特開2017-53440(P2017-53440A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-53440(P2017-53440A)
(43)【公開日】2017年3月16日
(54)【発明の名称】滑り軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/74 20060101AFI20170224BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20170224BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20170224BHJP
【FI】
   F16C33/74 Z
   F16C17/04 Z
   F16F9/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-178026(P2015-178026)
(22)【出願日】2015年9月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 智博
【テーマコード(参考)】
3J011
3J016
3J069
【Fターム(参考)】
3J011AA12
3J011BA09
3J011KA03
3J011LA08
3J011MA21
3J011PA03
3J011SC01
3J016AA03
3J016BB03
3J016BB05
3J016BB17
3J016CA02
3J069AA50
3J069CC36
3J069DD43
3J069DD47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より低コストで、塵埃、泥水等の侵入による摺動性能の低下を防止する。
【解決手段】アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5において、ダストシール部7の軸方向の一方の端部70がアッパーケース2のアッパーケース本体の環状溝の溝底より下方側に突出して形成された防壁28と当接し、軸方向の他方の端部71がロワーケース3のロワーケース本体の環状突部33の上面側と当接するように、ダストシール一体型センタープレート4が環状空間5に配置される。ダストシール部7は、センタープレート部6の外周側から径方向外方に延びる連結アーム部8によりセンタープレート部6に連結され、センタープレート部6と一体的に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパーケースと、
前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートと、
前記センタープレートの外周側に配置された環状のダストシールと、を備え、
前記ダストシールは、
両端部が前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面および前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面と接触し、
前記センタープレートは、
前記センタープレートの外周側から径方向外方に延びて前記ダストシールと連結する連結部を有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の滑り軸受であって、
前記ダストシールは、
軸方向断面形状において、少なくとも一方の端部が径方向外方あるいは径方向内方に傾斜している
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項3】
請求項1または2に記載の滑り軸受であって、
前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面あるいは前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面に形成され、前記センタープレートの前記連結部と円周方向に係合して前記センタープレートおよび前記ダストシールの回転を防止するとともに、前記センタープレートの外周側と当接して前記センタープレートの径方向外方への変形を阻止する回り止めをさらに有する
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項4】
請求項1または2に記載の滑り軸受であって
前記滑り軸受は、支持対象の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースとの対向面に形成された環状溝を有し、
前記ロワーケースは、
前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記アッパーケースの前記環状溝に挿入されることにより前記環状空間を形成する環状突部を有し、
前記センタープレートは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に載置され、前記アッパーケースの前記環状溝の溝底に形成された支持対象面と摺接することにより、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を許容しつつ、前記アッパーケースに加えられた前記支持対象の荷重を支持し、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状突部の外周側に配置されていている
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項5】
請求項3に記載の滑り軸受であって、
前記滑り軸受は、支持対象の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースとの対向面に形成された環状溝を有し、
前記ロワーケースは、
前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記アッパーケースの前記環状溝に挿入されることにより前記環状空間を形成する環状突部を有し、
