【解決手段】積層鉄心の検査装置10及び積層鉄心の検査方法は、積層鉄心11の検査対象となる検査側面32に対し隙間t1、t2を有した状態で、この検査側面32に沿って積層鉄心11の積層方向に挿通治具31を移動させ、検査側面32に突出部が生じた際には、挿通治具31に設けられた検知センサにより、挿通治具31が突出部に接触したことを検知させる。
請求項1又は2記載の積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心を載置可能な載置台が設けられ、しかも、該載置台は、平面視して前記検査側面の輪郭形状と同一形状を有し、前記挿通治具は前記載置台の内側又は外側を通過可能であることを特徴とする積層鉄心の検査装置。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層鉄心の検査装置において、前記検知センサは、前記挿通治具が前記突出部に接触した際の抵抗荷重を検知可能な荷重センサであることを特徴とする積層鉄心の検査装置。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心は内周側に複数の磁極部を備えた固定子鉄心であって、前記検査側面は、前記各磁極部の先端面及び隣り合う前記磁極部で形成される溝部で構成され、
前記挿通治具は、平面視して円形状となって、その外側面が前記各磁極部の先端面に対し隙間を有する内形用挿通部と、該内形用挿通部の外周に設けられ、平面視して前記溝部内に位置し、その外側面が前記各溝部に対し隙間を有する磁極用挿通部とを備えたことを特徴とする積層鉄心の検査装置。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心は外周側に複数の磁極部を備えた固定子鉄心であって、前記検査側面は、前記各磁極部の先端面及び隣り合う前記磁極部で形成される溝部で構成され、
前記挿通治具は、平面視して環状となって、その内側面が前記各磁極部の先端面に対し隙間を有する外形用挿通部と、該外形用挿通部の内周に設けられ、平面視して前記溝部内に位置し、その外側面が前記各溝部に対し隙間を有する磁極用挿通部とを備えたことを特徴とする積層鉄心の検査装置。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心は周方向に複数の磁石挿入孔が形成された環状の回転子鉄心であって、前記検査側面は、該積層鉄心の内側面と前記磁石挿入孔の内側面で構成され、
前記挿通治具は、平面視して円形状となって、その外側面が前記積層鉄心の内側面に対し隙間を有する内形用挿通部と、平面視して前記磁石挿入孔内に位置し、その外側面が前記磁石挿入孔の内側面に対し隙間を有する磁石挿入孔用挿通部とを備えたことを特徴とする積層鉄心の検査装置。
請求項10又は11記載の積層鉄心の検査方法において、平面視して前記検査側面の輪郭形状と同一形状を有する載置台上に、前記積層鉄心を載置した後、前記挿通治具が前記載置台の内側又は外側を移動することを特徴とする積層鉄心の検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像カメラ93を用いる場合、その検知力を高めなければ、品質不良の検出精度が低くなり、検知漏れが発生するおそれがある。このため、検知力が低ければ、その後の作業者による検査時間が長くなり、作業性の悪化や作業効率の低下を招く。
一方、画像カメラ93の検知力を高めた場合、積層した鉄心片94による積層鉄心91の倒れも検出するおそれがあり、品質不良の過検出が発生し易くなる。このため、作業者による検査のやり直しが必要になり、作業効率が低下する。
また、生産数量が多い積層層鉄心91の品質検査では、画像カメラ93による検知時間と1つの積層鉄心91に要する検査時間(サイクルタイム)から、画像カメラ93の設置台数を増やす必要もあるが、画像カメラ93は高価であるため設備コストがかかる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、作業効率の低下を招くことなく、作業性よく経済的に品質検査を実施可能な積層鉄心の検査装置及び積層鉄心の検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る積層鉄心の検査装置は、複数の鉄心片を積層して形成された積層鉄心の検査装置において、
