特開2017-57638(P2017-57638A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-57638(P2017-57638A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】環境対応型舗装
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/26 20060101AFI20170303BHJP
   E01C 11/24 20060101ALI20170303BHJP
【FI】
   E01C7/26
   E01C11/24
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-183646(P2015-183646)
(22)【出願日】2015年9月17日
(11)【特許番号】特許第5953413号(P5953413)
(45)【特許公報発行日】2016年7月20日
(71)【出願人】
【識別番号】507281409
【氏名又は名称】佐野 正典
(71)【出願人】
【識別番号】515261767
【氏名又は名称】東山 浩士
(71)【出願人】
【識別番号】594101547
【氏名又は名称】株式会社関電L&A
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393009840
【氏名又は名称】大銑産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正典
(72)【発明者】
【氏名】東山 浩士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
(72)【発明者】
【氏名】津熊 茂
(72)【発明者】
【氏名】阿部 長門
(72)【発明者】
【氏名】吉武 美智男
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 尚毅
(72)【発明者】
【氏名】池田 ▲昇▼吾
(72)【発明者】
【氏名】安田 哲彦
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA01
2D051AA05
2D051AD07
2D051AF02
2D051AF04
2D051AF07
2D051AG01
(57)【要約】
【課題】使用済みの陶磁器等を用いて、吸水性を有するとともに、耐摩耗性及び変形に対する優れた抵抗性を併せて備える環境対応型舗装を提供する。
【解決手段】積層された下層路盤2及び上層路盤3の上に舗装体を形成し、表層5は開粒度アスファルト混合物によって形成する。そして、この表層内における骨材11間の空隙に吸水性を有する充填材12を充填する。この充填材は、セメントと、電力設備等において使用済みとなった碍子を粉砕した微粉末と、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトと、を含む粉体混合物の加水による硬化物である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性充填材が充填された環境対応型舗装であって、
前記吸水性充填材は、セメントと、陶器又は磁器の微粉末と、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトと、を含む粉体混合物の加水による硬化物であることを特徴とする環境対応型舗装。
【請求項2】
前記陶器又は磁器は、電力設備で用いられる碍子の粉砕物であることを特徴とする請求項1に記載の環境対応型舗装。
【請求項3】
前記吸水性充填材は、セメントが35〜55重量%、陶器又は磁器の微粉末が20〜55重量%、微粉炭を燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトを10〜40重量%を含む粉体混合物の加水による硬化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境対応型舗装。
【請求項4】
前記吸水性充填材は、前記フライアッシュを5〜20重量%、前記ゼオライトを5〜20重量%を含む粉体混合物の加水による硬化物であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の環境対応型舗装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、駐車場、広場等に施される舗装に係り、特に開粒度アスファルト混合物層内の空隙に、吸水性を備える材料又は使用済みリサイクル材料を用いた充填材が充填された環境対応型舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏季における日射によって舗装が高温となるのを抑制するものとして保水性舗装が提案されている。これは開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性を有する充填材を充填し、水分の気化熱によって舗装の温度が上昇するのを抑制しようとするものである。吸水性を有する充填材には様々なものが提案されており、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、開粒度アスファルト混合物層内の空隙に充填する吸水性の材料としてシルト系充填材を用いるものである。また、特許文献2には、セメント、繊維及び界面活性剤を含む材料を用いることが提案されている。特許文献3には、フライアッシュを主体とする充填保水材を用いることが提案されており、この保水材には、フライアッシュの他、石膏、消石灰、セメント等を混合するものとしている。
