【解決手段】前記課題は、(i)修飾されたIgG4アイソタイプ配列を含んでいるFc領域またはFcRn結合ドメイン領域、および(ii)修飾されたIgG4ヒンジ領域配列の組合せによって生体内半減期が延長された分子、特に抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質によって、解決される。
キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、超ヒト化(superhumanised)(登録商標)抗体、脱免疫化抗体、または化粧張り抗体である、請求項1または2に記載の免疫グロブリン。
前記抗体フラグメントが、(i)Fabフラグメント、(ii)Fdフラグメント、(iii)Fvフラグメント、(iv)dAbフラグメント、(v)単離されたCDR領域、(vi)F(ab’)2フラグメント、(vii)一本鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性一本鎖Fv、ならびに(ix)二重特異性抗体、(x)三重特異性抗体および(xi)四重特異性抗体から選択される、請求項5に記載の免疫グロブリン構築物。
(i)KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、ならびに(ii)KabatのEUインデックスに従ってコアヒンジ領域配列内にアミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4を含むように遺伝子組換えにより融合されるか、化学的に結合されるか、または遺伝子操作された、生理活性分子を含み、延長された生体内半減期を有する免疫グロブリンIgG4融合タンパク質。
KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含んでいる、請求項11に記載の免疫グロブリンIgG4融合タンパク質。
部分を含むように、化学的に結合したか、遺伝子組換えにより融合したか、または遺伝子操作した、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗体または免疫グロブリン構築物。
単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質が、KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含んでいる、請求項22に記載の使用。
前記疾患が、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、小児脂肪便症、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性筋肉痛症候群、特発性好酸球増加症候群、偶発性血管性浮腫を含めた浮腫性反応、蠕虫感染、オンコセルカ皮膚炎、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性小腸炎、好酸球性結腸炎、鼻マイクロポリポーシス、鼻ポリポーシス、アスピリン不耐喘息、閉塞型睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、強皮症、および心内膜線維症から成る群から選択される、請求項25に記載の方法、または請求項22〜24のいずれか1項に記載の使用。
請求項1〜21のいずれか1項に記載の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコードする核酸を含んでいる形質転換細胞。
医薬的に許容され得る賦形剤と一緒に請求項1〜21のいずれか1項に記載の単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を含んでいる医薬組成物。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(i)修飾されたIgG4アイソタイプ配列を含んでいるFc領域またはFcRn結合ドメイン領域、および(ii)修飾されたIgG4ヒンジ領域配列の組合せによって生体内半減期が延長された分子、特に抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質に関する。特に、これらの分子は、FcRnに対するFcまたは重鎖CH2とCH3定常領域の親和性を増強し、それにより、対象体内でその血中半減期を延長する、例えば、変異などのアミノ酸修飾を持つ。そのうえ、該分子は、IgG4アイソタイプ抗体に特有である混合性ヘテロ二量体の形成を妨げる、修飾されたIgG4ヒンジ領域配列を含んでいる。
【0007】
本発明は、上記の修飾の組合せが、単独の(単数もしくは複数の)Fc領域修飾またはヒンジ領域修飾のいずれかより実質的に長い間、その野生型無修飾対応物に比べて分子の血中半減期を延長するという驚くべき発見に基づいている。そのうえ、修飾の組合せは、半減期の相乗的(共力的)長期化をもたらす。(ヒト抗体定常領域を含んでいるタンパク質を含めた)ヒトタンパク質ベースの薬品におけるあらゆる修飾が患者の抗薬物免疫応答を引き起こすリスクを高めるので、一般に、薬物に対するそうした免疫応答を引き起こすことに対して、それぞれのそうした変異の恐らく相加的に増加したリスクを制限するためにそうした変異の数を制限することが賢明である。しかしながら、2つのクラスの置換(Fc修飾とヒンジ修飾)の組合せがIgG4抗体の血中半減期の延長に相乗効果をもたらす驚くべき結果を、本明細書中に記載したはずである。その結果、この組合せは、抗薬物免疫反応促進の発生を増加することに関する理論上の不都合を克服できる予期外の利点を提供する。分子の半減期を延長する利点は、当業者にすぐに明確になる。そうした利益は、対象体内における有害事象のリスクを減らし、かつ、コストを抑える、より低い投与の用量および/または頻度を含んでいる。従って、延長された半減期を有するそうした免疫グロブリンは、顕著な医薬的な重要性を持つ。
さらに、該分子がIgG4アイソタイプ定常ドメインとIgG4ヒンジ領域を含むので、該分子は生体内においてエフェクター機能を示さないか、または最小限しか示さない。
【0008】
従って、一実施形態において、本発明は、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番された第251−256アミノ酸残基の1もしくは複数に置換を含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)アミノ酸配列CPSCP(配列番号1)内のセリン残基のプロリンへの置換を含むヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものと比べて延長される、
抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を提供する。
【0009】
抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の延長された生体内半減期は、上記置換を欠いている対応するヒトIgG4抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の半減期を参考にして決定される。
本発明はまた、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものと比べて延長される、
抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を提供する。
【0010】
本発明による抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、superhumanised(登録商標)抗体、脱免疫化抗体または化粧張り(veneered)抗体であってもよい。
一例において、本発明は、以下の:
(i)ヒトまたはヒト化Fab
(ii)KabatのEUインデックスに従って付番された第251−256アミノ酸残基の1もしくは複数に置換を含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(iii)KabatのEUインデックスに従ってS228P置換とも記述されるアミノ酸配列CPSCP(配列番号1)におけるセリン残基のプロリンへの置換を含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された抗体であって、
修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の生体内半減期が、対応する修飾されていない抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質と比べて延長される、
抗体を提供する。
【0011】
明細書中では、免疫グロブリン重鎖の残基の付番は、KabatのEUインデックスまたはに付番方式によるものである(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest 5th Ed., Washington DC United States Department of Health and Human Services, 1991 , National Institutes of Health, Bethesda.)。「KabatのEUインデックス」とは、ヒトIgG1EU抗体の付番を指す(Edelman et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78−85, 1969)。IgG2、IgG3、およびIgG4アイソタイプのアミノ酸配列は、それぞれのヒンジ領域の最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによってIgG1配列と整列され、そしてそれは、重鎖内S−S結合を形成する。
【0012】
KabatのEUインデックスよる第251−256アミノ酸残基は、Fc領域の免疫グロブリン重鎖CH2ドメイン内に位置している。これらの残基は、Fc領域のFcRnへの結合に関係し、そのため、抗体半減期を変更する際に関係してくる。
別の例において、本発明は、以下の:
(i)抗体フラグメント、
(ii)KabatのEUインデックスに従って付番された第251−256アミノ酸残基の1もしくは複数に置換を含むように、対応する修飾されていないCH2ドメインに対して修飾したヒトIgG4CH2ドメイン、および
(iii)KabatのEUインデックスに従ってS228P置換とも記述される、アミノ酸配列CPSCP(配列番号1)内のセリン残基のプロリンへの置換を含むヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された免疫グロブリン構築物であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものと比べて延長される、
免疫グロブリン構築物を提供する。
【0013】
一実施形態において、単離された免疫グロブリン構築物は、ヒトIgG4Fc領域またはFcRn結合ドメインを含む。
好ましくは、単離された免疫グロブリン構築物は、KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含む。
具体的な抗体フラグメントには、これだけに制限されるものではないが、(i)Fabフラグメント、(ii)Fdフラグメント、(iii)Fvフラグメント、(iv)dAbフラグメント、(v)単離されたCDR領域、(vi)F(ab’)
2フラグメント、(vii)一本鎖Fv分子(scFv)、(viii)二重特異性一本鎖Fv、ならびに(ix)二重特異性抗体(x)三重特異性抗体および(xi)四重特異性抗体が含まれる。
【0014】
本発明はまた、(i)KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、ならびに(ii)KabatのEUインデックスに従ってコアヒンジ領域配列内にアミノ酸置換S228Pを含むヒトIgG4を含むように遺伝子組換えにより融合されるか、化学的に結合されるか、または遺伝子操作される生理活性分子を含めた、延長された生体内半減期を有する免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を提供する。
生理活性分子には、タンパク質、非タンパク質性物質、あるいは非免疫グロブリンタンパク質が含まれ得る。
【0015】
一実施形態において、生理活性分子はポリペプチドである。
別の例において、本発明は、以下の:
(i)生理活性分子;
(ii)KabatのEUインデックスに従って付番された第251−256アミノ酸残基の1もしくは複数に置換を含むように、IgG4CH2ドメインに対して修飾したヒトIgG4CH2ドメイン;および
(iii)KabatのEUインデックスに従ってS228P置換と記述されるプロリンへの、アミノ酸配列CPSCP(配列番号1)内のセリン残基への置換を含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する免疫グロブリンIgG4融合タンパク質であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものと比べて延長される、
免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を提供する。
【0016】
好ましくは、単離された免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、ヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインを含んでいる。
好ましくは、単離された免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含んでいる。
本発明によるヒトIgG4コアヒンジ領域配列は、KabatのEUインデックスによるS228P置換を好ましくは含んでいる。この置換は、Kabatら(1987 Sequences of proteins of immunological interest. United States Department of Health and Human Services, Washington DC)によるとS241Pとも呼ばれる。上記置換には、ヒンジ領域のコアの配列を野生型IgG1またはIgG2アイソタイプ抗体のものと同じにするという効果がある。IgG4アイソタイプ抗体に関して、それは、IgG4抗体の均一系形態の産生をもたらし、それにより、ヘテロ二量体IgG4抗体の産生につながることが多い重鎖の解離、そして再会合を防ぐ。
【0017】
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合分子は、KabatのEUインデックスによる第252、254、および256アミノ酸残基の1もしくは複数における置換を含んでいるヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインを含んでいる。特定の例において、本発明による抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、Fc領域の第252、254または256アミノ酸残基のいずれか一つの単一置換を含んでいる。他の例において、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、Fc領域の第252および254残基、または第254および256残基もしくは第252および256残基の置換を含んでいる。特定の例において、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、ヒトIgG4定常領域配列の第252、254、および256残基のそれぞれに置換を含んでいる。
【0018】
本発明の特定の例において、第252残基はチロシン、フェニルアラニン、セリン、トリプトファンまたはトレオニンで置換され、第254残基はトレオニンまたはセリンで置換され、そして、第256残基はセリン、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、アスパラギンまたはトレオニンで置換される。特定の例において、第252残基はチロシンで置換され(252Y)、第254残基はトレオニンで置換され(S254T)、そして第256残基はグルタミン酸で置換される(T256E)。これらの置換は、まとめて「YTE修飾」と呼ばれる。
もう1つの実施形態において、本発明による抗体または免疫グロブリン構築物は、部分を含むように、更に遺伝子組換えにより融合されても、化学的に結合されても、または遺伝子操作されてもよい。本発明による部分は、これだけに制限されるものではないが、抗体に直接的または間接的に結合される治療薬、細胞毒、放射性同位元素、免疫調節薬、抗血管新生剤、抗新生血管形成、および/または他の血管新生作用物質、毒素、抗増殖性作用物質、アポトーシス促進性作用物質、化学療法薬、および治療用核酸から選択され得る。
【0019】
一例において、本発明に従って修飾された抗体は、ヒトIL−5に特異的に結合する抗体である。別の例において、本発明に従って修飾された抗体は、ヒトCD33に特異的に結合する抗体である。
従って、一例において、本発明は、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、IL−5に特異的に結合する単離された抗体であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものの半減期と比べて延長される、
抗体を提供する。
【0020】
特定の例において、対応する修飾されていない抗IL−5抗体は、hu39D10である。
もう1つの実施形態において、単離された抗体のFab配列は、メポリズマブの軽鎖および重鎖可変領域配列に相当し得る。
別の例において、本発明は、IL−5に特異的に結合する抗体、配列番号6に規定される定常重鎖配列を含んでいる抗体、および配列番号7に規定される重鎖可変領域配列を提供する。別の例において、IL−5に特異的に結合する抗体は、配列番号8に規定される可変および定常領域配列を含んでいる軽鎖をさらに含んでいる。
【0021】
別の例において、本発明は、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、CD33に特異的に結合する単離された抗体であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないものの半減期と比べて延長される、
抗体を提供する。
【0022】
特定の例において、本発明に従って修飾された抗CD33抗体は、抗体huMab195である。
別の例において、本発明は、CD33に特異的に結合する抗体、配列番号11に規定される重鎖配列を含んでいる抗体、および配列番号12に規定される軽鎖配列を提供する。
