(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-59179(P2017-59179A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】下水管きょ更新工事計画の策定方法および下水管きょ更新工事計画策定システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20120101AFI20170303BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-185932(P2015-185932)
(22)【出願日】2015年9月18日
(71)【出願人】
【識別番号】502071296
【氏名又は名称】株式会社 極東技工コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】村岡 治
(72)【発明者】
【氏名】村岡 基
(72)【発明者】
【氏名】飯干 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩
(72)【発明者】
【氏名】松下 明史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】 自治体の公共下水道の下水管きょ更新工事の策定の適正化を図り、以って下水管きょ更新工事運営の健全化対策に資する。
【解決手段】 管きょの管径情報および施工延長情報とを入力する第1ステップと、管径情報および施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法トータルコストを演算するとともに、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法トータルコストを演算する第2ステップと、開削工法トータルコストと前記管更生工法トータルコストとを比較する第3ステップと、第3ステップによる比較結果を出力する第4ステップとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共下水道の下水管きょに対する更新工事計画を策定する、下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
入力部により管きょの管径情報および施工延長情報とを入力する第1ステップと、
前記管径情報および前記施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法トータルコストを開削工法演算部により演算するとともに、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法トータルコストを管更生工法演算部により演算する第2ステップと、
前記開削工法トータルコストと前記管更生工法トータルコストとを比較演算部により比較する第3ステップと、
前記第3ステップによる比較結果を出力部により出力する第4ステップと、
を有することを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記開削工法演算部は、前記開削工法の前記施工コストを、前記施工延長情報と、予め記憶された管径別施工単価情報との積により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記開削工法演算部は、前記開削工法の前記環境コストを、前記施工延長情報と、予め記憶された管径別環境因子情報との積により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記開削工法演算部は、前記開削工法トータルコストを、前記開削工法の前記施行コストと前記環境コストとの和により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記管更生工法演算部は、前記管更生工法の前記施工コストを、前記施工延長情報と、予め記憶された管径別施工単価情報との積により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記管更生工法演算部は、前記管更生工法の前記環境コストを、前記施工延長情報と、予め記憶された管径別環境因子情報との積により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の下水管きょ更新工事計画の策定方法であって、
前記管更生工法演算部は、前記管更生工法トータルコストを、前記管更生工法の前記施行コストと前記環境コストとの和により求めることを特徴とする下水管きょ更新工事計画の策定方法。
【請求項8】
公共下水道の下水管きょに対する更新工事計画を策定する、下水管きょ更新工事計画策定システムであって、
管きょの管径情報および施工延長情報とを入力する入力部と、
前記管径情報および前記施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法コストを演算する開削工法演算部と、
前記管径情報および前記施工延長情報とに基づき、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法コストを演算する管更生工法演算部と、
