【解決手段】互いに並列接続される複数の半導体モジュール11、12、13と、複数の半導体モジュール11、12、13が幅方向に並んだ状態で、幅方向に直交する長さ方向の一方側の端部に接続される並列接続用ブスバー14と、並列接続用ブスバー14の長さ方向の他方側の端部に接続点15を介して接続される出力用ブスバー16と、を備えるスイッチング回路10において、接続点15が、両端に設けられた2つの半導体モジュール11、13の中心位置よりも幅方向の一方側に設けられるとともに、出力用ブスバー16が、接続点15から幅方向の他方側に向かって延びており、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とが絶縁部17を挟んで積層配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、複数の半導体モジュールを並列に設けた場合、各電流経路の長さが異なることで、各半導体モジュールの配線インダクタンスが不均一となってしまうことがある。その結果、各半導体モジュールを流れる電流が不均一となり、一部の半導体モジュールに高い電流が流れ、当該半導体モジュールが破損するおそれがある。これを避けるためには、電力変換装置全体の容量を下げざるを得ず、複数の半導体モジュールを並列に設けた割には、電力変換装置を効果的に大容量化できないという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1では、複数の半導体モジュールが接続されたブスバーの一部に切欠きを設けることで、各電流経路の長さの差を低減している。また、特許文献2でも、ブスバーの形状や配置を工夫することによって、各半導体モジュールを流れる電流の均一化が図られている。しかしながら、これらの方法では、ブスバーの形状や配置が複雑となるため、加工や組立に手間を要するものとなっていた。
【0006】
以上の課題を鑑みて、本発明は、複数の半導体モジュールが互いに並列接続されることにより構成されるスイッチング回路において、各半導体モジュールを流れる電流の均一化を簡易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるスイッチング回路は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に設けられるスイッチング回路であって、互いに並列接続される複数の半導体モジュールと、前記複数の半導体モジュールが幅方向に並んだ状態で、前記幅方向に直交する長さ方向の一方側の端部に接続される並列接続用ブスバーと、前記並列接続用ブスバーの前記長さ方向の他方側の端部に接続点を介して接続される出力用ブスバーと、を備え、前記接続点が、前記複数の半導体モジュールのうち前記幅方向の両端に設けられた2つの半導体モジュールの中心位置よりも前記幅方向の一方側に設けられるとともに、前記出力用ブスバーが、前記接続点から前記幅方向の他方側に向かって延びており、前記並列接続用ブスバーと前記出力用ブスバーとが絶縁部を挟んで積層配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるスイッチング回路によれば、並列接続用ブスバーと出力用ブスバーとが絶縁部を挟んで積層配置されている部分においては、並列接続用ブスバーを幅方向の一方側に向かって接続点まで流れる電流により生じる磁界と、出力用ブスバーを接続点から幅方向の他方側に向かって流れる電流により生じる磁界とが、互いに逆向きとなり相殺されるため、積層部分における配線インダクタンスを小さくすることができる。その結果、各半導体モジュールが幅方向において異なる位置に配置されていることによる配線インダクタンスの差を低減することができ、並列接続用ブスバーと出力用ブスバーとを絶縁部を挟んで積層配置するという簡易な構成で、各半導体モジュールを流れる電流の均一化を実現することができる。
【0009】
ここで、前記絶縁部は絶縁シートからなると好適である。
【0010】
絶縁部を絶縁シートで構成することによって、積層配置されている並列接続用ブスバーと出力用ブスバーとの離間距離を小さくすることができ、並列接続用ブスバーを流れる電流により生じる磁界と、出力用ブスバーを流れる電流により生じる磁界とを効果的に相殺することができる。その結果、積層部分における配線インダクタンスをより小さくすることができ、各半導体モジュールを流れる電流をより効果的に均一化することができる。
【0011】
また、本発明にかかる電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置であって、上記スイッチング回路が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このような電力変換装置においては、上述のように、スイッチング回路において、互いに並列接続された各半導体モジュールを流れる電流を均一化することができるので、効果的に大容量化を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる電力変換装置の回路図である。電力変換装置1は、電源2から供給された直流電流を三相交流の電流に変換し、負荷としてのモータ3に三相交流の電流を供給するインバータである。ただし、電力変換装置1は、直流電力を単相交流電力や三相交流以外の多相交流電力に変換するものであってもよい。