本発明はまた、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番された第251−256アミノ酸残基の1もしくは複数に置換を含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域または修飾されていないそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによりS228P置換とも記述される、プロリン(配列番号1)へのアミノ酸配列CPSCP内のセリン残基の置換を含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の使用を提供する。
【0023】
好ましくは、単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含んでいる。
本発明はまた、疾患を処理するかまたは予防するための薬剤の製造における発明に従って修飾された単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の使用を提供する。
本発明は、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによりアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、延長された生体内半減期を有する単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の、対象の疾患を処置または予防するための薬剤の製造における使用を提供する。
【0024】
本発明はまた、本発明の修飾された抗IL−5抗体を投与することを含む、余分な好酸球産生を特徴とする対象の疾患を処置または予防する方法を提供する。
本発明はまた、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはその修飾されていないFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含み、IL−5を特異的に結合する単離された抗体であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていないもの半減期と比べて延長される、
抗体を対象に投与することを含む、余分な好酸球産生を特徴とする対象の疾患を処置する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、余分な好酸球産生を特徴とする対象の疾患を処置または予防する際のそうした修飾された抗体の使用、および、余分な好酸球産生を特徴とする疾患を処置または予防するための薬剤の製造における修飾された抗体の使用にも及ぶ。
一例において、本発明は、対象の余分な好酸球産生を特徴とする疾患を処置または予防するための薬剤の製造における、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含み、IL−5に特異的に結合する、延長された生体内半減期を有する単離された抗体の使用を提供する。
【0026】
一例において、疾患は、余分な好酸球産生は特徴とする(好酸球増加症)。
余分な好酸球産生を特徴とする疾患は、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、小児脂肪便症、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性筋肉痛症候群、特発性好酸球増加症候群、偶発性血管性浮腫を含めた浮腫性反応、蠕虫感染、オンコセルカ皮膚炎、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性小腸炎、好酸球性結腸炎、鼻マイクロポリポーシス、鼻ポリポーシス、アスピリン不耐喘息、閉塞型睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、強皮症、および心内膜線維症から成る群から選択される。
【0027】
別の例において、疾患は自己免疫疾患である。
本発明による修飾された抗IL−5抗体が余分な好酸球産生を特徴とする疾患に関連する予防または診断の方法で使用できることも理解される。
本発明はまた、本発明により修飾された抗CD33抗体を対象に投与することを含む、対象の癌疾患を処置する方法も提供する。
【0028】
本発明はまた、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番した置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないIgG4Fc領域またはその修飾されていないFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、CD33に特異的に結合する単離された抗体であって、
修飾されたその生体内半減期が、対応する修飾されていない抗体の半減期と比べて延長される、
抗体を対象に投与することを含む、対象の癌疾患を処置する方法も提供する。
【0029】
本発明はまた、癌疾患を処置または予防する際のそうした修飾された抗体の使用、および癌疾患を処置または予防するための薬剤の製造における修飾された抗体の使用にも及ぶ。
特定の例において、癌疾患は急性骨髄性白血病である。
別の例において、本発明は、対象の癌疾患を処置または予防するための薬剤の製造における、以下の:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように、対応する修飾されていないヒトIgG4Fc領域またはその修飾されていないFcRn結合ドメインに対して修飾したヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるヒトIgG4コアヒンジ領域配列、
を含む、CD33に特異的に結合する延長された生体内半減期を有する単離された抗体の使用を提供する。
特定の例において、癌疾患は急性骨髄性白血病である。
【0030】
本発明はまた、以下のステップ:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番されたアミノ酸置換M252Y、S254TおよびT256Eを定常領域配列またはそのFcRn結合ドメインに導入し、そして、
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pをコアヒンジ領域配列に導入する、
を含む、IgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインとIgG4ヒンジ領域を含んでいるヒトまたはヒト化IgG4アイソタイプ抗体または免疫グロブリン構築物の生体内半減期を延長する方法も提供する。
【0031】
特定の例において、上記の方法は、抗IL−5抗体、特にhu39D10の半減期を延長するのに使用できる。
更なる特定の例において、上記の方法は、抗CD33抗体の半減期を延長するのに使用できる。
本発明はまた、以下のステップ:
(i)KabatのEUインデックスに従って付番されたアミノ酸置換M252Y、S254TおよびT256EをヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに導入し、そして
(ii)KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228PをヒトIgG4コアヒンジ領域配列に導入する、
を含む、IgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインとIgG4ヒンジ領域を含んでいる免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の生体内半減期を延長する方法も提供する。
【0032】
本発明はまた、配列番号14を含んでいる融合タンパク質としてそれを遺伝子操作することによってタンパク質の生体内半減期を延長する方法も提供する。
本発明はまた、配列番号14を含んでいる融合タンパク質も提供する。
一例において、融合タンパク質は、配列番号14に、C末端に直に結合している一つのリジンをさらに含んでいる。
【0033】
本発明はまた、以下のステップ:
(i)非IgG4抗体の重鎖定常領域を、KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含むように修飾されたヒトIgG4定常領域またはそのFcRn−結合ドメインと置き換え、そして
(ii)非IgG4抗体のヒンジ領域を、KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるIgG4ヒンジ領域と置き換える、
を含む、非IgG4抗体のエフェクター機能を低減する方法も提供する。
【0034】
本発明はまた、以下のステップ:
(i)ヒト以外のIgG4抗体の重鎖定常領域を、KabatのEUインデックスに従って付番したアミノ酸置換M252Y、S254T、およびT256Eを含んでいる修飾されたヒトIgG4定常領域またはそのFcRn−結合ドメインと置き換え、そして
(ii)ヒト以外のIgG4抗体のヒンジ領域を、KabatのEUインデックスによるアミノ酸置換S228Pを含んでいるIgG4ヒンジ領域と置き換える、
を含む、ヒト以外のIgG4抗体の生体内半減期を延長する方法も提供する。
【0035】
本発明はまた、いずれかの実施形態により本明細書中に記載した抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコード化する核酸も提供する。
本発明はまた、いずれかの実施形態により本明細書中に記載した抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を発現する形質転換細胞も提供する。
本発明はまた、本明細書中に記載した抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコード化する核酸を含んでいる形質転換細胞も提供する。
【0036】
一実施形態において、本発明は、医薬的に許容され得る賦形剤と一緒に本発明による単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を含んでいる医薬組成物を提供する。好ましくは、上記組成物は、治療的に有効な量の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】可変ドメインとIgG4定常ドメインを含めたレリズマブ(relizumab)重鎖の配列、S228P変異、「YTE」変異またはS228PとYTE変異群の組合せを含んでいる定常ドメイン(天然IgG4アイソタイプ)またはIgG4定常ドメインの配列を示す;hu39D10重鎖可変ドメインとhu39D10軽鎖の配列もまた示す。
【
図3】ヒトβ
2ミクログロブリンの成熟部分の配列を示す。
【
図4】天然IgG4Fcドメインを含んでいるhu39D10、またはS228P変異、YTE変異、またはS228PおよびYTE変異の両方を有するものに対するヒトFcRnの親和性を計測するためのELISAベースのアッセイを示す。
【
図5】ヒト化FcRnを有するマウス、すなわち、内在性FcRn遺伝子を欠失されているが、ヒト対応物の異所性発現があるマウスにおけるPK試験を示す。0日目に、マウスにhu39D10、またはYTE置換のみ、ヒンジ置換(S228P)のみ、もしくは両タイプの置換を含んでいるバリアントを与えた。各マウスは、2、12、24時間、そして2、4、7、10、14、18、21、および28日目に後眼窩洞から採血した。血漿サンプルをヒト化抗体濃度について分析した。抗体レベルを、同じマウスの24時間の時点のレベルに対するパーセントとして表した。
【
図6】FcドメインがS228PとTYE修飾を含んでいるIgG4アイソタイプであるCD33抗体huMab195の配列を示す;huMab195の軽鎖もまた示す。
【
図7】ヒトCD33の細胞外ドメイン−Fc融合タンパク質の配列を示す。
【
図8】ヒト化FcRnを有するマウス、すなわち、内在性FcRn遺伝子を欠失されているが、ヒト対応物の異所性発現があるマウスにおけるPK試験を示す。0日目に、マウスに天然IgG4Fcドメインを持つhuMab195、またはYTE置換のみ、ヒンジ置換(S228P)のみ、もしくは両タイプの置換を含んでいるバリアントを与えた。各マウスは、2、12、24時間、そして2、4、7、10、および14日目に後眼窩洞から採血した。血漿サンプルをヒト化抗体濃度について分析した。抗体レベルを、同じマウスの24時間の時点のレベルに対するパーセントとして表した。
【
図9】天然ヒトIgG4重鎖のヒンジFc部分の配列、ならびにS228PとYTE変異群とC末端リジンの欠失を有するヒトIgG4重鎖ヒンジFc部分の配列を示す。
【0038】
発明の詳細な説明
通則
「および/または」という用語、例えば、「Xおよび/またはY」は「XとY」または「XまたはY」のいずれかも意味するものと理解されなければならず、両方の意味またはいずれかの意味の明確な支持を提供するものと解釈されなければならない。
【0039】
本明細書全体を通じて、特に具体的に明記しない限り、または特に文脈上必要でない限り、単一ステップ、組成物、一群のステップまたは一群の組成物に対する参照は、1および複数(すなわち、1もしくは複数)のそれらのステップ、組成物、一群のステップまたは一群の組成物を包含すると解釈されるべきである。よって、本明細書中に使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段に明確に指示されない限り、複数の態様を含んでいる。例えば、「a」への言及は、1個ならびに2個以上を含んでおり;「an」への言及は、1個ならびに2個以上を含んでおり;「the」への言及は、1個ならびに2個以上を含んでいる。
開示の各実施例は、別段の具体的な記載のない限り、必要な変更を加えて、他のありとあらゆる実施形態に適用される。
【0040】
当業者は、本開示に、明確に記載されたもの以外の変形および修正の影響を受け入れる余地があることを理解するであろう。本開示は、かかる全ての変形および修正を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書において個々にまたは集合的に参照または示される全てのステップ、特徴、組成物、および化合物、ならびに該ステップまたは特徴のあらゆる組み合わせ、または任意の2つ以上を含む。
【0041】
本開示は、本明細書において説明される特定の実施形態による範囲に限定されるものではなく、それらの実施形態は、単に例示の目的のためであることが意図される。機能的に同等の製品、組成物、および方法は、本明細書中に説明されるように、明らかに本開示の範囲内に含まれる。
【0042】
本明細書中に記載した組成物および方法は、別段の指示がない限り、必要以上の実験なしに、分子生物学、微生物学、ウイルス学、組換えDNA技術、液中ペプチド合成、固相ペプチド合成、および免疫学のいずれかの従来の手法を使用して製造または実施される。例えば、そうした手順は、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Second Edition (1989), Vols I, II, and III全般; Benny K.C.Lo, Antibody Engineering: Methods and Protocols, (2004) Humana Press, Vol. 248; DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II (D. N. Glover, ed., 1985), IRL Press, Oxford, text; Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (M. J. Gait, ed, 1984) IRL Press, Oxford、全文および特にその中の論文Gait, ppl−22; Atkinson et al, pp35−81; Sproat et al, pp 83−115; and Wu et al, pp 135−151; 4. Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (B. D. Hames & S. J. Higgins, eds., 1985) IRL Press, Oxford、全文; Immobilized Cells and Enzymes: A Practical Approach (1986) IRL Press, Oxford、全文; Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan, eds., Academic Press, Inc.)、全編; J.F. Ramalho Ortigao, ”The Chemistry of Peptide Synthesis” In: Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website (Interactiva, Germany); Sakakibara, D., Teichman, J., Lien, E. Land Fenichel, R.L. (1976). Biochem. Biophys. Res. Commun. 73 336−342; Merrifield, R.B. (1963). J. Am. Chem. Soc. 85, 2149−2154; Barany, G. and Merrifield, R. B. (1979) in The Peptides (Gross, E. and Meienhofer, J. eds.), vol. 2, pp. 1−284, Academic Press, New York. 12. Wunsch, E., ed. (1974) Synthese von Peptiden in Houben−Weyls Metoden der Organischen Chemie (MQIer, E., ed.), vol. 15, 4th edn., Parts 1 and 2, Thieme, Stuttgart;Bodanszky, M. (1984) Principles of Peptide Synthesis, Springer−Verlag, Heidelberg;Bodanszky, M. & Bodanszky, A. (1984) The Practice of Peptide Synthesis, Springer Verlag, Heidelberg; Bodanszky, M. (1985) Int.J.Peptide Protein Res.25, 449−474; andbook of Experimental Immunology, Vols.I−IV (D.M.Weir and C. C.Blackwell, eds., 1986, Blackwell Scientific Publications);およびAnimal Cell Culture:Practical Approach, Third Edition (John R. W. Masters, ed., 2000), ISBN 0199637970、全文。
【0043】
