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  • 特開2017057446-気体製造装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-57446(P2017-57446A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】気体製造装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20060101AFI20170303BHJP
   C25B 15/02 20060101ALI20170303BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20170303BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20170303BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20170303BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20170303BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20170303BHJP
【FI】
   C25B9/00 A
   C25B15/02 302
   C25B1/04
   C25B15/00 303
   A61K33/00
   A61P39/06
   A61P9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-181695(P2015-181695)
(22)【出願日】2015年9月15日
(71)【出願人】
【識別番号】508055179
【氏名又は名称】矢田 直之
(71)【出願人】
【識別番号】514218436
【氏名又は名称】三井 美佳
(71)【出願人】
【識別番号】514218447
【氏名又は名称】城倉 祐太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】矢田 直之
(72)【発明者】
【氏名】三井 美佳
【テーマコード(参考)】
4C086
4K021
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086HA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA55
4C086NA20
4C086ZA36
4C086ZC21
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021BC04
4K021BC07
4K021CA06
4K021CA08
4K021CA09
4K021CA11
4K021CA13
4K021CA15
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】衛生的な水素又は酸素を製造する事が可能な気体製造装置を提供すること。
【解決手段】気体製造装置100は、水を収容する入口側輸液パック20から供給された水を電気分解して水素及び酸素を製造する水電解セル2と、水電解セル2にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する気液分離器3a、3bと、水電解セル2にて製造された水素又は酸素の圧力を計測する圧力スイッチ5a、5bと、圧力スイッチ5a、5bにて計測された水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を収容する水収容手段から供給された水を電気分解して水素及び酸素を製造する電気分解手段と、
前記電気分解手段にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段と、を備える、
気体製造装置。
【請求項2】
前記電気分解手段にて製造された水素又は酸素の圧力を計測する計測手段と、
前記計測手段にて計測された前記水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、前記水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段と、を備える、
請求項1に記載の気体製造装置。
【請求項3】
前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる気体を抜く脱気手段を備える、
請求項1又は2に記載の気体製造装置。
【請求項4】
前記電気分解手段は電気分解を行う稼働状態と電気分解を行わない非稼働状態とに切り換え可能であり、
前記電気分解手段が非稼働状態である場合に、前記電気分解手段から前記水分除去手段を介して排水されるまでの流路に液体を通して当該流路を洗浄可能である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の気体製造装置。
【請求項5】
前記水分除去手段にて水分が除去された前記水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段を備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の気体製造装置。
【請求項6】
前記水は無菌水である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の気体製造装置。
【請求項7】