前記積層鉄心の検査対象となる検査側面に対し隙間を有した状態で、該検査側面に沿って前記積層鉄心の積層方向に移動可能な挿通治具と、
前記挿通治具に設けられ、前記検査側面に突出部が生じた際に、移動する前記挿通治具が前記突出部に接触したことを検知する検知センサとを有する。
【0008】
第1の発明に係る積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心は、複数の前記鉄心片を積層して形成した単位積層鉄心を複数段積み重ねて形成され、
前記挿通治具の厚みは1つの前記単位積層鉄心の厚みよりも薄く、しかも、前記挿通治具が前記各単位積層鉄心の検査側面に沿って移動するごとに、前記挿通治具と前記検査側面との隙間が調整可能であることが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心を載置可能な載置台が設けられ、しかも、該載置台は、平面視して前記検査側面の輪郭形状と同一形状を有し、前記挿通治具は前記載置台の内側又は外側を通過可能であることが好ましい。
【0010】
第1の発明に係る積層鉄心の検査装置において、前記検知センサは、前記挿通治具が前記突出部に接触した際の抵抗荷重を検知可能な荷重センサであるのがよい。
【0011】
ここで、前記積層鉄心は内周側に複数の磁極部を備えた固定子鉄心であって、前記検査側面は、前記各磁極部の先端面及び隣り合う前記磁極部で形成される溝部で構成され、
前記挿通治具は、平面視して円形状となって、その外側面が前記各磁極部の先端面に対し隙間を有する内形用挿通部と、該内形用挿通部の外周に設けられ、平面視して前記溝部内に位置し、その外側面が前記各溝部に対し隙間を有する磁極用挿通部とを備えるのがよい。
また、前記積層鉄心は外周側に複数の磁極部を備えた固定子鉄心であって、前記検査側面は、前記各磁極部の先端面及び隣り合う前記磁極部で形成される溝部で構成され、
前記挿通治具は、平面視して環状となって、その内側面が前記各磁極部の先端面に対し隙間を有する外形用挿通部と、該外形用挿通部の内周に設けられ、平面視して前記溝部内に位置し、その外側面が前記各溝部に対し隙間を有する磁極用挿通部とを備えるのがよい。
【0012】
なお、前記積層鉄心には更にボルト孔が形成され、
前記挿通治具には更に、平面視して前記ボルト孔内に位置し、その外側面が前記ボルト孔の内側面に対し隙間を有するボルト孔用挿通部を設けることもできる。
【0013】
第1の発明に係る積層鉄心の検査装置において、前記積層鉄心は周方向に複数の磁石挿入孔が形成された環状の回転子鉄心であって、前記検査側面は、該積層鉄心の内側面と前記磁石挿入孔の内側面で構成され、
前記挿通治具は、平面視して円形状となって、その外側面が前記積層鉄心の内側面に対し隙間を有する内形用挿通部と、平面視して前記磁石挿入孔内に位置し、その外側面が前記磁石挿入孔の内側面に対し隙間を有する磁石挿入孔用挿通部とを備えるのがよい。
なお、前記積層鉄心には更に、重量軽減孔が形成され、
前記挿通治具には更に、平面視して前記重量軽減孔内に位置し、その外側面が前記重量軽減孔の内側面に対し隙間を有する重量軽減孔用挿通部を設けることもできる。
【0014】
前記目的に沿う第2の発明に係る積層鉄心の検査方法は、複数の鉄心片を積層して形成された積層鉄心の検査方法において、
前記積層鉄心の検査対象となる検査側面に対し隙間を有した状態で、該検査側面に沿って前記積層鉄心の積層方向に挿通治具を移動させ、前記検査側面に突出部が生じた際には、前記挿通治具に設けられた検知センサにより、前記挿通治具が前記突出部に接触したことを検知させる。
【0015】
第2の発明に係る積層鉄心の検査方法において、前記積層鉄心は、複数の前記鉄心片を積層して形成した単位積層鉄心を複数段積み重ねて形成され、
