特開2017-53397(P2017-53397A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-53397(P2017-53397A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20170224BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   F15B11/00 D
   F16H61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-176604(P2015-176604)
(22)【出願日】2015年9月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真貝 一美
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊晃
(72)【発明者】
【氏名】金城 秀一
(72)【発明者】
【氏名】大澤 朝華
(72)【発明者】
【氏名】立田 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐貫 宏典
(72)【発明者】
【氏名】坂上 仁
【テーマコード(参考)】
3H089
3J552
【Fターム(参考)】
3H089BB27
3H089DA02
3H089HH04
3H089JJ12
3J552MA07
3J552MA26
3J552NA01
3J552PA67
3J552QA03A
3J552QA30A
3J552QA42A
3J552UA02
3J552UA04
3J552VA18W
3J552VA45Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型化した油圧制御システムを提供する。
【解決手段】油圧制御システム10は、オイルポンプ50と、第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aと減圧ブロック40と、を備える。第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aは、オイルが流入するインポートと、インポートから流入されたオイルをアクチュエータに供給するアウトポートと、アウトポートからアクチュエータに供給されるオイルを制御する電磁弁66と、電磁弁66を制御する制御装置と、を有する。第1油圧制御体30aのアウトポートは、第1アクチュエータAC1と接続される。第2油圧制御体20aのアウトポートは、第2アクチュエータAC2と接続される。第2油圧制御体20aのインポートには、減圧ブロック40によって減圧されたオイルが供給される。第1油圧制御体30aの第1筐体31と第2油圧制御体20aの第2筐体21とは、互いに別部材である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され複数のアクチュエータを有する被制御体を、油圧により制御する油圧制御システムであって、
オイルポンプと、
前記オイルポンプから供給されるオイルの油圧を制御して前記アクチュエータに供給する第1油圧制御体および第2油圧制御体と、
前記オイルポンプに接続され、前記オイルの油圧を減圧する減圧ブロックと、
を備え、
前記第1油圧制御体および前記第2油圧制御体は、
前記オイルが流入するインポートと、
前記インポートから流入された前記オイルを前記アクチュエータに供給するアウトポートと、
前記アウトポートから前記アクチュエータに供給される前記オイルを制御する電磁弁と、
前記電磁弁を制御する制御装置と、
を有し、
前記アクチュエータは、第1アクチュエータと、第2アクチュエータと、を含み、
前記第1油圧制御体の前記アウトポートは、前記第1アクチュエータと接続され、
前記第2油圧制御体の前記アウトポートは、前記第2アクチュエータと接続され、
前記第2油圧制御体の前記インポートには、前記減圧ブロックによって減圧された前記オイルが供給され、
前記第1油圧制御体の第1筐体と前記第2油圧制御体の第2筐体とは、互いに別部材である、油圧制御システム。
【請求項2】
複数の前記第2油圧制御体を有する油圧制御集合体を備え、
前記油圧制御集合体は、複数の前記第2油圧制御体を収容する前記第2筐体を有する、請求項1に記載の油圧制御システム。
