【解決手段】固定子110は、周方向に沿って延在するヨーク部111と、軽方向に沿って延在するティース部112を有している。回転子120は、主磁極部[A]〜[D]と補助磁極部[AB]〜[DA]が周方向に沿って交互に配置されている。主磁極部[A]〜[D]には、周方向に沿った中央部が両端部より回転子120の外周面121側に飛び出ているV字形状に形成されている磁石挿入部130が設けられている。磁石挿入部130には、位置決め部によって位置決めされた状態で永久磁石片141、142が挿入されている。回転子120の外周面121は、主磁極部のd軸上に曲率中心を有する円弧形状に形成された第1の外周部分121aと、補助磁極のq軸上に曲率中心を有し、第1の外周部分121aの曲率半径より大きい曲率半径の円弧形状に形成された第2の外周部分121bにより構成されている。
固定子と、前記固定子に空隙を介して配置されている回転子を備え、前記回転子は、軸方向に直角な断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に沿って交互に配置され、前記主磁極部には磁石挿入部が設けられ、前記磁石挿入部には永久磁石が挿入されている永久磁石電動機であって、
前記磁石挿入部は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った中央部が両端部より前記回転子の外周側に飛び出ているV字形状に形成され、
前記磁石挿入部には、前記磁石挿入部の、周方向に沿った一方側の端部および他方側の端部に第1の空間部および第2の空間部が形成されるように前記永久磁石を位置決めする位置決め部が設けられ、
前記回転子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、前記補助磁極部のq軸に沿った空隙の間隔が前記主磁極部のd軸に沿った空隙の間隔より長くなるように形成されていることを特徴とする永久磁石電動機。
機器と、前記機器を駆動する電動機を備える機器駆動装置であって、前記電動機として請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の永久磁石電動機が用いられていることを特徴とする機器駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている永久磁石電動機では、固定子のティース部のティース先端面と回転子の外周面との間の空隙が一定である。このため、永久磁石の、周方向に沿った両端部(以下、「永久磁石の両端部」という)から発生する磁束が、補助磁極部の外周面を介して固定子のティース部に流れ、主磁極部を流れる磁束量、すなわち、有効磁束量が減少する。また、固定子巻線に電流が流れることによって発生する磁束が補助磁極部の外周面に流れ、永久磁石の両端部に磁束が集中して永久磁石が減磁される。有効磁束量の減少や永久磁石の減磁に対処する方法としては、例えば、固定子巻線に流す電流を増大する方法が考えられる。しかしながら、固定子巻線に流す電流を増大させると、銅損が増大する。このように、特許文献1に開示されている永久磁石電動機では、有効磁束量が減少し、また、永久磁石の両端部に磁束が集中して減磁されるため、効率が低下する。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、有効磁束量を増加させるとともに、永久磁石の両端部に磁束が集中するのを防止して永久磁石電動機の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの発明は、永久磁石電動機に関する。本発明の永久磁石電動機は、固定子と、固定子に空隙を介して配置されている回転子を備えている。回転子は、主磁極部と補助磁極部が周方向に沿って交互に配置されている。
主磁極部には、永久磁石が挿入される磁石挿入部が形成されている。磁石挿入部は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った中央部が両端部より回転子の外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。磁石挿入部をV字形状に形成する態様としては、V字形状の断面を有する磁石挿入孔を形成する態様や、直線状等の断面を有する複数の磁石挿入孔をV字形状に沿って形成する態様を用いることができる。
磁石挿入部に挿入される永久磁石としては、フェライト磁石、希土類磁石、テルビウムやディスプロシウムを含有するネオジウム磁石等の種々の永久磁石を用いることができる。永久磁石は、磁石挿入部に挿入された状態において、磁石挿入部のV字形状と同様のV字形状に配置される。
磁石挿入部には、永久磁石を磁石挿入部内の所望の位置に位置決めする位置決め部が設けられている。この位置決め部により、磁石挿入部の両端部、すなわち、磁石挿入部に挿入された永久磁石の両端壁と磁石挿入部の両端壁との間に、第1の空間部および第2の空間部が形成される。この第1の空間部および第2の空間部により、永久磁石の両端部から発生する磁束が短絡されるのを防止することができる。
また、回転子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、固定子の内周面と回転子の外周面との間の空隙が、補助磁極部のq軸に沿った間隔が主磁極部のd軸に沿った間隔より長くなるように形成されている。好適には、回転子の外周面は、空隙の間隔が、回転子の外周面とq軸が交差する箇所の両側の領域において、回転子の外周面とq軸が交差する箇所の方向に向かって徐々に長くなるように形成される。より好適には、回転子の外周面は、円弧形状に形成された外周部分を組み合わせて構成される。勿論、回転子の外周面は、曲線や直線を組み合わせた種々の形状に形成することができる。
