【解決手段】座席シートなどを支持する本体フレームに固定されるとともに、第1の案内溝56および第1の案内溝に対して屈曲した第2の案内溝58が形成された固定部材50と、利用者が座席シートに座っているときに下方に沈み込む座面センサ部18を一端部に備え、かつ、固定部材に対して回動自在に軸支された回動部材30と、固定部材の第1の案内溝と第2の案内溝との間を往復移動可能な態様で装着される駒部材60と、駒部材に一端部が取り付けられ、他端部17が車輪に制動力を発揮させる制動部に接続された力伝達ワイヤ15と、を備えており、駒部材が第1の案内溝から第2の案内溝側に強制的に移動し、制動部から座面センサ部に対して反力が非伝達となる。
利用者が座席シートに座ったことを機械的に検知し、利用者が前記座席シートから立ち上がった場合に、制動部を作動させて車輪に制動力を発揮させる座面センサーユニットであって、
本体フレームに固定されるとともに、第1の案内溝および前記第1の案内溝に対して屈曲した第2の案内溝が形成された固定部材と、
前記利用者が前記座席シートに座っているときに沈み込む座面センサ部を一端部に備え、他端部に扇状膨出部分が形成されているとともに前記固定部材に対して回動自在に軸支された回動部材と、
前記固定部材の前記第1の案内溝と前記第2の案内溝との間を往復移動可能な態様で装着される駒部材と、
前記駒部材に一端部が取り付けられ、他端部が前記車輪に制動力を発揮させる制動部に接続された力伝達ワイヤと、を備え、
前記利用者が前記座席シートに座った場合に、前記利用者から加えられる荷重により前記座席シートが前記座面センサ部側に沈み込むことにより前記回動部材が回動し、その回動動作に伴って、前記回動部材の他端部が前記駒部材を上方に押圧し、その押圧された前記駒部材は、前記回動部材の外周面に沿って移動するように構成されており、
前記座面センサ部に前記利用者から所定以上の荷重が加えられたときに、前記駒部材が前記固定部材における前記第1の案内溝から前記第2の案内溝側に強制的に移動し、それ以後、前記制動部から前記座面センサ部に対して反力が非伝達とされることを特徴とする座面センサーユニット。
【背景技術】
【0002】
歩行等が不自由な状態にある利用者の移動手段として、車椅子が使用されている。車椅子は、利用者が座る座席シートと、車椅子全体を移動させるための車輪等を備えている。このため、利用者が座席シートに座り乗車が完了した後、車輪を回転させ、所望の場所に移動することが可能となっている。
【0003】
しかし、利用者が完全に座席シートに座っている状態では、車輪が回転するのであれば問題ないが、利用者が車椅子に乗車あるいは降車しようとする場合には、利用者の動作によって車椅子自体が押されて車輪部が回転し車椅子が移動すると、利用者が転倒する等の不都合が生じるおそれがある。このため、車椅子には、車輪の回転を阻止するための手動ブレーキが備わっている。
【0004】
しかしながら、車椅子の利用者は高齢者等が多いために、手動ブレーキの操作をし忘れて車椅子に乗車あるいは降車しようとする場合があり、車椅子が前後に移動して利用者が転倒するおそれがある。
【0005】
そこで、手動ブレーキをかけ忘れた状態で座ろうとしたり、あるいは手動ブレーキを掛かけ忘れた状態で立ち上がろうとしたときなどに、後の車輪に制動力を発揮させる、いわゆる補助ブレーキを備えた車椅子が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0006】
例えば、特許文献1に記載された車椅子では、利用者が車椅子の座席シートから立ち上がると、利用者の体重によって押し下げられていたブレーキ作動用バネの圧迫がとれて、ブレーキ作動用バネからの付勢力により座席シートの後部アームが押し上げられると同時に、ブレーキ作動用レバーが圧迫されて、後輪にブレーキがかけられている。
【0007】
逆に、利用者が座席シートに座った場合には、座席シートの後部アームを下方に移動させてブレーキ作動用バネを押し下げ、これによりブレーキ作動用レバーの圧迫が解除されて後輪へのブレーキが解除されるようになっている。
【0008】
ところで、このような補助ブレーキ付きの車椅子では、座席シートの下側に配置された座面センサ部が着座を検知、すなわち座面センサ部が沈み込むことで、後段に連結された制動部を作動させる構造となっている。また、このときの座席シートはいわゆるハンモック状となっており、沈み込み量は一定で、決められた距離しか沈み込まないように設計されている。よって、このタイプの車椅子は、体重が重い人でも体重が軽い人でも関係なく、座った場合に一定の沈み込み量しかないため、クッション性に欠けるという問題があった。