本明細書を通じて、「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」「含んでいる(comprising)」等の変形という語は、明確に述べられた要素、完全体、またはステップ、あるいは要素群、完全体群、またはステップ群を含むが、しかし他の要素、完全体またはステップ、あるいは要素群、完全体群、またはステップ群の解消をするものではないと理解されるだろう。
【0044】
定義
本明細書中で使用される場合、「対応する」修飾されていない抗体という用語は、修飾された抗体と同じ配列の抗体であるが、本明細書中に記載したアミノ酸配列、特にFcとヒンジ領域に変化のない抗体を意味する。
「エピトープ」という用語は、それに対して抗体が生じ、そしてそれに抗体が結合する抗原分子の部分を指すことを意図する。「エピトープ」という用語は、本明細書中に使用される場合、(a)動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトまたはヒトの免疫機構の関連成分を発現するトランスジェニック動物の大部分に抗原性または免疫原性活性を有するペプチドの(単数もしくは複数の)部分を指す。エピトープは、タンパク質、タンパク質断片、ペプチド、炭水化物、脂質、および他の分子を含み得るが、本発明の目的のためには、最も一般的に短いオリゴペプチドである。「エピトープ」という用語は、「免疫原性エピトープ」、「抗原性エピトープ」、または「抗原エピトープ」を包含することを意図する。
【0045】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1のエピトープ認識部位を通じて標的に結合することができる分子を指す。免疫グロブリンおよび抗体という用語は、明細書中で互換的に使用され得る。免疫グロブリンまたは抗体分子は、4本の鎖抗体(例えば、2本の軽鎖と2本の重鎖)、遺伝子組換え型または修飾された抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDRグラフト抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、superhumanized(登録商標)抗体、半抗体、二重特異性抗体)を含んでいる。抗体はまた、概して、定常領域または定常断片もしくは結晶性断片(Fc)として配列され得る定常ドメインも含む。抗体は、1個または数個の密接に関連する抗原に特異的に結合することができる。概して、抗体は、その基本単位として4本の鎖からなる構造を含む。完全長抗体は、共有結合で連結された2本の重鎖(約50〜70kD)と2本の軽鎖(各約23kD)とを含む。軽鎖は、概して可変領域と定常ドメインとを含み、および哺乳動物ではκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかである。重鎖は、概して可変領域と、ヒンジ領域によって別の1つまたは複数の定常ドメインに連結された1つまたは2つの定常ドメインとを含む。哺乳動物の重鎖は以下の種類、すなわちα、δ、ε、γ、またはμのうちの一つである。各軽鎖はまた、重鎖の一方に共有結合で連結されている。例えば、2本の重鎖および重鎖と軽鎖とは、鎖間ジスルフィド結合および非共有結合性の相互作用により一体に保持される。鎖間ジスルフィド結合の数は、抗体の種類によって異なり得る。各鎖は、N末端可変領域(VHまたはVL、各々が約110アミノ酸長である)と、C末端における1つまたは複数の定常ドメインとを有する。軽鎖の定常ドメイン(CL、約110アミノ酸長)は重鎖の第1の定常ドメイン(CH、約330〜440アミノ酸長)と整列し、それにジスルフィド結合している。軽鎖可変領域は重鎖の可変領域と整列する。抗体重鎖は2つ以上のさらなるCHドメイン(CH2、CH3など)を含むことができ、定常ドメインCH1とCmとの間に特定され得るヒンジ領域を含むことができる。抗体は任意の種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2)またはサブクラスであり得る。
【0046】
「免疫グロブリン構築物」という用語は、本明細書中で使用される場合、霊長類またはヒトIgG4抗体からの少なくともCH2重鎖定常ドメインとヒンジ領域を含んでいる構築物を指す。好ましくは、その用語は、霊長類またはヒトIgG4抗体からの少なくとも軽鎖および重鎖定常ドメイン、ならびにヒンジ領域を含んでいる構築物を指すことを意図する。
【0047】
「定常領域」または「定常フラグメント」という用語は、抗原結合部位を含んでいる、可変領域と呼ばれる、免疫グロブリンまたは抗体のもう片方の部分に対してコアの保存されたアミノ酸配列を含んでいる免疫グロブリンまたは抗体分子の一部を指す。重鎖では、定常領域はCH1、CH2、およびCH3ドメインを含んでいる。
【0048】
「Fc領域」という用語は、本明細書中で使用される場合、IgG分子のパパイン分解によって得られる結晶可能フラグメントに関連する抗体または免疫グロブリン分子の一部を指す。Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結される半分のIgG分子の2本の重鎖のC末端の約半分を形成しているIgG重鎖のC末端領域から成る。KabatのEUインデックスに従って付番されるように、境界はわずかに変化し得るが(場合によっては、それはヒンジの一部を含む)、Fc領域は第231アミノ酸から第447アミノ酸に及ぶ。IgGのFc領域は、2つの定常ドメイン、CH2およびCH3を含んでいる。
ヒトIgGのFc領域のCH2ドメインは、通常、KabatのEUインデックスによると第231アミノ酸から第341アミノ酸に及ぶ。ヒトIgGのFc領域のCH3ドメインは、通常、KabatのEUインデックスによると第342〜447アミノ酸に及ぶ。Fc領域は、抗原結合活性を持っていないが、炭化水素部分と新生児型Fc受容体(FcRn)を含めたFc受容体に対する結合部位を含んでいる。
【0049】
「そのFcRn結合ドメイン」という用語は、本明細書中で使用される場合、FcRnに結合することができるFc領域の部分を指す。本明細書の文脈中では、それはまた、少なくともCH2ドメインを含んでいるFc領域配列のフラグメントも指す。
「FcRn受容体」という用語は、本明細書中で使用される場合、ヒトまたは霊長類の胎盤を通過して胎児への、および小腸を通過して初乳から新生児への母親のIgGsの移行にかかわるFc受容体(新生児期を示す「n」)を指す。FcRnはまた、IgG分子に結合し、そして血清中にそれらを再循環させることによって、一定の血清IgGレベルの維持にかかわっている。IgG分子へのFcRnの結合は、pH6.0にて至適結合を有する厳密なpH依存である。FcRnは通常、β
2ミクログロブリンと複合体を形成している。
【0050】
「ヒンジ領域」、本明細書中で使用される場合、抗体分子の2つのFabアームに可動性を与えるFcとFab領域の間の免疫グロブリン重鎖の高プロリン部分を指す。それは重鎖の第1と第2定常ドメインの間に位置している。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合にかかわるシステイン残基を含んでいる。それは一般に、KabatのEU付番システムによるとヒトIgG1のGlu216からPro230(または、Kabatの付番システムによるとPro243からGlu226)に及ぶと規定される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、同じ位置に重鎖間ジスルフィド(S−S)結合を形成する最初と最後のシステイン残基を配置することによってIgGI配列と整列できる(例えばWO2010/080538を参照のこと)。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合にかかわるシステイン残基を含んでいる。
【0051】
本明細書中で使用される場合「コアヒンジ領域配列」という用語は、IgG4内に存在しているアミノ酸配列CPSCP(配列番号1)を指すことを意図し、そしてKabatのEUインデックスによると第226〜230アミノ酸に及ぶ(下側のヒンジと呼ばれることも多い)。コアヒンジ領域は、ヒトIgG4では、配列ESKYGPPである、上側のヒンジ領域と区別される。
【0052】
「可変領域」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗原に特異的に結合できる本明細書中に規定される軽鎖および/または重鎖の部分を指し、相補性決定領域(CDR);すなわち、CDR1、CDR2、CDR3、およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む。例えば、可変領域は、3つのCDRと一緒に3または4つのFRを含んでいる(例えば、FR1、FR2、FR3、そして任意にFR4)。IgNARから得られたタンパク質の場合では、そのタンパク質はCDR2を欠いてもよい。VHは重鎖の可変領域を指す。VLは軽鎖の可変領域を指す。
【0053】
「Fab」という用語は、本明細書中で使用される場合、それぞれの重鎖と軽鎖の
ある定常ドメインとある可変ドメインから構成される抗体の領域(一価の抗原結合フラグメント)を指すことを意図するが、ここで、重鎖は、CH2およびCH3ドメインを欠くように短縮され(すなわち、VH、CH1、VL、およびCL)、かつ、ヒンジ領域の一部またはすべてを欠いていてもよい。それは、酵素パパインを用いた抗体全体の消化で生じる。Fabは、分離物のこの領域を指しても、または完全長抗体、免疫グロブリン構築物またはFab融合タンパク質と関連するこの領域を指してもよい。
【0054】
「Fab’」という用語は、本明細書中で使用される場合、完全な軽鎖およびVHと一つの定常ドメインを含んでいる重鎖の一部から成る分子を得るために、ペプシンで抗体全体を処理し、続いて還元することによって得られる。2つのFab′フラグメントが、このように処置された抗体ごとに得られる。
【0055】
「scFv」とは、抗体のVHおよびVLドメインを含んでいる抗体フラグメントを意味し、これらのドメインは単一のペプチド鎖で存在している。例えば、米国特許第4,946,778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号、および同第5,856,456号を参照のこと。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合性のための所望の構造を形成するのを可能にするVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含んでいる。scFvの総説に関しては、Pluckthun (1994) The Pharmacology of Monoclonal Antibodies vol 113 ed. Rosenburg and Moore (Springer−Verlag, New York) pp 269−315を参照のこと。FvフラグメントのVHとVLドメイン複合体はまた、ジスルフィド結合によって安定させられてもよい(米国特許第5,747,654号)。
【0056】
「存在しないもしくは最小限のエフェクター機能」とは、例えば、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)の補体結合または刺激などのIgG1型抗体に通常起因する特定の活性が低減または除去されていることを意味する。
【0057】
「単離された」という用語は、本明細書中で使用される場合、その自然環境から取り出された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を指す。これにより、遺伝子組換え宿主が産生した抗体、免疫グロブリン構築物または融合タンパク質が、本発明の目的のために単離されると考えられる。好ましくは、単離された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、実質的に精製される。
【0058】
「実質的に精製される」とは、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質が、それが取り出された細胞または組織起源からの細胞物質またはその他の混入タンパク質を実質的に含まないか、または化学的に合成された際に化学物質前駆体または他の化学物質を実質的に含まないことを意味する。その言語には、それがそこから単離されたかまたは遺伝子組換えによって産生される細胞の細胞成分から分離された抗体、免疫グロブリン構築物または融合タンパク質の調製が含まれる。これにより、細胞物質を実質的に含まない抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、(乾燥重量により)約30%、20%、10%または5%未満の夾雑タンパク質および培地しか含まない調製物である。
「免疫グロブリンIgG4融合タンパク質」という用語は、修飾されたヒトIgG4ヒンジ領域および修飾されたヒトIgG4Fc領域および/またはそのFcRn結合ドメインに連結または結合された生理活性分子を指す。融合タンパク質については、後で詳細に議論する。
【0059】
「生体内半減期」という用語、本明細書中で使用される場合、所定の動物の血液循環内での、Fc領域および/またはそのFcRn結合ドメインを含んでいる特定の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の血中半減期を指し、そして動物に投与した量の半分が血液循環から除去されるまでに必要な時間によって表される。本発明による所定の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質のクリアランス曲線が時間の関数として作成された場合、その曲線は、通常、血管内外の空間の間での注射されたIgG分子の平衡を表す短いα相と、分子サイズによってある程度決定される、血管内空間のIgG分子の異化を表すより長いベータ相の二相性である。用語「生体内半減期」は、事実上、ベータ型の修飾されたもしくは修飾されていないIgG4免疫グロブリン、または融合タンパク質の半減期に相当する。
【0060】
「生体内半減期を延長する」という用語は、本明細書中で使用される場合、本発明に従って修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質が、血清または血漿でより高い持続性を有すること、および/または同じ置換を含まない同じ抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質に対して、計測された最大血清または血漿中濃度が半分まで減るのにより長い期間がかかることを意味する。
【0061】
「遺伝子組換え」という用語は、人工的な遺伝的組換えの産物を意味すると理解されるべきである。従って、抗体の抗原結合ドメインを含んでいる組換えタンパク質との関連において、この用語は、対象の体内に自然に生じた抗体、すなわち、B細胞成熟中に起こる天然の組換えの産物を包含しない。しかしながら、そうした抗体が単離されたなら、それは抗体可変領域を含んでいる分離されたタンパク質と見なされるべきである。同様に、タンパク質をコード化する核酸が単離されて、遺伝子組換え手段を使用して発現されれば、得られたタンパク質は、抗体の抗原結合ドメインを含んでいる組換えタンパク質である。また、遺伝子組換えという用語はまた、例えば、それが発現される細胞、組織または対象の中に存在するとき、人工的な遺伝子組換え手段で発現された抗体、免疫グロブリンまたは融合タンパク質を包含する。
【0062】
「特異的に結合」という用語は、抗原(例えば、エピトープまたは免疫複合体)に特異的または優先的に結合し、かつ、抗原、例えば、他の構造的もしくは機能的に関連したタンパク質、または配列相同性を有するタンパク質などに特異的に結合しない(すなわち、交差反応しない)分子(例えば、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質)を指す。抗原に特異的に結合する分子は、例えば、免疫学的アッセイ、BIAcore、または当該技術分野で知られている他の検定方法によって測定されるように、低い親和性でしか他のペプチドまたはポリペプチドに結合しない。好ましくは、抗原に特異的に結合する分子は、他のタンパク質と交差反応しない。抗原に特異的に結合する分子は、例えば、免疫学的アッセイ、BIAcore、または当業者に知られている他の技術によって特定できる。制限されることのない例として、抗体は、それが別の抗原に対する抗体のK
Dより低い解離定数(K
D)である抗原に結合するのであれば、ある抗原に優先的に結合すると考えられる。別の制限されることのない例では、抗体は、それが第2の抗原に対する抗体のK
Dより少なくとも1桁低い親和性で第1の抗原に結合するのであれば、第1の抗原に優先的に結合すると考えられる。別の限定されない実施形態では、抗体は、それが第2の抗原に対する抗体のK
Dより少なくとも2桁低い親和性で第1の抗原に結合するのであれば、第1の抗原に優先的に結合すると考えられる。
【0063】
「処置(treatingまたはtreat)」という用語、本明細書中で使用される場合、指定された疾患または状態の少なくとも1の症状を軽減するかまたは解消するのに十分な、本発明による抗体、免疫グロブリン構築物または融合タンパク質の「治療上有効な量」を投与することを指す。
【0064】
「予防(preventまたはpreventing)」という用語は、本明細書中で使用される場合、指定された疾患または状態の発生を阻止するかまたは妨げるのに十分な、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の治療上有効な量を投与することを指す。
【0065】
本明細書中に使用される場合、「治療上有効な量」という用語は、その疾患を臨床的に診断するもしくは臨床的に特徴づけるものとして観察もしくは認められるよりも低いレベルに臨床疾患の1もしくは複数の症状を軽減または阻害するのに十分な数量の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を意味すると解釈される。当業者は、例えば、投与される(単数もしくは複数の)具体的な抗体、(単数もしくは複数の)免疫グロブリン構築物、および/または(単数もしくは複数の)免疫グロブリンIgG4融合タンパク質、および/または特定の対象、および/または疾患のタイプ、重症度またはレベルに依存してそうした量が変化することが分かっている。従って、この用語は、具体的な量、例えば、重さまたは量に本発明を制限すると解釈されるべきではなく、それどころか、本発明は、対象の記載された結果を達成するのに十分な量の(単数もしくは複数の)抗体、(単数もしくは複数の)免疫グロブリン構築物、および/または(単数もしくは複数の)免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を包含する。
【0066】
「医薬的に許容され得る」という用語は、本明細書中で使用される場合、ヒトでの使用のために連邦もしくは州政府の監督官庁によって承認された、あるいは米国薬局方またはその他の一般に認識された薬局方に列挙されたことを意味する。
