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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-58215(P2017-58215A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】金属異物検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20170303BHJP
   B07C 5/344 20060101ALN20170303BHJP
【FI】
   G01N27/72
   B07C5/344
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-182392(P2015-182392)
(22)【出願日】2015年9月16日
(71)【出願人】
【識別番号】599058866
【氏名又は名称】トック・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】近藤 信一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】隅井 努
(72)【発明者】
【氏名】隅井 典生
【テーマコード(参考)】
2G053
3F079
【Fターム(参考)】
2G053AA13
2G053AB01
2G053BA04
2G053BB03
2G053BB19
2G053BC14
2G053BC20
2G053CB21
3F079AD21
3F079CA36
3F079CB09
3F079DA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医薬品、化粧品、食料品等が連続包装袋に充填された被検査物に含まれる金属異物を、外部磁界、電磁波、磁界の乱れの影響を排除しながら、検知できる金属異物検知装置を提供する。
【解決手段】連続的に連結された連続包装体に充填された被包装体からなる被検査物2をセンサーコイルからなるセンサーで、その中の金属異物を検知する。被検査物2が金属異物検知装置1の中空部8を通過する際、被検査物2とセンサーを相対的に運動させるための加振手段20を有する。よって、連続包装体の製造における速/遅の間欠動作搬送を繰り返す環境で、被検査物2中の微小金属異物の有無を確実に検知することを可能とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分包された包装が連続的に連結された連続包装体に詰められた被検査物内の磁性体の有無を検知するための検知部、及び、前記検知部から出力される検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段からなる金属物検出装置において、
前記検知部は、コアに導線を巻いた構成のセンサーコイルからなり、
前記連続包装体が前記センサーコイルの付近を通過する際、前記連続包装体と前記センサーコイルを相対的に運動させるために機械的振動を与える加振手段を有する
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属異物検知装置において、
前記加振手段は、前記連続包装体と前記センサーコイルを相対的に運動させるとき、前記連続包装体が流れる方向に対して直角方向に運動させる
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属異物検知装置において、
前記加振手段は、駆動手段と、前記連続包装体に接して配置された回転体と、前記回転体に前記駆動手段の回転運動を伝達するための回転軸からなり、
前記回転軸の回転軸線に対して直角の面における前記回転体の断面は、楕円状、多角形状、溝カム、及び円筒カムから選択される1形状を有する
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の金属異物検知装置において、
前記検知部は、第1センサーコイルと第2センサーコイルの2つの前記センサーコイル、及び、細長い第1ブースターと第2ブースターからなる磁化手段からなり、
前記第1センサーコイルと前記第1ブースターは、平行に第1筐体の1側面に接触して配置され、
前記第2センサーコイルと前記第2ブースターは、平行に第2筐体の1側面に接触して配置され、
前記第1筐体と前記第2筐体は、その間に前記連続包装体が通過する隙間を有して、前記第1センサーコイルと前記第2センサーコイルが接触して配置された前記側面を対向して平行に、かつ、前記第1センサーコイルと前記第2センサーコイルが、及び、前記第1ブースターと前記第2ブースターが平行になるように、配置され、
前記第1筐体と前記第2筐体の両側は連結板で固定され、
前記連続包装体が通過する前記隙間は、手前に、前記連続包装体の幅より大きい孔を有するガイドを備えている
ことを特徴とする金属異物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物に混入した金属異物を検知する金属異物検知装置に関するものである。特に、アルミニウム、アルミ蒸着フィルム等の非磁性金属、プラスチック樹脂フィルム等の非金属の連続包装袋に充填された被検査物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属物の検出装置は、様々な分野で利用されている。その代表的な例は、商品の製造工程で、商品に混入した金属異物の検出である。具体的には、食品、医薬品等の製造過程において、搬送機、洗浄機、攪拌機、切断機、練機、蒸し器等の各種容器、刃物、篩等の一部が、摩耗、金属疲労等を受けて、むくれ、破断、剥がれ、削れ、欠け等による欠片が製品に異物として入り込まれることがある。
【0003】
これらの異物を検知し、商品から排除することが重要である。商品である被検査物に混入した異物を検知する手段として、磁性体金属には電磁波型のセンサーコイル等が利用されている。金属異物は、上述の各種容器、刃物、篩等を構成するオーステナイト系ステンレス鋼であることが多い。オーステナイト系ステンレス鋼は、塑性変形するとマルテンサイト変態を誘発し、弱い磁性を持つ結晶構造に変化する。
【0004】
このため、センサーコイル近傍に磁石ブースターを配置し、その強力な磁力線で金属異物を磁化させるので、高い感度で金属異物の検知を可能としたものである。被検査物が磁石ブースターを通過するとき、磁石ブースターが発生する磁化の働きで、金属異物の磁性が一定の方向に向き磁化される。本発明の出願人等は、特許文献1〜3に記載の発明を提案した。
【0005】
特許文献1〜3に記載された装置は、食品等の被検出物中の金属異物を検知するものであり、提案したセンサーコイルを用いて、金属異物である微小な磁性体の検知に成功した。具体的には、特許文献1には、被検出物中に混入した金属異物を検知する金属異物検知方法と金属異物検知装置が開示されている。この発明によると、被検出物中に混入したステンレス等の金属異物を検知するのみならず、導電性の包装材料で包まれた食品、医薬品、工業用材料等の被検出物中に混入した金属異物も検知できる。