【請求項3】
前記減圧ブロックは、前記油圧制御集合体に取り付けられる、請求項2に記載の油圧制御システム。
【請求項4】
前記減圧ブロックは、前記第1油圧制御体に取り付けられる、請求項1または2に記載の油圧制御システム。
【請求項5】
前記被制御体は、2つのプーリと、2つの前記プーリを繋ぐベルトと、前記プーリの溝幅を変化させるプーリ駆動アクチュエータと、を有する無段変速機であり、
前記第1アクチュエータは、前記プーリ駆動アクチュエータである、請求項1から4のいずれか一項に記載の油圧制御システム。
【請求項6】
前記第1油圧制御体は、前記第2油圧制御体の位置と比較して、前記オイルポンプの近くに配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の油圧制御システム。
【請求項7】
前記減圧ブロックは、減圧弁を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の油圧制御システム。
【請求項8】
前記第1油圧制御体および前記第2油圧制御体は、前記アウトポートから前記アクチュエータに供給される前記オイルの流量を制御する流量制御弁を有し、
前記電磁弁は、前記制御装置から入力された電気信号を油圧信号に変換し、
前記流量制御弁は、前記油圧信号に基づいて制御される、請求項1から7のいずれか一項に記載の油圧制御システム。
【請求項9】
前記第1油圧制御体および前記第2油圧制御体は、
前記アウトポートから前記アクチュエータに供給される前記オイルの圧力を検出する圧力センサと、
前記流量制御弁の位置を検出する位置センサと、
を有し、
前記制御装置は、前記圧力センサの出力信号と前記位置センサの出力信号とに基づいて、前記アウトポートから前記アクチュエータに供給される前記オイルの流量を算出する、請求項8に記載の油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される自動変速機等の被制御体を油圧により制御するコントロールバルブが知られている。例えば、特許文献1のコントロールバルブにおいては、複数の電磁制御弁が1つの専用ボディーに全て組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−263466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなコントロールバルブにおいては、複数のアクチュエータの駆動が制御される。ここで、複数のアクチュエータごとに必要な油圧が異なる場合、必要となる油圧のうちで最も高い油圧を有するオイルを電磁制御弁の集合体に供給し、各電磁制御弁に適宜減圧して分配する。そのため、被制御体が比較的高い油圧を必要とするアクチュエータを有する場合、電磁制御弁の集合体に供給されるオイルの油圧が比較的高くなる。これにより、電磁制御弁の集合体の耐圧性能を比較的高くする必要が生じ、電磁制御弁の集合体が大型化しやすい問題があった。
【0005】
また、複数の電磁制御弁を1つの専用ボディーに組み込むため、電磁制御弁の配置の自由度が低く、電磁制御弁の集合体が大型化しやすい問題があった。
【0006】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、小型化できる構造を有する油圧制御システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様の油圧制御システムは、車両に搭載され複数のアクチュエータを有する被制御体を、油圧により制御する油圧制御システムであって、オイルポンプと、前記オイルポンプから供給されるオイルの油圧を制御して前記アクチュエータに供給する第1油圧制御体および第2油圧制御体と、前記オイルポンプに接続され、前記オイルの油圧を減圧する減圧ブロックと、を備え、前記第1油圧制御体および前記第2油圧制御体は、前記オイルが流入するインポートと、前記インポートから流入された前記オイルを前記アクチュエータに供給するアウトポートと、前記アウトポートから前記アクチュエータに供給される前記オイルを制御する電磁弁と、前記電磁弁を制御する制御装置と、を有し、前記アクチュエータは、第1アクチュエータと、第2アクチュエータと、を含み、前記第1油圧制御体の前記アウトポートは、前記第1アクチュエータと接続され、前記第2油圧制御体の前記アウトポートは、前記第2アクチュエータと接続され、前記第2油圧制御体の前記インポートには、前記減圧ブロックによって減圧された前記オイルが供給され、前記第1油圧制御体の第1筐体と前記第2油圧制御体の第2筐体とは、互いに別部材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、小型化できる構造を有する油圧制御システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の油圧制御システムの概略構成を示す模式図である。