本発明では、回転子の主磁極部の永久磁石が突形状に配置されている。これにより、磁石表面積が増大し、主磁極部を流れる磁束量(有効磁束量)が増大する。そして、磁束量の増大により、固定子巻線に流す電流を小さくすることができるため、銅損を低減することができる。
さらに、永久磁石が、外周側に飛び出ている突形状に配置されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなる。リラクタンストルクが小さくなることにより、鉄損が低減される。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなるため、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
特に、本発明では、永久磁石がV字形状に配置されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各永久磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、回転子の外周面は、補助磁極部のq軸に沿った空隙の間隔が主磁極部のd軸に沿った空隙の間隔より長くなるように形成されている。これにより、固定子の内周面と回転子の外周面との間の空隙が一定である(回転子の外周面が円形形状に形成されている)場合に較べて、永久磁石の軸方向に沿った端部から発生する磁束を有効に利用することができる(有効磁束を増加させることができる)とともに、固定子のティース部から回転子側に流れる磁束が永久磁石の、軸方向に沿った端部に集中するのを抑制することができる。
また、位置決め部により、永久磁石を磁石挿入部内に位置決めすることができる。これにより、磁石挿入部の形状を大きく変更することなく、磁石挿入部の両端部に所定形状の空間部を形成することができ、永久磁石の両端部における磁束の短絡を確実に防止することができる。
したがって、本発明の永久磁石電動機は、従来の永久磁石電動機に較べて効率を向上させることができる。
一つの発明の異なる形態では、回転子の外周面は、主磁極部のd軸と交差する第1の外周部分と、補助磁極部のq軸と交差する第2の外周部分が交互に接続されて形成されている。第1の外周部分は、d軸上に中心点を有する円弧形状に形成されている。また、第2の外周部分は、q軸上に中心点を有し、第1の外周部分の半径より大きい半径の円弧形状に形成されている。好適には、第1の外周部分の円弧形状は、回転中心を中心点とする円弧形状に形成され、第2の外周部分は、q軸上であって、回転中心より第2の外周部分と反対側に離れている点を中心点とする円弧形状に形成される。
本形態では、回転子の外周面を容易に形成することができる。また、第1の外周部分と第2の外周部分との接続部がティース部と対向する箇所を通過する時に、ティース部に流れる磁束量の急激な変化を抑制することができる。これにより、ティース部を流れる磁束量の急激な変化によって固定子巻線に誘起される誘起電圧の波形(起電力波形)に含まれる高調波成分が増大するのを防止することができ、固定子巻線の起電力波形に基づいて回転子の位置を正確に検出することができる。したがって、固定子巻線の起電力波形に基づいて回転子の位置を検出するセンサレス制御方式の制御装置を用いる場合に、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。
一つの発明の他の異なる形態では、磁石挿入部は、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の磁石挿入孔により構成されている。そして、複数の磁石挿入孔のうちの周方向に沿った一方端に配置されている磁石挿入孔の、周方向に沿った一方側の端部(複数の永久磁石片のうち周方向に沿った一方端に配置されている永久磁石片の、周方向に沿った一方側の端壁と磁石挿入部の、周方向に沿った一方側の端壁との間)に第1の空間部が形成され、周方向に沿った他方端に配置されている磁石挿入孔の、周方向に沿った他方側の端部(周方向に沿った他方端に配置されている永久磁石片の、周方向に沿った他方側の端壁と磁石挿入部の、周方向に沿った他方側の端壁との間)に第2の空間部が形成されている。
本形態では、磁石挿入部が複数の磁石挿入孔により構成されているとともに、磁石挿入孔の間にブリッジ部が設けられている。これにより、遠心力に対する回転子の強度を高めることができる。
本発明の他の発明は、機器駆動装置に関する。本発明の機器駆動装置は、機器(例えば、圧縮機の圧縮機構部、車両、車両に搭載されている車載機器)と、機器を駆動する電動機を備え、電動機として前述した永久磁石電動機のいずれかが用いられている。
本発明は、前述した永久磁石電動機と同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の永久磁石電動機の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子(回転軸)の回転中心を通る回転中心線の方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を通る方向を示す。「d軸」は、回転中心と主磁極部の周方向中心点を結ぶ線を表し、「q軸」は、回転中心と補助磁極部の周方向中心点を結ぶ線を表す。