【0006】
特許文献1に記載された金属異物検知装置は、コアに導線を巻いた構成の1つのコイルを有した検出部により微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した金属異物からの検出磁界を、コイルの検出電圧、又は検出電流として検出して検出信号を出力するものである。
少磁界は、コイルに、数百Hzから数十kHzの周波数、又は直流で印加される電圧であって供給される電流が微少で、かつコイルを構成するコアの磁化(B−H)特性の磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものである。
【0007】
金属異物がコイル付近を通過するとき、コイルに鎖交する磁力線の形成が乱れ、信号電圧の振幅、位相、周波数が変化し、これにより、金属異物を検知する。この装置は、1mm以下の金属異物を検知できる優れた感度をもつものである。また、アルミニウム包装内の針等の細長い金属物と、金属粉末からなる酸化防止剤の検知が可能である。特許文献3に開示されたこの金属探知機用センサーは、被検出物中の金属物を探知するための金属探知機用センサーであって、コアに接触して配置され、静磁場による磁力線を発生させ、前記金属物を磁化するための磁石とからなる。
【0008】
特許文献3では、E型等の鉄心に銅線コイルを巻いた2対のセンサーコイルに交流電圧を印加すると交番磁界が発生する。このとき、2対のセンサーコイルを平衡又は非平衡ブリッジ回路になるよう接続しておく。交番磁界が変化されない限りブリッジ回路の出力電流は一定である。交番磁界を発生している2対のセンサーコイルの上下間を磁性体又は磁化された金属異物を含む被検査物が通過するとき、交番磁界の磁力線のフォーム(形成)が乱される。
【0009】
このときセンサーコイルを流れる電流が変化し、平衡又は非平衡ブリッジ回路の出力電圧が変化する。この出力信号電圧の変化をもって金属異物が検知できる。マグネット磁石ブースターは、強い磁界を発生し、磁性体の被検出物を磁化するためのもので、永久磁石等を有する構造になっている。マグネット磁石ブースターの近辺を通過する被検出物が磁化されることよって、センサーコイルで検知するときに検知感度が向上する。
【0010】
特許文献4に開示された金属探知機は、被検出物を搬送する搬送路と、搬送路の途中に設けられ、電流を流して磁界を発生させるためのコイルがコアに巻かれたセンサーコイルと、コアに接触して配置されている磁石からなる。詳しくは、磁石の静磁場とセンサーコイルの交流電流によって、不平等な静磁場を形成させている。被検出物がこの不平等磁場を横切ったとき、金属異物が一時的に磁化されると同時に、磁化された被検出物から発生する磁場が、センサーコイルに鎖交する磁場を乱す。
【0011】
その磁場の乱れをセンサーコイルが検出信号として送出している。特許文献5には、流れている連続包装袋の中の金属異物を、連続包装袋を一時蓄積するアキュームの手前に検知する金属異物検知装置が開示されている。金属異物検知装置は、連続包装袋を細長い中空の管状ガイドの中を通し、管状ガイドの両側に配置したセンサーコイルを用いて、金属異物を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3857271号
【特許文献2】特開2005−188985号公報
【特許文献3】国際公開WO2003/027659号公報
【特許文献4】特許第3875161号
【特許文献5】実用新案登録第3177557号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の検出機は、連続包装袋の流れが止まると、その中に存在する金属異物を検知することができない。連続包装袋の商品を製造する製造システムは、連続包装袋を一時蓄積するアキュームやそれを巻取る巻き取り工程を備えるので、全体として不連続性である。その為、連続包装袋の商品は、頻繁に速/遅の間欠動作搬送を繰り返す環境で製造される。連続包装袋の流れが止まるとその中に存在する金属異物は、センサーコイルを横切る磁束線の変化がなくなり、従ってセンサーコイルの出力の変化がなくなり、最終的に、金属異物の検出ができなくなる。
【0014】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、医薬品、化粧品、食料品等の充填物が連続包装袋に充填された被検査物において、これに含まれる金属異物を検知できる金属異物検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明1の金属異物検知装置は、
分包された包装が連続的に連結された連続包装体に詰められた被検査物内の磁性体の有無を検知するための検知部、及び、前記検知部から出力される検知信号を信号処理して前記磁性体の有無を判断し、前記判断の結果を示す出力信号を出力する信号処理部からなる検知手段からなる金属物検出装置において、
前記検知部は、コアに導線を巻いた構成のセンサーコイルからなり、
前記連続包装体が前記センサーコイルの付近を通過する際、前記連続包装体と前記センサーコイルを相対的に運動させるために機械的振動を与える加振手段を有する
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の発明2の金属異物検知装置は、発明1の金属異物検知装置において、前記加振手段は、前記連続包装体と前記センサーコイルを相対的に運動させるとき、前記連続包装体が流れる方向に対して直角方向に運動させることを特徴とする。
本発明の発明3の金属異物検知装置は、発明1又は2の金属異物検知装置において、
前記加振手段は、駆動手段と、前記連続包装体に接して配置された回転体と、前記回転体に前記駆動手段の回転運動を伝達するための回転軸からなり、
前記回転軸の回転軸線に対して直角の面における前記回転体の断面は、楕円状、多角形状、溝カム、及び円筒カムから選択される1形状を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の発明4の金属異物検知装置は、発明1又は2の金属異物検知装置において、
前記検知部は、第1センサーコイルと第2センサーコイルの2つの前記センサーコイル、及び、細長い第1ブースターと第2ブースターからなる磁化手段からなり、
前記第1センサーコイルと前記第1ブースターは、平行に第1筐体の1側面に接触して配置され、
前記第2センサーコイルと前記第2ブースターは、平行に第2筐体の1側面に接触して配置され、
前記第1筐体と前記第2筐体は、その間に前記連続包装体が通過する隙間を有して、前記第1センサーコイルと前記第2センサーコイルが接触して配置された前記側面を対向して平行に、かつ、前記第1センサーコイルと前記第2センサーコイルが、及び、前記第1ブースターと前記第2ブースターが平行になるように、配置され、
