【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に且つ詳細に説明する。
【0020】
実施例1
神経突起形成促進作用
・試薬
本試験に用いた1,5−AGは日本澱粉工業株式会社にて1,5−アンヒドロフルクトースを酵母で還元し、精製し結晶化させた標品であり、高速液体クロマトグラフィーでその純度は100%を示したものである。結晶1,5−AGを水に溶解し40mg/Mlとした。ドコサヘキサエン酸(DHA)はSigma社製(Cat.No.D2534)を用いた。
・動物細胞
ラット褐色腫由来細胞(PC12細胞、理研細胞バンク、RCB0009,Lot No.51)
・培地
増殖培地:10%ウシ胎児血清(FBS)、10%ウマ血清(HS)、1% Penicillin−streptomycin添加Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DEMEM培地)
試験培地:0.1% FBS、0.1% HS、1ng/mL 神経成長因子(NGF)、1% Penicillin−streptomycin添加DMEM培地
【0021】
・方法
1)PC12の継代培養
PC12細胞は、増殖培地を用いて、T−75フラスコに起眠し、CO
2インキュベーター(5% CO
2、37℃、湿潤)で培養した。培地交換は2日おきに行い、80%コンフルエントに達した時点で細胞を回収し、継代数2の細胞を本試験に用いた。具体的には、細胞をD−PBS(−)で洗浄した後、0.05% Trypsinを用いて細胞を剥離し、増殖培地を加えてトリプシンを中和した。次に、遠心(180g,5分)して上清を除き、増殖培地を加えて細胞を撹拌し、血球計算盤を用いて細胞数をカウントし、増殖培地を用いて目的濃度(2.0x10
3個/100μL)に調整した。
2)サンプル調整
陰性対照、1,5−AG(40μg/mL)、DHA(25μM)、1,5−AG(40μg/mL)+DHA(25μM)の4試験群で試験を行った。具体的には、まず、1,5−AGに関しては、40mg/mL 1,5−AG水溶液を試験培地に1/1000量添加して終濃度40μg/mLとし、フィルター滅菌して試験に用いた。次に、DHAに関しては、500mMエタノール溶液を作成し、これを試験培地で1/100、1/200と順次希釈して終濃度25μMとし、フィルター滅菌して試験に用いた。1,5−AG+DHAに関しては、上記で作成した25μM DHA含有試験培地に40mg/mL 1,5−AG水溶液を1/1000量添加し、フィルター滅菌して試験に用いた。陰性対照として水を培地に1/1000量添加し、フィルター滅菌して試験に用いた。なお、DHA添加区でのエタノール終濃度は0.005%と非常に低濃度であるため、溶媒対照区は設定しなかった。
3)本試験細胞培養およびサンプル処理
増殖培地を用いて、PC12細胞を2.0x10
3個/100μL/ウェルとなるよう調整し、コラーゲンコートした96ウェルプレートに播種してCO
2インキュベーター(5% CO
2、37℃、湿潤)内で24時間培養した。培養後、サンプル含有試験培地(100μL)に交換し、CO
2インキュベーターで48時間培養した。培養終了時に位相差顕微鏡で、各ウェル1枚ずつ細胞像を撮影し、神経突起伸長量を測定した。細胞体と同程度以上の神経突起伸長を示した細胞を、神経突起有りと判定した。各n=15で実施した。
【0022】
1.結果
1)DHA濃度の決定
PC12細胞(Lot.51)の生存性と神経突起伸長性に対するDHA濃度の影響を解析した。具体的にはDHA濃度を6.25、12.5、25、50、100μMの5濃度とし、無添加区との間で、細胞生存率(wst−8法)および神経突起伸長率を比較した。各n=3で行った。サンプル処理時間は48時間で行った。その結果、DHA濃度が50μM以上の場合は細胞死が観察された(表−1)。25μMの場合には生細胞数の低下が見られず、神経突起伸長率も有意に増加した(表−2)。そこで、DHA濃度が25μMとして本試験を行うこととした。
2)1,5−AG濃度の決定
PC12細胞の神経突起伸長性に対する1,5−AG濃度の影響を解析した。具体的には1,5−AG濃度は1.6、8、40、200、1000μg/mLとし、無添加区との間で細胞生存率および執権突起伸長率を比較した。細胞生存率はどの1,5−AG濃度でも対照区と差が認められなかった(表−3)。神経突起伸長率では40μg/mLと200μg/mLが最も高かった(表−4)。ヒトの血中1,5−AG量は正常で20−40μg/mLであることから、本試験では1,5−AG濃度は40μg/mLを採用した。
また、対照の試験区の1,5−AG濃度は検出限界が1μg/mlの試験系で検出されなかった。
3)本試験
神経突起伸長率解析結果を