前記開削工法コストと前記管更生工法コストとを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする下水管きょ更新工事計画策定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自治体の公共下水道の下水管きょ更新工事に係る工事計画を策定する、下水管きょ更新工事計画の策定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、自治体の公共下水道の下水管きょは、平成25年度末時点で管路延長が約46万キロに達している。当該管路は、昭和40年代から平成10年代に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが見込まれている。そこで、このような経年管としての下水管きょは、下記特許文献1に記載のような開削工法や、下記特許文献2に記載の更生工法を用いて更新する下水管きょ更新工事が必要とされる。また、この下水管きょ更新工事に関しては、下水道工事予算が減少している現状を踏まえた場合、下水管きょ更新工事に係る施工コストを削減するのに有効な工法の選定が要請される。一方、近年、環境問題への関心が高まるなか、下水管きょ更新工事が外部周辺環境に与える影響を適正に把握することが必要とされる。そこで、この種の下水管きょ更新工事に係る工事計画を策定する際には、工事自体に直接必要となる施工コストのようなイニシャルコストに基づいて適正な工法を選定するのみならず、工事に伴って付加的に生じる環境面での影響を考慮し、当該下水管きょ更新工事の総合的な評価を行なう要請が高い。
【特許文献1】特開平7−48837号公報
【特許文献2】特開2003−266539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、自治体の公共下水道の下水管きょ更新工事の策定の適正化を図り、以って下水管きょ更新工事運営の健全化対策に資することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、各請求項記載の発明が構成される。なお、本発明は、自治体の公共下水道における各種の下水管きょ更新工事に対し適用され得る。
【0005】
本発明に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法は、公共下水道の下水管きょ更新工事に係る工事計画を策定する方法であって、以下に示す第1〜第4のステップを少なくとも含む。なお、ここでいう「下水管きょ更新工事」には、既存の下水管きょを更生ないし改築する工事、既存の下水管きょを布設替え或いは更生する工事等が広く包含される。
【0006】
第1ステップは、入力部により管きょの管径情報および施工延長情報とを入力するステップとされる。ここでいう「管径情報」とは、更新すべき管きょの管径に関する情報を示すものであり、「施工延長情報」とは、更新すべき管きょの延長距離情報を示すものである。
入力部に対する情報入力は、典型的には作業者による入力手段への入力操作や、予め情報が入力されたデータベースからのデータ抽出操作によって遂行することができる。入力部として典型的には、パソコン等のキーボード(入力部分)や、マイク(音声入力部分)等を用いることができる。
【0007】
第2ステップは、管径情報および施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法トータルコストを開削工法演算部により演算するステップとされる。さらに、当該第2ステップは、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法トータルコストを管更生工法演算部により演算するステップとされる。
ここでいう管更生工法は、開削工法に対する非開削工法として分類されるものであり、典型的には反転工法、形成工法、製管工法が挙げられる。反転工法は、硬化性樹脂を含浸した長い袋状のシート(ライナー材)を水圧或いは空気圧により既設管きょ内に反転挿入し、光或いは熱硬化させて管内に密着した樹脂パイプを形成させる工法として規定される。形成工法は、管更生の対象管の形状に合わせて予め製作した管きょ或いはライナー材を既存管きょ内に牽引挿入して、管内面に新管を形成する工法として規定される。製管工法は、既設管内で新管を製管し、既設管と空隙がある場合は裏込材を充填することで、複合管として更生する工法として規定される。この第2ステップでは、これら反転工法、形成工法、製管工法のうちの少なくとも1つを選択するのが好ましい。開削工法は、地面を直接掘削して既設管きょを新設管きょに開削する工法として規定される。
なお、第2ステップにおける「環境コスト」とは、更新工事が外部周辺環境に与える影響に係るコストを示す。環境コストは、典型的には、当該工事によって生じる大気汚染、交通渋滞、騒音、建設副産物、振動、水質汚濁、動植物の保全、景観等が挙げられ、これらのうち各工法において発生するものを適宜選択することが可能である。
なお、開削工法演算部と、管更生工法演算部は、典型的にはパソコン等の演算処理部(CPU)を用いることができる。この意味において、開削工法演算部と管更生工法演算部は必ずしも演算装置としてそれぞれが独立している必要がなく、一つの演算処理部にて開削工法演算部と、管更生工法演算部とを兼用させることが可能であるということができる。
【0008】
第3ステップは、開削工法トータルコストと管更生工法トータルコストとを比較演算部により比較するステップとされる。すなわち、第3ステップにおいては、当該下水管きょ更新工事に関し、開削工法と管更生工法とのいずれが適切かが導出されることとなる。なお、比較演算部として、典型的にはパソコン等の演算処理部(CPU)を用いることができる。
第4ステップは、第3ステップによる比較結果を出力部により出力するステップとされる。ここでいう「出力」とは、視認可能な表示部に対する表示出力、印字出力、音声出力、更にはメモリ等の記憶部に対するデータ出力等が広く包含される。当該第4ステップにおいて、使用者は第3ステップにおける比較結果を目視などにより確認することができる。なお、出力部として、典型的には視認可能な表示部(例えばパソコン等のモニター)、印字出力部(プリンター)、音声出力部(スピーカー)、更にはメモリ等の記憶部に対するデータ出力部のうちの複数を用いることができる。