また、磁石挿入部(磁石挿入孔)の「内壁」および「外壁」は、永久磁石(永久磁石片)を挿入する部分を形成するための、径方向に対向する壁のうち回転中心側に配置されている壁および回転子の外周側に配置されている壁を表し、「外周壁」は、磁石挿入部の周方向に沿った両端部(永久磁石の両端壁と磁石挿入部の両端壁との間)に空間部を形成するために回転子の外周面に平行(「略平行」を含む)に形成される壁を表し、「端壁」は、隣接する磁石挿入部(磁石挿入孔)と対向する側の壁を表している。永久磁石(永久磁石片)の「内壁」および「外壁」は、永久磁石が磁石挿入部に挿入された状態において、径方向に対向する壁のうち回転中心側に配置されている壁および回転子の外周側に配置されている壁を表し、「端壁」は、隣接する永久磁石(永久磁石片)と対向する側の壁を表している。
また、「平行」という記載は、「略平行」を含むものとして用いられている。
【0009】
なお、以下で説明する本発明の永久磁石電動機の各実施形態は、例えば、空調装置、冷却装置や冷凍装置等に設けられている圧縮機の圧縮機構部、車両、車両に搭載されている車載機器等の公知の種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。すなわち、本発明は、機器と、機器を駆動する永久磁石電動機を備える機器駆動装置として構成することもできる。各機器の構成は公知であるので、本明細書では説明を省略する。
【0010】
本発明の永久磁石電動機の第1の実施形態を、
図1、
図2に示す。
図1は、第1の実施形態の永久磁石電動機100を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図2は、
図1の部分拡大図である。なお、本明細書では、
図1および
図2において、時計回り方向を「周方向に沿った一方方向」といい、反時計回り方向を「周方向に沿った他方方向」という。以下で説明する各実施形態においても同様である。勿論、反時計回り方向を「一方方向」、時計回り方向を「他方方向」ということもできる。
また、各実施形態では、6スロット、4極の永久磁石電動機について説明するが、本発明の永久磁石電動機のスロット数、極数は適宜変更可能である。
【0011】
本実施形態の永久磁石電動機100は、固定子110と回転子120を備えている。
固定子110は、複数の電磁鋼板を積層した固定子コアにより構成される。固定子110は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部111と、ヨーク部111から径方向に沿って回転中心O方向に延在するティース部112を有している。ティース部112は、ヨーク部111から径方向に沿って延在するティース基部112aと、ティース基部112aの先端側(回転中心O側)に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部112bを有している。ティース先端部112bの回転中心O側には、ティース先端面113が形成されている。ティース先端面113は、「固定子110の内周面」を形成する。
周方向に沿って隣接するティース部112により形成されるスロット114には、固定子巻線(図示省略)が挿入される。本実施形態では、固定子巻線は、集中巻き方式を用いてスロット114に挿入されている。勿論、分布巻き方式を用いることもできる。
【0012】
回転子120は、複数の電磁鋼板を積層した回転子コアにより構成される。回転子120は、軸方向に直角な断面で見て、主磁極部[A]〜[D]と補助磁極部[AB]〜[DA]が周方向に沿って交互に配置されている。主磁極部[A]〜[D]には、周方向に沿って延在する磁石挿入部130が形成され、磁石挿入部130には永久磁石140が挿入されている。
主磁極部[A]〜[D]の磁石挿入部130に挿入される永久磁石140は、N極の主磁極部とS極の主磁極部が周方向に沿って交互に配置されるように着磁される。永久磁石140の着磁方法としては、永久磁石140を磁石挿入部130に挿入した状態で、固定子巻線に着磁電流を流す組込み着磁方法が用いられる。勿論、永久磁石140を磁石挿入部130に挿入する前に着磁する方法を用いることもできる。
永久磁石としては、種々の永久磁石を用いることができる。例えば、フェライト磁石、希土類磁石、テルビウムやディスプロシウムを含有するネオジウム磁石等を用いることができる。
回転子120は、回転軸(図示省略)が挿入される回転軸挿入孔122を有している。
また、回転子120は、
図2には図示を省略しているが、カシメピン挿入孔123と通路孔124を有している。カシメピン挿入孔123は、q軸と交差する位置に形成され、積層された複数の電磁鋼板を一体化するカシメピンが挿入される。通路孔124は、d軸を挟んで周方向両側に形成され、圧縮機で用いられる冷媒、固定子110や回転子120を冷却する冷却媒体(例えば、空気)等が軸方向に沿って流れる。カシメピン挿入孔123および通路孔124の形状、数、配設位置等は適宜変更可能である。
【0013】
本実施形態では、磁石挿入部130は、平行に延在する直線状の第1の内壁130aおよび第2の内壁130bと第1の外壁130cおよび第2の外壁130d、直線状の第1の外周壁130eおよび第2の外周壁130g、直線状の第1の端壁130fおよび第2の端壁130h、第1の突部130xおよび第2の突部130yにより形成される1つの磁石挿入孔により構成されている。以下、「磁石挿入孔130」という。
