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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-57518(P2017-57518A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】温度調節衣服及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20170303BHJP
【FI】
   A41D13/005 101
   A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-182776(P2015-182776)
(22)【出願日】2015年9月16日
(71)【出願人】
【識別番号】591240984
【氏名又は名称】株式会社鎌倉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】堀江 威史
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】赤池 一夫
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大輔
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
3B011AC13
(57)【要約】
【課題】人体の胴部と腕部とを効率よく冷却又は加温することができるようにする。
【解決手段】胴部1Aに袖部1B、1Bを付ける。胴部1Aと袖部1B、1Bの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブ11を全体的に蛇行状に配設する。また、該チューブ11を、その折り返し部11b以外の直線状の部分11aが、少なくとも袖部1B、1Bにおいては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両脇が開いた胴部と、該胴部の肩から両側に延出する、脇の下側の部分が開いた袖部とを有し、前記胴部と袖部の夫々における開いた部分の合わせ目に、該合わせ目を結合する適宜の結合手段を備え、前記胴部と袖部の内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、少なくとも袖部においては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設してなることを特徴とする温度調節衣服。
【請求項2】
前記袖部は、前記胴部から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部寄りの位置にかけて延びる継ぎ目を有し、前記袖部の配設されたチューブは、前記継ぎ目を跨がないように設定されてなる請求項1記載の温度調節衣服。
【請求項3】
前記胴部の襟ぐり部分の背面部側に所要幅の帯状の襟巻きを縫着すると共に、該襟巻きの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを配設してなる請求項1又は2記載の温度調節衣服。
【請求項4】
以下a.〜d.の工程を少なくとも含むことを特徴とする温度調節衣服の製造方法。
a.後身頃と、前身頃とからなり、前記前身頃と後身頃との間に襟ぐり部を設けた胴部構成部と、前記胴部構成部から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部構成部寄りの位置にかけて延びる継ぎ目を有する一対の袖部構成部とからなる裏地を裁断する工程。
b.前記裏地を略平面的に展開した状態において、その一方の面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、少なくとも袖部構成部においては該袖部構成部の張り出し方向に沿って延びるように配設する工程。
c.後身頃の両側部と前身頃の外側部に適宜の結合手段を設け、更に夫々の袖部の幅方向における反対側の外側部に適宜の結合手段を設ける工程。
d.夫々の袖部における前記継ぎ目を合わせて縫着する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節衣服及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温或いは低温の作業環境条件にある屋内での作業や、夏期と冬期における屋外での作業は、人体の健康に様々な悪影響を及ぼすことから、従来においてもその対策として人体を冷やしたり加温したりすることができる衣服が種々案出されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示された衣服は、ベストの形態になし、その内面に、冷却した水を内部に流通させる可撓性を有するチューブ(ビニールホース)を全体的に蛇行状に配設してなるものである。また、従来における衣服は、その殆どが該特許文献1に示されたものと同様の構成である。尚、加温用の衣服の場合も冷水を温水に代えるだけで、構成的には略同様である。
【0004】
しかし、斯かる衣服の場合には、ベストの形態であり、袖が無いことから、身体の胴部は充分に冷却されるが、腕の部分は全く冷却されない。また、腕が出る脇の部分から外気が内部に入り込み易い。このため人体への冷却効率の点において今一歩の感があった。