前記第1筐体と前記第2筐体の両側は連結板で固定され、
前記連続包装体が通過する前記隙間は、手前に、前記連続包装体の幅より大きい孔を有するガイドを備えている
ことを特徴とする。
【0018】
上述の検知部の検知原理は、少なくとも1つのセンサーコイルに、電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、微少磁界に応答した被検査物の中の磁性体の金属異物からの検出磁界をセンサーコイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力するものである。この検出信号を解析して金属異物を特定する。センサーコイルの検出電圧又は検出電流は、微小な値のものであり、外部の磁界又は磁界の乱れの影響を受けやすいので、センサーコイルを含めて、検知部を外部の磁界又は磁界の乱れから磁気シールドする。
【0019】
微少磁界は、センサーコイルに印加される電圧又は供給される電流が微少で、かつセンサーコイルを構成するコアの磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数又は直流であり、金属異物がセンサーコイル付近を通過するとき、センサーコイルに流れる電圧、電流が誘起されるものである。これは、センサーコイルの周波数が変化するとも言うことができる。
センサーコイルの微少磁界は、日本国特許第3857271号等に示す通り、公知技術であり、詳細については省略する。
【0020】
本発明の出願人は、「金属異物検知方法とその装置」に関する特許出願し、日本国特許第3857271号を取得している。この特許の内容が全て又はその一部が、本発明にも含まれる。この特許の金属異物検知方法は、包装内の被検出物に製造する過程で混入した金属異物を検知するために、前記被検出物を搬送路で搬送する搬送工程と、前記搬送路の途中に設けられ、コアに導線を巻いた構成のコイルを有した検出部により磁界を発生させて、前記被検出物に混入した金属異物を検出するための金属異物検出工程とからなる金属異物検知方法において、一つの前記コイルに電圧を印加又は電流を供給することにより微少磁界を発生させて、前記微少磁界に応答した前記金属異物からの検出磁界を前記コイルの検出電圧又は検出電流として検出して検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記検出信号を解析して前記金属異物を特定するために信号を解析する信号解析工程とからなり、前記微少磁界は、前記コイルに印加される前記電圧又は供給される前記電流が微少で、かつ前記コイルを構成する前記コアの磁化(B−H)特性の内、前記磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用したものであり、前記電流、又は電圧が数百Hzから数十kHzの周波数であり、前記金属異物が前記コイル付近を通過するとき、前記周波数が変化するものであることを特徴とする。
【0021】
本発明の金属異物検知装置は、センサーコイルに供給される電流、又は印加される電圧は、上述の周波数に限定されるものではなく、直流電流から数百Hzまでの交流電流を供給する。センサーコイルには、特別に、アクティブに電流供給、電圧印加がされていなくても、増幅器のバイアス電圧を印加しておき、磁性体の金属異物を検知する。本発明の金属異物検知装置は、非金属物である被検出物内の磁性体を感度よく検知できる。更に、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料で包装された包装袋・容器を有する被検出物内の磁性体が検知できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明の金属異物検知装置は、連続包装袋の流れが止まっても、連続包装袋をセンサーコイルと相対運動させることで、それに充填された金属異物を判別して検知できるようになった。
【0023】
本発明の金属異物検知装置は、マグネットブースターを磁石要素から構成し、対向して配置された磁石要素は同じ磁極を互いに対向して配置されるので、磁力線の磁化効果が向上した。
本発明の金属異物検知装置は、連続包装体の製造における速/遅の間欠動作搬送を繰り返す環境で、確実に微小金属異物の有無を検知することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の外観を示す外観図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の側面の概要を示す概念図であり、図1の側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の正面の概要を示す概念図であり、図1の正面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1を用い、連続包装袋に被検査物2を充填して製造するシステムの例を示す概念図である。
図5図5は、センサー5のセンサーコイルの構成例を示す図であり、図5(a)はセンサーコイルの正面図、図5(b)は図5(a)の平面図、及び図5(c)は図5(a)のA−A線の切断断面図である。
図6図6は、センサー5の配置例を示す図である。
図7図7は、マグネットブースター6の構造及び配置例を図示した図であり、図7(a)はマグネットブースター6の正面図、図7(b)は図7(a)のマグネットブースター6の平面図、及び図7(c)はマグネットブースター6の配置例を示す図である。
図8図8は、回転体21の断面の形状の例を図示した図であり、図8(a)は断面がカム状、図8(b)は断面が四角形、図8(c)は断面が三角形、図8(d)は断面が細長い形状をする例を図示した図である。
図9図9は、金属異物検知装置1の信号処理部7の構成例を示す機能ブロック図である。
図10図10は、信号処理部7のディジタルコンピュータ処理部52の構成例を示すブロック図である。
図11図11は、信号処理部7のディジタルコンピュータ処理部52の動作例を示すフローチャートである。
図12図12は、本発明の第1の実施の形態の金属異物検知装置1の他の設置例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施の形態〕
図1は、本発明の実施の形態の金属異物検知装置1の外観を図示している外観図である。図2には、図1の金属異物検知装置1の側面の概要を図示した概念図である。図3には、図1の金属異物検知装置1の正面の概要を図示した概念図である。金属異物検知装置1は、被検査物2の中の金属物(磁性体の異物)を検知又は探知して通知するためのものである。
【0026】
