【実施例】
【0023】
以下に本発明の実施例及び比較例について記載する。
・実施例1
浴温135℃にした反応タンクに、ポリテトラメチレングリコール(分子量2000、品名:PTMG2000、三菱化学株式会社製)の85重量部と、ポリプロピレングリコール(分子量2000、品名:プライムポール FH2202、三洋化成工業株式会社製)の15重量部と、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、品名:Desmodur15住化バイエルウレタン株式会社製の24重量部を投入し、15分間攪拌して反応させることによりプレポリマー(B液)を作成した。
一方、水を50%含む界面活性剤(脂肪酸スルホン酸塩、商品名:Addovate SV、RheinChemie社製)を40℃にして鎖延長剤(A液)とした。
【0024】
前記プレポリマー(B液)と鎖延長剤(A液)を用い、[B液のイソシアネート基mol%/A液のヒドロキシル基のmol%]の値が1.00となるように、B液100重量部に対してA液2.0重量部添加し、5秒間攪拌し、該攪拌物を、80℃にした金型のキャビティに該キャビティ(φ30mm、長さ500mm)の容積の40%となる量投入し、20分後に成形品を脱型して実施例1の充填体を得た。同様にして実施例1の充填体を4本作成した。
また、同様の撹拌物を、物性試験体用金型のキャビティ(200mm×110mm×30mm)に、該キャビティの容積の40%となる量投入し、20分後に成形品を脱型して実施例1の物性試験体を得た。
【0025】
・実施例2
実施例1におけるプレポリマー(B液)の作成に使用した、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)の24重量部を、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート(TODI)、品名:TODI、日本曹達株式会社製の32重量部に換えた以外、他は実施例1と同様にして実施例2の充填体を4本と、実施例2の物性試験体を得た。
【0026】
・比較例1
発泡ポリスチレン系エラストマーチューブ(品名:e−コア、株式会社型善製、密度0.6kg/m
3、φ30mm、長さ2000mm)を比較例1の充填体とし、また前記発泡ポリスチレン系エラストマーチューブの他から100×30×3mmに裁断して比較例1の物性試験体を得た。
・比較例2
実施例1におけるプレポリマー(B液)の作成に使用した1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)の24重量部を、4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)、品名:ミリオネートMT、東ソー株式会社製の34重量部に換え、プレポリマー(B液)100重量部に対して前記鎖延長剤(A液)3.0重量部にした以外、他は実施例1と同様にして比較例2の充填体を4本と、比較例2の物性試験体を得た。
【0027】
各実施例及び各比較例の充填体について、各4本の合計重量を測定した。
また、各実施例及び各比較例の物性試験体に対して、JIS K7222に準拠して密度、JIS K6253、デュロメータEに準拠して硬さ、JIS K6251に準拠して引張り強度、JIS K6262:2013に準拠して圧縮永久歪、JIS K6255:2013に準拠して反発弾性、ISO 6721−2:2008に準拠する粘弾性試験でtanδの20℃をそれぞれ測定した。
【0028】
さらに、前記各実施例及び各比較例の5本の充填体のうち1本の充填体(φ30mm、長さ500mm)からφ30mm、長さ50mmに裁断して圧縮変形量測定サンプルを作成し、該圧縮変形量測定サンプルに対して、最大荷重が1kNになるまで直径方向に圧縮スピード10mm/minで押し、そのときに得られた荷重−変形量カーブの面積からエネルギー吸収量を算出すると共に、そのときのヒステリシスロスを計算した。測定方法は、JISK 6400−2 軟質発泡材料 物理特性に準拠して行った。
【0029】
また、前記各実施例及び各比較例の残りの4本の充填体(φ30mm、長さ500mm)を、サイズ(26×1 3/8)のタイヤ外皮(品名:足楽、井上護謨工業社製)とリム(型名:WO−2、新家工業社製)とで構成される環状の空間内に収容して1本のタイヤを形成し、該タイヤに対して転がり抵抗試験と耐久性試験を行い、乗り心地を判定した。
【0030】
転がり抵抗の試験は、以下の手順に準じて行った。すなわち、(1)無負荷の状態で表面速度30km/hr、ドラム径:φ760mmの条件でドラムを回転させた後、駆動力を切り、惰行時間を測定し、ドラムの慣性モーメントから無負荷の転がり抵抗値を測定する。(2)荷重50kg、表面速度30km/hr、ドラム径:φ760mmの条件でドラムの回転によりタイヤを回転させた後、駆動力を切り、速度25→5km/hr時の惰行時間を測定し、ドラムの慣性モーメント、タイヤの慣性モーメントからその時の転がり抵抗値を求める。転がり抵抗の値を、(2)の転がり抵抗値−(1)の転がり抵抗値の計算で算出する。
【0031】
耐久性の試験は、JIS K6302:2011 自転車−タイヤに準拠して行った。すなわち、JISに準じてタイヤの呼びの最大負荷荷重、表面速度50km/hrとし、ドラム径:φ760mmのドラムにショックバーの段差(10mm×5mm)を2箇所取り付け、走行距離1000km後と、1万km後に、実施例及び比較例の充填体の変形程度及び破損有無を確認し、変形あるいは破損を生じた走行距離を耐久性の結果とした。