【0009】
上記の第1〜第4のステップを遂行することによって、自治体の公共下水道の下水管きょ更新工事に関し、開削工法と管更生工法に対し、工事自体に直接必要となる施工コストのみならず、当該工事が外部周辺環境に与える環境影響因子を環境コストとしてコスト換算し、これら施工コスト及び環境コストを合わせたトータルコストを導出することが可能となる。これにより、施工コストのみでは評価されにくい環境面での影響を勘案したコスト評価を行なうことができるともに、各工法毎のトータルコストの比較によって下水管きょ更新工事の策定の適正化を図ることが可能とされ、以って下水管きょ更新工事運営の健全化対策が図られる。
なお、これら第1〜第4ステップに対し、更なる別のステップを加えることもできる。
【0010】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、開削工法演算部は、開削工法の施工コストを、施工延長情報と、予め記憶された管径別施工単価情報との積により求めることができる。ここでいう「管径別施工単価情報」とは、開削工法における直接工事費のほか、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費を含むコストとして規定される。なお、管径別施工単価情報は、第1ステップにおいて入力された管径情報に基づき選択される情報である。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、開削工法の施工コストを容易に求めることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、開削工法演算部は、開削工法の環境コストを、施工延長情報と、予め記憶された管径別環境因子情報との積により求めることができる。ここでいう「管径別環境因子情報」とは、開削工法における管径別の温室効果ガスに着目をした場合、材料製造時、材料運搬時、施工時における1メートル毎の金額を、金銭価値化情報として用いることができる。なお、管径別環境因子情報は、第1ステップにおいて入力された管径情報に基づき選択される情報である。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、開削工法の環境コストを容易に求めることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、開削工法演算部は、開削工法トータルコストを、開削工法の施行コストと環境コストとの和により求めることができる。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、開削工法トータルコストを容易に求めることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、管更生工法演算部は、管更生工法の施工コストを、施工延長情報と、予め記憶された管径別施工単価情報との積により求めることができる。ここでいう「管径別施工単価情報」とは、管更生工法における直接工事費のほか、共通仮設費、現場管理費及び一般管理費を含むコストとして規定される。なお、管径別施工単価情報は、第1ステップにおいて入力された管径情報に基づき選択される情報である。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、管更生工法の施工コストを容易に求めることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、管更生工法演算部は、管更生工法の環境コストを、施工延長情報と、予め記憶された管径別環境因子情報との積により求めることができる。ここでいう「管径別環境因子情報」とは、管更生工法における管径別の温室効果ガスに着目をした場合、材料製造時、材料運搬時、施工時における1メートル毎の金額を、金銭価値化情報として用いることができる。なお、管径別環境因子情報は、第1ステップにおいて入力された管径情報に基づき選択される情報である。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、管更生工法の環境コストを容易に求めることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る更なる形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法では、管更生工法演算部は、管更生工法トータルコストを、管更生工法の施行コストと環境コストとの和により求めることができる。
この形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法においては、使用者が管径情報と施工延長情報とを入力することにより、管更生工法トータルコストを容易に求めることが可能となる。
【0016】
また、上記課題を解決するために、公共下水道の下水管きょに対する更新工事計画を策定する、下水管きょ更新工事計画策定システムは、管きょの管径情報および施工延長情報とを入力する入力部と、管径情報および施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法コストを演算する開削工法演算部と、管径情報および施工延長情報とに基づき、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法コストを演算する管更生工法演算部と、開削工法コストと管更生工法コストとを比較する比較部と、当該比較部による比較結果を出力する出力部とを有する。