図2図2は、被制御体の一部を示す図である。
図3図3は、本実施形態の油圧制御体を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態の油圧制御体を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態の流量制御弁の開閉動作を示す図である。
図6図6は、本実施形態の他の一例である油圧制御システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る油圧制御システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態の油圧制御システム10は、車両に搭載され複数のアクチュエータを有する被制御体CBを、油圧により制御する。以下の説明においては、一例として、被制御体CBが無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)である場合について説明する。
【0011】
被制御体CBが有する複数のアクチュエータは、第1アクチュエータAC1と、第2アクチュエータAC2と、を含む。図1では、第1アクチュエータAC1は、例えば、1つ設けられ、第2アクチュエータAC2は、例えば、3つ設けられる。
【0012】
第1アクチュエータAC1は、例えば、プーリ駆動アクチュエータである。すなわち、被制御体CBは、プーリ駆動アクチュエータを有する。第2アクチュエータAC2は、例えば、前進後進切換アクチュエータ、ハイ/ローギア切換アクチュエータ、トルクコンバータのロックアップ制御用アクチュエータ等である。
【0013】
図2に示すように、無段変速機である被制御体CBは、2つのプーリPL1,PL2と、2つのプーリPL1,PL2を繋ぐベルトBEと、を有する。プーリ駆動アクチュエータである第1アクチュエータAC1は、プーリPL1,PL2の横幅L1,L2を変化させる。これにより、ベルトBEの掛かるプーリPL1の径およびプーリPL2の径を変化させることができ、連続的な無段変速が実現できる。
【0014】
図1に示すように、油圧制御システム10は、オイルポンプ50と、供給油路11と、排出油路14a,14bと、油圧制御モジュール30と、油圧制御集合体20と、制御ユニット70と、を備える。制御ユニット70は、油圧制御システム10全体を統括して制御する。制御ユニット70は、後述する第1油圧制御体30aの制御装置63、および後述する第2油圧制御体20aの制御装置63を制御する。
【0015】
オイルポンプ50は、オイルタンクOT内のオイルOを加圧して、油圧制御集合体20および油圧制御モジュール30に供給する。オイルポンプ50によって加圧されたオイルOは、供給油路11に流入される。図1では、オイルポンプ50は、油圧制御モジュール30と油圧制御集合体20とのうち油圧制御集合体20に近い位置に配置される。
【0016】
供給油路11は、オイルポンプ50と油圧制御集合体20とを繋ぐ第1供給油路12と、第1供給油路12と油圧制御モジュール30とを繋ぐ第2供給油路13と、を有する。排出油路14aは、油圧制御モジュール30とオイルタンクOTとを繋ぐ。排出油路14bは、油圧制御集合体20とオイルタンクOTとを繋ぐ。
【0017】
油圧制御モジュール30は、1つの第1油圧制御体30aと、第1筐体31と、を有する。油圧制御集合体20は、複数の第2油圧制御体20aと、減圧回路22と、第2筐体21と、を有する。すなわち、油圧制御システム10は、第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aを備える。図1では、油圧制御集合体20は、例えば、3つの第2油圧制御体20aを有する。
