【解決手段】体液を含む測定試料を流すためのフローセルと、フローセルを流れる測定試料に光を照射する光照射部と、光が照射された測定試料中の細胞から生じる前方散乱光を検出する光検出部と、光検出部において検出された前方散乱光信号に基づいて体液中の細胞を検出する解析部と、出力部と、を備える。解析部は、前方散乱光信号強度および前方散乱光信号幅に基づいて、体液中の腫瘍細胞に関する情報を出力部に出力する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の細胞分析装置および細胞分析方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
〔細胞分析装置〕
本実施形態に係る細胞分析装置1は、体液検体に含まれる白血球、マクロファージ、中皮細胞、腫瘍細胞等の有核細胞を検出し、各細胞を計数する細胞分析装置である。なお、本発明における「体液」は、血液を除く、脳髄液、腹水、胸水、滑液、腹膜透析排液等を意味する。細胞分析装置1は、
図1に示されるように、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された搬送ユニット3と、情報処理ユニット4とを備えている。患者から採取された体液検体は、検体容器Tに収容される。複数の検体容器TがサンプルラックLに支持される。サンプルラックLが搬送ユニット3により搬送されることで、体液検体が測定ユニット2へ供給される。
【0014】
情報処理ユニット4は、出力部41と入力部42とを備えている。情報処理ユニット4は、測定ユニット2、搬送ユニット3、およびホストコンピュータ5(
図2参照)に対して、通信可能に接続されている。情報処理ユニット4は、測定ユニット2および搬送ユニット3の動作を制御し、測定ユニット2で行われた測定結果に基づいて解析を行い、解析結果をホストコンピュータ5に送信する。
【0015】
測定ユニット2は、
図2に示されるように、ハンド部21と、検体容器セット部22と、バーコードユニット23と、検体吸引部24と、試料調製部25と、検出部26とを備えている。検体吸引部24は、ピアサ24aを備えており、検体容器Tから検体を吸引する。試料調製部25は、混合チャンバMCとヒータHとを備えており、検体に試薬を混和することにより測定に用いられる測定試料を調製する。検出部26は、光学検出器Dを備えており、測定試料から細胞を検出する。測定ユニット2の各部は、情報処理ユニット4により制御される。
【0016】
搬送ユニット3により位置P1に位置付けられた検体容器Tは、ハンド部21により把持され、サンプルラックLから上方向に抜き出される。ハンド部21が揺動されることにより、検体容器T内の検体が撹拌される。攪拌が終了した検体容器Tは、ハンド部21により、位置P1に位置付けられた検体容器セット部22にセットされる。その後、検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P2まで搬送される。
【0017】
検体容器Tが位置P2に位置付けられると、位置P2の近傍に設置されたバーコードユニット23により、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルから検体番号が読み取られる。その後、検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P3まで搬送される。検体容器Tが位置P3に位置付けられると、検体吸引部24によりピアサ24aを介して検体容器Tから所定量の検体が吸引される。検体の吸引が終了すると、検体容器Tは、検体容器セット部22により前方に搬送され、ハンド部21により元のサンプルラックLの支持位置に戻される。ピアサ24aを介して吸引された検体は、ピアサ24aが混合チャンバMCの位置へ移送された後、検体吸引部24により混合チャンバMCに所定量だけ吐出される。
【0018】
試料調製部25は、第1試薬を収容する試薬容器251と、第2試薬を収容する試薬容器252と、シース液(希釈液)を収容する試薬容器253とに、それぞれチューブを介して接続されている。試料調製部25は、コンプレッサ(図示せず)に接続されており、前記コンプレッサにより生成される圧力により試薬容器251〜253から、それぞれの試薬を分取することが可能である。試料調製部25は、混合チャンバMC内で、体液検体と、第1試薬と、第2試薬とを混合し、この混合液を所定時間だけヒータHにより加温して測定試料を調製する。試料調製部25で調製された測定試料は、検出部26の光学検出器Dに供給される。
【0019】
検出部26は、シース液(希釈液)を収容する試薬容器253に、チューブを介して接続されている。検出部26は、コンプレッサ(図示せず)に接続されており、前記コンプレッサにより生成される圧力により試薬容器253からシース液(希釈液)を分取することが可能である。
【0020】
光学検出器Dは、
図3に示されるように、フローセルD1と、シースフロー系D2と、ビームスポット形成系D3と、前方散乱光受光系D4と、側方散乱光受光系D5と、蛍光受光系D6とを備えている。
【0021】
シースフロー系D2は、フローセルD1内に測定試料をシース液に包まれた状態で送り込み、フローセルD1中に液流を発生させる。ビームスポット形成系D3は、光照射部である半導体レーザD31から照射された光が、コリメータレンズD32とコンデンサレンズD33とを通って、フローセルD1に照射されるよう構成されている。これにより、フローセルD1内を通過する液流に含まれる細胞にレーザ光が照射される。ビームスポット形成系D3は、ビームストッパD34も備えている。
