特開2017-56679(P2017-56679A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-56679蛍光体シート、該蛍光体シートを備える照明装置及び液晶表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-56679(P2017-56679A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】蛍光体シート、該蛍光体シートを備える照明装置及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/04 20060101AFI20170303BHJP
   C09K 11/00 20060101ALI20170303BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20170303BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20170303BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170303BHJP
   F21V 9/16 20060101ALI20170303BHJP
   F21V 9/08 20060101ALI20170303BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20170303BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20170303BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20170303BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20170303BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170303BHJP
【FI】
   B32B3/04
   C09K11/00 A
   C09K11/08 Z
   C09K11/56CPC
   C09K11/08 J
   B32B7/02 103
   F21V9/16 100
   F21V9/08 200
   F21V9/08 100
   F21S2/00 481
   G02F1/13357
   H01L33/00 410
   H01L33/00 L
   F21Y101:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-185324(P2015-185324)
(22)【出願日】2015年9月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】堀 智充
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正浩
(72)【発明者】
【氏名】樋山 晃男
(72)【発明者】
【氏名】岸本 孝一
【テーマコード(参考)】
2H191
3K244
4F100
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
2H191FA71Z
2H191FA83Z
2H191FA85Z
2H191FD16
2H191LA06
2H191LA11
3K244AA01
3K244BA02
3K244BA08
3K244BA26
3K244BA29
3K244BA31
3K244BA32
3K244BA50
3K244CA02
3K244CA03
3K244DA01
3K244DA13
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA13
3K244EA14
3K244GA02
3K244GA04
3K244LA06
4F100AK04
4F100AK12
4F100AL01
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA05
4F100BA06
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4F100DB16E
4F100GB41
4F100JD04
4F100JD04B
4F100JD04D
4F100JL11A
4F100JL11E
4F100JN13C
4H001CA01
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA16
5F142DA15
5F142DB36
5F142EA31
5F142FA24
5F142GA12
(57)【要約】
【課題】水蒸気に対する封止機能を有しつつ、照明装置に固定することができ、しかも従来のものよりも小さな厚みを有する蛍光体シート、該蛍光体シートを備える発光装置及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】蛍光体層11aと、該蛍光体層11aの両面を覆い蛍光体層11aへの水蒸気の浸入を抑制する2枚の水蒸気バリアフィルム11bとからなる積層体11と、該積層体11の周縁部を封止する封止部材12とを備える蛍光体シート1において、封止部材12は、水蒸気バリアフィルム11bの周縁部を挟持する挟持部12aと、積層体11の端面から積層体11の表面に沿って延びる縁部12bとを有することを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体層と、該蛍光体層の両面を覆い前記蛍光体層への水蒸気の浸入を抑制する2枚の水蒸気バリアフィルムとからなる積層体と、該積層体の周縁部を封止する封止部材とを備える蛍光体シートにおいて、
前記封止部材は、前記水蒸気バリアフィルムの周縁部を挟持する挟持部と、前記積層体の端面から前記積層体の表面に沿って延びる縁部とを有することを特徴とする蛍光体シート。
【請求項2】
前記挟持部と前記縁部とが一体に構成されている、請求項1に記載の蛍光体シート。
【請求項3】
前記縁部に貫通孔が設けられている、請求項1又は2に記載の蛍光体シート。
【請求項4】