磁石挿入孔130は、周方向に沿った中央部(d軸に対応する部分)が両端部(q軸側の端部)より回転子120の外周側に飛び出ている(以下、「外周側に飛び出ている」という)V字形状に形成されている。すなわち、平行に延在する直線状の第1の内壁130aと第1の外壁130c、第1の外周壁130e、第1の端壁130fおよび第1の突部130xによりV字形状の一方側の辺が形成され、平行に延在する直線状の第2の内壁130bと第2の外壁130d、第2の外周壁130g、第2の端壁130hおよび第2の突部130yによりV字形状の他方側の辺が形成される。
磁石挿入孔130の第1の端壁130fは、隣接する主磁極部の磁石挿入孔130の第2の端壁130hと平行に延在している。
【0014】
永久磁石140は、磁石挿入孔130に挿入される第1の永久磁石片141および第2の永久磁石片142により構成されている。第1および第2の永久磁石片141および142は、平行に延在する直線状の内壁141aおよび142aと外壁141bおよび142b、平行に延在する直線状の第1の端壁141cおよび142cと第2の端壁141dおよび142dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石140は、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている。すなわち、第1の永久磁石片141がV字形状の一方側の片に沿って配置され、第2の永久磁石片142がV字形状の他方側の辺に沿って配置されている。
【0015】
磁石挿入孔130の、周方向に沿った両端の外周壁(第1の外周壁130eおよび第2の外周壁130g)と回転子120の外周面121との間、すなわち、永久磁石140の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片141の、周方向に沿った一方側の第2の端壁141dおよび第2の永久磁石片142の、周方向に沿った他方側の第2の端壁142d)と回転子120の外周面121との間には、第1のブリッジ部160aおよび第2のブリッジ部160bが形成されている。
第1のブリッジ部160aおよび第2のブリッジ部160bによって、回転子120の遠心力に対する強度が高められる。
【0016】
また、磁石挿入孔130の、周方向に沿った両端部、すなわち、永久磁石140の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片141の、周方向に沿った一方側の第2の端壁141dおよび第2の永久磁石片142の、周方向に沿った他方側の第2の端壁142d)と磁石挿入部130の、周方向に沿った両端の端壁(第1の端壁230fおよび第2の端壁130h)との間に、第1の空間部150aおよび第2の空間部150bが形成されている。
第1の空間部150aおよび第2の空間部150bによって、永久磁石140の、周方向に沿った両端部(以下、「永久磁石140の両端部」という)において、永久磁石140から発生する磁束が短絡されるのを防止することができる。
【0017】
本実施形態では、第1の突部130xおよび第2の突部130yによって、永久磁石140の位置(第1の永久磁石片141および第2の永久磁石片142の位置)を設定することができる。これにより、磁石挿入孔130の形状を大きく変更することなく、磁石挿入孔130の両端部(第1の永久磁石片141の第2の端壁141dおよび第2の永久磁石片142の第2の端壁142dと磁石挿入孔130の第1の端壁130fおよび第2の端壁130hとの間)に形成される第1の空間部150aおよび第2の空間部150bの周方向に沿った長さを容易に変更することができる。したがって、永久磁石140の両端部における磁束の短絡を確実に防止することができる。
本実施形態では、第1の突部130xおよび第2の突部130yが、本発明の「位置決め部」に対応する。
【0018】
また、回転子120の外周面121は、主磁極部[A]〜[D]のd軸と交差する第1の外周部分121aと、補助磁極部[AB]〜[DA]のq軸と交差する第2の外周部分121bが交互に接続されて構成されている。第1の外周部分121aと第2の外周部分121bは、接続部120Aおよび120Bで接続されている。
第1の外周部分121aは、d軸上の回転中心Oを中心点とする、半径R1の(外周側に突状の)円弧形状に形成されている。また、第2の外周部分121bは、q軸上であって、回転中心Oより第2の外周部分121bと反対側に離れた点Pを中心点とし、第1の曲線部分121aの円弧形状の半径R1より大きい半径R2の(外周側に突状)の円弧形状に形成されている。すなわち、固定子110の内周面(ティース先端面113)と回転子120の外周面121との間の空隙(エアギャップ)は、q軸に沿った間隔G2がd軸に沿った間隔G1より大きくなるように設定されている。
回転子120の外周面121を、半径R1の円弧形状に形成された第1の外周部分121aと半径R2(半径R2>半径R1)の円弧形状に形成された第2の外周部分121bを交互に接続して構成することにより、第1の外周部分121aと第2の外周部分121bとの接続部120Aおよび120Bにおける磁束量の変化を小さくすることができ、固定子巻線に誘起される誘起電圧の波形(起電力波形)に含まれる高調波成分を低減することができる。これにより、回転子位置検出センサを用いることなく、起電力波形に基づいて回転子の位置を検出するセンサレス制御方式の制御装置を用いた場合に、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。
【0019】