【0022】
前方散乱光受光系D4は、前方への散乱光(前方散乱光)を前方集光レンズD41によって集光し、ピンホールD42を通った光をフォトダイオードD43で受光するように構成されている。フォトダイオードD43は、受光した前方散乱光のピーク値に基づいて前方散乱光信号(FSC)を出力する。側方散乱光受光系D5は、側方への散乱光(側方散乱光)を側方集光レンズD51にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラーD52で反射させ、フォトダイオードD53で受光するよう構成されている。フォトダイオードD53は、受光した側方散乱光のピーク値に基づいて側方散乱光信号(SSC)を出力する。
【0023】
光散乱は、光の進行方向に細胞のような粒子が障害物として存在すると、粒子により光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさと材質とに関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(細胞)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。細胞にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度および顆粒の量)に依存する。
【0024】
蛍光受光系D6は、側方散乱光のうちダイクロイックミラーD52を透過した光(蛍光)をさらに分光フィルタD61に通し、アバランシェフォトダイオードD62で受光するよう構成されている。アバランシェフォトダイオードD62は、受光した蛍光のピーク値に基づいて蛍光信号(SFL)を出力する。
【0025】
蛍光物質により染色された細胞に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の蛍光が発せられる。蛍光の強度は、細胞がよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって細胞の染色度合いに関する情報を得ることができる。
本実施形態では、フォトダイオードD43、フォトダイオードD53、およびアバランシェフォトダイオードD62が、光検出部を構成している。
【0026】
図2に戻り、光学検出器Dにより取得された前方散乱光信号、側方散乱光信号、および蛍光信号は、情報処理ユニット4に送信される。情報処理ユニット4は、受信したこれら信号に基づいて解析を実行する。
【0027】
情報処理ユニット4は、
図4に示されるように、パーソナルコンピュータからなり、本体40と、出力部41と、入力部42とで構成されている。本体40は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、読出装置405と、画像出力インターフェース406と、入出力インターフェース407と、通信インターフェース408とを備えている。本実施形態における出力部41は、画像等を表示することができるディスプレイであるが、紙で情報を出力をするプリンタ等も出力部として採用することができる。
【0028】
解析部を構成するCPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。RAM403は、前記コンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0029】
ハードディスク404には、オペレーティングシステム、CPU401に実行させるためのコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。ハードディスク404には、
図8、
図10および
図12に示される情報処理ユニット4の処理を実行させるためのプログラム404aが記憶されている。読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体405aに記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。プログラム404aが記録媒体405aに記録されている場合には、読出装置405により記録媒体405aから読み出されたプログラム404aが、ハードディスク404に記憶される。
【0030】
画像出力インターフェース406は、画像データに応じた映像信号を出力部41に出力する。出力部41は、画像出力インターフェース406から出力された映像信号に基づいて画像を表示する。ユーザは、入力部42を介して指示を入力する。入出力インターフェース407は、入力部42を介して入力された信号を受け付ける。通信インターフェース408は、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5とに接続されており、CPU401は、通信インターフェース408を介して、これら装置との間で指示信号およびデータの送受信を行う。
【0031】
試料調製部25では、体液中に含まれていることがある赤血球を溶血させ、白血球等の細胞の細胞膜に蛍光色素が透過できる程度の損傷を与え、細胞(有核細胞)の核酸を染色するために、体液検体と試薬とが混合されて測定試料が調製される。具体的には、以下の第1試薬および第2試薬が体液検体に混合されて測定試料が調製される。
【0032】