本明細書中に使用される場合、「対象」という用語は、ヒトもしくはヒト以外の霊長類、またはヒトFcRnを有する霊長類以外の哺乳動物を意味する。
【0067】
アミノ酸置換
アミノ酸を置換する方法は当該技術分野で知られている。例えば、アミノ酸置換は、部位特異的変異誘発によって行われることができる(例えば、Zoller and Smith Nucl. Acids Res. 10:6487 (1982))。変異誘発は、修飾される抗体の定常ドメインの配列中の1以上の修飾を有するオリゴヌクレオチドの合成によって行うことができる。部位特異的変異誘発は、所望の変異のDNA配列と、横断する欠失結合部の両側で安定な二本鎖を形成するのに十分なサイズおよび配列複雑度のプライマー配列を与えるのに十分な数の隣接ヌクレオチドとをコードする特異的オリゴヌクレオチド配列の使用により、変異体の産生を可能にする。典型的には、改変される配列の結合部の両側に約10〜約25以上の残基を有する約17〜約75ヌクレオチド以上の長さのプライマーが好ましい。変異体のライブラリーを作製するために、1以上の位置に種々の異なる変異を導入する多数のそのようなプライマーを使用することができる。
【0068】
部位特異的変異誘発の技術は、当技術分野で良く知られている(例えば、Kunkel et al., Methods Enzymol., 154:367−82, 1987を参照のこと)。一般には、部位特異的変異誘発は、まず、所望のペプチドをコードするDNA配列を配列中に含む一本鎖ベクターを得るかまたは該配列を含む二本鎖ベクターの2つの鎖を融解解離させることにより行う。所望の変異配列を保持するオリゴヌクレオチドプライマーを、一般には合成的に製造する。ついでこのプライマーを一本鎖ベクターでアニーリングし、T7DNAポリメラーゼのようなDNA重合酵素に付して、該変異保持鎖の合成を完成させる。このようにしてヘテロ二本鎖が形成され、ここで、一方の鎖は元の非変異配列をコードしており、もう一方の鎖は所望の変異を保持する。ついでこのヘテロ二本鎖ベクターを使用して大腸菌(E.coli)細胞のような適当な細胞を形質転換またはトランスフェクトし、該変異配列配置を保持する組換えベクターを含むクローンを選択する。理解されるとおり、該技術は、典型的には、一本鎖および二本鎖の両方の形態で存在するファージベクターを用いる。部位特異的変異誘発に有用な典型的なベクターは、M13ファージのようなベクターを包含する。これらのベクターは容易に商業的に入手可能であり、それらの使用は概ね当業者に良く知られている。また、関心のある遺伝子をプラスミドからファージへ導入する工程を省く部位特異的変異誘発においては、二本鎖プラスミドが常套的に使用される。部位特異的変異誘発はまた、Kim Jin−Kyoo et al., (1994) Eur.J.Immunol.24:542−548に記載のとおり、マウスIgG1ヒンジ−Fcフラグメントの血漿クリアランスに影響を及ぼすアミノ酸残基を特定するのにも使用された。
【0069】
あるいは、Taq DNAポリメラーゼのような商業的に入手可能な熱安定酵素と共にPCRを用いて、変異誘発性オリゴヌクレオチドプライマーを増幅DNA断片中に組込むことが可能であり、ついでそれを適当なクローニングまたは発現ベクター中にクローニングすることができる。例えば、PCR媒介変異誘発法については、Tomic et al., Nucleic Acids Res., 18(6): 1656, 1987, and Upender et al., Biotechniques, 18(1):29−30, 32, 1995を参照のこと。また、熱安定ポリメラーゼに加えて熱安定リガーゼを使用するPCRを用いてリン酸化変異誘発性オリゴヌクレオチドを増幅DNA断片中に組込み、ついでそれを適当なクローニングまたは発現ベクター中にクローニングすることができる(例えば、Michael, Biotechniques, 16(3):410−2, 1994を参照のこと)。
【0070】
抗体のFcドメインまたはそのFcRn結合ドメインの配列バリアントを製造するための当業者に公知の他の方法を用いることが可能である。例えば、抗体の定常ドメインまたはそのフラグメントのアミノ酸配列をコードする組換えベクターをヒドロキシルアミンのような変異誘発剤で処理して、配列バリアントを得ることができる。
FcRnに対する親和性増加と延長された生体内半減期をもたらす変異体は、例えば、後に記載するものなどの、常套的な分析を使用することでスクリーニングできる。
代表的なアミノ酸置換は、EU Kabat付番システムによるT250Qおよび/またはM428LもしくはT252A、T254SおよびT266FまたはM252Y、S254TおよびT256EまたはH433KおよびN434Fを含んでいる。追加または代替のアミノ酸置換は、例えば、US20070135620またはUS7083784に記載されている。
【0071】
本発明の抗体
本発明による抗体または免疫グロブリンは、抗原に結合する(特異的な抗原−抗体結合をアッセイするための、当該技術分野で知られている免疫学的アッセイによって決定される)いずれかの免疫グロブリン分子または抗体を含んでいて、そしてFc領域またはFcRn結合ドメインを含んでいる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナルまたは単一特異性、二重特異性(抗体の多様型との関連において)、ヒト、ヒト化、キメラ、superhumanised(登録商標)、霊長類化、または脱免疫化されたものであってよい。別の例において、本発明の抗体は、単一特異性(または二重特異性、三重特異性、あるいは多量体で存在しているのであれば、より多くの多重特異性)であってもよい。
【0072】
特に、抗体は単一特異性の四量体である。
抗体(本明細書中に記載した他の免疫グロブリン構築物または融合タンパク質)は、どんな動物起源由来であってもよい。好ましくは、抗体は、ヒトまたはヒト化されたものである。本明細書中で使用される場合、「ヒト」抗体という用語は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を含んでいる抗体を含み、そしてヒト免疫グロブリンライブラリまたは、例えば、US5,939,598に記載されているように、内在性免疫グロブリンを発現しない、1もしくは複数のヒト免疫グロブリンをトランスジェニックした動物から単離された抗体を含む。
【0073】
本発明の(単数もしくは複数の)抗体は、安定化IgG4ヒンジ領域を含んでいる。「安定化IgG4ヒンジ領域」という用語は、Fabアーム交換、Fabアーム交換を被る傾向、半抗体の形成または半抗体を形成する傾向を低減するように修飾されたIgG4ヒンジ領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」は、ヒトIgG4のタンパク質修飾の一種を指し、そこでは、IgG4重鎖と結合している軽鎖(半分子)が別のIgG4分子からの重鎖−軽鎖対と交換される。これにより、IgG4分子は、2つの異なった抗原を認識する(二重特異性分子をもたらす)2つの異なったFabアームを取得できる。Fabアーム交換は、生体内では自然に起こっているので、精製した血球細胞または還元グルタチオンなどの還元剤によって試験管内で誘発できる。IgG4抗体がそれぞれ1本の重鎖と1本の軽鎖を含んでいる2個の分子を形成するように解離するとき、「半抗体」を形成する。
【0074】
安定したIgG4ヒンジ領域は、KabatのEU付番システムによる228位にセリンからプロリンへの置換を含んでいて(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 2001 and Edelman et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78−85, 1969)、それが、Kabatの付番システムによる241位でのセリンからプロリンへの置換に相当する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 1987 and/or 1991)。
【0075】
誤解を避けるために、これは、IgG4ヒンジ領域配列CPSCP(配列番号1)の中心のセリンを指す。セリンのプロリンへの置換を受けて、IgG4ヒンジ領域は配列CPPCPを含む。その際、当業者は、「ヒンジ領域」が抗体の2つのFabアームに可動性を与えるFcとFab領域を連結する抗体重鎖定常領域の高プロリン部分であることを意識する。
【0076】
一例には、本発明の抗体は多様型であってもよい。例えば、抗体は、単量体免疫グロブリン分子の二量体、三量体、または高次な多量体の抗体形態を取ってもよい。全免疫グロブリン分子またはF(ab’)
2フラグメントの二量体は4価であるが、FabフラグメントまたはscFv分子の二量体は2価である。抗体多量体内の個々のモノマーは、同一であっても、異なっていてもよい、すなわち、それらは異種または同種抗体多量体であることができる。例えば、多量体内の個々の抗体には、同じであるか、または異なった結合特異性があってもよい。
【0077】
抗体の多量体化は、抗体の天然の凝集によるか、または当業者に知られている化学的もしくは遺伝子組換え連結技術によって達成され得る。例えば、精製した抗体調製物の数パーセンは、抗体ホモダイマーを含んでいるタンパク質凝集体を自然に形成し、そしてその他のものは高次な抗体多量体を形成する。あるいは、抗体ホモダイマーは、当該技術分野で知られている化学結合技術によっても形成され得る。制限されることのない例として、これだけに限定されるものではないが、SMCC[サクシニミジル 4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−l−カルボキシラート]およびSATA[N−スクシンイミジル S−アセチルチオ−アセタート](例えば、Pierce Biotechnology, Inc. (Rockford, 111.)から入手可能)を含めたヘテロ二官能性架橋剤を、抗体多量体を形成するのに使用できる。抗体ホモダイマーの形成のための代表的なプロトコールは、Ghetie MA et al. Antibody homodimers can be converted to F(ab’)2 homodimers through digestion with pepsinの中に示されている。抗体ホモダイマーを形成する別の方法は、Zhao Y & Kohler H J. Immunother (1997) 25(5):396−404に記載の自己消化性(autophilic)Tl5ペプチドの使用による。
【0078】
あるいは、抗体は、自然に、または組換えDNA技術によって多量体を形成できる。ScFv二量体はまた、当該技術分野で知られている遺伝子組換え技術によっても形成できる;scFv二量体の構築例は、Goel A et al. Cancer Research 60(24):6964−6971に示されている。抗体多量体は、当該技術分野で知られているいずれかの適切な方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーによって精製され得る。
【0079】
抗体誘導体
本発明はまた、本明細書中に記載の抗体分子(例えば、VHドメインおよび/またはVLドメイン)のバリアント(誘導体を含む)を含むかまたはこれらから成る抗体を提供し、これらの抗体は、抗原ペプチド(例えば、IL−5抗原またはCD33抗原)に特異的に結合する。例えば、アミノ酸置換を生じる部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発を含めた当業者に知られている標準的な技術が、本発明の分子をコード化するヌクレオチド配列に変異群を導入するのに使用できる。本発明による抗体誘導体はまた、免疫グロブリンVLおよび/またはVH領域に保存的なアミノ酸置換を包含する。「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。同様の電荷を有するアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において定義されてきた。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性残基(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位−分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が、挙げられる。あるいは、変異は、コード配列の全てまたは一部に沿って、例えば、飽和変異誘発によってランダムに導入され得、そして、生じた変異は、活性を保持する変異を同定するために、生物学的活性(例えば、本発明の抗原ペプチドを結合する能力)について、スクリーニングされ得る。
【0080】
「保存的置換」という用語は、表1に規定されるアミノ酸置換を意味するとも解釈される。
【表1】
【0081】
例えば、変異の導入は、抗体分子のフレームワーク領域のみまたはCDR領域のみに可能である。変異の導入は、サイレントまたは中立のミスセンス変異であり得る、すなわち、抗原を結合する抗体の能力に影響を有さないかまたはほとんど影響を有さない。これらの型の変異は、コドンの使用を最適化し、またはハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用であり得る。
【0082】
あるいは、非中立のミスセンス変異は、抗原を結合する抗体の能力を変更し得る。当業者は、所望の特性を有する、例えば、抗原結合活性、または結合活性(例えば、抗原結合活性の改善、または抗体の特異性の変化)などにおける変更のない、変異分子を設計しそして試験し得る。変異誘発に続き、コードされるタンパク質は、慣用的に発現され、そしてコードされるタンパク質の機能的および/または生物学的活性(例えば、本発明の抗原ペプチドを特異的に結合する能力)は、本明細書中に記載された技術を使用することによって、または当該分野で公知の慣用的な調節技術によって決定され得る。
【0083】
本発明の抗体は、共有結合が抗体の抗原結合を妨げないように、抗体に対する任意の分子型の共有結合(covalent attachment)によって別の方法で改変された誘導体を含む。例えば、抗体誘導体としては、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化(pegylation)、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基(blocking group)による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞性リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変された抗体が挙げられる。多数の任意の化学的改変が、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などを含めた公知の技術によって実行され得る。さらに、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0084】
加えて、本発明の抗体は、化学的に合成され得る。例えば、タンパク質の一部に対応するペプチドは、ペプチド合成機の使用によって合成され得る。さらに、所望の場合、非古典的アミノ酸または化学アミノ酸アナログが、複合体のポリペプチドの1つ、いずれか、両方、いくつかまたはすべてに導入され得る。
非古典的アミノ酸としては、これだけに限定されるものではないが、通常のアミノ酸のD型異性体、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、β−メチルアミノ酸、Cγ−メチルアミノ酸、Nγ−メチルアミノ酸、および一般的なアミノ酸アナログなどが挙げられる。
【0085】
本発明はまた、抗体に直接的または間接的に結合される異なる部分、例えば、治療薬に結合した本開示の抗体または免疫グロブリン短縮体を含む免疫複合体も提供する。他の部分の例として、これだけに限定されるものではないが、細胞毒素、放射性同位体(例えば、ヨウ素−131、イットリウム−90、もしくはインジウム−111)、免疫調節薬、抗血管形成剤、抗新血管形成および/または他の血管新生剤、毒素、抗増殖剤、アポトーシス促進剤、化学療法剤、ならびに治療用核酸が挙げられる。
【0086】
細胞毒素は、細胞に対して有害な(例えば、死滅させる)任意の作用物質を含む。当技術分野で既知のこれらの薬物のクラスの記述およびそれらの作用機序については、Goodman et al., Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Macmillan Publishing Co., 1990を参照のこと。抗体免疫毒素の調製に関するさらなる技術は、例えば、Vitetta (1993)およびUS5,194,594に提供される。例示的な毒素には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、活性フラグメント毒素A鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトジリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、ならびにトリコテセンが含まれる。例えば、WO93/21232を参照のこと。
【0087】
本開示の免疫複合体を形成するのに好適な治療薬剤には、タクソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトキサントロン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、アンチメタボライト(メトトレキサート、6−メトトレキサート、6−チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、ダカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン等)、アルキル化剤(メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチン等、およびカルボプラチン等の他の白金誘導体)、抗生物質(ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)等)が含まれる。
【0088】
多種多様の放射性核種が放射接合抗体の産生で使用可能である。例として、
212Bi、
131I、
90Y、および
186Reが挙げられるが、それらに限定されない。
