【課題】本発明の目的は、一方の電極として使用するダイヤフラムと、ダイヤフラムからの信号を検出するための信号線との接続について、ダイヤフラムの作動特性に影響を与えず、安定した導通を確保できる、静電容量検出式の圧力スイッチ及び圧力センサを提供することである。
【解決手段】本発明の静電容量検出式圧力スイッチ900は、管路11から供給される作動媒体の圧力に応じて変位する金属製のダイヤフラム800と、ダイヤフラム800に電気的に接続される可動電極921と、ダイヤフラム800の管路11に対向する大気圧側に設けられる固定電極123と、固定電極123とダイヤフラム800との絶縁を確保する絶縁被膜124とを備え、ダイヤフラム800の外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極921を接続するための電極接触部801が形成されることを特徴とする。
前記電極接触部は、前記ダイヤフラムの外周に板ばねが設けられた皿ばね形状に形成され、前記可動電極と前記皿ばねの弾性力により接続されることを特徴とする請求項1に記載の静電容量検出式圧力スイッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載されたような、複数の作動油圧を検出するために、複数の接点式の油圧スイッチ、ハウジング、接続回路、及び、板部材などを備える油圧スイッチモジュールも知られている。
【0005】
また、無接点式の圧力スイッチのうち、静電容量検出式の圧力スイッチ及び圧力センサでは、金属製のダイヤフラムを一方の電極とし、ダイヤフラムの大気圧側に絶縁材を介して設けられた固定電極を他方の電極として、二つの電極の間の静電容量の変化を検出することにより、作動媒体の圧力を検出するものも知られている。
【0006】
引用文献2には、ダイヤフラム上に設けた可動電極と、一つの空間から分離された空間内に可動電極に対して所定の間隙をもって配設された固定電極と、少なくともいずれかの電極の表面に設けた絶縁層と、両電極間の静電容量を検出する検出手段とを設け、両電極が接触する前後の領域にスイッチのオン領域またはオフ領域を分離して設けた静電容量検出式の圧力スイッチが開示されている。
【0007】
引用文献3には、血圧の測定に適用される圧力計であって、電極部とそのラジアル方向の外周において設けられる弾性変形部とを備え、電極部と弾性変形部とが一体的に連結され、軸方向において応力を受ける際に、弾性変形部は、相応する変形が生じることができ、且つ電極部を軸方向に沿って移動させる可動電極装置を備える静電容量型圧力センサを使用する圧力計が開示されている。
【0008】
上記のような静電容量検出式の圧力スイッチでは、一方の電極として使用するダイヤフラムと、ダイヤフラムからの信号を出力する信号線との接続方法によっては、ダイヤフラムの圧力―変位特性、つまり、ダイヤフラムの作動特性に影響を与えるという問題がある。また、ダイヤフラムは微小変形するため、ダイヤフラムと信号線との安定した導通を確保するのが難しいという問題もある。
【0009】
従って、本発明の目的は、一方の電極として使用するダイヤフラムと、ダイヤフラムからの信号を検出するための信号線との接続について、ダイヤフラムの作動特性に影響を与えることなく、安定した導通を確保できる、静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の静電容量検出式圧力スイッチは、管路から供給される作動媒体の圧力の変動に応じて変位するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに電気的に接続される可動電極と、前記ダイヤフラムの前記管路に対向する大気圧側に設けられる固定電極と、前記固定電極と前記ダイヤフラムとの絶縁を確保する絶縁被膜とを備え、前記作動媒体の圧力の変動により前記ダイヤフラムが変位し、当該変位を前記可動電極に接続された前記ダイヤフラムと前記固定電極との間の静電容量の変動として検出し、当該静電容量の変動に基づき前記作動媒体の圧力を検出するように構成された静電容量検出式圧力スイッチにおいて、前記ダイヤフラムの外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、前記可動電極を接続するための電極接触部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
また、前記電極接触部は、前記可動電極とカシメ加工される形状に形成されるものとしてもよい。
また、前記電極接触部は、前記可動電極とスポット溶接される形状に形成されるものとしてもよい。