第1試薬は、有核細胞の核酸を染色可能な蛍光色素を含有し、後述する第2試薬で処理された体液試料中の有核細胞の核酸を蛍光染色するための試薬である。血液試料を第1試薬で処理することにより、核酸を有する白血球等の細胞が染色される。
【0033】
蛍光色素は、核酸を染色できるのであれば本発明において特に限定されず、光源(半導体レーザD31)から照射される光の波長に応じて適宜選択することができる。そのような蛍光色素としては、例えば、プロピジウムアイオダイド、エチジウムブロマイド、エチジウム−アクリジンヘテロダイマー、エチジウムジアジド、エチジウムホモダイマー−1、エチジウムホモダイマー−2、エチジウムモノアジド、トリメチレンビス[[3‐[[4‐[[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]メチレン]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐1‐イル]プロピル]ジメチルアミニウム]・テトラヨージド(TOTO−1)、4‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐2(3H)‐イリデン)メチル]‐1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]キノリニウム・ジヨージド(TO−PRO−1)、N,N,N',N'‐テトラメチル‐N,N'‐ビス[3‐[4‐[3‐[(3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム)‐2‐イル]‐2‐プロペニリデン]‐1,4‐ジヒドロキノリン‐1‐イル]プロピル]‐1,3‐プロパンジアミニウム・テトラヨージド(TOTO−3)、または2‐[3‐[[1‐[3‐(トリメチルアミニオ)プロピル]‐1,4‐ジヒドロキノリン]‐4‐イリデン]‐1‐プロペニル]‐3‐メチルベンゾチアゾール‐3‐イウム・ジヨージド(TO−PRO−3)および以下の一般式(I)で表される蛍光色素が挙げられる。それらの中でも、以下の一般式(I)で表される蛍光色素が好ましい。
【0035】
式(I)中、R
1およびR
4は、互いに同一または異なっており、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基を有するアルキル鎖、エーテル基を有するアルキル鎖、エステル基を有するアルキル鎖、または置換基を有していてもよいベンジル基である。R
2およびR
3は、互いに同一または異なっており、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基またはフェニル基である。Zは、硫黄原子、酸素原子、またはメチル基を有する炭素原子であり、nは、0、1、2または3であり、X
−はアニオンである。
【0036】
本実施形態では、アルキル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれであってもよい。式(I)中、R
1およびR
4のいずれか一方が炭素数6〜18のアルキル基である場合、他方は水素原子または炭素数6未満のアルキル基であることが好ましい。炭素数6〜18のアルキル基の中でも、炭素数が6、8または10のアルキル基が好ましい。
【0037】
式(I)中、R
1およびR
4のベンジル基の置換基として、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられる。それらの中でも、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
【0038】
式(I)中、R
2およびR
3のアルケニル基として、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられる。R
2およびR
3のアルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。それらの中でも、特にメトキシ基またはエトキシ基が好ましい。
【0039】
式(I)中、アニオンX
−として、F
−、Cl
−、Br
−およびI
−のようなハロゲンイオン、CF
3SO
3−、BF
4−等が挙げられる。
第1試薬中の蛍光色素は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0040】
第1試薬中の蛍光色素の濃度は、蛍光色素の種類に応じて適宜設定できるが、通常0.01〜100pg/μL、好ましくは、0.1〜10pg/μLである。例えば、第1試薬の蛍光色素として、式(I)で表される蛍光色素を用いる場合、第1試薬中の該蛍光色素の濃度は、好ましくは0.2〜0.6pg/μLであり、より好ましくは0.3〜0.5pg/μLである。
【0041】
第1試薬は、前述した蛍光色素を前記濃度になるように適切な溶媒に溶解させることにより得ることができる。溶媒としては、前述した蛍光色素を溶解させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、アルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。蛍光色素は、水溶液中での保存安定性が悪い場合があるので、有機溶媒に溶解させることが好ましい。
【0042】
第1試薬として、市販されている白血球分類用の染色試薬を用いてもよい。そのような染色試薬としては、例えば、シスメックス株式会社製のフルオセル(登録商標) WDFが挙げられる。フルオセル WDFは、式(I)で示される蛍光色素を含む染色試薬である。