抗体と治療薬の複合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、これだけに限定されるものではないが、4−(4’アセチルフェノキシ)ブタン酸(AcBut)、3−アセチルフェニル酢酸(AcPac)、4−メルカプト−4−メチル−ペンタン酸(Amide)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性なエステル(例えばスベリン酸ジサクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス−(p−アジドベンゾイル)−ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えばトリエン−2,6−ジイソシアナート)、およびビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)、ならびその誘導体を用いて作製される。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science 238: 1098 (1987)に記載されるように調製できる。炭素−14−標識1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレン トリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲートのための代表的なキレート剤である(WO94/11026)。
【0089】
本発明の免疫グロブリン構築物
本明細書中で使用する場合、「免疫グロブリン構築物」という用語は、本発明に従って、抗原結合抗体フラグメントが修飾されたヒトIgG4ヒンジ領域と修飾されたヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインに連結された構築物を指すことを意図している。
特別な興味は、Fc領域、Fc融合、および重鎖の定常領域を含んでいる免疫グロブリン構築物(CH1−ヒンジ−CH2−CH3)にある。
【0090】
具体的な抗体フラグメントとしては、これだけに限定されるものではないが、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインから成るFabフラグメント;(ii)VHおよびCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(iv)単一可変領域から成るdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544−546);(v)単離されたCDR領域;(vi)F(ab’)
2フラグメント、2つの連結Fabフラグメントを含んでいる二価のフラグメント;(vii)一本鎖Fv分子(scFv)、VHドメインとVLドメインは、2つのドメインが抗原結合部位を形成させるペプチドリンカーによって連結される(Bird et al., (1988) Science 242:423−426, Huston et al., (1989) Proc Natl Acad Sci USA 85:5879−5883);(viii)二重特異性一本鎖Fv(WO03/11161)、ならびに(ix)二重特異性抗体と三重特異性抗体または四重特異性抗体(Tomlinson et al., (2000) Methods Enzymol 326:461−479;WO94/13804;Hollinger et al., (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90:6444−6448)が挙げられる。分子は、VHとVLドメインを連結するジスルフィド架橋を取り込むことによって安定化できる(Reiter et al., (1996) nature Biotech 14: 1239−1245)。
【0091】
(ヒンジ領域を含まない)先に記載したフラグメントが、ヒンジがリンカーの役割を果たすヒンジ−Fc領域に接合されてもよいことは理解される。
別の例において、抗体フラグメントが、(Hu, Shi−zhen et al., (1996) Cancer Research 56:3055−3061に記載の)scFV−CH3とヒンジ領域配列から成る柔軟性ミニボディであってもよい。
抗体の調製
【0092】
抗体は、ハイブリドーマ、組換え体およびファージディスプレイ技術またはそれらの組合せの使用を含めた当該技術分野において既知の多様な技術を用いて調製可能である。例えば、モノクローナル抗体は、当該技術分野において既知であり、例えばHarlow et al., Antibodies: A laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press 2nd Edn 1988)で教示されているものを含めたハイブリドーマ技術を用いて産生可能である。
【0093】
本明細書で用いられる「モノクローナル抗体」という語は、ハイブリドーマ技術を通して産生された抗体に制限されない。「モノクローナル抗体」という語はあらゆる真核生物、原核生物またはファージクローンを含めた、単一のクローンから誘導される抗体を意味し、その産生方法を意味しない。
【0094】
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体のための産生およびスクリーニング方法は、日常的であり、当該技術分野において周知である。例えば、マウスは、問題の抗原またはかかる抗原を発現する細胞で免疫化され得る。ひとたび免疫応答が検出された、例えばマウス血清内でその抗原に特異的な抗体が検出されたならば、マウスの脾臓は採取され脾細胞は単離される。次に脾細胞は周知の技術により、任意の適切な骨髄腫細胞に融合される。ハイブリドーマが選択され、制限希釈によりクローニングされる。ハイブリドーマクローンはその後、抗原を結合する能力をもつ抗体を分泌する細胞のための当該技術分野において既知の方法によって検定される。陽性ハイブリドーマクローンをマウスに腹腔内接種することによって、一般に高レベルの抗体を含有する腹水を、生成することができる。
【0095】
特異的エピトープを認識する抗体フラグメントも同様に本発明で有用であり得、周知の技術によって生成可能である。例えば、(Fabフラグメントを産生するための)パパインまたは(F(ab′)
2フラグメントを産生するための)ペプシンといった酵素を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解分割により、FabおよびF(ab′)
2フラグメントを産生することができる。F(ab′)
2フラグメントは、完全軽鎖および重鎖の可変領域、CH1領域およびヒンジ領域を含有する。
【0096】
さまざまなファージディスプレイ法を用いて、抗体を生成することもできる。ファージディスプレイ法において、官能性抗体ドメインは、それをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上で表示される。特定の実施形態においては、かかるファージは、リパートリまたは組合せ抗体ライブラリ(例えばヒトまたはマウス)から発現されたFabおよびFvまたはジスルフィド結合で安定化されたFvといった抗原結合ドメインを表示するために利用できる。問題の抗原を結合させる抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば、標識された抗原または固体表面またはビーズに結合または捕捉された抗原を用いて、抗原で選択または同定可能である。これらの方法で使用されるファージはfdおよびM13を含め、標準的に線状ファージである。抗原結合ドメインは、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに対する組換えにより融合されたタンパク質として発現される。あるいは、本発明の免疫グロブリンの修飾されたFcRn結合部分はまた、ファージディスプレイ系でも発現される。本発明の免疫グロブリンまたはそのフラグメントを作製するのに使用されるファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al., J. Immunol. Methods, 182:41−50, 1995; Ames et al., J. Immunol. Methods, 184: 177−186, 1995; Kettleborough et al., Eur. J. Immunol., 24:952−958, 1994; Persic et al., Gene, 187:9−18, 1997; Burton et al., Advances in Immunology, 57: 191−280, 1994;PCT出願第PCT/GB91/01134号;PCT公開WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;米国特許第5,698,426号;同第5,223,409号;同第5,403,484号;同第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,750,753号;同第5,821,047号;同第5,571,698号;同第5,42
7,908号;同第5,516,637号;同第5,780,225号;同第5,658,727号;同第5,733,743号および同第5,969,108号に開示されたものが挙げられる。
【0097】
上述の参考文献に記述されているように、ファージ選択の後、ファージからの抗体コーディング領域は単離され、ヒト抗体を含む全抗体または任意のその他の所望のフラグメントを生成するために使用され、例えば以下で詳述されている通り哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含むあらゆる所望の宿主の中で発現される。例えば、Fab、Fab′、およびF(ab′)2フラグメントを組換えにより産生するための技術は、PCT公報WO92/22324;Mullinax et al., BioTechniques, 12(6):864−869, 1992; and Sawai et al., AJRI, 34:26−34, 1995;およびBetter et al, Science, 240:1041−1043, 1988の中で開示されているもののような当該技術分野において既知の方法を用いて利用することもできる。一本鎖Fvsおよび抗体を産生するために使用可能な技術の例としては、米国特許第4,964,778号および同第5,258,498号;Huston et al., Methods in Enzymology, 203:46−88, 1991; Shu et al., PNAS, 90:7995−7999, 1993;およびSkerra et al., Science, 240:1038−1040, 1988の中で記述されているものが含まれる。
【0098】
抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の遺伝子組換えによる作製
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、遺伝子組換えにより作り出すことができる。例えば、本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列が決定される。ハイブリドーマ細胞は、このDNAの好ましい供給源として用いられる。組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成するため、そのDNAは一旦単離後は発現ベクター中に配置してよく、次にその発現ベクターは、E.コリ細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別の状況では抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞に導入される。抗体をコードするDNAの細菌による組換え発現の総説については、Skerra et al, Curr. Opinion in Immunol., 5:256−262 (1993)およびPluckthun, Immunol. Revs., 730:151−188 (1992)が挙げられる。これらの目的を達成するための分子クローン技術が、当該技術分野で知られている。さまざまなクローニングおよび試験管内増幅法が、遺伝子組換え核酸の構築に好適である。多くのクローニング試行を経た当業者を導くのに十分な技術と教示の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, Calif. (Berger); Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 13, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y., (Sambrook);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1994 付録) (Ausubel)に見られる。組換え免疫グロブリンの作製方法もまた、当技術分野で知られている。Cabilly, U.S. Pat. No. 4,816,567;およびQueen et al. (1989) Proc. Natl Acad. Sci. USA 86: 10029−10033を参照のこと。
【0099】
組換え産生のため、抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコードする核酸が、好ましくは単離され、更なるクローニング(DNAの増幅)または発現を行うために複製ベクターへ挿入される。抗体または融合タンパク質をコードするDNAを直ぐに単離するか、または通常の方法(例えば当該抗体の重鎖および軽鎖をコードしている遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブにより)を使用して合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクターの構成には一般的に、以下のものの1もしくは複数を含むがこれには限定されない:シグナル配列、(例えば、本明細書中に提供された情報に由来する)本発明の抗体フラグメントをコードする配列もしくはその断片、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列。
【0100】
(i)シグナル配列要素:本発明の抗体は、組換え的に直接に産生するのみならず、好ましくはシグナル配列または他のポリペプチドであって成熟した蛋白質またはポリペプチドのN末端に特異的開裂部位を有する非相同性ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして産生してもよい。選択される非相同的シグナル配列は宿主細胞により認識されて処理(即ち、シグナルペプチダーゼにより)されるものである。未変性の抗体シグナル配列について認識も処理も行わない原核性の宿主細胞の場合、このシグナル配列は例えば以下の群よりなる原核細胞のシグナル配列から選択される:アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダー。酵母の分泌の場合、未変性のシグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロマイセス(Saccharomyces)およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)のα因子リーダーを含む)、酸ホスファターゼリーダー、C.アルビカンス(albicans)グルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載のシグナルにより置換されていてもよい。哺乳動物細胞の発現においては、哺乳類シグナル配列はウイルス性分泌リーダー、例えば単純ヘルペスのgDシグナルと同様に入手可能である。そのような前駆体領域のDNAは、抗体をコードするDNAにリーディングフレームで連結される。
【0101】
(ii)プロモーター要素:発現用およびクローニング用ベクターは通常、宿主生物により認識され、抗体核酸に機能的に連結されるプロモーターを含んでいる。原核性宿主で使用するのに適するプロモーターには、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびtacプロモーター等のようなハイブリッドプロモーターが含まれる。しかしながら、他の既知の細菌性プロモーターも適している。細菌系で使用されるプロモーターはまた、抗体をコードするDNAに機能的に連結されたシャイン−ダルガーノ(S.D.)配列を含んでいる。
真核細胞についてもプロモーターが知られている。実質的に全ての真核遺伝子は、転写か開始される部位の上流、約25〜30塩基に位置するATリッチな領域を有している。多くの遺伝子の転写開始点の上流70〜80塩基に見られる別の配列は、CNCAAT領域であり、ここでNはいかなるヌクレオチドをも意味する。多くの真核遺伝子の3’末端には、ボリAテイルをコード配列の3 ’末端に付加するシグナルとなりえるAATAAA配列がある。これらの配列の全ては、真核発現ベクター中に適切に挿入されている。酵母宿主で用いるのに適切な促進性配列の例には、3−ホスホグリセレートキナーゼ、または例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ビルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の解糖系酵素用のプロモーターが含まれる。他の酵母プロモーターで、増殖条件により転写が制御されるという付加的な利点を有する誘導性プロモーターであるものは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、並びにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素用のプロモーター領域である。酵母中での発現に使用する適切なベクターおよびプロモーターは、更にはEP73,657中に記載されている。酵母エンハンサーもまた、酵母プロモーターと有利に使用される。
【0102】
哺乳動物宿主細胞中におけるベクターからの抗体の転写は、例えばポリオーマウイルス、伝染性上皮腫ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2型)、CMV、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスなど、そして最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得たプロモーターや、非相同性の哺乳動物性プロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、更には熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御されているが、但しそのようなプロモーターは宿主細胞系と適合するものであるという条件がつく。
【0103】