【0018】
第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aは、オイルポンプ50から供給されるオイルOの油圧を制御してアクチュエータに供給する。図3に示すように、第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aは、インポート32と、アウトポート33と、制御装置63と、電磁弁66と、流量制御弁68と、を有する。
【0019】
インポート32には、オイルOが流入される。第1油圧制御体30aのインポート32には、第2供給油路13からオイルOが流入する。第2油圧制御体20aのインポート32には、減圧回路22からオイルOが流入する。
【0020】
アウトポート33は、アクチュエータに接続され、インポート32から流入されたオイルOをアクチュエータに供給する。第1油圧制御体30aのアウトポート33は、第1アクチュエータAC1と接続される。第2油圧制御体20aのアウトポート33は、第2アクチュエータAC2と接続される。
【0021】
制御装置63は、電磁弁66を制御する。電磁弁66は、アウトポート33からアクチュエータに供給されるオイルOを制御する。本実施形態では、電磁弁66は、流量制御弁68を介して、アウトポート33からアクチュエータに供給されるオイルOの流量を制御する。
【0022】
図1に示す減圧回路22は、オイルポンプ50から供給されるオイルOの油圧を減圧し、かつ、分配して各第2油圧制御体20aに供給する。図1では、減圧回路22は、減圧ブロック40を有する。すなわち、油圧制御システム10は、減圧ブロック40を備える。減圧ブロック40は、油圧制御集合体20に取り付けられる。
【0023】
減圧ブロック40は、第1供給油路12を介してオイルポンプ50に接続される。減圧ブロック40は、オイルOの油圧を減圧する。これにより、各第2油圧制御体20aのインポート32には、減圧ブロック40によって減圧されたオイルOが供給される。
【0024】
減圧ブロック40は、例えば、減圧弁を有することが好ましい。減圧ブロック40に流入したオイルOの油圧を好適に、かつ、簡便に減圧できるためである。減圧弁の構成は、特に限定されず、いかなる公知の減圧弁を用いてもよい。なお、減圧ブロック40の構成は、オイルOを減圧できるならば、特に限定されない。
【0025】
第1筐体31は、第1油圧制御体30aを収容する。第2筐体21は、複数の第2油圧制御体20aおよび減圧回路22を収容する。第1油圧制御体30aの第1筐体31と第2油圧制御体20aの第2筐体21とは、互いに別部材である。
【0026】
そのため、第1油圧制御体30aと第2油圧制御体20aとに、オイルポンプ50からのオイルOを別々に供給することができる。これにより、第1油圧制御体30aには、第2供給油路13を介してオイルポンプ50によって加圧された比較的高圧のオイルOを供給しつつ、第2油圧制御体20aには、減圧ブロック40によって減圧されたオイルOを供給することができる。
【0027】
したがって、例えば、第2アクチュエータAC2を駆動するために必要な油圧が、第1アクチュエータAC1を駆動するために必要な油圧よりも低い場合、第2油圧制御体20aの耐圧性能を必要以上に高くする必要がない。これにより、第2油圧制御体20aの耐圧性能を、第2アクチュエータAC2を駆動するために必要な比較的低い油圧に応じた耐圧性能とすることができる。したがって、第2油圧制御体20aおよび第2筐体21のシール構造を簡単にでき、第2油圧制御体20aおよび第2筐体21を小型化できる。
【0028】
また、第1筐体31と第2筐体21とが別部材であるため、それぞれが収容する第1油圧制御体30aと第2油圧制御体20aとに応じて、第1筐体31の大きさおよび配置と、第2筐体21の大きさおよび配置を、それぞれ最適化しやすい。その結果、第1筐体31と第2筐体21とを小型化しやすい。
【0029】
以上により、本実施形態によれば、小型化できる構造を有する油圧制御システム10が得られる。
【0030】
また、例えば、アウトポートとアクチュエータとの距離が遠いと、油圧制御体によって調整されたオイルOの油圧が、アウトポートからアクチュエータに到達するまでの間に減圧される虞がある。また、アウトポートからアクチュエータまでを繋ぐ油路のシール性が十分でない場合、オイルOが漏れて油量が低下する虞がある。これにより、アクチュエータの応答性が低下する虞がある。特に、アクチュエータを駆動するために必要となるオイルOの油圧および油量が大きいほど、この問題は顕著となる。