前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる液体の分子間力、又は前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる分子間力低下手段を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の気体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を電気分解して水素及び酸素を製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように製造された水素や酸素は様々な用途に用いられており、例えば特許文献1では、製造した水素や酸素を燃料電池として利用する点について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−155430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、治療、疲労回復、又は美容等の目的で、水素や酸素を動物(代表的には、ヒト)の体内に取り込む施術が行われている。例えば、水素によって体内の活性酸素を除去することによるアンチエイジングの効能や、身体の細胞に行き渡る酸素量を増加させることによる疲労回復や血行促進等の効能等で着目されており、体内に取り込むための水素や酸素を製造する事が要望されている。しかし、特許文献1に記載の装置は、上述したように製造した水素や酸素を燃料電池として利用する装置であり、体内に取り込むことについては想定されていないため、衛生面の配慮が施されておらず、衛生的な水素や酸素を製造する事ができない可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、衛生的な水素又は酸素を製造する事が可能な気体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の気体製造装置は、水を収容する水収容手段から供給された水を電気分解して水素及び酸素を製造する電気分解手段と、前記電気分解手段にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段と、を備える。
【0007】
請求項2に記載の気体製造装置は、請求項1に記載の気体製造装置において、前記電気分解手段にて製造された水素又は酸素の圧力を計測する計測手段と、前記計測手段にて計測された前記水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、前記水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段と、を備える。
【0008】
請求項3に記載の気体製造装置は、請求項1又は2に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる気体を抜く脱気手段を備える。
【0009】
請求項4に記載の気体製造装置は、請求項1から3のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記電気分解手段は電気分解を行う稼働状態と電気分解を行わない非稼働状態とに切り換え可能であり、前記電気分解手段が非稼働状態である場合に、前記電気分解手段から前記水分除去手段を介して排水されるまでの流路に液体を通して当該流路を洗浄可能である。
【0010】
請求項5に記載の気体製造装置は、請求項1から4のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された前記水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段を備える。
【0011】
請求項6に記載の気体製造装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水は無菌水である。
【0012】
請求項7に記載の気体製造装置は、請求項1から6のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる液体の分子間力、又は前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる分子間力低下手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の気体製造装置によれば、電気分解手段にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段を備えるので、除去した水分を再度電気分解手段に戻すことなく排水することにより電気分解手段や水分除去手段を衛生的に保つ事ができ、衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0014】
請求項2に記載の気体製造装置によれば、計測手段にて計測された水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段を備えるので、水素又は酸素の圧力過多による不具合(例えば、電気分解手段の圧力過多による破損や、製造した水素又は酸素を収容する製造気体収容手段の破裂等)が生じてしまうことを防止できる。
【0015】
請求項3に記載の気体製造装置によれば、製造気体収容手段に含まれる気体を抜く脱気手段を備えるので、脱気手段にて脱気してから製造気体収容手段に水素又は酸素を供給することにより、製造気体収容手段に収容可能な水素又は酸素の量を増加できる。
【0016】
請求項4に記載の気体製造装置によれば、電気分解手段が非稼働状態である場合に、電気分解手段から水分除去手段を介して排水されるまでの流路に液体を通して当該流路を洗浄可能であるため、当該流路をより清潔に保つ事ができ、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0017】