【0004】
また、開粒度アスファルト混合物を用いるものとして半たわみ性舗装が知られている。これは開粒度アスファルト混合物層内の空隙にセメントミルクを充填し、アスファルト舗装の剛性を増大するものである。これによって舗装の変形や轍掘れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−46513号公報
【特許文献2】特開2003−184014
【特許文献3】特開2007−255103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保水性舗装は、広く用いられている密粒度アスファルト混合物を用いた舗装や開粒度アスファルト混合物を用いた透水性舗装と比べて、保水性については効果を有するものの、流動等の変形に対する抵抗性や、耐摩耗性については十分な特性を有するものではなく、半たわみ性舗装等と比べるとかなり劣るものとなる。
【0007】
一方、様々な分野において産業廃棄物、産業副産物が発生しており、これらの処分が課題となっている。電力関連事業では絶縁体として用いられる碍子の使用済みのもの、石炭火力発電で微粉炭を燃焼させたときに生じるフライアッシュの処分が課題となっている。これら副産物等は、再使用の可能性を有するものであり、有効な用途が求められている。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用済みの陶磁器等を用いて、吸水性を有するとともに、耐摩耗性及び変形に対する優れた抵抗性を併せて備える環境対応型舗装を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性充填材が充填された環境対応型舗装であって、 前記吸水性充填材は、セメントと、陶器又は磁器の微粉末と、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトと、を含む粉体混合物の加水による硬化物であることを特徴とする環境対応型舗装を提供する。
【0010】
この環境対応型舗装では、陶器又は磁器の微粉末を含むことによって充填材の強度および耐摩耗性が向上する。また、フライアッシュ及び/又はゼオライトによって吸水性を有するものとなり、路面の温度上昇が抑制される。したがって、変形が生じたり、轍掘れが生じたりすることが抑制された、いわゆる半たわみ性舗装に近い性能と、吸水性及び保水性によって路面温度の上昇が抑制される保水性舗装としての性能とを併せ持つ舗装となる。そして、電力関連事業によって生じるフライアッシュを有効に利用することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の環境対応型舗装において、 前記陶器又は磁器は、電力設備で用いられる碍子の微粉末とする。
【0012】
この環境対応型舗装では、使用済みで廃棄される碍子を有効に再利用することができ、産業廃棄物の低減及び天然資源の消費抑制を図ることができる。また、碍子の微粉末は、硬質で大きな耐摩耗性を有し、開粒度アスファルト混合物の空隙内で硬化した充填材が十分な強度と耐摩耗性を有するものとなる。一方、碍子の微粉末は吸水性をほとんど有しないがほぼ白色であり、吸水性及び保水性を有する充填材を明色にして日射による温度上昇を抑えることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の環境対応型舗装において、 前記吸水性充填材は、セメントが35〜55重量%、陶器又は磁器の微粉末が20〜55重量%、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトを10〜40重量%を含む粉体混合物の加水による硬化物とする。
【0014】
この環境対応型舗装では、上記吸水性充填材が開粒度アスファルト混合物内の空隙に充填されていることによって高い曲げ強度と吸水性とを有するものとなる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の環境対応型舗装において、 前記吸水性充填材は、前記フライアッシュを5〜20重量%、前記ゼオライトを5〜20重量%を含む粉体混合物の加水による硬化物とする。
【0016】