【0031】
これに対して、第1筐体31と第2筐体21とを別部材とすることで、第1油圧制御体30a(油圧制御モジュール30)を、比較的高い油圧および油量を必要とする第1アクチュエータAC1の近傍に配置することが可能である。これにより、第1アクチュエータAC1に供給されるオイルOの油圧および油量が低下することを抑制でき、第1アクチュエータAC1の応答性を向上できる。
【0032】
なお、本明細書において、第1筐体31と第2筐体21とが互いに別部材である、とは、第1筐体31と第2筐体21とが単一の部材でなければ、第1筐体31と第2筐体21とが互いに離れた位置に配置されてもよいし、第1筐体31と第2筐体21とが直接的、あるいは間接的に接触してもよい。
【0033】
第1筐体31と第2筐体21とが間接的に接触する場合とは、例えば、第1筐体31と第2筐体21とが、プレート等の同一の部材に取り付けられる場合等を含む。本実施形態においては、第1筐体31と第2筐体21とは、例えば、離れた位置に配置される。
【0034】
また、本明細書において、第1筐体31および第2筐体21が油圧制御体を収容する、とは、第1筐体31内および第2筐体21内に油圧制御体の少なくとも一部が配置され、油圧制御体が第1筐体31および第2筐体21に保持されればよい。
【0035】
また、複数の第2油圧制御体20aを有する油圧制御集合体20が1つの第2筐体21に収容される。そのため、比較的低い油圧で駆動される第2アクチュエータAC2が複数設けられる場合に、複数の第2油圧制御体20aを1箇所にまとめて配置できる。これにより、第1油圧制御体30aと、複数の第2油圧制御体20aと、の配置を最適化しやすく、油圧制御システム10をより小型化できる。
【0036】
また、減圧ブロック40が油圧制御集合体20に取り付けられることで、減圧ブロック40によって減圧されたオイルOを各第2油圧制御体20aに供給しやすい。また、減圧ブロック40が油圧制御集合体20に取り付けられることで、減圧ブロック40が油圧制御モジュール30に取り付けられる場合に比べて、油圧制御モジュール30を小型化しやすい。これにより、油圧制御モジュール30を第1アクチュエータAC1により近づけて配置しやすい。したがって、第1アクチュエータAC1の応答性をより向上できる。
【0037】
また、無段変速機においてプーリPL1,PL2を駆動するプーリ駆動アクチュエータの駆動には、他のアクチュエータに比べて特に高い油圧が必要である。そのため、無段変速機において、プーリPL1,PL2を駆動するプーリ駆動アクチュエータにオイルOを供給する油圧制御体を、他の油圧制御体と共に設けると、油圧制御体全体の耐圧性能を特に高くする必要が生じ、油圧制御システムが特に大型化しやすい。また、油圧制御体とプーリ駆動アクチュエータとの距離が大きくなることで、オイルOが減圧してプーリ駆動アクチュエータの駆動に必要な油圧が得られにくい。
【0038】
また、プーリ駆動アクチュエータは、他のアクチュエータに比べて、駆動に必要なオイルOの流量も特に大きい。そのため、油圧制御体からプーリ駆動アクチュエータまでの距離が大きくなることでオイルOの流量が低下すると、プーリ駆動アクチュエータの応答性が特に低下しやすい。
【0039】
本実施形態によれば、第1油圧制御体30aが接続される第1アクチュエータAC1をプーリ駆動アクチュエータとすることで、これらの問題を解決できる。したがって、本実施形態の油圧制御システム10によって得られる効果は、被制御体CBを無段変速機として、第1アクチュエータAC1をプーリ駆動アクチュエータとした場合に、特に大きく得られる。
【0040】
図3および図4に示すように、第1油圧制御体30aおよび第2油圧制御体20aは、油路部材61と、第1空洞部61aと、第2空洞部61bと、ドレンポート34と、接続油路35と、圧力センサ62aと、位置センサ62bと、通信装置64と、コネクタ65と、を有する。
【0041】
図3に示すように、油路部材61は、内部にオイルOが通る油路を有する部材である。油路部材61には、第1空洞部61a、第2空洞部61b、インポート32、アウトポート33、ドレンポート34、および接続油路35が設けられる。