前記センタープレートは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に載置され、前記アッパーケースの前記環状溝の溝底に形成された支持対象面と摺接することにより、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を許容しつつ、前記アッパーケースに加えられた前記支持対象の荷重を支持し、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状突部の外周側に装着されており、
前記回り止めは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に複数形成され、前記センタープレートの外周側を囲むように、少なくとも前記センタープレートの前記連結部の円周方向の幅より大きな間隔をあけて円周状に配置された円弧状突部である
ことを特徴とする滑り軸受。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の滑り軸受であって、
前記滑り軸受は、
ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で当該ストラットアッセンブリの前記車体への取付機構に取り付けられ、
前記ロワーケースは、
前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記ストラットアッセンブリに組み合わせられたコイルスプリングの上端部のばね座に取り付けられ、
前記センタープレートは、
前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記環状空間に配置される
ことを特徴とする滑り軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持対象の荷重を支持する滑り軸受に関し、特に、ストラット式サスペンション(マクファーソンストラット)のストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前輪に用いられるストラット式サスペンションは、ピストンロッドおよび油圧式ショックアブソーバを備えたストラットアッセンブリに、コイルスプリングを組み合わせた構造を有しており、ステアリング操作によってストラットアッセンブリがコイルスプリングと共に回動する。このため、ストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる荷重を支持するべく、通常、車体へのストラットアッセンブリの取付機構であるアッパーマウントとコイルスプリングの上端部のばね座であるアッパースプリングシートとの間に、軸受が配置されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストラット式サスペンション用の軸受として、合成樹脂製の滑り軸受が開示されている。この滑り軸受は、アッパーマウント側に取り付けられる合成樹脂製のアッパーケースと、アッパースプリングシート側に取り付けられ、アッパーケースに回動自在に組み合わされる合成樹脂製のロワーケースと、アッパーケースおよびロワーケース間を円滑に回動させるための合成樹脂製のセンタープレートと、を備えている。ここで、センタープレートの軸受面には、潤滑グリース溜りとして機能する複数の溝が形成されており、これらの溝に潤滑グリースが充填されている。また、環状空間には、この環状空間に繋がるアッパーケースおよびロワーケースの隙間を塞ぐダストシールが配置されている。
【0004】
特許文献1に記載の合成樹脂製の滑り軸受によれば、ダストシールにより、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間の外部に繋がる隙間が塞がれ、過酷な条件下でも、塵埃、泥水等がこの環状空間に侵入するのを防止でき、したがって、この環状空間に配置されたセンタープレートの軸受面上に塵埃、泥水等が侵入して、摺動性能が低下するのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−172814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の合成樹脂製の滑り軸受において、ダストシールは、筒状のシール本体と、シール本体に一体的に形成された環状のリップ部と、を備える。リップ部が環状空間の壁面に撓んで接触することにより、環状空間に繋がるアッパーケースおよびロワーケースの隙間を塞ぐため、ダストシールには、ポリウレタン樹脂、ポリエステルエラストマー、合成ゴム等の弾性体が用いられる。また、リップ部を適度な力で環状空間の壁面に接触させて、リップ部のシール性を向上させるために、シール本体に芯金を埋め込んで、シール本体の剛性を上げている。特許文献1に記載の合成樹脂製の滑り軸受では、このような芯金を備えたダストシールを追加する必要があり、滑り軸受のコストが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より低コストで、塵埃、泥水等の侵入による摺動性能の低下を防止することができる滑り軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の滑り軸受では、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間において、環状のセンタープレートの外周側に、両端部が環状空間の軸方向に対向する2つの壁面に接触する環状のダストシールを配置するとともに、センタープレートの外周側から径方向外方に延びる連結部でセンタープレートにこのダストシールを連結して、センタープレートおよびダストシールを一体的に形成した。ここで、環状空間の軸方向に対向する2つの壁面の一方に、センタープレートおよびダストシールを連結する連結部と円周方向に係合してセンタープレートおよびダストシールの回転を防止するとともに、センタープレートの外周側と当接してセンタープレートの径方向外方への変形を規制する回り止めを形成してもよい。
【0009】
例えば、本発明の滑り軸受は、
アッパーケースと、
前記アッパーケースに回動自在に組み合わされて、当該アッパーケースとの間に環状空間を形成するロワーケースと、
前記環状空間に配置された環状のセンタープレートと、