(iii)エンハンサーエレメント要素:本発明の抗体をコードするDNAについての、高等真核生物による転写はしばしば、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することで増大する。哺乳類の既知の遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン。α−フェトプロテイン、およびインスリン)より、多くのエンハンサー配列が知られている。しかしながら典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する例としては、複製起点の後ろ側(100−270bp)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターのエンハンサー、複製起点の後ろ側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる真核性プロモーターを活性化する宜進生配列エレメントについての、Yaniv (1982) Nature 297: 17−18も参照のこと。エンハンサーは、ベクター中の抗体をコードする配列の5’または3’側に接合させても良いが、好ましくはプロモーターより5’側に位置させる。
【0104】
(iv)転写終止要素:真核宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞性生物由来の有核細胞)中で使用される発現ベクターにはまた、転写の終止およびmRNAの安定化に必要な配列が含まれるであろう。このような配列は通常は、真核性もしくはウイルス性のDNA、またはcDNAの非翻訳領域の5’、ときには3’ より得ることができる。これらの領域には、抗体をコードするmRNAの非翻訳領域におけるポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチド配列が含まれる。有益な転写終止要素の一つは、ウシ成長ホルモンポリアデニレーション領域である。WO94/11026およびその中で開示されている発現ベクターを参照のこと。
【0105】
(v)宿主細胞の選択および形質転換:本願においては、ベクター中のDNAを発現、またはクローニングするベクターに適する宿主には、上記したような、原核細胞、酵母、または高等な真核細胞がある。この目的に適した原核細胞には、グラム陰性またはグラム陽性の生物などのような真正細菌、例えばエシェリシア(Escherichia)(例:E.コリ)、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、サルモネラ(Salmonella)(例:サルモネラ.ティフィムリウム(Salmonella typhimurium))、セラチア(S erratia)(例:セラチア マルセスカンス(Serratia marcescans))、および赤痢菌(Shigella)のようなエンテロバクテリア科と同様に、桿菌(Bacilli)(例:B.サブチリス(subtilis)、B.リヒェニフォルミス(licheniformis )、シュードモナス(Pseudomonas)(例:P.アエルギノサ(aeruginosa))およびストレプトミセス(Streptom yces)が含まれる。他の株、例えば、E.コリB、E.コリX1776(ATCC31,537)、およびE.コリW3110(ATCC27,325)も適しているが、大腸菌クローニング宿主のうちの好ましいものの一つは、E.コリ294(ATCC31,446)である。これらは限定するものではなく、例示するものである。
【0106】
原核細胞に加えて、糸状真菌、または酵母のような真核性の微生物も、抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現用の宿主に適する。サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyce cerevisiaes)、またはベーカーズ酵母として知られるものは、低級な真核性宿主微生物の中では最もよく使用される。しかしながら、数多くの他の属、種、および株が入手可能でありまた本願でも有益であり、例えばシゾサッカロミセス ポンベ(Schizosaccharomyces pom be);クルイベロミセス(Kluyveromyces)宿主(例:K.ラクチス(lactis)、K.フラギリス(fragilis)(ATCC12,424)、K.ブルガリクス(bulgaricus)(ATCC16,045)、K.ウィカラミイ(wickeramii)(ATCC24,178)、K.ワルチイ(waltii)(ATCC56,500)、K.ドロソフィラルム(drosopilarum)(ATCC36,906)、K.サーモト・レランス(thermotolerans)、およびK.マルキシアヌス(marxianus));ヤロウィア(yarrowia)(EP402,226);ピチア パストリス(Pichia pastoris)(EP183,070);カンジダ(Candida);トリコデルマ レエシア(Trichoderma reesia)(EP244,234);ニューロスポラ クラッサ(Neurospora crassa);シュワンニオマイセス(Schwanniomyces)(例:シュワンニオマイセス オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis));および糸状菌類(例:ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penici llium)、トリポクラディウム(Trypocladium)、およびアスペルギルス(Aspergi llus)宿主(例:A.ニズランス(nidulans)、およびA.ニガー(niger))がある。
【0107】
グルコシル化した抗体を発現するための適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎生物の細胞の例としては植物および昆虫の細胞がある。多数のバキュロウイルス株および変異体、並びにスポドプテラ フルギペルダ(Spo doptera frugiperda)(イモムシ)、アエデス アエギプチ(Aedes aegypti )(カ)、アエデス アルボピクタス(Aedes albopictus)(カ)、ドロソフィラ メラノガスタ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)、およびボンビクス モリ(Bombyx mori)などの宿主由来の、対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。数多くの形質移入用ウイルス株、例えばオートグラファ カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異体、およびボンビクス モリ(Bombyx mori)NPVのBm−5株が入手可能であり、このようなウイルスは本発明によれば、本願のウイルスとして使用することが可能であり、特にスポドプテラ フルギペドラ(Spodoptera frugiperda)細胞の形質移入用に使用できる。
【0108】
有益な哺乳類宿主細胞の例としては、SV40で形質転換したサルの腎臓CV−1株(COS−7、ATCC CRL1651);ヒト胎児性腎臓株(293、または懸濁培養中で増殖させた293細胞のサブクローン、Graham et al. (1977) Gen Virol. 36:59)ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub et al. (1980) Proc. Natl. Acad. ScL USA 77:4216);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather (1980) Biol. Reprod. 23:243−251);サル腎臓細胞(CV1 ATCCCCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト頚部癌細胞(HELA、ATCC CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファロラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝臓細胞(HepG2、HB8065);マウス乳腺癌(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al. (1982) Annals N. Y. Acad. Sci. 383:44−68);MRC5細胞;FS4細胞;およびPER.C6(商標)(Crucell NV)である。
【0109】
宿主細胞は、上記の抗体産生用の発現用またはクローニング用ベクターで形質転換されて、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅させるために適切に改変した通常の栄養培地中で培養される。
【0110】
(vii)宿主細胞の培養:本発明の抗体を産生するのに使用した宿主細胞は、種々の培地中で培養することができる。商業的に入手可能な培地、例えばハムF10(Sigma)、最小必須培地(MEM)(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)等が当該宿主細胞を培養するのに適している。更に、Ham et al. (1979) Meth. Enz. 58:44, Barnes et al. (1980) Anal. Biochem.102:255、米国特許第4,767704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03Z130;WO87/00195;または米国再発行特許第30,985号に記載される何れも、当該宿註細胞用の培地として使用することができる。これらの培地の何れも必要であればホルモン、および/または他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、または上皮細胞成長因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばGENTAMYCIN(商標)薬剤)、微量元素(マイクロモルの範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物と定義される)、およびグルコースまたは等価なエネルギー源で補充していてもよい。当業者に知られる他の必要な補充物のいかなるものも、適切な濃度で含めることができる。温度、pH等の培養条件は、発現用に選択した宿主細胞で以前に使用したものであり、当業者には明らかである。
【0111】
キメラ抗体
本発明による抗体は、キメラ抗体であってもよい。キメラ抗体は、ある種の抗体産生細胞から得られた可変軽鎖および重鎖領域(VLとVH)を、別の種の定常軽鎖および重鎖領域と組み合わせることによって遺伝子組換え手段によって作られる。通常、キメラ抗体は、ヒトドメインを優先的に持つ抗体を生じさせるために、齧歯動物やウサギの可変領域とヒト定常領域を利用する。例えば、キメラ抗体は、ヒト定常領域に融合させたマウス抗体からの可変領域を含んでいる。そうしたキメラ抗体の産生が当該技術分野で知られていて、そして(例えば、Morrison, Science 229: 1202 (1985); Oi et al, BioTechniques 4:214 (1986); Gillies et al, (1989) J. Immunol. Methods 725: 191−202;米国特許第5,807,715号;同第4,816,567号;および同第4,816,397号に記載の)標準的な手段で達成され得る。
【0112】
霊長類化抗体
「霊長類化抗体」という用語は、サル可変領域とヒト定常領域を含んでいる抗体を指す。霊長類化抗体を作製する方法は、当該技術分野で知られている。例えば、米国特許第5,658,570号;同第5,681,722号;および同第5,693,780号を参照のこと。
【0113】
ヒト化およびヒト抗体
本発明の範囲内に含まれるのは、例えば、特許公報EP0983303、WO00/34317、およびWO98/52976に記載の方法を使用して作製された配列多様性を有する脱免疫化抗体である。
用語「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を含んでいる抗体を含んでいて、そして、ヒト免疫グロブリンライブラリまたは、例えば、米国特許第5,939,598号に記載のヒト免疫グロブリンの1もしくは複数でトランスジェニックした動物から単離された抗体を含んでいる。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列から得られた抗体ライブラリーを使用したフェーズディスプレイを含めた当該技術分野で知られているさまざまな方法で作製できる。また、WO98/46645、WO98/24893、W098/16654、WO96/34096、WO96/33735、およびWO91/10741も参照のこと。
【0114】
本発明の抗体は、ヒト化抗体であってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化形とは、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖あるいはその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)
2あるいは抗体の他の抗原結合サブ配列)であって、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むものである。ヒト化抗体はレシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、マウス、ラットまたはウサギのような所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。また、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRもしくはフレームワーク配列にも見出されない残基を含んでいてもよい。一般に、ヒト化抗体は、全てあるいはほとんど全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、最適には免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含んでなる(Jones et al. (1986) Nature, 321:522−525; Riechmann et al. (1988) Nature, 332:323−329;およびPresta (1992) Curr Op Struct Biol, 2:593−59)。
【0115】
非ヒト抗体をヒト化する方法はこの分野でよく知られている。一般的に、ヒト化抗体には非ヒト由来の一または複数のアミノ酸残基が導入される。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は基本的に齧歯動物のCDRまたはCDR配列でヒト抗体の該当する配列を置換することによりWinterおよび共同研究者(Jones PT et al (1986) Nature 321(6069):522; Riechmann L et al (1988) Nature 332(6162): 323−327; Verhoeyen M et al (1988) Science 239(4847): 1534−1536)の方法に従って、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置換することにより実施される。従って、このような「ヒト化」抗体は、無傷のヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基および場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0116】
抗体は、以下を含む当該分野で公知の種々の技術を用いてヒト化され得る:例えば、CDR−グラフティング(EP239,400;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号および同第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP592,106;EP519,596号;Padlan EA et al (1991)Mol Immunol 28(4−5):489; Studnicka GM et al (1994) Protein Eng 7(6):805−14)、およびチェーンシャッフリング(chain shuffling)(米国特許第5,565,332号)。
【0117】
場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1もしくは複数の可変領域のフレームワーク領域内の残基は、対応するヒト以外の残基で置き換えられる(例えば、Queenの米国特許第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号を参照のこと)。
【0118】
本発明はまた、US6,881,557および7,732,578に記載のSuperhumanization(登録商標)とも呼ばれる方法によってもヒト化抗体に至る。簡単に言えば、ヒト化抗体のためのこれらの方法は、ヒト以外の抗体の可変領域のCDR配列の基準のCDR構造型を、ヒト抗体配列のライブラリからの対応するCDRの基準のCDR構造型と比較することによってヒト抗体遺伝子から可変領域フレームワーク配列を選択することに基づいている。ヒト以外のCDRに類似した基準のCDR構造型を持つヒト抗体可変領域は、そこからヒトフレームワーク配列を選択するヒト抗体配列メンバーのサブセットを形成する。
【0119】
「化粧張り抗体」もまた、本発明の範囲内に含まれる。化粧張り抗体という用語は、天然のフレームワーク領域折りたたみ構造の実質的にすべてを保有する抗原結合部位を含んでいる異種間分子を提供するために、ヒトフレームワーク領域残基でのフレームワーク領域残基の選択的置換を指す。化粧張り技術は、抗原結合部位のリガンド結合性特徴が抗原結合表面の重鎖および軽鎖CDRセットの構造と相対配置によって決定されることの理解に基づいている。化粧張り技術を使用することによって、(免疫系が容易に相対する)外側の(例えば、溶媒がアクセス可能な)フレームワーク領域残基を、ヒト残基で選択的に置き換えて、弱い免疫原性しか有さないかまたは実質的に免疫原性を有さない化粧張り表面をハイブリッド分子に提供する。