【0042】
第1空洞部61aおよび第2空洞部61bは、一端が開口し一方向(図3では左右方向)に延びる穴である。インポート32は、第1空洞部61aと第2空洞部61bとの両方に繋がれる。
【0043】
電磁弁66は、第1スプール67aと、第1空洞部61aと、ソレノイド60と、を有する。第1スプール67aは、内部に油路を有する柱状である。第1スプール67aは、第1空洞部61a内に長手方向(図3では左右方向)に移動可能に配置される。
【0044】
ソレノイド60は、油路部材61に取り付けられる。ソレノイド60は、電流が供給されることで、第1スプール67aに長手方向(図3では左右方向)の力を加える。図示は省略するが、第1空洞部61a内には、第1スプール67aに長手方向の力を加えるバネが配置される。
【0045】
ソレノイド60に供給される電流の大きさを変化させると、ソレノイド60から第1スプール67aに加えられる力が変化し、バネ力と釣り合う位置で第1スプール67aが停止する。これにより、ソレノイド60に供給される電流の大きさを変化させることで、第1スプール67aの長手方向(図3では左右方向)の位置を変化させることができる。
【0046】
流量制御弁68は、第2スプール67bと、第2空洞部61bと、を有する。第2スプール67bは、内部に油路を有する柱状である。第2スプール67bは、第2空洞部61b内に長手方向(図3では左右方向)に移動可能に配置される。
【0047】
ドレンポート34は、第1空洞部61aおよび第2空洞部61bと排出油路14a,14bとを繋ぐ。接続油路35は、第1空洞部61aと第2空洞部61bとを繋ぐ。
【0048】
図4に示す圧力センサ62aは、アウトポート33から第1アクチュエータAC1または第2アクチュエータAC2に供給されるオイルOの圧力を検出する。圧力センサ62aの構成は、特に限定されない。位置センサ62bは、流量制御弁68の位置を検出する。より詳細には、位置センサ62bは、図3に示す第2スプール67bの長手方向(図3では左右方向)の位置を検出する。位置センサ62bの構成は、特に限定されない。
【0049】
図4に示すように、圧力センサ62aの出力信号と、位置センサ62bの出力信号とは、制御装置63に入力される。制御装置63は、圧力センサ62aの出力信号と位置センサ62bの出力信号とに基づいて、アウトポート33から第1アクチュエータAC1または第2アクチュエータAC2に供給されるオイルOの流量を算出する。
【0050】
そのため、アクチュエータに供給されるオイルOの流量変化を検出しやすい。これにより、第1アクチュエータAC1および第2アクチュエータAC2に供給されるオイルOの流量を適切に制御しやすく、第1アクチュエータAC1および第2アクチュエータAC2の応答性をより向上できる。
【0051】
通信装置64は、コネクタ65を介して制御ユニット70からの電気信号を受信し、制御装置63に伝達する。また、通信装置64は、制御装置63からの電気信号を、コネクタ65を介して制御ユニット70に伝達する。制御装置63からの電気信号とは、例えば、圧力センサ62aの出力信号、位置センサ62bの出力信号、および第1アクチュエータAC1または第2アクチュエータAC2に供給されるオイルOの流量を示す信号等、である。
【0052】
図3に示すように、制御装置63は、制御ユニット70からの電気信号を受信すると、その電気信号に基づいて、電磁弁66に電流を供給する。電気信号に応じて第1スプール67aの長手方向の位置が変化し、接続油路35と第1スプール67aの流路との開口、およびインポート32と第1スプール67aとの開口が制御される。
【0053】
これにより、接続油路35から第2空洞部61bに流れるオイルOの圧力が制御され、結果として、第2スプール67bの位置が制御される。このように、電磁弁66は、制御装置63から入力された電気信号を油圧信号に変換し、第2スプール67bを有する流量制御弁68は、その油圧信号に基づいて制御される。
【0054】
以上のように、電磁弁66と流量制御弁68とによって、第1アクチュエータAC1または第2アクチュエータAC2に供給されるオイルOの流量が制御される。流量制御弁68の開閉動作の一例を、図5(A)から図5(C)に示す。なお、図5(A)から図5(C)においては、第1油圧制御体30aの場合について示している。
【0055】