特に、金属異物検知装置1は、特に、連続包装袋に充填又は内蔵された被検査体からなる被検査物2に混入した金属異物を検知、又は探知して通知するためのものである。被検査体としては、特に限定されないが、固体、液体、又はゲル状の食品、包装袋に充填された医薬品等を例示できる。連続包装袋は、単層、又は多層のフィルム状で連続してつながった包装袋である。連続包装袋の包装材は、公知のアルミニウム箔、合成樹脂製のフィルム、紙等、及びこれらの素材を組み合わせた積層材からなるものである。
【0027】
〔金属異物検知装置1の構成〕
金属異物検知装置1は、筐体3、被検査物2を案内するガイド4、被検査物2中の磁性体を検知するためのセンサー5、被検査物2中の磁性体を磁化するマグネットブースター6、検知した信号を信号処理する信号処理部7、被検査物2に機械的振動を与える加振手段20等からなる。筐体3は、センサー5、マグネットブースター6、信号処理部7等を収納するための箱型のケースである。
【0028】
筐体3は、その中部にその上面から底面までに貫通した中空部8を有し、この中空部8を被検査物2が通過する。本実施の形態の例では、中空部8は入口と出口が長方形の形状である。中空部8の入口に、ガイド4が固定されている。ガイド4は、筐体3の中空部8の前面に固定されたものであり、ガイド4を被検査物2が通過する。ガイド4は、図1に図示したように、1辺が開いている四角形、言い換えるとコの字の形状を有する。
【0029】
本実施の形態の例では、ガイド4の中央部の孔、言い換えると、コの字の形状の内側は、被検査物2の幅より大きい寸法を有する。ガイド4は、被検査物2を案内するためのもので、中央部に孔を有する板状のものであっても良い。ガイド4は、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅、合成樹脂等の素材で構成し、その種類は、被検査物2の包装袋の種類、用途に応じて適宜選択する。センサー5は、中空部8の両側に、対向して同一構造のものがそれぞれ配置されている(詳細な説明は後述する)。
【0030】
同様に、マグネットブースター6も同一構造のものが、中空部8の両側にそれぞれ配置される(詳細な説明は後述する)。センサー5は、センサーコイルからなる。センサーコイルは、その周囲の磁界の変化を検知するものである。被検査物2の中の金属物、金属異物等の磁性体金属から発生する磁界がその周囲の磁界を変化させる。言い換えると、センサー5は、その周囲の磁界の乱れの変化を検知するためのもので、磁界の変化に応じた電圧又は電流の検出信号を出力する。
【0031】
本実施の形態においては、筐体8は、防錆等の観点からステンレス鋼から作られている。筐体3内で、被検査物2の流れに沿って、マグネットブースター6、センサー5の順に配置される。被検査物2は、汁、ペースト等の被検査物が、アルミ包装等で個々に分包されて密封されており、これが連結され繋がったもので、連続的に搬送されている。被検査物2が、ガイド4、マグネットブースター6、センサー5の順に通過する。センサー5で検出して出力される検知信号は、信号処理部7で信号処理される。
【0032】
信号処理部7は、センサー5から受信した検知信号を解析して、被検査物2中に磁性体があるか否かの判定を行なう。信号処理部7は、この判定の結果を通知(電気信号、警告音、表示等)する。金属異物検知装置1は、筐体3を貫通して設置された、中空のパイプ9を有する。パイプ9は、ステンレス鋼等の金属製であり、この中を電線が通り、パイプ9の中部の孔(図示せず。)から取り出されてセンサー5、信号処理部7等へ電源供給するために利用される。
【0033】
また、パイプ9は、金属異物検知装置1を設置台等に固定するときに利用することができる。被検査物2の中に磁性体が含まれている場合は、信号処理部7は、その旨の出力信号を出力する。この出力信号は、信号処理部7から、金属異物検知装置1に設けられているシグナルタワー27(図4を参照)、又は、後段の装置等へ送信される。このシグナルタワー27は、欠品(金属異物)を検出したとき、点灯する、点滅する、ブザーを鳴らす、欠品検出の信号をオペレータに発する等の警報信号を発する。
【0034】
例えば、シグナルタワーは、通常時、特定の色、例えば緑色に光っていて、警報信号を発するときに別色、例えば赤色、を発する。信号処理部7からの出力信号を受ける後段の装置の例としては、被検査物2へ印をつけるためのマーカー装置(図12を参照。)、製造ライン管理のコンピュータ、工場管理の制御コンピュータ、管理者のコンピュータ等が例示できる。
【0035】
信号処理部7は、本例のように、筐体3に内蔵される必要はなく、筐体3から有線通信、又は無線通信により検知信号を受け取り、処理できる環境であれば任意の場所で設置しても良い。この有線通信と無線通信の通信方式は、公知の任意の通信規格を用いることができ、本発明の趣旨ではないので、その詳細な説明は省略する。加振手段20は、被検査物2とセンサー5を相対的に運動させるためのものであり、詳細は後述する。
【0036】
〔金属異物検知装置1の配置〕
図4は、金属異物検知装置1を用い、連続包装袋に被検査物2を充填して製造するシステムを示す概念図であり、被検査物2を製造する一連の工程の中で、金属異物検知装置1を設置した例を図示した図である。金属異物検知装置1は、被検査物2が搬送される搬送路中に配置されている。本例では、金属異物検知装置1は、連包包装工程30と検査工程40の間に配置されている。
【0037】
被検査物2は、連包包装工程30で連続包装袋2eに被検査体が充填されて包装され、アキューム31へ蓄積される。金属異物検知装置1は、連包包装工程30の排出口に設置される。アキューム31は、連続包装袋2eに充填された被検査体からなる被検査物2を一時的に格納する容器である。被検査物2は、前工程の連包包装工程30から案内されて、連続した包装袋の状態で流れて、金属異物検知装置1の中空部8を通過し、アキューム31の中に蓄積される。
【0038】
金属異物検知装置1は、図4に図示したように、床面上に設置される脚11a付きのフレーム11の上部に搭載されている。被検査物2が、重力又はローラー12等の送り機構により送られて滑りながら搬送されて、加振手段20とガイド4を通過し、中空部8を通過する(図2を参照。)。被検査物2が大型の物、特に重い場合は、複数のローラー(図示せず。)を備え、その上を、被検査物2を滑走させるものであっても良い。アキューム31の中から、被検査物2が取り出されて、検査工程40、巻取機やパーッケージング工程等の後段工程へ搬送される。本例では、後段工程の例として検査工程40を例示している。
【0039】
連包包装工程30の上部には、ホッパ32が設置されている。ホッパ32は、被検査体を一時貯留し、連包包装工程14に供給する公知の装置である。連包包装工程30は、連包包装装置33によって、ホッパ32から供給された被検査体を連続包装袋2eに充填して包装する。図4には、連続包装袋2eはロール状に巻かれて、連包包装装置33の上部に設置されている。この連続包装袋2eは、必要に応じて連続的に巻き取られて連包包装装置33に供給され、その袋1つ1つに被検査体が連続的に充填されて被検査物2が製造される。