前記挟持部に貫通孔が設けられている、請求項1又は2に記載の蛍光体シート。
【請求項5】
前記封止部材が封止テープからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項6】
前記積層体の端面から前記縁部の前記積層体の径方向外側端までの距離が1mm以上である、請求項5に記載の蛍光体シート。
【請求項7】
前記封止部材全体が一体で構成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項8】
前記縁部が前記挟持部とは異なる第2の部材からなり、該第2の部材に開口部が設けられている、請求項1に記載の蛍光体シート。
【請求項9】
前記挟持部が封止テープからなる、請求項8に記載の蛍光体シート。
【請求項10】
前記挟持部と前記縁部の重複部分の前記積層体の表面に沿った方向の幅が1mm以上である、請求項9に記載の蛍光体シート。
【請求項11】
前記蛍光体層が、少なくとも蛍光体と樹脂とを有する、請求項1〜10のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項12】
前記蛍光体層が硫化物蛍光体を含有する、請求項1〜11のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項13】
前記蛍光体層が少なくとも緑色蛍光体を含有する、請求項1〜12のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項14】
前記蛍光体層が赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する、請求項13に記載の蛍光体シート。
【請求項15】
前記封止部材がアルミ層を有する、請求項1〜14のいずれかに記載の蛍光体シート。
【請求項16】
前記封止部材が、1g/m2/day以下の水蒸気透過率を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の蛍光体シート。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の蛍光体シートを備える照明装置。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載の蛍光体シートを備える液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体シート、該蛍光体シートを備える照明装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display,以下、「LCD」とも言う)においては、液晶パネルを背後から全面にわたり白色光を照射するバックライト光源が用いられている。このバックライト光源として発光ダイオード(Light Emitting Diode,以下、「LED」とも言う)を使用する場合、主に以下の3つの手法が用いられている。即ち、まず第1の手法は、赤(以下、「R」とも言う)、緑(以下、「G」とも言う)、青(以下、「B」とも言う)の3色の光をそれぞれ発するLEDを配置して、これらを点灯することにより、3色の光を合成して白色光を得るものである。
【0003】
第2の手法は、例えば青色LEDを蛍光体含有樹脂により包囲して、青色光を白色光に色変換するものであり、上記青色LEDを蛍光体含有樹脂で包囲した構造体は、白色LEDと呼ばれている。この白色LEDに用いられる蛍光体の例として、黄色蛍光体YAG:Ce等を挙げることができる。
【0004】
白色LEDを用いた光源の構成例を図1に示す。上記第2の手法では、微小面積のLEDに対して蛍光体含有樹脂が配置される。その結果、蛍光体をむらなく均一に配置することが困難であり、各白色LED間で色ばらつきが発生しやすい。このため、近年では、第3の手法として、蛍光体含有樹脂をシート基材で挟み込んだものや、蛍光体含有樹脂をシート形状に加工した蛍光体シートを用いて、青色LEDにより色変換する手法が注目を集めている(例えば、特許文献1及び2参照)。蛍光体シートを用いた光源の構成例を図2に示す。
【0005】
近年、LCDの高画質化が益々進んでおり、4Kパネルによる高詳細化、ローカルディミング(local dimming)による高コントラスト化、そして、幅狭の蛍光スペクトルを有する蛍光体による広色域化が特に重要な技術となっている。LCDの色域は、バックライト光源の発光スペクトル及び液晶パネルのR、G及びBカラーフィルタの分光透過率によって決定される。
【0006】
前者に関しては、R、G及びBの各波長領域において、適度なピーク波長と狭幅の発光スペクトルを有するバックライト光源を採用することが、広色域化のためには望ましい。市販のLCDにおいては、上述の青色LEDと青色光励起蛍光体を組み合わせた白色LEDを採用したバックライト光源が主に用いられている。従って、広色域を実現するためには、R及びGの各波長領域において適度なピーク波長と狭幅の蛍光スペクトルを有する蛍光体を採用することが重要である。
【0007】
第2及び第3の手法において、硫化物緑色蛍光体SrGa24:Eu等、及び硫化物赤色蛍光体CaS:Eu等の硫化物蛍光体は、ナローバンドな発光特性を有するため、広色域LCDを実現する上で非常に優れた蛍光体である。また、黄色蛍光体YAG:Ceを含有した白色LEDを用いたLCDと、硫化物緑色蛍光体SrGa24:Eu及び硫化物赤色蛍光体CaS:Euを含有した硫化物蛍光体シートにより、色域を拡大することができる。
【0008】
しかし、上記硫化物蛍光体は、高温高湿環境において水蒸気により劣化しやすい問題がある。硫化物蛍光体が水蒸気と反応することによる不具合として、次の2点が挙げられる。即ち、まず第1に、硫化物蛍光体の発光効率が低下し、それにより蛍光体シートを用いた光源の色調が変動する。特に、蛍光体シートの周縁部の蛍光体劣化のような局所的な劣化が生じると、色むらとして認識され易い。
【0009】
また第2に、硫化物蛍光体と水蒸気とが反応することにより、硫化水素(H2S)ガスが放出される。H2Sガスは、銀や銅等の金属に対する腐食性ガスとして知られており、銀や銅は、電子部品に多用されているため、蛍光体シートを用いた光源の電子部品を腐食するおそれがある。
【0010】