【0005】
そこで、本発明者は胴部に袖を付けることによって上記ベストの形態の衣服の問題点を解決することができることを知見し、この点について鋭意研究した。そして、袖を付けたときにおいて、その内面に人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設するにあたり、その配設の仕方にも工夫を要することを知見した。即ち、該チューブの折り返し部以外の直線状の部分が該袖部の延出方向に沿って延びるようになっていないと、即ち、衣服を着用したときの着用者の腕回りに延びていると、該袖部は曲げRが小さいことから該チューブの反発が大きく、脇の下側の開きが大きくなり易く、閉じ難くなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3176611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の知見に基きなされたものであって、胴部に袖を付けることによって人体への冷却、加温効率を向上させると共に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設するにあたり、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、袖部においては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設し、もってチューブの反発による影響を排除し、袖部において着用者の腕回りに曲がり易くして、上記従来の衣服の問題点を解消することができるようになした温度調節衣服と、該温度調節衣服を効率よく製造することができるようになした製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、本発明に係る温度調節衣服は、両脇が開いた胴部と、該胴部の肩から両側に延出する、脇の下側の部分が開いた袖部とを有し、前記胴部と袖部の夫々における開いた部分の合わせ目に、該合わせ目を結合する適宜の結合手段を備え、前記胴部と袖部の内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、少なくとも袖部においては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記温度調節衣服において、前記袖部は、前記胴部から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部寄りの位置にかけて延びる継ぎ目を有し、前記袖部の配設されたチューブは、前記継ぎ目を跨がないように設定されるようになしてもよい。
【0010】
また、上記温度調節衣服は、前記胴部の襟ぐり部分の背面部側に所要幅の帯状の襟巻きを縫着すると共に、該襟巻きの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを配設するようになしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る温度調節衣服の製造方法は、以下a.〜d.の工程を少なくとも含むことを特徴とするものである。
a.後身頃と、前身頃とからなり、前記前身頃と後身頃との間に襟ぐり部を設けた胴部構成部と、前記胴部構成部から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部構成部寄りの位置にかけて延びる継ぎ目を有する一対の袖部構成部とからなる裏地を裁断する工程。
b.前記裏地を略平面的に展開した状態において、その一方の面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、少なくとも袖部構成部においては該袖部構成部の張り出し方向に沿って延びるように配設する工程。
c.後身頃の両側部と前身頃の外側部に適宜の結合手段を設け、更に夫々の袖部の幅方向における反対側の外側部に適宜の結合手段を設ける工程。
d.夫々の袖部における前記継ぎ目を合わせて縫着する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る温度調節衣服は上記の如き構成であり、胴部に袖を付けたものであるから、人体の胴部を冷却又は加温すると同時に併せて腕部も冷却又は加温することができ、且つまた、腕が出る脇の部分から外気が入り込むことを防ぐことができるものである。もって人体への冷却、加温効率を従来のベスト形態の衣服に比して一段と向上させることができるものである。
【0013】
また、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを全体的に蛇行状に配設するにあたり、該チューブを、その折り返し部以外の直線状の部分が、少なくとも袖部においては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設したから、チューブの反発による影響を排除することができるものである。したがって、袖部が着用者の腕回りに曲がり易くなり、脇の下側の開きを容易に狭めることができるようになるものである。もって、チューブが全体的に着用者の腕を取り囲むようになり、冷却又は加温し易くなるものである。また、袖部の下部の合わせ目が大きく開かないから、外気の内部への入り込みを少なくすることもできるものである。