また、前記電極接触部は、前記可動電極とレーザー溶接される形状に形成されるものとしてもよい。
また、前記電極接触部は、前記可動電極とコネクタ嵌合される形状に形成されるものとしてもよい。
また、前記電極接触部は、前記ダイヤフラムの外周に板ばねが設けられた皿ばね形状に形成され、前記可動電極と前記皿ばねの弾性力により接続されるものとしてもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の静電容量検出式圧力センサは、管路から供給される作動媒体の圧力の変動に応じて変位するダイヤフラムと、前記ダイヤフラムに電気的に接続される可動電極と、前記ダイヤフラムの前記管路に対向する大気圧側に設けられる固定電極と、前記固定電極と前記ダイヤフラムとの絶縁を確保する絶縁被膜とを備え、前記作動媒体の圧力の変動により前記ダイヤフラムが変位し、当該変位を前記可動電極に接続された前記ダイヤフラムと前記固定電極との間の静電容量の変動として検出し、当該静電容量の変動に基づき前記作動媒体の圧力を検出するように構成された静電容量検出式圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、前記可動電極を接続するための電極接触部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサによれば、一方の電極として使用するダイヤフラムと、ダイヤフラムからの信号を検出するための信号線との接続について、ダイヤフラムの作動特性に影響を与えることなく、安定した導通を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一般的な円板形状のダイヤフラムを使用した従来技術による静電容量検出式圧力スイッチの構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、従来技術による円板形状のダイヤフラムと、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムとの接触荷重印加時の特性を比較して示す図であって、荷重無印加時の形状を示す図であり、
図3(b)は接触荷重印加時の変形を示す図であり、
図3(c)は、接触荷重印加時の応力分布を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部がカシメ加工される形状に形成されるダイヤフラムの平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVbに示す断面図であり、
図4(c)は、可動電極と電極接触部を共に拡大して示す図であり、
図4(d)は、可動電極が電極接触部に挿入された状態を拡大して示す図であり、
図4(e)は、可動電極が電極接触部にカシメ加工された状態を拡大して示す図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の参考例を示す図であって、電極接触部がはんだ付けされる形状に形成されるダイヤフラムの平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vbに示す断面図であり、
図5(c)は、可動電極と電極接触部を共に拡大して示す図であり、
図5(d)は、可動電極が電極接触部に挿入された状態を拡大して示す図であり、
図5(e)は、可動電極が電極接触部にはんだ付けされた状態を拡大して示す図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部がスポット溶接される形状に形成されるダイヤフラムの平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIbに示す断面図であり、
図6(c)は、可動電極と電極接触部を共に拡大して示す図であり、
図6(d)は、可動電極が電極接触部に接触された状態を拡大して示す図であり、
図6(e)は、可動電極が電極接触部にスポット溶接された状態を拡大して示す図であり、
図6(f)は、先端が折れ曲がっていない形状の可動電極が電極接触部にレーザー溶接された状態を拡大して示す図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部がコネクタ嵌合される形状に形成されるダイヤフラムの平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIbに示す断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のVIIc−VIIcに示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、ダイヤフラムの外周に皿ばね形状を構成する複数の板ばね形状の電極接触部が形成されるダイヤフラムの平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb−VIIIbに示す断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る静電容量検出式圧力スイッチの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