【0015】
電源2は、直流電流の供給源であり、例えば、商用電源から供給される交流電流を直流電流に変換するコンバータや、直流電流を出力する蓄電池等からなる。モータ3は、U相、V相、W相の各コイルが結線されて構成される三相モーターであり、電力変換装置1から三相交流の電流の供給を受けて作動する。なお、電力変換装置1が多相交流電力を供給する負荷はモータ以外の機械であってもよい。
【0016】
電力変換装置1は、モータ3の各相のコイルに対応して設けられたスイッチング回路10U、10V、10Wが制御部20によって制御される構成となっている。スイッチング回路10U、10V、10Wは、電源2に対して互いに並列接続されている。制御部20は、スイッチング回路10U、10V、10Wに対してPWM制御を実行することによって、モータ3に供給する交流電流の電流値、周波数および位相等を制御する。なお、以下の説明において、スイッチング回路10U、10V、10Wを区別しない場合には、単にスイッチング回路10と表記する。
【0017】
図2は、スイッチング回路の回路図であり、
図3は、スイッチング回路の構成を示す斜視図である。本実施形態のスイッチング回路10は、電源2に対して互いに並列接続された3つの半導体モジュール11、12、13を有する。このように、各相のスイッチング回路10を流れる電流を複数の半導体モジュール11、12、13に分散させることにより、電力変換装置1の大容量化が可能となる。
【0018】
半導体モジュール11には、2つのスイッチング素子11a、11bが直列に設けられており、2つのスイッチング素子11a、11bの間に出力端子11cが設けられている。半導体モジュール12、13も、半導体モジュール11と同様の構成となっている。スイッチング素子11a、11b、12a、12b、13a、13bは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やFET(Field-Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子である。
【0019】
図3に示すように、半導体モジュール11、12、13は、それぞれの出力端子11c、12c、13cを介して矩形平板状の並列接続用ブスバー14に接続されている。さらに、並列接続用ブスバー14には、接続点15を介して、L字形状の出力用ブスバー16が接続されている。並列接続用ブスバー14および出力用ブスバー16は、いずれも導電性の材料、例えば、銅やアルミニウム等によって構成されている。
【0020】
半導体モジュール11、12、13は、並列接続用ブスバー14の幅方向(
図3の左右方向)に等間隔で並んだ状態で、並列接続用ブスバー14の長さ方向(幅方向に直交する方向)の一方側の端部に接続されている。一方、出力用ブスバー16は、並列接続用ブスバー14の長さ方向の他方側の端部に、接続点15を介して接続されている。接続点15の幅方向における位置は、幅方向において最も一方側に設けられた半導体モジュール13の出力端子13cと略同位置とされている。なお、接続点15は、例えば、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とを連結するネジ等で構成されている。
【0021】
出力用ブスバー16は、接続点15から幅方向の他方側に向かって延びている。詳細には、出力用ブスバー16は、並列接続用ブスバー14の長さ方向の他方側の端辺に沿って、接続点15から幅方向の他方側の端部まで延びており、当該端部で略直角に外側(長さ方向の他方側)に折れ曲がっている。出力用ブスバー16をこのようなL字形状とすることで、例えば、並列接続用ブスバー14の幅方向の中央部から出力用ブスバー16を外側(長さ方向の他方側)に引き出す場合と比べて、スイッチング回路10の外側に広い開放空間を確保することができる。よって、中途半端なデッドスペースが生じることがなく、上述の広い開放空間に他のモジュール等を配置することができる。
【0022】
並列接続用ブスバー14の他方側の端部と出力用ブスバー16の幅方向に沿って延びている部分とは、絶縁シート17を挟んで積層配置されている。絶縁シート17は、例えば、絶縁紙やシート状に加工されたエポキシ樹脂等からなる薄い絶縁体である。このような絶縁シート17を設けることで、半導体モジュール11、12、13からそれぞれ出力された電流は、まず並列接続用ブスバー14を接続点15まで流れ、接続点15で合流した電流が最終的に出力用ブスバー16からモータ3へと出力されることになる。
【0023】
図4は、電流の流れを模式的に示す平面図である。なお、