図1に示す。まず、1,5−AG単独処理区では、神経突起伸長を示した細胞の割合が8.9%であり、無添加区(6.0%)と比較して有意(P<0.05)に増加した。次にDHA単独処理区に関しては、神経突起伸長を示した細胞の割合が17.3%であり、無添加区と比較して有意(P<0.001)に増加した。次に、1,5−AGとDHAの同時処理区では、神経突起伸長を示した細胞の割合が28.7%と大きく増加し、それぞれの単独処理区と比較して、有意差(P<0.001)が検出された。
2.まとめ
本試験結果により、1,5−AGは神経突起伸長促進作用を持ち、そして、その作用はDHAと相乗的に高まることが示された。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
実施例2 1,5−AG経口摂取後の血中1,5−AG濃度の変化
ラットCrl:CD(SD)11週齢のオスを1週間馴化飼育し12週齢で実験を行った。実験日の前日の夕刻から絶食させ、実験日に体重測定し投与液量を算出した。投与量は1,5−AGとして5g/kgとした。投与液量は20ml/kgとなるように結晶1,5−AGを注射用水で希釈し、強制経口投与した。1,5−AGの投与前と投与後に採血した。採血はヘパリン処理した注射筒を用いて静脈から0.2ml以上採血し、遠心分離(3000rpm、10min,4℃)し、1,5−AG量の測定まで−20℃以下で保存した。採血は投与前、投与後、0.25、0.5、1、2、24時間後とした。また、24時間まで尿を全量、採取した。本試験のラット数は6匹とした。
1,5−AGの測定は血液試料は日本化薬(株)製の動物用1,5−AGキットを用いた。
【0028】
尿試料は高速液体クロマトグラフィーで測定した。カラムはMITSUBISHI MCI GEL CK08S,カラム温度40℃、溶離水は水、流速1ml/min、検出器は示差屈折計で20μlインジェクトし測定した。定量は5%1,5−AGを同様の条件で測定し試料の1,5−AGピークのエリア面積の比率から尿中の1,5−AG量を求めた。このHPLC条件ではグルコースと1,5−AGは殆ど同じ保持時間であり、それらのピークは重なるため、HPLCで求めた1,5−AGが溶出する保持時間のピーク面積から1,5−AGとGlcの合計量を求め、グルコース測定キット(J.K.インターナショナル社輸入の「F−キット グルコース/フルクトース」測定キット)で求めたグルコース量を差し引き1,5−AG量とした。
【0029】
1,5−AG経口投与による血中1,5−AG量の変化を
図2に示した。血中1,5−AG量は、投与前は1mg/dl以下であったのに対して、投与0.25hで21.2mg/dlまで上昇し、投与2時間後には183.4mg/dlとなった。一方、24時間後には8.2mg/dlまで下がった。また、24時間で採尿した尿中の1,5−AG量は投与量の約30%となった。これらの結果より、経口投与された1,5−AGはすぐに吸収され、血中に移行するが、すみやかに尿中に排泄されることが分かった。しかしながら、24時間後でも、血中1,5−AG量は投与前の濃度には戻らず、体内に残存していることが分かった。
【0030】
実施例3
DHAとEPAを含有する魚油とビタミンEを含有する植物油の混合油(DHAとして38%w/w、EPAとして8.2%w/wを)335部に対して乳鉢を用いて微粉化した結晶1,5−AGを12.5部を混合して懸濁した。その混合物をゼラチンカプセルに注入した。充填重量は1カプセルあたり350mgとした。
カプセル中の1,5−AGは時間とともに1,5−AG結晶粉末が局在するようになったが、摂取上の問題はない。
このカプセル1粒あたりにDHAが127mg、EPAが27mg、1,5−AGが12mgとなる。一日に4粒摂取する場合でDHAが508mg、EPAが108mg、1,5−AGが48mg摂取できる。
【0031】
実施例4
DHAとEPAを含有する魚油とビタミンEを含有する植物油の混合油(DHAとして38%w/w、EPAとして8.2%w/wを)707部にコーンスターチ1890部、1,5−AGの結晶微粉末を520部を混合し粉末化した。この得られた紛体をハードカプセルに、1カプセルあたり240mg充填した。このカプセル1粒あたりにDHAが20mg、EPAが4mg、1,5−AGが40mgとなる。一日に4粒摂取する場合でDHAが80mg、EPAが16mg、1,5−AGが200mg摂取できる。
【0032】
実施例5
お酢3部に砂糖0.5部と塩0.5部を添加し撹拌した。それに植物油6部と醤油1部を混合し良く撹拌した。それにDHAとEPAを含有する魚油とビタミンEを含有する植物油の混合油(DHAとして38%w/w、EPAとして8.2%w/wを)0.6部、結晶1,5−AGを0.05部添加し良く混合しドレシングを調製した。
このドレッシング10mlにDHAが約230mg、EPAが約50mg、1,5−AGが50mg含まれる。