この環境対応型舗装では、セメントの水和反応が進むのにともなってフライアッシュが碍子微粉末と強く結着され、大きな強度を発現する。また、ゼオライトを含むことによって大きな吸水性を有するとともに、ゼオライトの外観が明色であることによって舗装を明るい色にすることができる。つまり、微粉炭の燃焼によって生じるフライアッシュは灰色となり、充填材の色が濃くなって日射による路面の温度上昇が生じやすくなるが、ゼオライトの配合によって吸水性を高く維持するとともに路面の温度の上昇を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の環境対応型舗装では、使用済みの材料を有効に使用して廃棄物の低減を図るとともに、路面の温度上昇を抑制する効果とすぐれた耐久性とを併せて備える舗装とするができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態である環境対応型舗装の概略断面図である。
図2図1に示す環境対応型舗装の表層を示す拡大断面図である。
図3】本発明に係る環境対応型舗装と開粒度アスファルト混合物で形成されたポーラスアスファルト舗装との路面温度を測定した結果を対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である環境対応型舗装を示す概略断面図である。この舗装は、道路の車道部分に設けられたものであり、路床1の上に下層路盤2及び上層路盤3が形成され、その上に舗装体の基層4と表層5とが積層されたものである。
【0020】
上記基層4は、いわゆる密粒度アスファルト混合物によって形成されており、骨材の粒度を調整することにより、アスファルトと骨材とによって密実な層が形成されており、ほぼ不透水性を有するものとなっている。そして、図2に示すように表層はいわゆる開粒度アスファルト混合物によって形成されるとともに、転圧したアスファルト混合物の骨材11間に生じている空隙に吸水性を有する充填材12が充填されて、吸水性及び保水性を有するものとなっている。
【0021】
上記充填材12は、水とセメントと碍子を粉砕した微粉末とフライアッシュとゼオライトとを主材料とするものであり、必要に応じて減水剤、AE剤等の混和剤を用いることができる。これらの材料を混練して液状とし、転圧された開粒度アスファルト混合物層に生じている空隙内に流し込んで硬化させたものである。
上記セメントは、普通ポルトランドセメントを用いることもできるが、この実施の形態では超速硬セメント(ジェットセメント)を用いている。
上記フライアッシュは、火力発電所等において微粉炭を燃焼させたときに生じる石炭灰を集塵装置を用いて回収したものである。
上記ゼオライトは、天然ゼオライトを用いるのが望ましい。
【0022】
上記碍子の微粉末は、送電設備や配電設備で絶縁体として用いられる碍子を粉砕したときに生じる微粉末を用いるものである。碍子は送電設備、配電設備で用いられ、使用済みとなったものは、埋め立て等に用いられる他、粉砕して路盤材料として、又はコンクリートやモルタルの骨材等として用いられている。碍子は粉砕すると長片状に割れることが多く、さらに破砕面のエッジが鋭利となって取扱いが危険となる。そして、鋭いエッジによって路盤材や骨材としてそのまま使用することができない。このため、破砕された碍子をミキサー等に投入し、互いにこすり合せて鋭いエッジを除去する。このときに碍子の微粉末が生じる。また、破砕時にも微粉末が生じており、これらを本発明の舗装における充填材に使用するものである。これら微粉末の粒径は、水、セメント等と混練し、液状として開粒度アスファルト混合物層の空隙に流し込むことができる程度であれば使用することができるが100μm以下、望ましくは75μm以下のものを使用するのが望ましい。
【0023】
上記充填材を混練するときの配合は、セメントを35〜55重量%、碍子の微粉末を20〜55重量%、微粉炭を燃焼時に発生するフライアッシュとゼオライトとの合計を10〜40重量%とし、水セメント比が1.1〜1.7程度となるように加水するのが望ましい。本実施の形態では、セメントを40重量%、碍子の微粉末を30重量%、微粉炭を燃焼時に発生するフライアッシュを15重量%、ゼオライトを15重量%とし、水セメント比を1.25〜1.30としている。
【0024】
上記充填材12は、密粒度アスファルト混合物からなる基層4及び表層を構成する開粒度アスファルト混合物層を形成した後、混練して流動性を有するものを表面から流下させ、表層5を形成する開粒度アスファルト混合物層の空隙内に充填して硬化させる。このように形成された舗装では、空隙内の充填材12が碍子の微粉末を含むことによって高い強度と耐摩耗性を有するものとなり、従来の保水性舗装に比べて流動や変形が生じにくい舗装となる。また、充填材12に含まれるフライアッシュ及びゼオライトが吸水性及び保水性を有し、水の気化熱によって路面の温度上昇を抑制する効果が得られる。
【0025】
上記フライアッシュとゼオライトはいずれも吸水性及び保水性を有するものであり、これらが舗装の温度上昇の抑制する効果に寄与するものであるが、フライアッシュが灰色であるのに対し、ゼオライトは白色に近い明色である。したがって、充填材にゼオライトを含むことによって舗装表面の明度が高くなり、日射による温度上昇を抑制する効果が得られる。一方、フライアッシュはセメント及び碍子の微粉末と結合し、強度の発現に寄与する。したがって、求められる強度と温度抑制効果とに鑑みてフライアッシュの含有量及びゼオライトの含有量を調整することができ、フライアッシュ又はゼオライトのいずれか一方のみを含むものとすることもできる。
【0026】