図4では、絶縁シート17の図示を省略している。半導体モジュール11、12、13の出力端子11c、12c、13cからそれぞれ出力された電流は、一点鎖線で示すように、異なる電流経路(一部は共通する)を経由して接続点15に至る。出力端子11c、12cから出力された電流は、並列接続用ブスバー14を長さ方向に沿って流れた後、長さ方向の他方側の端部で幅方向の一方側に向かう流れとなり、最終的に接続点15に至る。出力端子13cから出力された電流は、並列接続用ブスバー14を長さ方向に沿って流れ、接続点15に至る。接続点15で合流した電流は、二点鎖線で示すように、出力用ブスバー16を幅方向の他方側に向かって流れる。
【0024】
ちなみに、各出力端子11c、12c、13cから接続点15に至るまでの電流経路は、
図4において一点鎖線で示したものだけでなく、例えば、出力端子11cから接続点15へ直接斜めに向かうような電流経路も存在し得る。しかし、このような電流経路は、出力端子12c、13cから出力される電流の電流経路と干渉するため、各電流経路は互いの干渉を回避するように概ね一点鎖線で示すような経路となる。
【0025】
ここで、各出力端子11c、12c、13cから並列接続用ブスバー14の長さ方向の他方側の端部に至るまでの、長さ方向に沿った各電流経路に由来する配線インダクタンスをそれぞれL1とする(これら各電流経路の長さは同じなので配線インダクタンスも同じとなる)。また、並列接続用ブスバー14の長さ方向の他方側の端部に至った電流が、幅方向において出力端子11cと略同位置から出力端子12cと略同位置に至るまでの、幅方向に沿った電流経路に由来する配線インダクタンスをL2とする。同様に、幅方向において出力端子12cと略同位置から出力端子13cと略同位置(接続点15と略同位置)に至るまでの、幅方向に沿った電流経路に由来する配線インダクタンスをL3とする。
【0026】
このとき、並列接続用ブスバー14における各半導体モジュール11、12、13の配線インダクタンスL11、L12、L13は以下の式(1)〜(3)のようになる。
L11=L1+L2+L3・・・式(1)
L12=L1+L3・・・式(2)
L13=L1・・・式(3)
【0027】
つまり、各配線インダクタンスL11、L12、L13は、配線インダクタンスL2、L3の分だけ差が生じることになる。しかしながら、本実施形態によれば、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とが絶縁シート17を挟んで積層配置されている部分においては、並列接続用ブスバー14を幅方向の一方側に向かって接続点15まで流れる電流により生じる磁界と、出力用ブスバー16を接続点15から幅方向の他方側に向かって流れる電流により生じる磁界とが、互いに逆向きとなり相殺されるため、積層部分における配線インダクタンスL2、L3を小さくすることができる。その結果、各半導体モジュール11、12、13が幅方向において異なる位置に配置されていることによる配線インダクタンスL11、L12、L13の差を低減することができ、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とを絶縁シート17を挟んで積層配置するという簡易な構成で、各半導体モジュール11、12、13を流れる電流の均一化を実現することができる。
【0028】
ところで、並列接続用ブスバー14の長さ方向の寸法を幅方向の寸法に対して十分に大きくすれば、L1>>L2、L3となるため、L11≒L12≒L13となる。すなわち、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とを絶縁シート17を挟んで積層配置するという本実施形態の構成をとらなくても、各半導体モジュール11、12、13を流れる電流を均一化できる可能性がある。しかしながら、このような方法では、並列接続用ブスバー14の長さ方向の寸法が大きくならざるを得ず、スイッチング回路10が大型化するため好ましくない。
【0029】
この点、本実施形態では、上述の積層配置の構成をとらない場合と比べると、配線インダクタンスL2、L3を小さくできる分だけ、各配線インダクタンスL11、L12、L13の均一化を図ることができるので、並列接続用ブスバー14の長さ方向の寸法を小さくすることができる。したがって、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とを絶縁シート17を挟んで積層配置するという本実施形態の構成は、各半導体モジュール11、12、13を流れる電流の均一化(ひいては電力変換装置1の大容量化)とスイッチング回路10の小型化との両立を実現するのに非常に好適である。
【0030】
なお、本実施形態のように、接続点15の幅方向の位置を、幅方向において最も一方側に配置された半導体モジュール13の出力端子13cと略同位置とすることは必須ではない。つまり、接続点15が、幅方向の両端に設けられた2つの半導体モジュール11、13の出力端子11c、13cの中心位置Cよりも幅方向の一方側にありさえすれば、配線インダクタンスL2、L3を小さくでき、その分だけ各半導体モジュール11、12、13を流れる電流の均一化を図ることができる。