前記センタープレートの外周側に配置された環状のダストシールと、を備え、
前記ダストシールは、
両端部が前記ロワーケースの前記アッパーケースとの対向面および前記アッパーケースの前記ロワーケースとの対向面と接触し、
前記センタープレートは、
前記センタープレートの外周側から径方向外方に延びて前記ダストシールと連結する連結部を有する。
【0010】
ここで、前記滑り軸受は、支持対象の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、
前記ロワーケースとの対向面に形成された環状溝を有し、
前記ロワーケースは、
前記アッパーケースとの対向面に形成され、前記アッパーケースの前記環状溝に挿入されることにより前記環状空間を形成する環状突部を有し、
前記センタープレートは、
前記ロワーケースの前記環状突部上に載置され、前記アッパーケースの前記環状溝の溝底に形成された支持対象面と摺接することにより、前記アッパーケースおよび前記ロワーケース間の回動を許容しつつ、前記アッパーケースに加えられた前記支持対象の荷重を支持し、
前記ダストシールは、
前記ロワーケースの前記環状突部の外周側に配置されていてもよい。
【0011】
例えば、前記滑り軸受は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持するものであり、
前記アッパーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で当該ストラットアッセンブリの前記車体への取付機構に取り付けられ、
前記ロワーケースは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記ストラットアッセンブリに組み合わせられたコイルスプリングの上端部のばね座に取り付けられ、
前記センタープレートは、前記ストラットアッセンブリが挿入された状態で前記環状空間に配置されるものでもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、アッパーケースおよびロワーケースを組み合わせることにより形成される環状空間において、両端部が環状空間の軸方向に対向する2つの壁面に接触する環状のダストシールを配置しているので、ダストシールに芯金を埋め込んで剛性を上げなくても、環状空間の軸方向に加わる支持対象の荷重に対するダストシールの反力によって、環状空間の外部に繋がる隙間を塞ぐのに十分なシール性を得ることができる。また、ダストシールは、センタープレートの外周側から径方向外方に延びる連結部によりセンタープレートに連結されているので、ダストシールを別部品として用意する必要がなくなり、滑り軸受の部品点数を減らすことができる。したがって、本発明によれば、より低コストで、塵埃、泥水等の侵入による摺動性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本発明の一実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。
図2図2(A)は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、図2(B)は、図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
図3図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
図4図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
図5図5(A)、図5(B)および図5(C)は、ダストシール一体型センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すダストシール一体型センタープレート4のF−F断面図であり、図5(E)は、図5(D)に示すダストシール一体型センタープレート4のG部拡大図であり、図5(F)は、図5(A)に示すダストシール一体型センタープレート4のH部拡大図である。
図6図6(A)および図6(B)は、ダストシール一体型センタープレート4のダストシール部7の変形例7a、7bを説明するための図であり、図2(B)に相当する図である。
図7図7は、ダストシール一体型センタープレート4の変形例4aを説明するための図であり、図2(B)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0015】
図1(A)、図1(B)および図1(C)は、本実施の形態に係る滑り軸受1の平面図、底面図および正面図であり、図1(D)は、図1(A)に示す滑り軸受1のA−A断面図である。また、図2(A)は、図1(D)に示す滑り軸受1のB部拡大図であり、図2(B)は、図1(D)に示す滑り軸受1のC部拡大図である。
【0016】
本実施の形態に係る滑り軸受1は、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリ(不図示)を収容するための収容孔10を備え、この収容孔10に収容されたストラットアッセンブリの回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。図示するように、滑り軸受1は、アッパーケース2と、アッパーケース2と回動自在に組み合わされて、アッパーケース2との間に環状空間5を形成するロワーケース3と、この環状空間5に配置されたダストシール一体型センタープレート4と、図示していないが、環状空間5に充填された潤滑グリースと、を備えている。
【0017】
アッパーケース2は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリアセタール樹脂等の滑り特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でこのストラットアッセンブリの車体への取付機構であるアッパーサポート(不図示)に取り付けられる。
【0018】
図3(A)、図3(B)および図3(C)は、アッパーケース2の平面図、底面図および正面図であり、図3(D)は、図3(A)に示すアッパーケース2のD−D断面図である。
【0019】