こうした不具合を防止するため、蛍光体層への水蒸気の浸入を抑制するための何らかの手段が必要となる。白色LEDにおいて、これらの蛍光体を採用することは困難であるが、上記第3の手法の場合には、蛍光体層を該蛍光体層への水蒸気の浸入を防止するフィルムでカバーする等の対策を採ることが可能である。例えば、蛍光体含有樹脂上に珪素化合物等よりなる保護層を設ける手法(特許文献3参照)や、蛍光体含有樹脂の表面に水蒸気バリアフィルムを形成する手法(特許文献4及び5参照)が提案されている。
【0011】
図3に、硫化物蛍光体含有樹脂で構成された蛍光体層の表面に、水蒸気バリアフィルムが設けられた蛍光体シートの構成例を示す。この図に示した蛍光体シート100においては、蛍光体層110の両面に水蒸気バリアフィルム120を設けることにより、蛍光体層110に水蒸気が浸入するのを防止している。
【0012】
また、蛍光体層110及び水蒸気バリアフィルム120の積層体の周縁部からの水蒸気の浸入を防止する必要もある。そこで、図4に示すように、水蒸気透過率の低い封止テープ130を用いて、蛍光体層110及び水蒸気バリアフィルム120からなる積層体の周縁部を封止することによって、積層体の周縁部からの水蒸気の浸入を防止する技術が提案されている(特許文献6参照)。
【0013】
上記蛍光体シート200においては、シールテープ130としては、アルミニウムやシリカ蒸着されたPET(PolyEthylene Terephthalate)等の水蒸気透過率1g/m2/day(温度40℃/相対湿度90%)のものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−108635号公報
【特許文献2】特開2009−283438号公報
【特許文献3】特公平6−58440号公報
【特許文献4】特開2009−283441号公報
【特許文献5】特開2011−13567号公報
【特許文献6】特開2015−967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、LCDのバックライト光源に蛍光体シートを固定するためには、蛍光体シートの周縁部に、位置決め用又は固定用の貫通孔が必要な場合が多い。しかしながら、図4に示した構造を有する蛍光体シート200において、こうした貫通孔を開けつつ、水蒸気に対する封止機能を維持することは困難である。そこで、図5に示すように、蛍光体シート200に、貫通孔付きフィルム150が後付けされている。
【0016】
しかしながら、蛍光体シート200に貫通孔付きフィルム150を後付けする場合、蛍光体シート全体の厚みが大きくなる問題が生じる。近年、バックライト光源等の照明装置やLCD等の表示装置は、薄型化が益々進行しており、蛍光体シート全体の厚みの増大は、装置の薄型化の流れに逆行しており望ましくない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、水蒸気に対する封止機能を有しつつ、照明装置に固定することができ、しかも従来のものよりも小さな厚みを有する蛍光体シート、該蛍光体シートを備える発光装置及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するための方途について鋭意検討した。その結果、蛍光体層と、該蛍光体層の両面を覆い前記蛍光体層への水蒸気の浸入を抑制する2枚の水蒸気バリアフィルムとからなる積層体の周縁部を封止する封止部材を、水蒸気バリアフィルムの周縁部を挟持する挟持部と、積層体の端面から前記積層体の表面に沿って延びる縁部とで構成することが極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0019】
即ち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
<1> 蛍光体層と、該蛍光体層の両面を覆い前記蛍光体層への水蒸気の浸入を抑制する2枚の水蒸気バリアフィルムとからなる積層体と、該積層体の周縁部を封止する封止部材とを備える蛍光体シートにおいて、
前記封止部材は、前記水蒸気バリアフィルムの周縁部を挟持する挟持部と、前記積層体の端面から前記積層体の表面に沿って延びる縁部とを有することを特徴とする蛍光体シートである。
【0020】
<2> 前記挟持部と前記縁部とが一体に構成されている、前記<1>に記載の蛍光体シートである。
【0021】
<3> 前記縁部に貫通孔が設けられている、前記<1>又は<2>に記載の蛍光体シートである。
【0022】
<4> 前記挟持部に貫通孔が設けられている、前記<1>又は<2>に記載の蛍光体シートである。
【0023】
<5> 前記封止部材が封止テープからなる、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0024】
<6> 前記積層体の端面から前記縁部の前記積層体の径方向外側端までの距離が1mm以上である、前記<5>に記載の蛍光体シートである。
【0025】
<7> 前記封止部材全体が一体で構成されている、前記<1>〜<4>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0026】
<8> 前記縁部が前記挟持部とは異なる第2の部材からなり、該第2の部材に開口部が設けられている、前記<1>に記載の蛍光体シートである。
【0027】
<9> 前記挟持部が封止テープからなる、前記<8>に記載の蛍光体シートである。
【0028】
<10> 前記挟持部と前記縁部の重複部分の前記積層体の表面に沿った方向の幅が1mm以上である、前記<9>に記載の蛍光体シートである。
【0029】
<11> 前記蛍光体層が、少なくとも蛍光体と樹脂とを有する、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0030】
<12> 前記蛍光体層が硫化物蛍光体を含有する、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0031】
<13> 前記蛍光体層が少なくとも緑色蛍光体を含有する、前記<1>〜<12>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0032】
<14> 前記蛍光体層が赤色蛍光体及び緑色蛍光体を含有する、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0033】