【0040】
連包包装装置33から排出される被検査体2は、消費者に最終的に供給されるものであり、その中に金属異物が混入してはならない。そのため、本実施の形態の金属異物検知装置1は、連包包装工程30より後段の場所で設置されており、連続包装された食品等の中身の異物を検査している。制御パネル34では、連包包装工程30の動作状況、連包包装装置33の動作状況等が表示され制御される。例えば、連包包装装置33においての被検査体の充填量、充填時間等の制御を行う。
【0041】
本発明の主旨は、連包包装工程30ではないので、これ以上の詳細な説明は省略する。本実施の形態においては、金属異物検知装置1は、連包包装工程30とアキューム31の間に、特に、連包包装工程30の排出口の直後に設置されて、連続包装袋の被検査物2を検査している。このアキューム31の直前に金属異物検知装置1を設置すると、被検査物2に異物が混入した場合、アキューム31の中から異物が混入した被検査物2を取り出して排除するとき便利である。
【0042】
しかし、金属異物検知装置1の配置位置は、この位置のみに限定されるものではない。金属異物検知装置1は、アキューム31とその次の工程の間でも設置することもでき、この配置であっても実質的に同じような検知ができる。また、金属異物検知装置1は、検査工程の後段に配置されることもできる。検査工程40は、被検査物2に充填された被検査体の充填量が適切であるか等の検査を行う工程である。検査工程40から排出された被検査物2は、アキューム41に蓄積され次の工程に搬出される。
【0043】
被検査物2の検査は、検査装置42で行われ、制御パネル43に表示される。被検査物2は、アキューム31から連続的に取り出され、ローラー44を経て、検査装置42に供給される。検査装置42では、被検査物2の厚さ、幅等が適当であるか否かを検査する。本発明の主旨は、検査工程ではないので、これ以上の詳細な説明は省略する。金属異物検知装置1で被検査物2の中に金属異物があると判定されたとき、この旨の信号は、例えば、シグナルタワー27からブザー又は光信号等で警報信号を発する。
【0044】
この警報信号を受けて、作業員は、アキューム31内に蓄積された被検査物2を全部又は金属異物検知装置1側にある一部を両側から切断して、除去する。また別の一例として、金属異物検知装置1で被検査物2の中に金属異物があると判定されたとき、この旨の信号は、図12に図示したようなマーカー装置28に送信される。マーカー装置28は、この被検査物2の袋の表面にマークを付ける。後でこのマークが付いた袋を作業員又は専用機械が切断して、除去する。
【0045】
マーカー装置28は、例えばレーザーで被検査物2の包装袋に照射してマーキングする装置である。また、マーカー装置28は、インクを被検査物2の包装袋に噴出してマーキングするインクジェット装置であっても良い。これらのマーキング手段は公知であり、この構造、機能の説明は省略する。金属異物検知装置1は、その動作状況や調整を行うための制御ユニット26を備えている。制御ユニット26は、金属異物検知装置1と接続されて、被検査物2内の異物の有無を表示し、検査時間、検査感度等を表示する。
【0046】
〔センサーコイル〕
図2に図示したように、金属異物検知装置1のセンサー5は同一構造の2本のセンサーコイルからなる。両センサー5は、中空部8を挟んで左右に配置されている。センサー5は、細長い形状をしており、平行な2つの面になるように対向して配置される。対向して配置されているセンサー5の間の空間を、被検査物2が通過する。中空部8の入口と出口以外の各辺は、金属板になり筐体3の一部を構成する。
【0047】
よって、対向した2本のセンサー5の間は、金属、本例ではステンレス鋼の壁板で区画されており、その間を被検査物2が通過する。センサー5の2本のセンサーコイルは、中空部8を挟んで上下に、上下の面と平行な面に、配置されている。センサーコイルの磁化(B−H)特性の内、磁化特性を表わす磁束密度(B)と磁界(H)が0付近の微少の値である非線形部分を利用して、金属物の検知を行う。この磁化特性、その利用方法についての技術思想は、特許文献1に詳しく述べている。
【0048】
特許文献1に記載された発明の全部又はその一部は、本発明と実質的に同一構造、回路であり、これらが本発明を構成する。ただし、センサーコイルに印加される電圧、電流、その周波数は、全部又は一部が、本発明の実施の形態で特許文献1と異なる値であっても良い。センサーコイルには、特別に、電流供給、電圧印加がされていなくても、磁性体の金属異物の検知動作が可能である。例えば、センサーコイルには、増幅器のバイアス電圧を印加しておく。
【0049】
これにより、増幅器の入力バイアス電流がセンサーコイルのコイルに流れることになる。これに、周辺磁界の変化に伴って、センサーコイルを横切る磁束が変化すると、センサーコイルを流れる電流及び/又は電圧が変化し、出力信号となる。センサーコイルに数kHzの交流電源をかけると、センサーコイルに交番磁界が発生する。センサーコイルの近傍にステンレスの微小破片が接近したとき、静磁界の働きにより、ステンレスの微小破片が磁化し磁極を生じさせる。
【0050】
例えば、オーステナイト系のステンレス鋼(SUS304等)は、破断、潰れ、曲がり、欠け等の塑性変形により、マルテンサイト誘起変態を起こして弱い磁性をもった部分が、静磁界の働きにより磁化し磁極を生じさせる。この磁極の変化が交番磁界へ影響を与え、これを、センサーコイルを含む検知回路で検知する。特に、被検査物2がセンサーコイルに接近するほどこの効果が大きく現れるので、センサーコイルで被検査物2中の微小破片の金属異物を確実に検出することが可能である。
【0051】
被検査物2に異物として混入される磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性体、これらの合金、マルテンサイト系ステンレス鋼等が例示できる。ペアのセンサーコイルをブリッジ回路の2辺にすると、一定の交流電圧が印加されているとき、センサーコイルからなるブリッジ回路を流れる電流が変化なく、ブリッジ回路の出力電流が一定である。磁性材料がセンサーコイルの付近を通過するとき、交番磁界のフォームが乱れ、ブリッジ回路の出力電流が変化する。この出力電流は、後段の信号処理部7で信号処理され被検査物2中の異物として検知される。
【0052】
図5は、センサー5のセンサーコイル構造を図示したものである。図5(a)はセンサーコイルの正面図、図5(b)は図5(a)のセンサーコイルの平面図、及び図5(c)は図5(a)のA−A線の切断断面図である。センサーコイルは、図5(a)に示すように細長い棒状の形をした基本的に同一のものである。センサーコイルは、細長い棒状の形状をし、断面構造がE字形である導電性材料の鉄心101の溝部に沿って、コイル102を巻き付けた構成である。
【0053】
