【解決手段】耐熱性を有する容器100に、フレッシュコンクリートFCを充填し、容器100の外側からマイクロ波照射手段を用いてマイクロ波Mを照射して高温状態で所定時間養生して、フレッシュコンクリートFCを半硬化させた貫入抵抗試験体TPに貫入抵抗試験器150を用いて貫入抵抗値を測定し、貫入抵抗値を用いて貫入抵抗測定用試験体TPの圧縮強度を推定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、促進養生供試体を作製して圧縮強度試験を行う必要がある為に、1回の圧縮強度試験を行うのに1時間弱程度の時間を要する。この為、従来よりも時間が短縮されるとは言え、複数のロットの圧縮強度について全数検査を行う事を考えると、更なる時間短縮の必要がある。また、現場にてコンクリートの圧縮強度を推定したい場合には、現場にて促進養生供試体を作製する必要がある他、現場にて圧縮強度試験機を用いて促進養生供試体の圧縮強度を調べる必要がある。通常、圧縮強度試験機は荷重容量が100kN程度の装置であっても1t程度の重量があり、しっかりした基礎の上に設置して使う事が求められる。この為、現場で作製した促進養生供試体の圧縮強度を、現場にて圧縮強度試験機を用いて測定することは困難である。
【0006】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、短時間で圧縮強度を推定できる簡易なコンクリートの圧縮強度推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様によるフレッシュコンクリートの圧縮強度推定方法は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)耐熱性を有する容器に、フレッシュコンクリートを充填し、前記容器の外側からマイクロ波照射手段を用いてマイクロ波を照射して高温状態で所定時間養生し、前記フレッシュコンクリートを半硬化させ、半硬化状態にある前記フレッシュコンクリートに貫入抵抗試験器を用いて貫入抵抗値を測定し、前記貫入抵抗値を用いて前記フレッシュコンクリートが硬化して形成されたコンクリートの圧縮強度を推定すること、を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様によれば、容器に入れたフレッシュコンクリートを半硬化させ、貫入抵抗試験器を用いてコンクリートの貫入抵抗値を測定することで圧縮強度の推定が可能となる。この為、フレッシュコンクリートを打込む前に、短時間でフレッシュコンクリートの品質をチェックできる。この結果、建設するコンクリート構造物の品質を高める事に貢献することが出来る。
【0010】
(2)(1)に記載のコンクリートの圧縮強度推定方法において、前記フレッシュコンクリートの試験練りの際に、前記フレッシュコンクリートを用いて管理用供試体を作製し、前記フレッシュコンクリートを半硬化させて貫入抵抗値を測定し、前記管理用供試体の圧縮強度と前記貫入抵抗値との相関関係を求め、前記フレッシュコンクリートを製造した工場より出荷する際に、前記貫入抵抗試験器を用いた貫入抵抗値の測定を行い、前記相関関係を用いて前記貫入抵抗値より、これから打込もうとする前記フレッシュコンクリートが硬化した場合に得られる圧縮強度を推定すること、が好ましい。
【0011】
上記(2)に記載の態様によれば、特許文献1に示した技術と比較しても促進養生供試体を作らず、フレッシュコンクリートを半硬化の状態にして貫入抵抗値を測定すれば良いため、加熱時間を短縮できる。また、貫入抵抗値の測定も圧縮強度試験に比べて手軽に出来るため、圧縮強度の推定に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0012】
(3)(1)に記載のコンクリートの圧縮強度推定方法において、前記フレッシュコンクリートの試験練りの際に、前記フレッシュコンクリートを用いて管理用供試体を作製し、前記フレッシュコンクリートを半硬化させて貫入抵抗値を測定し、前記管理用供試体の圧縮強度と前記貫入抵抗値との相関関係を求め、前記フレッシュコンクリートを打込む現場にて、前記貫入抵抗試験器を用いた貫入抵抗値の測定を行い、前記相関関係を用いて前記貫入抵抗値より、これから打込もうとする前記フレッシュコンクリートが硬化した場合に得られる圧縮強度を推定すること、が好ましい。
【0013】