本発明に係る下水管きょ更新工事計画策定システムにおいては、当該構成を有することにより、上述した第1〜第4ステップを実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、公共下水道の下水管きょ更新工事に係る工事計画を策定するに際し、施工コストのみでは評価されにくい環境面での影響を勘案したコスト評価を行なうことができるともに、各工法毎のトータルコストの比較によって下水管きょ更新工事の策定の適正化を図ることが可能とされ、以って下水管きょ更新工事運営の健全化対策が図られることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る下水管きょ更新工事計画策定システム100のシステム構成を示す図である。
【
図2】第1管径別環境影響因子データベース122Aを示す説明図である。
【
図3】第2管径別環境影響因子データベース122Bを示す説明図である。
【
図4】他の実施形態に係る環境影響因子の具体例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明における「下水管きょ更新工事計画の策定方法」及び「下水管きょ更新工事計画策定システム」の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施の形態の方法では、下水管きょ更新工事の一例として、管種が鉄筋コンクリート管(HP管)の管きょに係るトータルコストを、管更生工法(反転工法、形成工法、製管工法)及び開削工法の各工法毎に導出した上で工事計画を策定する場合について記載する。
【0020】
なお、本実施の形態において管更生工法の1つとしての反転工法は、硬化性樹脂を含浸した長い袋状のシート(ライナー材)を水圧或いは空気圧により既設管きょ内に反転挿入し、光或いは熱硬化させて管内に密着した樹脂パイプを形成させる工法とされる。また、管更生工法の1つとしての形成工法は、管更生の対象管の形状に合わせて予め製作した管きょ或いはライナー材を既存管きょ内に牽引挿入して、管内面に新管を形成する工法とされる。また、管更生工法の1つとしての製管工法は、既設管内で新管を製管し、既設管と空隙がある場合は裏込材を充填することで、複合管として更生する工法とされる。また、本実施の形態の開削工法は、地面を直接掘削して既設管きょを新設管きょに開削する工法とされる。
【0021】
本実施の形態の下水管きょ更新工事計画策定システム100のシステム構成を
図1に示す。
図1に示すように、下水管きょ更新工事計画策定システム100は、管きょの工事計画を策定するのに用いるシステムであって、入力部110、開削工法演算部100A、管更生工法演算部100B、比較演算部150および出力部160に大別される。
この下水管きょ更新工事計画策定システム100が本発明に係る「下水管きょ更新工事計画策定システム」の一例であり、入力部110が本発明に係る「入力部」の一例であり、開削工法演算部100Aが本発明に係る「開削工法演算部」の一例であり、管更生工法演算部100Bが本発明に係る「管更生工法演算部」の一例であり、比較演算部150が本発明に係る「比較演算部」の一例であり、出力部160が本発明に係る「出力部」の一例である。
【0022】
図1に示す通り、入力部110は、管径入力部111と、施工延長入力部112とを備える。管径入力部111には更新工事に使用される管きょの具体的な径の数値が入力される。また、施工延長入力部112には、更新工事が行われる施工延長の具体的な数値が入力される。なお、管径入力部111と施工延長入力部112に入力される数値単位は、ともにメートル(m)が統一的に使用される。
入力部110に対する情報入力は、典型的には作業者による入力手段への入力操作や、予め情報が入力されたデータベースからのデータ抽出操作によって遂行され得る。入力手段への入力操作として典型的には、パソコン等のキーボード(入力部分)や、マイク(音声入力部分)等への入力操作を用いることができる。なお、管径入力部111及び施工延長入力部112は、各々が別個の入力部分として構成されてもよいし、或いは両入力部の機能を兼ね備えた単一の入力部分として構成されてもよい。
【0023】
図1に示す通り、開削工法演算部100Aは、第1記憶部120Aと、第1個別コスト演算部130Aと、第1トータルコスト演算部140Aとを有する。
第1記憶部120Aは、第1管径別施工単価データベース121Aと、第1管径別環境因子データベース122Aとを有する。第1管径別施工単価データベース121Aには、延長距離1メートルあたりの管径別の施工単価が記憶される。ここで、施工単価としては、典型的には管きょの管種、人孔間距離、人孔種別、管体延長、土被り、対象道路、舗装構成等の情報が用いられる。
【0024】
図2には第1管径別環境影響因子データベース122Aに記憶される情報の具体例が示される。本実施形態においては、環境影響因子に係る情報として延長距離1メートルあたりの温室効果ガスに係る単価が記憶される。すなわち、開削工法第1情報122A1として、材料製造時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。また、開削工法第2情報122A2として、材料運搬時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。また、開削工法第3情報122A3として、施工時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。
【0025】
図1に示す通り、第1個別コスト演算部130Aは、第1施工コスト演算部131Aと、第1環境コスト演算部132Aとを有する。第1個別コスト演算部130Aは、管径入力部111の管径情報に基づき必要な情報を第1記憶部120Aから選択するための選択部を有する。