鉄心101は、珪素鋼板やアモルファス等の板を積層して構成されている。あるいは、この鉄心101には、フェライトコア、永久磁石等を使っても良い。このセンサーコイルに交流電源をかけると、その付近の周囲に交番磁界が発生する。この中を、磁性体が通過すると、この交番磁界が乱れ、センサーコイルを流れる電流等が変化する。本発明のセンサーコイルは、1mm以上金属異物を検知することができるが、主に、1mm以下の微小な金属を検知するために用いられている。
【0054】
図6には、センサー5の配置例を図示している。センサー5の2本のセンサーコイルは、E型の鉄心101のコイル側を互いに対向させて配置される。これは、被検査物2の上部と下部を感度良く検出するために、このような構成にしている。また、2本のセンサーコイルを備えることで、中空部8の中の被検出物2が中空部8に移動してもそれに近いセンサーコイルで検知し、感度良く検出するためでもある。被検査物2中の金属異物は、センサーコイルの1本のみで検知が可能である。
【0055】
〔マグネットブースター〕
本発明の第1の実施の形態の金属異物検知装置1のマグネットブースター6は、被検査物2の中の磁性体を磁化、或いは磁化を強化するためのもので、永久磁石からなる。マグネットブースター6は、被検査物2の搬送方向で言えば、センサー5の手前(供給側)に設置されている。被検査物2の搬送方向で見ると、被検査物2は、ガイド4を通過し、マグネットブースター6、センサー5の順番で通過する。
【0056】
本実施の形態においては、マグネットブースター6は、ガイド4の中央当たりに設置された筐体8の中に、詳しくは、中空部8の近くに設置されている。マグネットブースター6の設置位置は、この位置に限定されるものではない。マグネットブースター6は、一つの永久磁石又は2以上の複数の永久磁石から構成されることができるが、本例では、複数の永久磁石6aから構成される。
【0057】
図7は、マグネットブースター6の構造及び配置例を図示したものである。図7(a)はマグネットブースター6の正面図、図7(b)は図7(a)のマグネットブースター6の平面図、及び図7(c)はマグネットブースター6の配置例を示す図である。マグネットブースター6は、被検査物2の搬送方向に対して直角に、言い換えると被検査物2断面方向に、細長いマグネットブースター6を2個配置している。被検査物2の搬送方向に対して、マグネットブースター6の長手方向の軸線が直角するように配置されている。
【0058】
2個のマグネットブースター6は、被検査物2の両側に磁石要素6aの磁極を被検査物2へ向けて配置されている。各マグネットブースター6の磁石要素6aと、それに対向する磁石要素6aは同じ磁極を被検査物2へ向けている。図6(c)で図示したように、磁極要素6aと磁極要素6a’は、同じ磁極Nを互いに対向させて配置されている。磁極要素6aと磁極要素6a’の隣の磁極要素は、全て同じ磁極Nを互いに対向させて配置されている。
【0059】
この例で、磁石要素6aのN磁極を被検査物2へ対向させて配置したが、N磁極の代わりわりにS磁極であっても同じ効果が得られる。このように、同じ磁極を対向するように配置すると、磁極の同士の反発が強く、被検査物2の中の金属異物を磁化する働きが強い。マグネットブースター6は、ネオジム磁石からできている複数の磁石要素6aから構成されている。このようにネオジム磁石等の強力な磁石を用いることで、永久磁石の磁界が磁性体に影響を及ぼす範囲を大きく拡大でき、センサー5の検出感度を向上させることが可能となる。
【0060】
[加振手段]
加振手段20は、図2及び図3に図示したように、回転体21、回転軸23、モータ24等からなる。回転体(カム)21は、本例では一種のリフトカムであり、回転軸23上に固定され、連続包装体に接して配置される。モータ24は、そのロータが回転軸23の一端に連結して固定され、モータ24が回転駆動すると、その回転運動を回転軸23を介して、回転体21に伝達し、回転体21が回転運動をする。
【0061】
回転軸23は軸受22に回転自在に支持されており、軸受22は筐体3に固定されている。モータ24は、軸受22に固定されたモータ固定フランジ24aに固定されている。回転体21は、被検査物2に接して配置される。本例では、軸受22で、回転軸23が支持されている。軸受22は、本例では、筐体3に固定されている。ただし、軸受22は、筐体3に固定されずに、他の支持フレーム等に固定されても良い。図2の中で、参照番号2cで被検査物2の搬送方向を示している。
【0062】
回転体21は、基本的に被検査物2の搬送方向に回転するので、図2に示すように参照番号21aの矢印で示す方向に回転する。回転体21は、被検査物2の搬送方向と逆方向に回転することができるが、この場合、被検査物2の包装袋と回転体21との表面摩擦が、被検査物2の搬送方向の回転と比べ、大きくなる。よって、回転体21は被検査物2の搬送方向に回転する好ましい。回転体21は、被検査物2に接しており、回転中に被検査物2は回転体21に常時接触するようになっている。
【0063】
よって、回転体21は非対称の断面があると、その応じて、被検査物2は回転体21の回転軸に対して近づいては遠ざかる運動をする。例えば、図2に示した例では、回転体21の断面が円弧カム状になっている。円弧カム状とは、ベースサークルとカム頂部21の間が円弧になっている形状である。カム頂部の位置を参照番号21bで示している。回転体21は、回転して、カム頂部は実線の21bの位置から破線の21cの位置に回転移動する。
【0064】
この場合、被検査物2は、実線の2aの位置から破線の2bの位置に移動し、カムリフト量(カムの高さとカムの短径の差)だけ左右に振動する。回転体21は、更に回転して、カム頂部は実線の21bの位置に戻ると、被検査物2は、実線の2aの位置に戻る。このように、矢印2dで示すように、被検査物2の中空部8内での位置は往復し運動する。結果的には、2本のセンサー5と被検査物2は相対的に運動する。被検査物2の搬送が停止しても、回転体21が回転運動しているとき、センサー5と被検査物2の相対的な運動は継続する。
【0065】
センサー5のセンサーコイルは、磁界の変化で異物を検知しているので、被検査物2が停止している状況では、金属異物の検知ができないという欠点がある。本発明において、センサー5と被検査物2を常時相対的に運動させることで、この欠点を不服している。上述のように、回転体21は、カム状で説明した。図8には、カムである回転体21の断面の形状の例を図示している。
【0066】
図8(a)は断面形状が円孤と楕円で形成された円弧カム状の回転体21、図8(b)は断面が四角形の回転体21、図8(c)は断面が三角形の回転体21(三角カム)、図8(d)は断面が細長い(一種の長楕円)回転体21を図示している。回転体21の断面は、図8の例の形状の他に、ハート形カム、接線カム、円板カム、溝カム、円筒カム等の形状のものでも使用可能である。図8(a)〜(d)の断面図の真ん中の孔は、回転軸23が貫通して固定されるための孔である。回転体21の断面の形状及び、回転体21の形状は、図2及び図8の例に限定されるものではなく、センサー5と被検査物2を相対的に運動させるものであれば任意の形状の回転体21を利用することができる。