一方、座席シートにスプリング、スポンジ等を配設することにより、クッション性を良好にした別のタイプの車椅子も提供されている。
【0009】
ところが、このように座席シートにスプリング、スポンジ等が配設されていると、利用者の体重の違いで沈み込み量が変わるため、着座の検知が不安定になる。すなわち、座面センサ部は、座面の沈み込みを検知することで着座の判断をする。利用者の着座を明確に検知するには、体重の軽い人が座った場合でも検知できるようにするのが常套である。
【0010】
しかしながら、体重の軽い人を基準にして検知できるように設定した場合には、体重の重い人が座った場合に、スプリングの反発力により突き上げ力が大きくなってしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み、利用者の体重差により座席シートの沈み込み量に差が生じても後段の制動部の機構を所定通り作動させることができるとともに、体重の重い利用者が座った場合であっても、下面からの突き上げ力を軽減することができる座面センサーユニットおよびこの座面センサーユニットを備えた車椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る座面センサーユニットは、
利用者が座席シートに座ったことを機械的に検知し、利用者が前記座席シートから立ち上がった場合に、制動部を作動させて車輪に制動力を発揮させる座面センサーユニットであって、
本体フレームに固定されるとともに、第1の案内溝および前記第1の案内溝に対して屈曲した第2の案内溝が形成された固定部材と、
前記利用者が前記座席シートに座っているときに沈み込む座面センサ部を一端部に備え、他端部に扇状膨出部分が形成されているとともに前記固定部材に対して回動自在に軸支された回動部材と、
前記固定部材の前記第1の案内溝と前記第2の案内溝との間を往復移動可能な態様で装着される駒部材と、
前記駒部材に一端部が取り付けられ、他端部が前記車輪に制動力を発揮させる制動部に接続された力伝達ワイヤと、を備え、
前記利用者が前記座席シートに座った場合に、前記利用者から加えられる荷重により前記座席シートが前記座面センサ部側に沈み込むことにより前記回動部材が回動し、その回動動作に伴って、前記回動部材の他端部が前記駒部材を上方に押圧し、その押圧された前記駒部材は、前記回動部材の外周面に沿って移動するように構成されており、
前記座面センサ部に前記利用者から所定以上の荷重が加えられたときに、前記駒部材が前記固定部材における前記第1の案内溝から前記第2の案内溝側に強制的に移動し、それ以後、前記制動部から前記座面センサ部に対して反力が非伝達とされることを特徴としている。
【0014】
このような構成の座面センサーユニットによれば、座面センサ部に利用者から所定以上の荷重が加えられた後は、制動部から座面センサ部に対してそれ以上の反力が非伝達とされるので、座席シートに対する下方向からの突き上げ力が小さくなる。よって、体重の重い人が座った場合でもクッション性が損なわれることはない。
【0015】
また、本発明の座面センサーユニットでは、前記回動部材に引張りバネが具備されていることが好ましい。
このように回動部材に引張りバネが具備されていれば、回動部材が回動する場合の姿勢を安定化させることができる。
【0016】
さらに、本発明に係る車椅子は、上記に記載の座面センサーユニットを備えたことを特徴としている。
このように上記に記載の座面センサーユニットを備えた車椅子であれば、仮に体重の重い人がその車椅子を利用した場合であっても、体重の軽い人に比べて大きな突き上げ力を座席シートの下面に感じることがないので、座り心地が良好である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る座面センサーユニットおよびこの座面センサーユニットを備えた車椅子によれば、利用者が着座して駒部材が第1の案内溝から外方に屈曲した第2の案内溝内を移動した後は、第2の案内溝内の駒部材は、それ以上上方に移動することはなく、それ以後、制動部から座席シートに対する反力が非伝達となる。
【0018】