上記(3)に記載の態様によれば、貫入抵抗試験器を用いてコンクリートの圧縮強度の推定ができるため、フレッシュコンクリートを打設する現場においても手軽に実施することが可能となる。この結果、フレッシュコンクリートを打込む直前の圧縮強度を含めた品質管理が可能となり、より高い品質のコンクリート構造物の施工が実現出来る。
【0014】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のコンクリートの圧縮強度推定方法において、前記フレッシュコンクリートの前記マイクロ波を用いた養生時間が、前記貫入抵抗値が3.5N/mm
2以上となるように設定されること、が好ましい。
【0015】
上記(4)に記載の態様により、適切な貫入抵抗値を図ることが可能となる。出願人の実験によれば、半硬化状態のフレッシュコンクリートの貫入抵抗値が3.5N/mm
2以上であれば概ね圧縮強度と貫入抵抗値の適切な相関関係が得られることが分かっている。このため、例えば試験練り段階でフレッシュコンクリートを硬化する過程でどの程度の時間加熱すれば、貫入抵抗値が3.5N/mm
2以上となるかを調査することで、スムーズな貫入抵抗試験が実施でき、結果的にコンクリートの圧縮強度の推定に要する時間を短縮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、貫入抵抗測定用試験体TPの作製手順を模式化したものであり、(a)に、フレッシュコンクリート充填工程を、(b)に、温度計測手段を埋め込む様子を、(c)に、促進養生工程を、(d)に、貫入抵抗値の測定の様子を示している。貫入抵抗測定用試験体TPを作製する容器100は、蓋付きの樹脂容器を想定している。無論、容器100に用いる材質については、耐熱性があればガラス製や陶器製であっても良いが、上蓋101で蓋ができることと、マイクロ波を透過できるような物性の材質であることが望ましい。なお詳細は後述するが、容器100内で加熱されて半硬化状態となったフレッシュコンクリートFCを貫入抵抗測定用試験体TPとしている。
【0018】
また、容器100の開口部は所定の面積がある事が望ましい。これは、貫入抵抗測定用試験体TPの表面積の確保を目的としている。出願人の実験によれば、容器100の壁面付近より、中央部の方が柔らかくなる傾向にある事が分かっていて、貫入抵抗測定部位を確保するためには容器100の開口面積は広い方が望ましい。上蓋101の材質は問わないが、耐熱性があり適切にフレッシュコンクリートFCからの水分蒸発を防げる機能が必要となる。温度計測手段110は、熱電対を想定している。電子レンジ200は、マイクロ波照射手段であり、容器100に対してマイクロ波Mを適切に照射できる機能を有している。
【0019】
貫入抵抗試験器150は、ハンディ型のプッシュプルゲージを想定しており、容易に可搬できる。貫入抵抗測定は、大型の機械でも行うことが出来るが、現場での運用を考えてハンディ型の小型機を用いることが望ましい。そして貫入抵抗試験器150の先端には円柱形状の貫入針151が取り付けられている。この貫入針151を貫入抵抗測定用試験体TPの表面から挿入して、貫入抵抗値を測定する。詳しくは後述する。
【0020】
図2に、貫入抵抗試験の作業手順をフローチャートに示す。
図3に、貫入抵抗測定用試験体TPの作製手順をフローチャートに示す。なお、これらのフローチャートは、説明の都合上、手順を簡略化して説明している。最初に、貫入抵抗試験の作業手順について、
図2を用いながら説明を行う。
【0021】
S10では、試験練りを行い、貫入抵抗相関図の作成を行う。試験練りは、水セメント比(以下、「W/C」とする)の異なる3種類以上の配合を使用する。この試験練りにより、後述する貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値(以下、「貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値」を単に「貫入抵抗値」とする)と管理用供試体の材齢28日の圧縮強度であるσ28(以下、「管理用供試体の材齢28日の圧縮強度」を単に「σ28」とする)の結果との相関を調べ、貫入抵抗値とσ28との貫入抵抗相関を示す相関図を作成する。
【0022】
図5に、貫入抵抗値とσ28の関係をグラフに示す。縦軸はσ28を、横軸は貫入抵抗値を示している。
図5は、試験練りを行いW/Cを変えて測定した貫入抵抗値とσ28の関係を示すものであり、W/Cが40%、50%、60%の貫入抵抗測定用試験体TPと管理用供試体をそれぞれ用意し、貫入抵抗値とσ28を測定し、その平均値を用いてグラフ化している。その結果、相関係数は0.9程度の高い相関性を示している事が分かった。そして、後述する貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値より、