【0067】
〔信号処理部7の構成例〕
図9は、信号処理部7の概要を図示している。信号処理部7は、増幅/フィルタ回路50、波形処理部51、ディジタルコンピュータ処理部52、信号出力部53等から構成されている。センサー5のセンサーコイルは、増幅/フィルタ回路50に接続されている。センサー5のセンサーコイルから出力される信号を増幅/フィルタ回路50で増幅して、波形処理部51へ出力する。
【0068】
波形処理部51では、入力された信号の波形整形をし、ディジタル信号に変換して、受信感度の調整を行って、ディジタルコンピュータ処理部52へ出力する。このときは、ディジタル信号に変換された信号のしきい値処理をし、受信感度の調整をする。ディジタルコンピュータ処理部52は、波形処理部51からのディジタル信号を受信して信号処理し、被検査物2中に含まれる磁性体の有無の判定をする。ディジタルコンピュータ処理部52では、磁性体が検知されたと判断された場合は、信号出力部53に出力信号を出力する。
【0069】
センサー5は、増幅/フィルタ回路50の電子回路に直接接続している。増幅/フィルタ回路50の増幅器を動作させるための直流バイアス回路によるバイアス電圧がセンサー5に印加される。これにより、センサー5のセンサーコイルが励磁され、また、マグネットブースター6による静磁界の磁束が、センサーコイルと常時鎖交する。センサー5のセンサーコイルに印加されたバイアス電圧の変動、外部磁界の乱れなどにより微弱な直流変動電流が常にコイルに流れることになる。
【0070】
つまり、商用電源の周波数の交流電流、その倍数周波数の交流電流、外部環境磁界の重畳した周波数の交流電流が微小ながら流れる。このような励磁状態のセンサーコイルの付近を被検査物2が搬送される(連続的に流れる)と、被検査物2に含まれる磁性金属異物がマグネットブースターで磁気双極子状(N極とS極の一対の小さな磁石)に磁化される。そして、この磁性金属異物による微小な異物信号をセンサーコイルが出力する。
【0071】
詳しくは、レンツの法則で説明されるような微弱誘導電圧がセンサーコイルで発生する。その異物信号を増幅/フィルタ回路50(ゲイン増幅器)で増幅して、波形処理部51、ディジタルコンピュータ処理部52へ出力する。増幅/フィルタ回路50は、センサーコイルの出力を数十から数百dB、場合によって千dB以上に増幅する。本例では、120dB程度増幅している。
【0072】
〔ディジタルコンピュータ処理部52の概要〕
図10は、ディジタルコンピュータ処理部52の概要を示すブロック図である。ディジタルコンピュータ処理部52は、メモリ111、中央処理ユニット(CPU)112、入力インターフェース113、出力インターフェース115、入力装置114、ディスプレイ116等を備えた、信号処理ユニットである。メモリ111、CPU112、入力インターフェース113、出力インターフェース115は、バス110で互いに接続されて、このバス110を経由したデータの送受信を行う。
【0073】
ディスプレイ116は、必要に応じて、ディジタルコンピュータ処理部52に接続して、ディジタルコンピュータ処理部52の出力や動作状況を表示する。図1に図示した本例では、ディスプレイ116がない。図4図12に図示したように制御ユニット26は、ディスプレイ116を備えたディジタルコンピュータ処理部52になる。メモリ111は、ROM、RAM等の記憶装置である。
【0074】
ディジタルコンピュータ処理部52は、メモリ111に格納されたプログラムを、CPU112で実行し、被検査物2の中の金属異物の判定をする。このプログラムは、特に、図11に図示したフローチャートの各ステップを中央処理装置112に実行させるものである。また、ディジタルコンピュータ処理部52は、これと同じ機能をする、アナログ回路又はディジタル回路からなる回路手段で実現することができるが、ここではその詳細な説明は省略する。
【0075】
CPU112は、ディジタルコンピュータ処理部52の動作を制御するもので、メモリ111に格納された計算プログラムによって、ディジタルコンピュータ処理部52の動作を制御する。入力装置114は、入力インターフェース113に接続される。入力装置114は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスである。この入力装置114を金属異物検知装置1の管理者等が操作して、金属異物検知装置1の初期化、設定を行う。
【0076】
管理者等は、入力装置114から、計算プログラム用のデータの入力もできる。計算プログラムは、メモリ111に格納されている。計算プログラムは、メモリ111のROMに格納されている。又は、計算プログラムは、補助記憶装置(図示せず。)に格納されている。この場合は、計算プログラムは、補助記憶装置から呼び出されて、メモリ111に展開されて、動作する。ディジタルコンピュータ処理部52は、表示装置を接続するための出力インターフェース115を有する。
【0077】
出力インターフェース115には、例えば、ディスプレイ116等の表示装置が接続される。ディジタルコンピュータ処理部52は、外部機器119、信号出力部53等を接続するための外部インターフェース118を有する。信号出力部53は、ディジタルコンピュータ処理部52の出力信号を適当なデバイス、装置に送信する。例えば、信号タワー27(図4を参照。)、被検査物2へマーキングするためのマーカー装置28(図12を参照。)等に送信する。
【0078】
〔磁性体の検知フロー〕
図11は、ディジタルコンピュータ処理部52が磁性体を検知するときのフローチャートである。ディジタルコンピュータ処理部52では、非検出物2中の磁性体(金属異物)の判定が行なわれる。ディジタルコンピュータ処理部52は、まず、被検査物2が搬送されている搬送速度Vbを取得し、メモリ111に保存する(ステップ10)。搬送速度Vbは、メモリ111に予め保存されている値、又は、標準的な値を用いることが好ましい。
【0079】
被検査物2は、被検査物2の製造ラインで連続的に製造されるので、基本的に同一の搬送速度で搬送される。よって、搬送速度Vbは予め設置し、メモリ111に保存する。又は、管理者は、入力装置114等から搬送速度Vbを入力することができる。ディジタルコンピュータ処理部52は、波形処理部51からのセンサー5の検知信号を受信し、メモリ111に格納する(ステップ11)。そして、センサー5の検知信号を受信した時刻t1を取得して、メモリ111に格納する(ステップ12)。
【0080】