【0014】
また、前記袖部は、前記胴部から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部寄りの位置にかけて延びる継ぎ目を有し、前記袖部の配設されたチューブは、前記継ぎ目を跨がないように設定されるようになした場合には、継ぎ目を縫着したときに袖部が肩から着用者の腕に沿って斜めに下がった状態となり、且つまた袖部に配設されたチューブは、継ぎ目を跨がないように設定されていることから、継ぎ目を縫着するときにチューブが邪魔にならず、縫着をスムーズに行うことができるものである。尚、チューブが継ぎ目を跨ぐ場合には、継ぎ目で分断されたチューブの端部同士を適宜の接続部材で接続しなければならず、そのための余分な手間とコストも必要となるものである。
【0015】
また、胴部の襟ぐり部分の背面部側に所要幅の帯状の襟巻きを縫着すると共に、該襟巻きの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブを配設した場合には、襟巻きを首に巻き回すことにより、人体への冷却、加温効率を一段と向上させることができるものである。
【0016】
また、上記製造方法による場合には、チューブを、裏地を略平面的に展開した状態において配設することにより、衣服を立体的に縫製した後に配設する場合に要する手間と時間を大幅に軽減することができ、より効率よく製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る温度調節衣服の一部切欠して示した正面図である。
図2】同温度調節衣服の製造方法の説明図であり、胴部構成部と袖部構成部並びに襟巻き構成部とからなる裏地を裁断した状態を示す平面図である。
図3】同温度調節衣服の製造方法の説明図であり、胴部構成部と袖部構成部並びに襟巻き構成部とを縫着一体化した裏地を略平面的に展開した状態においてチューブを配設した状態を示す平面図である。
図4】同温度調節衣服の製造方法の説明図であり、チューブ配設後表地をチューブに被せて裏地に縫着し、閉止手段と結合手段を設けて表裏反転させ、左前身頃と右前身頃を後身頃に重なるように折り返した状態の正面側から看た平面図である。
図5図4に示した状態の背面側から看た平面図である。
図6】裏地にチューブを配設し、表地をチューブに被せてその周縁部を裏地に縫着した状態の部分拡大断面図である。
図7】胴部における脇の開いた部分の結合に用いる結合手段の斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る温度調節衣服の他の製造方法の説明図であり、胴部構成部と袖部構成部並びに襟巻き構成部とを縫着一体化した裏地を略平面的に展開した状態においてチューブを配設した状態を示す平面図である。
図9】本発明の実施形態に係る温度調節衣服の更に別の製造方法の説明図であり、胴部構成部と袖部構成部とからなる裏地を裁断した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図中、1は温度調節衣服である。また、該温度調節衣服1は、前身頃2の中央の開放部分(左前身頃と右前身頃の合わせ目)に閉止手段としてのスライドファスナー3を備え、両脇が開いた胴部1Aと、該胴部1Aの肩から両側に延出する、脇の下側の部分が開いた袖部1B、1Bとからなるものである。尚、前記閉止手段としては、ボタン、ホック、或いは面ファスナー等で構成してもよい。また、図5中4は後身頃である。
【0020】
また、図1において該温度調節衣服1は、胴部1Aにおける両脇の開いた部分の合わせ目に、この合わせ目を結合するための、一方の合わせ目に取着したゴムバンド5と、もう一方の合わせ目に取着したバックル6とからなる結合手段7を備えると共に、袖部1B、1Bの夫々における脇の下側の開いた部分の合わせ目に、この合わせ目を結合するための、一方の合わせ目に取着したバンド8と、該バンド8の自由端に設けた面ファスナー9と、もう一方の合わせ目に取着した面ファスナー9a(図3)とからなる結合手段10を備えている。尚、前記胴部1Aにおける前身頃2の中央の開放部分の合わせ目に備える結合手段としては、紐や面ファスナー等の上記以外のもので構成してもよく、また前記袖部1B、1Bの夫々における開いた部分の合わせ目に備える結合手段としては、紐やホック等の上記以外のもので構成してもよい。そして、前記結合手段7、10は、着用者の体形に合わせて開いた部分を適宜に調整することができるものであることが望ましい。
【0021】
また、該温度調節衣服1は、前記胴部1Aと袖部1B、1Bの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブ11を全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブ11を、その折り返し部11b以外の直線状の部分11aが、胴部1Aにおいては該胴部の軸線に沿って、袖部1B、1Bにおいては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設している。また、該チューブ11内へ流通させる人体より低温又は高温の所定の温度の液体は、胴部1Aに附設する図示しない冷却又は加温装置、又は図示しないチューブを介して接続された冷却又は加温装置から送出されるものである。尚、液体は水、不凍液等の適宜のものを用いればよく、また、人体より低温又は高温の所定の温度であれば、冷却又は加温するための特別の装置を用いたものでなくてもよい。