請求項5に記載の気体製造装置によれば、水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段を備えるので、含水率が低く純度の高い水素又は酸素を製造する事が可能となる。
【0018】
請求項6に記載の気体製造装置によれば、水は無菌水であるので、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0019】
請求項7に記載の気体製造装置によれば、水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる液体の分子間力、又は水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる分子間力低下手段を備えるので、製造気体収容手段に含まれる液体に対して水素又は酸素をより多く溶存させる事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る気体製造装置を機能概念的に表したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る気体製造装置の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、水から水素及び酸素を製造する気体製造装置に関する。ここで、気体製造装置にて製造された水素及び酸素の用途は任意で、例えば燃焼させて暖房に利用しても良いし、燃料電池に利用しても良いが、本実施の形態においては、人の体内に取り入れて利用する。なお、体内に取り入れる方法は任意であり、例えば水素や酸素を液体に溶かして飲んでも構わないが、本実施の形態では、例えば生理食塩水のように、体内に直接取り入れる(例えば、点滴等の方法で)事が可能な液体(以下、「生理食塩水等」と称する)に水素又は酸素を溶かして、当該生理食塩水等を注射等で人体に注入するものとして説明する。また、水素及び酸素の原料となる水としては任意の水(例えば、水道水や蒸留水等)を用いて構わないが、人体に取り入れることを想定した清潔な水である程好ましく、本実施の形態では衛生的に人体への投与が可能な無菌水を用いる。
【0023】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。
【0024】
(構成)
図1は、本実施の形態に係る気体製造装置100を機能概念的に表したブロック図である。この図1に示すように、本実施の形態に係る気体製造装置100は、筐体1、水電解セル2、気液分離器3a、3b、乾燥剤4a、4b、圧力スイッチ5a、5b、電磁弁6、逆流防止弁7、バルブ8、脱気装置9、振動装置10、及び制御部(図示省略)を備えて構成されており、この気体製造装置100の外側(例えば、筐体1の外部)には入口側輸液パック20と出口側輸液パック30が設けられている。そして、これらの各構成要素は、図1に示すように管C1から管C15により接続されている。なお、このように、入口側輸液パック20又は出口側輸液パック30の少なくとも一方を気体製造装置100の外側(特に、気体製造装置100から離隔した位置である事がより好ましい)に設けることにより、漏水により気体製造装置100が故障してしまう可能性を低減する事が可能となる。
【0025】
(構成−気体製造装置−筐体)
筺体1は、気体製造装置100の外殻を形成する箱状体であり、形状、大きさ、素材等は任意に構成できるが、本実施の形態においては、一辺約40cm程度の立方体形状であるものとする。この筺体1を構成するいずれかの面は取り外し可能となっており、取り外すことにより筺体1の内部にアクセスできる。なお、気体製造装置100の各構成要素のうち、乾燥剤4a、4b、脱気装置9、及び振動装置10以外の要素は筺体1の内部に配置され、乾燥剤4a、4b、脱気装置9、及び振動装置10は筺体1の外面に取り付けられている。
【0026】
(構成−気体製造装置−水電解セル)
水電解セル2は、無菌水を収容する入口側輸液パック20から供給された無菌水を電気分解して水素及び酸素を製造する電気分解手段である。この水電解セル2は、液体を電気分解可能な公知の構造を採用でき、例えば無菌水に2つの電極を接触させて電極間に電圧をかけることにより、アノードで酸化、カソードで還元を起こすことにより水素及び酸素を製造する公知の構造を採用できる。このようにして製造された水素は気体自身の圧力によって後段の気液分離器3aに送られ、製造された酸素は気体自身の圧力によって後段の気液分離器3bに送られる。この水電解セル2は、気体製造装置100の電源がオンの際には、電気分解を行う稼働状態となり、気体製造装置100の電源がオフの際には、電気分解を行わない非稼働状態となり、これらを相互に切り換え可能である。
【0027】
(構成−気体製造装置−気液分離器)
気液分離器3a、3bは、水電解セル2にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段である。このうち、気液分離器3aは水素の水分を除去し、気液分離器3bは酸素の水分を除去する。すなわち、水電解セル2による電気分解では完全な水素と酸素に分離できず水分を多く含んでしまっているため、この水分を除去するために当該気液分離器3a、3bを用いる。ここで、これら気液分離器3a、3bは、水素又は酸素の水分を除去可能である限り任意に構成でき、例えば重力式や表面張力式の公知の装置を採用できる。なお、各気液分離器3a、3bにて除去された水分は、再度水電解セル2等に戻されることなく排水されるので、水電解セル2等の内部を常に新鮮な液体(例えば、無菌水等。以下では無菌水であるものとする)を通すことができる。
【0028】
(構成−気体製造装置−乾燥剤)