よって、本発明によれば、駒部材が第2の案内溝内を移動するときには下方向からの突き上げ力が小さくなるので、座席シートに体重の重い人が座った場合でもクッション性が損なわれることがない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態(実施例)を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る補助ブレーキを備えた車椅子の斜視図である。
図2は、
図1に示した車椅子から利用者が立ち上がろうとしたときの状況を示す側面図である。
【0021】
なお、本明細書において、特に説明がない場合において「前後」あるいは「左右」とは、車椅子に座った利用者の視点で規定している。すなわち、座席シート2に座った利用者の腹側が「前」、背中側が「後」、左手側が「左」、右手側が「右」であるとする。また、「下」とは、重力が作用する鉛直方向をいい、「上」とはその反対の方向である。さらに、前進とは車椅子が前の車輪側に進むことであり、後進とは車椅子が後の車輪側に動いてしまうことをいう。
【0022】
図1に示したように、車椅子1はその車椅子本体1aが、左右方向に略対称形に配置された複数のパイプ状の本体フレーム3などにより構成されている。
車椅子本体1aには、例えば、病人、高齢者、身体障害者などの利用者45が座る座席シート2と、座席シート2に座る利用者45が肘掛けや手すりなどの手掛かりとして使用する肘掛部2bなどを有している。これらの肘掛け部2bは座席シート2の両側に形成されている。なお、座席シート2は、左右のフレーム間に架け渡されたスプリング付きワイヤとその上に載置されるクッション材とから構成されている。
【0023】
車椅子1には、後の車輪4と前の車輪5とを有しているが、前の車輪5は後の車輪4に比べて小さく形成されている。
後の車輪4は、ゴム製のチューブを支持する金属製のリム部4bと、金属製のスポーク部4cと、前進時などに手動で操作する環状のハンドリム部4dを有しており、このハンドリム部4dは、リム部4bに固定されている。
【0024】
座席シート2に着座して乗車した利用者45は、両側に配置されている後の車輪4の各ハンドリム部4dを握って送り操作することで、左右の後の車輪4を回動して車椅子1を操作する。
【0025】
図1に示すように、車椅子1の座席シート2の後方部分には、左右のハンドル部6が設けられている。左右のハンドル部6は、例えば利用者45を介助する介助者が握って車椅子1を操作する。
【0026】
座席シート2の前方には、利用者45の足を配置して支持するためのフットプレート7a、7aとレッグベルト11とが設けられている。車椅子1には、利用者45が乗車中に手動で動作する利用者用の手動ブレーキ8が設けられている。
【0027】
このような利用者用の手動ブレーキ8をONの状態に駆動させれば、後の車輪4が回転不能になるので、停車した時などに車椅子1が前後方向に動いてしまうことがない。
また、この車椅子1では、手動ブレーキ8の他に、補助ブレーキ10が具備されている。
【0028】
この補助ブレーキ10を駆動させることにより、例えば、病人、高齢者、身体障害者などの利用者45が手動ブレーキ8を駆動させる操作を忘れたまま立ち上がっても、車椅子1の不用意な前後方向への移動を防止することができる。換言すれば、補助ブレーキ10をONの状態に駆動させることにより、利用者45は、移動不能の車椅子1を手で押えることができるので、安全に立ち上がることができる。
【0029】
なお、このような補助ブレーキ10の構成の一例については公知であり、例えば、本出願人から出願され既に登録されている特許文献2に詳しく説明されているので、本明細書では、概略のみを説明し詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施例では、特許文献2の補助ブレーキと同様に、後の車輪4に対し制動力を発揮させるブレーキの機構として、ドラム式のブレーキ機構が採用されている。ドラム式のブレーキ機構は、
図3に示したように、後の車輪4の内側に出力側の主要部が配置されるものであり、例えば金属製の箱体31内に構成された制動機構90を、変位伝達ワイヤ80などを介して外部から操作することにより、車輪の軸部に配置されたドラム43をさらに操作し、これにより後の車輪4に対する制動力を起動(ON)させたり、解除(OFF)したりしている。
【0031】
すなわち、このドラム式のブレーキ機構では、変位伝達ワイヤ80が
図3に示したバネ41の付勢力により通常、車輪4方向(H1方向)に引っ張られていて、ブレーキがONになっている。