一方、上記充填材に用いるセメントは、普通ポルトランドセメントを用いることもできるが、超速硬セメントを用いることによって早期に強度が発現して舗装を施した領域における交通を早期に解放することができる。また、超速硬セメントは普通ポルトランドセメントより外観の明度が高く、舗装の表面の明度を高く仕上げることができ、路面温度の上昇の抑制に寄与するものとなる。
【0027】
次に、上記環境対応型舗装の充填材の配合を変えたものについて路面温度の経時変化を測定・比較した結果及び形成した舗装体から切り出した供試体について保水量及び曲げ強度の試験を行った結果について説明する。
路面温度の測定は、次に示すように舗装に用いる充填材の配合を変えた3つの試験舗装について行った。
第1の試験舗装に用いた充填材(JGF)
粉体の混合比 超速硬セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
フライアッシュ 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
第2の試験舗装に用いた充填材(JGZ)
粉体の混合比 超速硬セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
ゼオライト 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
第3の試験舗装に用いた充填材(NGZ)
粉体の混合比 普通セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
ゼオライト 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
【0028】
路面温度の測定は夏季における3日間について行い、その結果は図3に示すとおりである。この図において開粒度アスファルト混合物からなる表層に充填材を充填していないポーラスアスファルト舗装の路面温度と気温とを併せて示す。
【0029】
図3に示されるように、吸水性を有する充填材が開粒度アスファルト混合物層の空隙に充填された舗装では、ポーラスアスファルト舗装に比べて路面温度の上昇が抑制されている。
【0030】
一方、保水量の試験は、上記3つの試験舗装から供試体を切り出して保水量を測定したものである。供試体は100×100×50mmとし、供試体を水中に24時間浸した後、60℃に設定した乾燥機内で供試体の質量が安定するまで乾燥させる。その質量を測定して保水量を算出したものである。
それぞれの供試体について測定された保水量を以下に示す。
第1の試験舗装(JGF)から切り出した供試体の保水量 4.618 kg/m2
第2の試験舗装(JGZ)から切り出した供試体の保水量 4.233 kg/m2
第3の試験舗装(NGF)から切り出した供試体の保水量 3.096 kg/m2
【0031】
上記結果は、一般に保水性舗装とされるものの保水量 3.0kg/m2 (路面温度上昇抑制舗装研究会:保水性舗装 技術資料 Ver.3,2011)を、いずれの試験舗装も満たしている。
【0032】
曲げ強度の試験は、上記3つの試験舗装から供試体を切り出して曲げ試験を行ったものである。供試体の大きさは300×50×50mmとし、3点曲げ試験を行った。結果は以下に示すとおりである。
第1の試験舗装(JGF)から切り出した供試体の曲げ強度 2.25 N/mm2
第2の試験舗装(JGZ)から切り出した供試体の曲げ強度 1.57 N/mm2
第3の試験舗装(NGF)から切り出した供試体の曲げ強度 1.41 N/mm2
【0033】
上記結果より、一般に保水性舗装に求められる曲げ強度 1.0N/mm2 (路面温度上昇抑制舗装研究会:保水性舗装 技術資料 Ver.3,2011)を、いずれの試験舗装についても満足していることが分かる。そして、一般的な半たわみ性舗装に要求される曲げ強度 2.5N/mm2 には満たないが近い値となっている。
【0034】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜に変更して実施することができる。例えば、陶器又は磁器は、碍子の微粉末に限定されるものではなく、使用済みで廃棄される食器類、磁器タイルや衛生陶器等の建設廃材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1:路床, 2:下層路盤, 3:上層路盤, 4:舗装体の基層, 5:舗装体の上層,
11:骨材, 12:充填材,
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2016年5月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性充填材が充填された環境対応型舗装であって、
前記吸水性充填材は、セメントと、陶器又は磁器の微粉末と、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトと、を含む粉体混合物の加水による硬化物であり、
前記粉体混合物は、セメントを35〜55重量%、陶器又は磁器の微粉末を20〜55重量%、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトを10〜40重量%含むものであることを特徴とする環境対応型舗装。
【請求項2】