まず、従来技術による静電容量検出式の圧力スイッチについて説明する。
図1は、一般的な円板形状のダイヤフラム111を使用した従来技術による静電容量検出式圧力スイッチ100の構成を示す図である。
【0016】
図1において、圧力スイッチ100は、冷暖房、空調、自動車、及び、産業装置用の作動媒体の圧力を供給する管路11と、作動媒体の圧力を封止するOリング12を有する作動媒体供給アセンブリ10に取り付けられて使用される。なお、圧力スイッチ100は、後述する支持部材131等を取り外し、単体で継手管等に接続されるものとしてもよい。
【0017】
圧力スイッチ100は、ダイヤフラムアセンブリ110と、静電容量検出部120と、ダイヤフラムアセンブリ110及び静電容量検出部120を保持し、作動媒体供給アセンブリ10に固定する固定部130とを備える。
【0018】
ダイヤフラムアセンブリ110は、管路11から供給された作動媒体の圧力の変動に応じて変位するダイヤフラム111と、ダイヤフラム111の管路11側に配置され作動媒体を封止するOリング112と、Oリング112と密着し作動媒体を封止する隔膜113とを備える。
【0019】
ダイヤフラム111は、静電容量検出式の圧力スイッチでは、作動媒体の圧力の変動により変位するダイヤフラム111と固定電極122との間の静電容量の変動を検出し、静電容量の変動に基づきダイヤフラム111の変位を検出し、ダイヤフラム111の変位により管路11から供給された作動媒体の圧力を検出するため、主に金属製のものを使用する。また、ダイヤフラム111は、主に反転動作、すなわち、スナップアクションするばね性を有する金属製のものを使用するが、本構成を圧力の計測値を出力する圧力センサに適用する場合には、スナップアクションするダイヤフラムは使用できない。スナップアクションするダイヤフラム111は、管路11からの作動媒体の圧力が設定値未満である場合には、下側に膨らんだ形状をなし、管路11からの作動媒体の圧力が設定値以上になると、この作動媒体の圧力により下側に膨らんだ形状から上側に膨らんだ形状に可逆的に反転する。
【0020】
Oリング112は、支持部材131の開口部131aの周辺に設けられた凹部131dに配置され、後述する隔膜113と共に、支持部材131とダイヤフラム111との間の作動媒体を封止する。
【0021】
隔膜113は、ダイヤフラム111の管路11側に貼り付けられ、ダイヤフラム111と共に変位し、Oリング112と密着し作動媒体側の気密を保持する。
【0022】
静電容量検出部120は、ダイヤフラム111の一部に電気的に接続される可動電極121と、ダイヤフラム111の大気圧側に設けられる固定電極122と、固定電極122のダイヤフラム111側に取り付けられた絶縁被膜123と、可動電極121及び固定電極122とリード線125を介して電気的に接続され、ダイヤフラム111と固定電極122との間の静電容量を検出する静電容量検出IC124とを備える。
【0023】
可動電極121は、金属製のダイヤフラム111の例えば可動の少ない外周部に電気的に接続される金属部品である。可動電極121は、リード線125を介して静電容量検出IC124と接続され、これによりダイヤフラム111は静電容量検出におけるコンデンサの一方の電極を形成する。可動電極121は、ダイヤフラム111の外周部の全体と接触する円環形状としてもよいし、ダイヤフラム111の外周部の大部分を樹脂製のストッパーで覆い、その一部に可動電極121を配置して、金属製のダイヤフラム111に接続するようにしてもよいし、その他の形状でもよい。
【0024】
固定電極122は、ダイヤフラム111に接触することなく、ダイヤフラム111の大気圧側を覆うような形状を有する金属部品である。固定電極122は、リード線125を介して静電容量検出IC124と接続され、これにより固定電極122は静電容量検出におけるコンデンサの他方の電極を形成する。なお、固定電極122の形状は、平板形状、凹形状等、静電容量検出IC124と電気的に接続され、コンデンサの他方の電極を形成できる形状であればよい。
【0025】