【0043】
第2試薬は、赤血球を溶血させ、細胞の細胞膜に前記第1試薬中の蛍光色素が透過できる程度の損傷を与えるための界面活性剤、すなわち、カチオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤を含有する。第2試薬は、20mM以上50mM以下の濃度で芳香族の有機酸を含有する。ここで、第2試薬は、芳香族の有機酸の濃度が20mM以上30mM未満の場合は、第2試薬のpHが5.5以上6.4以下であり、芳香族の有機酸の濃度が30mM以上50mM以下の場合は、第2試薬のpHが5.5以上7.0以下であることを特徴とする。
【0044】
本実施形態では、第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が20mM以上30mM未満の場合、第2試薬のpHは5.5以上6.4以下が好ましく、5.5以上6.2以下がより好ましい。第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が30mM以上50mM以下、好ましくは40mM以上50mM以下である場合、第2試薬のpHが5.5以上7.0以下である。さらに好ましくは、第2試薬中の芳香族の有機酸の濃度が40mM以上50mM以下である場合、第2試薬のpHが5.5以上6.2以下である。
【0045】
本実施形態では、芳香族の有機酸とは、分子中に少なくとも1つの芳香環を有する酸およびその塩を意味する。芳香族の有機酸としては、例えば、芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。本実施形態では、フタル酸、安息香酸、サリチル酸、馬尿酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびそれらの塩が好適に用いられる。第2試薬中の芳香族の有機酸は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。第2試薬中に芳香族の有機酸を2種類以上含む場合、それらの濃度の合計が20mM以上50mM以下であればよい。
【0046】
カチオン性界面活性剤として、第四級アンモニウム塩型界面活性剤、または、ピリジニウム塩型界面活性剤を用いることができる。
【0047】
第四級アンモニウム塩型界面活性剤としては、例えば以下の式(II)で表される、全炭素数が9〜30の界面活性剤が挙げられる。
【0049】
(II)中、R
1は、炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基である。R
2およびR
3は、互いに同一または異なっており、炭素数1〜4のアルキル基またはアルケニル基である。R
4は、炭素数1〜4のアルキル基若しくはアルケニル基、またはベンジル基であり、X
−はハロゲン原子である。
【0050】
式(II)中、R
1としては、炭素数が6、8、10、12および14のアルキル基またはアルケニル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。より具体的なR
1としては、オクチル基、デシル基およびドデシル基が挙げられる。R
2およびR
3としては、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましい。R
4としては、メチル基、エチル基およびプロピル基が好ましい。
【0051】
ピリジニウム塩型界面活性剤としては、例えば以下の式(III)で表される界面活性剤が挙げられる。
【0053】
式(III)中、R
1は、炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基であり、X
−はハロゲン原子である。
【0054】
式(III)中、R
1としては、炭素数が6、8、10、12および14のアルキル基またはアルケニル基が好ましく、特に直鎖のアルキル基が好ましい。より具体的なR
1としてはオクチル基、デシル基およびドデシル基が挙げられる。
【0055】
第2試薬中のカチオン性界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類により適宜調節できるが、通常10〜10000ppm、好ましくは100〜1000ppmである。
【0056】
ノニオン性界面活性剤として、以下の式(VI)で表されるポリオキシエチレン系ノニオン界面活性剤が好ましい。
R
1−R
2−(CH
2CH
2O)
n−H (VI)
【0057】
式(VI)中、R
1は炭素数8〜25のアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基であり、R
2は酸素原子、−COO−または
【0058】
【化4】
であり、nは10〜50の整数である。
【0059】
前記ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0060】
第2試薬中のノニオン性界面活性剤の濃度は、通常10〜100000ppm、好ましくは100〜10000ppm、より好ましくは1000〜5000ppmである。
【0061】
第2試薬は、pHを一定に保つために緩衝剤を含んでいてもよい。そのような緩衝剤としては、例えばクエン酸塩、HEPESおよびリン酸塩等が挙げられる。前記芳香族の有機酸が緩衝作用を示す場合がある。そのような芳香族の有機酸を用いる場合は、第2試薬への緩衝剤の添加は任意である。