前記陶器又は磁器は、電力設備で用いられる碍子の粉砕物であることを特徴とする請求項1に記載の環境対応型舗装。
【請求項3】
前記吸水性充填材は、前記フライアッシュを5〜20重量%、前記ゼオライトを5〜20重量%含む粉体混合物の加水による硬化物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環境対応型舗装。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、駐車場、広場等に施される舗装に係り、特に開粒度アスファルト混合物層内の空隙に、吸水性を備える材料又は使用済みリサイクル材料を用いた充填材が充填された環境対応型舗装に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏季における日射によって舗装が高温となるのを抑制するものとして保水性舗装が提案されている。これは開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性を有する充填材を充填し、水分の気化熱によって舗装の温度が上昇するのを抑制しようとするものである。吸水性を有する充填材には様々なものが提案されており、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に記載されている技術は、開粒度アスファルト混合物層内の空隙に充填する吸水性の材料としてシルト系充填材を用いるものである。また、特許文献2には、セメント、繊維及び界面活性剤を含む材料を用いることが提案されている。特許文献3には、フライアッシュを主体とする充填保水材を用いることが提案されており、この保水材には、フライアッシュの他、石膏、消石灰、セメント等を混合するものとしている。
【0004】
また、開粒度アスファルト混合物を用いるものとして半たわみ性舗装が知られている。これは開粒度アスファルト混合物層内の空隙にセメントミルクを充填し、アスファルト舗装の剛性を増大するものである。これによって舗装の変形や轍掘れを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−46513号公報
【特許文献2】特開2003−184014
【特許文献3】特開2007−255103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の保水性舗装は、広く用いられている密粒度アスファルト混合物を用いた舗装や開粒度アスファルト混合物を用いた透水性舗装と比べて、保水性については効果を有するものの、流動等の変形に対する抵抗性や、耐摩耗性については十分な特性を有するものではなく、半たわみ性舗装等と比べるとかなり劣るものとなる。
【0007】
一方、様々な分野において産業廃棄物、産業副産物が発生しており、これらの処分が課題となっている。電力関連事業では絶縁体として用いられる碍子の使用済みのもの、石炭火力発電で微粉炭を燃焼させたときに生じるフライアッシュの処分が課題となっている。これら副産物等は、再使用の可能性を有するものであり、有効な用途が求められている。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用済みの陶磁器等を用いて、吸水性を有するとともに、耐摩耗性及び変形に対する優れた抵抗性を併せて備える環境対応型舗装を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 開粒度アスファルト混合物層内の空隙に吸水性充填材が充填された環境対応型舗装であって、 前記吸水性充填材は、セメントと、陶器又は磁器の微粉末と、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトと、を含む粉体混合物の加水による硬化物であり、 前記粉体混合物は、セメントを35〜55重量%、陶器又は磁器の微粉末を20〜55重量%、微粉炭の燃焼時に発生するフライアッシュ及び/又はゼオライトを10〜40重量%含むものであることを特徴とする環境対応型舗装を提供する。
【0010】
この環境対応型舗装では、陶器又は磁器の微粉末を含むことによって充填材の強度および耐摩耗性が向上する。また、フライアッシュ及び/又はゼオライトによって吸水性を有するものとなり、路面の温度上昇が抑制される。したがって、変形が生じたり、轍掘れが生じたりすることが抑制された、いわゆる半たわみ性舗装に近い性能と、吸水性及び保水性によって路面温度の上昇が抑制される保水性舗装としての性能とを併せ持つ舗装となる。そして、電力関連事業によって生じるフライアッシュを有効に利用することができる。
また、この環境対応型舗装では、上記配合の吸水性充填材が開粒度アスファルト混合物内の空隙に充填されていることによって高い曲げ強度と吸水性とを有するものとなる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の環境対応型舗装において、 前記陶器又は磁器は、電力設備で用いられる碍子の微粉末とする。
【0012】