絶縁被膜123は、ダイヤフラム111と固定電極122の間に位置し、静電容量検出におけるコンデンサの誘電体の役割を果たす。このため、絶縁被膜123は、材質及び厚さに応じて静電容量が変化するため、後述する静電容量検出回路200の回路構成に合わせて、材質及び厚さが選択される。また、絶縁被膜123は、固定電極122とダイヤフラム111が接触するのを防止するため、ラバー、ポリイミドフィルム等の衝撃吸収素材を使用してもよいし、スパッタリング・CVD・PVDなどにより絶縁コーティングして形成するものとしてもよい。また、絶縁被膜123は固定電極122の表面に貼り付けるものとしたが、ダイヤフラム111に貼り付けるものとしてもよい。
【0026】
静電容量検出IC124は、モジュール化を想定して外部に配置されてもよいし、支持部材131あるいはカバー132の上部に接触するように固定されてもよい。静電容量検出IC124に組み込まれる回路構成である静電容量検出回路200は、
図2に示す。
【0027】
固定部130は、ダイヤフラム111と作動媒体供給アセンブリ10との間の絶縁を確保し、圧力スイッチ100を作動媒体供給アセンブリ10に固定する支持部材131と、支持部材131の大気圧側に設けられた収容部131bを封止するカバー132と、支持部材131と作動媒体供給アセンブリ10とを固定する複数の固定ネジ133と、複数の固定ネジ133のそれぞれの緩みを防止する複数のワッシャー134とを備える。
【0028】
支持部材131は、略円板形状で、ダイヤフラム111と作動媒体供給アセンブリ10との間の絶縁を確保するため、例えば樹脂材料で成形される。支持部材131には、管路11に対応する直径を有する開口部131aと、開口部131aの周囲の大気圧側に設けられ、ダイヤフラムアセンブリ110、可動電極121、及び、固定電極122を収容する円筒形状の凹部である収容部131bと、収容部131bから周囲に広がり、固定ネジ133が挿入されるネジ穴131eを有し作動媒体供給アセンブリ10に接触する外周部131cと、収容部131bの内部であって開口部131aの周囲に設けられOリング112を配置する凹部131dとが形成される。
【0029】
カバー132は、支持部材131の収容部131bに収容されたダイヤフラムアセンブリ110、可動電極121、及び、固定電極122の大気圧側に配置され、収容部131bを封止する。カバー132は、例えば樹脂材料で成形され、可動電極121、固定電極122を固定し、ダイヤフラム111に対して位置決めを行う。カバー132は、圧入、かしめ加工、あるいは、接着剤により収容部131bに固定する構成としてもよい。
【0030】
圧力スイッチ100の取り付け方法の一例としては、まず、ダイヤフラムアセンブリ110を組み立てる。次に、ダイヤフラムアセンブリ110の大気圧側に、可動電極121及び固定電極122を固定したカバー132を、支持部材131の収容部131bに収容し固定する。リード線125を介して、可動電極121及び固定電極122と静電容量検出IC124を接続する。次に、支持部材131を複数の固定ネジ133及び複数のワッシャー134により作動媒体供給アセンブリ10に固定する。なお、この取り付け方法は限定ではなく、作動媒体供給アセンブリ10の形状や、静電容量の検出方法等により様々な方法が適用可能である。
【0031】
次に、静電容量検出IC124に組み込まれる回路構成である静電容量検出回路200について説明する。
【0032】
図2は、静電容量検出回路200のブロック図である。
図2において、静電容量検出回路200は、発振回路210と、発振状態検出回路220と、出力回路230とを備える。可動電極121及び固定電極122は、静電容量検出回路200の発振回路210の一部となるコンデンサとして接続される。発振回路210は、例えばRC回路等で構成され、静電容量の変動により発振周波数が変動する。従って、ダイヤフラム111が変位し、静電容量が変動すると、発振回路210の発振周波数が変動することになる。次に、ダイヤフラム111の変位に従い、発振周波数が変動すると、発振の開始あるいは停止が引き起こされる。発振回路210からの出力が発振状態検出回路220に入力され、上述の発振の開始あるいは停止が検出される。検出された検出信号は、出力回路230に入力され、増幅された後、外部に出力される。なお、静電容量検出回路200は、例示であって、ダイヤフラム111の変位を静電容量の変位として検出できればよい。
【0033】