【0032】
一方、変位伝達ワイヤ80が座席シート2方向(H2方向)に引っ張られることにより、ブレーキがOFFになる。
本発明の一実施例に係る補助ブレーキ10の出力側は上記のように構成されているが、以下に、補助ブレーキ10の入力側について説明する。
【0033】
図4は、補助ブレーキ10の入力側の構成を分解して示したものであり、詳しくは、座席シート2の下面に配置される座面センサーユニット100の分解斜視図である。
なお、この座面センサーユニット100の組付けた状態を
図8に示す。
図5、
図6、
図7において、各(A)、(B)図は、座面センサーユニット100の正面図と背面図の関係にある。
【0034】
図4に示したように、本実施例に採用された座面センサーユニット100は、座席シート2などを支持する本体フレーム3に固定される固定部材50と、固定部材50に具備された軸部材40に回動自在に軸支された回動部材30と、回動部材30の外周面に対し移動可能に配置される駒部材60と、回動部材30の他端部34を常時下方に引っ張る引張りバネ70と、一端部16が駒部材60に係止され、他端部17が補助ブレーキ10の出力側に接続される力伝達ワイヤ15とから構成されている。なお、上記軸部材40は、固定部材50と一体に形成されていても良い。また、引張りバネ70は、本発明において必須ではない。
【0035】
上記固定部材50は、3つの領域に区画された直線部分から構成されるもので、全体として変形L字状に形成されている。
図4において固定部材50の左側の直線部分に位置する一端部52には、回動部材30の孔30bと一致し、後に回動支点Oとなる回動支点用の孔52aが形成されている。一方、固定部材50の最も右側に位置する直線部分には、第1の案内溝56と、第1の案内溝56に対して屈曲した第2の案内溝58とが形成されている。この第2の案内溝58は、固定部材50の他端部54側に形成されている。
また、固定部材50の3つの直線部分のうち中間に位置する直線部分には、2つの孔56a、56bが形成されている。
【0036】
このように形成された固定部材50には、一端部52に形成された孔52a内に軸部材40の先端部が挿通され、さらにその軸部材40の先端部にワッシャhが挿通され、さらに、軸部材40の先端部が、回動部材30の回動支点用の孔30bに挿通される。そして、この変形L字状の固定部材50は、例えば上記した孔56a、56bに紙面の裏側から紙面の表側に向かって挿通されるネジなどにより、車椅子本体1aの本体フレーム3に固定設置されている。
【0037】
上記回動部材30は、一端部32側の半部が短冊状に形成され、他端部34側の半部には、扇状膨出部分30aが形成されている。
また、回動部材30の一端部32には、ローラなどからなる座面センサ部18が回転自在に取り付けられている。さらに、回動部材30の略中間部に孔30bが形成され、この孔30bに上記軸部材40が挿通されることにより、
図5(B)などに示す回動支点Oが形成される。そして、回動部材30は、回動支点Oにより回動自在となっている。
【0038】
上記駒部材60は、
図4において固定部材50の紙面手前側に配置されるワッシャaと、固定部材50と回動部材30との間に配置されるワッシャb、cと、回動部材30の紙面裏側に配置されるワッシャdなどを有し、さらに円筒状のスペーサe、f、g、さらには軸ピン62などから構成されている。なお、スペーサfは、回動部材30の扇状膨張部分30aの外周縁に沿うように設置される。
【0039】
これらの各要素が組み付けられた駒部材60は、
図8に示したように、第1の案内溝56と第2の案内溝58との間を往復移動することが可能である。
なお、一体的に組み付けられた駒部材60は、回動部材30に対し、その扇状膨出部分30aの半径部分30eと、半径部分30eから下方に屈曲した円弧部分30dとに沿って、曲面的に案内される。このとき円弧部分30dは、回動支点Oを中心とした円弧となっている。また、固定部材50の第1の案内溝56は、第2の案内溝58との境界位置に、回動部材30が回動した際に円弧部分30dと半径部分30eとの境界が位置するように組み付けられている。
【0040】
上記引張りバネ70は、その一端部72が、例えば
図4に示したように、回動部材30の扇状膨出部分30aに形成された孔30cに取り付けられる。また、引張りバネ70の他端部74は、例えば、本体フレーム3等の図示しない固定部材に取り付けられている。