これらの値から、磁性体の位置の計算を行う(ステップ13)。それからセンサー5から受信した検知信号を波形分析し、標準データ(比較波形)と比較することで、検知信号が金属構造物を示す検知信号か否かを判定する(ステップ14,15)。被検査物2に含まれる金属構造物は、大きさ、材料が均一のものであり、従って、その検知波形は、金属構造物の種類ごとに基本的に同じパターンである。そのため、被検査物2に含まれ、予め分かっている金属構造物についてはその波形を予め測定し、メモリ111に保存する。
【0081】
詳しくは、異物信号波形の基準となる標準データを、センサー5が出力した検知信号と比較して、標準データと検知信号がどの程度似ているかで金属異物を識別している。これは、一種のパターンマッチングと言える。この比較のとき、検知信号の波形の振幅、山の数、比較している検知信号の波形の前後の山の大小関係、周波数の差異、積分値、微分値等の比較項目を標準データと比較して、その差分量を計算する。しかし、この比較で、検知信号と標準データは完全に合うことがめったにない。
【0082】
検知信号と標準データは、所定の比較項目の値が標準データと、所定の値以上に、例えば75%以上、合うとき、金属異物と判定する。よって、上述のステップ14で検出信号を、波形分析し、標準データ(比較波形)と比較することで、検知信号が金属構造物を示す検知信号か否かを判定する。ステップ15で検出波形が標準波形に該当しない波形、言い換えると金属異物、と判定された場合、検出信号又は警報信号を発する(ステップ16)。ステップ15で検出波形が標準波形に該当する波形と判定された場合、正常信号を出力する(ステップ17)。
【0083】
センサー5で検知信号が出力されない場合、正常である旨の出力信号を出力する(ステップ11→17)。この正常である旨の出力信号は、基本的に信号出力しない又は一定レベルの出力信号であることが好ましい。このような手順で、一連の判定が行なわれる。そして、出力信号を発した後で、検知が上述のステップ10から行われる(ステップ18)。
【0084】
〔その他〕
図12は、本発明の金属異物検知装置1の利用形態を図示している。金属異物検知装置1は、搬入口を横にして配置されている。この配置は被検査物2が水平に流れる場合に適している。金属異物検知装置1の排出口側には、マーカー装置28が配置されている。マーカー装置28は、金属異物検知装置1から受信した金属異物を検知した信号に従って、被検査物2にインク等を噴出してマークを付ける。
【0085】
マーカー装置28は、レーザーでマークを付ける装置であってもよい。制御ユニット26は、フレーム11の下側に設置されている。加振手段20は、被検査物2の下側に設置されている。この場合、被検査物2は重力で下方に移動しようとするので、加振手段20でそれを押し上げることで、被検査物2を上下に運動させる。これにより、被検査物2とセンサー5は相対運動をする。
【0086】
加振手段20は、上述の例で回転体21を用いているが、その他に次の方式のものを利用することができる。例えば、加振手段20は、エアーフロー式のものを利用する。被検査物2がガイド4に入る前に、噴出圧力が強弱のエアーで被検査物2へ吹き、被検査物2をセンサー5と相対的に運動させる。例えば、加振手段20は、上下に振動する上下加振機構を利用することができる。これは、上下加振機構は、モータ等の回転運動機構とリンク機構を介して連結され、被検査物2の位置を上下に移動し振動する棒等から構成される。
【0087】
加振手段20は、エアー振動シリンダを利用することができる。エアー振動シリンダは、エアーを入力し、それをチューブ内に設けた2個のメカニカルバルブがピストンの移動慣性力で切り替わり振動するものであり、片方のバルブが作動すると他方が逆作動する伝達メカニカル機構である。このエアー振動シリンダはさらに、速度を速めホース温度を下げる為の急速排気弁、騒音を少なくする為の消音室や消音器とストロークエンドに当らない特殊構造、サイクル調整用の調整弁等を備える。
【0088】
また、加振手段20は、左右又は斜めに振動する加振機構を利用することができる。この加振機構は、モータ等の回転運動機構とリンク機構を介して連結され、被検査物2の位置を左右又は斜めに移動させて振動する棒等から構成される。更に、加振手段20は、被検出物2の一方に磁石を配置し、被検出物2の他方に電気で電極を生じるコイルを配置してなる電気式加振機構を利用することができる。この電気式加振機構は、コイルを電気に接続することで、コイルに電極が生じ、磁石を引きつけると、これに伴い、被検出物2がコイルへ引き寄せられる。
【0089】
そして、コイルに接続する電極を逆にすると、磁石と反発するため、被検出物2がコイルから離れる。これを繰り返し、被検出物2を振動させる。更に、加振手段20は、磁石の代わりに磁性体を利用することができる。詳しくは、磁石の代わりに磁性体を配置し、コイルを電気に接続して電極が生じ、磁性体を引きつける。そして、電気を切断すると、磁性体がコイルから離れる。これを繰り返し、被検出物2を振動させる。
【0090】
更に、加振手段20は、被検出物2の両側に配置した2個の電磁石を利用することができる。この場合、両電磁石に電気を接続したり、切断したりすることで、両電磁石を互いに引き寄せたり離したりして、被検出物2を振動させる。また、2個の電磁石に接続する電気の電極を切り替えることで、両電磁石に磁極を変化させて、両電磁石を互いに引き寄せたり離したりして、被検出物2を振動させることもできる。
【0091】
図12の例では、被検査物2が水平に搬送されている状況に合わせて、本発明の金属異物検知装置1が水平に配置されている。しかし、被検査物2が斜め(水平面又は垂直面と所定の角度を有するように)に搬送されている状況に合わせて、本発明の金属異物検知装置1が斜めに、言い換えると水平面又は垂直面と所定の角度を有して、配置されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、製品を連続包装袋等の連続包装体に充填して製造する分野に利用すると良い。特に、本発明は医薬品、化粧品、食料品の製造分野で、製品を連続包装袋に充填して製造し、その中の金属異物の検知に利用すると良い。
【符号の説明】
【0093】
1…金属異物検知装置
2…被検査物
3…筐体
4…ガイド
5…センサー
6…マグネットブースター
7…信号処理部
8…中空部
20…加振手段
21…回転体
23…回転軸
24…モータ
26…制御ユニット
27…信号タワー
28…マーカー装置
30…連包包装工程
31,41…アキューム
32…ホッパ
33…連包包装装置
40…検査工程
51…発振回路
52…ブリッジ回路
53…アルミ信号消去回路
54…増幅/位相変換回路
55…増幅/位相反転回路
56…波形処理部
57…ディジタルコンピュータ処理部
58…信号出力部
101…鉄心
102…コイル
111…メモリ
112…中央処理装置(CPU)
113…入力インターフェース
114…入力装置
115…出力インターフェース
116…ディスプレイ
118…外部インターフェース
119…外部機器
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12