<15> 前記封止部材がアルミ層を有する、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の蛍光体シートである。
【0034】
<16> 前記封止部材が、1g/m2/day以下の水蒸気透過率を有する、前記<1>〜<15>のいずれか一項に記載の蛍光体シートである。
【0035】
<17> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の蛍光体シートを備える照明装置である。
【0036】
<18> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の蛍光体シートを備える液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0037】
本発明による蛍光体シートは、水蒸気に対する封止機能を有しつつ、照明装置に固定することができ、しかも従来のものよりも小さな厚みを有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】白色LEDを用いた光源の構成例を示す図である。
図2】蛍光体シートを用いた光源の構成例を示す図である。
図3】硫化物蛍光体含有樹脂の表面に水蒸気バリアフィルムが設けられた蛍光体シートの構成例を示す図である。
図4】周縁部に水蒸気の浸入を防止するシールテープが設けられた蛍光体シートを示す図である。
図5】バックライト光源に固定するための穴付きフィルムが設けられた蛍光体シートを示す図である。
図6】本発明に係る蛍光体シートの周縁部付近の断面図である。
図7】縁部に貫通孔を有する蛍光体シートを示す図である。
図8】挟持部に貫通孔を有する蛍光体シートを示す図である。
図9】2枚の封止テープで封止部材を構成して縁部に貫通孔が設けられた蛍光体シートの周縁部の断面図を示している。
図10】2枚の封止テープで封止部材を構成して挟持部に貫通孔が設けられた蛍光体シートの周縁部の断面図を示している。
図11】縁部を挟持部とは異なる部材で構成した蛍光体シートの周縁部付近の断面図である。
図12】蛍光体シートサンプルの仕様、及び封止機能の評価結果を示す図である。
図13】封止シールの構造を示す図である。
図14】H2Sガス放出レベルの評価方法について説明する模式図である。
図15】従来例、比較例及び実施例1〜3の構造、並びに各種評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(蛍光体シート)
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図6は、本発明に係る蛍光体シートの周縁部付近の断面図を示している。この図に示す蛍光体シート1は、蛍光体層11aと、該蛍光体層11aの両面を覆い蛍光体層11aへの水蒸気の浸入を抑制する2枚の水蒸気バリアフィルム11bとからなる積層体11と、該積層体11の周縁部を封止する封止部材12とを備える蛍光体シートである。ここで、封止部材12は、水蒸気バリアフィルム11bの周縁部を挟持する挟持部12aと、積層体11の端面Eから積層体11の表面に沿って延びる縁部12bとを有することを特徴とする。
【0040】
本発明においては、図6に示すように、積層体11の表面(即ち、水蒸気バリアフィルム12bの蛍光体層12a側とは反対側の表面)に沿った面Fを境界として、積層体11側とは反対側の部分を挟持部12a、積層体11側の部分を縁部12bとする。また、縁部12bの幅(即ち、積層体11の端面Eから縁部12bの外周端までの距離)Wは、挟持部12aの厚みTよりも大きく構成する。
【0041】
蛍光体層11aは、少なくとも蛍光体と樹脂とを有し、該蛍光体層11aに含まれる蛍光体がLEDからの光を吸収して所定の波長の光を放射する層である。
【0042】
蛍光体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硫化物系蛍光体、酸化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、フッ化物系蛍光体等を用いることができ、所望とする吸収帯域、発光帯域等に応じて、1種又は複数種を選択して組み合わせて使用することができる。
【0043】
硫化物系蛍光体の具体例としては、例えば、CaS:Eu、SrS:Eu、SrGa24:Eu、CaGa24:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)Ga24:Eu、(Sr,Ca,Ba)S:Eu、Y22S:Eu、La22S:Eu、Gd22S:Eu等を挙げることができる。また、酸化物系蛍光体の具体例としては、(Ba,Sr)3SiO5:Eu、(Ba,Sr)2SiO4:Eu、Tb3Al512:Ce、Ca3Sc2Si312:Ce等を挙げることができる。
【0044】
更に、窒化物系蛍光体の具体例としては、例えば、Ca2Si58:Eu、Sr2Si58:Eu、Ba2Si58:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、Cax(Al,Si)12(O,N)16:Eu(0<x≦1.5)、CaSi222:Eu、SrSi222:Eu、BaSi222:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si222:Eu、CaAl2Si48:Eu、CaSiN2:Eu、CaAlSiN3:Eu等を挙げることができる。
【0045】
更にまた、フッ化物系蛍光体の具体例としては、K2TiF6:Mn4+、Ba2TiF6:Mn4+、Na2TiF6:Mn4+、K3ZrF7:Mn4+、K2SiF6:Mn4+等を挙げることができる。
【0046】
上記以外のその他の蛍光体として、(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ce(YAG:Ce)等のYAG系蛍光体、Lu(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のサイアロン系蛍光体を挙げることができる。なお、上記蛍光体材料の記載において、「:」の前は母体を示し、後は付活剤を示す。
【0047】