電磁弁66に電流が供給されていない、あるいは電磁弁66に供給される電流が小さい場合、図5(A)に示すように、流量制御弁68においては、インポート32とアウトポート33とが繋がれる。これにより、第2供給油路13からインポート32を介して流入されたオイルOが、第2スプール67b内の油路を通り、アウトポート33を介して、第1アクチュエータAC1に供給される。これにより、第1アクチュエータAC1が駆動される。
【0056】
電磁弁66に供給される電流が大きくなると、接続油路35から第2空洞部61bにオイルOが流入し、図5(B)に示すように、第2スプール67bが長手方向一方側(図5(B)では右側)に移動する。これにより、インポート32が閉じられる。なお、図5(A)に示す状態から図5(B)に示す状態へと移行する際においては、電磁弁66に供給される電流が大きくなる程、アクチュエータに供給されるオイルOの油量が一次関数的に小さくなる。なお、この状態においては、第1アクチュエータAC1内のオイルOの油圧は一定に保持されるため、第1アクチュエータAC1は駆動されたままである。
【0057】
電磁弁66に供給される電流がさらに大きくなると、接続油路35から第2空洞部61bに流入するオイルOの油量がさらに増大し、第2スプール67bがさらに長手方向一方側(図5(C)では右側)に移動する。これにより、アウトポート33と、ドレンポート34とが繋がれ、第1アクチュエータAC1に供給されたオイルOが、ドレンポート34および排出油路14aを介して、オイルタンクOTへと排出される。これにより、第1アクチュエータAC1の駆動が停止される。
【0058】
再び第1アクチュエータAC1を駆動する場合には、電磁弁66に供給される電流を小さくして、第2スプール67bを長手方向他方側(図5(C)では左側)に移動させ、図5(A)に示す状態にする。これにより、第1アクチュエータAC1に再びオイルOが供給され、第1アクチュエータAC1が駆動される。
【0059】
図5(C)の状態から再び図5(A)の状態に戻す際においては、図3に示す第1スプール67a内の流路は、接続油路35とドレンポート34とを接続する。これにより、接続油路35から第2空洞部61bに流入されたオイルOが、ドレンポート34および排出油路14aを介して、オイルタンクOTへと排出される。
【0060】
なお、電磁弁66に供給される電流の大きさと、アクチュエータに供給されるオイルOの油量との関係は、時間の経過による油圧制御体の劣化等によって、変化する場合がある。このような場合、例えば、位置センサ62bの出力とアクチュエータに供給されるオイルOの油量との関係を記憶し、初期段階におけるセンサ出力と油量との関係を参照することで、電磁弁66に供給する電流の大きさを補正できる。
【0061】
例えば、電磁弁の開閉のみでアクチュエータに供給されるオイルOの流量を制御する場合、プーリ駆動アクチュエータ等の比較的高い油圧が必要なアクチュエータでは、電磁弁のスプールを移動させるために大きい力が必要となる。そのため、ソレノイドを大型化する必要があり、油圧制御体が大型化する問題がある。また、油圧制御体の製造コストが増大する問題もある。
【0062】
これに対して、電磁弁66と流量制御弁68とによってアクチュエータに供給されるオイルOの流量を制御する場合、電磁弁66によって電気信号を油圧信号に変換して、油圧によって流量制御弁68の第2スプール67bを移動させることができる。そのため、電磁弁66のソレノイド60が小型であっても、比較的高い油圧を必要とするアクチュエータに供給されるオイルOの油量を制御できる。したがって、油圧制御体を小型化でき、かつ、油圧制御体の製造コストが増大することを抑制できる。
【0063】
例えば、油圧制御体がオイルタンクOTの近傍に設けられる場合、上述した第1アクチュエータAC1に供給されたオイルOおよび接続油路35から第2空洞部61bに供給されたオイルOを、第2空洞部61bおよび第1空洞部61aから直接オイルタンクOTへと垂れ流して排出することも容易である。
【0064】
しかし、第1油圧制御体30aのように、油圧制御体がオイルタンクOTから比較的離れた位置に配置される場合、第1空洞部61aおよび第2空洞部61bから直接オイルOを垂れ流すと、オイルOを適切にオイルタンクOTに排出できない虞がある。
【0065】