第1施工コスト演算部131Aは、管径入力部111の管径情報により選択された第1管径別施工単価データベース121Aの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、開削工法の施工コストを求める。
【0026】
また、第1環境コスト演算部132Aは、管径入力部111の管径情報により選択された第1管径別環境影響因子データベース122Aの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、開削工法の環境コストを求める。この際、
図2に基づき説明したように、第1管径別環境影響因子データベース122Aに開削工法第1情報122A1、開削工法第2情報122A2、開削工法第3情報122A3が記憶されている場合は、まずは、それぞれの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、それぞれの情報における開削工法の環境コストを求める。しかる後に、開削工法第1情報122A1の環境コスト、開削工法第2情報122A2の環境コストおよび開削工法第3情報122A3の環境コストの和を求めることにより、開削工法の環境コストを求めることができる。
【0027】
第1トータルコスト演算部140Aは、第1施工コスト演算部131Aにより求められた開削工法の施工コストと、第1環境コスト演算部132Aにより求められた開削工法の環境コストの和を求める。これによって、開削工法のトータルコストが算出される。
【0028】
図1に示す通り、管更生工法演算部100Bは、第2記憶部120Bと、第2個別コスト演算部130Bと、第2トータルコスト演算部140Bとを有する。
第2記憶部120Bは、第2管径別施工単価データベース121Bと、第2管径別環境因子データベース122Bとを有する。第2管径別施工単価データベース121Bには、延長距離1メートルあたりの管径別の施工単価が記憶される。ここで、施工単価としては、典型的には管きょの管種、人孔間距離、人孔種別、管体延長、土被り、対象道路、舗装構成等の情報が用いられる。
【0029】
図3には第2管径別環境影響因子データベース122Bに記憶される情報の具体例が示される。本実施形態においては、環境影響因子に係る情報として延長距離1メートルあたりの温室効果ガスに係る単価が記憶される。すなわち、管更生工法第1情報122B1として、材料製造時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。また、管更生工法第2情報122B2として、材料運搬時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。また、管更生工法第3情報122B3として、施工時における管径別の温室効果ガスの金銭価値化情報が記憶される。
【0030】
図1に示す通り、第2個別コスト演算部130Bは、第2施工コスト演算部131Bと、第2環境コスト演算部132Bとを有する。第2個別コスト演算部130Bは、管径入力部111の管径情報に基づき必要な情報を第2記憶部120Bから選択するための選択部を有する。
第2施工コスト演算部131Bは、管径入力部111の管径情報により選択された第2管径別施工単価データベース121Bの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、管更生工法の施工コストを求める。
【0031】
また、第2環境コスト演算部132Bは、管径入力部111の管径情報により選択された第2管径別環境影響因子データベース122Bの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、管更生工法の環境コストを求める。この際、
図3に基づき説明したように、第2管径別環境影響因子データベース122Bに管更生工法第1情報122B1、管更生工法第2情報122B2、管更生工法第3情報122B3が記憶されている場合は、まずは、それぞれの情報(施工距離1メートルあたりの単価)と、施工延長入力部112による施工延長情報(メートル)との積により、それぞれの情報における管更生工法の環境コストを求める。しかる後に、管更生工法第1情報122B1の環境コスト、管更生工法第2情報122B2の環境コストおよび管更生工法第3情報122B3の環境コストの和を求めることにより、管更生工法の環境コストを求めることができる。
【0032】
第2トータルコスト演算部140Bは、第2施工コスト演算部131Bにより求められた管更生工法の施工コストと、第2環境コスト演算部132Bにより求められた管更生工法の環境コストの和を求める。これによって、管更生工法のトータルコストが算出される。
【0033】
図1に示す通り、比較演算部150は、第1トータルコスト演算部140Aにより算出された数値と、第2トータルコスト演算部140Bとにより算出された数値とを比較する。当該比較演算部150による比較結果は、出力部160に導出される。出力部160は、比較演算部150による比較結果を少なくとも出力する構成とされる。この出力部160は、開削工法、管更生工法のトータルコストに加えて、それぞれの施工コストや環境コストを出力する構成であってもよい。
この出力部160における出力態様として、視認可能な表示部に対する表示出力(例えばパソコン等のモニター)、印字出力(プリンター)、音声出力(スピーカー)、更にはメモリ等の記憶部に対するデータ出力のうちの複数を用いることができる。メモリ等の記憶部に出力されたデータは、本実施の形態の第1記憶部120A、或いは第2記憶部120Bとは別個の記憶部において適宜記憶され得る。
【0034】
なお、第1記憶部120Aおよび第2記憶部120Bは、典型的にはパソコン等の記憶処理部(ROM、RAM)等を用いることができる。また、第1個別コスト演算部130A、第1トータルコスト演算部140A、第2個別コスト演算部130B、第2トータルコスト演算部140Bおよび比較演算部150として、典型的にはパソコン等の演算処理部(CPU)を用いることができる。