前記挿通治具の厚みを1つの前記単位積層鉄心の厚みよりも薄くし、前記挿通治具が前記各単位積層鉄心の検査側面に沿って移動するごとに、前記挿通治具と前記検査側面との隙間を調整可能にすることが好ましい。
【0016】
第2の発明に係る積層鉄心の検査方法において、平面視して前記検査側面の輪郭形状と同一形状を有する載置台上に、前記積層鉄心を載置した後、前記挿通治具が前記載置台の内側又は外側を移動することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層鉄心の検査装置及び積層鉄心の検査方法は、積層鉄心の検査対象となる検査側面に沿って挿通治具を移動させ、この挿通治具が検査側面に生じた突出部に接触した際には、挿通治具が突出部に接触したことを検知センサにより検知するので、簡単な構成で確実に品質不良を検知できる。
従って、作業効率の低下を招くことなく、作業性よく経済的に品質検査を実施できる。
【0018】
また、挿通治具の厚みを1つの単位積層鉄心の厚みよりも薄くし、挿通治具と検査側面との隙間を調整可能にする場合は、複数の単位積層鉄心を積み重ねて形成された積層鉄心の品質検査において、挿通治具が各単位積層鉄心の検査側面に沿って移動するごとに、検査側面に対応して挿通治具の位置を調整できる。これにより、各単位積層鉄心に倒れが発生した場合においても、各単位積層鉄心における品質不良を、精度よく検出できる。
【0019】
そして、平面視して検査側面の輪郭形状と同一形状を有する載置台上に、積層鉄心を載置した後、挿通治具が載置台の内側又は外側を移動する場合、挿通治具の位置調整が載置台によって行われた後、引き続き積層鉄心の品質検査を行うことができる。これにより、積層鉄心の品質検査の際に、挿通治具が積層鉄心に衝突することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、
図1(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の検査装置(以下、単に検査装置ともいう)10を用いて品質検査を行う積層鉄心11について説明する。
【0022】
積層鉄心11は、インナーロータ型に使用する固定子鉄心(ステータ)である。
この積層鉄心11は、環状の複数の鉄心片12を積層して形成されている。
鉄心片12は、環状の一体構造のものであるが、複数の円弧状の鉄心片部を環状に連結できる分割構造のものや、複数の円弧状の鉄心片部の周方向の一部が連結部で繋がり、この連結部を折曲げて環状にできる構造のものでもよい。
【0023】
鉄心片12は、厚みが、例えば、0.10〜0.5mm程度の電磁鋼板やアモルファス等からなる条材(薄板条材)から打抜き形成されるものである。なお、鉄心片は、1枚の条材から打抜いたものや、条材を複数枚(例えば、2枚、更には3枚以上)重ねた状態で打抜いたものでもよい。
積層方向に隣り合う鉄心片12同士は、かしめ13で連結されているが、かしめ、樹脂(熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂)、接着剤、及び、溶接のいずれか1又は2以上を用いて、連結することもできる。
【0024】
積層鉄心11は、環状のヨーク部14と、このヨーク部14の内周側に一体的に連接した複数の磁極部15とを有している。
ヨーク部14と磁極部15は、ヨーク片部16と磁極片部17を有する鉄心片12を複数積層することで、それぞれ形成されている。この磁極片部17は、条材に対してスロット18を打抜くことで、形成される。
【0025】
なお、インナーロータ型に使用する固定子鉄心としては、以下のものもある。
図2に示す積層鉄心19は、複数の鉄心片20を積層して形成した単位積層鉄心21を、2段以上の複数段(ここでは、6段)積み重ねて形成したものである。この鉄心片20は、上記した環状の鉄心片12と同様のものであるが、上記した複数の円弧状の鉄心片部を繋ぐ連結部を折曲げて環状にしたものでもよい。
また、