【0120】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含む、従来技術に既知の様々な技術によって製造可能である(Hoogenboom and Winter (1991) J Mol Biol, 227:381; Marks et al. (1991) J Mol Biol, 222:581)。ColeらおよびBoernerらの技術もヒトモノクローナル抗体の調製に使用できる(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985)およびBoerner et al. (1991) J Immunol, 147:86−95)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位を、トランスジェニック動物、例えば内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されたマウスに導入することによって作成できる。施行後、ヒト抗体生産を観察したところ、遺伝子再編成、組立ておよび抗体レパートリーを含む全ての面においてヒトに見られるものと酷似していた。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号に記載されている。
【0121】
別の実施形態において、完全ヒト抗体は、トランスジェニック・マウスを免疫することによって得られる。
そうしたマウスは一つには、XenoMouse(商標)技術(Abgenix; Fremont, Calif)を使用することで得られ、米国特許第6,075、181号;同第6,091,001号および同第6,114,598号で開示されている。完全ヒト抗体は、マウスまたはマウス誘導体化モノクローン抗体に対する内在性の免疫原性およびアレルギー応答を最小限にし、それにより投与された抗体の有効性と安全を高めると予想される。
【0122】
選択されたエピトープを認識する完全にヒトの抗体を、「誘導型選択」と呼ばれる技術を用いて作製することが可能である。このアプローチでは、例えばマウス抗体といったような選択された非ヒトモノクローナル抗体が、同じエピトープを認識する完全にヒトの抗体の選択を誘導するべく使用される(Jespers et al, Bio/technology 72:899−903 (1988))。
【0123】
抗体はまた、、先に記載のような既知の選択および/または突然変異誘発法を利用して親和的に成熟している。好ましい親和性成熟抗体は、5倍、より好ましくは10倍、更により好ましくは20または30倍も成熟抗体の調製の元である出発抗体(一般的には、マウス、ヒト化またはヒト)より高い親和性を有する。
「親和性成熟」抗体は、それらの修飾を持たない親抗体と比較して、IL−5に対する抗体の親和性の改善をもたらす、1もしくは複数のそのCDRにおける1もしくは複数の修飾を有するものである。Marks et al (1991) J Mol Biol 222:581−597は、VHおよびVLドメインシャッフリングによる親和性成熟を説明している。
【0124】
抗体結合
本発明の抗体は、当業者に公知の任意の好適な方法によって特異的結合についてアッセイされ得る。使用できる免疫アッセイは、技術、例えば、BIAcore分析、FACS (蛍光活性化セルソーター) 分析、免疫蛍光、免疫細胞化学、ウェスタンブロット、放射免疫アッセイ、ELISA、「サンドウィッチ」型免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素反応、ゲル内沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイなどを用いる競合および非競合アッセイ系を含むが、これだけに限定されるものではない。
【0125】
免疫グロブリンIgG4融合タンパク質
本発明はまた、本発明の修飾されたヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメインと修飾されたヒトIgG4コアヒンジ領域配列に遺伝子組換えにより融合されるまたは(共有結合または非共有結合を含めて)化学的に結合される生理活性分子を含んでいる融合タンパク質も提供する。融合タンパク質という用語は、「免疫接着」という用語と同義であることが多い。理論に拘束されることを望むものではないが、免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の変異がヒンジ領域を安定させ、そしてFc領域の変異がヒトFcRnに対する親和性を高めると考えられる。特定の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号14のアミノ酸配列、またはC末端アミノ酸(リジン)を欠いているそのバリアントを含んでいる。
【0126】
融合される生物活性分子の具体例は、当業者に知られているいずれかのポリペプチドまたは合成薬物であることができる。好適なペプチドの例としては、サイトカイン、細胞接着分子(例えば、CTLA4、CD2およびCD28)、リガンド(例えば、TNF−α、TNF−βおよび抗血管新生因子)、受容体および増殖因子(例えば、PDGF、EGF、NGFおよびKGF)、酵素、ケモカインが挙げられる。
融合される生理活性分子はまた、非タンパク性重合体、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであってもよい。
【0127】
本発明の生理活性分子または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の製造方法には、は標準的な組換えDNA技法または、例えばペプチド合成機の使用によるタンパク質合成技法が含まれる。例えば、本発明の生理活性分子をコードする核酸分子は、自動DNA合成機を含む従来の技法で合成することができる。あるいはまた、遺伝子断片のPCR増幅を、2つの連続的な遺伝子断片、それらは後にアニーリングされ再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成することができるが、それらの遺伝子断片の間に相補的なオーバーハングを生ずるアンカープライマーを用いて行うことができる。さらに、生物活性分子をコードする核酸を、Fc領域またはそのFcRn結合ドメインを含んでいる発現ベクター中にクローン化してその生物活性分子が定常領域またはそのFcRn結合ドメインとインフレームで連結するようにすることができる。
【0128】
抗体の定常領域にポリペプチドを融合させるまたは結合させる方法は当業界では公知である(例えば、米国特許第5,336,603号、同第5,622,929号、同第5,359,046号、同第5,349,053号、同第5,447,851号、同第5,723,125号、同第5,783,181号、同第5,908,626号、同第5,844,096号、同第5,112,946号、同第7,955,590号を参照のこと)。
【0129】
生物活性分子をコードするヌクレオチド配列は、Genbankから得ることができ、そして定常ドメインをコードするヌクレオチド配列は、本明細書に記載の技法を用いて産生させた突然変異体の配列分析によって決定することができる。融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター中に挿入することができる。
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明の修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列と、高ストリンジェンシー下でそれにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含んでいるポリヌクレオチドを提供する。
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンlqG4融合タンパク質の半減期のアッセイ
【0130】
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の半減期は、Kim et al, Eur J of Immunol 24:542 (1994)による記載の方法に従った薬物動態試験(PK)によって、測定することができる。この方法によれば、放射標識した改変型IgGまたはそのフラグメントをマウスの静脈内に注射し、その血漿濃度を時間の関数として、例えば注射後3分〜72時間に周期的に測定する。こうして得られるクリアランス曲線は、二相、すなわちα相およびβ相からなるはずである。修飾された免疫グロブリンまたは本発明の融合タンパク質の生体内半減期を決定するために、β相におけるクリアランス速度を計算し、野性型、修飾されていない抗体、免疫グロブリン構築物またはIgG4融合タンパク質と比較する。
【0131】
上で記載したものなどのPK試験は、Petkova SB et al., (2006) International Immunology 18(12):1759−1769に記載されているように、マウス内在性FcRnがノックアウトされ、そしてヒトFcRnがノックインされている、ヒト化FcRnマウスモデルで実施できる。
延長された抗体半減期が、改善された生体内活性と関連することが最近報告された(Zalevsky J et al., (2010) nature Biotechnology 28(2): 157−159)。
【0132】
例えば、修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質のFcRnとの結合の能力を、野生型IgG
4、IgG
4ヒンジ領域修飾および重鎖定常領域を含んでいる修飾されたIgG
4抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の結合の能力と比較するために、野生型IgG
4を放射性標識して、試験管内でFcRnを発現している細胞と反応させることができる。次いでその細胞に結合した画分の放射能を測定し、比較することができる。このアッセイに用いられるFcRnを発現している細胞は、好ましくは、B10.DBA/2マウスの肺由来のマウス肺末梢血管内皮細胞(B10、D2.PCE)およびC3H/HeJマウス由来のSV40で形質転換させた内皮細胞(SVEC)(Kim et al., J. Immunol., 40:457−465, (1994))などの内皮細胞系である。しかし、その他のタイプの細胞(例えば生後10日〜14日目の乳児マウスから単離した腸刷子縁であり、これは十分な数のFcRnを発現している)を用いることもできる。あるいはまた、対象としている種の組換えFcRnを発現している哺乳類細胞を用いることもできる。修飾された免疫グロブリン構築物または融合タンパク質の結合した画分、または野生型IgG
4の結合した画分の放射能を計数した後、その結合した分子を界面活性剤で抽出し、細胞のユニット数あたりの放出されたものの比率を計算し、比較することができる。
【0133】
修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質のFcRnに対する親和性は表面プラスモン共鳴(SPR)測定を、例えば前述のBIAcore 2000(BIAcore Inc.)を用いて測定することができる(Popov et al., ol Immunol., 33:493−502 (1996); Karlsson et al., J. Immunol. Methods, 145:229−240 (1991)、これらを参照により本明細書中に援用する)。この方法では、FcRn分子はBIAcoreセンサーチップ(例えば、Pharmacia製のCm5チップ)と結合され、修飾された免疫グロブリン構築物または融合タンパク質の固定化FcRnへの結合は、特定の流速でBIA evaluation 2.1ソフトウエアを用いてセンサーグラムを得て、それに基づいて修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質のFcRnとの結合速度および脱離速度を計算することができる。
【0134】
修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質、および野生型IgG
4のFcRnに対する相対親和性は単純競合結合アッセイで測定することもできる。FcRnが固定化されている96ウエルのプレートのウエルに種々の量の非標識修飾された抗体/免疫グロブリン構築物/免疫グロブリンIgG4融合タンパク質または野生型IgG
4を添加する。次いで、一定量の放射標識野生型IgG
4を各ウエルに添加する。結合した画分の放射能百分率を非標識修飾された免疫グロブリン/融合タンパク質または野生型IgG
4の量に対してプロットし、その曲線の勾配から修飾ヒンジ−Fcの相対的親和性を計算することができる。
【0135】
さらに、修飾された抗体/免疫グロブリン構築物/免疫グロブリンIgG4融合タンパク質、および野生型IgG
4のFcRnに対する親和性は、飽和試験およびスキャッチャード分析によっても測定することができる。
【0136】
FcRnによる修飾された抗体/免疫グロブリン構築物/免疫グロブリンIgG4融合タンパク質および野生型IgG
4の細胞を横切る移送は、放射性標識IgGまたはそれのフラグメントおよびFcRnを発現している細胞を用いた試験管内移送アッセイにより、細胞単層の一方の側の放射能をもう一方の側の放射能と比較することによって測定することができる。あるいはまた、そのような移送は、試験管内で生後10日から14日後の乳児マウスに放射性標識した修飾IgGを与え、定期的に血液中の放射能を計測することによって測定することができ、それは腸を通過するIgGの循環系(またはその他の標的組織のいずれかのもの、例えば肺)への移送を示している。腸を通過する用量依存性のIgG移送の阻害を試験するために、放射性標識および非標識のIgGの一定比率の混合物をマウスに与え、血漿中の放射能を定期的に測定することができる(Kim et al, Eur J of Immunol 24:542 (1994))。
【0137】
医薬組成物と投与様式
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、予防薬または治療療法のための非経口、局所、経口、もしくは局部投与、エアロゾル投与、または経皮投与に有用である。医薬組成物は、投与方法によって、さまざまな単位剤形で投与できる。例えば、経口投与に好適な単位剤形は散剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、およびロゼンジを含んでいる。経口的に投与する場合、本願発明の医薬組成物を消化から保護しなければならないと認識されている。これは、酸と酵素の加水分解に対してそれに耐性を与えるために組成物とタンパク質の錯形成によって、または適当な耐性担体、例えば、リポソームなどの中にタンパク質をパッケージすることによって通常達成される。消化からタンパク質を保護する手段は当該技術分野で知られている。
【0138】
本願発明の医薬組成物は、例えば、静脈内投与または体腔または臓器もしくは関節の内腔への投与などの非経口投与に特に有用である。投与のための組成物は、一般的に医薬的に許容し得る担体、好ましくは水性担体中に溶解された本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の溶液を含む。さまざまな水性担体、例えば、緩衝化生理食塩水などが使用可能である。これらの溶液は、無菌であり、そして通常、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の、周知の滅菌技術で滅菌され得る。組成物は、例えば、pH調整剤や緩衝剤、毒性調整物質などの生理的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容され得る補助剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含み得る。これらの製剤中の本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の濃度は、大きく変更でき、選択した特定の投与方法および対象のニーズにより主に液量、粘性、体重などに基づく。
【0139】
例えば、非経腸的投与のためには、対象の抗体は、医薬として許容される非経腸担体と共に単位投与注射剤形(溶液、懸濁液、乳濁液)として製剤化されてもよい。このような担体の例は、水、塩溶液、リンゲル溶液、グルコース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。非水性担体、例えば、混合油およびオレイン酸エチルを使用することもできる。担体としてリポゾームを使用することもできる。ビヒクルは、等張性および化学的安定性を増強する微量の添加剤、例えば、緩衝剤および防腐剤を含有することができる。
【0140】
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、しばしば非経口投与のために処方される。例えば、静脈内、筋肉内、皮下または他のそのような経路を経る注射のために処方される。代表的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかのように注射可能なものとして調製され得る。注射前に液体を加えて溶液または懸濁液を調製するために用いられるのに適する固体の形態もまた、調製され得る。そして調製物はまた、乳化もされ得る。
【0141】
注射用途に適した薬学的形態としては、無菌水溶液または分散体;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含有する処方物;および無菌注射溶液または分散体の用時調製のための無菌粉末が挙げられる。すべての場合で、形態は、無菌でなければならず、容易にシリンジで使用できる程度まで流動的でなければならない。それは、製造および保存条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、細菌類および真菌類の混入作用に対して保護されなければならない。
【0142】
組成物は、中性または塩の形態で組成物の中に処方され得る。薬学的に受容し得る塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基により形成される)を包含し、そしてこれは無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)または有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などにより形成される。遊離カルボキシル基により形成される塩はまた、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄および有機塩基、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。
【0143】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散の場合には要求される粒子の大きさの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。
【0144】
普通の貯蔵および使用条件下で、そうしたすべての調製が微生物の増殖を予防する保存料を含んでいる。微生物の作用を防止することは、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合、等張化剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)を含有することが好ましい。注射可能な組成物の吸収を延長することは、吸収を遅延する薬物、例えば、アルミニウムモノステアレートおよびゼラチンの組成物中での使用で達成され得る。