乾燥剤4a、4bは、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段である。このうち、乾燥剤4aは水素の水分を除去し、乾燥剤4bは酸素の水分を除去する。すなわち、気液分離器3a、3bによる水分の除去では、水分を完全に除去できるわけではないので、水素や酸素からより水分を除去するために、当該乾燥剤4a、4bを用いる。ここで、これらの乾燥剤4a、4bは、水素又は酸素の水分を除去可能である限り任意に構成でき、例えば公知のシリカゲルを用いて構成できる。なお、乾燥剤4a、4bの数は任意であり、本実施の形態では乾燥剤4a、4bをそれぞれ2つずつ設けており、後段の乾燥剤4a、4bの消耗を確認できた際に、前段及び後段の両方の乾燥剤4a、4bを交換するものとする。
【0029】
(構成−気体製造装置−圧力スイッチ)
圧力スイッチ5a、5bは、水電解セル2にて製造された水素又は酸素の圧力を計測する計測手段である。このうち、圧力スイッチ5aは水素の圧力を所定周期(例えば1秒毎)で計測し、圧力スイッチ5bは酸素の圧力を所定周期(例えば1秒毎)で計測する。なお、圧力スイッチ5a、5bはいずれかの位置の水素又は酸素の圧力を計測できる限り任意に配置できるが、本実施の形態では圧力スイッチ5aは管C9の圧力を計測し、圧力スイッチ5bは管C10の圧力を計測する。そして、計測値が気体製造装置100の制御部(図示省略)に送られ、この制御部は計測値に基づいて電磁弁6及び水電解セル2の制御を行う。なお、このような制御の詳細については後述する。
【0030】
(構成−気体製造装置−電磁弁)
電磁弁6は、入口側輸液パック20から水電解セル2へと無菌水を供給可能な状態と供給不可能な状態とを相互に切り換え可能な切換手段である。この電磁弁6は、制御部と接続されている。そして制御部は、圧力スイッチ5a、5bにて計測された圧力が基準値以上である場合に当該電磁弁6に信号を送信し、電磁弁6は、水電解セル2へと無菌水を供給不可能な状態に切換える。具体的には、電磁弁6は、管C2から管C4に至る流路を閉鎖することにより、無菌水が流れない状態とする。ここで、「基準値」とは、出口側輸液パック30が破裂してしまわない程度の任意の値に設定できる。また、この電磁弁6は、気体製造装置100の電源をオフにした場合も、同様に管C2から管C4に至る流路を閉鎖することにより、水電解セル2へと無菌水を供給不可能な状態とする。
【0031】
(構成−気体製造装置−逆流防止弁)
逆流防止弁7は、入口側輸液パック20から水電解セル2へと供給される無菌水の逆流を防止する逆流防止手段であって、公知の逆止弁を用いることができる。
【0032】
(構成−気体製造装置−バルブ)
バルブ8は、管C3に対して無菌水を送水可能な状態と送水不可能な状態とを相互に切り換え可能な送水切換手段である。具体的には、このバルブ8は手動で開閉操作可能であり、開放状態では管C3に無菌水が流れ、一方、閉鎖状態では管C3に無菌水が流れない。そして、このバルブ8は、通常閉鎖されているが、気体製造装置100の電源がオフの際に手動でこのバルブ8を開放して管C3に無菌水を流すことにより、気体製造装置100にて洗浄処理を実行することができる。洗浄処理とは、水電解セル2が非稼働状態である場合に、水電解セル2から気液分離器3a、3bを介して排水されるまでの流路に液体(本実施の形態では、無菌水。以下同様)を通して当該流路を洗浄可能な処理であって、詳細については後述する。
【0033】
(構成−気体製造装置−脱気装置)
脱気装置9は、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を収容する出口側輸液パック30に含まれる気体を抜く脱気手段である。この脱気装置9は、例えば出口側輸液パック30の内部を真空状態にすることにより、液体に溶存されている気体を抜く公知の脱気ポンプ等で構成でき、出口側輸液パック30に収容された生理食塩水等に予め含まれている余分な気体を抜くことにより、生理食塩水等に対して溶存させる事が可能な気体(気体製造装置100により製造される水素又は酸素)の量を増加させる事ができる。
【0034】
(構成−気体製造装置−振動装置)
振動装置10は、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を収容する出口側輸液パック30に含まれる生理食塩水等の分子間力を低下させる分子間力低下手段である。この振動装置10は、公知のバイブレータとして構成でき、出口側輸液パック30に振動を与えることにより、出口側輸液パック30に収容された生理食塩水等の分子間力を低下させる。このことにより、脱気装置9による脱気の際に生理食塩水等から気体を抜けやすくすることができると共に、気体製造装置100にて製造した水素や酸素を生理食塩水等に溶存させ易くすることができる。
【0035】
(構成−気体製造装置−制御部)
制御部(図示省略)は、圧力スイッチ5a、5bにて計測された水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段である。この制御部は、具体的には、電磁弁6に対して信号を送信して水電解セル2へと水を供給可能な状態(開放)と供給不可能な状態(閉鎖)とを相互に切り換えたり、水電解セル2に対する電源の供給の有無を切換えることにより、水電解セル2による水素及び酸素の製造が可能な状態(電源オン)と不可能な状態(電源オフ)とを相互に切り換えたりする。なお、制御部は、例えば、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータであって構わない。また、この制御部によって実行される具体的な処理の詳細については後述する。
【0036】
(構成−入口側輸液パック)