これに対して、本実施形態によれば、第1空洞部61aと第2空洞部61bとに接続されたドレンポート34が設けられるため、第1空洞部61a内および第2空洞部61b内から使用後のオイルOをまとめて効率的に排出できる。したがって、オイルOの排出を適切に、かつ、スムーズに行うことができる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0067】
油圧制御システム10は、図6に示す油圧制御システム110のような構成であってもよい。図6に示すように、油圧制御モジュール130は、減圧回路22を有する。この構成において減圧ブロック40は、第1油圧制御体30aに取り付けられる。
【0068】
オイルポンプ150は、第1供給油路112を介して減圧回路22にオイルOを供給する。減圧回路22に供給されたオイルOは、第1油圧制御体30aに供給されるオイルOと減圧ブロック40に供給されるオイルOとに分配される。減圧ブロック40に供給されたオイルOは、減圧されて、第2供給油路113を介して油圧制御集合体120の各第2油圧制御体20aに供給される。油圧制御集合体120には、上述した油圧制御集合体20と異なり、減圧回路22が取り付けられていない。
【0069】
油圧制御システム110においては、上述した油圧制御システム10と比較して、オイルポンプ150の位置が異なる。オイルポンプ150は、油圧制御モジュール130と油圧制御集合体120とのうち、油圧制御モジュール130に近い位置に配置される。すなわち、第1油圧制御体30aは、第2油圧制御体20aの位置と比較して、オイルポンプ150の近くに配置される。
【0070】
そのため、比較的高い油圧が必要な第1アクチュエータAC1にオイルOを供給する第1油圧制御体30aに、オイルポンプ150で加圧されたオイルOを直接供給しやすく、第1アクチュエータAC1の応答性をより向上できる。
【0071】
また、減圧ブロック40が第1油圧制御体30aに取り付けられることで、第2油圧制御体20aまでオイルOを送る第2供給油路113内の油圧を低くできる。そのため、オイルポンプ150と第1油圧制御体30aとを繋ぐ第1供給油路112よりも長い第2供給油路113の耐圧性能を低くすることができる。これにより、第2供給油路113の構成を簡単にでき、油圧制御システム110全体を小型化しやすい。
【0072】
被制御体CBが有するアクチュエータの数は、2つ、または3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、アクチュエータにオイルOを供給する油圧制御体の数は、アクチュエータの数に合わせて、2つ、または3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0073】
第1油圧制御体30aは、2つ以上であってもよい。第2油圧制御体20aは、1つであってもよい。例えば、第1油圧制御体30aと第2油圧制御体20aとが1つずつ設けられてもよい。この場合、2つの油圧制御モジュールが構成される。また、例えば、第1油圧制御体30aと第2油圧制御体20aとが複数ずつ設けられてもよい。この場合、2つの油圧制御集合体が構成される。
【0074】
流量制御弁68は設けられなくてもよい。この場合、電磁弁66の動作のみで、アクチュエータに供給されるオイルOの流量が制御される。
【0075】
油圧制御システム10の制御対象である被制御体CBは、車両に搭載されアクチュエータを複数有するならば、特に限定されない。被制御体CBは、自動変速機(AT:Automatic Transmission)であってもよいし、パーキングブレーキであってもよい。
【0076】
上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0077】
10,110…油圧制御システム、20,120…油圧制御集合体、20a…第2油圧制御体、21…第2筐体、30a…第1油圧制御体、31…第1筐体、32…インポート、33…アウトポート、40…減圧ブロック、50,150…オイルポンプ、62a…圧力センサ、62b…位置センサ、63…制御装置、66…電磁弁、68…流量制御弁、AC1…第1アクチュエータ、AC2…第2アクチュエータ、BE…ベルト、CB…被制御体、O…オイル、PL1,PL2…プーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6