上述のような一般的な円板形状のダイヤフラム111を使用した従来技術による静電容量検出式圧力スイッチ100及び同様の構成により構成された圧力センサでは、一方の電極として使用するダイヤフラム111と、ダイヤフラム111からの信号を出力する固定電極122との接続方法により、ダイヤフラム111の圧力−変位特性、つまり、ダイヤフラム111の作動特性に影響を与えるという問題がある。また、ダイヤフラム111は微小変形するため、ダイヤフラム111と固定電極122との安定した導通を確保するのが難しいという問題もある。
【0034】
このような従来の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサの問題点を解消するために、本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサは、ダイヤフラムの形状を変更し、ダイヤフラムの外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極を接続するための電極接触部が形成されることを特徴とする。以下、
図3(a)乃至
図3(c)を使用して本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサの接触荷重印加時の特性を説明する。
【0035】
図3(a)は、従来技術による円板形状のダイヤフラム111と、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラム300との接触荷重印加時の特性を比較して示す図であって、荷重無印加時の形状を示す図であり、
図3(b)は、接触荷重印加時の変形を示す図であり、
図3(c)は、接触荷重印加時の応力分布を示す図である。
【0036】
図3(a)乃至
図3(c)において、左側の図は、従来技術による円板形状のダイヤフラム111を示し、右側の図は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサのダイヤフラム300であって、ダイヤフラム300の外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極を接続するための電極接触部301が形成される構成を示す。
【0037】
図3(a)において、矢印は接触荷重(ここでは、例えば10N)を印加する場所を示している。この接触荷重は、例えば
図1の従来技術による静電容量検出式圧力スイッチ100において、ダイヤフラム111に、可動電極121が接続され、外部から何らかの負荷がかかったことを想定している。つまり、
図3(a)の左側の従来のダイヤフラム111では、円板形状のダイヤフラムの外周部の一部に負荷がかかり、
図3(a)の右側の本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサのダイヤフラム300では、ダイヤフラム300の外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極121を接続するための電極接触部301に負荷がかかることを示している。
【0038】
なお、円板形状のダイヤフラム111では、実際には、ダイヤフラム111の円周部の一部のみに可動電極121が接触するような拘束構造ではなく、可動電極121やその他の部品(例えばストッパなど)で円周部全体を保持するような構造をとることが多いが、ダイヤフラム111は、一般的に圧延方向/ソリ/バルジ加工による異方性が発生するため、円周部を一様に保持することは難しい。このような条件において、可動電極は常にダイヤフラムに接触している必要があり、ここでは、ダイヤフラム111への局所的な接触による影響度と本発明とを比較して解析を行った。
【0039】
図3(b)の接触荷重印加時の変形を示す図をみると、左側の従来のダイヤフラム111では、ダイヤフラムの圧力−変位特性に影響を与えるダイヤフラム111の中央部にあるお椀部分への変形が見られるが、右側の本発明のダイヤフラム300では、変形は突起部である電極接触部301に限定され、お椀部分への影響は見られない。
【0040】
また同様に、
図3(c)の接触荷重印加時の応力分布を示す図をみると、左側の従来のダイヤフラム111では、ダイヤフラムの圧力−変位特性に影響を与えるダイヤフラム111の中央部にあるお椀部分への応力分布の変位が見られるが、右側の本発明のダイヤフラム300では、応力分布の変位は突起部である電極接触部301に限定され、お椀部分への影響は見られない。
【0041】
このように、ダイヤフラム300の外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極121を接続するための電極接触部301を設け、この電極接触部301に可動電極121を接続することにより、ダイヤフラムの圧力−変位特性に影響を与えるダイヤフラムの中央部にあるお椀部分への変形や応力分布の変位を抑制することができ、安定した導通を確保することができる。