第1の実施形態では、磁石挿入部が突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大し、磁束量(有効磁束量)が増大する。そして、磁束量が増大することにより、固定子巻線に流す電流を小さくすることができるため、銅損を低減することができる。
また、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が、外周側に飛び出ている突形状に配置)されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなる。リラクタンストルクが小さくなることにより、鉄損が低減される。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第1の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、回転子の外周面が、d軸と交差する円弧形状(半径R1)の第1の外周部分と、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)の第2の外周部分を交互に接続して構成されている。すなわち、q軸に沿った空隙(エアギャップ)の間隔G2がd軸に沿った空隙の間隔G1より大きくなるように回転子の外周面が形成されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った両端部から発生する磁束が、空隙の間隔が小さい第1の外周部分側に流れ易くなり(空隙の間隔が大きい第2の外周部分側に流れ難くなり)、主磁極部の磁束量が増大する。さらに、固定子巻線に電流を流すことによって発生する磁束が、空隙の間隔が小さい第1の外周部分に流れ易くなり(空隙の間隔が大きい第2の外周部分に流れ難くなり)、永久磁石の両端部における、磁束集中による減磁を防止することができる。なお、起電力波形に含まれる高調波成分を低減することができるため、センサレス制御方式の(固定子巻線の起電力波形を用いて検出した回転子の位置に基づいて制御する)制御装置を用いる場合には、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。
また、永久磁石を位置決めする位置決め部が設けられているため、永久磁石の両端部における磁束短絡を防止するための第1の空間部および第2の空間部を容易に変更することができる。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0020】
本発明の永久磁石電動機の第2の実施形態を、
図3、
図4に示す。
図3は、第2の実施形態の永久磁石電動機200を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図4は、
図3の部分拡大図である。
第2の実施形態の永久磁石電動機200は、磁石挿入部230と永久磁石240の構成が第1の実施形態の永久磁石電動機100と異なっている。したがって、以下では、第2の実施形態の永久磁石電動機200の磁石挿入部230および永久磁石240の構成を説明する。なお、
図3、
図4において、磁石挿入部230および永久磁石240以外の構成要素に関しては、
図1、
図2に示されている符号と百番台の数字以外が同じである符号が付されている構成要素は同じ構成要素である。
【0021】
本実施形態では、磁石挿入部230は、周方向に沿って配置されている第1の磁石挿入孔231および第2の磁石挿入孔232により構成されている。第1および第2の磁石挿入孔231および232は、平行に延在する直線状の内壁231aおよび232aと外壁231bおよび232b、直線状の外周壁231dおよび232d、直線状の第1の端壁231cおよび232c、直線状の第2の端壁231eおよび232e、第1の突部231xおよび第2の突部232yにより形成される直線状の断面を有している。
磁石挿入部230は、外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。すなわち、第1の磁石挿入孔231がV字形状の一方側の辺に沿って形成され、第2の磁石挿入孔232がV字形状の他方側の辺に沿って形成されている。
第1の磁石挿入孔231の、周方向に沿った他方側の第1の端壁231cと第2の磁石挿入孔232の、周方向に沿った一方側の第1の端壁232cは、平行に延在している。また、第1の磁石挿入孔231の、周方向に沿った一方側の第2の端壁231eは、隣接する主磁極部の第2の磁石挿入孔232の、周方向に沿った他方側の第2の端壁232eと平行に延在している。
【0022】
永久磁石240は、第1および第2の磁石挿入孔231および232に挿入される第1および第2の永久磁石片241および242により構成されている。第1および第2の永久磁石片241および242は、第1の実施形態と同様に、平行に延在する内壁241aおよび242aと外壁241bおよび242b、平行に延在する第1の端壁241cおよび242cと第2の端壁241dおよび242dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石240は、外周側に飛び出ているV字形状に配置される。すなわち、第1の永久磁石片241がV字形状の一方側の辺に沿って配置され、第2の永久磁石片242がV字形状の他方側の辺に沿って配置されている。
【0023】