図示するように、アッパーケース2は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔20を備えた環状のアッパーケース本体21と、アッパーケース本体21の上面22に形成され、アッパーサポートに取り付けるための取付面23と、ロワーケース3に対向するアッパーケース本体21の下面24に形成され、ロワーケース3と回動自在に組み合わされることにより環状空間5を形成する環状溝25と、環状溝25の溝底26に形成され、ダストシール一体型センタープレート4の後述のセンタープレート部6の軸受面62(図5参照)と摺接する環状の支持対象面27と、を備えている。
【0020】
環状溝25の溝底26において、支持対象面27の外周側には、溝底26から下面24の方向に突出した環状の防壁28が形成されている。この防壁28は、環状空間5に配置されたダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の外周側を囲んでおり、ストラット式サスペンションに荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の軸受面62上から径方向外方へ押し出されるのを阻止する。
【0021】
ロワーケース3は、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を用いた樹脂成形体であり、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリが挿入された状態でストラット式サスペンションのコイルスプリング(不図示)上端部のばね座であるアッパースプリングシート(不図示)に取り付けられる。
【0022】
図4(A)、図4(B)および図4(C)は、ロワーケース3の平面図、底面図および正面図であり、図4(D)は、図4(A)に示すロワーケース3のE−E断面図である。
【0023】
図示するように、ロワーケース3は、ストラットアッセンブリを挿入するための挿入孔30を備えた筒状のロワーケース本体31と、アッパーケース2に対向するロワーケース本体31の上面32に形成され、ロワーケース3がアッパーケース2と回動自在に組み合わされた場合に、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25に挿入されて環状空間5を形成する環状突部33と、ロワーケース本体31の側面34から径方向外方に張り出したフランジ35と、を備えている。
【0024】
環状突部33の上面330には、ダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6を載置するための載置面331が形成され、さらに、この載置面331の外周側には、円弧状に突出した回り止め332が円周方向に等間隔で複数形成されている。回り止め332は、ダストシール一体型センタープレート4の後述の連結アーム部8(図5参照)と円周方向に係合して、ダストシール一体型センタープレート4の回転を阻止するとともに、ダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の外周側と当接して、センタープレート部6の径方向外方への変形を阻止する。
【0025】
なお、本実施の形態では、6個の回り止め332を設けているが、ダストシール一体型センタープレート4の連結アーム部8の数と同数の回り止め332を設ければよい。この際、回り止め332の円弧の長さを調節して、連結アーム部8が配置される隙間334の幅を一定にすることが好ましい。
【0026】
フランジ35は、ロワーケース本体31の上面32側において、ロワーケース本体31の外周側の側面34から径方向外方に張り出しており、フランジ35の下面36がアッパースプリングシートに取り付けられる。
【0027】
ダストシール一体型センタープレート4は、必要に応じて潤滑油が含浸されたポリオレフィン樹脂等の摺動特性に優れた熱可塑性樹脂で形成され、アッパーケース2およびロワーケース3間の自在な回動を許容しつつ、アッパーケース2に伝達されたストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。また、環状空間5の外部に繋がる隙間を塞いで、塵埃等の異物が環状空間5に侵入するのを防止する。
【0028】
図5(A)、図5(B)および図5(C)は、ダストシール一体型センタープレート4の平面図、底面図および正面図であり、図5(D)は、図5(A)に示すダストシール一体型センタープレート4のF−F断面図であり、図5(E)は、図5(D)に示すダストシール一体型センタープレート4のG部拡大図であり、図5(F)は、図5(A)に示すダストシール一体型センタープレート4のH部拡大図である。
【0029】
図示するように、ダストシール一体型センタープレート4は、環状のセンタープレート部6と、センタープレート部6の外周側に配置された筒状のダストシール部7と、センタープレート部6およびダストシール部7を連結する連結アーム部8と、を備えている。
【0030】
センタープレート部6は、環状のセンタープレート本体60と、センタープレート本体60の上面61に形成された軸受面62と、センタープレート本体60の下面63の内周側から軸方向下方に張り出して形成された筒状のリブ64と、を備える。
【0031】
軸受面62には、潤滑グリース溜め65が多数形成されている。なお、図5では、図面の簡略化のため、一部の潤滑グリース溜め65にのみ符号を付している。
【0032】
リブ64は、センタープレート本体60の下面63とロワーケース3のロワーケース本体31に設けられた環状突部33の載置面331とが接触するようにして、センタープレート4がロワーケース3上に載置された場合に、この環状突部33の内側に挿入される。
【0033】
ダストシール部7は、軸方向の一方の端部70がアッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26に下方側に突出して形成された防壁28の下端部280と当接し、軸方向の他方の端部71がロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の上面330と当接する。これにより、環状空間5の外部に繋がる隙間を塞いで、塵埃等の異物がセンタープレート部6の軸受面62と、アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26に形成された支持対象面27との間に侵入するのを阻止する。