【0062】
第2試薬の浸透圧は、本発明において特に限定されないが、赤血球を効率よく溶血させる観点から20〜150mOsm/kgであることが好ましい。
【0063】
第2試薬は、前記界面活性剤および芳香族の有機酸またはその塩と、所望により前記緩衝剤とを、前記芳香族の有機酸濃度になるように適切な溶媒に溶解し、pHをNaOH、HCl等を用いて調製することにより得ることができる。溶媒としては、前述した成分を溶解させることができれば、本発明において特に限定されないが、例えば水、有機溶媒およびそれらの混合物が挙げられる。有機溶媒としては、例えばアルコール、メタノール、エチレングリコール、DMSO等が挙げられる。
【0064】
第2試薬として、市販されている白血球分類用の溶血試薬を用いてもよい。そのような溶血試薬としては、例えばシスメックス株式会社製のライザセル(登録商標) WDFが挙げられる。ライザセル WDFは、前述したカチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を含む溶血試薬である。
【0065】
前記のように構成された第2試薬により、赤血球が溶血され、細胞の細胞膜に第1試薬中の蛍光色素が通過できる程度の損傷が与えられる。前記のように構成された第1試薬により、第2試薬によって細胞膜に損傷を受けた細胞が染色される。
【0066】
〔細胞分析方法〕
次に、前述した構成を有する細胞分析装置を用いて体液検体中の腫瘍細胞を検出する方法について説明する。
本発明は、腫瘍細胞の種類と、それぞれの腫瘍細胞の分布図(スキャッタグラム)における分布領域との間に相関関係が存在するという知見に基づいている。本発明は、スキャッタグラムにおいて、異なる種類の腫瘍細胞がそれぞれ特異的に分布する領域を設定し、前記領域に属する細胞の数を計数し、計数された細胞数に基づいて体液中の腫瘍細胞を検出している。
【0067】
本実施形態では、腫瘍細胞には、細胞同士が凝集した凝集腫瘍細胞と、凝集していない非凝集腫瘍細胞とがあることに鑑み、これら凝集腫瘍細胞と非凝集腫瘍細胞とを異なる種類の腫瘍細胞としている。凝集腫瘍細胞と非凝集腫瘍細胞とは、スキャッタグラムにおいて、それぞれ或る特定の領域に特異的に分布する。
【0068】
凝集腫瘍細胞は、白血球、マクロファージおよび中皮細胞を含む有核細胞よりも大きく、スキャッタグラムの「凝集細胞検出領域」に特異的に分布する。したがって、凝集細胞検出領域に属する細胞数を計数することで体液中の凝集腫瘍細胞を、体液中の他の細胞から識別して検出することができる。例えば、前方散乱光信号強度と前方散乱光信号幅とによるスキャッタグラムにおいて、非凝集粒子が分布する領域よりも前方散乱光信号幅が大きい領域を凝集細胞検出領域として設定することができる。
【0069】
一方、非凝集腫瘍細胞は、蛍光信号強度が白血球細胞の分布領域と中皮細胞の分布領域の間の領域に位置する、スキャッタグラムの「非凝集細胞検出領域」に特異的に分布する。したがって、非凝集細胞検出領域に属する細胞数を計数することで体液中の非凝集腫瘍細胞を、体液中の他の細胞から識別して検出することができる。例えば、蛍光信号強度と前方散乱光信号強度とによるスキャッタグラムにおいて、白血球細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が大きく且つ中皮細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が小さい領域を非凝集細胞検出領域として設定することができる。
【0070】
凝集細胞検出領域および非凝集細胞検出領域、さらにはマクロファージ等の有核細胞が、スキャッタグラムにおいて分布する領域は、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、細胞の塗抹標本を顕微鏡で目視にて観察することで、体液中における凝集腫瘍細胞やマクロファージ等の割合(%)を求める。ついで、前記割合の情報に基づいて、スキャッタグラムにおける或る領域に何が分布しているのかを特定する。例えば、体液中にマクロファージが30%の割合で存在している場合、スキャッタグラムにおいて全体の30%の個数がまとまって分布している領域を、マクロファージが分布していると推認する。この作業を複数の検体について行うことで、或る有核細胞がスキャッタグラム上においてどのあたりの領域に分布するのかを特定することができる。
【0071】
図5は、腫瘍細胞を含まない陰性検体のスキャッタグラムの例を示している。
図5および後出する
図6〜7において、(a)は縦軸を前方散乱光信号強度(FSC)とし、横軸を前方散乱光信号幅(FSCW)とするスキャッタグラムであり、(b)は縦軸を蛍光信号強度(SFL)とし、横軸を前方散乱光信号強度(FSC)とするスキャッタグラムである。
前記陰性検体における腫瘍細胞の割合は0.00%であり、中皮細胞の割合は21.21%である。なお、「%」は、白血球数に対する割合を示しており、中皮細胞の割合が21.21%とは、白血球100個当たり中皮細胞が21.21個含まれていることを意味している。
前記陰性検体からは、凝集細胞検出領域および非凝集細胞検出領域のいずれにおいても腫瘍細胞が検出されない。
【0072】
図6は、凝集腫瘍細胞を含む検体のスキャッタグラムの例を示している。この検体における腫瘍細胞の割合は66.2%であり、中皮細胞の割合は13.14%である。