図3(A)に示す積層鉄心22は、この積層鉄心22を図示しないケース部品にボルト締めする際に使用するボルト孔23が形成されたものである。
【0026】
そして、積層鉄心としては、
図3(B)、
図4に示すものもある。
図3(B)に示す積層鉄心24は、アウターロータ型に使用する固定子鉄心(ステータ)である。
この積層鉄心24は、環状のヨーク部25と、このヨーク部25の外周側に一体的に連接した複数の磁極部26とを有するものであり、これ以外は、上記した積層鉄心11と同様である。
【0027】
図4に示す積層鉄心27は、インナーロータ型に使用する回転子鉄心(ロータ)である。
積層鉄心27は環状となって、その中央には軸孔(シャフト孔)28が形成され、この軸孔28を中心としてその周囲に(周方向に)、積層鉄心27の積層方向に形成された貫通孔からなる永久磁石(図示しない)の磁石挿入孔29が、複数形成されている。この磁石挿入孔29内への永久磁石の固定は、上記した樹脂を用いて行うのがよい。
【0028】
この積層鉄心27も、前記した条材から打抜き形成されるものであり、その形状以外は、前記した積層鉄心11と同様である。
なお、積層鉄心27には更に、その周方向に複数の重量軽減孔(貫通孔)を形成することもできる。
更に、積層鉄心には、上記した積層鉄心27と略同様の構成のアウターロータ型に使用する回転子鉄心(ロータ)もある。
【0029】
続いて、
図1(A)、(B)を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の検査装置10について説明する。
検査装置10は、金属製の載置台30と、金属製の挿通治具31と、検知センサの一例である荷重センサ(図示しない)とを有するものであり、前記した鉄心片12の打抜き位置のずれや、鉄心片12の積層時における異物の噛み込み等に起因して、積層鉄心11の検査対象となる検査側面32に生じた突出部(平面視して検査側面32から突出した部分)を検出する装置である。なお、積層鉄心11の検査側面32は、各磁極部15の先端面33と、隣り合う磁極部15で形成される溝部(凹部)34の内面である。
【0030】
載置台30は、積層鉄心11を載置可能な台であり、その内側に挿通治具31が通過可能(挿通可能)な開口部を有し、その開口部の内側面35の輪郭形状が、平面視して検査側面32の輪郭形状と同一となっている。
なお、載置台30の形状は、これに限定されるものではなく、挿通治具31を通過させる場合は、挿通治具31が通過する開口部の形状を、平面視して検査側面32の輪郭形状より大きくした形状にしてもよく、また、挿通治具31を通過させない場合は、開口部を形成しない形状にすることもできる。
【0031】
挿通治具31は、平面視して円形状(円盤状)となった内形用挿通部36と、この内形用挿通部36の外周に等ピッチで設けられた複数の磁極用挿通部37とを備え、その輪郭形状が積層鉄心11の検査側面32の輪郭形状に相似している。
内形用挿通部36は、その外側面38が各磁極部15の先端面33に対し隙間t1を有している。また、各磁極用挿通部37は、平面視して溝部34内(スロット18)に位置し、その外側面(外周面)39が各溝部34の内面に対し隙間t2を有している。
この隙間t1、t2は、例えば、客先から要求される製品品質に応じて設定されるものであり、70μm以下(好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下)程度である。なお、隙間t1、t2の下限値については、特に限定されるものではないが、例えば、10μm程度である。
【0032】
この挿通治具31は、昇降台(昇降手段)40に取付け取外し可能となって、常時は、載置台30と同等の高さ位置、又は、載置台30より下方位置に、待機している。これにより、挿通治具31は載置台30の内側を通過して昇降可能(移動可能)になるので、挿通治具31は載置台30によって位置調整され、挿通治具31の昇降時に、挿通治具31が積層鉄心11に衝突することを防止できる。