本発明においては、水蒸気により劣化し易い硫化物系蛍光体を好ましく用いることができ、広い色域を実現することができる。また、青色LEDを用いて白色光を得るために、蛍光体層11aが少なくとも緑色蛍光体を含むことが好ましく、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を含むことがより好ましい。
【0048】
青色LEDを用いて白色光を得るために組み合わせる硫化物系蛍光体としては、青色励起光の照射により波長620〜660nmの赤色蛍光ピークを有する硫化物系蛍光体、好ましくはCaS:Eu、SrS:Euや、青色励起光の照射により波長530〜550nmの緑色蛍光ピークを有する硫化物系蛍光体、好ましくはSrGa24:Euを挙げることができる。
【0049】
また、青色LEDを用いて白色光を得るために組み合わせる酸化物系蛍光体としては、青色励起光の照射により波長590〜620nmの赤色蛍光を発する酸化物系蛍光体、好ましくは(Ba,Sr)3SiO5:Eu、(Ba,Sr)2SiO4:Eu等を挙げることができる。
【0050】
なお、青色LEDを用いて白色光を得るために組み合わせる硫化物系蛍光体、又は酸化物蛍光体以外の蛍光体を用いてもよく、例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ce、サイアロン蛍光体等を用いてもよい。
【0051】
また、硫化物系蛍光体、又は酸化物蛍光体は、その表面が被覆されていることが好ましい。表面を被覆するのに用いる化合物としては、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、または酸化ランタン等の酸化物を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
図6に示した蛍光体シート1において、蛍光体として上記の蛍光体の混合物を使用する場合、蛍光体シートを白色で発光させるために、青色励起光の照射により波長620〜660nmの赤色蛍光を発する硫化物系蛍光体または青色励起光の照射により波長590〜620nmの赤色蛍光を発する酸化物系蛍光体と、青色励起光の照射により波長530〜550nmの緑色蛍光を発する硫化物系蛍光体との混合蛍光体を使用することが好ましい。特に好ましい組み合わせは、赤色蛍光を発するCaS:Eu又は(BaSr)3SiO5:Euと、緑色蛍光を発するSrGa24:Euとの混合蛍光体である。
【0053】
蛍光体層11aを構成する樹脂としては、ポリオレフィン共重合体成分又は光硬化性(メタ)アクリル樹脂成分のいずれかの樹脂成分を含むことが好ましい。
【0054】
上記ポリオレフィン共重合体としては、スチレン系共重合体又はその水添物を挙げることができる。このようなスチレン系共重合体又はその水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体又はその水添物、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体又はその水添物を好ましく挙げることができる。これらの中でも透明性やガスバリア性の点から、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の水添物を特に好ましく使用することができる。このようなポリオレフィン共重合体成分を含有させることにより、優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
【0055】
光硬化型アクリレート樹脂成分としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの中でも、光硬化後の耐熱性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。このような光硬化型(メタ)アクリレート樹脂成分を含有させることにより優れた耐光性と低い吸水性を得ることができる。
【0056】
なお、樹脂組成物、即ち蛍光体層11aには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、他の光透過性樹脂、着色顔料、溶媒等を配合してもよい。
【0057】
水蒸気バリアフィルム11bは、蛍光体層11aの両面を覆っており、蛍光体層11aへの水蒸気の浸入を抑制する。この水蒸気バリアフィルム11bは、PET等のプラスチック基板や、フィルムの表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物薄膜を形成したガスバリア性フィルムで構成することができる。また、PET/SiOx/PET等の多層構造のものを用いてもよい。
【0058】
上記した蛍光体層11a及び該蛍光体層11aの両面を覆う2枚の水蒸気バリアフィルム11bは、白色光を放射する蛍光体シート1の本体としての積層体11を構成しており、この積層体11の周縁部は、積層体11bの周縁部から蛍光体層11aに水蒸気が浸入するのを抑制するよう、封止部材12で封止されている。
【0059】
封止部材12の材料としては、積層体11の周縁部から蛍光体層11aへの水蒸気の浸入を防止することができれば、特に制限されない。例えば、樹脂、金属、更には酸化物や窒化物等の金属化合物等の材料で構成することができる。ここで、樹脂としては、上記下水蒸気バリアフィルム11bを構成する材料を使用することができる。また、金属としては、アルミニウム、クロム、鉄等を用いることできる。更に、酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、ITO(Indium Tin Oxide)等が、窒化物としては窒化珪素等を用いることができる。
【0060】
封止部材12は、薄膜構成において水蒸気透過率を非常に小さくすることが容易であることから、アルミ層を有することが好ましい。このアルミ層としては、アルミ箔を使用することができる。アルミ箔は、光沢の白アルミ又は非光沢の黒アルミのいずれを用いることができ、蛍光体シート周縁部の良好な色合いが必要な場合、白アルミを用いることが好ましい。
【0061】
また、上記封止部材12の材料は、1g/m2/day以下の水蒸気透過率を有することが好ましい。これにより、長期に亘って、水蒸気の蛍光体層11aへの浸入を抑制し、蛍光体層11aに含まれる蛍光体の劣化を抑制することができる。