この検体からは、
図6の(a)において太い黒矢印で示される凝集細胞検出領域において凝集腫瘍細胞が検出されている。
【0073】
図7は、非凝集腫瘍細胞を含む検体のスキャッタグラムの例を示している。この検体における腫瘍細胞の割合は662.0%であり、中皮細胞の割合は8.00%である。
この検体からは、
図7の(b)において太い黒矢印で示される非凝集細胞検出領域において非凝集腫瘍細胞が検出されている。
【0074】
[第1実施形態]
図8は、第1実施形態に係る細胞分析方法における測定ユニット2および情報処理ユニット4による処理を示すフローチャートである。第1実施形態では、腫瘍細胞のうち、凝集腫瘍細胞を検出することができる。凝集腫瘍細胞は、白血球、マクロファージおよび中皮細胞を含む有核細胞よりも大きく、前方散乱光信号強度と前方散乱光信号幅とによるスキャッタグラムにおいて、非凝集粒子が分布する領域よりも前方散乱光信号幅が大きい領域(凝集細胞検出領域)に特異的に分布している。前記領域に特異的に分布することを利用して、腫瘍細胞のうち、凝集腫瘍細胞を検出する。
【0075】
まず、測定ユニット2は、ステップS1において、体液検体に含まれる赤血球を溶血させ、有核細胞の核酸を蛍光染色するために、測定試料の調製処理を行う。具体的には、前述したように、患者から採取された体液検体と、第1試薬と、第2試薬とが混合され、この混合液がヒータHにより加温されることにより、測定試料が調製される。
【0076】
ついで、測定ユニット2は、ステップS2において、ステップS1において調製された測定試料に基づいて細胞の検出処理を行う。具体的には、前述したように、光学検出器Dにより、各細胞に関する前方散乱光尊号と、側方散乱光信号と、蛍光信号とが取得される。
測定ユニット2により取得された信号は、ステップS3において、情報処理ユニット4に送信される。
【0077】
情報処理ユニット4のCPU401は、ステップS11において、測定ユニット2から、各細胞に関する前方散乱光尊号と、側方散乱光信号と、蛍光信号とを受信して、受信した信号をハードディスク404に記憶させる。
ついで、CPU401は、ステップS12において、受信した信号に基づいて第1スキャッタグラムを作成する。第1スキャッタグラムは、前方散乱光信号の強度(FSC)を縦軸とし、前方散乱光信号の幅(FSCW)を横軸とするスキャッタグラムである。
【0078】
図9は、作成された第1スキャッタグラムの模式図である。凝集腫瘍細胞は、白血球、マクロファージおよび中皮細胞を含む有核細胞よりも大きいので、前述したように、白血球細胞等の非凝集粒子が分布する領域(非凝集細胞検出領域)よりも前方散乱光信号強度および前方散乱光信号幅が大きい領域(凝集細胞検出領域)に特異的に分布している。なお、前方散乱光信号強度が所定の値以上であり、スキャッタグラムからスケールアウトする大きな粒子は、スキャッタグラム上の最も高強度の位置に表示されている。
【0079】
ついで、CPU401は、ステップS13において、凝集細胞検出領域に分布する細胞の数C1を計数する。
ついで、CPU401は、ステップS14において、ステップS13で計数された細胞の数C1が所定値T1以上であるか否かの判定を行う。細胞の数C1が所定値T1以上であると判定される(YES)と、ステップS15に進み、CPU401は、RAM403またはハードディスク404に記憶されている判定フラグの値に1をセットする。一方、細胞の数C1が所定値T1未満であると判定される(NO)と、CPU401は、ステップS16に処理を進める。
【0080】
ついで、CPU401は、ステップS16において、出力部41に分析結果画面を表示する。この分析結果画面には、例えば検体番号、リサーチ項目、作成された第1スキャッタグラム、後述する警告等を表示させることができる。
【0081】
ついで、CPU401は、ステップS16において、判定フラグの値が1であるか否かの判断を行う。判定フラグの値が1であると判断される(YES)と、ステップS18に進み、ステップS18において、CPU401は、測定した体液検体には凝集腫瘍細胞が含まれている可能性がある旨の警告を出力部41の分析結果画面に表示させる。一方、判定フラグの値が1でないと判断される(NO)と、処理は終了する。
【0082】
[第2実施形態]
図10は、第2実施形態に係る細胞分析方法における測定ユニット2および情報処理ユニット4による処理を示すフローチャートである。第2実施形態では、腫瘍細胞のうち、非凝集腫瘍細胞を検出することができる。非凝集腫瘍細胞は、蛍光信号強度と前方散乱光信号強度とによるスキャッタグラムにおいて、単核白血球細胞および中皮細胞の出現する領域にまたがって出現する。しかしながら、単核白血球細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が大きく且つ中皮細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が小さい領域(非凝集細胞検出領域)において特異的に分布している。前記領域に特異的に分布することを利用して、腫瘍細胞のうち、非凝集腫瘍細胞を検出する。この方法では、非凝集腫瘍細胞が単核白血球細胞および中皮細胞の出現領域のみに出現した場合には検出することができない。しかし、非凝集腫瘍細胞は非凝集細胞検出領域を中心として単核白血球細胞および中皮細胞の出現する領域にまたがって出現するため、非凝集細胞検出領域における細胞の出現数を計数することにより、体液検体中の非凝集腫瘍細胞の出現を高い特異度で検出することができる。