この環境対応型舗装では、使用済みで廃棄される碍子を有効に再利用することができ、産業廃棄物の低減及び天然資源の消費抑制を図ることができる。また、碍子の微粉末は、硬質で大きな耐摩耗性を有し、開粒度アスファルト混合物の空隙内で硬化した充填材が十分な強度と耐摩耗性を有するものとなる。一方、碍子の微粉末は吸水性をほとんど有しないがほぼ白色であり、吸水性及び保水性を有する充填材を明色にして日射による温度上昇を抑えることができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の環境対応型舗装において、 前記吸水性充填材は、前記フライアッシュを5〜20重量%、前記ゼオライトを5〜20重量%を含む粉体混合物の加水による硬化物とする。
【0014】
この環境対応型舗装では、セメントの水和反応が進むのにともなってフライアッシュが碍子微粉末と強く結着され、大きな強度を発現する。また、ゼオライトを含むことによって大きな吸水性を有するとともに、ゼオライトの外観が明色であることによって舗装を明るい色にすることができる。つまり、微粉炭の燃焼によって生じるフライアッシュは灰色となり、充填材の色が濃くなって日射による路面の温度上昇が生じやすくなるが、ゼオライトの配合によって吸水性を高く維持するとともに路面の温度の上昇を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の環境対応型舗装では、使用済みの材料を有効に使用して廃棄物の低減を図るとともに、路面の温度上昇を抑制する効果とすぐれた耐久性とを併せて備える舗装とするができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である環境対応型舗装の概略断面図である。
図2図1に示す環境対応型舗装の表層を示す拡大断面図である。
図3】本発明に係る環境対応型舗装と開粒度アスファルト混合物で形成されたポーラスアスファルト舗装との路面温度を測定した結果を対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である環境対応型舗装を示す概略断面図である。この舗装は、道路の車道部分に設けられたものであり、路床1の上に下層路盤2及び上層路盤3が形成され、その上に舗装体の基層4と表層5とが積層されたものである。
【0018】
上記基層4は、いわゆる密粒度アスファルト混合物によって形成されており、骨材の粒度を調整することにより、アスファルトと骨材とによって密実な層が形成されており、ほぼ不透水性を有するものとなっている。そして、図2に示すように表層はいわゆる開粒度アスファルト混合物によって形成されるとともに、転圧したアスファルト混合物の骨材11間に生じている空隙に吸水性を有する充填材12が充填されて、吸水性及び保水性を有するものとなっている。
【0019】
上記充填材12は、水とセメントと碍子を粉砕した微粉末とフライアッシュとゼオライトとを主材料とするものであり、必要に応じて減水剤、AE剤等の混和剤を用いることがで
きる。これらの材料を混練して液状とし、転圧された開粒度アスファルト混合物層に生じている空隙内に流し込んで硬化させたものである。
上記セメントは、普通ポルトランドセメントを用いることもできるが、この実施の形態では超速硬セメント(ジェットセメント)を用いている。
上記フライアッシュは、火力発電所等において微粉炭を燃焼させたときに生じる石炭灰を集塵装置を用いて回収したものである。
上記ゼオライトは、天然ゼオライトを用いるのが望ましい。
【0020】
上記碍子の微粉末は、送電設備や配電設備で絶縁体として用いられる碍子を粉砕したときに生じる微粉末を用いるものである。碍子は送電設備、配電設備で用いられ、使用済みとなったものは、埋め立て等に用いられる他、粉砕して路盤材料として、又はコンクリートやモルタルの骨材等として用いられている。碍子は粉砕すると長片状に割れることが多く、さらに破砕面のエッジが鋭利となって取扱いが危険となる。そして、鋭いエッジによって路盤材や骨材としてそのまま使用することができない。このため、破砕された碍子をミキサー等に投入し、互いにこすり合せて鋭いエッジを除去する。このときに碍子の微粉末が生じる。また、破砕時にも微粉末が生じており、これらを本発明の舗装における充填材に使用するものである。これら微粉末の粒径は、水、セメント等と混練し、液状として開粒度アスファルト混合物層の空隙に流し込むことができる程度であれば使用することができるが100μm以下、望ましくは75μm以下のものを使用するのが望ましい。
【0021】
上記充填材を混練するときの配合は、セメントを35〜55重量%、碍子の微粉末を20〜55重量%、微粉炭を燃焼時に発生するフライアッシュとゼオライトとの合計を10〜40重量%とし、水セメント比が1.1〜1.7程度となるように加水するのが望ましい。本実施の形態では、セメントを40重量%、碍子の微粉末を30重量%、微粉炭を燃焼時に発生するフライアッシュを15重量%、ゼオライトを15重量%とし、水セメント比を1.25〜1.30としている。
【0022】
上記充填材12は、密粒度アスファルト混合物からなる基層4及び表層を構成する開粒度アスファルト混合物層を形成した後、混練して流動性を有するものを表面から流下させ、表層5を形成する開粒度アスファルト混合物層の空隙内に充填して硬化させる。このように形成された舗装では、空隙内の充填材12が碍子の微粉末を含むことによって高い強度と耐摩耗性を有するものとなり、従来の保水性舗装に比べて流動や変形が生じにくい舗装となる。また、充填材12に含まれるフライアッシュ及びゼオライトが吸水性及び保水性を有し、水の気化熱によって路面の温度上昇を抑制する効果が得られる。