【0062】
上述のように、本発明の蛍光体シート1においては、封止部材12は、挟持部12aと周縁部12bとを有しているが、バックライト光源に位置決め又は固定するための貫通孔は、挟持部12aと縁部12bのいずれに設けることもできる。
【0063】
図7は、縁部12bに貫通孔13を有する蛍光体シート2を示している。ここで、(a)は断面図、(b)は平面図を示している。貫通孔13を縁部12bに設ける場合には、設ける貫通孔13の大きさや形状、また、積層体11の端面Eから蛍光体層12aに水蒸気が浸入しないように、縁部12bの幅W(端面Eから縁部12bの外周端までの距離)を適切に設定する。貫通孔13を縁部12bに設ける場合には、高い位置精度で貫通孔を設けることができ、蛍光体シート2を低コストで容易に製造することができる。
【0064】
図8は、挟持部12aに貫通孔13を有する蛍光体シート3を示している。ここで、(a)は断面図、(b)は平面図を示している。貫通孔13を挟持部12aに設ける場合には、積層体11の周縁部を封止部材12により封止する前に、積層体11の所定の位置に貫通孔13を設けた後、封止部材12により、積層体11の周縁部を封止する。その際、封止部材12が貫通孔13を区画する積層体11の側壁を封止して、形成した貫通孔13から蛍光体層11aに水蒸気が浸入しないように構成する。挟持部12aに貫通孔13を設ける場合には、縁部12bに設ける場合と同様に、高い位置精度で貫通孔を設けることができ、蛍光体シート3を低コストで容易に製造することができる。更に、縁部12bに設ける場合に比べて貫通孔13周辺の強度を高めることができる。
【0065】
貫通孔13が挟持部12a及び縁部12bのいずれに設けられる場合であっても、蛍光体層11aの水蒸気に対する封止機能の点、及び封止部材12の強度の点で、挟持部12aと縁部12bとが一体に構成されていることが好ましく、更に封止部材12全体が一体で構成されていることがより好ましい。
【0066】
挟持部と縁部とが一体に構成された封止部材は、封止テープを用いて簡便に構成することができる。図9は、2枚の封止テープで構成された封止部材22を有する蛍光体シート4の周縁部付近の断面図を示している。この図に示した蛍光体シート4においては、水蒸気バリアフィルム11bの周縁部にそれぞれ1枚の封止テープが貼り付けられて封止部材22が構成されており、縁部22bに貫通孔23が設けられている。
【0067】
封止テープとしては、所定値以下の水蒸気透過率を有する基材に粘着剤が塗布された粘着テープを用いることができる。基材としては、アルミ箔等の金属箔や、水蒸気バリアフィルムを用いることができる。アルミ箔は、光沢の白アルミ又は非光沢の黒アルミのいずれを用いても良いが、蛍光体シート端部の良好な色合いが必要な場合、白アルミを用いることが好ましい。
【0068】
また、水蒸気バリアフィルム11b上の挟持部12aの幅は、1mm〜10mmであることが好ましい。これにより、挟持部12aの端部から蛍光体層11aへの水蒸気の侵入を防止することができ、蛍光体層11a中の蛍光体の劣化を防止することができる。また、蛍光体シートをバックライト光源等の光源装置に固定する際に、積層体11を保持する上での十分な強度を得ることができる。より好ましくは、1mm〜5mmである。
【0069】
封止部材22を封止テープで構成する場合、積層体11の端面Eから縁部22bの外側端までの距離が短い場合には、貼り合わせた封止テープ間に隙間が生じる可能性があるため、2枚の封止テープによる積層体11の端面Eの封止が不十分となるおそれがある。後述する実施例で説明するように、距離が1mm以上であれば、蛍光体層11への水蒸気の浸入を十分に抑制することができる。よって、上記距離は1mm以上であることが好ましい。なお、上記「積層体11の端面Eから縁部22bの外側端までの距離」は、貫通孔23が設けられている部分では、積層体11の端面Eから貫通孔23までの距離を意味している。
【0070】
図10は、2枚の封止テープで構成した封止部材22の挟持部22aに貫通孔23が設けられた蛍光体シート5の周縁部付近の断面図を示している。この蛍光体シート5においても、図9に示した蛍光体シート4と同様に、積層体11の端面Eから縁部22bの外側端までの距離は1mm以上であることが好ましいが、蛍光体シート5においては、貫通孔23を区画する積層体11の側壁全体について、側壁から縁部22bの端部までの距離、即ち、貫通孔23を区画する積層体11の側壁から貫通孔23内部に延在する縁部22bの幅が1mm以上であることが好ましい。これにより、積層体11の周縁部外端のみならず、周縁部に設けられた貫通孔からも蛍光体層11aに水蒸気が浸入するのを十分に抑制することができる。
【0071】
なお、図9及び10に示した蛍光体シートにおいては、封止部材を2枚の封止テープを貼り合わせて構成しているが、1枚の封止テープを折り曲げて封止部材を構成することもできる。この場合、折り返した端部から蛍光体層11aに水蒸気が浸入しないことは言うまでもない。
【0072】
上述のように、蛍光体層への水蒸気が浸入するのを抑制する点、及び封止部材の強度を高める点では、挟持部と縁部とが一体に構成されていることが好ましいが、縁部は、挟持部を構成する部材(第1の部材)とは異なる第2の部材で構成してもよい。図11は、縁部32bを挟持部32aとは異なる部材で構成した蛍光体シート6の周縁部付近の断面図を示している。この図に示した蛍光体シート6においては、縁部32bに貫通孔33が設けられている。
【0073】
挟持部32は、図6〜8に示した封止部材12の材料で構成することもできるし、図9及び10に示した蛍光体シートで使用した封止テープで構成することもできる。また、縁部32bを構成する第2の部材の材料としては、貫通孔による蛍光体シートを固定する際に十分な機械強度を保持し、また挟持部32aと縁部32bの機械的接着強度を保持するものであれば、特に制限されない。例えば、PET、PC(PolyCarbonate)、COP(Cyclo−Olefin Polymers)等の樹脂フィルムを用いることができ、他にもアルミニウムやステンレス板等の金属材料を用いることができる。
【0074】