また、挿通治具31(内形用挿通部36と各磁極用挿通部37)の上側角部と下側角部には、テーパ加工(面取り)が施されている。これにより、挿通治具31の昇降時に、挿通治具31が積層鉄心11(検査側面32)に引っ掛かることを抑制、更には防止できる。
【0033】
荷重センサは、挿通治具31(例えば、挿通治具31と昇降台40の間)に設けられたロードセルであり、積層鉄心11の検査側面32に生じた突出部を検知するものである。使用にあっては、検査側面32に突出部が生じた際に、移動する挿通治具31(内形用挿通部36及び/又は磁極用挿通部37)が突出部に接触することで抵抗荷重が検知され、この抵抗荷重が予め設定した荷重を超えた場合に、突出部が生じていると判断される。
なお、荷重センサの設置個数は、挿通治具の大きさによって1個又は2個以上の複数個でもよい。また、挿通治具31が突出部に接触したことを検知できるものであれば、荷重センサ以外の検知センサを使用することもできる。
【0034】
以上の構成により、昇降台40を動作させることで、挿通治具31は、積層鉄心11の検査側面32に対し隙間t1、t2を有した状態で、検査側面32に沿って積層鉄心11の積層方向に移動できる。この昇降台40の動作は、図示しない制御部によって行われる。
なお、挿通治具31は、
図1(B)に示すように、その厚みを薄くしているが、
図5に示す挿通治具41(内形用挿通部42及び磁極用挿通部43)のように、厚くすることもできる。この挿通治具41は、厚みが異なること以外、挿通治具31と略同様の構成である。
【0035】
上記した厚みを薄くした挿通治具31は、
図2に示す積層鉄心19の品質検査に対し、特に有効である。
積層鉄心19のように、複数の単位積層鉄心21を積み重ねた場合、上記した厚みの薄い挿通治具31を真っ直ぐ上昇させたときや、厚みの厚い挿通治具41を上昇させたときに、積層鉄心19を構成する隣り合う磁極部44で形成される溝部45の両側面(磁極部44の側面)と、磁極用挿通部37、43との隙間の大きさが、積層鉄心19の積層方向で不規則に変動する。
【0036】
これは、複数の単位積層鉄心21を積み重ねた際の積みずれと、積層した鉄心片20による積層鉄心19の倒れによる。なお、
図2では、説明の便宜上、積層鉄心19の倒れを過大に図示している。
このため、各単位積層鉄心21においては品質不良でない場合においても、積層鉄心19の倒れによって品質不良と判断される場合があり、各単位積層鉄心21における品質不良の検出精度が低くなる。
【0037】
そこで、このような場合は、円盤状の挿通治具31を、その厚みを1つの単位積層鉄心21の厚みよりも薄くし(例えば、5〜10mm程度薄くし)、しかも、その軸心を中心として回動(揺動)可能とする。なお、挿通治具31を回動させる方法としては、例えば、
図1(B)に示した昇降台40の下部にベアリングを設ける方法等がある。
これにより、挿通治具31の磁極用挿通部37は、挿通治具31の軸心を中心として回動可能(隣り合う磁極部37の間を水平方向に揺動可能)となる。
【0038】
以上の構成により、挿通治具31が、各単位積層鉄心21の検査側面に沿って移動するごとに、積層鉄心19の倒れに応じて、磁極用挿通部37と検査側面(溝部45の両側面)との隙間が調整可能となるため、品質不良の検出精度が高められる。
なお、複数の単位積層鉄心21の積みずれが品質不良に繋がる程度に大きい場合は、当然のことながら、単位積層鉄心21によって挿通治具31の上昇が妨げられるため、品質不良を検出できる。
【0039】
また、
図3(A)に示す積層鉄心22の品質検査には、上記した挿通治具31の代わりに、挿通治具46を使用できる。
挿通治具46は、挿通治具31の構成(内形用挿通部36と磁極用挿通部37)に更に、ボルト孔用挿通部47が設けられたものである。このボルト孔用挿通部47は、その長さが積層鉄心22の積層厚みよりも長い円柱状のものであり、平面視してボルト孔23内に位置し、その外側面48がボルト孔23の内側面49に対し、隙間(前記した隙間t1、t2と同程度)を有するものである。即ち、積層鉄心22の検査対象となる検査側面に、ボルト孔23の内側面49も含まれる。