【0022】
また、該温度調節衣服1は、本実施形態においては胴部1Aの襟ぐり部分2Aの背面部側に、首の周囲に巻き付けるための所要幅の帯状の襟巻き1Cを縫着し、該襟巻き1Cの内面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブ11を配設している。尚、該チューブ11は、前記胴部1Aと袖部1B、1Bの内面に配設したチューブ11の途中部分を導入することによってなしている(図3図4)。
また、該襟巻き1Cを首に巻き付けた状態における閉止手段として、一対の面ファスナー12、13からなる閉止手段14を用いている。尚、本実施形態においては人体の冷却又は加温効率を高めるために襟巻き1Cを備えた例を示しているが、該襟巻き1Cは必ずしも備える必要はない(図4)。
【0023】
而して、上記温度調節衣服1は、袖部1B、1Bに腕を通して着用し、スライドファスナー3をもって前身頃2を閉じるものである。そして、チューブ11内に人体より低温又は高温の所定の温度の液体(図示せず。)を流通させると、該液体と着用者との間で熱交換が行われ、人体に対する冷却又は加温が行われるものである。
【0024】
また、胴部1Aには袖部1B、1Bが付いていることから、人体の胴部を冷却又は加温すると同時に併せて腕部も冷却又は加温することができ、且つまた、腕が出る脇の部分から外気が入り込むことを防ぐことができるものである。したがって、人体への冷却、加温効率を従来のベスト形態の衣服に比して一段と向上させることができるものである。
【0025】
また、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブ11を全体的に蛇行状に配設するにあたり、該チューブ11を、その折り返し部11b以外の直線状の部分11aが、胴部1Aにおいては該胴部の軸線に沿って、袖部1B、1Bにおいては該袖部の延出方向に沿って延びるように配設していることから、チューブ11の反発による影響を軽減することができるものである。したがって、袖部1B、1Bが着用者の腕回りに曲がり易くなり、脇の下側の開きを容易に狭めることができるようになるものである。よって、チューブ11が全体的に腕を取り囲むようになり、冷却又は加温し易くなるものである。また、袖部1B、1Bの下部の合わせ目が大きく開かないから、外気の内部への入り込みを少なくすることもできるものである。
【0026】
また、袖部1B、1Bは、胴部1Aから遠ざかる側に位置する端縁部から胴部1A寄りの位置にかけて延びる継ぎ目Pを有し、袖部1B、1Bに配設されたチューブ11は、該継ぎ目Pを跨がないように設定されているから、継ぎ目Pを縫着したときに袖部1B、1Bが肩から着用者の腕に沿って斜めに下がった状態となる。且つまた袖部1B、1Bに配設されたチューブ11は、継ぎ目Pを跨がないように設定されていることから、継ぎ目Pを縫着するときにチューブ11が邪魔にならず、縫着をスムーズに行うことができるものである。尚、チューブ11が継ぎ目Pを跨ぐ場合には、継ぎ目Pで分断されたチューブ11の端部同士を適宜の接続部材で接続しなければならず、そのための余分な手間とコストも必要となるものである。
【0027】
また、本実施形態においては襟巻き1Cを備えているから、該襟巻き1Cを首に巻き回すことにより、人体への冷却、加温効率を一段と向上させることができるものである。
【0028】
次に、上記温度調節衣服1の製造方法について説明する。
【0029】
該製造方法は、以下の工程からなるものである。
先ず、図2に示す如く、方形状の後身頃4a′と、該後身頃4a′の半分の幅の方形状の左前身頃2a′と右前身頃2a″とからなり、前記左前身頃2a′と右前身頃2a″に襟ぐり部2bを設けた胴部構成部1A′と、前記胴部構成部1A′から遠ざかる側に位置する端縁部から前記胴部構成部1A′寄りの位置にかけて延びる継ぎ目Pを有する袖部構成部1B′、1B′とからなる裏地C1を裁断する。尚、本実施形態においては、同時に襟巻き構成部用の裏地1C′も所要の長さ及び幅に裁断する。
【0030】
次に、上記裁断した裏地C1における胴部構成部1A′と袖部構成部1B′、1B′、並びに襟巻き構成部用の裏地1C′とを縫着して一体化する。尚、本実施形態においては、後身頃4a′と左前身頃2a′、右前身頃2a″の夫々が分かれており、袖部構成部1B′、1B′が後身頃4a′と左前身頃2a′、右前身頃2a″との間に入り込んだ状態で夫々の合わせ目を縫着している。また、襟巻き構成部用の裏地1C′は後身頃4a′の上端部に縫着している。
【0031】
次に、図3に示す如く、縫着して一体化した胴部構成部1A′と袖部構成部1B′、1B′とからなる裏地C1、並びに襟巻き構成部用の裏地1C′とを略平面的に展開した状態において、その一方の面に、人体より低温又は高温の所定の温度の液体を内部に流通させる可撓性を有するチューブ11を全体的に蛇行状に配設すると共に、該チューブ11を、その折り返し部11b以外の直線状の部分11aが、胴部構成部1A′においては該胴部構成部1A′の上下方向に沿って、袖部構成部1B′、1B′においては該袖部構成部1B′、1B′の張り出し方向に沿って延びるように配設する。また、襟巻き構成部用の裏地1C′にも前記チューブ11の途中部分を導入することによって配設する。尚、チューブ11の配設時の固定方法は、図6に示す如く、裏地C1にチューブ11を載せた状態において、糸Lをもって千鳥状に縫い付けることによって行うものである。