水蒸気バリアフィルム11b上の挟持部32aの幅は、蛍光体シート4及び5の場合と同様に、1mm〜10mmであることが好ましい。より好ましくは、1mm〜5mmである。また、縁部32b上の挟持部32aの幅は、蛍光体層11aへの水蒸気の侵入を抑制する点で、1mm以上であることが好ましい。
【0075】
なお、封止部材に設けられる貫通孔は、図7〜9及び11に示した蛍光体シートにおいては、縁部12bに突出部(耳部)を設け、この突出部に形成されているが、突出部(耳部)を設けずに、積層体11の周縁部の所定の位置に設けてもよい。
【0076】
(照明装置及び液晶表示装置)
次に、本発明による照明装置及び液晶表示装置について説明する。本発明による照明装置は、上述の本発明による蛍光体シートを備える照明装置であり、蛍光体シートの封止部材の構成に特徴を有している。よって、蛍光体シート以外の構成は何ら限定されない。例えば、図2に示した光源の蛍光体シートに本発明による蛍光体シートを適用することにより、本発明による照明装置を構成することができる。この照明装置は、白色LEDパッケージが拡散板の後方で二次元的に配列された、いわゆる直下型バックライトとなる。
【0077】
また、図2のように、白色LEDパッケージを拡散板の後方で二次元的に配列せず、拡散板の後方に配したアクリル板等の透明基板を導光板とし、白色LEDパッケージを導光板の周囲に配置して、導光板の端面からLEDからの光を導入して、均一に面発光させるように構成することもできる。この場合の照明装置は、いわゆるエッジライト型バックライトとなる。
【0078】
こうした本発明による照明装置は、本発明による蛍光体シートにより従来よりも厚みの小さな蛍光体シートを備えるため、従来よりも薄く構成することができる。そして、本発明による液晶表示装置は、上記本発明による蛍光体シートを備える液晶表示装置として構成することができ、従来のものに比べて薄く構成することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
<封止テープを用いた場合の封止機能の評価>
まず、図9〜11に示した蛍光体シートのように、2枚の封止テープ(図11に示した蛍光体シートにおいては更に第2の部材)を用いて封止部材を構成した場合に、積層体の端面から縁部の外側端までの距離(図11の蛍光体シートにおいては、縁部32b上の挟持部32aの幅)が1mm以上であれば、蛍光体層11への水蒸気の浸入を十分に抑制することができることを示す実験について説明する。
【0081】
まず、60重量%の硫化物緑色蛍光体SrGa24:Euと、40重量%の硫化物赤色蛍光体CaS:Euとを混合し、これに熱可塑性樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合エラストマー(SEBS)(株式会社クラレ製、「セプトンV9827」)と溶剤(トルエン)とを混合して蛍光体ペーストを作製した。次いで、ロールコーターを用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件下で0.2g/m2/dayの水蒸気透過率を有する38μm厚の水蒸気バリアフィルム上に、上記蛍光体ペーストを塗布した。続いて、溶剤を揮発させ、得られた蛍光体層の上に、上記のものと同じ水蒸気バリアフィルムを熱ラミネートし、蛍光体層と2枚の水蒸気バリアフィルムとからなる蛍光体シートを得た。ここで、蛍光体層の厚みは約54μmであり、蛍光体シートの総厚みは約130μmであった。こうして作製した蛍光体シートを加工して40mm×20mmのサンプルを18枚用意した。
【0082】
次に、図12に示すような3仕様のサンプルをそれぞれ6枚ずつ作製した。ここで、従来例に準じた構造を有するサンプルは、図13に示す構造を有する幅6mmの封止テープを中央で折り曲げ、蛍光体シートの周縁部を封止したものである。また、実施例に準じた構造を有するサンプルは、図13に示した構造を有する幅3mmの封止テープを2枚用いて、蛍光体シートの周縁部を封止したものである。このサンプルにおいて、蛍光体シートの端面から縁部(封止シール)の外周端までの距離は1mmとした。さらに、比較例に準じた構造を有するサンプルは、周縁部が封止テープで封止されておらず、端面がむき出しになっているサンプルである。
【0083】
上述のように用意した3仕様のサンプルに対して、水蒸気に対する封止機能の評価を行った。この封止機能の評価は、蛍光体シートから放出されるH2Sガスの放出レベルを評価することにより行った。上述のように、硫化物蛍光体は、高温高湿環境において水蒸気と反応してH2Sガスを放出する。H2Sガスは、銀(Ag)と容易に反応して硫化銀(Ag2S)の薄膜を生成する。H2Sガスの放出量が増加すると、生成するAg2S膜の厚みも増加するため、生成されたAg2Sの厚みを計測することにより、H2Sガスの放出レベルを評価することができる。
【0084】
具体的なH2Sガス放出レベルの評価は、以下のように行った。即ち、まず、図14に模式的に示すように、直径15mmの銀片、蒸留水380μl及びサンプルを密閉可能な円筒状ガラス容器(容量110ml)に投入した。その際、蒸留水は、サンプルに触れないように、小さなガラス容器内に収容した。銀片はサンプル等に触れないように、密閉可能な円筒状ガラス用に蓋に粘着テープで貼り付けた。
【0085】
次いで、ガラス容器を密閉した状態の下で85℃の恒温槽に1週間収容した。1週間後、ガラス容器を恒温槽から取り出し、ガラス容器内の銀片の変色具合から、銀片の表面に形成されたAg2S薄膜の厚みを求め、蛍光体シートからのH2Sガスの発生レベルを評価した。ここで、H2Sガスの放出レベルは、Ag2S薄膜がほぼ形成されていない場合にはレベル1、Ag2S薄膜の厚みが0μm超え約0.005μm以下の場合にはレベル2、約0.005μm超え約0.009μm以下の場合にはレベル3、約0.009μm超え約0.018μm以下の場合にはレベル4と評価した。評価結果を図12に示す。
【0086】
図12に示すように、従来例に準じた構造を有するサンプルについては、6つのサンプル全てについて、硫化水素放出レベルはレベル1であった。また、サンプルの周縁部が封止テープを用いて封止されていない比較例に準じた構造を有するサンプルについては、6つのサンプルのうち、2つはレベル2であったが、残りの4つはレベル3であり、H2Sガスの放出レベルは高かった。これに対して、実施例に準じた構造を有するサンプルについては、6つのサンプルのうち、1つはレベル2であったものの、残りの5つはレベル1であり、縁部の幅が1mm以上であれば、2枚の封止テープを用いても蛍光体層への水蒸気の浸入を十分に抑制できており、良好な封止機能を有していることが分かる。