【0083】
測定ユニット2における測定試料の調製処理(ステップS1)、細胞の検出処理(ステップS2)、および取得信号の情報処理ユニット4への送信(ステップS3)は、第1実施形態におけるステップS1からステップS3までと同じである。したがって、簡単のため、これらについての説明は省略する。
【0084】
情報処理ユニット4のCPU401は、ステップS21において、測定ユニット2から、各細胞に関する前方散乱光信号と、側方散乱光信号と、蛍光信号とを受信して、受信した信号をハードディスク404に記憶させる。
【0085】
ついで、CPU401は、ステップS22において、受信した信号に基づいて第2スキャッタグラムを作成する。第2スキャッタグラムは、蛍光信号の強度(SFL)を縦軸とし、前方散乱光信号の強度(FSC)を横軸とするスキャッタグラムである。
【0086】
図11は、作成された第2スキャッタグラムの模式図である。非凝集腫瘍細胞は、蛍光信号の強度(SFL)を縦軸とし、前方散乱光信号の強度(FSC)を横軸とするスキャッタグラムにおいて、白血球細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が大きく且つ中皮細胞が分布する領域よりも蛍光信号強度が小さい領域(非凝集細胞検出領域)に特異的に分布している。
【0087】
ついで、CPU401は、ステップS23において、非凝集細胞検出領域に分布する細胞の数C2を計数する。前記のような非凝集細胞検出領域を設定することにより、検出した蛍光信号等の光情報により作成された第2スキャッタグラムに基づいて、
図11に示されるように、少なくとも白血球、マクロファージおよび中皮細胞から、非凝集腫瘍細胞を分離して計数することができる。
ついで、CPU401は、ステップS24において、ステップS23で計数された細胞の数C2が所定値T2以上であるか否かの判定を行う。細胞の数C2が所定値T2以上であると判定される(YES)と、ステップS25に進み、CPU401は、RAM403またはハードディスク404に記憶されている判定フラグの値に1をセットする。一方、細胞の数C2が所定値T2未満であると判定される(NO)と、CPU401は、ステップS26に処理を進める。
【0088】
ついで、CPU401は、ステップS26において、出力部41に分析結果画面を表示する。この分析結果画面には、例えば検体番号、リサーチ項目、作成された第2スキャッタグラム、後述する警告等を表示させることができる。
【0089】
ついで、CPU401は、ステップS26において、判定フラグの値が1であるか否かの判断を行う。判定フラグの値が1であると判断される(YES)と、ステップS28に進み、ステップS28において、CPU401は、測定した体液検体には凝集腫瘍細胞が含まれている可能性がある旨の警告を出力部41の分析結果画面に表示させる。一方、判定フラグの値が1でないと判断される(NO)と、処理は終了する。
【0090】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係る細胞分析方法における測定ユニット2および情報処理ユニット4による処理を示すフローチャートである。第3実施形態では、腫瘍細胞のうち、凝集腫瘍細胞および非凝集腫瘍細胞のそれぞれを個別に検出することができる。すなわち、第1実施形態と同様にして凝集腫瘍細胞の検出を行い、第2実施形態と同様にして非凝集腫瘍細胞の検出を行う。このため、第3実施形態に係る細胞分析方法は、第1実施形態または第2実施形態に係る細胞分析方法よりも腫瘍細胞の検出精度を向上させることができる。また、凝集腫瘍細胞および非凝集腫瘍細胞の両方が所定数以上検出された場合を確度の高い警告(高)とし、いずれか一方の腫瘍細胞が所定数以上検出された場合をやや確度の低い警告(低)とする等、分析の信頼度に応じて警告の内容を変えてもよい。
【0091】
測定ユニット2における測定試料の調製処理(ステップS1)、細胞の検出処理(ステップS2)、および取得信号の情報処理ユニット4への送信(ステップS3)は、第1実施形態または第2実施形態におけるステップS1からステップS3までと同じである。したがって、簡単のため、これらについての説明は省略する。
【0092】
情報処理ユニット4のCPU401は、ステップS31において、測定ユニット2から、各細胞に関する前方散乱光尊号と、側方散乱光信号と、蛍光信号とを受信して、受信した信号をハードディスク404に記憶させる。
【0093】
ついで、CPU401は、ステップS32において、受信した信号に基づいて第1スキャッタグラムを作成する。第1スキャッタグラムは、前方散乱光信号の強度(FSC)を縦軸とし、前方散乱光信号の幅(FSCW)を横軸とするスキャッタグラムである(
図9参照)。
【0094】
ついで、CPU401は、ステップS33において、凝集細胞検出領域に分布する細胞の数C1を計数する。
ついで、CPU401は、ステップS34において、ステップS33で計数された細胞の数C1が所定値T1以上であるか否かの判定を行う。細胞の数C1が所定値T1以上であると判定される(YES)と、ステップS35に進み、CPU401は、RAM403またはハードディスク404に記憶されている判定フラグの値に1をセットする。一方、細胞の数C1が所定値T1未満であると判定される(NO)と、CPU401は、ステップS36に処理を進める。
【0095】