【0040】
ボルト孔用挿通部47は、昇降台(昇降台40と同様の機能を有する)に立設され、その上側角部には、テーパ加工が施されている。
これにより、昇降台を動作させることで、ボルト孔用挿通部47は、ボルト孔23の内側面49に対し隙間を有した状態で、内側面49に沿って昇降し、ボルト孔23の貫通状態(品質)を検査できる。また、ボルト孔用挿通部47はボルト孔23内を通過するため、ボルト孔23内に異物があれば、これを除去する機能も有する。
【0041】
このボルト孔用挿通部47は、内形用挿通部36とは別の昇降台によって、ボルト孔23内を昇降できるが、内形用挿通部36が設けられた昇降台40に設けることが好ましい。この場合、内形用挿通部36は、その上端がボルト孔用挿通部47の上端と同程度の高さ位置となるように、支持部を介して昇降台40に取付け固定するのがよい。
これにより、昇降台40を動作させることで、積層鉄心22を構成する磁極部15の先端面33と各溝部34の内面、及び、ボルト孔23の内側面49を、同時に検査できるため、作業効率が高められる。
【0042】
そして、
図3(B)に示す積層鉄心24の品質検査には、前記した挿通治具31の代わりに、挿通治具50を使用できる。この積層鉄心24の検査側面51は、各磁極部26の先端面52と、隣り合う磁極部26で形成される溝部53の内面である。
挿通治具50は、平面視して環状となった外形用挿通部54と、この外形用挿通部54の内周に等ピッチで設けられた複数の磁極用挿通部55とを備えている。外形用挿通部54は、その内側面56が各磁極部26の先端面52に対し隙間t1を有し、各磁極用挿通部55は、平面視して溝部53内に位置し、その外側面57が各溝部53の内面に対し隙間t2を有している。
【0043】
この積層鉄心24の載置台は、前記した載置台30とは形状が異なっている。
載置台は、その外側を挿通治具50が通過可能(挿通可能)なものであり、その外側面の輪郭形状が、平面視して検査側面51の輪郭形状と同一となっている。
なお、載置台の形状は、これに限定されるものではなく、挿通治具50を通過させない場合は、平面視して検査側面51の輪郭形状より大きくした形状にすることもできる。
【0044】
更に、
図4に示す積層鉄心27の品質検査には、前記した挿通治具31の代わりに、挿通治具58を使用できる。この積層鉄心27の検査側面59は、積層鉄心27(軸孔28)の内側面60と磁石挿入孔29の内側面61である。
挿通治具58は、平面視して円形状となった(円柱状の)内形用挿通部62と、平面視して磁石挿入孔29内に位置する(四角柱状の)磁石挿入孔用挿通部63とを備えている。内形用挿通部62は、その外側面64が積層鉄心27の内側面60に対し隙間t1を有し、各磁石挿入孔用挿通部63は、その外側面65が磁石挿入孔29の内側面61に対し隙間t2を有している。
【0045】
この内形用挿通部62と磁石挿入孔用挿通部63は共に、昇降台(昇降台40と同様の機能を有する)に立設されるものであり、その長さが積層鉄心27の積層厚みよりも長く、その上側角部にはテーパ加工が施されている。
内形用挿通部と磁石挿入孔用挿通部は、例えば、板状とし、昇降台からの高さ位置が、積層鉄心27の積層厚みより高い位置となるように、支持部を介して昇降台に取付け固定することもできる。
【0046】
なお、積層鉄心に更に、貫通孔からなる重量軽減孔が形成されている場合は、挿通治具58(内形用挿通部62と磁石挿入孔用挿通部63)に更に、重量軽減孔用挿通部を設ける。即ち、積層鉄心の検査対象となる検査側面に、重量軽減孔の内側面も含まれる。
この重量軽減孔用挿通部は、棒状となって、その長さが積層鉄心の積層厚みよりも長く、平面視して重量軽減孔内に位置し、その外側面が重量軽減孔の内側面に対し、隙間(前記した隙間t1、t2と同程度)を有するものである。
【0047】
次に、本発明の一実施の形態に係る積層鉄心の検査方法について、前記した積層鉄心の検査装置10と積層鉄心11を用い、
図1(A)、(B)を参照しながら説明する。