【0032】
また、チューブ11を配設するにあたり、本実施形態においては、各チューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の下端部に配設した基端側が図示しない冷房装置又は加熱装置に接続された2本の液体送入チューブ11A、11Aと1本の液体排出チューブ11Bに夫々接続されている。
【0033】
また、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々は、分流管11A′を介して2本のチューブ11、11の一端側を接続し、前記液体排出チューブ11Bは、合流管11B′を介して前記液体送入チューブ11A、11Aに分流管11A′を介して接続したチューブ11、11の夫々の他端側を接続している。
【0034】
また、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に分流管11A′を介して接続した2本のチューブ11、11においてその一方のチューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の脇の縁部に沿って真直に上方に延びた後、袖部構成部1B′、1B′の夫々における継ぎ目Pの下側の部分に至り、該部分においてその直線状の部分11aが袖部構成部1B′の張り出し方向に沿うようにして蛇行し、更に継ぎ目Pを迂回するようにして該継ぎ目Pの上側の部分に至り、該部分においてその直線状の部分11aが袖部構成部1B′の張り出し方向に沿うようにして蛇行し、その後胴部構成部1A′における左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々に至り、該左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々の周縁部に沿って延びた後、再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、更に上方に延びて襟巻き構成部用の裏地1C′に至って、該襟巻き構成部用の裏地1C′の長さ方向に沿ってU字形に折れ曲がり、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、真直に下方に延びて前記合流管11B′に至るものである。
【0035】
また、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に分流管11A′を介して接続した2本のチューブ11、11においてもう一方のチューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の中央部において、直線状の部分11aが胴部構成部1A′の上下方向に沿って蛇行し、更に上方に延びて胴部構成部1A′における左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々に至り、該左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々の中央部をその長さ方向に沿ってU字形に折れ曲がり、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、真直に下方に延びて前記合流管11B′に至るものである。
【0036】
また、上記の如くチューブ11を配設したら、次に略平面的に展開した状態における前記裏地C1と同形、同大の表地C2を、配設したチューブ11に被せた状態においてその周縁部を前記裏地C1、並びに襟巻き構成部用の裏地1C′の周縁部に縫着する。
【0037】
次に、左前身頃と右前身頃の合わせ目に閉止手段としての前記スライドファスナー3を取り付けると共に、後身頃の両側部と左前身頃及び右前身頃の夫々の外側部に、結合手段としての前記ゴムバンド5とバックル6とからなる結合手段7を取り付ける。また、夫々の袖部の幅方向における反対側の外側部に、結合手段としての前記バンド8と面ファスナー9、9aとからなる結合手段10を取り付ける。
【0038】
次に、夫々の袖部における継ぎ目Pを合わせて縫着した後、表裏反転させ、表地C2が外面側になるようにして左前身頃と右前身頃を後身頃に重なるように折り返す。尚、継ぎ目Pを合わせて縫着することにより、袖部が胴部の肩から腕に沿って斜めに下がった状態になるものである。
【0039】
次に、後身頃の両側部と左前身頃及び右前身頃の夫々の外側部との合わせ目を前記結合手段7で結合する。
【0040】
最後に、夫々の袖部の脇の下側の開いた部分の合わせ目を前記結合手段10で結合する。以上により温度調節衣服1は完成するものである。
【0041】
而して、上記製造方法によれば、チューブ11を、縫着して一体化した胴部構成用部1A′と袖部構成部1B′、1B′とからなる裏地C1、並びに襟巻き構成部用の裏地1C′とを略平面的に展開した状態において配設することにより、衣服を立体的に縫製した後に配設する場合に要する手間と時間を大幅に軽減することができ、より効率よく製造することができるものである。
【0042】
次に、図8に示した温度調節衣服1の他の製造方法について説明する。
【0043】