【0023】
上記フライアッシュとゼオライトはいずれも吸水性及び保水性を有するものであり、これらが舗装の温度上昇の抑制する効果に寄与するものであるが、フライアッシュが灰色であるのに対し、ゼオライトは白色に近い明色である。したがって、充填材にゼオライトを含むことによって舗装表面の明度が高くなり、日射による温度上昇を抑制する効果が得られる。一方、フライアッシュはセメント及び碍子の微粉末と結合し、強度の発現に寄与する。したがって、求められる強度と温度抑制効果とに鑑みてフライアッシュの含有量及びゼオライトの含有量を調整することができ、フライアッシュ又はゼオライトのいずれか一方のみを含むものとすることもできる。
【0024】
一方、上記充填材に用いるセメントは、普通ポルトランドセメントを用いることもできるが、超速硬セメントを用いることによって早期に強度が発現して舗装を施した領域における交通を早期に解放することができる。また、超速硬セメントは普通ポルトランドセメントより外観の明度が高く、舗装の表面の明度を高く仕上げることができ、路面温度の上昇の抑制に寄与するものとなる。
【0025】
次に、上記環境対応型舗装の充填材の配合を変えたものについて路面温度の経時変化を測定・比較した結果及び形成した舗装体から切り出した供試体について保水量及び曲げ強度の試験を行った結果について説明する。
路面温度の測定は、次に示すように舗装に用いる充填材の配合を変えた3つの試験舗装について行った。
第1の試験舗装に用いた充填材(JGF)
粉体の混合比 超速硬セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
フライアッシュ 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
第2の試験舗装に用いた充填材(JGZ)
粉体の混合比 超速硬セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
ゼオライト 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
第3の試験舗装に用いた充填材(NGZ)
粉体の混合比 普通セメント 50重量%
碍子微粉末 35重量%
ゼオライト 15重量%
水セメント比 1.25〜1.30
【0026】
路面温度の測定は夏季における3日間について行い、その結果は図3に示すとおりである。この図において開粒度アスファルト混合物からなる表層に充填材を充填していないポーラスアスファルト舗装の路面温度と気温とを併せて示す。
【0027】
図3に示されるように、吸水性を有する充填材が開粒度アスファルト混合物層の空隙に充填された舗装では、ポーラスアスファルト舗装に比べて路面温度の上昇が抑制されている。
【0028】
一方、保水量の試験は、上記3つの試験舗装から供試体を切り出して保水量を測定したものである。供試体は100×100×50mmとし、供試体を水中に24時間浸した後、60℃に設定した乾燥機内で供試体の質量が安定するまで乾燥させる。その質量を測定して保水量を算出したものである。
それぞれの供試体について測定された保水量を以下に示す。
第1の試験舗装(JGF)から切り出した供試体の保水量 4.618 kg/m2
第2の試験舗装(JGZ)から切り出した供試体の保水量 4.233 kg/m2
第3の試験舗装(NGF)から切り出した供試体の保水量 3.096 kg/m2
【0029】
上記結果は、一般に保水性舗装とされるものの保水量 3.0kg/m2 (路面温度上昇抑制舗装研究会:保水性舗装 技術資料 Ver.3,2011)を、いずれの試験舗装も満たしている。
【0030】
曲げ強度の試験は、上記3つの試験舗装から供試体を切り出して曲げ試験を行ったものである。供試体の大きさは300×50×50mmとし、3点曲げ試験を行った。結果は以下に示すとおりである。
第1の試験舗装(JGF)から切り出した供試体の曲げ強度 2.25 N/mm2
第2の試験舗装(JGZ)から切り出した供試体の曲げ強度 1.57 N/mm2
第3の試験舗装(NGF)から切り出した供試体の曲げ強度 1.41 N/mm2
【0031】
上記結果より、一般に保水性舗装に求められる曲げ強度 1.0N/mm2 (路面温度上昇抑制舗装研究会:保水性舗装 技術資料 Ver.3,2011)を、いずれの試験舗装についても満足していることが分かる。そして、一般的な半たわみ性舗装に要求される曲げ強度 2.5N/mm2 には満たないが近い値となっている。
【0032】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜に変更して実施することができる。例えば、陶器又は磁器は、碍子の微粉末に限定されるものではなく、使用済みで廃棄される食器類、磁器タイルや衛生陶器等の建設廃材を用いることもできる。
【符号の説明】
【0033】
1:路床, 2:下層路盤, 3:上層路盤, 4:舗装体の基層, 5:舗装体の上層,
11:骨材, 12:充填材,