入口側輸液パック20は、無菌水を収容する水収容手段である。この入口側輸液パック20は、公知の輸液スタンド等に取り付けられて気体製造装置100よりも高い位置に配置されたパックであり、水を収容可能な限り任意の形状や素材で構成できるが、本実施の形態においては、プラスチック製の公知の輸液パックである。なお、本実施の形態では入口側輸液パック20と気体製造装置100の設置高さの違いにより無菌水が滴下されるものとするが、例えばポンプのような電動の機構を設けて無菌水が流れるように構成しても構わない。この入口側輸液パック20及び後述する出口側輸液パック30は、内部の液体(無菌水)が外部の空気に触れる事の無いように形成されており、さらに、管C1から管C15に至る流路も、外部の空気に触れる事の無いように形成されているため、衛生的な水素又は酸素を製造する事が可能である。なお、上述したように、漏水防止のために本願では入口側輸液パック20を気体製造装置100の外部に設けたが、これに限らず、気体製造装置100の内部に設けても構わない。
【0037】
(構成−出口側輸液パック)
出口側輸液パック30は、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段である。この出口側輸液パック30は入口側輸液パック20と略同様に構成できるため、入口側輸液パック20と異なる点のみ以下で説明する。まず、出口側輸液パック30の内部には、上述した生理食塩水等が収容されている。ここで、この出口側輸液からは垂下された管C15の先端は、管C13又は管C14のいずれかに対して接続可能となっている。そして、出口側輸液パック30に対して水素を収容する場合には管C15を管C13に接続し、酸素を収容する場合には管C15を管C14に接続することで所望の気体を収容できる。なお、図1ではC13と接続されている。また、出口側輸液パック30及び管C15のセットを2つ設け、それぞれを管C13及び管C14に接続することで、水素及び酸素の両方を取得しても構わない。なお、上述したように、漏水防止のために本願では出口側輸液パック30を気体製造装置100の外部に設けたが、これに限らず、気体製造装置100の内部に設けても構わない。
【0038】
(処理)
続いて、上記のように構成された気体製造装置100により実行される処理について説明する。この処理には、水素又は酸素を製造する気体製造処理と、気体製造装置100を洗浄する洗浄処理の2種類が有り、以下ではそれぞれについて順を追って説明する。
【0039】
(処理−気体製造処理)
まずは気体製造処理について説明する。初めに、図1に示すように気体製造装置100に対して、無菌水を収容した入口側輸液パック20と、生理食塩水等を収容した出口側輸液パック30を接続し、脱気装置9によって出口側輸液パック30の生理食塩水等に含まれる気体を抜く。これにて生理食塩水等に溶存可能な水素又は酸素の量を増加させる事ができる。なお、このように脱気装置9にて脱気を行う際には、振動装置10によって出口側輸液パック30を振動させながら実施することにより、生理食塩水等の分子間力を低下させることができ、生理食塩水等に溶存可能な水素又は酸素の量をより一層増加させる事ができる。
【0040】
続いて、バルブ8を閉鎖した状態で、気体製造装置100の電源をオンにすると、これに伴って水電解セル2の電源がオンになると共に、電磁弁6が開放状態となる。このことにより、入口側輸液パック20に収容された無菌水が管C1、管C2、電磁弁6、及び管C4を介して水電解セル2に送られる。そして、水電解セル2では無菌水を電気分解して水素と酸素を製造し、製造された水素は管C5を介して気液分離器3aに送られ、製造された酸素は管C6を介して気液分離器3bに送られる。このように各気液分離器3a、3bに送られた水素や酸素には水分が多く含まれているため、気液分離器3aでは水素と水分に分離して水分を管C7から排水し、気液分離器3bでは酸素と水分に分離して水分を管C8から排水する。このように、分離された水分は再度水電解セル2に戻されることなく排水されるので、水電解セル2の内部に清潔な無菌水のみを常に流すことができる。そして、水素は管C9を介して乾燥剤4aに、酸素は管C10を介して乾燥剤4bに送られ、乾燥剤4a、4bにてさらに水分が除去される。最後に、乾燥剤4aにて乾燥された水素は管C13、管C15を介して出口側輸液パック30に収容された生理食塩水等に溶存され、一方、乾燥剤4bにて乾燥された酸素は管C14から空気中に排気される。なお、このように水素又は酸素を生理食塩水等に溶存させる際には、振動装置10によって出口側輸液パック30を振動させながら実施することにより、生理食塩水等の分子間力を低下させることができ、生理食塩水等に溶存可能な水素又は酸素の量をより一層増加させる事ができる。
【0041】
ここで、圧力スイッチ5a、5bは、それぞれ水素及び酸素の圧力を常時計測している。そして、これらいずれかの圧力が基準値以上となった場合、これ以上水素又は酸素を製造すると危険であると判断し、圧力スイッチ5a、5bから制御部(図示省略)に対して信号が送られる。この信号を受信した制御部は、電磁弁6に対して信号を送信して制御したり、又は、水電解セル2への電源供給の有無を切換えたりすることにより、水素及び酸素の圧力の上昇を抑える。具体的には、まず、電磁弁6のみを閉鎖した場合には、水電解セル2に水を供給不可能な状態とすることができ、圧力の上昇を抑えることができる。ただし、電磁弁6の閉鎖を行ったのみでは、水電解セル2や管C4に既に入っている無菌水が水電解セル2によって電気分解されてしまうため、これらの無菌水を電気分解し終わるまでは圧力は上昇してしまう。そこで、上述した電磁弁6の閉鎖に加えて、制御部は、水電解セル2への電源供給を遮断することにより水電解セル2の電源をオフにして、水電解セル2による電気分解が不可能な状態とすることにより、圧力の上昇を一層抑える事ができる。
【0042】
このように気体製造処理を実行した後に、出口側輸液パック30を取り外して注射等の公知の方法で人体に注入することで、水素や酸素が溶存した生理食塩水等を人体に供給する事が可能となる。