【0041】
図4に示した力伝達ワイヤ15の一端部16は、駒部材60に挿通されたスペーサgの外周面に係止されている。また、力伝達ワイヤ15の他端部17は、例えば
図3あるいは
図5(A)などに示したように、補助ブレーキ10の出力側に配置された制動機構90に接続されている。
【0042】
このように組み付けられた力伝達ワイヤ15の一端部16は、上述したように、駒部材60のスペーサgとともに、回動部材30の半径部分30eと、扇状膨出部分30aの円弧部分30dに沿って移動することになる。
【0043】
このように構成された座面センサーユニット100では、力伝達ワイヤ15が、
図5(A)に示したように、H1方向に引っ張られているときが、後の車輪4に制動力が発揮されているときである(ブレーキON)。また、力伝達ワイヤ15が、
図7(A)に示したように、H2方向に引っ張られているときが、後の車輪4に制動力が発揮されていないときである(ブレーキOFF)。
【0044】
以下に、このような構成の座面センサーユニット100を備えた補助ブレーキ10の作用について説明する。
今、
図2に示したように座席シート2の上に利用者45が座っていない状態、換言すれば、座席シート2から利用者45が立ち上がっているとする。このときの座面センサーユニット100の姿勢を初期状態とし、
図5(A)、(B)に示す。
【0045】
この
図5(A)、(B)に示した座面センサーユニット100の初期状態では、駒部材60が、変形L字状の固定部材50における第1の案内溝56の最下方位置にある。このとき、力伝達ワイヤ15は、
図3に示したバネ41の付勢力により、制動機構90側に引っ張られている。力伝達ワイヤ15が制動機構90側に、すなわちH1方向に引っ張られている場合には、補助ブレーキ10はONとなっている。よって、この状態で車椅子1は移動することができない。
【0046】
以下、このような初期状態から、
図5(A),(B)→
図6(A),(B)→
図7(A),(B)のように、利用者45が座席シート2に座っていない状態(立った状態)から、着座していく工程について説明する。
【0047】
今、
図5(A)のような初期状態から、座席シート2の上に利用者45が着座したとする。すると、先ず、
図5(A)の初期状態から
図6(A)に示したように、座席シート2の下面に配置された座面センサ部18が座席シート2に押圧され、これにより座面センサ18が下方に押し下げられる。このとき、回動部材30の他端部34側は、回動支点Oを支点として、上方に押し上げられる。
【0048】
このように、
図5(A)、(B)の状態から、回動部材30の他端部34側が、回動支点Oを支点として上方に押し上げられていくと、先ず、駒部材60は、回動部材30の扇状膨出部分30aの半径部分30eと当接し、この半径部分30eに押圧され第1の案内溝56に沿って、上方に押し上げられていく。
【0049】
そして、このように駒部材60が半径部分30eに沿って上方に押し上げられていくと、
図6(A)、(B)に示したように、駒部材60が半径部分30eの際まで到達する。すると、これに続けて駒部材60は、扇状膨出部分30aの半径部分30eから今度は円弧部分30dに支持される。
【0050】
しかし、駒部材60が円弧部分30dに支持される時点では、その駒部材60は、外方に屈曲して形成された第2の案内溝58内に位置しているので、回動部材30が
図6(A)において反時計方向の回動を続けても、駒部材60はそれ以上移動しないことになる。
【0051】
このように駒部材60が、屈曲した第2の案内溝58内に移動した状態になると、回動部材30によって、それ以上上方に移動することはなく、すなわち力伝達ワイヤ15をそれ以上引っ張ることがない。力伝達ワイヤ15がそれ以上引っ張られることはないので、回動部材30に伝わる力も増えることはなく、したがって座面シート2への突き上げ力も増大することはない。(なお、厳密に言えば、引っ張りバネ70の作用により、扇状膨出部分30aにはこの引っ張りバネによる付勢力が作用している。)。
【0052】
そして、