【0031】
ただし、接続点15が幅方向のより一方側にあれば、磁界を相殺できる範囲が広くなるので、配線インダクタンスL3をより小さくすることができる。例えば、接続点15が、幅方向において最も一方側に配置された半導体モジュール13の出力端子13cと、これに隣接する半導体モジュール12の出力端子12cとの中心位置P1よりも幅方向の一方側にあることが好ましい。さらには、本実施形態のように、接続点15が、幅方向において最も一方側に配置された半導体モジュール13の出力端子13cと略同位置の位置P2にあるか、当該位置P2よりもさらに幅方向の一方側にあることがより好ましい。
【0032】
同様に、本実施形態のように、出力用ブスバー16を並列接続用ブスバー14の幅方向の他方側の端部まで延ばすことは必須ではない。つまり、出力用ブスバー16が、接続点15から幅方向の他方側に延びてさえいれば、配線インダクタンスL2、L3を小さくでき、その分だけ各半導体モジュール11、12、13を流れる電流を均一化を図ることができる。
【0033】
ただし、出力用ブスバー16が幅方向のより他方側まで延びていれば、磁界を相殺できる範囲が広くなるので、配線インダクタンスL2をより小さくすることができる。例えば、出力用ブスバー16が、幅方向において最も他方側に配置された半導体モジュール11の出力端子11cと、これに隣接する半導体モジュール12の出力端子12cとの中心位置P3よりも幅方向の他方側まで延びていることが好ましい。さらには、本実施形態のように、出力用ブスバー16が、幅方向において最も他方側に配置された半導体モジュール11の出力端子11cと略同位置の位置P4まで延びているか、当該位置P4よりもさらに幅方向の他方側まで延びていることがより好ましい。
【0034】
(効果)
以上のように、本実施形態のスイッチング回路10によれば、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16とを絶縁シート17を挟んで積層配置するという簡易な構成で、各半導体モジュール11、12、13を流れる電流の均一化を実現することができる。
【0035】
また、本実施形態では、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16との間に設けられる絶縁部が絶縁シート17で構成されている。このため、積層配置されている並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16との離間距離を小さくすることができ、並列接続用ブスバー14を流れる電流により生じる磁界と、出力用ブスバー16を流れる電流により生じる磁界とを効果的に相殺することができる。その結果、積層部分における配線インダクタンスL2、L3をより小さくすることができ、各半導体モジュール11、12、13を流れる電流をより効果的に均一化することができる。
【0036】
また、本実施形態の電力変換装置1では、各相ごとに設けられるスイッチング回路10U、10V、10Wにおいて、互いに並列接続された各半導体モジュール11、12、13を流れる電流を均一化することができるので、効果的に大容量化を実現することができる。
【0037】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態では、互いに並列接続された3つの半導体モジュール11、12、13が幅方向に並んで設けられるものとしたが、幅方向に並べられる半導体モジュールの個数は適宜変更が可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16との間に設けられる絶縁部が絶縁シート17からなるものとした。しかしながら、絶縁部を絶縁シート17で構成することは必須ではなく、他の絶縁体により絶縁部を構成してもよい。例えば、並列接続用ブスバー14と出力用ブスバー16との間に適当なスペーサを設け、これによって形成される空気層を絶縁部とすることも可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、並列接続用ブスバー14を平板状に構成したが、
図5に示すような変形例をとることも可能である。
図5は、スイッチング回路の変形例を示す側面図であり、
図4の左側から見た側面図である。この変形例では、並列接続用ブスバー14を幅方向(
図5の紙面垂直方向)に沿って折り曲げて階段状(あるいは凹凸状)に構成している。このように、並列接続用ブスバー14を階段状(あるいは凹凸状)にすることで、高さ方向に沿った経路の分だけ電流経路が長くなり、配線インダクタンスL1(
図4参照)を大きくすることができる。その結果、配線インダクタンスL2、L3の影響が相対的に小さくなり、各配線インダクタンスL11、L12、L13をより均一化することができる。