図5を用いてコンクリート構造物のσ28を推定する。S10においても、W/Cが40%、50%、60%の貫入抵抗測定用試験体TPをそれぞれ用意し、貫入抵抗試験器150を用いて貫入抵抗値を測定する。そして、σ28を求めるためのW/Cが40%、50%、60%の管理用供試体をそれぞれ用意し、圧縮強度を測定する。そして、
図5に示すような貫入抵抗値とσ28との相関関係を求める。この相関関係を示す図を貫入抵抗相関図と称する。
【0023】
S11では、コンクリートの練り混ぜを行う。骨材(砂利)や水、添加剤を普通ポルトランドセメントに加えて練り混ぜ、フレッシュコンクリートFCを作製する。なお、第1実施形態では普通ポルトランドセメントを使用しているが、早強セメントや高炉セメントなど他の種類のセメントを用いることを妨げない。このフレッシュコンクリートFCは、後述する現場50に建設されるコンクリート構造物に用いる。貫入抵抗測定用試験体TPもこの際に同じフレッシュコンクリートFCを用いて作る。ここで練り混ぜられるフレッシュコンクリートFCは一般的にコンクリート構造物に用いられるものである。
【0024】
S12では、マイクロ波養生法による貫入抵抗測定用試験体TPの作製を行う。第1実施形態ではマイクロ波発生装置として電子レンジ200を用いている。フレッシュコンクリートFCを容器100内に入れて、電子レンジ200の内部にてマイクロ波Mを照射し、促進養生を行う。具体的には後述する。
【0025】
S13では、貫入抵抗試験を行う。
図1(d)に示すように貫入抵抗測定用試験体TPに貫入抵抗試験器150を用いて貫入抵抗値を測定する。ここで、S10で求めた貫入抵抗相関図を利用して貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗試験の結果から、コンクリート構造物のσ28の圧縮強度を推定する。
【0026】
S14では、試験結果の評価を行う。S15では、貫入抵抗試験の結果から推定される圧縮強度が規定範囲内にあるかを判定する。コンクリート構造物の圧縮強度が規定範囲内になければ、S11のコンクリートの練り混ぜからやり直す。規定範囲に収まっていれば、処理を終了する。S11からやり直す場合は、現場での打込みを中止する。
【0027】
次に、貫入抵抗測定用試験体TPの作製手順について、
図3を用いながら説明を行う。
【0028】
S20で、容器100内にフレッシュコンクリートFCを打込む。
図1(a)に相当する工程である。S21で、容器100内に流し込まれたフレッシュコンクリートFCに熱電対110を埋め込む。そして上蓋101で容器100を密閉する。この熱電対110でフレッシュコンクリートFC内の温度を計測する。ただし、熱電対110での温度計測の他に、図示しない放射温度計を用いて容器100の外面温度を計測するのが好ましい。
【0029】
S22で、容器100を電子レンジ200に入れて加熱する。容器100はマイクロ波Mを透過するので、マイクロ波MはフレッシュコンクリートFC内の水分を振動させて発熱する。この熱がフレッシュコンクリートFC内の水和反応を促進している。
【0030】
S23で、温度が100℃を超えたことを判断する。監視する温度は、容器100の内部に配置した熱電対110によって計測されるフレッシュコンクリートFCの内部の温度である。なお、容器100の外表面等を、図示しない放射温度計を用いて測定し、その温度を参考にするのが好ましい。これらの結果を基に、容器100内のフレッシュコンクリートFCの温度が100℃を超えたところでS24に移行し、それまでは加熱を続ける。
【0031】
S24で、加熱を終了する。電子レンジ200内部に配置された容器100に、マイクロ波Mが照射されることでフレッシュコンクリートFC内を加熱するが、マイクロ波Mの照射を止めることで、フレッシュコンクリートFC内の加熱は終了する。加熱時間は概ね3分〜5分程度を想定しているが、フレッシュコンクリートFCの配合などによって、必要な加熱時間が異なることから、温度による管理が望ましいと思われる。なお、この段階で容器100内のフレッシュコンクリートFCは半硬化状態となっている。前述した通り、ここではこの手順にて容器100内で半硬化状態になったものを貫入抵抗測定用試験体TPとしている。なお、この半硬化状態は貫入抵抗測定用試験体TPに対する貫入抵抗値が3.5N/mm