【0035】
また、本実施の形態の下水管きょ更新工事計画の策定方法は、前述の下水管きょ更新工事計画策定システム100を用い、下記の第1ステップS1〜第4ステップS4を順次遂行することによって達成される。
【0036】
(第1ステップ)
第1ステップS1は、入力部110によって管きょの管径情報を管径入力部111に、管きょの施工延長情報を施工延長入力部112に入力するステップとされる。この第1ステップS1が本発明に係る「第1ステップ」の一例である。
【0037】
(第2のステップ)
第2ステップS2は、管径情報および施工延長情報とに基づき、開削工法における施工コストと環境コストとによる開削工法トータルコストを演算するステップとされる。さらに、第2ステップS2は、管更生工法における施工コストと環境コストとによる管更生工法トータルコストを演算するステップとされる。より具体的には、当該第2ステップS2は、開削工法演算部100Aにより開削工法トータルコストを演算し、管更生工法演算部100Bにより管更生工法トータルコストを演算するステップとされる。
この第2ステップS2が本発明に係る「第2ステップ」の一例である。
【0038】
(第3ステップ)
第3ステップS3は、開削工法トータルコストと管更生工法トータルコストとを比較演算部150により比較するステップとされる。すなわち、第3ステップS3においては、当該下水管きょ更新工事に関し、開削工法と管更生工法とのいずれが適切かが導出されることとなる。この第3ステップS3が本発明に係る「第3ステップ」の一例である。
【0039】
(第4ステップ)
第4ステップS4は、第3ステップS3による比較結果を出力部160により出力するステップとされる。この第4ステップS4が本発明に係る「第4ステップ」の一例である。
上記の第1〜第4のステップを遂行することによって、自治体の公共下水道の下水管きょ更新工事に関し、開削工法と管更生工法に対し、工事自体に直接必要となる施工コストのみならず、当該工事が外部周辺環境に与える環境影響因子を環境コストとしてコスト換算し、これら施工コスト及び環境コストを合わせたトータルコストを導出することが可能となる。これにより、施工コストのみでは評価されにくい環境面での影響を勘案したコスト評価を行なうことができるともに、各工法毎のトータルコストの比較によって下水管きょ更新工事の策定の適正化を図ることが可能とされ、以って下水管きょ更新工事運営の健全化対策が図られる。
【0040】
(他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の形態を実施することもできる。
【0041】
上記実施の形態では、環境影響因子に係る情報を第1管径別環境影響因子データベース122Aおよび第2管径別環境影響因子データベース122Bに記憶させたが、使用者がさらに他の環境影響因子情報を入力可能な構成とすることができる。当該構成に関し、他の環境影響因子情報の具体例を
図4に示す。
図4には、環境影響因子として、特に管きょ更新工事を行う際の影響が比較的大きい因子である、工事の際の建設機械の使用によって発生する排気ガス、工事の際の交通規制等によって発生する交通渋滞、工事の際の建設機械の使用によって発生する騒音、工事の際の掘削や舗装によって発生する建設副産物の処置を選択している。この際、排気ガスに係る環境影響因子は、NOx及びCO
2に分離して考慮している。
当該実施の形態に係る下水管きょ更新工事計画の策定方法および下水管きょ更新工事計画策定システムにあっては、さらに複雑な環境影響因子を導入することにより、下水管きょ更新工事の策定に係る精度向上を図ることが可能となる。
【0042】
(実施の形態ないし実施例本発明の各構成要素の対応について)
下水管きょ更新工事計画策定システム100は本発明に係る「下水管きょ更新工事計画策定システム」の一例である。入力部110は本発明に係る「入力部」の一例である。開削工法演算部100Aは本発明に係る「開削工法演算部」の一例である。管更生工法演算部100Bは本発明に係る「管更生工法演算部」の一例である。比較演算部150は本発明に係る「比較演算部」の一例である。出力部160は本発明に係る「出力部」の一例である。第1ステップS1は本発明に係る「第1ステップ」の一例である。第2ステップS2は本発明に係る「第2ステップ」の一例である。第3ステップS3は本発明に係る「第3ステップ」の一例である。第4ステップS4は本発明に係る「第4ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0043】
100 下水管きょ更新工事計画策定システム
100A 開削工法演算部
100B 管更生工法演算部
110 入力部
111 管径入力部
112 施工延長入力部
120A 第1記憶部
121A 第1管径別施工単価データベース
122A 第1管径別環境影響因子データベース
122A1 開削工法第1情報
122A2 開削工法第2情報
122A3 開削工法第3情報
130A 第1個別コスト演算部
131A 第1施工コスト演算部
132A 第1環境コスト演算部
140A 第1トータルコスト演算部
120B 第2記憶部
121B 第2管径別施工単価データベース
122B 第2管径別環境影響因子データベース
122B1 管更生工法第1情報
122B2 管更生工法第2情報
122B3 管更生工法第3情報
130B 第2個別コスト演算部
131B 第2施工コスト演算部
132B 第2環境コスト演算部
140B 第2トータルコスト演算部
150 比較演算部
160 出力部
S1 第1ステップ
S2 第2ステップ
S3 第3ステップ
S4 第4ステップ