(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-55901(P2017-55901A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】マッサージ治療用温熱ベッド
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20170303BHJP
【FI】
A61F7/00 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-181961(P2015-181961)
(22)【出願日】2015年9月15日
(71)【出願人】
【識別番号】393023145
【氏名又は名称】株式会社ユメロン黒川
(74)【代理人】
【識別番号】100148437
【弁理士】
【氏名又は名称】中出 朝夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕文
【テーマコード(参考)】
4C099
【Fターム(参考)】
4C099AA01
4C099CA01
4C099CA02
4C099EA09
4C099HA02
(57)【要約】
【課題】 マッサージ治療の施術開始前に、着替えを行わずに被術者の身体を芯まで十分に温めることができ、かつ、温熱後に直ちにマッサージ治療に移行することができて、治療効果を向上させることができるマッサージ治療用温熱ベッドを提供すること。
【解決手段】 ベッド本体1の外周が周壁11に囲まれた容器状に構成して、この周壁11の少なくとも一部をスライド自在にして、かつ、これら周壁11の内側の所定深さまで蓄熱粒体2を収容可能にする一方、ベッド本体1の底面12にはヒーター3を配設して、このヒーター3によって前記蓄熱粒体2を加熱可能にするという技術的手段を採用した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が横たわってマッサージ治療するためのベッドであって、
ベッド本体(1)の外周が周壁(11)に囲まれた容器状に構成されており、この周壁(11)の少なくとも一部がスライド自在であり、かつ、これら周壁(11)の内側の所定深さまで蓄熱粒体(2)が収容可能である一方、ベッド本体(1)の底面(12)にはヒーター(3)が配設されており、このヒーター(3)によって前記蓄熱粒体(2)を加熱可能であって、
前記周壁(11)が内側位置の状態では、収容された蓄熱粒体(2)の中に被術者の身体を埋めて温めることができる一方、
周壁(11)が外側位置の状態では、ベッド本体(1)の底面(12)が側方に拡張して被術者が左右方向に動作可能な拡張部(13)が側方に作出されるとともに、容積が増加して前記蓄熱粒体(2)が当該拡張部(13)に移動して収容深さが浅くなり、被術者が当該蓄熱粒体(2)の上に横たわることができることを特徴とするマッサージ治療用温熱ベッド。
【請求項2】
ベッド本体(1)に回収部材(4)が配設されており、ベッド本体(1)の周壁(11)が外側から内側に移動する際に、拡張部(13)の底面(12)に載置された回収部材(4)を起立させて、蓄熱粒体(2)を中央部に寄せ集めることができることを特徴とする請求項1記載のマッサージ治療用温熱ベッド。
【請求項3】
ヒーター(3)が、熱源の上部に遠赤外線放射性の板体が敷設されて構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のマッサージ治療用温熱ベッド。
【請求項4】
ヒーター(3)が、複数の領域を個別に温度調節可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のマッサージ治療用温熱ベッド。
【請求項5】
蓄熱粒体(2)が、球状のセラミック粒体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のマッサージ治療用温熱ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱器具の改良、更に詳しくは、マッサージ治療の施術開始前に、着替えを行わずに被術者の身体を芯まで十分に温めることができ、かつ、温熱後に直ちにマッサージ治療に移行することができて、治療効果を向上させることができるマッサージ治療用温熱ベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、身体の治療やリハビリのために種々のマッサージが行われているが、最近では、筋肉を強く揉むのではなく、横たわった姿勢で身体を揺らすことによって筋肉の緊張を解いていく「ゆらぎ療法」が注目されている。
【0003】
この「ゆらぎ療法」においては、筋肉が柔らかくなっていないうちに開始しても十分な効果が得られないことから、施術前に15〜20分程かけて予め身体を温めておく必要があるが、サウナや風呂に入る方法では、着替えの手間がかかるし、また、施術までに時間が経って身体が冷めてしまうという問題がある。
【0004】