2程度(以上となるのが望ましい)になることを目安に温度管理される。
【0032】
ここで、貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値を3.5N/mm
2以上にしている理由は、出願人が実験で確認した結果、貫入抵抗値が低すぎる場合には測定対象が柔らかすぎることで数値にばらつきが出る傾向があり、高すぎると貫入針151の挿入が難しくなる上、加熱時間を長く必要とするために効率が悪くなる事が分かったからである。このため、コンクリートの凝結始発時間に相当すると思われる貫入抵抗値が3.5N/mm
2以上であり、望ましくは3.5N/mm
2程度を目安に温度管理されることが望ましい。逆に言えば、加熱時間は貫入抵抗値が3.5N/mm
2程度を目安に設定されても良い。その為には例えば試験練りの段階で加熱時間を徐々に延ばし、貫入抵抗値を逐次測定をしてその関係を調査するような手法も考えられる。
【0033】
S25で、貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値を測定する。
図1(d)に相当する工程で、容器100の温度が下がったところで、容器100内の貫入抵抗測定用試験体TPに対して貫入抵抗試験器150に備えられた貫入針151を差し込み、貫入抵抗値を測定する。容器100内の貫入抵抗測定用試験体TPに貫入針151の先端を挿入して、9点ほど貫入抵抗値を測定し、平均値を求めて貫入抵抗値とする。この際に、出来るだけ容器100の中央付近を測定することが望ましい。そして処理を終了する。
【0034】
図4に、フレッシュコンクリートFCの運搬例を図に示す。フレッシュコンクリートFCは、生コン工場20で製造されて、ミキサー車25でコンクリート構造物を建設する現場50まで運搬される。そして、現場50にてポンプ車30によってフレッシュコンクリートFCが打込まれる。ミキサー車25での運搬時間は30分程度、そして荷卸しに15分程度かかると見込まれていて、生コン工場20から現場50での打込みまで45分程度かかることを想定している。
【0035】
表1は、コンクリートの品質管理項目について表に示す。
【表1】
この表1では、「品質確認時期」について、左側に「従来方法」を右側に「第1実施形態の方法」について説明している。「工場」は
図4に示されるフレッシュコンクリートFCを製造する工場でのことであり、「荷卸し時」は
図4に示されるミキサー車25に積載されたフレッシュコンクリートFCを現場に供給する際である。
【0036】
なお、圧縮強度に関してはフレッシュコンクリートFCを用いて管理用供試体を作製し、その後、材齢28日の管理用供試体を用いて圧縮強度試験を行い、その圧縮強度を調査している。ただし、「工場」での圧縮強度の検査については上述した通り、生コン工場20において貫入抵抗試験器150を用いて貫入抵抗値を測定し、貫入抵抗相関図から管理用供試体を用いてσ28を測定した際に得られるであろう圧縮強度を推定している。第1実施形態のコンクリートの品質管理方法では、基本的に「荷卸し時」と「工場」での検査を行い、ダブルチェックをしている。「塩化物含有量」や「単位水量」は「荷卸し時」に1度検査をすれば足りるので従来と同様としている。圧縮強度は、「工場」と「28日後」のダブルチェックとしている。
【0037】
第1実施形態のコンクリートの圧縮強度推定方法は上記構成であるので、以下に示す作用及び効果を奏する。
【0038】
まず、第1実施形態のコンクリートの圧縮強度推定方法は、耐熱性を有する容器100に、フレッシュコンクリートFCを充填し、容器100の外側からマイクロ波照射手段を用いてマイクロ波Mを照射して高温状態で所定時間養生し、フレッシュコンクリートFCを半硬化させた貫入抵抗測定用試験体TPに貫入抵抗試験器150を用いて貫入抵抗値を測定し、貫入抵抗値を用いてコンクリートの圧縮強度を推定するものである。
【0039】
また、フレッシュコンクリートFCの試験練りの際に、フレッシュコンクリートFCを用いて管理用供試体を作製し、フレッシュコンクリートFCを用いて貫入抵抗測定用試験体TPを作製し、管理用供試体のσ28と貫入抵抗測定用試験体TPの貫入抵抗値との相関関係を求め貫入抵抗相関図を作る。そして、フレッシュコンクリートFCを現場50で打込むにあたり、出荷前に予め生コン工場20内で、貫入抵抗試験器150を用いた貫入抵抗値の測定を行い、貫入抵抗値を得る。そして、貫入抵抗値から貫入抵抗相関図を用いてσ28を推定する。つまり、これから打込もうとするフレッシュコンクリートFCを用いて管理用供試体を作製した場合に得られる材齢28日の圧縮強度の推定が可能となる。