【0042】
次に、本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサのダイヤフラムに設けられた電極接触部の形状の例を説明する。
【0043】
図4(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部401がカシメ加工される形状に形成されるダイヤフラム400の平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVbに示す断面図であり、
図4(c)は、可動電極421と電極接触部401を共に拡大して示す図であり、
図4(d)は、可動電極421が電極接触部401に挿入された状態を拡大して示す図であり、
図4(e)は、可動電極421が電極接触部401にカシメ加工された状態を拡大して示す図である。
【0044】
図4(a)乃至
図4(e)において、ダイヤフラム400には、ダイヤフラム400の外周の一箇所に外側に向って伸びる1つの突起部である、可動電極421を接続するための電極接触部401が設けられる。電極接触部401は、カシメ加工される形状に形成される。電極接触部401には、中央には貫通孔401aが設けられており、
図4(c)、
図4(d)に示されるようにカシメ加工に適した形状に形成された可動電極421が貫通孔401aに挿入されて配置された後、
図4(e)に示されるように電極接触部401と可動電極421がカシメ加工により固定される。なお、電極接触部401の
図4(a)に示す上側には、2箇所の面取り401bが設けられている。このように面取り401bを設けることにより、ダイヤフラム成形時の成形の向きの間違いを防ぐことができる。ここでは、電極接触部401の上側に2箇所の面取り401bが設けられるものとしたが、1箇所設けるものとしても、下側に設けるものとしてもよい。また、後述する
図5(a)乃至
図7(c)に示す実施形態に、同様の面取りを設けるものとしてもよい。このような形状によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0045】
図5(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の参考例を示す図であって、電極接触部501がはんだ付けされる形状に形成されるダイヤフラム500の平面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vbに示す断面図であり、
図5(c)は、可動電極521と電極接触部501を共に拡大して示す図であり、
図5(d)は、可動電極521が電極接触部501に挿入された状態を拡大して示す図であり、
図5(e)は、可動電極521が電極接触部501にはんだ付けされた状態を拡大して示す図である。
【0046】
図5(a)乃至
図5(e)において、ダイヤフラム500には、ダイヤフラム500の外周の一箇所に外側に向って伸びる1つの突起部である、可動電極521を接続するための電極接触部501が設けられる。電極接触部501は、はんだ付け加工される形状に形成される。電極接触部501には、中央には貫通孔501aが設けられており、
図5(c)、
図5(d)に示されるようにはんだ付け加工に適した形状に形成された可動電極521がこの貫通孔501aに挿入されて配置された後、
図5(e)に示されるように電極接触部501と可動電極521がはんだ付け加工によりはんだ502で固定される。なお、電極接触部501の付け根付近には、はんだ付け加工の際の熱伝導を抑制するための薄肉部501bが形成される。このような形状によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0047】
図6(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部601がスポット溶接される形状に形成されるダイヤフラム600の平面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIbに示す断面図であり、
図6(c)は、可動電極621と電極接触部601を共に拡大して示す図であり、
図6(d)は、可動電極621が電極接触部601に接触された状態を拡大して示す図であり、
図6(e)は、可動電極621が電極接触部601にスポット溶接された状態を拡大して示す図であり、
図6(f)は、先端が折れ曲がっていない形状の可動電極621Aが電極接触部601にレーザー溶接された状態を拡大して示す図である。