ところで、従来の温熱器具として、セラミックボールを容器に入れて加熱して、足を入れて使用するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、かかる温熱器具は、脚部を温める用途には使用されているが、全身を温めるような汎用性を有しておらず、仮に、前記「ゆらぎ療法」に使用するために全身用にサイズを大きくしても、少なくともその上に横たわることくらいしかできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3142050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の温熱器具に上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、マッサージ治療の施術開始前に、着替えを行わずに被術者の身体を芯まで十分に温めることができ、かつ、温熱後に直ちにマッサージ治療に移行することができて、治療効果を向上させることができるマッサージ治療用温熱ベッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、人が横たわってマッサージ治療するためのベッドであって、
ベッド本体1の外周が周壁11に囲まれた容器状に構成して、この周壁11の少なくとも一部をスライド自在にして、かつ、これら周壁11の内側の所定深さまで蓄熱粒体2を収容可能にする一方、ベッド本体1の底面12にはヒーター3を配設して、このヒーター3によって前記蓄熱粒体2を加熱可能であって、
前記周壁11が内側位置の状態では、収容された蓄熱粒体2の中に被術者の身体を埋めて温めることができる一方、
周壁11が外側位置の状態では、ベッド本体1の底面12が側方に拡張して被術者が左右方向に動作可能な拡張部13が側方に作出されるとともに、容積が増加して前記蓄熱粒体2が当該拡張部13に移動して収容深さが浅くなり、被術者が当該蓄熱粒体2の上に横たわることができるようにするという技術的手段を採用したことによって、マッサージ治療用温熱ベッドを完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ベッド本体1に回収部材4を配設して、ベッド本体1の周壁11が外側から内側に移動する際に、拡張部13の底面12に載置された回収部材4を起立させて、蓄熱粒体2を中央部に寄せ集めることができるようにするという技術的手段を採用することもできる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ヒーター3を、熱源の上部に遠赤外線放射性の板体を敷設して構成するという技術的手段を採用することもできる。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ヒーター3を、複数の領域を個別に温度調節可能にするという技術的手段を採用することもできる。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、蓄熱粒体2を、球状のセラミック粒体にするという技術的手段を採用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ベッド本体の外周が周壁に囲まれた容器状に構成して、この周壁の少なくとも一部をスライド自在にして、かつ、これら周壁の内側の所定深さまで蓄熱粒体を収容可能にする一方、ベッド本体の底面にはヒーターを配設して、このヒーターによって前記蓄熱粒体を加熱可能にしたことによって、
前記周壁が内側位置の状態では、収容された蓄熱粒体の中に被術者の身体を埋めて温めることができる一方、周壁が外側位置の状態では、ベッド本体の底面が側方に拡張して被術者が左右方向に動作可能な拡張部が側方に作出されるとともに、容積が増加して前記蓄熱粒体が当該拡張部に移動して収容深さが浅くなり、被術者が当該蓄熱粒体の上に横たわることができる。
【0015】
したがって、本発明のマッサージ治療用温熱ベッドによれば、温めたままで蓄熱粒体の収容深さを容易に変えることができるので、マッサージ治療の施術開始前に、着替えを行わずに被術者の身体を芯まで十分に温めることができ、かつ、温熱後に直ちにマッサージ治療に移行することができて、治療効果を向上させることができることから、産業上の利用価値は頗る大きい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドを表わす全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの使用状態を表わす説明断面図である。
【
図3】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの拡張時を表わす全体斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドを拡張時の使用状態を表わす説明断面図である。
【
図5】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの変形例の使用状態を表わす説明断面図である。
【
図6】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの変形例の使用状態を表わす説明断面図である。
【
図7】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの変形例の使用状態を表わす説明断面図である。
【
図8】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの変形例の使用状態を表わす説明断面図である。
【
図9】本発明の実施形態のマッサージ治療用温熱ベッドの変形例の使用状態を表わす説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を
図1から
図9に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはベッド本体であり、また、符号2で指示するものは蓄熱粒体、符号3で指示するものはヒーター、符号4で指示するものは回収部材である。
【0018】