本製造方法と前記製造方法とは、チューブ11の配設の仕方において相違するものである。即ち、本製造方法においては、前記2本の液体送入チューブ11A、11Aの夫々に、分流管(図示せず。)を介して3本のチューブ11、11、11の一端側を接続し、前記液体排出チューブ11Bに、合流管(図示せず。)を介して前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に一端側を接続したチューブ11の他端側を接続している。
【0044】
そして、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に一端側を接続した3本のチューブ11、11、11の内の一番外側に位置するチューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の脇の縁部に沿って真直に上方に延びた後、袖部構成部1B′、1B′の夫々における継ぎ目Pの下側の部分に至り、該部分においてその直線状の部分11aが袖部構成部1B′の張り出し方向に沿うようにして蛇行し、継ぎ目Pで折り返し部11bの中央において分断され、継ぎ目Pの上側の部分に至った後、該部分において直線状の部分11aが袖部構成部1B′の張り出し方向に沿うようにして蛇行し、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、真直に下方に延びて合流管に至るものである。
【0045】
また、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に一端側を接続した3本のチューブ11、11、11の内の中央に位置するチューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の前記外側のチューブ11より内側の部分を真直に上方に延びた後、胴部構成部1A′における左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々に至り、該左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々の幅方向の外側の部分をその長さ方向に沿ってU字形に折れ曲がり、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、真直に下方に延びて合流管に至るものである。
【0046】
また、前記液体送入チューブ11A、11Aの夫々に一端側を接続した3本のチューブ11、11、11の内の一番内側に位置するチューブ11は、胴部構成部1A′における後身頃4a′の中央部寄りの部分を真直に上方に延びた後、胴部構成部1A′における左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々に至り、該左前身頃2a′と右前身頃2a″の夫々の幅方向の内側の部分をその長さ方向に沿ってU字形に折れ曲がり、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、更に上方に延びて襟巻き構成部用の裏地1C′に至って、該襟巻き構成部用の裏地1C′の長さ方向に沿ってU字形に折れ曲がり、その後再び胴部構成部1A′における後身頃4a′に至り、真直に下方に延びて合流管に至るものである。
【0047】
而して、本製造方法の場合には、袖部構成部1B′における継ぎ目Pを合わせて縫着する際に、袖部構成部1B′を通るチューブ11における分断された折り返し部11bの切断端部同士を接続する必要があり、そしてこの接続は、図示しない筒状のジョイント部材を用いて行ったり、接着剤で接着する等、適宜の手段で行うものである。また、その他の構成については前記製造方法と同様であるから、同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、図9に示した温度調節衣服1の更に別の製造方法について説明する。
【0049】
本製造方法と前記製造方法とは、裏地裁断工程において相違するものである。即ち、前記製造方法は、裏地C1を裁断するとき、胴部構成部1A′における後身頃4a′と左前身頃2a′、右前身頃2a″、並びに袖部構成部1B′、1B′の夫々を分けているが、本製造方法においてはこれらを一体化した状態に裁断するものである。これにより各部分を縫い合わせる手間を省くことができ、より一層製造の効率を良くすることができるものである。 尚、本図、図2図3及び図8では、前身頃が左前身頃2a′と右前身頃2a″とに分かれていたが、後身頃4a′のように、一体化した方形状としても良く、その場合には肩の部分は水平となる。
また、その他の構成は前記製造方法と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0050】
1 温度調節衣服
1A 胴部
1B、1B 袖部
C1 裏地
C2 裏地
1A′ 裏地における胴部構成部
1B′、1B′ 裏地における袖部構成部
1C 襟巻き
1C′ 襟巻き構成部用の裏地
2 前身頃
2a′ 裏地における胴部構成部の左前身頃
2a″ 裏地における胴部構成部の右前身頃
3 スライドファスナー
4 後身頃
7 結合手段
10 結合手段
11 チューブ
11a チューブの直線状の部分
11b チューブの折り返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9