乗り心地の判定は、市販の自転車に装着し、5人の試験者により官能的に点数化して判定し、良好の場合「◎」、やや良好の場合「〇」とした。各結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
・重量の結果
重量について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べて25%〜40%程度軽く、軽量性に優れている。なお、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は、実施例1、2と同程度の重量であり、軽量性に優れている。
・密度の結果
密度について、比較例1の密度0.6kg/m
3に比べ実施例1、2ともに約0.38kg/m
3から0.4kg/m
3と小さく、同一容積において軽くできた。
・硬さの結果
硬さについて、硬度計の測定結果が、比較例1の45度であったのに対し、実施例1、2は約60度であった。
【0034】
・引張り強度の結果
引張り強度について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1よりも引張り強度が大であった。なお、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は、実施例1、2よりも引張り強度が大であった。
【0035】
・圧縮永久歪の結果
圧縮永久歪について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べて5/72〜13/72の圧縮永久歪であり、圧縮永久歪が極めて小さく、長期使用によるへたりが少なくなる。なお、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は、実施例1、2よりも圧縮永久歪が大であり、実施例1、2よりも長期使用によるへたりを生じ易くなる。
【0036】
・tanδ 1Hz(20℃)、反発弾性の転がり抵抗との結果
tanδ 1Hz(20℃)について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べてtanδの値が小さいため、比較例1よりも反発弾性力が大きくなり、転がり抵抗が小さくなってペダルを漕ぐ力が軽くなる。なお、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は、実施例1、2よりもtanδの値が大であるため、反発弾性力が小になり、実施例1、2よりも転がり抵抗が大きくなってペダルを漕ぐのに大きな力が必要になる。
【0037】
・エネルギー吸収量と乗り心地の結果
エネルギー吸収量について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べてエネルギー吸収量が大きいため、比較例1よりも乗り心地が良くなる。
【0038】
・転がり抵抗の結果
転がり抵抗について、実施例1、2は、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べて転がり抵抗が小さく、比較例1よりもペダルを漕ぐ力が軽くなる。通常の空気入りチューブ(空気圧180〜200kPa)の転がり抵抗が710〜630gであって実施例1、2と同等であるため、実施例1、2は、ペダルを漕ぐ力を通常の空気入りチューブと同程度の力にできる。なお、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は、実施例1、2及び通常の空気入りチューブ(空気圧180〜200kPa)の転がり抵抗よりも大であるため、実施例1、2及び通常の空気入りチューブ(空気圧180〜200kPa)よりもペダルを漕ぐのに大きな力が必要になる。
【0039】
・ヒステリシスロスと耐久性の結果
ヒステリシスロスについて実施例1、2は発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と比べてヒステリシスロスが小さく、荷重―圧縮状態における走行耐久性において内部発熱が小さいため、1万km経過しても問題がなかったのに対し、発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1と実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノメリックMDI)を使用した比較例2はヒステリシスロスが大きいため荷重―圧縮状態における耐久性において内部発熱が大きくなることにより、1000kmで充填体の変形が大きく、内部破壊に至った。したがって、実施例1、2は比較例1及び比較例2よりも耐久性に優れていた。
・乗り心地の結果
乗り心地について、実施例1、2及び発泡ポリスチレン系エラストマーからなる比較例1は、乗り心地の判定が◎(良好)であったが、実施例1の1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)に代えて4,4’−ジフェニルメタンジジイソシアネート(モノクリックMDI)を使用した比較例2は〇(やや良)であった。
【0040】
このように、本発明のノーパンクタイヤ用充填体は、軽量性、乗り心地、転がり抵抗及び充填体の耐久性について良好なものである。