【0043】
(処理−洗浄処理)
次に、洗浄処理について説明する。初めに、気体製造装置100の電源をオフにした状態で、バルブ8を開放する。このことにより、気体製造装置100の電源がオフであるので電磁弁6は閉鎖状態であり、管C2から電磁弁6を介して管C4には無菌水は流れないが、代わりに、無菌水が管C3を介して水電解セル2に流れる。すなわち、入口側輸液パック20に収容された無菌水が管C1、管C2、管C3、及び管C4を順次介して水電解セル2に送られる。そして、水電解セル2の電源もオフであるので電気分解は行われず、無菌水がそのままの状態で管C5及び管C6を介して気液分離器3a、3bに送られる。そして、無菌水は、気液分離器3a、3bから管C7、管C8を介して排水される。このように、洗浄処理では管C1から管C8までや、水電解セル2や、気液分離器3a、3bを洗浄してより清潔に保つ事ができる。
【0044】
(実施の形態の効果)
このように、本実施の形態の気体製造装置100によれば、水電解セル2にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する気液分離器3a、3bを備えるので、除去した水分を再度水電解セル2に戻すことなく排水することにより水電解セル2や気液分離器3a、3bを衛生的に保つ事ができ、衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0045】
また、圧力スイッチ5a、5bにて計測された水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御部を備えるので、水素又は酸素の圧力過多による不具合(例えば、水電解セル2の圧力過多による破損や、製造した水素又は酸素を収容する出口側輸液パック30の破裂等)が生じてしまうことを防止できる。
【0046】
また、出口側輸液パック30に含まれる気体を抜く脱気装置9を備えるので、脱気装置9にて脱気してから出口側輸液パック30に水素又は酸素を供給することにより、出口側輸液パック30に収容可能な水素又は酸素の量を増加できる。
【0047】
また、水電解セル2が非稼働状態である場合に、水電解セル2から気液分離器3a、3bを介して排水されるまでの流路に無菌水を通して当該流路を洗浄可能であるため、当該流路をより清潔に保つ事ができ、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0048】
また、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を乾燥させる乾燥剤4a、4bを備えるので、含水率が低く純度の高い水素又は酸素を製造する事が可能となる。
【0049】
また、水は無菌水であるので、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0050】
また、気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素を収容する出口側輸液パック30に含まれる液体の分子間力、又は気液分離器3a、3bにて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる振動装置10を備えるので、出口側輸液パック30に含まれる液体に対して水素又は酸素をより多く溶存させる事が可能となる。
【0051】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0052】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。例えば、各実施の形態に係る気体製造装置100によって、衛生的な水素又は酸素を製造する事ができない場合であっても、従来と異なる技術により水素又は酸素を製造できている場合には、本願発明の課題が解決されている。
【0053】
(寸法や材料について)
発明の詳細な説明や図面で説明した気体製造装置100の各部の寸法、形状、材料、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、材料、比率等とすることができる。
【0054】
(気体製造装置について)
本実施の形態においては、気体製造装置100によって水素及び酸素の両方の気体を取得できるように、水電解セル2から管C5及び管C6に分岐させて、以降の流路では各構成要素(気液分離器3a、3b、乾燥剤4a、4b、及び圧力スイッチ5a、5b)を水素用と酸素用の2種類を設けているが、水素又は酸素の何れか一方の気体のみを取得できるように構成しても構わない。この場合には、2種類設けた各構成要素は水素用又は酸素用のいずれか一方のみ設ければ構わない。
【0055】
(出口側輸液パックについて)
本実施の形態においては、出口側輸液パック30の内部に生理食塩水等を収容し、製造した水素を注入することにより生理食塩水等に水素を溶存させるものとして説明したが、これに限られない。例えば出口側輸液パック30の内部に生理食塩水等を収容することなく、製造した水素や酸素を直接注入しても構わない。
【0056】
(入口側輸液パックについて)
本実施の形態においては、市販の輸液パックを管C1の先端に接続して入口側輸液パック20を構成したがこれに限らず、例えば無菌水を製造する無菌水製造手段を気体製造装置100に組み込んでも構わない。なお、このような無菌水製造手段の具体的な構成は公知であり、例えば水を加圧加熱して滅菌してから冷却することにより製造する公知の装置を採用できる。
【0057】
(分子間力低下手段について)