【0145】
製剤前または製剤時に、本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、望ましくない小分子量分子を取り除くために透析される、および/または所望のビヒクル中により容易に製剤化できるように、必要に応じて凍結乾燥される。無菌注射剤溶液は、必要な量の有効成分と共に、所望であれば、先に列挙した種々の他の構成要素を適当な溶媒に組み込み、その後、濾過により滅菌することによって準備される。一般に、分散液は、基本的な分散媒体と先に列挙したものからの他の必要な構成要素を含んでいる無菌のビヒクル中に、様々な殺菌処置をした有効成分を組み入れることによって準備される。
無菌注射剤溶液の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、有効成分に加え、どんな追加の所望の構成要素でも、前もって滅菌濾過した溶液から散剤をもたらす真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0146】
本発明による好適な医薬組成物は、一般に、無菌の水溶液などの許容される医薬的な希釈剤または賦形剤と混合された、意図される用途によってさまざまな終濃度をもたらす本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の量を含んでいる。調製技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Ed. Mack Publishing Company, 1980(参照により本明細書中に援用する)によって例示されるように当該技術分野で一般に知られている。例えば、エンドトキシン汚染は安全レベルの最小限、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に保たれなければならないことが理解されなければならない。
【0147】
製剤では、投薬製剤に適合した様式にて、治療的/予防的に効果的な量で本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質が投与される。製剤は、例えば、先に記載の注射液のタイプなどのさまざまな剤形で容易に投与されるが、その他の医薬的に許容され得る形態、例えば、錠剤、丸薬、カプセル剤または経口投与、坐剤、ペッサリー、経鼻溶液もしくはスプレーのための他の固体、エアゾール、吸入剤、リポソーマル形態などもまた企図される。
【0148】
薬学的「徐放」カプセル剤または組成物を使用することもできる。徐放製剤は、概して、長期間にわたって一定の薬物レベルを与えるよう設計されており、本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質を送達するために使用することができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、リポソームおよび/またはナノ粒子もまた、有効成分と共に用いられてもよい。リポソームの形成および使用は、一般に当業者には知られている。リポソームは、それらが多重ラメラ小胞(MLVs)と称される場合がある多重ラメラ同心状二層小胞を自発的に形成するように、水性媒体中に分散されたリン脂質から形成される。MLVは、典型的には25nm〜4μmの直径を有する。超音波で処理した場合、MLVは、水溶液を含む核を有する、直径約200〜500オングストロームの小さな単層小胞(SUVs)を形成する。一般に、リン脂質は、水性媒体中に分散された場合、脂質の水に対するモル比に応じて、リポソーム以外の様々な構造を形成することができる。脂質対水のモル比が低い場合には、リポソームは好ましい構造であろう。リポソームの物理的特性は、pH、張度、および2価カチオンの有無に依存する。リポソームは、イオン性および極性物質に対して低い透過性を示すが、高温にてそれらの透過性を顕著に変える相転移を受ける。相転移は、ゲル状態として知られている密に封入された、秩序構造物から、流動状態として知られている緩く封入され、秩序が緩い構造への変化にかかわる。これは、独特の相転移温度で起こり、そしてイオン、糖、および薬物の透過性増加が起こる。
【0150】
一般に、ナノカプセルは、安定して再現性のよい方法で化合物を封じ込める。細胞内の高分子超過荷重による副作用を避けるために、そのような超微粒子(約0.1μmのサイズ)は、生体内で分解できる重合体を使用して設計されなければならない。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子が本発明における使用のために企図され、そしてそうした粒子が容易に作られる。
【0151】
国際公開WO2002/080967は、組成物、および本開示のタンパク質の投与にも好適である、例えば、喘息の治療のためのタンパク質を含むエアロゾル化された組成物を投与するための方法を説明する。
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質の投薬量は、当業者によって測定できる。しかしながら、投薬量は、修飾された免疫グロブリンまたは融合タンパク質の生体内半減期が延長されていることにある程度依存する。さらに、本発明による抗体または融合タンパク質の投与の投薬量と頻度はまた、例えば、脂質化などの修飾によって取り込みと(例えば、肺への)組織透過性を上げることによって、削減されてもよい。
【0152】
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質による処置は、単回の処置または一連の処置を含んでいる。本発明の医薬組成物は、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1カ月に1回、または6週間毎に1回投与されてもよい。
【0153】
本発明の修飾された抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンlqG4融合タンパク質の使用
本発明の修飾された抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、様々な非治療目的に使用される。それらは、親和性精製作用物質として使用できる。それらはまた、例えば、細胞、組織または血清中の着目の抗原の発現の特異的検出などの診断アッセイに有用でもあり得る。診断応用において、抗体は、放射性同位元素、蛍光標識、および様々な酵素基質標識を含めた検出可能な部分で通常標識される。抗体はまた、例えば、競争結合アッセイ、直接的もしくは間接的なサンドイッチ法、および免疫沈降反応アッセイなどのあらゆる公知の分析法に利用され得る。抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質はまた、生体内診断アッセイに使用されてもよい。一般に、抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、抗原またはそれを発現する細胞が免疫シンチグラフィを使用して局在化できるように、放射性ヌクレオチドで標識される。
【0154】
治療法における抗IL−5抗体の使用
喘息と他の慢性アレルギー疾患の発症機序における一般的な特徴は、特に肺の気管支粘膜における、高い好酸球数であると判明した。活性化により、好酸球は、炎症性気道反応にかかわる多くの伝達物質を活発に分泌する。好酸球の活性化において、インターロイキン5(IL−5)は重要な役割を果たしている。
IL−5は、特に多くの哺乳類種で見つけられ、ついてヒトとマウスの両方でIL−5の遺伝子がクローン化された。ヒト遺伝子は、第5染色体に3つのイントロンと4つのエクソンから成り、134アミノ酸のN末端リーダー配列をコードする。活性なIL−5は、ホモ二量体であり、そして、遺伝子組換えhlL−5の3次元構造はX線結晶学によって測定された。IL−5の受容体は、主に好酸球に存在しており、α鎖とβ鎖から構成される。受容体のα鎖はIL−5に特異的であり、そして(高親和性結合とシグナル伝達を確保する)β鎖はIL−3とGM−CSFのヘテロ二量体受容体と共有される。
【0155】
IL−5は、完全に分化したTh2細胞、マスト細胞、および好酸球によって主に分泌される。好酸球、好塩基球、細胞傷害Tリンパ球およびマウスB細胞に作用することが示された。
好酸球に対するIL−5の作用は、走化性、内皮細胞への接着促進、および細胞の終末分化の活性化を含んでいる。さらに、IL−5が成熟好酸球のアポトーシスを阻止することが実証された。これらの知見は、好酸球分化のための最も重要なサイトカインであるというIL−5の概念に寄与した。
【0156】
現在の喘息の処置はコルチコステロイドにかかわるが、その未来の喘息、ならびに好酸球によって媒介された他の症状の処置が抗IL−5抗体を含むことが構想される。好酸球からのサイトカインと他のエフェクタ分子の不適当な分泌が、周辺組織の損傷と機能不全を引き起こす。好酸球浸潤と活性化から生じる末端臓器の損傷が、アトピー性疾患および特発性好酸球増加症候群(HES)を含めたいくつかの病状の一般的な病原性要素を示している。ヒトの好酸球数を減少させる治療法に対する明確なニーズが存在する。
【0157】
障害の処置または予防における本発明の抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質
修飾された抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質には、様々な治療への適用がある。修飾された抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、疾患または障害に罹患しているか、または罹患しやすい(修飾された抗体の投与から利益を得る場合がある)対象を処置するのに使用でできる。抗体を用いて処置される状態としては、癌;例えば、喘息などの炎症状態;自己免疫疾患;およびウイルス感染などが挙げられる。
【0158】
本明細書中に記載した抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質によって治療できる癌としては、これだけに限定されるものではないが、乳癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、膀胱癌、肝細胞癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、および種々な種類の頭頚部の癌が挙げられる。
【0159】
自己免疫疾患としては、これだけに限定されるものではないが、アディソン病、耳の自己免疫疾患、眼の自己免疫疾患、例えばブドウ膜炎など、自己免疫性肝炎、クローン病、糖尿病(I型)、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、天疱瘡、乾癬、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、潰瘍性大腸炎、および血管炎が挙げられる。
【0160】
本発明はまた、好酸球増加症を特徴とする疾患を処置する方法を含んでいる。喘息は、本発明の方法の主要な標的であるが、例えば、多発性のアレルギー、アレルギー性鼻炎、および好酸球性食道炎などの他の慢性状態もまた処置の好適な標的でもある。よって、本発明の方法のある実施形態は、好酸球細胞の数が有意に減少する程度までIL−5活性を下方調整する抗IL−5抗体の投与を含む、喘息または好酸球増加症を特徴とする他の慢性のアレルギー状態の処置、予防、および/または改善を含む。
【0161】
本明細書の文脈中での、好酸球細胞数の有意な減少は、従来の処置の好酸球数と比較して少なくとも20%であるが、より高いパーセンテージ、例えば少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、そして少なくとも90%さえも企図している。その減少は、全身的、または多くは局所的、例えば、肺であってもよい。
【0162】
好酸球数は、通常、好適なサンプルである気管支肺胞洗浄(BAL)液の顕微鏡法を使用し、そして顕微鏡下、手作業で好酸球細胞数をカウントする、当該技術分野で知られている方法で測定される。あるいは、好酸球数は、好酸球を識別できるフローサイトメトリーを使用することでカウントされる。
本発明の修飾された抗CD33抗体は、癌、より具体的には骨髄性白血病の治療に有用である。本発明はまた、その半減期を延長するために本発明に従って修飾された、カリケアマイシンを結合させた抗CD33を包含する(Hamann PR et al., (2002) Bioconj Chem. 13(1):40−6)。抗CD33−カリケアマイシン複合体は、急性骨髄性白血病を治療するのに使用できる。
【0163】
非免疫賦活抗体の有用性
本発明の抗体、免疫グロブリン構築物、および免疫グロブリンIgG4融合タンパク質は、修飾されたヒトIgG4Fc領域またはそのFcRn結合ドメイン、および修飾されたヒトIgG4コアヒンジ領域配列を含んでいる。抗体定常ドメインのアイソタイプが抗体のエフェクター機能に影響を及ぼすことは、当該技術分野では知られている。様々なヒト免疫グロブリンクラスの中で、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgMだけが補体を活性化することが知られている;そして、ヒトIgG1とIgG3は、IgG2やIgG4より効果的に抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する。本発明の免疫グロブリンと融合タンパク質は、IgG4定常領域配列を含んでいるので、補体カスケードまたはADCC活性を活性化できないので、それにより、あらゆる望ましくないNK細胞またはT細胞活性化も引き起こさない。従って、それらは、状態を悪化させるだけである細胞の活性化を引き起こすことが望ましくないアレルギー状態、例えば喘息などに適している。
【0164】
IgG4抗体は、それらの抗炎症活性が他のIgGサブクラスと機能上異なっており、C1q(補体第1成分のqフラグメント)とFcガンマ受容体に対する低い親和性のため、補体と細胞の活性化を引き起こす能力がわずかしかない。その結果、IgG4は、宿主エフェクター機能の動員が望ましくない免疫療法に好ましいサブクラスになった。
【0165】
抗IL−5抗体
本発明は、本発明による修飾されたヒトIgG4Fc領域と修飾されたヒトIgG4ヒンジ領域に加えられた既知のIL−5抗体の軽鎖および重鎖の可変領域配列を含んでいる抗体、免疫グロブリン構築物または免疫グロブリンIgG4融合タンパク質に及ぶ。抗IL−5抗体のいくつかの例が、US5,683,892、US5,693,323、US5,783、184、US5,851、525、US6、129,913、US5,096,071、US6,056,957、およびUS6,451,982に記載されている。加えて、(US RE39,548Eに記載の)ヒト化抗IL−5抗体であるCTIL−5−10gH/−gL6(本明細書中では39D10またはhu39D10とも呼ばれる)とメポリズマブは、本発明による修飾に特に好適である。
【0166】
具体的な実施形態に示されているように、多数のバリエーションおよび/または修飾が、幅広く記載した本発明の範囲から逸脱せずに、本発明に対してなされ得ることは、当業者に理解される。そのため、本実施形態は、あらゆる点で説明のためのものであり、限定のためのものとみなされない。
【0167】
置換の相乗効果
本発明者らは、IgG4抗体のS228Pヒンジ領域変異に組み合わせられると、IgG4免疫グロブリンまたは抗体Fc領域のYTE置換(すなわち、M252Y、S254T、およびT256E変異群)が相乗的に修飾されたIgG4抗体の生体内半減期を延長することを見出した。これは、実施例に記載されているとおり、2つの異なった、関係ない抗原に結合する2つの異なった抗体について実証された。
【0168】
特に、発明者らは、YTE置換がヒトFcRnに対する修飾された抗体の親和性を高めるが、ヒンジ領域へのS228P修飾の更なる含有がFcRnに対する抗体親和性への更なる効果を生じないことがわかった。この領域がFcRnと相互作用しないと考えると、このことは、完全に予想外というわけではなかった。そのため、S228P置換とYTE置換の相乗効果がないことは、予測されただろう。(ヒト抗体定常領域を含むタンパク質を含んでいる)ヒトタンパク質ベースの薬品のいずれかの修飾は、患者が抗薬物免疫応答を引き起こす危険性を高めるので、一般診療では、薬物に対するそうした免疫応答の誘発に関してそれぞれの変異リスクの相加的な高まりを抑制するために、そうした変異の数を制限することになっている。しかしながら、2つのクラスの修飾(Fc修飾とヒンジ修飾)の組合せがIgG4抗体の血中半減期を延長すること対して前掲の相加効果をもたらすという本明細書中に記載の驚くべき結果のため、これらの2つのクラスの変異を組合せる利益は、抗薬物免疫反応の発生を高めるのに関連する理論上の不利益より重視できる。分子の半減期を延長する利点は、当業者にとってすぐに明確になる。そうした利益は、対象の有害事象の危険性を下げ、且つコストを削減する投薬量および/または投与頻度の削減を含んでいる。従って、延長された半減期を伴うそうした免疫グロブリンは、医薬的に著しく重要なものである。
【0169】
本明細書中に言及されたすべての参考文献または文献は、その全体が参照により本明細書中に援用されたと見なされる。
【0170】
本明細書全体を通じて語句「〜を含む(comprise)」、または「〜を含む(comprises)」もしくは「〜を含んでいる(comprising)」などのその変形は、記載される要素、完全体(integer)もしくはステップ、または一群の要素、完全体もしくはステップが包含され、しかし任意の他の要素、完全体もしくはステップ、または一群の要素、完全体もしくはステップを除外するものではないことを含意するものと理解され得る。
本明細書に含まれている文献、行為、材料、デバイス、物品などに関するあらゆる考察は、それが本出願のそれぞれの請求項の優先日以前に存在した場合、これらの内容のいずれまたはすべてが、本発明の関連分野の一般的な一般知識であるかまたはそれに基づく従来技術の一部を形成する。
前記疾患が、アトピー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、喘息、重度の喘息、慢性好酸性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、小児脂肪便症、チャーグ・ストラウス症候群、好酸球性筋肉痛症候群、特発性好酸球増加症候群、偶発性血管性浮腫を含めた浮腫性反応、蠕虫感染、オンコセルカ皮膚炎、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性小腸炎、好酸球性結腸炎、鼻マイクロポリポーシス、鼻ポリポーシス、アスピリン不耐喘息、閉塞型睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病、強皮症、および心内膜線維症から成る群から選択される、請求項8に記載の方法。