上の側溝Sの側壁の底面と接する位置にスペーサー9を数箇所配置し、係るスペーサー9の上に側溝Sを配置するようにする。
【0037】
次に、側溝Sの設計高さを実現するために、配置した側溝Sの高さからどの程度の高さを調整しなければならないか(具体的には左右、前後において調整しなければならない高さ)を測量する。
【0038】
次に、
図5(a)に示すように、本発明に係る側溝施工用治具1を側溝Sの内部に持ち込む。
次に、
図5(b)、(c)に示すように、板状部材4が側溝Sの側壁の底部10の下になるように側溝施工用治具1を側溝Sの内部で回転させる。ここで、側溝施工用治具1は主部材2の両端の角部6が面取り7されていることから、
図5(b)に示すように主部材2の長さを側溝Sの幅方向の内寸ぎりぎりにまでとすることができ、その結果、主部材2を回転して幅方向にセットした際、
図5(c)に示すように脚部3と板状部材4の付け根部分(最も加重の加わる部分)を側溝Sの側壁の底部10の近くに持っていくことができることになり、側溝Sを持ち上げる際の側溝施工用治具1のたわみをより少なくすることができるのである。
一方、両端の角部6が面取りされていない場合には、
図5(d)に示すように、治具1の角部6が側溝の側壁14に接触してしまうため、主部材2の長さを側溝Sの幅方向の内寸ぎりぎりにまでとすることができず、脚部3と板状部材4の付け根部分(最も加重の加わる部分)を側溝の側壁の底部の近くに持っていくことができなくなり、側溝を持ち上げる際に面取りをした場合に比べて治具1のたわみが生じやすくなってしまう恐れがある。
【0039】
次に、
図6に示すように、主部材2の下に市販のジャッキ11を挿入し、ジャッキ11のレバー12を動かして受皿13を主部材2の当接部5に押し当てる。
次に、レバー12をさらに動かして主部材2を上昇させる。そうすると、板状部材4の上に側溝の側壁14が乗っていることから側溝Sが上昇する。
【0040】
次に、側溝Sを持ち上げた後、側溝の側壁14と基礎コンクリート15との隙間16に調製用スペーサー17を増減したり、あるいは厚みの異なるスペーサー9に変更したりすることによって、測量よって求めた高さとなるように側溝Sの高さ調整を行う。
次に、ジャッキ11を降下させて側溝Sをスペーサー9および調製用スペーサー17の上に降ろし、側溝Sが設計の高さになっているかを確認する。そして、側溝Sの高さが設計の高さになっていない場合には、再度ジャッキ11を上昇させてスペーサー9および調製用スペーサー17の調整を行う作業を繰り返すことによって側溝Sの高さの調整を行う。
以上の作業から、本発明に係る側溝施工用治具は、このような高さの調整作業を特許文献1〜4に記載の装置のように複雑な機構を用いずに簡素な構成で行うことができるのである。また、このような高さの調整作業を市販のジャッキを用いて簡単に行うことができるのである。
【0041】
次に、ジャッキ11を降下させて側溝Sをスペーサー9および調製用スペーサー17の上に降ろした状態において側溝Sが所定の高さとなった場合には、ジャッキ11をさらに降下させて主部材2の当接部5から受皿13をさらに降下させ、ジャッキ11を側溝Sの内部から抜き取る。
次に、側溝施工用治具1を側溝Sの内部で回転させて
図5(c)の状態から
図5(b)の状態を経て
図5(a)の状態にし、側溝Sの内部から側溝施工用治具1を取り出す。
次に、所定の勾配とするために側溝Sの底になる部分に底部コンクリートの打設(インバート打設)を行う。その際、側溝の側壁14と基礎コンクリート15の隙間16についてもコンクリートを打設し、スペーサー9および調製用スペーサー17も含めて係るコンクリートで固めることによって隙間16を塞ぐとともに側溝Sの据付を完了する。
【0042】
従って、本発明に係る側溝施工用治具は、特許文献1〜4に記載の装置のようにジャッキ機構や台車機構という複雑な機構を用いずに簡素な構成で側溝の高さ調整を行うことができ、その結果、それほど熟練度が高くない作業者であっても安全かつ正確に側溝の施工を行うことができるのである。
【0043】
次に、上記のように構成された側溝施工用治具の別の動作および作用を説明する。
【0044】
本発明に係る側溝施工用治具は、側溝の前後にそれぞれ1つ設置すれば市販のジャッキを用いて側溝の移動作業を行うこともできる。
まず、地面の上に角材などの緩衝材を置き、クレーン等を用いて係る緩衝材の上に側溝を置く。
次に、側溝の前後に側溝施工用治具をそれぞれ配置する。なおその際、板状部材が緩衝材と地面との間に位置するように配置する。
次に、前後の側溝施工用治具の主部材の下に市販のジャッキをそれぞれ挿入し、ジャッキのレバーを動かして各ジャッキの受皿を各主部材の当接部に押し当てる。
次に、前後のジャッキのレバーをさらに動かして各主部材を上昇させて側溝を持ち上げる。
次に、前後のジャッキのレバーを各作業員が連携して操作してジャッキの車輪を用いることよって側溝を希望する位置に移動する。
最後に、側溝を希望する位置まで移動した後、ジャッキを降下させて移動作業を完了する。
【0045】
以上の作業から、本発明に係る側溝施工用治具を用いれば、市販のジャッキ(ジャッキの車輪)を用いることよって簡素な構成で側溝の移動作業を行うことができることになる。