【0040】
上述した
図5に示すような、貫入抵抗値とσ28の相関関係が得られることは既に分かっている。このため、試験練りの際にフレッシュコンクリートFCのW/Cを変えて作製した貫入抵抗測定用試験体TPと管理用供試体を用い、貫入抵抗値とσ28を求め、相関関係を得ることで、そのフレッシュコンクリートFCの管理用供試体を作ったときに得られるであろう圧縮強度が、予め生コン工場20内で作製した貫入抵抗測定用試験体TPを用いて貫入抵抗値を調べることで判明する。この結果、そのフレッシュコンクリートFCを現場50で打込む前に、フレッシュコンクリートFCを打込んだ後のコンクリートの品質が予想でき、コンクリート構造物の品質向上に寄与できる。
【0041】
一般的に、フレッシュコンクリートの性能は材料依存性が高く、ある程度の性能のバラツキは生じやすい。そのため、コンクリート標準示方書では、圧縮強度において「設計基準強度を下回る確率が5%以下であることを、適当な生産者危険率で推定できること」と定めている。従来は、フレッシュコンクリートFCを用いて管理用供試体を作製し、σ28を確認して、3回の試験の内、1回の試験が呼び強度85%以上、かつ3回の平均値が呼び強度以上という条件を満足するかを判断していた。そして条件が満たされなければ、該当するコンクリート構造物に補強・補修などの手段を講じる必要があり、条件を満足すれば、打込まれたコンクリートは生産者危険率が規定を満たすと判断されている。
【0042】
しかし第1実施形態では、フレッシュコンクリートFCの荷卸し前に、生コン工場20にて貫入抵抗測定用試験体TPを作製し貫入抵抗試験を行うことで、前述したようにその試験結果次第でフレッシュコンクリートFCの打込みを行うかどうかの判断をすることができる。促進養生は1回あたり3分〜5分程度の時間で終了するため、貫入抵抗試験の実施を含めて10分以内に完了することができる。
【0043】
この様に短時間で、フレッシュコンクリートFCを用いて現場50にて打込んでできるコンクリートの圧縮強度を、現場50に行く前に、或いはミキサー車25で搬送している間に測定することができるので、現場50にてフレッシュコンクリートFCを打込む前に、そのフレッシュコンクリートFCの品質を判断することが可能となる。この結果、そのフレッシュコンクリートFCの品質に問題があれば、打込みを中止でき、結果的にコンクリート構造物の品質を高める事に貢献することが可能となる。
【0044】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第2実施形態は第1実施形態と用いる機器や手順はほぼ同じであるが、貫入抵抗測定用試験体TPを用いた貫入抵抗値の測定する場所が異なる。以下に説明する。
【0045】
第2実施形態では、表2のような検査を行う。
【表2】
つまり、第1実施形態との違いは、生コン工場20内で行っていた検査項目の殆どを現場50にて行う点にある。検査項目の内、「スランプ」「空気量」「コンクリート温度」は「荷卸し時」に検査をすることとし、「圧縮強度」は「荷卸し時」と「28日後」に行っている。
【0046】
基本的には生コン工場20内で検査を行う方が貫入抵抗試験を行い易いが、本発明で用いる貫入抵抗測定用試験体TPは電子レンジ200を用いて短時間で作製できるため、電源が確保できれば現場50での作製が可能である。また、貫入抵抗試験についても、ハンディタイプの貫入抵抗試験器150を用いれば良い為、現場50でも貫入抵抗試験を行うことは可能である。
【0047】
つまり、生コン工場20からフレッシュコンクリートFCを出荷した後、現場50にて促進養生を行って貫入抵抗測定用試験体TPを作成する。そして、貫入抵抗試験を実施した上で、現場50に到着したフレッシュコンクリートFCが、打込みに適するフレッシュコンクリートFCであるかどうかを、現場50でフレッシュコンクリートFCを打込む前に判断ができる。また、品質確認作業を現場50に集約することで、作業の工数を削減するメリットも得られる。フレッシュコンクリートFCの製造にあたっては、配合ミスなどのヒューマンエラーや構造物中の圧縮強度のバラツキは避けられなかったが、第2実施形態の品質管理方法によって、打込み前に基準に満たないフレッシュコンクリートFCを排除できる。つまり、前述した生産者危険率そのものを排除できることとなるため、結果的に品質向上に貢献することができる。