【0034】
また、ダストシール部7は、センタープレート部6より薄肉に形成され、軸方向断面形状において、アッパーケース2側と当接する一方の端部70が径方向外方に傾斜している。このため、ダストシール部7の一方の端部70は、アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26に形成された防壁28に撓みながら接触する(図2参照)。ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重に対して作用するダストシール部7の反力によって、環状空間5の外部に繋がる隙間を塞ぐのに十分なシール性を得ている。
【0035】
連結アーム部8は、センタープレート部6の外周側から径方向外方に延びてダストシール部7と連結する。また、連結アーム部8は、ロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の載置面331に複数形成された回り止め332同士の隙間334よりも狭い円周方向の幅を有し、この隙間334に配置されることにより、センタープレート部6がこの載置面331に載置される。そして、連結アーム部8が回り止め332と円周方向に係合することにより、ダストシール一体型センタープレート4の回転が阻止される。なお、本実施の形態では、6個の連結アーム部8を設けているが、連結アーム部8は少なくとも1個あればよい。
【0036】
上記構成を有する本実施の形態に係る滑り軸受1において、ダストシール一体型センタープレート4は、連結アーム部8とロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の載置面331に形成された回り止め332との円周方向の結合により回転が阻止された状態で、センタープレート部6がこの載置面331に載置され、センタープレート部6の軸受面62がアッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の支持対象面27と摺接する。このため、ダストシール一体型センタープレート4は、ロワーケース3のフランジ35の下面36に取り付けられたアッパースプリングシートおよびストラット式サスペンションのコイルスプリングによって支持され、アッパーケース2およびロワーケース3間の回動を許容しつつ、アッパーケース4に伝達されたストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持する。
【0037】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0038】
本実施の形態では、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5において、ダストシール部7の軸方向の一方の端部70がアッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26より下方側に突出して形成された防壁28と当接し、軸方向の他方の端部71がロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の上面330側と当接するように、ダストシール一体型センタープレート4を環状空間5に配置しているので、ダストシール部7に芯金を埋め込んで剛性を上げなくても、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重に対するダストシール部7の反力によって、環状空間5の外部に繋がる隙間を塞ぐのに十分なシール性を得ることができる。また、ダストシール部7は、センタープレート部6の外周側から径方向外方に延びる連結アーム部8によりセンタープレート部6に連結され、センタープレート部6と一体的に形成されているので、ダストシール部7を別部品として用意する必要がなくなり、滑り軸受1の部品点数を減らすことができる。したがって、本実施の形態によれば、より低コストで、塵埃、泥水等の侵入による摺動性能の低下を防止することができる。
【0039】
また、本実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の上面330に形成された載置面331の外周側に、円弧状に突出した回り止め332を形成している。この回り止め332は、ダストシール一体型センタープレート4の連結アーム部8と円周方向に係合して、ダストシール一体型センタープレート4の回転を阻止するとともに、ダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の外周側と当接し、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重によってセンタープレート部6が径方向外方へ変形するのを阻止する。したがって、本実施の形態によれば、センタープレート部6の径方向外方への変形によりダストシール部7の配置位置がずれて、ダストシール部7のシール性が低下するのを防止することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、ダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の軸受面62に潤滑グリース溜め65を多数形成しているので、軸受面62上により多くの潤滑グリースを保持することができる。このため、軸受面62を潤滑グリース膜で覆うことができ、より長期に亘り、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、アッパーケース2のアッパーケース本体21の下面24に形成された環状溝25の溝底26に、アッパーケース2およびロワーケース3を組み合わせることにより形成される環状空間5に配置されたダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の外周側を囲む環状の防壁28を設けている。この防壁28により、ストラット式サスペンションに荷重が加わった場合に、環状空間5に充填された潤滑グリースがセンタープレート部6の軸受面62上から径方向外方に押し出されるのを防止して、軸受面62をより確実に潤滑グリース膜で覆うことができる。したがって、より長期に亘り、ストラット式サスペンションのストラットアッセンブリの円滑な回動を許容しつつ、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重を支持することができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形は可能である。