【0048】
図6(a)乃至
図6(e)において、ダイヤフラム600には、ダイヤフラム600の外周の一箇所に外側に向って伸びる1つの突起部である、可動電極621を接続するための電極接触部601が設けられ、電極接触部601は、スポット溶接される平坦な形状に形成される。
図6(c)、
図6(d)に示されるようにスポット溶接に適するように、先端がL字形状に折れ曲がった形状を有する可動電極621が、電極接触部601に接触された後、
図6(e)に示されるように電極接触部601と可動電極621がスポット溶接602により固定される。なお、電極接触部601の付け根付近には、スポット溶接の際の熱伝導を抑制するための薄肉部601bが形成される。なお、ここではスポット溶接により固定されるものとしたが、代わりにレーザー溶接による溶融固化層602により固定されるものとしてもよい。また、レーザー溶接を行う場合には、
図6(f)に示されるように先端が折れ曲がっていない形状の可動電極621Aを使用し、電極接触部601に溶融固化層602Aにより固定されるものとしてもよい。このような形状によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0049】
図7(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、電極接触部701がコネクタ嵌合される形状に形成されるダイヤフラム700の平面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIbに示す断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のVIIc−VIIcに示す断面図である。
【0050】
図7(a)乃至
図7(c)において、ダイヤフラム700には、ダイヤフラム700の外周の一箇所に外側に向って伸びる1つの突起部である、可動電極721を接続するための電極接触部701が設けられ、電極接触部701は、可動電極721とコネクタ嵌合される形状に形成される。ここでは例えば、
図7(c)に示されるように、電極接触部701は、先端に水平面から90度折れ曲がった突起形状701aが形成され、この突起形状701aが、例えばギボシ端子、ファストン端子(登録商標)等の平型接続端子、圧着端子などが接続できる形状に形成され、この突起形状701aに合わせた形状の可動電極721である、上記端子のうちの1つが挿入されて固定される。なお、このようなコネクタ嵌合される形状の可動電極721を突起形状701aに挿入する際には、ダイヤフラム700に応力がかかり撓みやすいため、電極接触部701の付け根付近に切り欠き702を形成してもよい。このような形状によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0051】
図8(a)は、本発明の静電容量検出式圧力スイッチのダイヤフラムの形状の一例を示す図であって、ダイヤフラムの外周に皿ばね形状を構成する複数の板ばね形状の電極接触部801a乃至801hが設けられたダイヤフラム800の平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb−VIIIbに示す断面図である。
【0052】
図8(a)、
図8(b)において、ダイヤフラム800には、ダイヤフラム800の外周に皿ばね形状を構成する複数の板ばね形状の電極接触部801a乃至801hが設けられる。
図8(b)に示すように、複数の板ばね形状の電極接触部801a乃至801hは、上方に向って斜めに折れ曲がった形状に形成される。このような形状に形成された電極接触部801a乃至801hは、水平方向のばねの弾性力を有するため、このばねの弾性力により可動電極と接触させることができる。また、このばねの弾性力により、
図1に示す支持部材131や、継手管等に取り付けられたときに、熱膨張等による変形があった場合にも確実に接触できるという効果を有する。なお、ここでは、複数の板ばね形状を有する皿ばね形状が形成されるものとしたが、これには限定されず、板ばねは他の本数でも、単数形成されるものとしてもよい。以下に、このダイヤフラム800を使用した実施形態を説明する。
【0053】
図9は、本発明の一実施形態に係る静電容量検出式圧力スイッチ900の構成を示す図である。
図9において、静電容量検出式圧力スイッチ900は、主に、
図1に示す一般的な円板形状のダイヤフラム111の代わりに、
図8に示す皿ばね形状のダイヤフラム800を備えることを特徴とする。
図1に示す従来技術による圧力スイッチ100と同じ構成要素には、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0054】