【0048】
これは、フレッシュコンクリートFCの性質上、この練り混ぜから荷卸しまでの時間までの時間が長くなるほど、フレッシュコンクリートFCのスランプや空気量が低下し、初期ひび割れの発生やコールドジョイントの生成、充填不良などを引き起こす虞が高くなるためである。このため、JISでも練り混ぜから荷卸しまでの時間を90分以内と定めている。しかし、こうしたフレッシュコンクリートFCの性状は、温度依存性の他に骨材などにも影響されるので、練り混ぜから荷卸しまでの時間だけで管理するだけでは、コンクリートの品質を最低限保証できるに過ぎず、品質向上に繋がらなかった。
【0049】
第2実施形態では、表2に示すような運用形態を採ることで、コンクリートの品質に関して検査精度を上げることができる。この結果、コンクリート構造物の寿命を延ばすことにも貢献する。また、第2実施形態のコンクリートの圧縮強度推定方法であれば、ミキサー車50での移動にあたって品質が変化したかどうかという点もチェックすることができる。つまり、輸送による品質の変化を確認することができる。こうした品質の変化を監視できれば、予め生コン工場20でのフレッシュコンクリートFC製造工程にて、品質の変化に対応した配合・練り混ぜなどを実施できる可能性がある。
【0050】
また、貫入抵抗試験器150を用いた簡易な検査でコンクリートの品質のチェックが可能であるため、フレッシュコンクリートFCの品質向上に寄与できる。フレッシュコンクリートFCの品質管理に関してはこれまでも様々な方法が提案されてきたが、時間が掛かったり、手間が掛かったり、といった要因で実際には殆ど行われてこないのが実情である。しかしながら、半硬化状態の貫入抵抗測定用試験体TPを用いて貫入抵抗試験を行う事で、検査時間の短縮が可能となった。また、熱電対110等を用いて促進養生の温度管理をすることで、貫入抵抗試験の信頼性を高めることが可能となった。このことで、よりフレッシュコンクリートFCの品質向上に資することとなった。
【0051】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第3実施形態は第1実施形態と用いる機器や手順はほぼ同じであるが、貫入抵抗測定用試験体TPの作製において時間と温度の相関関係を求め、それを利用する点で事なる。以下に説明する。
【0052】
図6に、第3実施形態の圧縮強度試験の作業手順をフローチャートに示す。
図6は
図2のフローチャートとほぼ同じであるが、S30の記載だけ異なる。S30では、貫入抵抗値とσ28との相関性を示す貫入抵抗相関図の他に、貫入抵抗測定用試験体TPを作製するにあたって、加熱時間と温度との相関である時間温度相関を調べて図示しない時間温度相関図を得る。このS30での温度時間相関は、S32でのマイクロ波養生法にて貫入抵抗測定用試験体TPを作製する際に用いる。
【0053】
図7に、貫入抵抗測定用試験体TPの作製手順をフローチャートに示す。
図7は
図3のフローチャートとほぼ同じであるが、
図3のS21に相当する熱電対を埋め込む手順が不要であり、S23で温度にて判断する手順が、S42に示される様に所定時間を経過したかどうかで判断される。なお、
図6のS30における試験練りの際に作製する貫入抵抗測定用試験体TPに関しては、
図3の手順に基づいて作製され、この際に時間温度相関が調査される。
【0054】
第3実施形態のコンクリートの圧縮強度推定方法は上記構成であるので、以下に示す作用及び効果を奏する。
【0055】
第3実施形態では第1実施形態または第2実施形態とは異なって、S30の試験練りの段階で時間温度相関が調べられた上で、実施工時における貫入抵抗測定用試験体TPの作製には熱電対110などの温度計測手段を用いず、時間で管理するようにしている。この結果、貫入抵抗測定用試験体TP作製時における手順の簡略化が図られ、ヒューマンエラーの要因を減らす事が可能となる。特に第2実施形態のように現場50での運用とする場合、貫入抵抗測定用試験体TPの作製や貫入抵抗値の測定は、現場50の作業員の判断に委ねられるケースが考えられる。このため、現場50の作業員の手間を少しでも減らすことが出来ることは、運用において大きなメリットとなる。さらに、使用機器の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0056】
以上、本発明に係るフレッシュコンクリートFCの圧縮強度推定方法の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。