ついで、CPU401は、ステップS36において、受信した信号に基づいて第2スキャッタグラムを作成する。第2スキャッタグラムは、蛍光信号の強度(SFL)を縦軸とし、前方散乱光信号の強度(FSC)を横軸とするスキャッタグラムである(
図11参照)。
【0096】
ついで、CPU401は、ステップS37において、非凝集細胞検出領域に分布する細胞の数C2を計数する。
ついで、CPU401は、ステップS38において、ステップS37で計数された細胞の数C2が所定値T2以上であるか否かの判定を行う。細胞の数C2が所定値T2以上であると判定される(YES)と、ステップS39に進み、ステップS39において、判定フラグが1であるか否かの判断を行う。判定フラグが1であると判断される(YES)と、ステップS40に進み、ステップS40において、CPU401は、RAM403またはハードディスク404に記憶されている判定フラグの値に2をセットする。一方、判定フラグが1ではないと判断される(NO)と、CPU401は、ステップS41に処理を進める。
【0097】
ついで、CPU401は、ステップS41において、出力部41に分析結果画面を表示する。この分析結果画面には、例えば検体番号、リサーチ項目、作成された第1スキャッタグラムおよび第2スキャッタグラム、後述する警告(高)または警告(低)等を表示させることができる。
【0098】
ついで、CPU401は、ステップS42において、判定フラグの値が2であるか否かの判断を行う。判定フラグの値が2であると判断される(YES)と、ステップS43に進み、ステップS43において、CPU401は、測定した体液検体には凝集腫瘍細胞が含まれている可能性が大である旨の警告(高)を出力部41の分析結果画面に表示させる。一方、判定フラグの値が2でないと判断される(NO)と、CPU401は、ステップS44に処理を進め、ステップS44において、判定フラグの値が1であるか否かの判断を行う。ステップS44において判定フラグの値が1であると判断される(YES)と、ステップS45に進み、ステップS45において、CPU401は、測定した体液検体には凝集腫瘍細胞が含まれている可能性がある旨の警告(低)を出力部41の分析結果画面に表示させる。一方、判定フラグの値が1でないと判断される(NO)と、処理は終了する。
【0099】
本実施形態では、第1スキャッタグラムを作成し、この第1スキャッタグラムの凝集細胞検出領域中の細胞数C1を計数した後に、第2スキャッタグラムを作成し、この第2スキャッタグラムの非凝集細胞検出領域中の細胞数C2を計数して、体液中の腫瘍細胞を検出しているが、第2スキャッタグラムを作成し、この第2スキャッタグラムの非凝集細胞検出領域中の細胞数C2を計数した後に、第1スキャッタグラムを作成し、この第1スキャッタグラムの凝集細胞検出領域中の細胞数C1を計数して、体液中の腫瘍細胞を検出することもできる。
また、本実施形態では、2種類の警告を発するようにしているが、1種類の警告とすることもできる。すなわち、計数された凝集腫瘍細胞および非凝集腫瘍細胞の数の少なくとも一方が所定値以上である場合に警告を発するようにしてもよい。この場合でも、凝集腫瘍細胞および非凝集腫瘍細胞のいずれか一方のみの判定により腫瘍細胞の有無の警告を行う場合と比較して、体液検体中の腫瘍細胞の有無をより正確に検出できる。
【0100】
〔実施例〕
次に本発明の細胞分析方法の実施例を説明するが、本発明は、もとよりかかる実施例にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
220の検体について、第1実施形態に係る細胞分析方法に従って、腫瘍細胞の検出を行った。検体の種類は、脳髄液、胸水であり、凝集することが考えられる腺癌を対象とした。第1試薬としてフルオセル WDFを用い、第2試薬としてライザセル WDFを用いた。目視法との比較結果を表1に示す。表1において、「1」は陽性判定(凝集腫瘍細胞あり)、「0」は陰性判定(凝集腫瘍細胞なし)を示している。
【0102】
実施例1における感度は72.2%であり、特異度は98.0%であった。陽性的中率(Positive Predictive Value、PPV)は76.5%であり、陰性的中率(Negative Predictive Value、NPV)は98.6%であった。
【0103】
[実施例2]
209の検体について、第2実施形態に係る細胞分析方法に従って、腫瘍細胞の検出を行った。検体の種類は、脳髄液、胸水であり、腺癌以外の腫瘍を対象とした。第1試薬としてフルオセル WDFを用い、第2試薬としてライザセル WDFを用いた。目視法との比較結果を表2に示す。
【0105】
実施例2における感度は37.5%であり、特異度は95.0%であった。陽性的中率PPVは23.1%であり、陰性的中率NPVは97.4%であった。
【0106】
[実施例3]
220の検体について、第3実施形態に係る細胞分析方法に従って、腫瘍細胞の検出を行った。検体の種類は、脳髄液、胸水であり、第1試薬としてフルオセル WDFを用い、第2試薬としてライザセル WDFを用いた。目視法との比較結果を表2に示す。凝集腫瘍細胞および非凝集腫瘍細胞の少なくとも一方が所定数以上検出された場合を陽性判定とした。
【0108】
実施例3における感度は72.2%であり、特異度は98.0%であった。陽性的中率PPVは76.5%であり、陰性的中率NPVは97.5%であった。
【0109】
〔その他の変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。