圧力スイッチ900は、ダイヤフラムアセンブリ910と、静電容量検出部920と、ダイヤフラムアセンブリ910及び静電容量検出部920を保持し、作動媒体供給アセンブリ10´に固定する固定部930とを備える。
【0055】
ダイヤフラムアセンブリ910は、管路11´から供給された作動媒体の圧力の変動に応じて変位し、皿ばね形状のダイヤフラム800と、ダイヤフラム800の管路11´側に配置され作動媒体を封止するOリング112と、Oリング112と密着し作動媒体を封止する隔膜113とを備える。
【0056】
皿ばね形状のダイヤフラム800は、
図8に示すように、ダイヤフラム800の外周に複数の板ばねが設けられた皿ばね形状に形成され、水平方向のばねの弾性力を有するように金属材料で構成される。皿ばね形状のダイヤフラム800は、後述する円柱形状の可動電極921と水平方向のばねの弾性力により固定される。また、ダイヤフラム111は、主に反転動作、すなわち、スナップアクションするばね性を有する金属製のものを使用するが、本構成を圧力の計測値を出力する圧力センサに適用する場合には、スナップアクションするダイヤフラムは使用できない。
【0057】
静電容量検出部920は、ダイヤフラム800の一部に電気的に接続される可動電極921と、ダイヤフラム800の大気圧側に設けられる固定電極122と、固定電極122のダイヤフラム800側に取り付けられた絶縁被膜123と、可動電極121及び固定電極122とリード線125を介して電気的に接続され、ダイヤフラム800と固定電極122との間の静電容量を検出する静電容量検出IC124とを備える。
【0058】
可動電極921は、金属材料で筒状の円柱形状に形成され、筒状の円柱形状の内面にダイヤフラム800の外周に設けられた皿ばね形状を構成する複数の板ばね形状の電極接触部801a乃至801hが接触される。電極接触部801a乃至801hは、水平方向のばねの弾性力を有するため、可動電極921と、電極接触部801a乃至801hとの接続は強固のものとなり、安定した導通を確保できる。可動電極921は、リード線125を介して静電容量検出IC124と接続され、これによりダイヤフラム800は静電容量検出におけるコンデンサの一方の電極を形成する。なお、筒状の円柱形状の可動電極921は、後述する支持部材931の収容部931bに圧入、あるいは、インサート成形等により固定される。
【0059】
固定部930は、ダイヤフラム800と作動媒体供給アセンブリ10´との間の絶縁を確保し、圧力スイッチ900を作動媒体供給アセンブリ10´に固定する支持部材931と、支持部材931の大気圧側に設けられた収容部931bを封止するカバー932と、支持部材931と作動媒体供給アセンブリ10´とを固定する複数の固定ネジ133と、複数の固定ネジ133のそれぞれの緩みを防止する複数のワッシャー134とを備える。
【0060】
支持部材931は、略円板形状で、ダイヤフラム800と作動媒体供給アセンブリ10´との間の絶縁を確保するため、例えば樹脂材料で成形される。支持部材931には、管路11´に対応する直径を有する開口部931aと、開口部931aの周囲の大気圧側に設けられ、ダイヤフラムアセンブリ910、可動電極921、及び、固定電極122を収容する円筒形状の凹部である収容部931bと、収容部931bから周囲に広がり、固定ネジ133が挿入されるネジ穴931eを有し作動媒体供給アセンブリ10´に接触する外周部931cと、収容部931bの内部であって開口部931aの周囲に設けられOリング112を配置する凹部931dとが形成される。収容部931bには、上述の円柱形状の可動電極921が圧入、あるいは、インサート成形等により固定される。
【0061】
以上のように、本実施形態の静電容量検出式圧力スイッチ900によっても、本発明の効果を得ることができる。
【0062】
また、本実施形態において、ダイヤフラムにスナップアクションではなく、スローアクションのダイヤフラムを使用し、静電容量検出回路の出力信号を線形的に変動する静電容量をそのまま出力するように変更すれば、本実施形態の構成を圧力センサに適用することも可能である。
【0063】
以上のように、本発明の静電容量検出式圧力スイッチ及び圧力センサによれば、ダイヤフラムの外周の一部に外側に向って伸びる少なくとも1つの突起部である、可動電極を接続するための電極接触部を設け、この電極接触部に可動電極を接続することにより、ダイヤフラムの圧力−変位特性に影響を与えるダイヤフラムの中央部にあるお椀部分への変形や応力分布の変位を抑制することができ、安定した導通を確保することができる。