【0087】
(従来例)
図15に示す従来例の蛍光体シートを作製した。即ち、まず、60重量%の硫化物緑色蛍光体SrGa24:Euと、40重量%の硫化物赤色蛍光体CaS:Euとを混合し、これに熱可塑性樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合エラストマー(SEBS)(株式会社クラレ製、「セプトンV9827」)と溶剤(トルエン)を混合して蛍光体ペーストを作製した。次いで、ロールコーターを用いて、0.2g/m2/dayの水蒸気透過率を有する38μm厚の水蒸気バリアフィルム上に、上記蛍光体ペーストを塗布した。続いて、溶剤を揮発させ、得られた蛍光体層の上に、上記のものと同じ水蒸気バリアフィルムを熱ラミネートし、蛍光体層と2枚の水蒸気バリアフィルムとからなる積層体を得た。ここで、蛍光体層の厚みは約54μmであり、積層体の総厚みは約130μmであった。
【0088】
次に、上記積層体の周縁部を封止テープを用いて封止した。封止テープは、水蒸気の浸入を防ぐために、アルミニウムやシリカ蒸着されたPET等の水蒸気透過率1g/m2/day以下(温度40℃/相対湿度90%)の封止層と、蛍光体シート本体と、封止層を貼り付ける接着層があればよいが、本従来例において使用した封止テープは、図13に示した構造を有しており、アルミ層とPET層と粘着層とからなる複合層で構成されており、アルミ層はマイクロメートルオーダーの厚みを有しているため、封止テープの水蒸気透過率は極めて小さい。
【0089】
図13に示した構造を有する幅6mmの封止テープを、テープの中央で折り曲げて、図15に示すように、蛍光体シート(1790mm×1050mm)の周縁部に3mm幅で貼り付けて封止した。図15においては、貫通孔付近の拡大図を示す。
【0090】
続いて、188μm厚のPETフィルムにバックライト光源に固定するための貫通孔(15mm×2mm)を開けたフック部材を150μm厚の粘着剤を用いて図15に示すように貼り付け、従来例の蛍光体シートを得た。
【0091】
(比較例)
従来例と同様に蛍光体シートを作製した。ただし、封止テープを用いて蛍光体層と2枚の水蒸気バリアフィルムとで構成された積層体の周縁部を封止しなかった。また、バックライト光源に固定するための貫通孔は、図15に示すように積層体の周縁部に直接形成した。それ以外の構成は、比較例と全て同じである。
【0092】
(実施例1)
従来例と同様に蛍光体シートを作製した。ただし、バックライト光源に固定するためのフック部材は使用せず、封止部材として幅20mmの封止テープを中央で折り曲げて、蛍光体シートの周縁部に10mm幅で貼り付けて封止した。その後、封止部材の縁部を図15に示すように加工して、実施例1の蛍光体シートを得た。その他の構成は、従来例と全て同じである。
【0093】
(実施例2)
実施例1と同様に蛍光体シートを作製した。ただし、挟持部を幅3mmの2枚の封止テープで構成し、また縁部を約130μm厚のPETフィルムで構成し、図15に示すように、PETフィルムを2枚の封止テープで積層体の端面に固定して封止部材を構成した。その他の構成は、実施例1と全て同じである。
【0094】
(実施例3)
実施例1と同様に蛍光体シートを作製した。ただし、積層体の周縁部を加工して突出部(耳部)を設け、この突出部(耳部)に貫通孔を形成した後、封止テープを用いて積層体の周縁部を封止し、その後、図15に示すように封止テープの縁部を加工した。その他の構成は実施例1と全て同じである。
【0095】
<蛍光体シートの評価>
上述のように得られた従来例、比較例、及び実施例1〜3の蛍光体シートを評価した。この評価は、H2Sガス放出レベル、蛍光体シートの厚みの評価、貫通孔の位置精度及び蛍光体シートの製造のし易さについて行い、これらの評価に基づいた総合評価も行った。
【0096】
その際、H2Sガス放出レベルの評価は、上述のような、銀片を用いたAg2S薄膜の膜厚測定により行い、レベル2以下であれば合格とし、レベル3以上の場合には不合格とした。また、蛍光体シートの厚みの評価は、蛍光体シートの厚みが、従来例の蛍光体シートにおける周縁部を封止した積層体の厚み以下であれば合格とし、それ以外は不合格とした。総合評価は、H2Sガス放出レベル及び厚み判定の双方が合格の場合には合格とし、これらのいずれか一方が不合格の場合には不合格とした。得られた結果を図15に示す。
【0097】
まず、硫化水素放出レベルについては、比較例を除く従来例及び実施例1〜3の蛍光体シートについては合格の評価となった。また、厚み判定については、従来例を除く比較例及び実施例1〜3の蛍光体シートの全てが合格の評価となった。更に、貫通孔の位置精度及び製造のし易さについては、従来例が非常に困難との評価となり、実施例2についてもやや困難との評価となった。また、比較例が最も容易との評価になり、実施例1及び3は、これに続く容易との評価となった。
【0098】
総合評価については、実施例1〜3が合格との評価になったのに対して、従来例及び比較例については不合格との評価になった。このように、本発明による蛍光体シートは、水蒸気に対する良好な封止機能を有しつつ、従来の物よりも薄い厚みを有する蛍光体シートであることが分かる。また、実施例1及び3については、貫通孔を高い位置精度を以て形成することができ、また、蛍光体シートの製造も容易である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明による蛍光体シートは、水蒸気に対する封止機能を有しつつ、照明装置に固定することができ、しかも従来のものよりも小さな厚みを有するものである。
【符号の説明】
【0100】
1,2,3,4,5,6,100,200 蛍光体シート
11 積層体
11a,110 蛍光体層
12b,120 水蒸気バリアフィルム
12,130 封止部材
12a,22a,32a 挟持部
12b,22b,32b 縁部
13,23,33,160 貫通孔
140 粘着テープ
150 フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15