まず、複数の鉄心片12を積層して形成された積層鉄心11を、載置台30上に配置する。この積層鉄心11の配置は、積層鉄心11の検査側面32の輪郭形状が、載置台30の内側面35の輪郭形状と一致するように行う。
【0048】
次に、制御部により昇降台40を動作させ、載置台30と同等の高さ位置、又は、載置台30より下方位置に待機した挿通治具31を、載置台30の内側を通過させながら上昇させる。
これにより、積層鉄心11の検査側面32(磁極部15の先端面33と各溝部34の内面)に対し隙間t1、t2を有した状態で、挿通治具31を検査側面32に沿って積層鉄心11の積層方向に上昇させることができる。
【0049】
ここで、積層鉄心11の検査側面32に突出部が生じていない場合(品質不良はないと判断された場合)は、荷重センサが過剰な抵抗荷重を検知することなく(挿通治具31の上昇が突出部によって妨げられることなく)、挿通治具31は積層鉄心11の上方位置まで移動する。
このため、積層鉄心11の上方位置まで移動した挿通治具31を、待機位置まで下降させた後、積層鉄心11を次の工程へと搬送する。
【0050】
一方、積層鉄心11の検査側面32に突出部が生じている場合(品質不良と判断された場合)は、挿通治具31の上昇が突出部によって妨げられるため、荷重センサが過剰な抵抗荷重を検知する。なお、積層鉄心11が品質不良であることは、制御部を介して作業者へ知らされる。
このため、この挿通治具31を待機位置まで下降させた後、例えば、作業者が積層鉄心11の不良部分を補修して、次の工程へと搬送するか、補修不可能な場合は、そのまま廃棄処分とする。
【0051】
このように、検査装置10による品質検査は、積層鉄心11の内周側の検査側面32について行い、外周側の側面については行っていない。しかし、環状の鉄心片12の径方向の幅は、鉄心片12の周方向に渡って同一であることから、積層鉄心11の積みずれについては、外周側の側面で異常があれば、内周側の検査側面32で異常が検出されることになる。
なお、
図3(A)、(B)、
図4に示す積層鉄心22、24、27も、上記と略同様の方法により、品質検査を実施できる。
【0052】
また、
図2に示す積層鉄心19については、挿通治具31が、その軸心を中心として回動可能となっているため、積層鉄心19に倒れが発生していても、挿通治具31が各単位積層鉄心21の検査側面に沿って移動するごとに、挿通治具31の磁極用挿通部37の外側面39と、積層鉄心19の検査側面との隙間を調整できる。
【0053】
以上のことから、本発明の積層鉄心の検査装置及び積層鉄心の検査方法を用いることで、作業効率の低下を招くことなく、作業性よく経済的に品質検査を実施できる。
【0054】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の積層鉄心の検査装置及び積層鉄心の検査方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、挿通治具を、積層鉄心の側面に沿ってその積層方向に上昇させることで、積層鉄心の品質検査を行った場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、挿通治具を、積層鉄心の側面に沿ってその積層方向に下降させながら、積層鉄心の品質検査を行うこともできる。また、積層鉄心にスキューがかかっている場合も、挿通治具を斜めに上昇又は下降させて対応することができる。
【0055】
そして、前記実施の形態においては、挿通治具を構成する内形用挿通部と磁極用挿通部(外形用挿通部と磁極用挿通部についても同じ)を、一体的に設けた場合について説明したが、内形用挿通部に対して各磁極用挿通部を取付け取外し可能な構成とすることもできる。これにより、積層鉄心の形状に応じて、内形用挿通部と磁極用挿通部を選択して使用できるため、例えば、積層鉄心の種類ごとに挿通治具を準備する必要がなくなる。
なお、この形態は、ボルト孔用挿通部、磁石挿入孔用挿通部、及び、重量軽減孔用挿通部についても同様である。