【0043】
例えば、上記の実施の形態では、ロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の上面330に形成された載置面331の外周側に、回り止め332を形成しているが、本発明はこれに限定されない。アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26に形成された支持対象面27の外周側に回り止めを形成し、この回り止めを、ダストシール一体型センタープレート4の連結アーム部8と円周方向に係合させて、ダストシール一体型センタープレート4の回転を阻止するとともに、ダストシール一体型センタープレート4のセンタープレート部6の外周側と当接させて、ストラット式サスペンションに加わる車体の荷重によってセンタープレート部6が径方向外方へ変形するのを阻止してもよい。
【0044】
また、上記の実施の形態では、ダストシール一体型センタープレート4のダストシール部7の軸方向の一方の端部70を、アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26より下方側に突出して形成された防壁28に当接させることにより、環状溝25の溝底26に当接させているが、環状溝25の溝底26に直接当接させてもよい。
【0045】
また、上記の実施の形態では、ダストシール一体型センタープレート4の軸方向断面形状において、アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の溝底26側と当接するダストシール部7の軸方向の一方の端部70を径方向外方に傾斜させている(図2参照)。しかし、本発明はこれに限定されない。ダストシール部7は、軸方向断面形状において、両端部70、71の少なくとも一方が径方向外方あるいは径方向内方に傾斜していればよい。
【0046】
例えば、図6(A)に示すダストシール部7aのように、軸方向断面形状において、両端部70、71を径方向外方に傾斜させてもよい。あるいは、図6(B)に示すダストシール部7bのように、軸方向断面形状において、ロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の上面330側と当接する端部71を、径方向内方に傾斜させてもよい。
【0047】
また、上記の実施の形態において、アッパーケース2のアッパーケース本体21の環状溝25の内周側壁面29とロワーケース3のロワーケース本体31の環状突部33の内周側壁面335との隙間50(図2参照)を介して、環状空間5に塵埃、泥水等が浸入する可能性があるならば、この隙間50を塞ぐダストシールを追加してもよい。
【0048】
例えば、図7に示すダストシール一体型センタープレート4aのように、センタープレート部6のリブ64のロワーケース3側の端部640に、環状空間5に繋がる隙間50を塞ぐダストシール部9を一体的に形成してもよい。
【0049】
また、上記の実施の形態では、ダストシール一体型センタープレート4をロワーケース3に載置し固定しているが、ダストシール一体型センタープレート4をロワーケース3に対して回動自在に載置してもよい。すなわち、センタープレート部6の上面60と同様に、センタープレート部6の下面63にも軸受面を形成し、この軸受面を、ロワーケース3のロワーケース本体31の上面32に形成された環状突部33の載置面331と摺動可能に接触させてもよい。この場合、環状突部33の載置面331の外周側に配置される回り止め332は不要である。また、センタープレート部6の下面63に形成された軸受面により多くの潤滑グリースを保持させるため、この軸受面にも潤滑グリース溜めを多数形成してもよい。
【0050】
また、本発明の滑り軸受は、ストラット式サスペンションを含む様々な機構において、軸部材の回動を許容しつつ、この軸部材に加わる荷重を支持する滑り軸受に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:滑り軸受、 2:アッパーケース、 3:ロワーケース、 4:ダストシール一体型センタープレート、 5:環状空間、 6:センタープレート部、 7、7a、7b:ダストシール部、 8:連結アーム部、 9:ダストシール部、 10:滑り軸受1の収容孔、 20:アッパーケース2の挿入孔、 21:アッパーケース本体、 22:アッパーケース本体21の上面、 23:アッパーケース本体21の取付面、 24:アッパーケース本体21の下面、 25:アッパーケース本体21の環状溝、 26:環状溝25の溝底、 27:アッパーケース本体21の支持対象面、 28:アッパーケース本体21の防壁、 29:環状溝25の内周側壁面、 30:ロワーケース3の挿入孔、 31:ロワーケース本体、 32:ロワーケース本体31の上面、 33:ロワーケース本体31の環状突部、 34:ロワーケース本体31の側面、 35:ロワーケース本体31のフランジ、 36:フランジ35の下面、 50:環状空間5に繋がる隙間、 60:センタープレート本体、 61:センタープレート本体60の上面、 62:センタープレート本体60の軸受面、 63:センタープレート本体60の下面、 64:センタープレート本体60のリブ、 65:軸受面62の潤滑グリース溜め、 70、71:ダストシール部7、7a、7bの軸方向の端部、 280:防壁28の下端部、 330:環状突部33の上面、 331:ロワーケース本体31の載置面、 332:ロワーケース本体31の回り止め、 334:回り止め332同士の隙間、 335:環状突部33の内周側壁面、 640:リブ64の端部
図1
図2
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図5
図6
図7