本実施の形態においては、分子間力低下手段として、振動装置10を用いたが、製造気体収容手段に含まれる液体や、水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させることが可能である限り、これに限定されない。例えば、振動装置10の代わりに、又は振動装置10に加えて、上記の液体、水素、又は酸素に対して、加熱を行う加熱装置、磁場を印可する磁場印可装置、電場を印可する電場印可装置、加圧を行う加圧装置の少なくとも1つ以上を備えても構わない。なお、これらの加熱、磁場印可、電場印可、又は加圧を、水素又は酸素に対して行う場合には、例えば管C14や管C15に対してこれらの装置を取り付けても構わない。また、これらの各装置の具体的な構成については任意であるため、構成についての詳細な説明については省略する。
【0058】
(付記)
付記1の気体製造装置は、水を収容する水収容手段から供給された水を電気分解して水素及び酸素を製造する電気分解手段と、前記電気分解手段にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段と、を備える。
【0059】
付記2の気体製造装置は、付記1に記載の気体製造装置において、前記電気分解手段にて製造された水素又は酸素の圧力を計測する計測手段と、前記計測手段にて計測された前記水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、前記水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段と、を備える。
【0060】
付記3の気体製造装置は、付記1又は2に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる気体を抜く脱気手段を備える。
【0061】
付記4の気体製造装置は、付記1から3のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記電気分解手段は電気分解を行う稼働状態と電気分解を行わない非稼働状態とに切り換え可能であり、前記電気分解手段が非稼働状態である場合に、前記電気分解手段から前記水分除去手段を介して排水されるまでの流路に液体を通して当該流路を洗浄可能である。
【0062】
付記5の気体製造装置は、付記1から4のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された前記水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段を備える。
【0063】
付記6の気体製造装置は、付記1から5のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水は無菌水である。
【0064】
付記7の気体製造装置は、付記1から6のいずれか一項に記載の気体製造装置において、前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる液体の分子間力、又は前記水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる分子間力低下手段を備える。
【0065】
(付記の効果)
付記1に記載の気体製造装置によれば、電気分解手段にて製造した水素又は酸素に含まれる水分を除去すると共に、除去された水分を排水する水分除去手段を備えるので、除去した水分を再度電気分解手段に戻すことなく排水することにより電気分解手段や水分除去手段を衛生的に保つ事ができ、衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0066】
付記2に記載の気体製造装置によれば、計測手段にて計測された水素又は酸素の圧力が基準値以上である場合に、水素又は酸素の圧力の上昇を抑える制御手段を備えるので、水素又は酸素の圧力過多による不具合(例えば、電気分解手段の圧力過多による破損や、製造した水素又は酸素を収容する製造気体収容手段の破裂等)が生じてしまうことを防止できる。
【0067】
付記3に記載の気体製造装置によれば、製造気体収容手段に含まれる気体を抜く脱気手段を備えるので、脱気手段にて脱気してから製造気体収容手段に水素又は酸素を供給することにより、製造気体収容手段に収容可能な水素又は酸素の量を増加できる。
【0068】
付記4に記載の気体製造装置によれば、電気分解手段が非稼働状態である場合に、電気分解手段から水分除去手段を介して排水されるまでの流路に液体を通して当該流路を洗浄可能であるため、当該流路をより清潔に保つ事ができ、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0069】
付記5に記載の気体製造装置によれば、水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を乾燥させる乾燥手段を備えるので、含水率が低く純度の高い水素又は酸素を製造する事が可能となる。
【0070】
付記6に記載の気体製造装置によれば、水は無菌水であるので、より衛生的な水素又は酸素を製造する事ができる。
【0071】
付記7に記載の気体製造装置によれば、水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素を収容する製造気体収容手段に含まれる液体の分子間力、又は水分除去手段にて水分が除去された水素又は酸素の分子間力を低下させる分子間力低下手段を備えるので、製造気体収容手段に含まれる液体に対して水素又は酸素をより多く溶存させる事が可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 筐体
2 水電解セル
3a、3b 気液分離器
4a、4b 乾燥剤
5a、5b 圧力スイッチ
6 電磁弁
7 逆流防止弁
8 バルブ
9 脱気装置
10 振動装置
20 入口側輸液パック
30 出口側輸液パック
100 気体製造装置
図1