図7(A)、(B)のように、利用者45が座席シート2に完全に着座した状態では、体重の軽い人の場合であれ、体重の重い人の場合であれ、駒部材60は、固定部材50の第2の案内溝58内に位置しており、回動部材30の扇状膨張部分30aから駒部材60に対してそれ以上の力が作用することはない。換言すると、駒部材60は、回動部材30の円弧部分30dに当接して第2の案内溝58に位置し、回動部材30のさらなる回動すなわちより体重の重い人による座席シート2の沈み込みがあっても、位置が変化することはないため、回動部材30に作用する反力に変化はない。したがって、下面からの突き上げ力を一定以下に抑えることができる。これにより、体重の重い利用者45が座った場合でも、クッション性を良好にすることができる。
【0053】
さらに、
図7(A)、(B)のように座席シート2に利用者45が着座して、力伝達ワイヤ15の他端部17が上方に引っ張られているときは、後の車輪4への補助ブレーキはOFFであるため、車椅子本体1aは所望の場所に移動することができる。
【0054】
以上、
図5(A)→
図6(A)→
図7(A)となる座面センサーユニット100の姿勢の変化について説明したが、次に、上記と反対に、
図7(A)→
図6(A)→
図5(A)となる座面センサーユニット100の姿勢の変化について、すなわち、座席シート2に座っている利用者45が立ち上がる場合について説明する。
【0055】
座席シート2に利用者45が完全に座った状態では、座面センサーユニット100は
図7(A)、(B)の状態にある。このとき、補助ブレーキ10はブレーキOFFである。すなわち、車椅子1は所望の場所に移動することができる。この
図7(A)、(B)の状態において、駒部材60は第2の案内溝58内に位置している。また、駒部材60は回動部材30の円弧部分30dに当接している。
【0056】
駒部材60が第2の案内溝58内に位置している状態から、利用者45が座席シート2から立ち上がろうとすると、座面センサ部18に対する上方からの荷重が急激に小さくなる。また、引っ張りバネ70により回動部材30の他端部34側が、下方側に常時引っ張られているので、回動部材30の他端部34側は、
図7(A)において時計方向に速やかに回動する。
【0057】
このように回動部材30の他端部34側が、
図7(A)において時計方向に回動すると、駒部材60は、第1の案内溝56に沿って下方に案内される。
これにより、力伝達ワイヤ15の他端部17がH1方向(下方向)に引っ張られる。これにより、制動機構90が起動する。そして、後の車輪4に補助ブレーキ10による制動力が加えられる(ブレーキON)。
【0058】
よって、
図7(A)→
図6(A)→
図5(A)のように、利用者45が座席シート2から立ち上がった場合には、仮に手動ブレーキ8を掛け忘れたままだったとしても、自動的に補助ブレーキ10を発揮させることができる。したがって、車椅子1が不用意に前後方向に移動してしまうことがない。また、利用者45の安全を確保することができる。
【0059】
このように、本実施例の車椅子1では、利用者45が車椅子1の座席シート2から立ち上がると、自動的に補助ブレーキ10が発揮されるため、手動ブレーキ8の掛け忘れにより、利用者45が転倒事故を起こすといったことを未然に防止することができる。
【0060】
以上、本発明の一実施例に係る座面センサーユニット100とこの座面センサーユニット100を備えた車椅子1について説明したが、本発明に係る座面センサーユニット100によれば、利用者45が座席シート2に着座した場合に、体重の軽い人であっても回動部材30が充分に下方に沈み込ませることができるので、この沈み込み動作に伴って力伝達ワイヤ15を介して制動機構90を確実に動作させることができる。
【0061】
また、体重の重い人が着座している場合に、駒部材60は回動部材30の扇状膨張部分30aの円弧部分30dに当接しており、このとき円弧部分30dに作用する下向きの力は一定値に抑えられており、反力として下方からの突き上げ力も一定値に抑えられる。
【0062】
よって、体重の重い人が座った場合でもクッション性が良好である。
すなわち、本実施例の車椅子1では、重い体重の人が着座した場合でも、一定以上の荷重に対して、それ以上かからないような構成となっていることから、クッション性のある座席であった場合でも、不快感なく着座することができる。
【0063】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、補助ブレーキ10のブレーキ機構としてドラム式のブレーキ機構が採用されているが、このブレーキ機構はドラム式に限定されず、例えばディスクブレーキあるいは他の機構を採用することもできる。
また、駒部材60は、摺動性をよくするためにベアリングで構成することが好ましい。