本発明は、人が横たわってマッサージ治療するためのベッドであって、ベッド本体1の外周が周壁11に囲まれた容器状に構成されている(
図1参照)。この周壁11は十分な強度を有する厚みの材料(木材や金属など)を使用して作製し、また、内側面には、適宜、断熱材を配設することができる。
【0019】
次いで、この周壁11の少なくとも一部をスライド自在にする。本実施形態では、長辺側の周壁11をそれぞれ外側にスライドできるように構成することができる。なお、スライド機構には、短辺側の周壁11を重ね合わせて公知のレールやスロット構造を採用して、摺動可能にする。
【0020】
そして、これら周壁11の内側の所定深さ(好ましくは30cm以上)まで蓄熱粒体2が収容可能である。この際、被術者の体重によって収容量を増減して沈み込みを調整することができる。本実施形態では、蓄熱粒体2を、球状(例えば直径約8mm)のセラミック粒体にすることができ、蓄熱粒体2が流動しやすいために被術者に対して隙間なく密着性が良く、肌触りが良く抵抗が少なくてマッサージ治療時の動作をスムースに行うこともできる。また、上に横臥したときに体圧を均一にすることができ、更には、球状でないと体重がかかる部分だけが熱くなって低温火傷のおそれがあるが、球状の場合は体を均一に温めることができる。
【0021】
なお、この蓄熱粒体2には、遠赤外線放射性物質であって、例えば、蛇紋石(アンチゴライト)や花崗班岩、石英閃緑岩などの天然鉱石を採用することができ、これらに含まれるジルコニウムが遠赤外線を放射するとともに、蛇紋石に豊富に含まれるマグネシウムが効果的な抗菌・消臭作用を果たすこともできる。この際、人体に共振しやすく吸収の良い9μm前後の波長の遠赤外線が好ましい。
【0022】
更に、ベッド本体1の底面12にはヒーター3を配設して、このヒーター3によって前記蓄熱粒体2を加熱可能にする。ヒーター3は1200W程度の省電力のものを採用しても十分な熱量を得ることができる。
【0023】
本実施形態では、ヒーター3を、熱源の上部に遠赤外線放射性の板体(前述の遠赤外線放射性物質の岩盤)を敷設して構成することができ、面的な輻射熱の放射によって熱伝導効果を向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態では、ヒーター3を、複数の領域を個別に温度調節可能にすることができる。具体的には、頭部から脚部にかけて3〜5分割して配置し、ヒーター温度を60〜80℃にした時に、蓄熱粒体2の表面温度が40〜43℃になるように制御することができる。
【0025】
こうして構成されたマッサージ治療用温熱ベッドは、前記周壁11が内側位置の状態(初期位置)では、
図2に示すように、収容された蓄熱粒体2の中に被術者の身体を埋めて温めることができる。
【0026】
一方、
図3に示すように、周壁11が外側位置の状態では、ベッド本体1の底面12が側方に拡張して被術者が左右方向に動作可能な拡張部13が側方に作出される。なお、周壁11を外側位置(または内側位置)に移動させる場合、収容された蓄熱粒体2は約200kgもの重量に達することがあるため、ボールネジおよび回転ハンドル等を使用して、少ない力で移動できる仕様(万力など)にすることが好ましい。
【0027】
そして、容積が増加して前記蓄熱粒体2が当該拡張部13に移動して収容深さが浅くなり(10cm程度)、被術者が当該蓄熱粒体2の上に横たわることができる(
図4参照)。具体的サイズは、初期位置の幅80cmが左右の側方に30cmずつ拡張して幅140cmになる。
【0028】
このように、簡単な操作で蓄熱粒体2を温めたままで収容深さを変えることができ、しかも、被術者の動作スペースを迅速に作出することができるため、身体が温まって代謝を良くした状態で、しかも「更に温熱を加えながら」直ちにマッサージ治療を開始することができることから、治療効果を飛躍的に高めることができるのである。
【0029】
『変形例』
次に、本実施形態の変形例を説明する。本変形例では、ベッド本体1に回収部材4を配設する(ヒーターの図示は省略する)。この回収部材4の上には蓄熱粒体2が載置される。そして、(マッサージ治療後の)ベッド本体1の周壁11が外側から内側に移動する際に、拡張部13の底面12に載置された回収部材4を起立させて、蓄熱粒体2を中央部に寄せ集めることができる。
【0030】
図5〜
図7に示す態様の回収部材4は板状であり、例えば、一方を底面12にヒンジ固定して他方を周壁11のガイド溝をスライドさせることによって連動して、蓄熱粒体2を中央部に寄せ集めることができるように構成されている。
【0031】
また、
図8および
図9に示す態様の回収部材4はシート状であり、回収部材4の端部を中央部に引っ張りながらめくり上げて蓄熱粒体2を寄せ集めることができるように構成されている。
【0032】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、蓄熱粒体2の形状は球状に限らず異形のものでも良く、突起部分で指圧効果を付与することもできる。また、蓄熱粒体2の種類および形状も単一でなく、混合して使用することもできる。
【0033】
また、ベッド本体1の拡張部13は、両側面の周壁11をそれぞれ移動させて作出するものに限らず、一方の側面のみを移動して作出するものであっても良い。
【0034】
更にまた、ヒーター3の配設位置は、ベッド本体1の底面12の中央部のみに配設するものに限らず、拡張部13の底面にも配設することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0035】
1 ベッド本体
11 周壁
12 底面
13 拡張部
2 蓄熱粒体
3 ヒーター
4 回収部材
P 被術者