磁石挿入部230の、周方向に沿った両端の外周壁(第1の磁石挿入孔231の外周壁231dおよび第2の磁石挿入孔232の外周壁232d)と回転子220の外周面231との間、すなわち、永久磁石240の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片241の、周方向に沿った一方側の第2の端壁241dおよび第2の永久磁石片242の、周方向に沿った他方側の第2の端壁242d)と回転子220の外周面221との間には、第1のブリッジ部260aおよび第2のブリッジ部260bが形成されている。また、第1の磁石挿入孔231と第2の磁石挿入孔232との間(第1の永久磁石片241と第2の永久磁石片242との間)には、第3のブリッジ部260cが形成されている。第3のブリッジ部260cによって、回転子220の遠心力に対する強度がより高められている。
【0024】
また、磁石挿入孔230の周方向に沿った両端部、すなわち、永久磁石240の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片241の第2の端壁241dおよび第2の永久磁石片242の第2の端壁242d)と磁石挿入部230の、周方向に沿った両端の端壁(第1の磁石挿入孔231の第2の端壁231eおよび第2の磁石挿入孔232の第2の端壁232e)との間には、永久磁石240の両端部における磁束の短絡を防止するための第1の空間部250aおよび第2の空間部250bが形成されている。
本実施形態では、第1の突部231xおよび第2の突部232yによって、永久磁石240の位置(第1の永久磁石片241および第2の永久磁石片242の位置)を設定することができる。これにより、磁石挿入孔230の形状を大きく変更することなく、磁石挿入孔230の両端部(第1の永久磁石片241の第2の端壁241dおよび第2の永久磁石片242の第2の端壁242dと第1の磁石挿入孔231の第2の端壁231eおよび第2の磁石挿入孔232の第2の端壁232eとの間)に形成される第1の空間部250aおよび第2の空間部250bの周方向に沿った長さを容易に変更することができる。したがって、永久磁石240の両端部における磁束の短絡を確実に防止することができる。
【0025】
また、回転子220の外周面221は、第1の実施形態と同様に、d軸と交差する円弧状(半径R1)に形成された第1の外周部分221aと、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分221bが交互に接続されて構成されている。
【0026】
第2の実施形態では、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大して磁束量(有効磁束量)が増大する。また、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなり、リラクタンストルクに起因して発生する鉄損を低減することができる。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第2の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されているため、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各永久磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、磁石挿入部が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の磁石挿入孔によって構成されている(永久磁石が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の永久磁石片によって構成されている)ことにより、回転子の、遠心力に対する強度が高められている。
また、回転子の外周面が、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分とq軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分を交互に接続して構成されている。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0027】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
永久磁石をV字形状に配置する態様あるいは磁石挿入部をV字形状に形成する態様としては、概略、永久磁石がV字形状に配置されあるいは磁石挿入部がV字形状に形成されていればよい。
実施形態では、主磁極部に磁石挿入孔を形成し、磁石挿入孔に永久磁石を挿入したが、永久磁石を配置する態様はこれに限定されない。例えば、接着や一体成形等により永久磁石を回転子に配置する態様を用いることもできる。すなわち、本発明は、「永久磁石が、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている」永久磁石電動機として構成することもできる。
主磁極部の磁石挿入部を構成する磁石挿入孔の数や形状は、適宜変更可能である。
主磁極部に配置される永久磁石を構成する永久磁石片の数や形状は、適宜変更可能である。
永久磁石を位置決めするための位置決め部の形状や数は、適宜変更可能である。
回転子の外周面は、q軸に沿った空隙の間隔G2がd軸に沿った空隙の間隔G1より大きくなる種々の形状に形成することができる。
本発明の永久磁石電動機は、種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。